タイトル:【虐】 懐かしいオモチャで遊ぼう
ファイル:【虐】懐かしいオモチャで遊ぼう.txt
作者:ジグソウ石 総投稿数:42 総ダウンロード数:2227 レス数:6
初投稿日時:2016/08/13-16:07:04修正日時:2016/08/13-16:32:03
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 ※人間と実装石の会話は全てリンガル使用済みとしてお読みください。

母が死んで数年後、親父も死んだ。

大した病気をしたわけでもなく、晩年寝たきりだったわけでもなく、しかも七十歳を超えていたとあればまあ大往生だろう。

俺は親父の遺品その他を片付けるため、数年ぶりに生まれ育った実家に帰ってきた。

飼い実装……ではなく、助手のグリンとともに。


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俺の家は代々続く武士の家系である。

江戸時代には武家でありながら拷問官まがいの仕事をしていたり、戦時中には特高警察として思想犯の取調べを担当するなど、筋金入りのドS家系なのが少々アレなのだが……

俺もその血をしっかりと引いているらしく、実装石の虐待……もとい調教師を生業としている。



先祖代々伝わった武家屋敷は戦災で焼けてしまい、今の家は戦後に建てた二階建ての簡素なものではあるが、実は一つだけ隆盛を誇っていた頃の名残がある。

庭に蔵があるのだ。

家のほうは片付いたし、もしも蔵の中に価値のありそうな骨董品でもあれば売り払って金に換えてしまおう。

そう思い、ワクワクしながら蔵の鍵を開けてみたのだが………何もない、見事なほどに何もなかった。

そういえば、親父は晩年かなり遊んでいたようだ。

それも財産や形として残るようなものならともかく、ギャンブルではないにせよ、スマホゲームのガチャのように手元に何も残らないような、恐ろしくしょうもないことに金をつぎ込んでいたらしい。

「………野郎………死期が近いと悟って、死ぬ前に遊べるだけ遊びやがったな? ちくしょう………墓石は軽石で作って、塔婆の代わりにアイスの棒を立てといてやるから覚えとけよ」

すでに死んだ者に軽い殺意を覚えつつ、それでも何かないかと探してみる。

すると、入口からすぐ近くにある大工道具やら生活雑貨やらが置かれた場所—————蔵というよりはただの物置として使われていた場所の奥に、いくつかのダンボールがあるのが見えた。

「………なんだこの箱は? ………っと、結構重いのもあるなこりゃ」

ダンボールを床に下ろして開封してみると、

「おお! これは………」

思わず感嘆の声を上げてしまった。

ダンボールの中には俺が十歳ぐらいまでに買ってもらったト○ンスフォーマー、聖闘○聖衣シリーズ、ゾ○ドにミニ○駆などの玩具がぎっしりと詰め込まれていたのだ。

「………母さん、捨てずに取っておいてくれたのか………」

懐かしさに思わず感動してしまったが、これはいけない。

古いものを引っ張り出してきて一つ一つの思い出に浸るなどというのは、掃除のときに最もやってはいけないことだ。

「いかんいかん……この先必要ないものは全て断捨離するって決めてるんだから、これもさっさと処分しないと」

そう思いつつダンボールを外に運び出そうとして、ふと足を止める。

………どうせ処分するのなら、捨てる前に童心に帰ってもう一度これらの玩具で遊んでみるというのはどうだろう?

そう考えた瞬間、俺は面白いことを思いついた。


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次の日、俺は調教の助手として使っている実装石のグリンにあることを命じた。

それは公園にいる野良実装どもの家族を『飼い実装にしてやる』と騙して、この家に連れてくることである。

そう、俺が考え付いたのは、見つかった玩具を使って野良実装どもを虐待する遊びなのだ。

俺は調教師ではあるが、その本質は実装石を虐待するのが大好きな虐待派に他ならず、どうすれば実装石を効率的に、そして楽しく虐待できるかということを常に考えている。

どうせ仕事のほうはあと二日は休みにしてあるし、息抜きとしてたまには手の込んだ遊びをするのも悪くない。

「いいか、蛆実装から仔実装、できれば中実装まで、なるべく多くの仔がいる大家族を二組ほど連れて来い。別に糞蟲でも構わんが、知能や性格が普通以上だとなお良しだ」

「了解しましたデス」

「餌としてこれを持って行け。もしも公園の野良実装が疑いやがったら渡して信用させるんだ」

そう言って、コンペイトウの入った袋を持たせてやる。

「お預かりしますデス」

グリンはそれを首から提げたポーチに大事そうにしまい込んだ。

俺の調教によって並以上の知能を身につけたグリンは、こんなものを剥き身のまま持ち歩けば目当て以外の野良実装に襲われる可能性が高いことを理解しているのだ。

「では行ってきますデス」

俺の指令を受けたグリンはキュッポキュッポと、まるでドラ○もんのような足音を立てながら近くの公園に向かった。

よし、あいつが帰ってくる前にこちらも用意を済ませておかないとな。

俺は捨てるつもりだった本棚や机などの家具を蔵の中に並べて、野良実装の一家を歓迎する“アトラクション”の準備にかかった。


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地方の街中、それも住宅街の隙間などにある公園はそれほど広くはない。

広さは十五〜二十メートル四方もあればいいほうで、最近では子供の安全の観点からという理由で遊具さえなく、年寄りが日向ぼっこをするためのベンチしかないような公園も多い。

だが、そのような公園にも野良実装はいる。

何もない吹きさらしの空間であればそのようなことはないのだが、緑化のために作られた植え込み、つまりダンボールハウスを隠せる茂みさえあれば実装石は住み着くのだ。

家などが取り壊された後の空き地が長い間放置され、人間の膝上ぐらいまで草が生い茂った場合にも同様のことが起こる。

グリンが訪れたのは、そういった茂みのある小さな公園である。

このような狭い空間には、さほど多くの家族は住み着けない。

しかし家族そのものの数が少ない分、親実装同士で食料を奪い合うといった諍いは起こりづらく、一家族あたりの個体数は多くなる傾向にある。

さらに人間はともかく、他の実装石から襲撃される可能性が低くなるということを考えれば、逆にこういう場所を好んで巣を作るような個体のほうが知能が高いといえるかもしれない。

そういう意味では、グリンが大きな公園ではなく小さな公園に目をつけたのは正解といえた。



グリンが身を屈めて茂みの中を覗くと、植木と植木の間にダンボールがあるのが見えた。

この公園は角地にあり、奥側の二辺が茂みになっているが、その一辺ずつにそれぞれ実装石の住むダンボールハウスがある。

グリンはそのうちの一つに近づき、出入り口になっているダンボールのフタ部分をトントンとノックした。

「誰デスッ!?」

基本的に他者の目を盗み、隠れて住むのが野良実装である。

恐らく来訪者など迎えたことはないのだろう、家の主の声には驚きと怯え、そしてわずかばかりの威嚇が含まれていた。

「突然やってきて申し訳ないデス。ワタシはグリンという飼いジッソウデス。少しお話をしたいのデスが………よろしいデスか」

ダンボールの奥から、恐らく先ほどの声の主であろうか、中にいるであろう仔供たちに「オマエたちは奥に隠れているデス」等と言い含める声が聞こえる。

そしてダンボールの扉が開き、中から一匹の成体実装が姿を現した。

その野良実装は服装こそボロボロでみすぼらしいが、体つきはなかなか立派なもので、様々な困難を乗り越えて生き残ってきた歴戦の勇士を思わせる貫禄があった。

こいつがこの家の主であり、中にいる仔らの親らしい。

「飼いジッソウがこんなところに一体なんの用デス」

外にいたのが来客を装ったマラ実装や飢えた禿裸などではなく、自分よりも弱そうな相手であったことに安堵したのか、親実装が少々高圧的な態度でグリンに用件を尋ねる。

「つかぬことをお伺いするデスが……お宅にはお仔さんが何石いるデスゥ?」

「そんなことを聞いて一体どうするデス」

「実は………ワタシのご主人サマが新しいジッソウの家族を飼いたいとおっしゃっているデス……それもなるべくたくさん。デスからなるべくお仔さんの多そうな家族に声をかけて回っているデスゥ」

