タイトル:【虐】 糞蟲矯正施設
ファイル:【虐】糞蟲矯正施設.txt
作者:ジグソウ石 総投稿数:42 総ダウンロード数:2907 レス数:4
初投稿日時:2016/09/21-21:41:55修正日時:2016/09/21-21:41:55
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 ※人間と実装石の会話は全てリンガル使用済みとしてお読みください。

実装石という生物は、実に卑しい。
どんなに善良そうな個体から産まれた者であっても、自分こそがこの世で最も偉く、最も尊く、最も優先されて然るべきだと考える糞蟲性を生来備えているのだ。
また、どんなに善良そうに見えている個体であっても、それは親や調教師による厳しい躾によってそれらしく振舞えるようになっているというだけで、
少し甘やかされたり理不尽な仕打ちを受けたりすれば容易くその本性をむき出しにする。

その本性を知って一番がっかりするのが、実装石という生物について無知なままペットにしようとするライト層である。
実装石を他の愛玩動物と同じように考え、ただ愛らしい姿を見せてくれるだけの生物と思い込んで飼い始めた挙句、糞蟲化した実装石に失望し、傷つくのだ。

リンガルを使わずに飼う人間はまだマシなほうかもしれない。
意思の疎通ができないため、糞蟲化した実装石の罵詈雑言に腹を立てることもなく、子供の癇癪と同じように大人の対応で受け流すからだ。
激昂して糞を投げてくるような酷い糞蟲に対しては犬猫と同じ程度には躾をしようとするし、それでも手がつけられない場合などには眉をひそめ、あっさりと保健所送りにする冷徹さも持ち合わせている人間が多い。

いっそのこと実装石がどれほど糞蟲化しようが肯定的にしか受け取らない愛“誤”派にでもなれば幸せなのかもしれないが、実はそういう人間は意外にも少ない。
実装石を心底嫌いになって駆除派になる人間もそこそこいるが、一番多いのは『もう飼うのは嫌だけど自分で殺すこともできないし、保健所に連れていくのも可哀想』という、優柔不断で欺瞞に満ちた偽善者なのだ。

実のところ、こういった人間の存在こそが公園に野良実装というものを蔓延らせている原因であった。
飼えない、でも自分の手では殺したくないという欺瞞から、彼らはペットだった実装石を公園に捨てる。
それが野生化し、野良実装の数を常に一定数保つのだ。
行政がいくら駆除を実施しても公園から野良実装が完全に駆逐されることがないのはこのためである。

一般的に飼い実装というものは野生では弱く、捨てられてすぐに他の野良実装からリンチに遭って殺されるというイメージがあるが、実はそうなるのはまだ糞蟲化していない、ただ飼い主の都合で捨てられただけの
気弱な個体に限るということはあまり知られてはいない。

実際のところ実装石という生物には野良にも飼いにも戦闘力にさほどの差はなく、争いにおいてはただ相手よりも勢いのあるほう、すなわち傲慢で自信のあるほうが勝つ場合が多い。
つまり糞蟲ほど強いということなので、糞蟲化して捨てられた飼い実装が栄養状態の悪い野良実装を返り討ちにして、たくましく公園に根を下ろすということも多々あるのだ。

それどころか駆除によって実装石が駆逐された公園に捨てられた飼い実装が一粒種となり、繁殖して再び公園を野良実装の楽園にしたなどという例も、人間が把握していないだけで実際にはかなりあった。

そうやって常に存在し続ける野良実装というものを公園から完全に撲滅するため、政府はある施設を立ち上げた。
それは糞蟲化した飼い実装を無料で預かり、厳しい調教を加え直して再び飼い主と共に暮らせるようにするための施設—————糞蟲矯正施設である。

ここならば躾に失敗した糞蟲を無料で矯正してもらえるうえ、万が一厳しい調教に耐えられずにそいつが死んでしまったとしても、『自分が殺したのではなく、不幸な事故だった』という体裁を保つことができるため、
飼い主はそういった“事故”の可能性についても了承済みで入所させるのだ。

そして今日もまた、一匹の糞蟲がこの施設に収監される。



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ミドリが目を覚ますと、そこは薄暗い部屋だった。
いや、部屋というよりも広い水槽の中だ。

ミドリが自分のいる場所を壁に囲まれた部屋だと勘違いしたのは、周囲を取り囲んでいるガラスがあまりにも薄汚れていて、ガラスと認識できなかったからである。
まるでザリガニを飼っていた水槽を炎天下に数週間放置して、水とザリガニの死骸を捨てただけで洗っていないという感じだ。

しかも臭い。
毎日風呂に入れてもらっている飼い実装であろうと、実装石という生物自体がなんとも形容し難いケミカル臭—————実装臭とでもいうべきものを放っているので、実装石を飼っている場所というのは独特の臭いがするものだが、
それに加えて実装石の糞の臭いが何年にも亘って染み付いたような悪臭がする。

