俺は実装石専門の闇医者である。 “闇”といっても別に非合法な治療行為をしているわけではなく、ましてや中二病的な意味でもない。 (そもそも虐待行為が法に触れない実装石への非合法な行為など存在しないのだが) 事故などで潰された飼い実装の偽石と脳だけを抜き取り、公園の元気な野良実装の体と入れ替えて復活させたり 虐待派の依頼でムカデ人間ならぬムカデ実装を作ってみたり、表立って経営している病院のような一般的な治療行為は行わず 実装石への非実道的な医療行為というか、多少背徳的な医療行為を行っているのだ。 そして医者とはいえ、非実道的な行為を行っているあたり、愛護派では決してない。 むしろ虐待派であり、実装石の肉体を切り刻んだり縫い合わせたりするのが大好きで、その趣味が高じて闇医者じみたこともするようになっただけだ。 そんな俺がネットに張り出した広告に、わずか三日の間に百件近い依頼と問い合わせが殺到した。 『あなたの仔実装、蛆ちゃんに戻します!』 基本的に蛆実装というのは純粋無垢な個体が多く、いわゆる糞蟲が少ない。 たまに例外もあるが、そのような個体はショップに卸す生産工場では選別、野生においては間引きによってすぐに処分されるため、人の目に留まること自体が稀である。 蛆実装が純粋無垢だというのは、そもそも脳の容量が仔実装などに比べて少ないことによるのだが、蛆実装が他者に対して愛嬌を振りまくのは 一匹では食事も排便も満足に行うことができず、できることといえばせいぜい這うこととレフレフ鳴くことぐらいで、消化〜排便のために要求する『プニプニ』は まさに生殺与奪の権利を相手に委ねる行為に等しいという、あまりに脆弱で儚すぎる自らを守るための本能によるところが大きい。 そのため、ある程度自立した活動ができる仔実装に成長するとそれが失われ、糞蟲の本性をあらわす個体も少なくない。 実装石がそのような生物であると知ったうえで飼っている大人の愛護派や、最初からどんな性格であろうと虐待の対象としか見ていない虐待派にとっては そのようなことはさほど問題ではないのだが、例えば実装石をただ愛らしい生物だと勘違いしている女性や、実装石に自分の子供や孫を重ねる老人 さらには情操教育の一環として子供に実装石を育てさせる親など、実装石という生物の性分に致命的な過誤を抱いた一部の愛護派にとっては 愛情込めて育てた蛆が、仔実装になった途端に糞蟲と化すというのはショックが大きい。 そのような人々を対象に、糞蟲化した仔実装を純粋無垢な蛆実装の状態に戻すというサービスを考え付いたのだが、これが思った以上の反響を呼んだ。 すでに俺の部屋には、全国から預けられた仔実装のケージが三十ばかり積み上げられている。 ケージは糞が投げつけられないように透明なプラ板で囲ってあるし、糞蟲どもの身勝手な罵詈雑言を聞いても殺意しか湧いてこないので、リンガルは起動させていない。 このペースで預けられる仔実装が増えていけば、そのうち捌ききれなくなりそうだ。 さっさと一匹ずつ処置をしていかないと。 俺はケージの一つを掴んで、“手術室”へと運んだ。 手術室といっても、中には七十センチ四方ほどのテーブルが一つあるだけだ。 その上にはいくつかの“手術道具”と、真ん中に仔実装を縛るためのベルトがついたまな板が置かれている。 俺はケージを手術台代わりのテーブルの上に放り投げると、リンガルを起動させた。 「テチャァァッ!!! おいバカニンゲン! カワイイワタチにこの扱いはどういうことテチャァァ! 謝罪の証としてさっさとステーキとコンペイトウを持ってこいテチィ!」 相変わらずブチ殺したくなる罵詈雑言だ。 こちらの話を聞かせるためでなければ、リンガルなど起動したくはないのだが。 「これからお前を蛆実装に戻す」 「テ?」 俺に言われたことが理解できないのか、仔実装は頭の上に「?」を浮かべている。 「チププwww このニンゲンはバカテチィ? なに言ってやがるか全然イミフメイテチィ」 とりあえずこれからすることについて宣言はしておくが、こいつが理解しようがしまいが、それはどうでもいいことだ。 俺はまず仔実装の服に手をかけ、それを無造作に引き裂いて脱がせた。 「テチャァァーッ!!! なにするテチィィィッ!」 仔実装の叫びを無視して、さらに後ろ髪を引き千切る。 蛆実装にも前髪だけはあるので、それは残しておく。 「テヂィィィーーーッ!!!」 それにしてもテチャテチャうるさい。 口に何か詰め込んでやろうかとも思ったが、引き抜かれた自分の髪を見ると、急に口を開けたまま放心状態で固まってしまったのでそのまま続けることにする。 仔実装をまな板の上に寝かせ、ベルトで腹部を固定すると、そこでようやく仔実装は自分が虐待派らしき男に捕まり、何やら恐ろしいことをされるのだということに気づいたらしい。 「テ……ニ、ニンゲン、ワタチに何をするつもりテチ! ワタチに何かあったらゴシュジンサマが黙っていないテチィ!?」 震える声で精一杯強がってみせる仔実装。 