「デデェッ!?」

親実装は『飼い』という言葉に思わず色めき立ちそうになるが、幸せ回路による都合の良い妄想を慌てて振り払い、最悪の場合を想定する。

飼い実装といっても、虐待派が“虐待用の飼い実装”にするために公園の野良実装を浚う、などという話は枚挙に暇がないのだ。

そういったことに考えが至る実装石は稀だが、この親実装はそれができる個体であったために、今まで生き延びることができたのである。

「………にわかには信じがたい話デス………オマエのご主人サマとやらがギャクタイハのニンゲンではないと、どうして証明できるデスゥ?」

「(なかなか賢いやつデス……これならご主人サマのおメガネに適うデス)ワタシを見るデス。ちゃんとキレイなおフクを着せてもらっているし、三日に一度はおフロに入れてもらっているからカラダも臭わないしカミもキレイデス。
 ワタシがハゲハダカにされたりしていないことが何よりの証明にならないデスか?」

人間にとって生き物の命というものには(建前は別として)明確な序列があり、道具というものには用途がある。

グリンが一般的な飼い実装と同じか、それ以上の待遇を受けているのは、彼女がその主人にとって役に立つ道具としての働きをするからにすぎない。

さらに決して増長しないよう、その高待遇に見合う以上の厳しい躾に耐えたからという理由もあるのだが、飼い実装の生活を経験したことのない野良実装はそこまで考えが及ばない。

また、人間と実装石の間には『単なる主従関係』ではなく、主人の走狗となって同属殺しの片棒を担ぐ『隷属』という関係が存在することも、飼い実装になったことのない野良実装には知りようがない。

グリンの言葉に親実装の心は揺れた。

「まだ信用できないとおっしゃるなら、これをどうぞデス」

グリンは首から提げたポーチから数粒のコンペイトウを取り出し、親実装の手に握らせた。

コンペイトウの袋はすでに封が切られており、袋本体はポーチの中に隠されたままである。

どれだけ持っているのかを知られれば襲われて奪われる可能性もあるし、もう一つのダンボールにいる家族にも必要となるかもしれないので、いま取り出したのが全部だと思わせるためだ。

だが、賢い親実装に対してグリンの用心は杞憂に過ぎなかった。

親実装はグリンがまだコンペイトウを隠し持っているかどうかなどには全く興味を示さず、むしろ渡されたコンペイトウをじっと見た後、ニオイを嗅いで毒の可能性はないかと確かめている。

「(ほんとうにコイツはなかなか賢いデス……これで仔が多ければいうことはないのデスが……)そんなに疑うなら、ワタシが一つ食べてみせてもいいデスが?」

「……………いや、信じるデス」

そう言って、親実装はコンペイトウを一つ口に放り込んだ。

「………甘いデス………」

グリンに渡されていたのは味覚や幸福中枢が破壊されて糞蟲化しないよう、甘みを最小限に調整された実装石調教用のコンペイトウではあったが、親実装は「デッスゥ〜ン♪」といった見苦しい声を上げることもなく、
その甘さをしみじみと味わう。

そして残ったものを全て、後ろに隠れていた仔らに分け与えた。

テチュンレチュンと嬌声を上げながらそれを貪る仔らを背に、親実装がグリンに向き直る。

「………これからワタシたち家族はアナタのご主人サマのお世話になるデス。どうかよろしくお願いしますデスゥ」

そう言って、親実装はグリンにペコリと頭を下げた。


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グリンはスカウトした実装石たちの家族を引き連れ、意気揚々と公園をあとにした。

最初に声をかけた野良実装の仔らは親指実装三匹、仔実装が四匹、親も含めると八匹の家族である。

もう一つのダンボールハウスに住んでいた親実装も、コンペイトウをちらつかせただけであっさりと堕ちる馬鹿ではあったが、糞蟲というわけではない。

さらにその仔は蛆実装一匹、仔実装三匹、中実装が二匹、親も合わせて七匹と、どちらかといえば多いほうだ。

これだけ質もよく、数もたくさんいる家族を連れ帰れば、主はきっと喜んでくれるだろう。

実装石にとっては危険な道中でせっかくの数を減らしたりすることのないよう、グリンは慎重に二組の家族を主人の待つ家まで案内した。


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「よーし、準備はこんなもんでいいかな」

そう呟きつつ、手にはめた軍手や太ももあたりについたベニヤ板の木くずをパンパンと払い落とす。

約四時間近くをかけて、俺は蔵の中に一大アトラクションを築いていた。

いや、一大というほど大層なものではなく、高校生が文化祭で教室の中に作った迷路やお化け屋敷程度のクオリティではあるのだが………虐待して殺すだけの実装石相手にはこれで十分だろう。

蔵の中には、成体実装がジャンプしても届かない一メートル強の高さに切ったベニヤ板で通路が作られている。

途中でいくつかのルートに分岐しており、分岐点には実装石の成長段階ごとの平均身長や横幅に合わせて幅を狭めたゲートがあり、そこを通ろうとすると親指実装と仔実装、そして中実装と成体実装が
自然とふるい分けられるようになっていたり、壁そのものをスライドさせることで行き止まりを作ったり、様々なルートに誘導したりすることができるようになっていた。

そして各ルートには先日見つけた玩具やその他の仕掛け、さらに明かりとなる電球が配置してある。

これで準備は万端、あとはグリンの帰りを待つだけだ。


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夕方近くになってグリンが帰ってきた。

言いつけどおり二組の、それも結構な数の家族を連れてだ。

しかも、そのうち一組の親実装はかなり知能が高いときている。

虐待派である前にプロの調教師として、これは褒めてやらなければならない成果である。

「よくやったぞグリン。褒美として、預けておいたコンペイトウの残りは全てお前が食っていいぞ」

「デ、デスッ! ありがとうございますデス!」

口で褒めてはやるが、頭を撫でてやったりはしない。

そこまですると飼い主である俺に対して服従以上の感情、つまりは恋愛感情を抱いたりする実装石もいるためだ。

それに褒美といっても、いくら食ったところで糞蟲化しない程度のわずかな甘みしかないコンペイトウである。

躾を施すときは徹底的に虐待し、褒めるときは実装石の持つ承認欲求や本能的な欲望を最小限だけ満たしてやるのが、実装石を糞蟲化させない調教のコツなのだ。



さて、とりあえずは今日の来賓に挨拶でもしてやるかな。

「やあやあ、よく来てくれたね実装石ちゃんたち。僕がこの家の主、つまりは君たちのご主人様になる人間さんだよ」

「デデッ……これからお世話になりますデス」

「「「「なりますテチ」」」」

「「「「「なりますレチュ」」」」」

親実装に続いて、仔実装と親指実装たちが頭を下げる。

まあ意味も分からずに親の真似をしているだけだろうが、グリンの言うとおりこっちの家族は頭も性格もなかなかいいようだ。

「デェ……アナタがゴシュジンサマデスゥ? じゃあ早くゴハンにしてほしいデス。ワタシたちは長旅でお腹が空いてるデス」

「そうテス! 長いこと歩かされてもうお腹ペコペコテシャァ!」

「ゴシュジンサマならさっさとコウキなワタシたちにステーキとコンペイトウを持ってくるテス! 使えないドレイニンゲンはすぐに追い出してやるからカクゴするテス!」

「オナカすいたテチ」 「今日からワタチたち飼いジッソウテチ? だったらおいしいもの食べ放題のはずテチィ」 「ゴハンにアマアマ、楽しみテチィ♪」

こっちはめいめい勝手に好き勝手なことを言ってやがるな。

というか、中実装二匹はすでに糞蟲といっていいレベルだ。

こいつらは最後に特別えげつない方法で殺してやろうか。



さて、そろそろ俺の遊びに付き合っていただきたいところだが、この手の糞蟲はともかく賢い実装石のほうはどうやってゲームに参加させるかが少々難しい。

ここまで連れてくる時点で騙されているとはいえ、ここから適当な嘘で何かをさせようとしても警戒心が強くてなかなか乗ってこないし、仔の一匹を人質にとるにしても、そいつ自身を参加させられないのが勿体無い。

