とても清潔で悪臭もしない実装石が、口に入れた料理の美味に表情豊かに歓喜の声を上げた。 「デデェ~!おいしいデスゥ~!」 「いっぱい食べるんだぞ~!テチコ!」 ここはファミレス。市民の食の憩いの場。 …… …… 「ねえチーフゥ!チーフゥ!あんなの放置していいんですかッ?」 カウンターと厨房は緊張感の強い無言だが、店内監視カメラを前にするバックヤードは混沌の様相を見せていた。 実装連れの客が来店するなど想定外。 接客担当がやんわりと断り損ねた事でそいつは店内に入り込んでしまった。 『実装石など飲食店にあってはならない』 実装石が取り立てて嫌いというほどの思想はないが、店員誰もがその想いを共通して持っていた。 一般的なイメージとして実装石は汚らしいものだから以上の理由はない。 「緑色の異物」がデスデス言いながら飼い主とニコニコと食事をしている光景は好ましくない。 ゆえに若きバイトが声を上げる。 今からでも追い出そう!と。 …… …… ここはファミレスとはいえ大資本系ではなく食事は手作りで供される。 ゆえに、厨房担当が苦虫を嚙み潰したような顔でいる。 先ほど己が作った食事を実装石が口にしたのを目にした時には情けない声をあげてしまった。 丹精込めて作るメシはあくまで人間の為のものの筈なのに……! 「おいしいデス、ご主人様だーいすきデス!」 にっこり笑顔にお耳をぴこぴことさせながら、口の周りを拭いてペコペコと何度もご主人様へ頭を下げて感謝を伝える。 首輪に搭載されたリアルタイム翻訳スピーカーが鳴き声を媚びたような甘ったるい人間の女声に変換している。 実装石はかなり清潔に保たれているし、悪臭もしない、マナーもよろしい。 しかし実装石なのでダメだ、とにかくダメとしか言いようがない。 いくら清潔でも市民プールにネコを連れてきて同伴させて泳ぐことは普通しない。 いくら躾がなっていてもスーパー銭湯に犬を連れ込んで一緒に入浴しようなど普通しない。 そういった類の、単なる常識の話だった。 「ッ!チーフッ!」バックヤードの盛り上がりもいよいよ。 「騒ぐなよ、アイツが食ったデザートに使ったソースにアレ入ってるから、アイツはそろそろ『退店』してくれるだろうさ、表の連中にも伝えてこい」 ハッとするバックヤード店員陣、 全国の農家から直接仕入れる作物の中にそれはあり、メニュー表の素材品目にもその果実の名が記載されていた! 「……かぼすエキス!」 その一言にバックヤード店員全員の顔が明るくなった。 かぼす生産量ナンバーワン都道府県、そこがどこかは、よく知られた事だった。 「ああいう客は後処理が大変だから……退店してもその後が厄介なんだよなぁ」 チーフは独り言ちて舌打ちをした。 …… …… 「デアッ」 「テチコどうした!?」 突然喉を抑えてぶっ倒れた実装石に飼い主が慌てる、他の素材に混ざっていたので薄まり効果が出るのが遅れたがしっかりとその効能が実装石の肉体を蝕む。 嘔吐で体内大分を追い出そうにも、既に大分は肉に染み込み喉から糞袋の上部が綺麗に焼失していたために嘔吐さえできないようだった。 少量ゆえ即死こそしないものの大分は実装にとって猛毒だ、テチコは血も吐けずにゴロンゴロンと転がって目を回す。 「デオッ、デスッデッ!!」 「しゃあっ」 のたうつテチコをチラリと見ている厨房の店員は見られないようにしつつも、実装になぜか起きた苦しみに喜び、また小ガッツポーズを決める。 「あああ!店員さんちょっと来て!ウチのテチコが大変なんです!」 涙目の飼い主が近くを通っていた店員を呼び止める! 「はあ。はい、ただいま」 …… …… 「お話、お店側からも聴いたよ、あそこは国産素材謳ってて、かぼすもメニュー表だかの後ろに記載あったんだよね?」 「は、はい……でも実装石に危険って知られてる物が入ったものを実装石に出すなんて、警告の一つくらい!」 「そこまで。そうはいっても人間のお店は人間が食べるものの安全しか確保してないし、そんな義務も義理もないよ、人間の為のお店だもの」 「でもぉ!」 「かぼすは実装警戒食材のひとつな訳だし、警戒すべきは君だったんじゃないかなあ」 かかりつけらしい実装医が呆れ気味にテチコの飼い主へ諭すような口調で説明する。 過失があるのは飼い主側で、店側を訴えるのは厳しいという遠回しのメッセージ。 口調の慣れからは彼が起こすこういった出来事が一度や二度でないことが伺えた。 「デーデー」 テチコは大分が身体に回りすぎ、涎を垂らして虚空に鳴く廃実装になっている。 全体の緩慢な動作に対して耳が異常痙攣を起こしてピクピクと素早く動き続けているのがグロテスクだ。 表情という概念がなくなって、だらんと垂れた顔の筋肉。 首に提げられたロケット・ペンダントに入っている、飼い主とのツーショットを映した写真との無残な対比。 それが失われた知性を偲ばせて、まったくの律を失った顔面は、常人が目を逸らさずにいられない面を作り出している。 …… …… 「ちくしょう、なんでこんなことになっちまったんだ……!」 実装医院からの帰り、テチコの飼い主は嘆いた。 彼の持つ実装おでかけケージの中では、テチコがクソをブリブリと漏らしている。 下半身では糞を、上半身では涎と鼻水に垂らす。 ケージは愛護派仕様の商品である為、実装石にかかるストレスを考慮されて密閉が十分な構造ではなかった。 ゆえに周囲の人間が悪臭のする根源へ冷たい目線を突き刺し続けている。 当のテチコはといえば、めちゃくちゃに意思なく振り回す手で汚液を塗り広げていた。 糞の緑と鼻水の黄色とよだれの半透明が掻きまわされて出来上がる、不快な色合いの泡立つ混合液。 「オエェ、デス、デー……オエェ…」 不衛生でとても臭い実装石が、たまたま口に入った混合液の不味さに表情を変えず呻いた。 終わり
1 Re: Name:匿名石 2025/04/15-23:50:11 No:00009609[申告] |
>しゃあっ
実スポ「愛護派屈辱」「大分県産で脱糞KO!」「バックヤードで動画を笑われる」 >なんでこんなことになっちまったんだ……! 怒らないでくださいね ペットに人間の料理食わせるなんて バxみたいじゃないですか |
2 Re: Name:匿名石 2025/04/16-04:05:42 No:00009610[申告] |
即死はしない=後遺症で地獄の苦しみで廃実装化って事か
外食産業は積極的に大分食材を取り入れるべきだね まあこの愛護派は一生治らなそうな性格していそうだが |