実翠石との生活Ⅲ 短編まとめ13 ----------------------------------------------------------------------- 虫刺され とある日の夕方すぎ。 実翠石の裏葉は娘の松葉と共に風呂に入っていた。 「さあ、きれいきれいにしましょうです」 「は〜いです」 松葉自慢の美しい黒髪を丁寧に洗い、背中を流してやってから、裏葉は自身の髪と身体を洗い始める。 「ママ、お背中流しますです」 「ありがとう、お願いするです」 スポンジを片手によいしょよいしょと裏葉の背中を擦る松葉に、裏葉は母性に溢れた笑みを浮かべる。 親想いの優しい娘に育ってくれていることに、密かな喜びを覚えているときだった。 「ママ、首のところ、かゆくないです?たくさん虫さんに刺されてるみたいです」 「え?」 首筋に手を当てるが、虫に刺された形跡はない。 だが、鏡で確認すると、確かに首筋には小さく赤い染みが幾つか見てとれた。 「・・・あっ」 一つだけ、心当たりがあった。 昨晩の情事を思い出し、裏葉の頬が羞恥に染まる。 「ママ?」 裏葉の様子にきょとんとする松葉だったが、まだ子供の松葉に本当の事を伝えるわけにもいかない。 「だ、大丈夫です。さあ、身体を冷やさないように、お湯に浸かりましょうです」 裏葉は下腹部に覚えた軽いうずきを身体の泡ごと洗い流して、松葉を後ろ抱きにして湯船に浸かる。 愛してもらえるのは嬉しいし、パパのものにされているという特別な証でもある。 でも、キスマークはやっぱり恥ずかしいな、などと思う裏葉だった。 同じ頃。とある公園にて。 『ママ、身体がかゆすぎテチ!』 『我慢できないテチ!何とかしテチ!』 身体のあちこちを蚊に刺された仔達が、涙目になって母実装に訴える。 『あんまり掻くと良くないデス。我慢するデス』 そういう母実装も、指の無い手で刺された箇所を掻いていた。 ただでさえ暑苦しい上に、昼頃に降った通り雨のせいで、ダンボールハウスの中には湿気が籠もっていた。 それがまた痒みをいや増し、皮膚を膿ませる形となっている。 風雨や外敵から身を守ってくれる大事なダンボールハウスも、このような状況では不快なだけだった。 『せめてお水で洗って欲しいテチ!』 『そうテチ!身体がベトベトで気持ち悪いテチ!』 仔達の懇願にも、母実装は首を縦に振らなかった。 飲み水は貴重だ。 仔達の言う通り与え続ければ、あっという間に無くなってしまう。 とはいえ、仔達をこのままにしておくのもどうかと思えた母実装は、近くの水溜まりでの水浴びならばと妥協した。 『テェェ、汚いお水テチ・・・』 『上澄みのほうを使えばきれいデス。文句いうなデス』 『テチッ!?ちょっと染みるテチ・・・』 泥水に近いが、贅沢は言えない。 仔実装達は虫刺されの跡に水を塗って肌を冷やし、痒みを何とか抑えようとしていた。 母実装は、ふとこの前公園の外で見かけたビッチの実翠石共を思い出した。 どうせあの肉オナホ共のことだ。 飼い主のクソニンゲンに腰を振って媚びて、贅沢な暮らしを享受しているに違いない。 きっとこんな泥水ではなく、噂に聞く温かいお風呂とやらにでも入っているのだろう。 だんだんとイライラしてきた母実装は、半ば八つ当たりするように仔達を強い口調で呼びつけた。 『お前達、そろそろ戻ってもう寝るデス。起きててもお腹が空くだけデス』 『テェェェェ、またご飯なしテチ・・・?』 『昨日も食べてないテチ・・・』 『文句言うなら捨てるデス』 『ご、ごめんなさいテチ・・・』 『我慢するテチ・・・』 しょんぼりとする仔達の様子が、母実装をさらに苛立たせた。 翌早朝。 