やはりここは単純な手口で、否応なしに状況に巻き込まれてもらうことにするか。

 ————— プシュッ! —————

「デデッ!?」

「デェッ?」

「「「テェェーッ!?」」」

懐からスプレー缶を取り出し、吹きかけたのは実装ネムリである。

野良実装たちは賢いほうも糞蟲も、あっという間に地面に倒れ伏し、寝息をたててスヤスヤと眠り始める。

これでこいつらは明日の朝まで目覚めまい。

俺はそいつらをひょいひょいとダンボールの中に放り込むと、それを持って蔵の中へと入っていった。


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次の日の朝—————

「……………デ………?」

頭のいいほうの親実装が目覚めると、あたりはほとんど真っ暗だった。

いや、厳密にはぼんやりと明るく、周囲の状況だけはちゃんと分かる。

親実装は、自分の体とほぼ同じぐらいの幅しかない壁に挟まれた廊下のような場所にいた。

ただ、自分を挟んでいる壁の上に等間隔に並んでいるのはいわゆる豆電球で、せいぜいロウソクの火と同じぐらいの光量しかない。

しかもそれより上の空間は完全なる闇で、ここが屋内なのか屋外なのかも分からない。

暗さに目が慣れてくると、自分の周囲に仔供たちが眠っているのが見えた。

「デェッ! オマエたち、起きるデスッ!」

親実装は慌てて仔供たちを叩き起こす。

もしもここが危険な場所であれば、寝こけていることは死に繋がるからだ。

「テェ……ママ、どうしたんレチュ?」

「なんだかアタマがモヤモヤするテチ」

親指実装と仔実装たちは、まだ実装ネムリの効果が抜け切っていないらしい。

ふらつく頭を振りながら、眠そうな目をごしごしと擦っていた。

「寝ている場合じゃないデスッ! ワタシたちはダマされたデス! ここはきっとギャクタイハの巣デスゥ!」

さすがに頭のいい野良実装である。

ここに連れて来られた理由と、それを企てた人間の狙い、それによって自分が置かれた現在の状況をすぐに、そしてほぼ正確に看破した。

だからといってどうなるものでもないのが、実装石という生物の悲しいところなのだが。



 ————— ウィーン! ウィーン! ウィーン! (カシャン! カシャン! カシャン!) —————

まだ寝惚け眼の仔実装たちと、怯えた顔でその仔たちを抱きすくめる親実装の耳に、突然けたたましい機械音が聞こえてきた。

目の前の暗闇から、何かが真っ直ぐに歩いてくる。

豆電球の明かりに照らされて姿を現したそれは、全長三十センチほどの、小型の猫のような四足歩行の生物……いや、長い牙を持つ機械の虎だった。


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ベニヤ板で作られた壁の裏側から、震える実装石の親仔に向かって俺がけしかけたのは、今も多くのファンを持つ機械生命体『ゾ○ド』—————帝国軍サーベルタ○ガーの玩具だった。

この玩具、最近でも発売される観賞用のフィギュアとは違い、カッコいいポーズをとらせたりするための可動域こそないものの、中心部に仕込まれた電池式の動力ユニットによって自立歩行することができる。

動力ユニットに取り付けられた、かき氷の機械を動かすレバーのように回転する棒が長穴を前後にスライドすることにより、機関車の動輪を動かすように脚部が前後に動くのである。

その動きは動物のそれとほぼ変わらず、しかも動力ユニット前部に取り付けられた部品が上下に動くことによって、口までもがパクパク動くという超カッコいい玩具なのだ。

ちなみに同時期に発売された共和国軍のシー○ドライガーではなくサーベルタ○ガーのほうを選んだのは、『ゾ○ド』の背景や設定を全く知らなかった当時の俺が、共和国軍(善玉)と帝国軍(悪役)の違いなど全く考慮せず、
放熱板のスリットがいかにもメカメカしいデザインのシー○ドライガーよりも、サーベルタ○ガーのほうがより生物らしいフォルムでカッコいいと思ったというだけの理由である。



 ————— ウィーン! ウィーン! ウィーン! (カシャン! カシャン! カシャン!) —————

動力ユニットによって命を吹き込まれた機械の虎が、文字通り剣のような牙を上下させながら実装石の親仔に歩み寄る。

「デヒャァァーッ!?」

「「「「テヒャァァーッ!?」」」」

「「「「「レヒャァァーッ!?」」」」」

親仔が全く同じ悲鳴を上げ、パンコンしながら腰を抜かすが、サーベルタ○ガーは全く意に介さずに親仔との間合いを詰めていく。

そもそも動力ユニットの稼動スピードは決まっているし、その特性上この玩具は前進しかできないのだから、当然といえば当然なのだが。

「デ、デデェーッ! に、逃げるデス! オマエたち、早く逃げるデスゥゥーッ!!!」

親実装は仔らの体を掴んで自分の後ろに押しやると、自分も尺取虫のように這いずって逃げようとする。

サーベルタ○ガーの歩みはそれほど速くはないので、それでもなんとか逃げられていたが、そのうち廊下の先が見えてきた。

廊下の先は十字路になっていたが、正面の通路は幅が親指実装しか通れないほど狭く、左の道も仔実装が通れるほどの幅しかない。

右の道は成体実装が通れるだけの幅があったが、同じ通路を逃げていては足の遅い親指実装や仔実装が追いつかれる可能性がある。

「このままでは追いつかれるデス……こうなったらワタシがあいつを引きつけるデス! オマエたちはそれぞれバラバラに逃げるデスーッ!」

頭の回る親実装は正面の通路に親指実装たちを押し込み、仔実装たちには左の道を行くように指示して、自分は囮となるために右の道へと曲がっていこうとした。

「テェェン! ママ、置いていっちゃイヤテチィ!」

「ママァ! コワイレチュ! ワタチたちだけじゃ逃げられないレチィィー!」

「聞き分けるデスッ! きっと……きっと後でまた会えるデス………」

親実装は精一杯優しげな声でそう言ったが、内心ではきっと自身の生を諦めたのだろう、両の目から血の涙をホロリと溢れさせた。

「さ……さあ来いデス! ワタシはここデスッ! だけどタダではやられないデッシャアァ!」

親実装は襲撃者を仔らから引き離すために右の通路へと入っていくと、萎えた腰を奮い立たせ、四つ足の体勢になって威嚇の声を上げた。

だが、サーベルタ○ガーはそれを一顧だにせず、親指実装たちのいる正面の通路へ一直線に歩いていく。

「デ、デデェーッ!?」

親実装にとって不運だったのは、相手が自分たちを捕食しようとしている生物ではなく、ただ前進することしかできない機械仕掛けの玩具だったことと、それに気付けなかったことである。

