「見ろよ!としお!このガチャポン、100円なのにLSIゲームが入ってるぞ!」 「えっ、マジかよ!」 小学生の夕暮れ、俺はあきおの声に振り返った あきおの指差す先を見ると、そこは駄菓子屋の棚先 そこには実装危機一髪ゲームと書かれたLSIゲームの写真が貼ってあった イラストには、かわいくディフォルメされた実装石が果物を片手に 上から降ってくるカナヅチやオノを避けている そして、商品の見本写真は見紛うことなき憧れのLSIゲーム! 灰色の画面にドット絵になった実装石が表示されている ゲームは複数種類あるらしい 「俺、やるよ!」 「俺も、俺も」 俺とあきおは争う様にしてガチャポンマシンに100円玉を投入し ガチャガチャと音を立てて機械を回した ころころと転がるガチャポンをひっつかむと もどかしくもカプセルをこじあける そこには… 安っぽいプラスチックの枠の中に一匹の小さな実装石が寝ている これは豆実装とか言う奴だ、そういえば給食に出たことがある 生きているのは初めて見た 「けっ、なんだよこれ、詐欺じゃないか!としお、文句言ってやろうぜ」 あきおが悪態をつきながら駄菓子屋に向かうのを止める よく見るとガチャポンマシンには”みほん以外にも楽しい景品がたくさんはいっています!”と書いてある 「あきお、やめとけよ、こういうもんだって」 「だけどよ、とし…」 「レリュー?」 あきおを遮るように小さな実装石の声が聞こえた 声の元をたどると、俺のゲーム機の豆実装が起きたみたいだ 「レリューン♪チィ♪チィ♪」 豆実装は頬に手を当てると首をかしいでこちらにいわゆる”媚び”を売る 「うっせーな!そいつを貸せよ!」 あきおは俺の手からそのおもちゃをもぎ取ると、めちゃくちゃに振り回した しかし、おもちゃの中は豆実装がケガをしないよう柔らかくできているようで 豆実装は中でころころと転がってはチィ、チィと楽しそうに声をあげる いよいよあきおは頭に来たようでおもちゃを地面に叩きつけようとする 「おい、人のもんに何するんだよ返せよ」 俺はあきおからそのおもちゃをひったくった あきおは代わりに自分のおもちゃを地面に叩きつける レヂ!という短い悲鳴を残して地面に小さな赤緑の染みが出来る そしてあきおは不満顔で俺に言う 「じゃあ、としお、お前それどうするんだよ」 「値段分は遊ぶに決まってんじゃん、えーっと、どうするんだろ、これ」 おもちゃは四角いプラスチックの枠で中央は透明なプラスチックでできており、中には豆実装が見える そしてプラスチックの枠の下にはボタンがみっつある 左のボタンにはオノの絵、右のボタンにはトンカチの絵、真ん中には何もなしだ まずは左のボタンを押す、するとガシャ!という音とともにオノのシールの貼ってある棒がせり出す もしこの棒のあったところに豆実装がいたらひとたまりもなく潰れていただろう 豆実装自身もこの棒に驚いてしきりにレェレェと鳴いている それでは、と右のボタンを押す、するとガシャ!という音とともにトンカチのシールの貼ってある棒がせり出す 左側と同じく、この棒のあったところに豆実装がやはり潰れていただろう 生活空間でのあんまりな出来事に豆実装は大慌てだ 俺は面白くなってきて右に左にボタンを押した いつしかあきおも俺の背中越しにこの様子を覗き込む 箱の中では豆実装がレヒレヒ鳴きながら右に左に逃げ回るが 棒は細く、それぞれ右端と左端にしか射程がないために 箱を傾けたりゆすったりもして見るがどうしても豆実装が潰れない それにどうやら、一度にひとつのボタンしか押せない構造になっているらしく ガチャガチャとボタンを連打することはできない そのうち、真ん中にいれば安全なことに豆実装が気づき 真ん中に堂々と居座ってこちらを見据えてレププと笑っている そこにきて、あきおが横から口を挟んできた 「なあ、真ん中のボタンって何に使うんだ?」 そういえば真ん中のボタンは使っていない 俺は何の気なしに真ん中のボタンを押して見る ガシャ!