だが、今までさんざん愚弄したであろう飼い主の威光をこの期に及んで振りかざそうというあたり、まだ躾が足りないらしいな。 「そのご主人様に依頼されたんだよ。クソ生意気で偉そうでどうしようもない糞蟲のお前を、純粋で可愛かった頃の蛆ちゃんに戻してくれってな」 「テ……テェェッ!?」 さて、いよいよ糞蟲仔実装を純粋無垢な蛆ちゃんへと戻してやろうじゃないか。 まずは仔実装の体にサーチャーを当てて偽石の位置を特定すると、そこにカッターナイフを当てて無造作に切り開く。 闇医者を名乗っているとはいえ、本当は一介の虐待師にすぎない俺がメスなど持っているはずもない。 さらに傷口にピンセットを突っ込み、乱雑極まりない動きでグチャグチャと内臓をかき回して偽石を摘出した。 「テギャァァッ!」 取り出した偽石をフィルムケースのようなプラ製の筒に入れ、そこに希釈していない純生の実装活性剤を注ぎ込むと、胸の傷はあっという間に塞がった。 これはこれから行う虐待……もとい医療行為によって、偽石が崩壊するのを防ぐための処置だ。 というか、これをやっておかないと、どんな仔実装であっても処置の途中でほぼ確実に死ぬ。 さらにジタバタと宙を掻く仔実装の右手をラジオペンチで挟み“ミヂィッ!”と潰す。 「ヂギャァァァーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」 続いて左手、右足、左足と、仔実装の四肢をラジオペンチで次々に潰していく。 挟み潰し、そのままねじり、引き千切る。 「テヂャァァ!!! チュグワァァッ!!! ヂェアァァァッ!!!!」 実はこの行為にはあまり意味はないというか、蛆実装に戻すという本来の目的とは関係のない行為である。 ただ苦痛を与え、俺を含む人間に対する恐怖を植え付けておいて、今後言うこと聞かせやすくするためのものだ。 ひとしきり痛めつけたところで、仔実装の手足を挟めるようにスケールアップした“爪切り”を使い、根元を二〜三センチほど残して手足を全て切り取った。 爪切り状のものを使うのは、切り取った手足の先を丸っこくするためだ。 そしてその傷が回復しないうちに、傷口を手早く“半田ごて”で焼き潰す。 これで仔実装は蛆実装と同じく、コブのような手足をピコピコと動かすことしかできなくなった。 「テギャァーーーーーーーーーーーーーーァァア!!!!!!!!!!」 ああもう、うるせえ。 だがここからは口の中に処置を行わなければいけないので、口を塞ぐわけにもいかない。 俺は仔実装の鼻と唇の間あたりに親指を押し当て、骨をバキリと砕いた。 「テギァ!」 下顎の骨も同じようにパキパキと押し割り、歯を固定している顎の骨を粉々にする。 そうしておいて、小型のジャッキのような自作の器具を使って無理やり口を開けさせ、ラジオペンチを使って歯を一本一本抜く。 歯を一本抜き終わったら、その傷口を半田ごての先で焼いて歯が再生しないようにする。 作業している間に顎の骨が再生してしまうので、そのたびに歯を抜きやすいように顎の骨を押し割る。 それを全ての歯がなくなるまで何度も繰り返す。 とても時間のかかる面倒な作業だが、これが「〜レフ」という、蛆実装らしい喋り方をさせるために一番重要な工程なのだ。 人間でも『タ行』の発音は、舌を前歯の裏に押し当てて弾くことによって行う。 それを全て抜かれれば、仔実装の特徴である「〜テチ」という発音ができなくなり、そのまま喋ろうとしても「〜レヒ」という、蛆と似たような言葉しか発することができない。 これによって随分と口調を蛆実装に近づけることができるのだが、さらにここで先ほど行った虐待が生きてくる。 顎の骨が再生したところで、仔実装に話しかける。 「どうだ、これでずいぶんと蛆実装らしく喋れるようになっただろう」 「レ……ヒ……ど、どうしてレヒ……どうしてこんなことをするレヒィ……」 「『レヒ』じゃなくて『レフ』だろう? お前の飼い主はな、お前に可愛かった頃の蛆ちゃんに戻って欲しいんだよ。それができないならお前は殺されるか、少なくとも捨てられるのは免れんぞ」 「レェェ………」 「蛆と変わらないその姿じゃ、まともに生きていけないのはお前もよく分かるよな? お前がこの先も捨てられずに生きる方法はただ一つ、『可愛い蛆ちゃん』を演じること、蛆実装になりきることしかない」 「レ……わ、わかりました『レフ』………」 「そうだ、それでいい。だが蛆になりきるためにはもう少し頑張らないといけないことがある」 「レェ?」 俺はほぼ蛆実装と化した仔実装の体を掴むと、左右から力を加えて、上半身の肩甲骨と鎖骨、下半身の骨盤をバキバキと砕いた。 「レギャァァァァァァァッ!!!!!!!!!!」 手足を短く切り詰めたとはいえ、その配置は人間とほぼ同じであり、腕は肩のせいで左右に分かれ、足は下の方に向かって生えている。 蛆実装と完全に同じようにするためには、手足の配置そのものを変える必要があるのだ。 