そもそもサーベルタ○ガーのサイズは立ち上がった成体実装よりもかなり小さいうえ、この玩具は横倒しになってしまうと自分で立ち上がることができないので、もしも親実装に立ち向かう勇気さえあれば
何とかできる可能性もあったはずなのだが、彼女は勇気を振り絞るのが少々遅すぎた。

しかも、本来なら親指実装たちを逃がした通路はサーベルタ○ガーが通れるはずのないほどの幅しかなかったはずなのに、サーベルタ○ガーは何事もなかったかのようにそこへ突き進んでいく。

これは俺の仕掛けだった。

実際には親指実装たちの逃げた通路はサーベルタ○ガーの横幅とほぼ同じに作ってあり、ただ通路の入口部分に親指実装しか通れないサイズの穴を開けたベニヤ板のゲートを挟んでいただけなのだ。

そしてサーベルタ○ガーがそこに差し掛かる直前にゲートの板を外し、通らせたのである。

ちなみに俺は上下黒い服に身を包み、今では珍しくなった黒いビニールのゴミ袋に穴を開けたものを頭から被って歌舞伎の黒子のような格好をしているので、壁の裏側からこうやって様々なちょっかいをかけても
通路内にいる実装石たちは俺の存在に気付くことができない。



「デッギャァァァ!!! 待つデスゥゥゥ!!!」

親実装は慌ててサーベルタ○ガーを追う。

だが、ちょうどサーベルタ○ガーの横幅と同じ幅に調整された通路には、成体実装では横向きになっても入ることができない。

「デギィィィィ!? オマエたち、逃げるデス! 逃げるデスゥゥー!!!」

腕を力の限り通路の奥へと伸ばしながら、親実装が奥にいる親指たちに向けて叫ぶ。

通路はほんの少し先で行き止まりになっており、三匹の親指実装はその突き当たりで身を寄せ合って震えていた。

実はこの通路にはもう一つ仕掛けがある。

サーベルタ○ガーは首を下げることができないので、そのままの位置関係で奥まで突き当たってしまうと親指実装たちはほぼ安全なのだ。

それを解決するために一番奥の部分は四十度近い坂になっており、そこを上ると親指実装の体がちょうどサーベルタ○ガーの口の部分に来てしまうようになっているのである。

仮に足元を潜り抜けようとすれば、爪に引き裂かれたり踏み潰されるかどうかは半々の確率というところだが、そんなことに気付く知能もない親指実装たちは恐怖に駆られるままに一番奥へと逃げてしまっていた。

ガチガチと歯を鳴らしながらパンコンする親指実装たちの前に、サーベルタ○ガーの牙が迫る。

そして—————

 ————— ぞぶり —————

「レッチャァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」

三匹のうち、真ん中にいた親指実装が肩から胴体にかけて齧られた。



昔の玩具というのは、今の玩具ほど『子供の安全』というものを考慮して作られていない。

ガン○ムのプラモは翼やアンテナの先端が今のものよりも尖っていたし、このサーベルタ○ガーの牙も他のパーツに比べて柔らかめの樹脂で作られているとはいえ、鋭さは今の玩具の比ではなく、顎の力そのものもかなり強い。

指を挟めば結構痛かったし、人間が指を噛んだときと同じぐらい深い痕が残るぐらいだ。

実装石のウレタンボディ、しかも昆虫以下の強度しかない親指実装の体など、ひとたまりもあるはずがなかった。

しかもこの玩具、本物の動物のように獲物を仕留めるために噛み付いているわけではない。

ただ動力ユニットに仕込まれたギミックに従って動いているだけなので、情け容赦なく何度も何度も同じリズムで、しかもゆっくりと咀嚼するのだ。

「レヂャァァッ! レヂッ! ヂィィィッ! レ……チ……」

食べるために顎を上下させているわけでもなく、飲み込むことすらしない機械の虎は、口の端から血や糞をボタボタとこぼしながら、親指実装の体がズタズタになるまで噛み砕き続けた。

そのうち親指実装の首がぶちりと千切れて床に転がり、その目が白く濁っていく。

もう一匹の姉妹は、上れるはずもないのに背後の壁を引っ掻き続け、そのうち滑って転がり落ちたところでサーベルタ○ガーの牙にかかり、先に死んだ姉妹と全く同じ最期を遂げた。

そしてそれを見た最後の一匹は、姉妹の血と糞で口の周りを汚したサーベルタ○ガーが目の前に迫った瞬間、恐怖のあまり偽石を崩壊させて絶命し、死体となってから噛み裂かれた。


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「デェェーン! デェェーン!」

目の前で娘たちを粗挽きミンチにされた親実装の慟哭が、暗い廊下に響き渡る。

だが、いつまで経ってもサーベルタ○ガーがこちらに戻ってこないどころか、全く動かなくなった(俺がスイッチを切ったのだ)のに気付くと、ふと思い出したように左の通路を見た。

そちらにはまだ仔実装たちがいるはずだ。

しかし、そこに仔実装たちの姿はなかった。

それどころか、通路そのものがなかった。

親指実装たちに親実装の意識が集中している間に、俺がベニヤ板の壁を移動させて通路を塞いだのだ。

今頃仔実装たちは別ルートに迷い込んでいるはずである。

「デェェ……長女たちもいなくなってしまったデス………これからワタシはどうしたらいいデスゥ………」

「デスン、デスン」と泣きべそをかきながら、親実装がフラフラと通路を進んでいく。

その目の前に、広い部屋が現れた。

「デデッ!?」

部屋の奥に、巨大な人影がある。

いや、実装石にとっては十分大きいのだが、人にしてはあまりにも小さいので、“巨大”な“人”影というのは少し語弊があるのだが。

自分よりも少しだけ大きいその影に親実装が近づいてみると、それは自分と同じ緑の頭と手足を持つ、人間のような形をした何かだった。

よく見ると、腕のほうは緑ではなく紺色に近い青で、上半身は黄色に赤のストライプという派手な姿だ。

それはゆっくりと両腕を振り上げると、人間のような声で叫んだ。

「鋼ーーー鉄! ○ーーーーグ!!!」


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俺は全長六十センチ近い『鋼鉄ジ○グ』の玩具を後ろから両手で支え、腕を振り上げさせると、名乗りを上げるかのように成体実装に向かって叫んだ。

これは俺が二歳か三歳の頃、従兄弟の兄ちゃんにお下がりとしてもらったものである。

両腕が肩の部分で上下に動くだけという雑な造りのものだが、これには一つだけとんでもない武器が仕込まれている。



目の前にいるものが一体なんなのか、理解しかねてうろたえている成体実装に向けて、俺は鋼鉄ジ○グの右腕を差し出した。

そして—————

「ナッ○ルボンバー!!!」

叫ぶと同時に、肘の部分から出た突起を押し込む。

すると、鋼鉄ジ○グの拳が腕に仕込まれたスプリングの力で勢いよく飛び出し、

 ————— パグァ!!! —————

「プゲァ!!!」

顔面に拳が半分近くめり込み、親実装はもんどり打って後頭部を床に強打した。

しかもそのときの衝撃で、片目が飛び出してしまっている。



これぞこの玩具に仕込まれた秘密兵器、『ナッ○ルボンバー』である。

作中のナッ○ルボンバーは本来『勇者王ガ○ガ○ガー』の必殺技『ヘルア○ドヘブン』のように両手をがっしりと繋いだ状態で手首から先を射出する武器なので、これではむしろ『マジ○ガーZ』の『○ケットパンチ』に近いのだが、
まあ肩の部分しか可動しない玩具なので再現率が低いのはしょうがない。

