実翠石との生活Ⅲ 短編まとめ14 ----------------------------------------------------------------------- 乗っ取り計画とその末路 この街には死神のような実翠石がいる。 そんな噂話がとある公園に住む野良実装の間に広まっていた。 曰く、姿を見るだけで理不尽な死が訪れる。 曰く、立ち向った勇敢な野良実装が汚物まみれになって死んでいた。 曰く、たとえ飼い実装でもその実翠石を見るだけで捨てられたり殺されたりする。 賢い野良実装達は恐怖したが、噂を聞き付けた糞蟲気質の野良実装達は恐れるどころか激しく怒り狂った。 『なんで高貴で美しいワタシタチがあんなデキソコナイのヒトモドキ如きを恐れなければならないんデス!?』 『そうデス!ワタシタチを恐れてひれ伏すのはあの肉穴人形のほうデス!』 『媚び穴人形なんて恐れるに足らないデス!腰を振るしか能がないクソビッチなんてボコボコにしてやるデス!』 『そうと決まれば出陣デス!売女なんかブチのめして、ついでに飼い主のクソニンゲンをドレイにしてお家を乗っ取ってやるデス!』 幸い、実翠石の住む家は賢い野良実装の一匹が知っていた。 嫌がるのを集団でタコ殴りにして無理矢理案内係に仕立てると、糞蟲気質の野良実装達は勇躍出撃していった。 「お姉さま、どうぞです」 「ありがと〜」 実翠石の常磐が淹れてくれたアイスティーを口に含む。 口の中に広がる冷たく優しい甘みが舌に心地良い。 窓の外はまさに酷暑というやつで、玄関のドアを開くだけで出かける気が失せるような有様だ。 とはいえ、あまり出不精になるのも、特に常磐の事を考えると、よろしくないように思えた。 「ねえ常磐、どこか行きたいところとかある?」 何気なしに常磐に聞くと、常磐は可愛らしく小首を傾げる。 「今日はすごく暑いから、お家でゆっくりするんじゃないんです?」 「いや、あんまり家に籠もりっきりになるのもの良くないかな、って。常磐だって退屈じゃない?」 私の言葉に常磐は一瞬だけきょとんとするが、すぐににぱっと笑顔を浮かべて抱きついてくる。 「わたしはお姉さまといっしょにいられるだけで、うれしいし楽しいです♪」 この娘はいつも私が嬉しくなる言葉をくれるな。 思わず抱き締め返す腕に力が籠もると、常磐が腕の中でわたわたし出す。 「お、お姉さま!お胸、お胸で息ができないですぅ〜!」 ごめんね、常磐。でも、もうちょっとだけ、ね? 『デェェ、デェェ、やっと、やっと着いたデス・・・』 肩で息をつく野良実装達。 ようやく件の実翠石が住む家を臨む事が出来る電信柱の影まで辿り着いた野良実装達は、その数を半数近くにまで減らしていた。 ここまで来る間に、車に轢かれ、カラスに襲われ、野良猫におもちゃにされ、さらにはニンゲンの子供達に襲撃された。 少なくない犠牲を払った野良実装達は、是が非でも実翠石を始末し、飼い主のクソニンゲンをドレイにしてセレブな生活をゲットしようと決意を新たにする。 『でも、これからどうするんデス?』 『ワタシタチだけじゃニンゲンのお家には入れないデス』 思案する仲間の声に、多少は知恵の回る野良実装が提案する。 『ここでヒトモドキとクソニンゲンがお家から出てくるのを待ち伏せするデス!ノコノコ出てきたところをみんなで襲って血祭りにするデス!』 他の野良実装達はいい考えデスと賛成して、電信柱の影に腰を下ろす。 実際のところは、単に疲労困憊でこれ以上動きたくないので、適当な理由をつけただけというのが実情だったが。 そうして数時間が経った。 『ま、まだ出て来ないデス・・・?』 上から陽の光で炙られ、下からは輻射熱で熱されながらも、野良実装達はチャンスを窺い待ち続けていた。 途中、苛立ちと空腹を紛らわすため、案内役として連れてきた賢い野良実装を嬲り者にしてから食い殺すなどしていたのだが、肝心の実翠石共は一向に出てくる気配が無い。 それでも待ち続けているうちに、 『デゲァ・・・(パキンッ!)』 『デ・・・デヒッ・・・(パキンッ!)』 野良実装達は熱中症や脱水症状にかかり次々と死んでいった。 『・・・こ、これはダメデス・・・。