飼い実装として散々甘やかされ、清潔で贅沢な暮らしに慣れたミドリにとってこの状況は耐えられるものではなかった。

「な、なんデスここは? おいドレイニンゲン! ドレイニンゲンはどこに行ったデスゥゥ!!!」

ミドリは飼い主を罵倒しつつ、その行方を捜す。
だが声は水槽内に響き渡るばかりで、それに答えるものは誰もいない。
憤怒したミドリが地団太を踏みながらさらにデギャアデジャアと騒いでいると、

「うるさいデスゥ……」

ミドリがいる水槽の隣から声がした。
自分以外の者がいることに気付いたミドリが汚れた壁を手でぬぐってみると、隣にも同じように薄汚れた大きな水槽があり、その中には薄汚れた一匹の実装石がいた。

「デデッ……おい、そこのお前! ここは一体どこデスッ! なんでワタシがこんな臭くて汚いところに入れられているデスゥ!」

ミドリが激しくまくし立てるが、薄汚れた実装石はまるげ興味がないとでも言いたげな様子で、力なく俯いて座り込んでいるだけだ。

「答えろデシャァァ!」

「ギャアギャア吠えなくてもすぐに分かるデス……」

薄汚れた実装石がそう呟いた次の瞬間、天井に吊るされていた裸電球が点灯し、部屋を明るく照らし出した。

「デヒャァッ!?」

急な明るさに目が眩み、ミドリが悲鳴を上げる。
しばらくして目が慣れてきたミドリが顔を上げてみると、そこには一人の人間が立っていた。

ミドリの目の前の人間は、アメリカの警察官のような制服に身を包み、サングラスをかけていて表情は読み取れない。
そしてこれまたアメリカ映画に出てくる悪徳警官さながらにくっちゃくっちゃとガムを噛み、時折ガム風船を膨らませている。
本物と違うのは、右手に持ったものを左手に振り下ろし、ぺしぺしと打ち付けているそれが警棒ではなくプラスチック製の定規ということだけだ。

ただならぬ雰囲気に一瞬呑まれそうになったが、すでに糞蟲化しているミドリの辞書からは遠慮とか空気を読むという言葉がページごと破り捨てられている。

「おいクソニンゲン! ここは一体どこデスゥ!? さっさとワタシをおウチに帰さないと、ワタシのドレイニンゲンがオマエをブッコロすデシャァァ!」

そうミドリが吠えた瞬間、男は一言「ポマード」と呟いた。
そして次の瞬間、

 ————— バシィン!!!!! —————

「デギャァッ!!!?」

風船が破裂するかのような音とともに、ミドリは水槽の壁に叩きつけられた。
悪徳警官風の男が、持っていた定規でミドリの頬を張り飛ばしたのだ。

ミドリは頬を押さえながら転げ回り、盛大にパンコンした。
だが、何が起こったのかは全く分からない。
いきなり頬に鋭い痛み—————いや、熱さが出現したのだ。
今まで飼い主に手を上げられた経験すらないミドリには、最初はそれが人間によって与えられた痛みであることすら理解することができなかった。

男は頭巾を摘み、ミドリをさらに宙に吊り上げた。
そして再び「ポマード」と呟くと—————

 ————— ビチィッ!!!! —————

裏ビンタのようにして、さっき打ったのとは逆の頬をもう一発定規で張る。

「デビャァアッ!!!?」

再び頬に生まれる激しい痛み。
それでミドリはようやく気付いた。
こいつだ—————目の前にいるこの人間が、長い板のような棒で自分を叩いたのだ。

「な、なにをしやがるデジャァァッ! デギャッ! デギュギァァッッ!?」

ミドリは怒りに我を忘れ、もはや意味のある言葉を発することができていない。
男はそんなミドリを水槽の床に下ろすと、またも「ポマード」と呟く。
そして定規を振りかぶって—————

 ————— バシィ!!!!! —————

打ち据える。

 ————— ビシィ! バシィ! ビチィッ! バキッ! ズバシィ! バシッ! バシッ! ベシッ! ビキッ! ベキィ! —————

打つ、打つ、打つ、打つ、打つ。
広い部分で、狭い部分で、先のほうで、根元のほうで。
仮面ラ○ダー響鬼でもここまでバシバシ叩かないだろうというぐらい滅多打ちにする。

しかもその一撃一撃はただの力任せではなく、広い部分で打つときは十分にスナップを効かせて鞭で叩くようなダメージを与え、細い部分で打ち据える場合は骨こそ折れるものの、
手足そのものが切断されるような裂傷にはならないよう、力を絶妙にコントロールしたものだった。

「デギャッ!? デベァッ!! ブビャァ! デベェッ!! ギェェッ!!!」

わずか十数秒の間にミドリは全身あちこちの皮膚が赤く、そして青く腫れ上がり、手足はバキバキに骨折してまともに動くことができなくなっていた。
逆に痛みのせいで頭は澄み渡っていく。
そして、ミドリは思い出した。

この痛みには覚えがある。
(あくまで実装石にとって)遠い昔、自分が実装ショップに並べられる前に散々味わった痛み。
調教師という名の悪魔によって何度も何度も、肉体ではなく偽石=魂に刻まれるまで味わわされた痛みだ。
脳よりも先に本能が恐怖を思い出し、ミドリはガタガタと震えだした。