むしろこのギミックについて特筆すべきは、その威力である。

そもそも四〜五歳児程度の力では手で押し込んだだけでは再装填しづらく、自分の胸などに押し当てて体ごと押し込まないといけないほど仕込まれたスプリングが強力で、どう考えても子供の玩具としては危険すぎるレベルなのだ。

有効射程が三メートル……とは言わないまでも、確実に二・五メートルは初速の威力を保ったまま飛んでいくので、もしも至近距離で目に当たりでもしたら失明しかねない。

さらに恐ろしいのは、この玩具に使われている素材、そして拳パーツの硬さである。

硬い、本当に硬い。

プロレス団体WJの専務であった永島○司氏さん言うところの、溶岩石のように凝り固まった長州のアタマも真っ青な硬さなのである。

本体のプラスチック自体かなり硬めで、それでいて劣化しづらいという、バブル期以前の日本のモノづくり万歳と叫びたくなる品質なのだが、特に拳のパーツは中に空間や隙間のない一体成型の無垢なのではないかと思うほどの
分厚さがあり(実際にはデコピンなどで叩いてみると、中に空間があるらしき音はするのだが)、俺が子供の頃にコンクリートのブロックに向かってガンガン撃ち込んでも、表面こそコンクリートのザラザラした凹凸のせいで
ボロボロになったものの、それ自体は割れるどころかヒビの一つも入らなかったという頑丈ぶりである。

昔の玩具って、本当に子供の安全性については無頓着だよなあ……



三〜四歳児のマジ殴りレベルの威力を持つパンチを食らい、後頭部を床に強打して、親実装は完全にグロッキーだった。

せっかくの知能も、脳震盪を起こしてしまっては発揮することができない。

というより、こうなっては虐待の対象としてさほど面白いリアクションも期待できない。

少々勿体無い気もするが、絶望の姿はさっき親指実装たちを全員食われたところで見せてもらったことだし、そろそろトドメを刺してやるか。

まるで酔っ払いのようによろよろと起き上がり、あらぬ方向へむかって逃げようとする親実装の後頭部に、さらに左手のナッ○ルボンバーをぶち込んだ。

 ————— スパコォン!!! —————

「デプァッ!!!」

最初の一撃で砕け、緩んでいた眼窩の骨からもう片方の目も飛び出し、親実装がうつ伏せに倒れ付す。

その背中に丸ごと叩きつけるつもりで、俺は鋼鉄ジ○グの玩具を足から振り下ろした。

「ダイ○マイト・キック!!!」

 ————— グシャァ! —————

「デギェ……!」(パキン!)

背中から偽石の砕ける音が聞こえ、親実装は絶命した。

せっかくの賢い実装石だったのに、やはりちょっと勿体無い殺し方をしてしまった気がする。

もうちょっとビビらせてから殺してやりたかったのだが………やはりナッ○ルボンバーが強力すぎたか。

この玩具は馬鹿なほうの親実装に使ったほうがよかったかな?

軽く反省しつつ、俺はベニヤ板の通路を跨いで、別の連中を待たせてある部屋へと移動した。


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親実装と引き離された四匹の仔実装は、泣きながら通路を走っていた。

滂沱のごとく流れる血涙が常に半開きの鼻と口に流れ込み、走るときの「テッチテッチ」というかけ声も「デッジュデッジュ」という汚いものになっている。

ここがどこなのかも分からない、一体何が起こっているのかも分からない、ただ唐突に化け物のようなものに襲われ、大切な家族を奪われた。

だが、未だ自分たちの身にも危険が迫っていることは分かる。

ゆえに当てもないまま、一方通行の迷路をただ走り続けていたのだ。

とはいえ、その通路は完全な袋小路であり、俺がベニヤ板の壁を操作してやらない限り延々と同じところを回り続けるだけだ。



俺はベニヤ板をずらして曲がり角の道を塞ぐと、逆方向へと曲がる通路への入り口を開けてやった。

仔実装たちは必然的にそちらへと誘導されていく。

そして少し開けた場所に出ると、そこにいたのは自分たちと一緒に連れてこられた馬鹿なほうの実装石の家族だった。

「オ、オバチャンたち、無事だったテチィ?」

「デ……オマエたちは………」

よく見ると、馬鹿実装もまた自分たちと同じように滝のような血涙を流している。

そして連れている家族は中実装二匹のみで、三匹いた仔実装と蛆実装の姿がない。

こいつらが目を覚ましたのはミニ○駆のコースの上で、目覚めてすぐに俺がけしかけた二台のミニ○駆、それもわざわざタイヤをゴム製のピンスパイクに換装した『サンダード○ゴン』と『ダッシュ一号・エン○ラー』の
『コ○コ○コミック二大マシン』により、三匹の仔実装たちは全て体をズタズタに引き裂かれて轢き殺されたのだ。

その無惨さときたら、サーベルタ○ガーに噛み裂かれた親指実装たちに勝るとも劣らないほどだった。

二匹の中実装は体が大きかったためにすぐにコースの外に逃げることができたが、そもそも体がコースに入らなかった親実装は、仔実装たちを助けようとしてコースに両手を突っ込んだところをスパイクタイヤに巻き込まれて、
今もボロボロになった手先からポタポタと血を流している。

「デェェ……オマエたちは無事だったデスか………ワタシの仔はこの二石だけを残してみんな死んでしまったデスゥ………」

「ワタチたちも同じテチュ………ママも、イモウトチャたちも………みんなカナシイことになっちゃったテチィ………」

四匹の仔実装と一匹の成体実装は、お互いの境遇を嘆いて「オロローン……」「テチィー……」と涙にくれる。

だが若干糞蟲化している中実装二匹は、その姿を「泣いてる暇があったら助かる方法を考えるか、さっさと出口を探せ」とでも言いたげな冷ややかな目で見つめていた。


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数分後、死んだ親実装の仔らと馬鹿なほうの親実装の家族は、連れ立って通路を歩いていた。

仔実装たちは馬鹿家族の親実装を、親実装のほうは他石の仔実装たちをそれぞれ失った家族に重ね合わせ、お互いに依存しあうことで精神の安定を保ったのだ。

糞蟲化しつつある中実装姉妹は「足手まといが増えた」と言わんばかりの不満顔だが、とりあえず脱出するためには一緒に歩くしかない。



そのうち通路が途切れ、広い空間のある部屋に出た。

先ほど賢いほうの親実装が死んだ場所よりもさらに広い。

仔実装たちはあたりをキョロキョロと見回していたが、奥の暗闇にまたも何かがあるのに気づいて不安げな表情をする。

馬鹿家族の親実装が慎重に近づくと、そこには大きな戦艦のような、見ようによってはビルのような、または基地のようなものがあった。

親実装がビクビクしながらもポフポフ叩いてみるが、何も起きない。

それを見て危険がないと判断した仔実装や中実装たちもあちこちを触りだして、パカパカと可動する部分などを見つけるとそのうち楽しそうに遊びはじめた。

「よくわからないけど、なんだかすごいものテチ」

「きっとこれはだれかのヒミツ基地か何かテチ。またコワイものが来たらこれに隠れてやっつけるテチ!」

まあ、こいつらの感想はあながち間違ってはいない。



俺はその“基地”の両腋部分に結わえておいた荷造り用の頑丈なビニール紐を引っ張り、それを立たせるように引き起こす。

(くっそ重い………これ、確実に十五キロはあるぞ………)