『マ、ママ、痛い、痛いテチィ・・・!』 『身体が、なんだか変、テチッ・・・!』 仔実装達の助けを求める声に目を覚ました母実装は、娘達の状態に目を丸くした。 仔達は身体を弓なりに反らし、ピクピクと痙攣していた。 呼吸が苦しいのか、ハッハッと短く息を吸っては吐いている。 『お、お前達、どうしたデス!?』 『わ、わかんないテチ・・・』 『く、く、く、くるし・・・テ・・・チ・・・』 母実装には分からなかったが、仔実装達は破傷風に感染していた。 本来ならば実装石がそうそう発症するものではないのだが、体力のない仔実装だったことと、慢性的な栄養不足による免疫力の低下がこのような事態をもたらしていた。 どうしよう、どうすれば・・・と思った母実装だったが、不意に冷静さを取り戻し、仔実装達に冷然と告げた。 『・・・お前達は病気デス。たぶんもう助からないデス』 『テ・・・?』 『テヒュ・・・テヒッ・・・?』 母実装は仔達を抱きかかえてダンボールハウスを出た。 そのままゴミを捨てるように仔達を放り出す。 一度ダンボールハウスの中に戻り、餌取り用のビニール袋を持ち出すと、そのまま仔達には一瞥すらくれずに餌場に向けて歩き出した。 無論娘達のためではなく、自身の餌を確保するためだ。 『マ、ママ・・・、行か・・ない・・でテチ・・・!』 『テヒッ・・・ママ・・・だ、抱っこテ・・・チ・・・』 痛み痙攣する身体で必死に短い腕を伸ばす仔実装達だったが、母実装が振り向くことは一度としてなかった。 ----------------------------------------------------------------------- 土用の丑の日 今日は土用の丑の日、ということで、秋人一家の夕食は鰻丼となった。 「夏バテしないようにしっかり食べてな〜」 「パパ、ありがとうございますです」 「おいしそうです、ありがとうございますです!」 実翠石の裏葉と娘の松葉が浮かべる笑顔に、秋人も笑顔で応える。 「身がふわふわでおいしいです〜♪」 「タレと鰻の脂が口の中で合わさって、お箸がすすむです」 ここ最近は仕事が忙しく、二人とあまり一緒に過ごせなかった罪滅ぼしも兼ねて夕食を鰻にしたのだが、その甲斐があったようだ。 松葉も裏葉も鰻の旨さに舌鼓を打っているのを見て、奮発して良かったと秋人はしみじみ思いながら自身も箸を進める。 鰻の旨さと共に、幸せを噛み締めながら。 松葉を寝かしつけた後。 共にベッドに入った裏葉が腕に抱きついてくる。 「パパ、お休み中はゆっくりできるんです?」 「ああ、仕事が一区切りついたからね。休み中は裏葉達と一緒にいられるよ」 「じゃあ、パパの疲れを癒せるように、松葉と一緒にたくさんパパのお世話をしますです」 「大丈夫。鰻も食べて元気も出たしね」 秋人を慮る裏葉に、秋人は冗談めかして応えた。 「・・・ね、パパ。こっちも、元気になってくれました、です・・・?」 裏葉の手が、秋人の愚息を服の上から優しく撫でさする。 そういえばそっちもご無沙汰だったか、と思った秋人は、苦笑を浮かべながらも裏葉を抱き締めた。 「あっ・・・♥」 裏葉の漏らした小さな声に、期待と歓喜が入り混じる。 二人の夜は、これからが本番だった。 一方、とある公園のダンボールハウスでは。 『テヒュー・・・、テヒィィ・・・』 『あ、あついテチ・・・』 『あ、頭が割れそうテチ・・・』 『デェェェ・・・、お前達、しっかりするデス・・・!』 連日の暑さに負け、熱中症にかかって死にかけている仔実装達を、母実装が懸命に看病していた。 自身も暑さに参りそうなところを、水を飲ませ、汗を拭い、拾ってきた大きめの葉で扇いでやったりと甲斐甲斐しく世話をしていたが、効果は殆ど無い。 