男はただ「デヒュー……デヒュー……」と虫の息で震えるミドリを見下すような視線を落とすと、その目の前にただ一粒の実装フード(味は最悪だが活性剤を含有し、怪我の回復には最適なもの)を置いてその場を離れ、
隣の水槽にいる薄汚い実装石(名をグリンという)には最もランクの低い安物フードを必要最少限だけ与えた。

グリンは決してがっついたりはせず、終始顔を上げずにそのフードをカリカリと齧って平らげる。
そして食べ終わると土下座するようなポーズをとったままガタガタと震え、男に頭を垂れ続けていた。

男はそれを確認すると、明かりを薄暗い保安灯に切り替えて絵屋を出て行った。
グリンはそれを確認するとようやく顔を上げ、ほっとしたような顔で胸を撫で下ろし、そのまま眠りについた。



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翌朝—————といっても、この部屋には窓がないので時間を知ることはできない。

グリンが目を覚ますと、隣の水槽にいるミドリはまだ昨日と同じ体勢のまま蹲っていた。
目の前に置かれた実装フードもそのままで、見た目では眠っているのか失神しているのか分からない。

「おい、起きろデス。ニンゲンさんが来る前にさっさとそのフードを食べてしまうデス。そうしないと……」

グリンがそこまで言いかけたとき、部屋の扉が開く音がした。

「デヒッ!?」

部屋に入ってきた悪徳警官のような男は、ミドリが昨日の体勢のままフードすら食べられない状態であることを見てとると、ミドリの前に置かれていたフードを傍にあったゴミ箱にぽいと投げ捨てた。
そして懐から緑の液体が入った注射器を取り出し、またも一言「ポマード」と呟くと、それをミドリの体に突き刺した。

「デギ……」

針を乱暴に刺された痛みでミドリが覚醒し、うめき声を上げる。
男が注射したのは、ほぼ原液に近い実装活性剤だった。

「デアァァァァァァァ……ァァァァァ……?」

活性剤の力によって、ミドリのダメージがみるみるうちに回復していく。
男はそれを確認すると、黙って部屋を出て行った。



数時間後、男は再び部屋を訪れた。
その手には、最低ランクの実装フードが少量盛られた餌皿を二つ持っている。
男はそれをグリンとミドリの前に置くと、あごをしゃくって食べるように促した。

グリンは昨日と同じように、男と目を合わせないよう遠慮がちに食べる。
だが、全身の傷を回復させるのに偽石力を消耗しまくったうえ、昨日から何も食べていないミドリには何かを考える余裕などない。
ただ犬のように這いつくばり、目の前のフードに齧りついた。
しかし—————

「ブベェッ! な、なんデスこのクソマズイゴハンは!? コウキなワタシがこんなもん食べられるかデス!」

それを聞いたグリンは思わず「あ、このバカ」という顔をした。
慌てて男のほうを見ると、男はミドリの前に仁王立ちしている。
そして男はミドリの前髪をほんの数本掴むと、一言「ポマード」と呟いてからミドリの前髪をぶちりと引きちぎった。

「デ、デギャァァッ!? な、なにをするデスゥーッ! 美しいワタシのカミのケを……」

ミドリが「美しい」という言葉を口にした瞬間、男は再び「ポマード」と呟き、今度はミドリの服についているエプロンを引きちぎった。

「デェェーッ!?」

男は引きちぎったエプロンをさらに細かく、ビリビリに引き裂くと、それを茫然と見ているミドリの頭の上に降らせた。

「ど、どうしてデス……なんでワタシがこんな目に遭わないといけないんデス……」

男は答えない。

「オマエは一体なんなんデスッ! ニンゲンはみんなワタシのドレイのはずデス! さっさとワタシの前にウマウマのゴハンとコンペイトウを持ってきやがれデシャァァ!!!」

昨日あれだけの目に遭ったにもかかわらず、ミドリの態度は一向に改まらない。
とはいえ、ミドリに限らず糞蟲化した実装石とはこういうものなのだ。

ミドリが暴言を吐き終わった途端、男はお決まりの「ポマード」という台詞とともにミドリの頭を両脇から鷲掴みにして、左右から力を込めはじめた。
当然、ウエハースよりも脆いといわれる実装石の頭蓋骨はミシミシと軋む。

「デギャァァァァァッ!?」

そのうち歪んだ眼窩から両目玉がぽんと飛び出し、視神経だけで繋がった眼球はアメリカンクラッカーのようにぶらんぶらんと垂れ下がった。
さらに、

 ————— ぶんぶんぶんぶんぶんぶん……………! —————

「デェェッ!? デェッ!? デゲェァァーーーーーーッ!?」

男はミドリの頭をぶんぶんと激しくシェイクする。
左右に、そして前後に。

「デゲェェェ………ゲロェップ……………ゲオェェェェェ………………」

目が垂れ下がっているせいで視界はどこを向いているやら分からず、さらに頭蓋骨が砕けて用を成さなくなった頭の内壁に脳を何度も打ち付けられ、ミドリは空の糞袋から胃液だけをゲロゲロと吐き出し続けた。
要は激しい乗り物酔いと同じ状態だ。
いくら腹が減っていても、こんなことをされたら気持ち悪くてモノを口にするなどできようはずもない。
男は薄汚い実装石のほうをちらりと見やり、きちんとフードを残さず食べたことを確認すると、ミドリの目玉を眼窩に押し込んで戻すというだけの治療を施し、ミドリが残したフードを回収して部屋を出て行った。