「テヒャァァーーーーッ!!!」

「なんテチ!? なんテチィ!?」

「デェェーーーッ!?」

実装石たちが乗っかっていた足場から転げ落ちている間に、俺は壁の裏から腕を伸ばしてその背を支え、折りたたまれていた腕や足を素早く伸ばしていく。

そうして実装石たちの前に立ち上がったそれは、おそらく『ト○ンスフォーマー』史上で最も巨大であろう玩具、サイバト○ン司令官『フォ○トレス・マキシマス』だった。

横倒しの状態だと基地と戦艦を兼ねたような形態だが、ロボット形態に変形させて立ち上がらせると、成体実装よりもさらに頭一つ分以上は大きい。

しかもさっき起き上がらせるのに苦労したとおり、その重さも尋常ではない。

大人になった今だからこそ紐で吊り上げることもできたが、子供の頃にこんな起こし方をしろと言われても絶対に無理だった。

こいつで遊んでいた当時の俺は十歳で、変形させるときは両腋の部分を抱えて引き起こすのだが、小学校中学年の子供が持ち上げるにはあまりにも重すぎるのだ。

もし幼稚園児ぐらいの子供だったら、下手をすれば下敷きになって大怪我をしてしまう危険性も十分にあると思う。

つくづく昔の玩具というのは、子供の安全性を考えて作られてはいない。

とはいえ、これ結構高かったんだよな……

確か当時一万二千円〜一万四千円ぐらいしたはずで、クリスマスに買ってもらったんだっけ。

今にして思えば、俺ってそこそこ裕福な子供だったのかもしれない。

親父の墓、軽石じゃなくて漬物石ぐらいにはしといてやるか。



「デ………デ………デギャァァァァッ?」

突如として目の前に立ち上がった怪物に、親実装が恐怖の悲鳴を上げてパンコンする。

中実装や仔実装たちも同様の反応だ。

そりゃあ成体実装のサイズなら自分よりも多少大きいぐらいだが、仔実装たちにとっては目の前にいきなり大魔神が現れたようなもんだろうしな。

 ————— ズズッ…… ズズッ…… ズズッ……! —————

俺は黒子スタイルのまま中腰でフォー○レス司令官の後ろにピッタリと張り付き、両腋を抱えて実装石の親仔に向かって前進させる。

「デギャァーッ! く、来るな! 来るなデスゥゥ!」

「テチィィ! コワイテチャァァァ!」

「ママ! 早くなんとかしろテス! あのバケモノをブッコロせテスゥゥ!」

「テシャァァァァァッ! テシャァァァァァッ!」

ある者は腰を抜かして後ずさり、ある者は四つ足の体勢になって威嚇の声を上げる。

反応は様々だが、そのうち親実装が勇気を振り絞り、臨戦態勢をとった。

自分の仔である中実装たちや他石の仔実装たちをなんとか守ろうというのだろうか、パンツの中に漏らした糞を掴むと、こちらに向かって投げつけてくる。

(………この野郎………! 最初から汚す覚悟もしてたとはいえ、俺のフォ○トレス司令官に糞を投げつけるとはいい度胸してんじゃねえか!)

俺は用意しておいた“武器”を背後から取り出すと、それをフォ○トレス司令官の手に持たせて—————叫んだ。

「マキ○マス……………ソォォォォド!!!!!」

それは、この玩具の付属品である剣だった。

アニメを見ていた人ならご存知だろうが、必殺の武器でありながら毎回「マキ○マスソードの充電には時間がかかる!」といって、ピンチのシーンや話そのものを引っ張るためのアイテムとして使われていたアレである。

この玩具の剣は先端部分が丸めてあり、刃もオレンジ色をした樹脂の部分は分厚く作ってあるので絶対に手を切ったりはしない。

だが、珍しく子供の安全性を考えてあるかと思いきや、実は刃の中ほどから根元にかけての黒い部分はかなり扁平に作られており、そこなら実装石の体を両断できるぐらいの鋭さは十分にあったりする。

俺はフォ○トレス司令官の腕を振り上げると、必死の形相で抵抗を続けている親実装の脳天に向かって、マキ○マスソードを思い切り振り下ろした。

 ————— ずばん! —————

「デブェ!?」(パキン!)

親実装の頭がまるで『北○の拳』の必殺技、岩斬両○破を食らったかのように凹み、両目が飛び出す。

しかも今の一撃だけで偽石が砕けたらしく、親実装はそのまま絶命した。

どうもこいつはアホのくせに、偽石が頭にあったようだ。(偽石が頭にある個体は賢い傾向があるらしいのだが)

「「「「テチャァァーーーッ!?」」」」

親実装の死を目にした仔実装たちが悲鳴とともに再びパンコンし、腰を抜かす。

中実装たちはどこに行ったのかと思えば、最初から親やこいつらを生贄にして逃げるつもりだったのか、少し離れた場所を「テッス、テッス」と息を切らせながら走っていた。

まあ放っておいても逃げられはしないのだが、あいつらは特にえげつない殺し方をしてやろうと決めているので、とりあえずこの仔実装四匹を一気に屠ってしまうか。

俺は腰を抜かした仔実装たちの前にフォ○トレス司令官をにじり寄らせると、その背中をトンと押して、仔実装たちの上にそれを倒した。

 ————— グワシャン! —————

「チュベッ!」

「ヂュ……」

「ヂィ……!」

「ヂュブ……」

重さ十数キロはあろうかというフォ○トレス司令官の下で、四匹の仔実装があっという間に床のシミと化す。

一瞬の死ではあったが、ゴム製のうえそれほど凹凸のない人間の靴底などと違って硬いプラスチックの、それもあちこちが出っ張ったり尖ったりした玩具に押し潰されるというのは、かなりの苦痛を伴ったに違いない。

俺はフォ○トレス司令官を起こして四匹全員が潰れているのを確認すると、残った糞蟲姉妹を処刑するために最後の玩具を引っ張り出した。


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中実装の姉妹は、ちょうど二匹が並んで走れるほどの通路を必死に走っていた。

姉妹には知る由もないが、その先は蔵の出口へと続いている。

人間から見れば亀の歩みにも等しいのだが、とりあえず本人……ならぬ本石にしてみれば全速力だ。

俺は暗闇の中、それを悠々と追い抜いて、蔵の出口付近に“それ”を置いた。

そして扉を開け放つと、外の光が蔵の中に差し込み、中実装姉妹を照らし出す。

「「テヒャァァーッ!?」」

暗闇に慣れていた目にいきなりまばゆい光を浴びて、姉妹が悲鳴を上げて目を庇う。

十数秒後、明るさに慣れた姉妹が少し上を見上げてみると、そこには外の青空が広がっていた。

「で、出口テス! あそこまで走ればここから出られるテシャァ!」

「早く逃げるテス! こんなとこにはもう一秒だっていられないテスー!」

姉妹は今までの疲れも忘れ、一目散に出口へと走っていく。

だが、その前に立ち塞がる一つの影があった。

「テェッ!?」

姉妹が足を止めると、目の前に何かが立っているのが見える。

逆光になってよくは見えないが、今まで見てきた怪物たちのようにどこかゴツゴツした姿ではなく、人間と同じようなフォルムをしている。

その小さな人間らしきものは、右の拳を自分たちに向かって突き出したポーズのまま微動だにせずに立っていた。

大きさは自分たちとさほど変わらないが、その出で立ちが尋常ではない。

姉妹の目の前にいるその小さな人間は、全身に銀色の光り輝く鎧を纏っていたのである。

ここまで言えばご存知の方にはもうお分かりだろう、中実装姉妹の目の前に置かれていたのは、『聖闘○星矢』の『聖闘○聖衣』(セイントク○ス)シリーズ、『キグ○ス氷河』のフィギュアである。