ここ数日は餌が取れなかったこともあり、飢えて体力の落ちていた仔実装達は、暑さに耐えられるだけの体力を残していなかったからだ。 『ス、スシ・・・スシが食べたいテチ・・・』 『ステーキ・・・ステーキも欲しいテチ・・・』 『ワタチはコンペイトウが食べたいテチャァ・・・』 うわ言でそんな事を言う我が仔達に、母実装は日中たまたま見かけた忌々しい実翠石共の事を思い出す。 飼い主のクソニンゲンに連れられていたあのダッチワイフの母娘は、この暑さの中でも綺麗な服に身を包んでいた。 飼い主のクソニンゲンが提げていた袋には、きっと美味しい食べ物がたくさん詰まっていたのだろう。 ワタシタチは厳しい生活でこんなにも薄汚れているのに。 ワタシタチには食べる物すら満足に無いのに。 母実装の看病も虚しく、仔実装達は朝を迎えることなくに全滅した。 朝になり、死体となった我が仔達を埋葬しようとダンボールハウスを出た母実装は、自身も酷く空腹だった事を思い出す。 腕に抱いた我が仔達の死体を見た母実装は、たっぷりと逡巡した後、決意した。 『ママはお前達を食べるデス。食べてお前達の分まで生きるデス・・・!』 血涙を流しつつ、痩せ細った我が仔達の死体を貪り喰う母実装を、公園に住まう同族が遠目に見やる。 ああはなりたくないデス、と嘲笑を浮かべながら。 ----------------------------------------------------------------------- ママが起きてこない休日のお話 とある休日の朝。 実翠石の松葉はベッドから起き出すと、手櫛で自慢の黒髪を軽く整えてからリビングへと向かう。 パパとママが作っているだろう朝食のいい匂いに、思わず笑顔がこぼれる。 松葉がキッチンに顔を出すと、父の秋人が一人で料理をしていた。 「パパ、おはようございますです!」 「ああ、おはよう、松葉。よく眠れたかな?」 元気いっぱい挨拶する松葉に、秋人も笑顔で挨拶を返す。 「ママはまだおやすみです?」 「ん?ああ、ママはその、ちょっとお疲れみたいだからね。ゆっくり寝かせてあげようと思ってね」 姿が見えない母の裏葉に松葉が小首を傾げると、秋人は苦笑まじりにそう応えた。 「さあ、冷めない内に食べるとしようか。今日の朝ごはんはフレンチトーストだぞ」 「わーいです♪」 裏葉が起きてきたのは、秋人がそろそろ昼食の準備をしようかと思った頃合いだった。 「お、おはよう・・・ございます、です・・・」 リビングのドアの隙間から、裏葉が顔だけ覗かせる。 「おはよう、裏葉」 「ママ、おはようございますです!」 挨拶を交わすものの、何故か頬を赤く染め、もじもじしてリビングに入って来ようとしない裏葉に、松葉は不思議そうな顔をする。 「ママ?どうしたんです?」 「あ、ぅ・・ ・えっと・・・」 松葉の問いに、裏葉はさらに赤くなって俯いてしまう。 「裏葉、けっこう寝汗をかいてただろう?シャワーを浴びてさっぱりしてきたらどうだい?」 「そ、そうしますです・・・」 秋人の勧めるまま、裏葉はそそくさとその場を後にする。 「ママはこれからお風呂です?それなら、お背中流してあげるです!」 「ああ、いや、ママがお風呂に入っている間に、お昼ご飯の用意をしておこう。松葉、手伝ってくれるかい?」 「あ、はいです!パパのお手伝い、がんばりますです!」 父親に頼られて嬉しいのか、元気よく応じてくれる松葉に、秋人は内心ホッとする。 昨晩互いに激しく求め合った結果、裏葉の首から下は、とてもではないが松葉には見せられない状態になっているだろうから。 