「おいしいクリームデスゥ」 「ウマウマテッチュン☆チアワセチュッチュン♡」 「そうか、うまいのか」 「とってもデス!」 …… …… なんとなく物笑いの種にするべく、ソフトクリームと偽って俺はそれを野良共に提供した。 「くっさいデスゥ!きっついデスゥ!」 「うるせえ、キリキリ混ぜろ」 奴隷もとい飼い実装に混ぜさせて作ったそれは100均の粗悪なハチミツと混ぜた実装糞。 これをソフトクリームっぽい形に捏ねさせて野良へ提供するとこれがなぜか大好評。 …… …… 「どこらへんのがうまいの?」 リンガル越しに質問してみれば、目を輝かせた野良共が口々に語る。 「このクリームは、なつかしいママのニオイがするんデス」 「すっごくシタになじんでグルメチャンなんテチ!」 野良の奴らが言うにはそういうことらしい、大体の発現でママの香りだの実装が本来好むなんたらだのの件が出てきた。 つまりは、ほんのりと香る実装臭が味の決め手……と。 ほほう?まあ実装は忌みはするが緊急時になれば食糞もするナマモノ、味覚のどっかにうんこをうまいと感じるなんかがあってもおかしくはない。 ということは? …… …… こうなってしまってはもう気になったので俺は所謂『ゆでガエル』を実践するしかない。 そう、日に日に例のクリームの糞の割合をあげていけばどの段階で実装は気付くのか……というものだ。 「デー!ゴシュジンサマはジッソーをなんだとおもってるんデス!?それはゴシュジンサマがおもってるよりひどいことデス!」 「そんなに?」 「そうデス!やめるべきデス!ついでにワタシもイマのタイグウからカイゼ……デギャッ!」 ぶん殴って奴隷を黙らせる。 こんなんでも高級飼い実装なので倫理観がしっかりしていて口うるさい。ゆでガエル計画を話したら難色を示し、 自分が食うんじゃないからいいだろ、と言ったらこんな調子で反論するのだからまったくまったく実装石らしくもない。 「とにかく作れ、増産しろ」 「デデェ……野良チャンたちごめんデス」 …… …… 数日後。 「おいしいデスゥ、フカミのあるいいおアジなんデスゥ」 「ウマウマテッチュ~ン」 ついにそこにはうんこ100%を食ってご満悦の実装共がいる。 連中の単調なオツムは俺=うまい食い物をくれる=くれるものなんでもうまいと壮大に簡略化した図式に支配されきったのかなんなのか、 とにかく認知どころか味覚までもを歪めてうんこを次々と口に運んでは舌鼓を打っている。なんだこれは。 激臭緑汚物を貪ってえびす顔の群れに狂気を覚えつつ、 俺はあまりの結果に戦慄したので公園から脱出しようとしたその時、散歩中のめかしこんだ飼い実装が現れた! そこそこな肥満体形を見るに、普段はだいぶ良さげな食生活を送っていそうだ。 これはついに真実に気付く者が現れそうだ! 俺は茂みに隠れながらリンガルごしに連中のやり取りを見守る。 「デ~?おいこきたないオマエラ、なにをそんなにウマそうにくってるデス?」 「これはニンゲンサンがくれたクリームなんデスゥ~いっぱいあるんデスゥ~」 腹の満たされる環境下では飼いへの嫉妬も起きづらいのか寛大に応対し、 俺が提供したクソフトクリームもとい今や単なるうんこのカタマリを紹介する野良たち。 まあ流石に飼い実装ならニオイなりなんなりで気付くだろ、そうだろ? 「くっさいデス!これはウンコデス!」 そうだ!言ってやれ!真実を明らかにしろ!心の中で応援を送る。 なぜ俺はこんな事を思うのか自分でもわからない。 「まあまあ、たべてみるデス」 「これはウンコデス!どう見てもウンコデス!……ほんとにウンコなんデス?」 おい雲行きが怪しいぞ。 飼い実装は厭わしがりつつ、野良が至福の表情で貪るソレをひとすくいし、口へ運ぶ。 「こ、これは……デス!」 ウンコデスって言え!まずいと言え!吐き出せ!ゲロ吐け! 「デププ、ニオイはキツイデスがコクがあるデス、ふかみのあるアジデス、いつもたべてるフードにはおよばんデスがたしかにウマいデス!」 は? 「たくさんの野良がウマそうに食ってる」という情報と場のシアワセな雰囲気に呑まれた様子だった。 甘やかされた飼い実装なんか自我が弛緩しきっているので意志もそう強くはない、それにしても即堕ちどころの話ではない。 周囲に完全にうんこをうまい食べものと認識してしまっている仲間が居ることで、おそらくあやふやな自我はあやふやなままに汚物を美食へ変換してしまったのだ。 「どうしたんザマス、グリーンちゃま、ここは野良の子が多いんザマ……」 あの実装の飼い主だろうおばさまが遅れて事態の渦中へやってくると、そのあまりの光景を目にして硬直している。 めかしこんだ服装につく緑色のシミの数々、失われゆく中年マダムの目の光。 野良共にクリームの提供者として突き出されると厄介そうなので、俺は足早に公園を後にした。 おわり