今日は出直すデス・・・』 夕暮れ近くになり、最後に残った二、三匹がとうとう諦めて引き上げにかかる。 フラフラになりながらも歩みを進めるが、何かに気付いたのが足を止めた。 『・・・帰り道が、わ、わからないデス・・・!』 案内役の賢い野良実装を半ば八つ当たりで食い殺してしまったため、道に迷った野良実装達はパニックに陥った。 『デシャァァァァァァァァァァッッ!』 絶望的な叫び声を上げながら生き残りの野良実装達はそこら中を駆け回った。 その結果、ある個体は車に轢かれ、ある個体は行き倒れ、またある個体はニンゲンに見つかり駆除された。 こうして実翠石を討伐しようとした野良実装達は一匹残らず全滅した。 公園を出かけていった野良実装達がただの一匹も戻らなかった結果を受けて、残された賢い野良実装達は改めて恐怖したが、実のところ悪い事ばかりではなかった。 糞蟲気質の同族が全滅したため、人間からヘイトを買う機会が少なくなり、結果として生活環境の改善をもたらす事となった。 ----------------------------------------------------------------------- シガレット とある公園のベンチにて。 「んーっ、おいしいです〜♪」 実翠石の常磐がシガレット状の駄菓子を口にくわえて笑みを浮かべる。 スーパーでたまたま見かけて、懐かしさを覚えて買い求めたのだが、常磐にも好評だったようだ。 私も一口、と思い、箱を片手で軽く振り、一本だけ取り出して口にくわえる。 「・・・お姉さま、かっこいいです・・・♥」 「そ、そう・・・?」 「すっごくオトナなオンナの仕草だったです〜♥」 ぽっと頬を染める常磐に、何だか妙な気恥かしさを覚えた私は、何でもない風を装って口に含んだ駄菓子の味に注意を向ける。 記憶にある味よりも、ずっとずっと甘く感じられたのは、気のせいなのだろうか。 『テヂィッィィッッ!』 そんな常磐達の様子を、留守番に飽きて勝手に巣の外に出て遊んでいた野良仔実装が睨みつけていた。 ニンゲンに媚びてウマウマにありつく卑しいヒトモドキに怒りを覚えた仔実装は、近くのベンチに腰掛けてタバコを吸っていた男に向かって鳴き喚いた。 『クソニンゲン!お前の食べてるウマウマを寄越せテチ!今ならありがたくもらってやるテチ!』 耳障りな仔実装の鳴き声に苛ついた男は、咥えていたタバコを仔実装の口に押し込んだ。 『〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!??』 700℃以上もの高温に口中から喉奥までを灼かれ、悲鳴を上げることも出来ずに仔実装はのたうち回る。 何とかタバコを口中から抜き出し、這々の体で巣へと逃げ帰るが、口から喉を灼かれては満足に食事も出来ず、仔実装は日に日に弱っていった。 『言いつけを破る糞蟲には似合いの末路デス!』 母実装にすらあっさりと見限られ、仔実装は餓えと渇きに苦しみながら死んでいった。 せめてもの救いは、他の仔実装達の反面教師になれた事ぐらいだろうか。 ----------------------------------------------------------------------- 8月30日は宮崎餃子の日 商店街からの帰り道。 「ん〜っ、餃子、おいしかったです〜♪お姉さま、ありがとうございますです〜♪」 実翠石の常磐のご満悦な様子に、私も嬉しくなる。 今日の夕飯は商店街の町中華店で済ませたのだが、お勧めメニューの餃子がなかなか美味しく、舌もお腹も大満足だった。 何よりビールにピッタリで、ついついグラスが進んでしまった。 「あ、でも、ニンニクがたくさん入ってたから、キスする時は困っちゃうかもです?」 最近読んだ少女マンガの影響だろうか、キスする相手もいないのに、そんなおませな事を言う常磐に、酔いのせいかちょっとしたいたずら心が湧いてくる。 「あら、そうかしら?」 そう言って、私は常磐の前髪をそっとかき分けると、露わになった額にそっと口づけた。 私の不意打ちに一瞬遅れて顔を真っ赤にする常磐に、 「これなら、お口の匂いもあんまり気にならないでしょ?」 