さらに数時間後、男が再び部屋を訪れた。
時間的には夕食時なのだろう。

男が持っているのは、またも二皿の実装フード。
グリンのほうは新たに皿に盛ったものだが、ミドリの皿に盛られているのは先ほどの残りだ。

これまた先ほどと同じように、グリンのほうは顔を伏せたまま遠慮がちにフードを食べる。
そしてミドリはというと、砕けた頭の骨は朝に注射された活性剤がまだ効いていたのか回復していたが、そのために偽石力を消耗しすぎてげっそりとやせ細っていた。
しかも丸一日半は何も食べていないため、肉体的にはもはや限界に近い。

仕方なく、ミドリは用意された最低ランクの実装フードを食べることにした。
ずるずると体を引きずりながら餌皿まで這いずってゆき、皿の窪みに頭を突っ込むようにしてフードを貪った。

「デェェ……マズいデス………どうしてワタシがこんなものを食べなくちゃいけないデスゥ……………」

最低ランクの実装フードというのは、成分の多くが実装石の糞を練り込んだもので出来ている。
実装石のためではなく取り扱う人間のために一応消毒はしてあるが、栄養面においてはお茶でいえば出涸らしに等しく、味ときたらまさに糞と何ら変わりない。
飼い実装として贅沢の限りを尽くしてきたミドリが耐えられるような味ではなかった。
だが、それを見ていたグリンのミドリを憐れむような目は、みすぼらしい食事をさせられていることに対してのものではなかった。
ミドリの真上に、男の手が迫っていたのだ。

男がミドリの頭巾を掴み、宙に持ち上げる。

「デェェッ? な、何をするデスゥ!? もうやめろデスゥゥー!」

男は叫ぶミドリを無視して、懐からラジオペンチを取り出す。
そして「ポマード」と呟くと、それをミドリの口の中に突っ込み、舌を摘んで引っ張り出した。

「レビャァァーッ!?」

まるで蛆実装のように叫ぶミドリ。
男はさらにナイフを取り出すと、水槽のあるテーブルに置かれていたアルコールランプに火をつけ、ナイフの刃を炙りはじめた。
そしてナイフが十分に熱くなったところで、ペンチで吊り上げたミドリの舌を根元から焼き切った。

「レベャァァァーーーッ!!!!!」

水槽の床にべしゃりと叩きつけられたミドリは今食べたばかりのものを全て糞としてパンツの中にひり出し、口を押さえて転げ回る。
それを見た男はニヤニヤとした笑みを浮かべながら、まだフードの残ったミドリの餌皿と空になったもう一匹の餌皿を回収して部屋を出て行った。



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翌日の朝、悪臭漂う水槽の中に香ばしい匂いが漂いはじめた。

目を覚ましたミドリとグリンが何事かと顔を上げると、そこには信じられない光景があった。
グリンの餌皿に盛られていたのは今までと同じ最低ランクのフードだったが、ミドリの目の前に置かれた餌皿には、実装石にとっての一口サイズにカットされたステーキとコンペイトウが盛られていたのだ。
焼きたてのステーキの匂いに、グリンも思わずじゅるりと涎を垂らした。

「べェェェッ!? フテーキ(ステーキ)デフッ! コンフェイフォウ(コンペイトウ)ブェフッ! ふぉ、ふぉれほそ(これこそ)ワタヒにふふぁわひいはぶぇもも(私に相応しい食べ物)ベフゥ!」

舌を焼き切られたため、まともに発音できないミドリが嬌声を上げて餌皿にダイブし、ステーキとコンペイトウを一緒くたにガツガツと貪り食った。
そんな食べ方をすれば逆にマズいのではないかとも思えるのだが、その心配はなかった。

「ブェ………あ、あぎがひない(味がしない)ベフ………へっはく(せっかく)フヘーキほコンフェイフォウばあふふぉひ(ステーキとコンペイトウがあるのに)………べんべん(全然)おいひくないブェフゥ!」

ミドリは両目から血の涙を流し、床をバンバンと叩いて悔しがる。
味を感じるための舌が焼き切られているのだから、味がしないのは当然といえば当然だ。

「どうせ味が分からないなら、ワタシによこせばいいデスゥ……」

自分の餌皿に盛られたのがいつもの実装フードだったグリンは、思わずぼそりと呟いてしまった。
そして思わず口に手を当て、「しまった!」という顔をしたが、時すでに遅かった。
グリンの目の前には、悪徳警官風の男が佇んでいた。

