仔実装と優しいゴリラのお話 ----------------------------------------------------------------------- 『テ、テッチャァァァァァァッ!?』 とある野良仔実装三姉妹は、陽の光の眩しさに目を覚ますと共に、目の前にいる毛むくじゃらの生物に悲鳴を上げた。 ここは某市の動物園内にあるゴリラ用の檻の中だ。 環境が悪化した公園から家族総出で渡りに出たものの、家族とはぐれてしまい彷徨っているうちに、 この檻の中で疲れて眠ってしまったというわけである。 ちなみに、母実装と他の姉妹はほぼ同時刻に登校中の小学生に襲撃され、揃って地面の染みと化していた。 『さ、さ、さ、三女姉チャン!こ、こ、こ、怖いテチィ!』 『毛むくじゃらテチ!ニ、ニンゲンじゃないテチ!?』 『だ、大丈夫テチ!妹チャン達はワタチが守るテチ・・・!』 自身も恐怖に震えながら、三女は気丈にも五女と九女の妹二匹を背に庇った。 ゴリラは不思議そうに仔実装三姉妹を見つめていたが、やがて手を伸ばすと、三女の頭をごしごしと撫で始める。 『テ、テェッ・・・?』 怖い見た目とは真逆の友好的な反応に、三女は戸惑いを隠せなかった。 どうやらゴリラは食事の途中だったらしく、ひとしきり三女を撫でると餌の元へと戻り食事を再開し始めた。 『テェェ、お腹すいたテチ・・・』 相手がこちらに危害を加えるつもりが無さそうだと分かると、五女と九女は口々に空腹を訴え始めた。 三女とて空腹を抱えているのは同様だ。 過酷な渡りの最中に、腹いっぱい食えた事など無かったのだから。 だが、それなりに賢い三女は、初めて見る動物に対して警戒心を解こうとしなかった。 姉として妹二匹を守るんだという意識がそうさせていたというのもある。 まあ、ひ弱で儚い仔実装如きが警戒したところで大した意味などないのだが。 じっと自身を見つめる仔実装達の視線に気付いたのか、ゴリラはバナナを一本放って寄越した。 『テヒャァッ!?』 近くに落ちたバナナに驚きながらも、食欲に負けたのか五女がバナナに近付き、口に含む。 『テチュ〜ン♪』 口の中に広がる甘味に五女は感激してバナナを貪り始め、九女もそれに続いた。 『あ、ありがとうテチ、ありがとうテチ!』 三女がゴリラに向かってペコペコと頭を下げるが、ゴリラは一響をくれただけで己の食事を黙々と続けていた。 ゴリラの檻に野良仔実装姉妹が入り込んだという事実は、たちどころに世間に広まった。 無論飼育員は仔実装姉妹を排除しようとしたのだが、当のゴリラが仔実装姉妹を庇う素振りを見せたため失敗。 そのまま開園時間となり、ゴリラが仔実装達の頭を撫でて可愛がっている様子が来園者により拡散され、 ちょっとしたバズりとなったからだ。 「不潔で汚い野良実装の侵入を許すなんて管理体制はどうなっているんだ」 という批判的な意見も少数あったが、大部分はゴリラの優しさ溢れる行動に対する称賛、 感激を示すものだった。 このことから、動物園側は当面の間、状況を見守ることとした。 バズリ具合から来園者の増加をいくらか見込んで、という思惑もむろんあったのだけれど。 そんなわけで、なし崩し的に仔実装三姉妹はゴリラとの同居を認められる形となった。 『テェェ、おいしいテチ!おいしいテチ!』 ゴリラから餌を分け与えられ、 『いい仔いい仔うれしいテチ♪』 頭を撫でてもらい、 『高いテチ!すごいテチ!』 時には抱きかかえられた状態で一緒に木登りをしたり、 『あったかいテチ・・・。ママみたいテチ・・・』 夜には一緒になって眠るなどしていた。 そんなゴリラと仔実装姉妹の様子は、少しの間、微笑ましいニュースとしてお茶の間を和ませた。 だが、そんな生活は長くは続かなかった。 原因はもちろん、実装石の持つ糞蟲性にあった。 『チププ!こいつはワタチのドレイにしてやるテチ!』 