白鳥を象ったマスクのデザインが“おまる”のようだと一部で不評ではあったが、胸アーマーのプレートと左腕のシールドの造形がすごくカッコよくて俺はこれを選んだ、

しかも仔実装と同じ二十センチほどのサイズしかなく、胸と肩のアーマーが一体式のため聖衣(クロス)を着せると肩関節が前に可動しなくなり、劇中のパンチポーズを再現できなくなるという情けない仕様の安物ではない。

中実装と同じ三十センチほどのサイズで、聖衣(クロス)も肩アーマーが別体式なので自由なポージングが可能になり、手足のアーマーが一方からのはめ込み式ではなく、蝶番のように可動して手足全体をすっぽり覆うことのできる
デラックス版のほうである。

姉妹は一瞬だけうろたえたが、お互い顔を見合わてこくりと頷くと、同時にキグ○ス氷河のフィギュアに向かって突進した。

「「そこをどくテシャァァーッ!!!」」

姉妹は気づいていたのだ。

今まで自分たちを襲ってきた怖いものが動くときは、必ず背後に蠢く黒い何か……すなわち俺がいることを。

しかし出口から差し込む光に照らされたフィギュアの背後にはそれがいない。

今なら大丈夫だ。

万が一フィギュアが動き出したとしても、大きさは自分たちとそれほど変わらないうえ、自分たちと相手なら二対一だ、負けはしない。

二匹ともがそう考え、一気に人形の脇をすり抜けようとしたその瞬間—————

「ダイヤ○ンドダストーッ!!!!!」

どこからともなく聞こえてきた叫び声とともに、前方から凄まじい冷気が吹きつけ、中実装姉妹の体表は一瞬にして凍りついた。

「「テ……ギァ……?」」

俺がフィギュアの背後から、中実装姉妹に向けてゴキブリ駆除用の『氷殺ジ○ット』スプレーを噴き掛けたのだ。



このスプレー、実は実装石の駆除にも使う人間が多い。

食用として真空パックに詰められたり、フリーズドライされても仮死状態で生き延びる実装石にとってはさほど殺傷力の高いものではないのだが、とりあえず動きを止めるには有効だし、瞬間冷凍した後で持ち上げて床に落とすなり
踏みつけるなりして体を砕けば、汚い血や糞を飛び散らせずに始末できるので、屋内に侵入した野良実装の駆除方法としてはそこそこ人気が高いのだ。

氷殺スプレーを至近距離から浴びた中実装の姉妹は、服に覆われていない顔と手足の表面がほぼ完全に氷結してしまっていた。

それでも肘側が凍っていないおかげでなんとか腕を動かすことはできたので、姉実装は自分の顔がどうなっているのか、触って確かめようとした。

 ————— ぺたり —————

何も感じない。

手のほうも顔のほうも、完全に感覚がなくなっているのだ。

顔から手を離そうとする。

 ————— きゅぽん! —————

目に直接触れていた右手に眼球が張り付き、眼窩から引っこ抜かれてしまう。

目も半分凍りついているために曇ってよくは見えないが、赤いほうの右目が取れてしまったことだけは残った左目で確認することができた。

「ヂィィッ!?」

口も凍り付いて上手く声を出せない姉実装が、慌てて左手のほうも離そうとする。

その途端、

 ————— ビキッ! —————

今度は左手が腕ごと顔に張り付いたまま、肘から折れてもげてしまった。

「テビャァァァッ!」

よろけた姉実装が尻餅をついたその瞬間—————

 ————— がしゃん! —————

足の根元がガラスのように砕けて腰から切り離され、バランスを失った体はそのまま後ろへと倒れていって………

 ————— ボキリ —————

姉実装の首が折れて、妹実装の目の前に転がった。

「テェェ……………テギャァァァァァァァァ!!!」

姉の無惨な姿を目にして動揺した妹実装は、思わず頭を抱えてしまった。

その手の先は、凍りついた自分の後ろ髪に張り付き……

 ————— ぼきり —————

妹実装の両腕が肘から折れ、後ろ髪のほうに張り付く。

「テヒァ!?」

そして背後を確認しようと首を後ろに向けたようとした瞬間、妹の首も折れて地面に転がった。

しかし、実装石という生物はこれでもまだ死なない。

「「……テェ……エ………」」

首だけになっても死ぬことができず、地面に転がった姉妹の頭部が、流した血涙の温度で徐々に解凍されていく。

そこへ、姉妹の実装生の最期を告げる死神がやって来た。

………まあ俺自身なのだが。



俺の手には、玩具のリボルバー拳銃が握られていた。

これはエアガンだのモデルガンだのという上等なものではない。

三十年ほど前には駄菓子屋で売っていた、火薬を使って大きな音とほんの少しの煙を出すというだけのものである。

直径二ミリか三ミリほどしかない、小さな樹脂製の筒に火薬が詰まった薬莢が環状に繋がっている。

安っぽい玩具ではあるが回転式弾倉の動きは正確で、起こした撃鉄が薬莢の尻を叩くと火薬が発火して大きな音を立てるのだ。

一センチ四方ほどの紙火薬を大きなハンマーが叩いて発火させるものが運動会などのスタート合図用に使われるが、それを玩具化したものだと思えばいい。

この玩具、それ自体には何の殺傷力もないが、至近距離ではもの凄い音がする。

『ロシアンルーレットごっこ』と称して自分のこめかみに銃口を向けて引鉄を引いたときなど、耳がしばらくキーンと鳴りっぱなしで、鼓膜が破れるかと思ったほどだ。

俺が何をやりたいのか、もう誰にでも分かるだろう。

こいつらの耳に銃口を押し当てて、その強烈な破裂音を聞かせてやろうというのである。



中折れ式の部分を開放し、弾倉に六連発の薬莢を被せて準備する。

薬莢がいくつか残っていたことにも驚いたが、前の日に何度か試射してみたところ、火薬もしけっていなかったのには心底驚いた。

さて………いよいよこいつらにトドメを刺してやるとしよう。

中実装姉妹の頭部を二つ、頬が密着するぐらい近くに並べて置き、銃口を挟み込むようにして二匹の耳を摘む。

破裂する薬莢のすぐそば、つまり撃鉄のほうを耳に近づけたほうがいいように思うかもしれないが、このほうが銃身内で反響した音が直接耳の中へ送り込まれるので効果が大きいだろう。

