飼い実装テヴェールの穏やかな日々 その11 良き野良実装との触れ合い 飼い仔実装のテヴェールは、飼い主の秋穂とパパさん、そしてセントバーナードのバルクホルンと共に、 近所の第二公園へと遊びに来ていた。 野良実装が生息している公園に飼い実装を連れて来るのは、実のところあまり推奨されていない。 例え飼い主同伴でも、嫉妬に狂った野良実装に襲撃される可能性があるからだ。 最悪、入れ替わりを企む野良実装に殺害される可能性すらある。 だが、この第二公園は違った。 野良実装が生息していることに変わりはないが、指導力のあるボス実装の元にコミュニティが形成され、 地域住民に迷惑をかけることなく共存しようとしていたからだ。 コミュニティに属している野良実装達は、ゴミ捨て場を荒らす事もしないし、所構わず糞をするような事もない。 人間に媚びたり託児を試みたり、住居侵入を図る事もない。 それどころか、公園内のゴミ拾いを行うなど人間に対して協力的ですらあった。 一度など、迷子の子供を保護して人間に引き渡したことすらあったという。 そんな公園ならば、テヴェールを遊ばせても問題ないだろうとパパさんは考えたのだ。 もっとも、一番の理由は娘の秋穂が第二公園でみんなで遊びたいと言ったからなのだが。 公園に着くと、ゴミ拾いをしている野良実装の親仔がいた。 秋穂はテヴェールとバルクホルンをお供に野良実装の親仔に近付き声をかけた。 「こんにちは!」 『こんにちはテチ!』 挨拶する少女とテヴェールに、野良実装の親仔はペコペコと頭を下げる。 腰が引けて見えるのは、おそらくバルクホルンに驚いているからだろう。 そんな野良実装親仔の態度を意に介さず、秋穂はリンガル越しに話しかけた。 「よければいっしょに遊ばない?」 『デェェェェ・・・、ごめんなさいデス。今はゴミ拾いの最中デス』 「そうなの?ごめんね、邪魔しちゃって」 『また今度遊んでほしいデス。ほら、お前ももう行くデス』 『ニンゲンさん、また今度テチ』 ペコリと頭を下げてゴミ拾いに戻る野良実装親仔を、少女とテヴェールは手を振って見送った。 『テェェェェ、立派テチ。ワタチもお仕事がんばりたいテチ・・・』 自分と変わらぬ大きさの野良仔実装が立派にお仕事をしている姿に、テヴェールは感銘を受けたようだった。 その後は公園内のあちこちを見て回ったり、遊具で遊んでみたり、フリスビーで遊ぶバルクホルンとパパさんを眺めてみたりと、楽しい時間が過ぎていった。 家に帰り着くなり、テヴェールは飼い主一家にテチテチと鳴き声を上げた。 『ワタチもお仕事をしてお役に立ちたいテチ!がんばるテチ!』 野良仔実装を見て思うところがあったのだろう、やる気に溢れるテヴェールだったが、飼い主一家はやや困ったような笑顔を浮かべた。 パパさんがテヴェールの頭を撫でながら優しく応える。 『ありがとうなテヴェール。でもな、テヴェールの小さい身体ではお家のお仕事をするのはまだまだ早いし危ないな」 『テェ・・・』 「テヴェールがもっと大きくなってからお願いするよ』 『テェェェェ、わかりましたテチ・・・』 しょんぼりしながらも聞き分けの良いテヴェールに、温かな笑みを浮かべる飼い主一家だった。 一見すると第二公園の野良実装達は人間と共存出来る理想的な存在のように思われている。 だが、その内実はボス実装による厳しい統制によって、ギリギリのところで成り立っているものだった。 糞蟲が全てを台無しにする。 その事をよく知っていたボス実装は、コミュニティに属する野良実装達に糞蟲の徹底した間引きを命じていた。 とはいえ、我が仔に対する間引きを唯々諾々と受け入れるのは無理な相談というもので、 愛情深い個体ほど強い抵抗を示すのが常だった。 『お願いデスゥ!その仔はまだ小さくてよく分かっていないだけなんデスゥ!』 引き離された仔に泣きながら手を伸ばす母実装を、他の野良実装達が抑えつける。 