「デヒャァァァッ!? い、今のはほんのデキゴコロデスゥ! 許してくださいデスゥゥ!」

グリンは必死で許しを請うが、男は気にも留めない。
男は一言「べっこう飴」と呟くと、薄汚い実装石の舌をラジオペンチで引っ張り出し、昨日のミドリと全く同じ目に遭わせた。

「ベビャァァーーーーーーーッ!!!!!」



それから一週間、二匹の餌はずっとステーキとコンペイトウだった。
だが、当然味は全くしない。
二匹は実装石が考えうる最高の食事を与えられながら、それを味わうことができないという地獄をたっぷりと味わわされた後、焼き切られた舌をさらに根元からもう一度切られた。
焼き切られた箇所よりも根元から切断された舌は豪華な食事で蓄えられた栄養によって二日ほどで再生したが、その日からは餌が最低ランクのマズい実装フードに戻された。



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その後も男による二匹への虐待は続いた。

決められた時間以外に餌を要求すれば古い型の洗濯機に入れられ、脱水層で小一時間振り回されて、吐き気で強制的に食欲を奪われた。
フードがマズいと文句を言えば舌を焼き切られ、一週間にわたって味のしない豪華な食事を与えられた。
自分のことを指して「高貴」だの「可愛い」だのという言葉を使えば、そのたびに服を少しずつ切り裂かれ、髪を数本ずつ抜かれ、自分の糞を浴びせられ、日に日にみずぼらしくなっていく姿を鏡で一日中見せつけられた。

そんな生活が延々と続くうち、ミドリもまた先住のグリンと同じように、ここのシステムを少しずつ理解していった。
要は自分の身の丈に合わない要求をしたり、自分の立場を弁えない発言をすると、それに対応した部分を奪われたり貶められるという虐待が待っているのだ。
そして虐待前には必ず、ミドリに対しては『ポマード』、グリンに対しては『べっこう飴』というワードが呟かれる

ミドリがそれに気づいてからは、比較的平穏な日々が続いた。
二匹ともたまにボロを出して痛い目を見ることがあるが、ここでは基本的に衣食住が保障されている。
何の希望もない日々ではあるが、死の危険だけはないぶん野良実装よりはマシかもしれない。
そんなふうにも思い始めていたある日—————



グリンがその言葉を口にしたのは、本当にただなんとなくだった。
今の境遇に満足しているわけでもないし、ましてや感謝などしているわけもない。
それでも、口をついてぽろりと零れてしまったのだ。

その日もいつもと同じように、餌皿にマズい実装フードが盛られた。
それに対して、グリンはただ一言

「あ、ありがとうございますデスゥ……」

いつも通り男と目を合わせようとはせず、頭を下げたままではあったが、確かにそう呟いたのだ。

次の瞬間、グリンは男に頭巾を掴まれ、宙に吊り上げられた。

「デ、デヒャァァーッ!? ゴ、ゴメンナサイデスゥー!」

グリンは何が悪かったのかも分かってはいないが、ただとりあえず謝る。
しかし男はそんな言葉には何の反応も示さぬまま、ただグリンを掴んだまま部屋の外へと出て行った。
ミドリはその光景を震えながら見ていたが、結局それ以降、グリンがこの部屋に戻ってくることはなかった。



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次の日、グリンがいなくなったことで空になった隣の水槽に新たな住人がやってきた。
かつてのミドリと同じく、見るに耐えないほどの糞蟲である。

「デェェッ!? 一体ここはどこデスゥ? ドレイニンゲンはどこに行きやがったデスゥ!?」

かつてのミドリと同じように喚き散らしていた新入りの実装石は、わずか数分の間にこれまたかつてミドリがされたのと同じような折檻を受け、半死半生のズタボロにされるという醜態を晒すことになる。
ミドリはその姿をかつての自分に重ねながら、呆れとも憐れみともつかぬ表情でそれを見守っていた。



それから数週間かけて、新入りの実装石もまたミドリと同じくここのルールを体で覚えさせられていった。
とはいえ、多少お行儀はよくなったがまだまだ失態も多い、というレベルである。
ミドリはその姿を反面教師としながら日々行いを正していたが、あるときふと考えた。

(もしかすると、自分は先住の実装石にもこの新入りのように見られていたのだろうか?)

そこに考えが至ると、自然とかつての自分の醜態に気恥ずかしさを覚え、その行いを正してくれたここの生活に感謝の念というものが湧き上がってくる。

(そうだ、自分も昔はショップで受けた躾をきちんと守り、ご主人様に可愛がられていた。それなのに、いつしかご主人様に甘えてそれを台無しにしてしまったのは自分じゃないか)

そして次の日の朝食時、目の前にフードの盛られた餌皿を置かれたミドリは、男に向かってその言葉を口にした。

「あ、ありがとうございますデスゥ……」

次の瞬間、ミドリは頭巾を男の手によって鷲掴みにされ—————先住の実装石、グリンと同じように部屋から連れ出された。



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ミドリは男に連行された後、着ていた服を脱がされ、それを全て燃やされた。
度重なる折檻ですでにボロボロだったとはいえ、実装石にとっては髪と同じく自分が母親の胎内から産まれたときから着ていたものであり、皮膚にも等しい大切なものである。
ミドリは激しく嘆いたが、すぐにそんなことは意識から吹っ飛んだ。
実装石のサイズに合わせた小型の洗車機のようなものにいきなり放り込まれ、泡入りの水流と回転するタワシで全身をわしゃわしゃと揉みくちゃにされたのだ。