という音とともに、左右の端に果物の形をしたキラキラしたものが出てくる それを見て豆実装の顔色が変わった だらしなく開いた兎口から涎を垂らしながらその果物の形をしたものを見ている みたところ、砂糖菓子か何かのようだ レッ!と声をあげて恐る恐る右側の果物に近づく豆実装 よし、いまだとばかりに真ん中のボタンから指を離した その瞬間に理性を取り戻したか豆実装は真ん中に逃げ 俺の押した右ボタンに連動したトンカチは空しく宙を切る その後も何度か繰り返したが、同じことの繰り返し 真ん中のボタンで左右の端に釣るも、オノやトンカチで攻撃するには 一度真ん中のボタンから指を離す、つまり果物を仕舞う必要があるため 豆実装はレヒィレヒィと声をあげてコロコロと器用に射程外に逃げてしまうのだ さきほどから延々と豆実装はペロペロと果物を舐めては逃げての繰り返し そのとき、ぐぅ、とあきおの腹がなった 「わりぃ、腹減ってて…」 その時、俺は閃いた 真ん中のボタンを押す レププと笑顔で果物に近づく豆実装 だが、今度は一舐めもさせずにボタンから指を離す レッ!?と驚いた顔で真ん中の安全地帯に逃げ帰る そして俺はまた真ん中のボタンを押す また一目散に果物に走りよる豆実装 だが、そうは問屋が卸さない、再びボタンから指を離すと 豆実装は歯軋りをして真ん中の安全地帯に逃げ帰る それを繰り返すうちに、だんだん豆実装から余裕の態度が無くなってきた 考えて見ると、この小さな箱の中にはほかに何もない 真ん中のボタンを押したときに出る果物の形の砂糖菓子だけが唯一の食料なのだ そして、その唯一の食料は舐めようとすれば仕舞われる、その繰り返し 地団太を踏んでも、パンコンしても、赤緑の涙を流しても同じことの繰り返し そして次に真ん中のボタンを押した時には、とうとう豆実装はレヒィ、レヒィと体を引きずるように だらしなく舌を出して目には赤緑の涙の跡を残して、膨らんだパンツも乾きしなびてだらしなく果物へ向かった 今度は豆実装が砂糖菓子にむしゃぶりついてもボタンを離さなかった 必死でレヒレヒと砂糖菓子にむしゃぶりつく豆実装 そこでようやくボタンから指を離した ガシャ、と音を立てて箱の内部に果物の形をした砂糖菓子が戻る しかし豆実装は必死でむしゃぶりついていたためによろけて転んだ 俺は情けも容赦もなく、右のボタンを押す ガシャ、と音を立てて降り注いだトンカチのシールの貼られた棒が豆実装を潰す 透明なプラスチックの内側に豆実装の赤緑の体液が飛び散る この透明なプラスチックの内側には微妙に凹凸がつけてあったらしく 赤緑の体液が「GAME CLEAR」の文字を浮かび上がらせる 俺は思わずガッツポーズを取った あきおは俺に拍手をした 俺たちは勝った、糞蟲に、そしてゲームに… そして…俺たちは、もう一度ガチャポンを回した まだ見ぬニューゲームを目差して --------------------------------------------------- 今はどうか知りませんが、昔のガチャポンって、表の写真にない景品が出ることありましたね で、端っこに、「これ以外にも楽しい景品が出てきます〜」みたいな注意書きが… 絶対に写真よりショボい景品しかでないんですけれども そんな感じのスクです

| 1 Re: Name:匿名石 2014/10/28-08:54:30 No:00001515[申告] |
| コスモスの自販機でロッチのシール買ってたよりちょっと後っぽいな、昭和60年代くらいのガチャガチャっぽい。
そしてゲームはLSIゲームより面白そうw |
| 2 Re: Name:匿名石 2017/03/17-13:35:50 No:00004529[申告] |
| これLSIゲームよか絶対面白いし製造コストかかってるだろw
ガチャだから2回目以降に何が出たのかが気になる |
| 3 Re: Name:匿名石 2025/07/25-19:38:15 No:00009749[申告] |
| よくこんなアイデア思いつくなすごすぎる |