実装関連企業によるメディア戦略 ----------------------------------------------------------------------- とある民放局の朝のテレビ番組に、「今日の実装石ちゃん」というーコマがある。 飼い実装の何気ない日常を短い尺にまとめたものだが、 「今日のわんちゃん」 「今日のねこちゃん」と並び、 比較的好評を博していた。 本日の放送では、飼い主に連れられた飼い実装の家族が仲良さそうに散歩している様子が映し出されている。 途中、仔実装が一匹、転んで膝を擦り剥き泣いてしまったが、母実装が優しく抱き上げてあやすという、 見る者によっては微笑ましく思えるシーンも盛り込まれていた。 こうした番組は、視聴者の実装石への興味関心、購入飼育に対する動機形成に少なからぬ影響を与えているという。 テレビ番組はスポンサー無くして成り立ちえない。 このため、番組の内容は必然的にスポンサーの意向に沿ったものとなる。 だからと言って、番組を作っている人間全てがその意向に賛同しているわけではない。 「いいんですかね、これ」 とある番組制作会社の若手社員が、先輩社員に肩をすくめて見せる。 ボール遊びを楽しんでいる飼い実装一家の映像に編集を加えながらも、その口元には皮肉な笑みが浮かんでいた。 「いいって何がだよ?」 作業の手を止めずに聞き返す先輩に、若手社員が嘲り混じりに言う。 「実装石ってこんないいものじゃないでしょう?野良は臭いしキモイし汚いしうるさいし、 飼い実装だって糞蟲化したら手に負えないし」 「ああ、そうだな」 形ばかり頷く先輩社員に、若手社員は少しばかりムッとして言う。 「いくらスポンサー様のご意向だからって、都合の良い絵ばっかり映すってのもどうかと思いますけどね」 「スポンサーは神様だ。金払いの良いスポンサーは特に、な」 あくまで淡々と返す先輩に、なおも社員は言い募る。 「でもですよ、実装石の本性なんて糞蟲もいいところじゃないですか。これって視聴者を騙してることになりませんかね?」 かつて実装石絡みで酷い目にあったのか、若手社員は実装石に含むところがあるようだったが、 先輩社員はさして取り合わない。 「俺たちはちゃんとした事実の一側面を番組にしているだけだ。嘘もついていなけりゃ、 人様を積極的に騙しているわけでもない」 「・・・騙されるほうが悪いって言いたいんですか?」 「いいや。結果的に知識や想像力の不足が当の本人を苦しめることになった、それだけの事だ」 何故か傷ついたような表情を浮かべた若手社員は、論点を変えることにしたようだ。 「・・・実装石みたいな糞蟲より、実蒼石や実装紅みたいな他実装で番組作ったほうがいんじゃないですかね?」 「スポンサー様はあくまで実装石をご所望だ」 これは純粋に数の問題だった。 数が少ない故に高価な実蒼石や実装紅、実装金といった他実装は、実装石と比べると広く普及しているとは言い難い。 そして、数の多さはそのまま市場規模の大きさに繋がる。 他実装に比べて様々な問題がある実装石が、それでも主力商品として扱われている理由はそこにあった。 「じゃあほら、あのごくたまに見かける、ぱっと見た感じ人間の美少女みたいな、すごく可愛いやつならどうですかね?」 「あの実翠石とかいうやつか?あれは駄目だ。スポンサーNGだ」 「スポンサーNG?」 「ああ。ビジネスモデル的に金にならんそうだ。あと、主力商品の実装石と相性がものすごく悪いんだと」 実装石関連のビジネスモデルの一つに、関連商品で利益を上げる、というものがある。 多産かつ容易に妊娠・出産する実装石は製造コストが安価であるため、犬猫と比較して店頭での販売価格を比較的安価に抑えることが可能だ。 この安価な店頭販売価格が購入を後押しして、実装石がペットとして普及する一助にもなっているという側面がある。 (この店頭価格の安さが遺棄に対する心理的抵抗感を下げている側面もあるのだが、それはまた別の話である。) だが、一度買った以上は世話をし続ける必要があるのもまた事実。 飼い主達に飼育関連の商品を買い続けてもらう事こそ、スポンサーの狙いなのである。 事実、知能が高く、感情表現も豊かな実装石には、お菓子や服、おもちゃ等を買い与える飼い主が多い。 「・・・結局は金ですか?」 「否定は出来んな。よし、これで完成だ」 作業を終えた先輩社員はデータを保存し、関連部署に送付すると席を立った。 「これが俺達の仕事だ。割り切れよ」 そう言い残して、先輩社員は部屋を出て行った。 残された若手社員は、ムスッとした表情でモニターに映る実装石を睨みつける。 モニターの中では、【また明日テチ!】というテロップと共に、仔実装が一匹、口元に片手を当てて小首を傾げていた。 「糞蟲共が・・・」 吐き捨てるように呟いた言葉は、誰に聞かれるでもなく虚空へと消えていった。 実装石と関わりを持つと、少なくない数の人間がその糞蟲性に嫌悪感を抱くという。 だが、不思議な事に世間ではペットとしての地位をある程度確立しており、今日もそれなりの数の実装石がペットとして家庭に迎え入れられている。 何故かといえば、実装石関連企業がメディア各社に対して、多額の広告費と共に自社に都合の良い広告や番宣をせっせと出しているからに他ならない。 メディアにとって、広告主は神様である。 そして金額が大きければそれに比例して偉大さも増す。 事実、実装石の糞蟲性が喧伝されるのはインターネット上が主であり、オールドメディアにおいてはほとんど話題に上らない。 むしろ、インターネットとは真逆の、実装石に都合の良い話ばかりが流れているのが現状である。 このことからも、如何に実装石関連企業が多大な広告費を払っているかが察せられるというものである。 それだけではない。 特に大手の実装石関連企業はメディア関係者を積極的かつ好待遇で迎え入れる事で、メディアに対して少なからぬ影響力を保持することに成功していた。 『ご主人サマ、ありがとうテチ!』 本日放送された「今日の実装石ちゃん」では、飼い主から新しい玩具を与えられた飼い仔実装が、 見ようによっては可愛いと言えなくもない笑顔を浮かべて喜ぶ様子が映し出されていた。 映像は確かに事実ではあったが、嘘偽りのない事実全てかどうかはその限りではなかった。 例えば、その仔実装が実はとびきり善良で、それ故に高価格で取引されていた優良個体だったとしたら? 市販されている、低価格故に質もそれなり以下の仔実装に同様の反応ができるのか? 多くの実装石が潜在的に有していると言われる糞蟲性について、発露しない保証はどこにあるのか? こうした都合の悪い事実は編集権と報道しない自由の名の元に隠され、 今日もまた耳触りの良いプレスリリースばかりが流され続ける。 そして、こうしたメディアに影響された少なくない人々が実装石をペットとして迎え入れ、 そのうちの少なくない人々が実装石に関わったが故に不幸になる。 もっとも、一番の被害者は、人間の都合に振り回されて、時として命すら奪われる実装石なのかもしれないが。 -- 高速メモ帳から送信

| 1 Re: Name:匿名石 2026/01/14-19:13:40 No:00009865[申告] |
| 実装石がいたらこういう番組ありそうだなあ
そしてその番組を見て飼い始めてすぐに現実を知る人も多そう |
| 2 Re: Name:匿名石 2026/01/15-18:38:25 No:00009868[申告] |
| 重大なインシデントが起こって世論の潮流が大きく変動したら一歩遅れて手のひら返しするんだろうな |