「「テェ……?」」

血涙を溢れさせ続ける中実装姉妹の目が、素顔を晒した俺を見上げる。

その三つの目に向けて俺はにっこりと微笑み、引鉄を—————引いた。

 ————— ズパァン!!!!!!!!!! —————

乾いた、しかし凄まじく大きな音が蔵の中に響き渡る。

「「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッ!!!!!!!!!!」」

中実装姉妹が大きく目を見開き、口を限界まで広げて悶絶する。

二匹とも両耳の穴から血が流れ出てきたのを見ると、左右の鼓膜が一気に破れたらしい。

もしかしたら脳に物理的なダメージもあったのかもしれないが、いずれにせよ音による衝撃で脳をグチャグチャにかき回されたかのような苦痛を味わったことだろう。

俺自身の耳も少々痺れているところに、倒れ付している体のほうから『パキン!』『ピキン!』という乾いた音が聞こえた。

摘出した偽石を砕くと肉体のほうにもダメージが加わるように、胴体から切り離された頭部の苦痛も偽石へとフィードバックされるのだ。

三つの目が白濁してゆき、中実装姉妹が絶命したのを知らせてくれる。

「ふふん♪」

俺は思わず満足げな息を漏らした。

「いやあ殺した殺した♪ まあまあ面白かったぞお前ら」

殺し方としては単純すぎるものではあったが、昔遊んだ玩具を使うという変わった趣向によって実装石をビビらせるのがなかなか楽しかった。

人間の都合や嗜好、趣向に合わせて右往左往し、様々な絶望や苦悶の表情を見せてくれる………つくづく実装石とはなんと楽しい生き物だろうか。


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「ご主人サマ、終わったデスゥ?」

蔵の外に出ると、グリンが声をかけてきた。

グリンは蔵の入口と地面の間にある三段ほどの石段に屈み込み、蛆実装の腹をプニプニしてやっていた。

ああ、そういえばまだこいつが残っていたっけ。

マンボウなみに死にやすい蛆実装は暗闇に閉じ込められた恐怖だけで偽石を崩壊させかねないので、外でグリンに相手をさせていたのだ。

蛆実装は家族が全滅したことも知らず、無邪気に「プニフー♪ プニフー♪」と鳴いている。

ああ、この姿を見ているだけで新たな殺意が湧き上がってくるなあ。

「グリン、そいつをここに置け」

蔵の床を指差し、蛆実装を木の床に横たえさせる。

そして俺はポケットからキャラメルの箱ぐらいの大きさの、黄金に光るライターを取り出した。

いや、正確にはライターではない。

あくまで“ライターのようなもの”だ。

その上部をぱかりと開くと、中にゴチャゴチャとした機械のようなものが見える。

そこから折りたたまれていた腕らしきものを引き出し、頭らしきものを引き出し、下のほうから足らしきものを引っ張り出す。

もうお分かりだろう。

これは俺たちの世代の間で大流行した、ライターを模したロボット『ゴー○ドライタン』の玩具である。

これも『キグ○ス氷河』のフィギュアと同じく、肩関節が固定で肘関節しか動かない安物のほうではなく、ちゃんと肩まで動くデラックス版のほうだ。

これは爺ちゃんが買ってくれたんだっけ。

つくづく俺は恵まれた子供だったんだなあ………と、自分の境遇に感謝する。



変形させてロボット形態にしたゴー○ドライタンを、蛆実装の真上でふらふらと動かしてやる。

「ピカピカ、レフ♪ キレイレフ〜♪」

蔵の入口から差し込む朝の太陽に照らされてキラキラ光るゴー○ドライタンを見て、蛆実装は手足と尻尾を嬉しそうにピコピコと動かしている。

俺は相撲の蹲踞(そんきょ)のような姿勢で座り、そんな蛆実装を上から覗き込むようにして、ゴー○ドライタンがちょうど蛆実装の真上にくるように位置を調整した。

そしてゴー○ドライタンの右腕を前に伸ばし、床から四十センチぐらいの高さに構えると、蛆実装の腹をめがけてしっかりと狙いを定めて………

「ゴー○ド・クラーーーーッシュ!!!!!」

叫ぶと同時に、持っている手を離した。

ゴー○ドライタンは回転したり方向を変えたりすることなく、そのままの姿勢で落下してゆき—————

 ————— ズドム! —————

「レビュェア!!!」(パキン!)

ゴー○ドライタンの拳が腹を突き破り、蛆実装が血と糞の混じったものを口と総排泄孔の両方から噴き出して絶命する。

拾って持ち上げてみると、ゴー○ドライタンの拳は蛆実装の体を完全に貫通していた。

そりゃあ頭と手足を除く本体のほとんどがダイキャスト製のデラックス版である。

そんなものを落とされたら、本来なら蛆実装など跡形もなく潰れてしまってもおかしくはない。

今回は腕だけを伸ばしていたから、逆にそれがつっかえ棒となって他の部分が接地せず、蛆の原型を留めたのである。

蛆の死骸を見てみると、床まで貫通した穴に砕けた偽石の欠片が散らばっているのが見えた。

蛆実装は腹部を貫かれた痛みでパキンしたわけではなく、ゴー○ドライタンの拳がたまたま偽石のある場所をピンポイントで貫き、砕いたのだ。

うーん、拳の構造上『敵の心臓部を掴み出す』という演出までは再現できないが、ある意味かなり劇中に近い殺し方ができたではないか。



本当に今回の遊びは大成功だったと思う。

玩具で戯れるという子供の遊びと、実装石を虐待するという大人の遊び、それらを見事に融合させて遊ぶことができたのだ。

いや、小動物を虐待するというのは本来子供が持っている残虐性の賜物であり、子供の遊びであるといえる。

そういう意味では、実装石の虐待というものも童心に帰っての遊びなのかもしれないな。

そんなことを考えつつ、俺は満たされた愉悦を満面の笑みで表しながら、新鮮な朝の空気を思い切り吸い込んだ。


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その後、俺は使った玩具を全て処分することにしたが、さすがに実装石の血や糞で汚れたまま捨てるのは忍びなかったので、ちゃんと綺麗に洗って消毒した後、今まで自分と遊んでくれた感謝を込めて礼を言ってから
廃品回収の業者に引き取ってもらった。

ヤフ○クやホビーショップなどに売ることも考えたのだが、あちこちメッキが剥げていたりシールが剥がれたりしていたうえ、TVの『なんでも鑑○団』では「箱が残っていたらもっと高値がついたのに……」みたいなことを
言っていたので、箱のないこれらの玩具にはさほど大した値はつかないだろうと思って諦めたのだ。



そして後日、友人に連れられて○阪にある『まん○らけ』に行ってみたところ、箱なしのうえシールも破れたト○ンスフォーマーのコ○ボイ司令官が七千円近い値段で売られているのを見て、激しく後悔した………

「捨てずに売ればよかった!!!」


-END-


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あとがき

今回は実装石の描写よりも、玩具そのものの描写にこだわってみました。

もしも作者と同じ世代で、同じ玩具で遊んだ経験のある方なら、色々と思い出していただけたことと思います。

とはいえ、作者自身も残してあった実物を見て書いているわけではなく、うろ覚えの記憶を引っ張り出して書いているので、玩具の構造などに一部間違った部分があるかもしれませんがご容赦下さい。
(ちなみに最期のオチは実話だったりします……)

次回作ですが、まだまだ三つか四つぐらいストーリーの出来上がっているプロットがあるので、順番に書いていきたいと思います。

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1 Re: Name:匿名石 2016/08/14-20:32:26 No:00002474[申告]
> 「捨てずに売ればよかった!!!」

ホンマに…
蟲汁で汚すのもったいねー!と思ったww
2 Re: Name:匿名石 2016/08/14-20:44:53 No:00002475[申告]
作者が比較的裕福だった、ということしか分からない・・・


ちなみに俺の世代で、金持ちの玩具といったら「サンダーバード秘密基地」だったのだが。
3 Re: Name:匿名石 2016/08/14-21:11:55 No:00002476[申告]
37歳~40歳ぐらいの人が直撃世代のネタですな
4 Re: Name:匿名石 2016/08/15-01:31:19 No:00002477[申告]
俺のアニキ世代だなw
ゾイ○とかリバイバルブームしてるので若い世代にも通じるかも知れない
奇抜な虐待方法でこんな手があったか!と驚かされたぜw
5 Re: Name:匿名石 2016/10/01-22:32:59 No:00002551[申告]
リバイバルというかアニメの方の歌詞、それもTVでは流れない2番ですが

ちょっとぐらい汚れたって かまいやしないその涙に嘘はないだろう
降りかかる悲しみさえも 全部引きつれて上を向いて

何故かここが糞蟲で汚れるおもちゃと虐待と結びついたのです乙
6 Re: Name:匿名石 2026/03/26-01:23:48 No:00009920[申告]
糞蟲の虐待するのに金に頓着してんじゃねーぞジソ人間!
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