「デヒャァァァァァァッ!?」

朝食を抜かれているうえ、ここに連れて来られるまでの間に低圧ドドンパで糞抜きをされていたため漏らすことはないが、固めのブラシで全身を擦られて、まるで体の表面を研磨されているようだ。
洗浄が終わり、全身を覆っていた垢が落ちて綺麗になったミドリは、真新しい水槽に移された後もしばらくヒリヒリとした痛みに全身を苛まれ、イゴイゴと悶え続けていた。

そして約三十分後、ミドリの前に再び男が現れた。
手にはフリルのついたピンク色の、飼い実装の証ともいえる真新しい実装服を持っていた。

「これを着ろ」

男が『ポマード』と『べっこう飴』という言葉以外で声を発したのは、ミドリがここに来て初めてのことだった。
それにも驚いたが、その内容にも驚いた。
こんな綺麗な、しかも飼い実装にしか許されないような服を自分が着てもいいのだろうか?
だが、逆らえばそれはそれでなんらかの罰を受けるかもしれない。
ミドリはあくまでおずおずと遠慮がちに、ピンク色の実装服に袖を通した。

「き、着ましたデス……」

ガタガタと震えながら、服を着終わったことを男に報告する。
今のミドリには美しくなった自分の姿にうっとりする余裕などない。
ただ、恐怖でパンコンして真新しい服を汚し、男の怒りを買わないようにするので精一杯なのだ。

「よし……じゃあ次はこれを食え」

そう言って男がミドリの目の前に置いたのは、コンペイトウが山と積まれた餌皿だった。
ミドリは一瞬だけ目を輝かせたが、すぐに理性を取り戻して直立不動の姿勢に戻る。

「ほ、本当に食べてもいいデス……?」

「『食え』と言ったはずだが……?」

「わ、分かりましたデスゥ!」

ミドリは慌てて餌皿の前に跪き、コンペイトウを齧りはじめた。
久しく忘れていた甘味に思わず「デッスゥ〜ン♪」という糞蟲じみた嬌声を上げそうになるが、辛うじて「デッス……」のところで口を押さえ、我慢した。

「それを全部食う気か?」

コンペイトウの山が半分ほど減ったところで、男がミドリに問いかけた。
確かに、皿に盛られたコンペイトウの量は一気に食べきるには多すぎる。

「確かにこんなにたくさん食べきれないデスゥ……もうお腹もいっぱいデスから、もったいないデスがこれでごちそうさまにするデス。せ、せっかく出してくださったのに残してスミマセンデスゥ……」

ミドリの態度は飼い実装として完璧だった。
自分が食べきれないほどの量でも際限なく貪ろうとする意地汚さは影を潜め、人間に出された餌を残したことに対して謝罪もしている。
かつて人間に対して聞くに堪えない暴言を吐き散らしていた頃の糞蟲性は見る影もない。

「よし、合格だ」

男はそう呟くと、ミドリを優しく抱き上げ、真新しいケージに移してやった。
そしてケージの取っ手を掴み、建物の外へと出て行く。

「デェェッ!? まぶしいデスゥッ!」

建物の外に出たミドリが見たものは、数ヶ月ぶりに見る太陽と青空だった。



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ミドリが入れられたケージを乗せた車は、閑静な住宅街を走っていた。
そこそこ裕福と思われる大きな家が窓の外を流れていく。

その景色を眺めながら、ミドリはあることに気がついた。
自分はこの景色に見覚えがある。
確か、かつての飼い主に連れられて歩いた道の景色がこんな—————

ミドリの記憶が繋がったのと同時に、車が止まった。
そしてケージが後部座席から下ろされると、ミドリは唖然とした。
ここは—————かつて自分が飼われていた家ではないか。

男は玄関のチャイムを押し、インターホンで家の者に話しかける。

「ごめんください。先ほどお電話させていただいた糞蟲矯正施設の者ですが、お宅から預からせていただいていたミドリさんをお返しに来ました」

『ああ、やっと帰ってこられたのね!』

インターホンの向こう側にいる声の主はすぐに通話を切り、慌てて玄関へと走り出したらしい。
外にいてもドタドタという音が聞こえてくる。
そして家の扉がバタリと開くと、ミドリの飼い主である二十代前半と思われる女性が飛び出してきた。

「ミドリ! おかえりなさい!」

「デデェッ!? ご、ご主人サマァァーッ!」

男の手によってケージから出されたミドリが、走ってきた飼い主と抱き合う。

かつて主人を“ドレイニンゲン”呼ばわりしていたミドリが、今ではちゃんと“ご主人サマ”という呼称を使っている。
矯正施設の職員としては仕事を完遂できた達成感を味わうべきところなのだが、根が虐待派である男は飼い主と再会の抱擁を交わすミドリの姿を見て、飼い主に見えない角度で思わず地面に唾を吐いた。