所変わって、とある公園のダンボールハウスにて。 『ママ、起きテチ!お腹空いたテチ!』 『とっととご飯よこせテチ!』 『可愛いワタチを飢えさせるなんて役に立たないクソママテチャァ!』 『ママ、プニプニしてレフ〜』 あちこち重傷を負ってぐったりと横たわる母実装を、腹を空かせた仔実装達が口々に詰っている。 ここ二日間まともに食べていないため無理もないとも言えるが、どの仔実装も傷だらけの母を心配すらしていない。 これだけでも、この仔実装達の程度が知れるというものである。 だが、そんな仔達でも母実装からしてみれば可愛い存在なのだろう。 ここ最近餌がろくに確保できなかった母実装は、腹が空いたと泣き喚く仔達のために、昨日の夕方頃に危険を承知で餌の確保に出かけていた。 その際、たまたま見かけた忌まわしい肉穴人形の実翠石の母娘に気を取られていたところを、通りすがりのニンゲンの子供に襲われ、重傷を負ってしまったのだ。 何とか生きて帰ることはできたものの、栄養不足も相まって傷の回復は遅く、今も起き上がることが出来ないでいた。 だが、親の心仔知らずというやつで、仔実装達は口々に母実装の不甲斐なさを罵った。 仔実装達はひとしきり母実装を口汚く罵倒すると、ぐったりと力なく座り込む。 ひどい空腹にもかかわらず、無駄に体力を消耗してしまったからだ。 『お姉ちゃんたち、お腹すいてるレフ?それなら蛆ちゃんみたいにウンチ食べればいいレフ。ウンチおいしいレフ〜』 脳天気な蛆実装の言葉に、仔実装達は苛立ちを募らせる。 普段から糞食を強いられているため、家族の中で蛆実装のみが飢えとは無縁だったが、それすらも仔実装達には腹立たしかった。 母実装の目がないことをいいことに、仔実装達は直接的な手段で鬱憤を晴らすことを選んだ。 『ウンチなんて食べられるわけないテチ!』 『レピャッ!?」 仔実装の一匹が蛆実装を蹴りつける。 それを皮切りに、仔実装達によるリンチが始まった。 『お情けで生かされてるくせに生意気テチ!』 『高貴で美しいワタチがウンチなんて食べるわけないテチ!ふざけんじゃねぇテチィ!』 『レピィィッ!?やめてレフ!いたいレフいたいレフ!』 非力な仔実装連の攻撃とはいえ。それ以上に脆い蛆実装はたちまちアザだらけになってゆく。 そして・・・。 『ウンチ食べるくらいなら蛆ちゃんを食べるレチ!』 『レッ!?レピャアアアアアァッ!?』 耳を齧り取られた蛆実装が悲鳴を上げる。 暴力に酔い箍の外れた仔実装達は、とうとう共喰いに及び始めた。 『ママ、たすけてレフ!ウジちゃんたべられちゃうレフ!!』 蛆実装は必死になって母実装に助けを求めるが、母実装は横になったまま動こうとしない。 こうして哀れな蛆実装は、汚い染みだけを残して姉達の腹に納まることとなった。 蛆実装が食い尽くされるまでには意外なほど時間がかかったが、これは仔実装達が必要以上に蛆実装を痛めつけたためだった。 そして、蛆実装を食べたことで仔実装達の空腹が癒されたかというと、そんなことはなく・・・。 他者への暴力に加え、同族の血肉にも酔った仔実装達は、もう姉妹ですらただの肉としか認識できなくなっていた。 結果、姉妹同士での壮絶な共喰いが始まった。 『お前達も喰ってやるテチャァッ!』 『ワタチのオニクになるのはお前達テチィッ!』 『高貴で美しいワタチのご飯になれることを光栄に思えテヂィィィッ!』 互いに髪を引っ張り、服を引き千切り、手足を噛み千切ろうと暴れ回る。 結果は言うまでもなく、姉妹揃って共倒れとなった。 母実装が目を覚ましたのは昼過ぎ近くになってからだった。 