『チププププッ!無様なクソママテチィ!』 自分を取り巻く不穏な空気に全く気付かず、日頃から口煩かった母実装が取り押さえられる様を嘲笑う仔実装。 糞蟲らしさを隠そうともしない愚かな個体は、存在そのものがコミュニティにとって害悪だった。 『テ、テチッ?』 いつの間にか、仔実装の周りを木の枝を持った成体実装達が取り囲んでいた。 自身を見下ろす冷たい視線に、流石に良からぬものを感じたのだろう、仔実装は媚びてみせる。 『テ、テチュ〜ン♪』 成体実装達は冷たい視線のまま仔実装に小枝を突き立てた。 『テヂャァッ!痛いテチィッ!やめろテチィ!し、死んじゃうテヂィッ!?』 悲鳴など聞こえないかのように成体実装達は小枝を突き立て続け、仔実装は全身を穴だらけにされて死んだ。 『・・・デェェェンッ、デェェェンッ!』 泣きながら地面をポフポフ叩く母実装を、抑えつけていた野良実装達が肩を叩き、背をさすって慰める。 糞蟲の徹底的な間引きにより、第二公園に生息する野良実装達のほとんどは賢い良個体ばかりである。 そうであるが故に、たとえ糞蟲とはいえ、仔が始末されるのはやはり忍びなかったのだろう。 穴だらけにされた仔実装の死骸は、便槽へと放り込まれた。 例え死骸であっても口にする個体はいない。 そのような真似をすれば共喰いをする糞蟲と認定されて、間引きの対象となるからだ。 母実装を慰めていた野良実装は思った。 たしかにボスの言う事は正しいデス。 糞蟲がいないこの公園は、ニンゲンさんからもよく思われているみたいデス。 でも、厳しすぎるといつかきっとみんな耐えられなくなるデス。 いつか自分達も糞蟲扱いされてカナシイことをされるんじゃないかと思うと、すごくすごく怖いデス。 この野良実装の危惧が現実のものになるかは、まだ誰にも分からなかった。 -- 高速メモ帳から送信

| 1 Re: Name:匿名石 2025/11/08-20:15:46 No:00009830[申告] |
| 耐えられなくなった野良実装達がボスに反旗を翻して殺害
圧政から解放されたと喜び瞬く間に糞蟲化&糞蟲仔が増加 糞蟲が人間の怒りを買って駆除される お決まりのパターンになる展開じゃないデスかヤダー! |
| 2 Re: Name:匿名石 2025/11/08-21:04:19 No:00009831[申告] |
| 仮に反逆を許さずに抑えつけるだけの力があったとしてもいつかは寿命で死ぬわけで
後を継いだ新ボスがいたとしても同じようにできるとは限らないしね… それはそれとして主人公のテヴェールの知らないところで野良実装が哀れに死んでいくの好き |
| 3 Re: Name:匿名石 2025/11/09-04:10:59 No:00009832[申告] |
| 秩序のある実装公園って能力差に乏しく元来薄弱な理性や意思の実装達には維持は綱渡りだよな
山実装は選択肢のないタイトな環境がコミュニティをなんとか成立させたりするが都市圏ではそうはいかない だから後ろ盾を求めるしその協力者は実装の負の面も熟知した物好きでないと結構厳しい |
| 4 Re: Name:匿名石 2026/01/06-09:16:41 No:00009864[申告] |
| この公園の実装石の群れは、郷実装と地域実装の中間のような状態と見ることができそうな。内部は厳格に統治され、外部は人間との適切な距離を保つ。人間側にも相当な良識が求められるぞ、これは。公園のボス実装石の出自も気になるところ。いわゆる「お山流れ」や「お山崩れ」の個体か。それも1体のみではあるまい。数体がこの公園に渡ってきたか、あるいは人為的に移植された可能性もあるか。人里に棲むゆえこの公園の群れには多くの不確定要素が内外に存在することが山実装とは違うところだが、この平穏無事が長く続くことを祈らずにはいられない。 |