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さて、ミドリよりも先に施設を出たはずのグリンはその後どうなったのだろうか。

部屋から連れ出されたグリンはミドリと同じく、体を綺麗にされた後に新しい服を与えられた。
そこまではよかったのだ。

コンペイトウが山ほど盛られた皿を目の前にしたとき—————グリンの中で押さえ込まれていた糞蟲性が再び噴出してしまった。
グリンは餌皿にダイブすると夢中になってコンペイトウに貪りつき、「デッスゥ〜ン♪」だの「デヒャヒャヒャwww」などといった糞蟲丸出しの嬌声を上げるという失態を犯してしまったのである。

糞蟲的行動をすれば虐待の引鉄になるとさんざん学んでいながら、ミドリが最初に舌を切られ、ステーキとコンペイトウの食事を出されたときにもつい口を滑らせてしまったように、
どうもグリンは食欲が絡むと糞蟲化しやすい個体らしかった。

グリンは腹がいっぱいになるまでコンペイトウを堪能した後、ふと我に返って慌てて居住まいを正したが、時すでに遅かった。
男の手が目の前に迫っていたのである。

「デギャァァァァ!!! ご、ごめんなさいデス! やめてデス! やめてデスゥゥーッ!!!」

必死の叫びも空しく、グリンは着ていた真新しい服を引き裂かれ、それどころか髪を一本残らず引き抜かれた。
服はともかく再生不可能な髪を残らず奪うというのは、どう考えても預かり物の実装石への仕打ちではない。
グリンはこの試練に耐えられたなら飼い主の許へと戻れるということ自体知る由もなかったが、もはやその道は完全に絶たれたのだ。

「デゥック………デスン………デスン………」

禿裸にされたグリンがすすり泣くが、男はむしろこの展開こそ待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべている。
この施設において最終試験で不合格となり、『社会復帰不適合』の烙印を押された実装石の処遇がどうなるか、その末路に思いを馳せているのだ。

グリンはそのままケージに入れられ、ミドリとは違う場所へと連れて来られた。

そこは実装ショップのようにガラス製のケースが並んでいるが、衛生状態がショップとは比べ物にならないぐらいに酷い。
暗く、臭く、不潔で、ケースに入れられている実装石たちはみな禿裸にされて絶望の涙を流している。
まさに死刑を待つ囚人の待合所といった感じだ。

グリンが自分のしてしまったことを悔いていると、男が自分を連れてくるために出入りしていたのとは逆側の扉が開いた。
入ってきたのは、明らかにここの職員ではない普通の服装をした二人の人間である。

普通の服装—————とはいうが、それはあくまで実装石の目から見た場合の話であり、人間の目から見ればその人間たちはかなり奇異な格好をしていた。
一人はレザーの上下にトゲのついた肩パット、髪型はモヒカンという出で立ちで、どう見てもまともな人間ではない。
もう一人の眼鏡の男も、ジーンズにアニメキャラの描かれたシャツの裾をインし、天然パーマのボサボサ髪をキャップに押し込んでおり、これまた“普通”とは言い難い格好だ。

「おい木茂山、ほんとにこんな場所で糞蟲が無料でもらえんのかよ」

モヒカンの男が天パの男に話しかける。

「ほ、本当だよ」

「つーかどれもこれも禿裸なのな」

「僕らみたいな虐待派に無料で引き渡してくれるのは、元々は預かり物なのを野生に捨てるのも殺すのもお役所としてはマズいからって理由だからね。本来なら殺して処分すべき糞蟲なんだけど、愛護派に引き取られて
 延命されても困るから、虐待派以外に引き取り手が来ないようにしてるんだよ」

「なーるほど。愛護派なんてのは所詮小奇麗で可愛いペットが欲しいってだけの連中だからな。禿裸にしとけば虐待派以外は見向きもしねえってわけだ」

「無料だからって捨てたもんじゃないよ? ここの糞蟲たちはアガったやつをオトしてアゲてまたオトして……って具合に繰り返して耐性がついてるから、なかなかパキンしなくて虐待し甲斐があるんだ」

「ほー、そりゃ楽しみだな。お、こいつなんかどうだ? いい感じに絶望してて、助けてやると言ったらすぐに懐いてきそうだぞ。やっぱ人間に懐いてきた馬鹿な実装石の信頼を裏切ってやるのが一番面白いからな」