と言ってやる。 「は、はいですぅ〜〜〜♥」 おでこを押さえながら恥ずかしそうに俯く常磐がひどく可愛らしくて、何だか私まで頬が熱くなってくる。 口直しと酔い覚ましに、コンビニでアイスでも買おうかな。 もっとも、この酔いの正体が、ビールによるものか、それとも常磐によるものか、自分でもよく分からなかったけれど。 そんな二人の様子を、一匹の野良実装が電信柱の影から睨みつけていた。 『デギギギィィィッッ・・・!』 楽しげに去ってゆくヒトモドキの実翠石と、飼い主と思しきメスニンゲンに忌々しさを感じながらも、野良実装は当初の目的を忘れていなかった。 酷暑に苦しむ我が仔達のためにウマウマなものを食べさせようと、危険を犯してここまで来たのだ。 嗅いでいるだけでよだれが出てくるこのニンゲンのお家(町中華店)ならば、きっと良いものが手に入るに違いない。 野良実装は夜陰に紛れて店の裏手に忍び込み、 『デ、デギャァ!?と、取れないデス!?』 あっさりと強粘着性のネズミ捕りシートに引っかかった。 実翠石への苛つきに冷静さを欠き、罠を見落とした結果だった。 デギャデギャと汚い声を上げて暴れる野良実装だったが、そんな事で抜け出せる程甘くはない。 それどころか、鳴き声に気付いた店員を呼び寄せる事になってしまった。 『デゲボァァァァァァァァッッ・・・!!』 店員から無慈悲にも噴霧式コロリをたっぷりと浴びせられて、野良実装は苦しみ抜いて死んだ。 『ママ、ママァ・・・(パキンッ!)』 『おなか・・・すいた・・・テチ・・・』 『みず・・・みずがないテチィ・・・』 『テホッ・・・!テヒャァ・・・!(パキンッ!)』 巣で帰りを待っていた仔実装達も、餓えと熱中症によりさほどの間を置かずに母親の後を追って果てていった。 ----------------------------------------------------------------------- 9月1日防災の日 いつものようにテレワークに勤しんでいると、パソコン画面の右下端に表示されている日付がふと目に入った。 9月1日。 「今日は防災の日か・・・」 そういえば、家のクローゼットの奥にも防災リュックや備蓄食料があったはずだ。 今は亡き父が、万が一に備えてと買ってきたものだったな、と思い出す。 ちょうどいい機会だから、点検がてら引っ張りだしてみようかしら。 でもその前に、父の事を思い出した為か、鼻奥に感じたツンとした痛みを癒す必要を感じた。 「常磐、悪いけど、ちょっと来てくれる?」 「あ、はーいです」 私が呼ぶと、実翠石の常磐が洗濯物を畳む手を止めて、パタパタとやってくる。 「お姉さま?むぎゅう・・・」 隣にやって来た常磐を、私はぎゅっと抱き締める。 鼻腔をくすぐる常磐の甘い髪の匂いが、鼻先の痛みを和らげてくれるの確かに感じた。 「お、お姉さま?いきなりどうしたんです?」 「ん〜、なんとなく、かな?」 ほんのり頬を赤くしながら聞く常磐に、私は何でもない風を装う。 正直に言えば、きっと常磐は悲しい顔をするだろうから。 常磐には、いつも笑顔でいて欲しいから。 災害の有無にかかわらず、野良実装の生活は常に命がけである。 だからこそ、賢い個体は備えを怠らない。 問題は、そうした備えがいざという時に本当に役に立つのか、という点にある。 『な、ないデス・・・!一つも残ってないデス・・・ !』 ここ最近満足に餌が取れなかったとある野良実装は、四匹いる仔を飢えさせまいと、虎の子の備蓄食料に手を付けることにしたのだが・・・。 保管していた箱(捨てられていたお菓子の箱を利用したもの)を開けてみると、ものの見事に空っぽだった。 愛護派が気まぐれに撒いた実装フードや木の実、バッタやセミの死骸等々、箱いっぱいに詰まっていたはずの備蓄食料がどこにも見当たらない。 下手人の見当は既に付いていた。 顔面中に血管を浮かび上がらせた母実装の顔を見て、四匹の仔実装は恐怖のあまり揃って脱糞する。 『お前達・・・!』 『ち、ちがうテチャァッ!食べたのはお姉チャン達だけテチィ!』 『お前、自分だけ助かろうとするテチ!?』 『お前だって食べてたテチャァッ!』 