ある、今にも雨が降り出しそうな曇りの日の夕方のこと…。 「あぁ!僕のミニカーが!」 友達の家からの帰り道、お気に入りのミニカーを持って走っていたとしあき君は、 つまづいた拍子にミニカーを道路脇の側溝の、格子状の部分から落としてしまいました。 格子は狭いので手は入らないし、格子を持ち上げることもできません。 としあき君が泣いていると、野良実装石が通りかかりました。 『…テス?』 それは親元から独り立ちしたばかりの中実装でした。 親が元飼いで人間についての話を聞いていたこともあり、 人間に対して好意を持っていた野良実装は、としあき君に話しかけました。 『テス、テェス?』 「え…何、実装石?」 リンガルがないので言葉は分かりませんでしたが、 その実装石が自分のことを心配しているのはとしあき君にも伝わりました。 「僕のミニカーが、ほら、この下に落ちちゃったんだ」 『テェェ…』 野良実装は格子の隙間から手を入れてみましたが、もちろん届きません。 続いて野良実装は、きょろきょろと辺りを見回し始めました。 そして、近くに側溝の蓋がない部分を見つけました。 『テス!』 野良実装はワタシに任せろとばかりに自分の胸をポンと叩いて、 側溝に降りようとしました。 簡単に降りられる高さではなく、野良実装は慎重に足を降ろし、側溝の中に入ります。 そして、蓋の下へと這い進んでいきました…。 「大丈夫かなあ…」 としあき君が心配そうに待っていると…。 『テステス!』 野良実装がミニカーを拾い上げ、格子の隙間からこちらに差し出してくれたのです! としあき君はそれを受け取ると、 「ありがとう!お礼にこれ上げるね!」 と、ポケットに入っていた飴玉を野良実装の手に握らせ、 何度もお礼を言いながら、嬉しそうに走り去っていきました。 『テステスゥ…テッスゥ~ン♪』 としあき君の様子に野良実装も嬉しくなります。 そして飴玉を口に入れ、その甘さに幸せに包まれました。 すっかり飴玉を舐めてしまうと、野良実装は地上に戻ろうとしました。 …が、段差が高すぎて上がれません。 『テッ!?テェェッ!?』 慎重にやれば降りることは可能でしたが、上ることはできない…。 中実装にとってはそんなギリギリの深さの側溝だったのです。 やがて、雨が降ってきました…。 『テェェェッ!? テェェェス!テェェェェスッ!』 雨は一気に勢いを増し、助けを求める野良実装の鳴き声をかき消します。 側溝に水が流れ込んできました…。 『テシャアアアアアアアアッ!?テジャアアアアアアアアァァァァッ!? …ハプッ!ハプッ!…ガボッ、ガブァァッ!』 口の高さまで水かさが増してきました。 泳ぐことのできない実装石の体では、どうすることもできません。 『がぼがぼがぼ…』 野良実装は両手を上に伸ばし、助けを求めるようにイゴイゴさせながら、 水の中に沈んでいきました…。 * 翌日、としあき君は再びその道を通りました。 「昨日は凄い雨だったなあ。側溝にまだ水が溜まってるよ」 側溝を覗き込むとしあき君の目に、水の中に沈んでいる実装石が映りました。 ここは、昨日実装石にミニカーを拾ってもらった場所のすぐ近くでしたが、 大雨の後に野良実装石が死んでいることは珍しくなかったので…。 「そう言えばアイツどうしたかな…無事だといいけど」 …目の前の死骸がその実装石だとは、気づきませんでした。 ~終~

| 1 Re: Name:匿名石 2023/08/09-12:41:13 No:00007743[申告] |
| ハートフルな話テチ |
| 2 Re: Name:匿名石 2023/08/10-01:03:38 No:00007750[申告] |
| としあき君、降りれたんだから登れると思ってしまったんだな
飴に惚ける前に登るのに難儀する姿を見せれればよかったね |
| 3 Re: Name:匿名石 2023/08/14-21:58:36 No:00007779[申告] |
| 人助けなんてして結果損するのは現代社会の縮図で好き |
| 4 Re: Name:匿名石 2026/03/22-03:52:55 No:00009904[申告] |
| 糞蟲なんてまぁ、そんなもんよな |