まだ痛む身体に顔をしかめつつ起き上がると、目の前にはボロボロの血塗れになった娘達が、糸の切れた人形のように転がっていた。 蛆実装の姿はどこを探しても見当たらない。 『・・・な、何でデス?何でこんな事になってるんデス・・・?』 そう呟く母実装だったが、頭の片隅ではこの惨状の原因を理解していた。 おそらくここ数日餌が確保できなかったため、空腹に耐えかねた仔達は共喰いに及んだのだろう。 姿が見えない蛆ちゃんは真っ先に食べられてしまったに違いない。 『・・・デェエエエンッ!デェエエェンッ!!』 母実装はたまらず泣き出した。 可愛い我が仔達が死に絶え、この仔達を育てるために費やしてきた今までの苦労が全て無に帰したのだ。 嘆き悲しむのも無理はないと言えた。 もっとも、日々厳しい野良生活故に、餌の確保にばかり注力して、仔への教育が疎かになってしまったのが原因の一つではあるのだけれど。 ----------------------------------------------------------------------- 親指と蛆ちゃん とある休日。 実翠石の松葉は父親の秋人と母親の裏葉と共に公園に遊びに来ていた。 ひとしきり遊具で遊んだ松葉が、ふと何かに気付いて植え込みに向かってしゃがみ込む。 秋人と裏葉がどうしたのかと覗き込むと、松葉の視線の先には蛆実装を抱き締めた親指実装が居た。 親指実装も蛆実装も警戒してか表情が硬かったが、一般的な野良実装のように、いきなり激昂するような真似はしなかった。 「こんにちはです!」 『・・・こ、こんにちはレチ』 『こんにちはレフ』 両親の心配を余所に笑顔で挨拶する松葉に、親指実装と蛆実装も躊躇いがちに挨拶を返す。 「こんなところでどうしたんです?」 『・・・お留守番している間にお姉チャン達がお家で喧嘩を始めたレチ。危ないから喧嘩が終わるまで蛆チャンとお外に逃げてたレチ』 『レフ〜・・・』 俯きがちに応える親指実装に思うところがあっだろう。 「それなら、これで遊びましょうです!」 『ボ、ボールさんレチ!?』 『レフ〜!』 松葉がポケットからビー玉を取り出して遊びに誘うと、親指実装達は瞳を輝かせた。蛆実装は嬉しそうにピコピコと尻尾を揺らしている。 「はいです!」 『レチッ!はいレチッ!』 松葉が指先で優しく転がしたビー玉を、親指実装が身体全体を使ってキャッチし、両手で押し返す。 「はい、どうぞです」 『レフッ!レフ〜!』 親指実装から押し返されたビー玉を摘んだ松葉が蛆実装の鼻先へとビー玉を置いてやると、蛆実装も嬉しそうに顔を押し付けてビー玉を押し返した。 非力な蛆実装がビー玉を押し返してもさして転がりはしなかったが、松葉が指先で親指実装へと転がしてやっていた。 実装石相手にも楽しく遊ぶ松葉だったが、それを見守る秋人も裏葉も眉間に皺を寄せていた。 二人共、実装石にはあまり良い感情を抱いていなかったからだ。 松葉が優しい娘に育ってくれているのは嬉しいが、あまり実装石になど関わってほしくないというのが正直なところだった。 頃合いを見て、裏葉が松葉に声をかける。 「松葉、そろそろお家に帰りましょうです」 「あ、はいです!それじゃあ、ばいばいです〜!」 『ばいばいレチ〜!』 『レフレフ〜!』 手を振る松葉につられてか、親指実装も蛆実装も短い腕を振り返す。 両親の間に挟まり手を繋ぐ松葉に、裏葉がどこかぎこちない笑みを浮かべて言った。 「帰ったら、しっかり手を洗いましょうです」 「は〜いです!」 秋人達は、普段よりほんの少しだけ足早に公園を後にした。 『・・・た、ただいまレチ』 『ただいまレフ・・・』 親指実装が蛆実装を抱いて恐る恐るお家へと戻ると、母実装と姉仔実装二匹が憤怒の形相で睨みつけてきた。 