そう言いながらモヒカン男が水槽から掴み出したのは、もう涙も枯れ果てたと言わんばかりの表情で力なく「デー……」と呟くだけの禿裸だった。

「それを目の前で言っちゃったら意味ない気がするけど………ん、じゃあボクはこいつにしようかな。今日ここに落ちたばかりのやつみたいだし、一番活きがよさそう」

「オメーの虐待はねちっこいからなあ。確かにタフさと活きの良さ重視しないと駄目だわな」

眼鏡の男が水槽から掴み出したのは、ついさっきここに連れて来られたばかりのグリンだった。

「デヒャァァァ!? イ、イヤデスゥー! ギャクタイハのニンゲンになんかもらわれたくないデスゥゥーッ!」

「デュフフフフwww これこれ。こうやってイゴイゴ暴れる実装石の手足を端っこからちょっとずつ潰していくのが最高なんだよねえ。フヒヒwww」

二人の男はそれぞれ選んだ実装石の頭を掴み、剥き身のまま箱詰めにすることもなく部屋を出て行く。
そして出口付近にあるパチンコ屋の脱法換金所のようなカウンターで簡単な手続きを済ませると、外に停めてあった車の後部座席に積まれた錆だらけのケージに二匹を押し込んで去っていった。

「イ、イヤデス……………助けてデス………助けてデスゥゥーーーッ!!!!!」

グリンの悲痛な叫びが響き渡る車を、悪徳警官風の男は心底楽しそうな表情で見送った。
普通なら最期の姿を見られないのが残念だと思うところなのだが、彼はそれを想像するだけでも楽しめるシュレディンガー派と呼ばれる虐待派でもあるのだ。



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三ヶ月後、飼い主の許へと戻ったミドリはといえば—————

「デギャァァス! なんデスこのクソマズイゴハンは! コウキでカワイイワタシにはこんなもの相応しくないデスゥ!」

「きゃぁっ!」

ミドリが餌皿に盛られた徳用フードを飼い主に投げつける。
たったの三ヶ月で、ミドリは再び見事な糞蟲に成り下がっていた。

それも当然だ。

そもそも飼い実装が糞蟲化する原因は、実装石という生物の根っこにある糞蟲性というものを理解していない飼い主の接し方にこそ問題があるのだ。
本当に改めなければならないのは、飼い主の意識のほうなのである。

では、あの糞蟲矯正施設には何の存在意義もないのだろうか?
決してそんなことはない。

飼い主は悲しげな目で糞蟲化したミドリを見つめていたが、意を決したようにミドリの前に仁王立ちになると、ただ一言—————

「ポマード」

と呟いた。

飼い主がそう呟いた途端、ミドリは一瞬びくりと震え、ガチガチと歯を鳴らしてパンコンする。
そして—————

「ちょ、調子こいてスミマセンでしたデスゥ……」

と言いながら土下座した。

人間がいくら厳しく躾を施しても、実装石という生物が生来具えている糞蟲性というものを完全に叩き出すことは容易ではない。
だが、あるキーワードと共にトラウマを植えつければこの程度の効果はあるのだ。

「分かればいいのよミドリ。さあ、ちゃんとご飯を食べちゃいましょうね」

「は、はいデスゥ」

とはいえ、一度糞蟲化した個体というのはどんなに表面を繕っていても、いつかその言動によって自らを滅ぼす。
ミドリとこの飼い主の関係もまた、そのうちきっと破綻するだろう。
どれだけ引き伸ばそうと、所詮はこの『ポマード』という言葉の魔力が尽きるまでの話なのだ。

「ああ、ミドリはやっぱり本当はいい子なのね。悪い子になってあの施設に預けたときは心配だったけど、いい子に戻ってくれてよかったわ」

知らぬは飼い主ばかりなり………



-END-



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あとがき

今回は書いている最中に他の方が似たような題材の作品をUPされてしまったので、拙作をUPしようかどうか迷ったのですが……
まあせっかく途中まで書いたので、ちょっと時間はかかりましたが完成させました。
(シュレディンガー派という高度な虐待派の設定に関しては、グリンサイドの話のまとめに使いやすかったのでお借りしました)

最初に思いついたプロットは、何かのキーワードを呟くとともに虐待を加えることでトラウマを植え付け、実装石の糞蟲性を押さえ込むことができないか……という話だったのですが……
ちなみにキーワードそのものには何の意味もなく、ただ都市伝説で有名な『口裂け女』の好きなものと嫌いなものを使っただけです。

今でも実装石虐待は大好きで、全く飽きてなどいないのですが、さすがに虐待のネタに関しては枯渇してきたので
次回作はまた面白い虐待方法を考え付いてからになりそうです。
しばらくお待ち下されば幸いです。

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1 Re: Name:匿名石 2016/09/22-23:44:27 No:00002538[申告]
シュレディンガー派流行るか!?w
こっちは矯正施設なのでちょっと趣が違うかな
糞蟲が叩きのめされてるのは一種の勧善懲悪(?)でスッキリする
口裂け女とか懐かしいw何回かブーム来てますな
2 Re: Name:匿名石 2016/09/23-00:10:08 No:00002540[申告]
まあ“どういう殺され方をするか”という点では観測できないので
シュレディンガーとしては成立してる気もする
3 Re: Name:匿名石 2016/09/23-00:17:45 No:00002541[申告]
似たような題材だからこそ
この作者とあっちの作者のスタンスの違いがはっきりわかっておもしろ
4 Re: Name:匿名石 2026/03/26-01:31:47 No:00009921[申告]
脳味噌糞蛆蟲同士お似合いではあるなグリンと飼い主
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