『そもそもろくにゴハンを取ってこれないクソママのせいテチィッ!』 姉に罪を擦り付ける者、それに激高する者、母実装を詰る者。 揃いも揃って醜態を晒す娘達を、母実装は野良らしい切り替えの早さで糞蟲認定し、間引くことに決めた。 『・・・今日のゴハンはお前達で決まりデス・・・!』 母実装からの死刑宣告に、仔実装達は逃げる間もなく食い殺された。 仔実装達は味を良くするためと称して、でもその実は母実装のストレス解消のために、必要以上に嬲り者にされてから貪り喰われることとなった。 大規模災害に備えてペット用品を確保しておくのは、飼い主としての義務である。 専業主婦のとある中年女性は、防災の日に合わせて自宅の防災グッズや非常用食料の確認を行っていた。 倉庫の奥まった場所に仕舞われていたそれらを取り出し、中身を確認する。 防災リュックの中身は問題なかったが、非常用食料のいくつかは消費期限が切れていた。 ただ捨てるのはもったいないけど・・・などと考えているうちに、とある物が視界に入る。 仔実装用の可搬式ケージや成長抑制剤入りの実装フード(固形式)、トイレ用品等々。 いずれも災害に備えて必要だと、家族の反対を押し切って過去に買い求めた実装石の飼育用品ものだった。 中年女性の脳裏に苦い思い出が蘇る。 この家では、かつて一匹の仔実装が飼われていた。名前はチーコ。 暇を持て余した専業主婦の中年女性が、テレビの紹介番組を見て飼おうと言い出したのが切っ掛けだった。 夫も子供達も揃って難色を示したが、中年女性は私がきちんと世話をするからと強引に押し切った。 中年女性の手によってさんざん甘やかされたチーコは、ものの見事に糞蟲化して、昼夜を問わずうるさく鳴き喚き、所かまわず糞を垂れ、中年女性以外の家族をクソドレイ呼ばわりした。 さすがに堪忍袋の緒が切れた家族は、チーコを保健所送りにするか、チーコを連れて家を出ていくかを中年女性に迫り、中年女性は泣く泣くチーコを保健所へと送った。 子供達とは違い、最後までママ、ママと甘えてくれていたチーコ。 保健所に引き渡した際の、不思議そうに自分を見上げていた顔が、今も忘れられない。 きっとテーコは、炭酸ガスを吸わされ、苦しみ抜いて窒息死した後、焼却処分されてしまったことだろう。 中年女性は踏ん切りをつけるためか、ケージや実装フード等々をゴミ袋へと詰め始める。 チーコへの罪の意識からか、その瞳からは涙が溢れていた。 「お姉さま、そのリュックは何です?」 「これはね、大きな地震とかがあった時に困らないよう備えておくためのものよ」 物珍しそうな常磐に説明がてら、防災リュックの中身を一つずつ確認してゆく。 ラジオ内蔵型の懐中電灯、アルコールや絆創膏といった救急用品、アルミ式のブランケッ ト、幾らかの現金等々。 そして・・・。 「あっ・・・」 手が止まる。防災リュックから出てきたのは、クリアケースに入れられた家族写真だった。 私の就職祝いに撮った写真の中では、両親が相変わらず優しい笑顔を浮かべている。 「この人達は、お姉さまの、パパさんとママさん、です?」 「ええ、そうよ・・・」 常磐の問いに、視界が滲みかけた目をこっそりと拭う。 私と常磐の写真も、一緒に入れておかないとな、などと思いながら。 ----------------------------------------------------------------------- 9月3日はグミの日 実翠石の常磐と共に夕食の材料を商店街で買い込んだ帰り道。 「むぅ・・・」 私の隣を歩く常磐は、グミの日だからとおまけして貰ったお菓子と私の胸の辺りを交互に見ていた。 若干頬が赤く見えるのは、夕日のせいだろうか? 「常磐?どうしたの?」 私の問いに、常磐は妙に恥ずかしそうに答える。 「その・・・、さっきお店で、グミの硬さは乳首と同じなんだよ、ってお話が聞こえてきたから、ちょっと気になっちゃったです・・・」 常磐の頬がはほんのり赤みを増すのを見て、私の中に悪戯心が芽生えた。 「じゃあ・・・、試して、みる?」 口の端で小さく笑みを作り、自身の胸の先をちょんちょんとつついて見せると、常磐は真っ赤になって声を上げる。 「お、お姉さま!?」 