親指実装達が松葉と遊んでいる間に母実装も餌取りから帰ってきていたようだ。 『・・・糞蟲達のお帰りテチ』 吐き捨てるように言う長女に親指実装が困惑する間もなく、次女が親指実装の顔面を殴りつけた。 『レチャッ!?』 『レピャァッ!?』 たまらず倒れる親指実装。腕から落ちた蛆実装も痛みに悲鳴を上げた。 いつもは姉妹喧嘩に厳しいはずの母実装は、親指実装達を睨み付けるだけで止めようとしない。 それどころか、親指実装が耳を疑いたくなるような事を言い始めた。 『ワタシがお前達のためにご飯探しに苦労しているのに、お前達は何故あんな肉穴人形共と楽しそうに遊んでたんデス?』 母実装は苛つきを隠そうともしなかった。 見るだけでも不愉快な実翠石。 あのデキソコナイのヒトモドキに、あろうことかクソニンゲンとの間にこさえたであろう黒髪の娘まで連れているのを見せつけられたのだ。 怒りを抱くなという方が無理な相談だった。 飼い主らしきクソニンゲンが一緒にいなければ母娘共々嬲り殺しにしてやったのに。 『あ、あれはレチャッ!?』 弁明しようと口を開こうとした親指実装の顔面に、長女の足がめり込む。 『言い訳はいらないデス。あんなダッチワイフ共に媚びる奴はどうしようもない糞蟲共デス。糞蟲は間引くデス』 母実装の処刑宣告に、姉仔実装達は嗜虐心に満ちた笑みを浮かべた。 『死ねテチ!死ねテチ!死ねテチ!』 『レピャッ!?レピッ!?レヒィィッ!?』 サッカーボールを蹴るように、次女が何度も蛆実装を蹴りつける。 『や、やめてレチ!蛆チャンは悪くないレチ!』 『お前の相手はワタチテチ』 『レチャァァァァァァァァァァァァァッッ!?』 蛆実装を助けようとした親指実装だったが、長女に耳を囓り取られて激痛に転げ回る。 『そんなに蛆チャンが好きならお前も蛆チャンにしてやるテチ!』 長女はそう言って親指実装を散々に痛めつけてから禿裸にして、その四肢を食い千切った。 その間にも蛆実装は次女に蹴られ続け、口と総排泄孔の双方から血と汚物を溢れさせている。 『う、蛆チャ・・・』 それでも親指実装は蛆実装を助けようと声を上げるが、地面を這うことすら出来ない有様では姉実装達の嘲笑を誘うだけだった。 『そろそろトドメテチ!』 『くたばれテチ!』 長女は親指実装を、次女は蛆実装を抱え上げると、それぞれに見せつけるようにしてその頭部に齧り付いた。 『う、蛆チャレヂッ!?』 『親指お姉チャレピャッ』 互いの頭部が食い千切られるところを目にしながら、親指実装と蛆実装は息絶えた。 忌まわしい肉オナホの実翠石を目にしてむかっ腹を立てていた母実装も、親指実装達の無惨な死に様に多少は溜飲が下がったのだろう。 長女達に親指実装達の死骸を残さず食べ切るように言い伝えると、ゴロリと横になった。 今日の所は糞蟲が間引けて良しとするデス。 明日は誰かニンゲンを捕まえて飼い実装にしてもらうデス。 あんな媚びるしか能がない卑しい肉人形でも飼いになれてるんデス。 高貴で美しいワタシタチなら楽勝で飼いになれるデス。 翌日、飼い実装になってやると道行く人々に居丈高に絡み出した母実装達は、やんちゃな子供達に見つかって散々に足蹴にされた挙げ句、 噴霧式コロリをたっぷりと浴びせられて全滅した。 -- 高速メモ帳から送信

| 1 Re: Name:匿名石 2025/10/19-19:28:41 No:00009819[申告] |
| 今際の際にもスシステーキか…最早ファンタジーや夢想ですらない概念無きお題目だな
そして最後の親指いびりに幸福になれない諸々が煮詰められている感がある |