さあ、いよいよここから最後の仕上げだ。 俺は特注で作らせた蛆実装の“おくるみ”と呼ばれる服を用意し、その中に骨が砕けてぐったりとした仔実装の体を詰め込んでいく。 「レェェ……き、キツいレフ……く、苦しいレヒィ………」 キツいのは当然だ。 この服は全く伸縮性のない特殊な素材で作られており、しかもわざわざ仔実装の体型よりも少し小さめに作ってある。 これがギブスとなって、手足が蛆実装と同じように前にしか向けられなくなり、砕けた骨もそのまま再生して歪んだ状態で固定されてしまうのだ。 さらに、体を変型させるだけなら必要のない頭部などまでギチギチに締め付けるサイズにしてあるおかげで、成長そのものが阻害され、かなり長期に亘って『可愛い蛆ちゃん』の状態を維持することができる。 成長に合わせて少しずつ服のサイズを大きくすることで、本来なら成体実装になるはずの時期になっても、その半分ぐらいの『大きめの蛆実装』までしか成長しないことは、公園の野良実装を何十匹も使って実験済みである。 おまけに、さすがにそこだけは再生不可能だった蛆実装の尻尾まで、その部分にウレタンを詰め込むことで再現している。(動かすことはできないが) 砕けた骨、そしてわざと再生不能にした傷以外が再生するのを待って、全ての処置は完了である。 服を脱がせたらそのえげつない処置の跡が見えてしまうのだけが難点だが、飼い主には最初から“そういう処置をする”と伝えてあるので(それが多分に虐待を含んでいることは隠してあるが)問題はない。 俺は見た目だけならすっかり蛆実装と化した仔実装をケージ内に戻し、ほんの少しの実装フードと給水機、そして偽石を活性剤に浸したプラケースとともにダンボールに入れて梱包する。 そしてク○ネコヤ○トの送り状を貼り付けて完成だ。 「ふう……」 一仕事を終えて、俺は自室のソファーに座り込んでため息をつく。 あの仔実装は蛆実装へと作り変えられて、これで幸せになれるのだろうか? 虐待とともに「蛆を演じる以外に生き延びる方法はない」と俺が言い含めたことで、とりあえず糞蟲性は影を潜めるかもしれない。 とはいえ、自分で勧誘しておいてこのような言い方をするのも何だが、少なくともこんな身勝手な依頼をする飼い主は間違いなく愛“誤”派だ。 それに、口調そのものは蛆実装のそれにすることはできても、成長に伴う声変わりだけはどうしようもない。 いずれはただの不気味で不自然な生物と成り果て、それに相応しい扱いをされて、どのみち長生きはできないだろう。 そもそもそんなことは虐待派の俺が心配することではないしな。 「えーっと次の依頼は……」 俺は申し込み票を確認しつつ、次の“患者”が入ったケージを探す。 そこには、ひときわ大きなケージに入れられた成体実装が、醜い顔で涎を垂らしながら「デスー……デスー……」と寝息を立てていた。 「これは……さすがに無理あるだろ!」 -END-

| 1 Re: Name:匿名石 2016/04/01-19:47:44 No:00002107[申告] |
| いいですねぇ。ありがとうございます。
おくるみを取り上げて醜いハゲハダカ姿にして鏡の前ではいずりまわせたい。 |
| 2 Re: Name:匿名石 2016/04/01-20:58:12 No:00002109[申告] |
| これは面白い!最高だ!!
もし実装が実在していたら人の手に委ねたりせず医者役も自分でやってみたい 仮面とボイスチェンジャーでも使えば馬鹿な仔実装なら別人だと騙されるだろう 自分で奇形にしておきながら、必死で蛆ちゃんを演じる仔実装を眺めたい ※1のアイディアも捨てる前にもちろん実行 |
| 3 Re: Name:匿名石 2016/04/02-12:27:47 No:00002110[申告] |
| 愛誤派に必死で媚びて生き地獄を味わった上にあっさり飽きられて公園にポイ捨てされる未来を想像しちまったw
あと闇医者の描写に妙なリアル感を感じたw |
| 4 Re: Name:匿名石 2016/04/02-19:17:46 No:00002111[申告] |
| 面白かった!続きが気になる終わり方がいい!GJ! |
| 5 Re: Name:匿名医師 2016/04/08-17:17:12 No:00002148[申告] |
| 最後のオチにクスリ |
| 6 Re: Name:匿名石 2016/11/13-23:52:44 No:00002802[申告] |
| 実装と飼い主のありようをちょっと考えさせる背景語りからの成体オチで駄目だった… |
| 7 Re: Name:匿名石 2017/12/25-20:52:15 No:00005123[申告] |
| 代わりに適当な蛆実装を詰めて送り返せばいいのでは?
ボブは訝しんだ |
| 8 Re: Name:匿名石 2026/03/26-00:59:21 No:00009919[申告] |
| サイズ規定と出来ない例の画像貼らないから〜 |