「ごめんごめん、冗談よ」 とちょっぴり舌を出して言うと、常磐は可愛らしく頬を膨らませる。 「もう、お姉さま!からかったらダメですぅ!」 口では詫びを入れながらも、怒った顔も愛らしいな、などと思う私だった。 一方、とあるダンボールハウスにて。 『今日は大収穫だったデスゥ!』 『ママ、早くアマアマほしいレチュ!』 『そうレチ!早くよこせレチュッ!』 満面の笑みを浮かべる野良実装の手にはグミの袋があり、二匹の親指実装が早く食べさせろと甘ったれた鳴き声を上げる。 今朝はゴミ捨て場での餌探しが不良に終わったため、腹を空かせた仔のために商店街まで出張ったのだが、その甲斐あってかたまたま出会った愛護派から、グミをー袋恵んでもらえたのだ。 野良実装は、商店街で偶然見かけたデキソコナイのヒトモドキ、あの忌まわしい肉人形の実翠石が、自身と同じくグミの袋を貰っていたのを思い出す。 デププ、どうせあのオナホ人形はニンゲンに必死に媚びて恵んでもらったに違いないデス! ワタシのように高貴で美しければニンゲンが進んでウマウマを献上してくれるんデス! 幸せ回路故か、自身に都合の良い妄想の中で実翠石への優越感に浸りながら、野良実装は可愛い我が仔達にグミを配り、家族仲良く口に含んだ。 『おいしいレチュ!アマアマレチュンッ!』 『グニュグニュしておいしいレチュ!ママのおっぱいみたいテチュウ!』 まだ産まれてからさほど日が経っていない親指実装達は、初めて味わう甘味に感激して、プリプリと糞を漏らしながらグミにむしゃぶりつく。 野良実装はそんな親指実装達を窘めることもなく、ただただ笑顔で見つめていた。 その日の夜。 デースカいびきをかいて寝ていた野良実装は、突然乳首に走った痛みに目を覚ます。虫にでも噛まれたかと、寝ぼけた状態で無造作に腕を振るう。 『レチッ!?』 『レベッ!?』 一瞬妙な音が聞こえたような気がしたが、真っ暗なダンボールの中では確認する術もないし、眠気に負けた野良実装にはその意思もなかった。 再びデースカといびきをかいて眠りにつく。 商店街で見かけた実翠石にマラ実装をけしかけて泣き叫ぶ姿を肴にしながら、娘達とスシやステーキを堪能する、そんなしょうもない夢を楽しみながら。 翌朝。 ダンボールの隙間から差し込む朝日の眩しさに目を覚ました野良実装は、自身の腕に何かがべったりと貼り付いていることに気付いた。 汚い赤と緑、そして糞の臭い。 訝しんでいると、ダンボールハウスの壁際に転がる何かが目に入る。 その正体は、半ば潰れ、首をあらぬ方向に曲げている二匹の親指実装の死骸だった。 『デ、デ、デ、デシャァァァァァァッッ!!??』 変わり果てた可愛い我が仔達の死骸に、野良実装は悲鳴を上げる。 野良実装にはどうしてこんな酷いことになったのか皆目見当がつかなかったが、原因は野良実装が親指実装達に与えたグミにあった。 乳離れして間もない親指達は、グミの食感で野良実装の乳首の感触と、そこからにじみ出てくる母乳の味を思い出していた。 グミだけでは腹が膨れなかった親指実装達は、夜中にこっそりと野良実装の乳首に噛みつき、反射的に殴り飛ばされたというわけである。 無論、成体実装の遠慮のない一撃に親指実装の脆弱な身体が耐えられるはずもない。 結果、親指実装達は殴り飛ばされ、ダンボールに叩きつけられた際の全身打撲及び脛骨骨折によりその儚い命を散らせる事となった訳である。 もっとも、ただでさえ儚い親指実装の上に、既に糞蟲気質を発露していたような連中である。 どうせ遠からずろくでもない理由で死んだだろうから、大した違いは無いのかもしれない。 -- 高速メモ帳から送信

| 1 Re: Name:匿名石 2025/10/26-14:06:37 No:00009820[申告] |
| 歪んだ噂によって死神扱いされてんのか…コリャ託児も蔓延って無くならい一端も垣間見れる偏向伝馬力
そして実装共の自滅歳時録の様相を呈している |
| 2 Re: Name:匿名石 2025/10/26-21:27:44 No:00009821[申告] |
| やっぱり噂になるよなあ…「実翠に関わると不幸な目に遭う」ってな |