無闇に優しくするとつけ上がるのが糞蟲である。 優しいゴリラを舐め腐った九女は、何をとち狂ったのかゴリラに自身の糞を塗りつけようとした。 口うるさい三女に対抗しようと、ゴリラを奴隷にして自身の力としたかったのかもしれない。 無論、ゴリラとしては汚物を塗りつけられるような真似を甘受する謂れはない。 ゴリラは無造作に九女を手で払った。 『ヂッ!?』 ゴリラの筋力は人間のアスリートの4倍から5倍に達すると言われている。 たとえ軽くとはいえ、そのような力で払われたら脆い仔実装の身体が耐えられるはずもない。 九女の身体はグシャグシャに潰れて飛び散ることとなった。 『あいつばっかりご飯をたくさんもらっててズルいテチ!思い知らせてやるテチ!』 『ご、五女チャン止めるテチ!』 五女は九女と仲が良かったため、復讐の意図もあったのだろう。 餌に向かって尻を向け、パンツを下したところで、 『テ?テベチャァッ!?』 ゴリラに掴み上げられ、地面に叩きつけられた。 五女の肉体は原型を留めないほどに潰れてしまった。 そんな中でも三女だけはゴリラのお気に入りだったらしく、相変わらず餌を分け与えられる等、変わらず平和な日々を過ごしていた。 三女もよくゴリラに懐いており、二匹の関係は平穏そのものといった様子だった。 だが、やはり五女と九女の糞蟲的な行動が動物園側に問題視され、三女はゴリラから引き離され、 里仔に出されることとなった。 これには、三女が動物園の職員を見かけるたびにペコペコと挨拶していたため、さすがに職員側も無下に始末するのはためらわれたことと、 良識ある愛護派が里仔として引き取る用意がある旨手を上げたのが作用していた。 そうでなければ噴霧式実装コロリを吸わされあっさり駆除されていたことだろう。 三女が里仔として出される日。 ゴリラは三女を引き渡すのに抵抗する素振りを見せたが、 『いままでありがとうテチ』 と言って三女がその手に頬ずりすると、何故だか急に大人しくなった。 そのまま三女は愛護派の手に引き渡される。 『バイバイテチ!今までありがとうテチ!だいすきテチ!』 愛護派の手の上で小さい腕をぶんぶん振って別れを告げる三女を、ゴリラはただただ寂し気な瞳で見送っていた。 ちなみに、ゴリラと三女の一連の場面はホームページに公開され、ちょっとしたニュースにもなった。 その後、愛護派に引き取られた三女はゴリラの好物にちなんでマスカットと名付けられ、糞蟲化することもなく終生大事に育てられて天寿を全うした。 葬儀の際は、生涯お気に入りだったゴリラのぬいぐるみと一緒に棺に納められたという。 ※スレに投稿したものを改題しました。 -- 高速メモ帳から送信

| 1 Re: Name:匿名石 2025/12/25-19:31:42 No:00009858[申告] |
| 糞蟲には糞蟲に相応しく、良蟲には良蟲に相応しいそれぞれに応じた報いがあって良いお話 |
| 2 Re: Name:匿名石 2025/12/25-20:31:27 No:00009859[申告] |
| ゴリラの優しさに漬け込む糞蟲をキッパリ断じる所は下手な愛護派なんかより愛情と厳しさを併せ持った賢者だな
三女も状況に驕らず飼育員に気を遣っていた事で人の心動かし里子への道を得られた やはり実装石が幸福を掴み獲る方法は自分以外にも配慮できるかが大きいね |
| 3 Re: Name:匿名石 2025/12/28-04:30:08 No:00009860[申告] |
| 典型的な勧善懲悪デスね |
| 4 Re: Name:匿名石 2025/12/29-22:19:17 No:00009861[申告] |
| まあ良個体でも報われる事少ないからね
この件も仔実装が日頃から飼育員まで気を使ってなかったら処分されるとこだったし こと実装関連で絵に描いたような大団円は案外レアかも? |