或る公園の風景 ここはある公園 どこにでもある公園 ただ、そこには実装石がいた。 : : : : : : ある実装石の親仔達の一日が始まった。 「さあ、皆起きるデス」 「「「テチー」」」 「「レフ-」」 この親仔達は仔3匹に蛆2匹の家族だった。 それなりのダンボールハウス、それなりの賢さを持った仔達。 不幸が代名詞の様な実装石にしては幸福と言える家族だ。 今日もいつもと変わらない朝になるはずだった。 「餌を取ってくるデス。おとなしくしてるデスよ」 「ハイテチ」 「わかったテス」 「いってらっしゃいテチュ」 「「レッフー」」 親実装は仔達に言い聞かせて餌探しに出かけていった。 親が餌を探している間、仔達はダンボールの中で遊んでいた。 基本的に親が餌探しに出ている間は家の中で遊び、親が帰ってきて親の目がある所では外で遊べるというルールが存在している。 仔達も親がいない時に外に出ると危険というのを最低限に理解していたので言いつけを守っていた。 家の中にある玩具で遊ぶ仔達。 記憶力が乏しい実装石達には昨日使っていた玩具も今日使い始めた感覚なので飽きる事は無い。 「テチュテチュ♪」 「テッチテッチ♪」 「テチューン♪」 「レッフーン♪」 「レフレフ♪」 仔達は各々の遊び道具で遊んでいる。 しばらく遊んでいると腹の虫(?)が鳴った。 「おなかへったレフー」 蛆がちょうど空腹を訴えた時に親実装が帰ってきた。 「ただいまデスー」 親実装が餌探しから戻ってきた。 手には拾ってきた食料が入った袋が下がってる。 「「「おかえりなさいテスー」」」 「「レッフー」」 仔達は帰ってきた親を全員で出迎える。 「みんなママの約束守ってたデスか?」 「「「ハイテチ!」」」 「「レフレフ!」」 仔達は皆元気よく返事をした。 親実装は近くにいた仔実装の頭を撫でるとにっこりと微笑んだ。 そして、袋に手を入れて今回の戦利品を取り出し始めた。 「今日は大漁デス」 袋から出てきたのは、まず野菜の皮や食べ残しの欠片。 次に出てきたのは身がこびり付いた魚の骨。 その次に出した物に仔達は歓声を上げた。 親が持っていたのは骨付きフライドチキンだったが、その骨に付いていた肉の量が多かったからだ。 食べたニンゲンが大雑把に食べたのであろうかいつも拾う骨よりも肉がこびり付いていた。 「お肉テチ!」 「レフレフ!」 蛆実装が鼻をピスピス鳴らしながら興奮する。 「これは皆で分けるデス」 親実装は骨を一箇所にまとめた。 「これもすごいデスが、次はもっとすごいデスよ」 親実装はニヤリと笑うと袋の残りを出した。 そこにはりんごの芯、果実が少しこびり付いているオレンジの皮。 その他にも分厚く切られたりんごの皮、痛んで捨てられたぶどうの実。 溶けて捨てられたとみられるチョコレートまであった。 「す、すごいテチュ!」 あまりのご馳走に仔の一人がパンコンしそうになる。 「こらこら、落ち着くデス」 興奮状態の仔達を落ち着かせる親実装。 「ちゃんと皆に分けるデス」 そう言って親実装は今日の収穫を仔実装たちに分け始めた。 肉が付いた骨は皆で同時に食べた。 デザートの果物のクズやチョコレートに舌鼓を打ち、仔達は満足だった。 「お外で遊ぶテチー」 「オソトイキタイレフー」 食事が終わってひと段落すると仔達の中でも活発な仔実装と蛆実装が外で遊びたがり始めた。 「わかったデス。食後の運動をするデス」 親実装はダンボールハウスのドアを開けて仔達を外に出し始める。 「「テチューン♪」」 「レフーン♪」 「蛆ちゃん、遊ぶテチュ」 「レフー」 仔達は外に開放された嬉しさに元気よく飛び出す。 「遠くに行ってはダメデスよ」 親実装は仔達が見える所に座る。 遊ぶ仔達の姿を見ている親実装の顔がゆるむ。 「カワイイデス…。いつもお家近くだけで遊ばせるのは辛いデス」 毎日仔達をこのダンボールハウスのすぐ近くで遊ばせていた。 公園の広場に行けばいいが、まだちゃんと走れない仔実装に一人では満足に動けない蛆実装。 とてもじゃないが同族喰いがいるかもしれない広場には連れて行けなかった。 「蛆ちゃんが大きくなったら広場に行くデス。みんなそれまで我慢デス。」 親実装はそう思い、決意を新たにした。 「オネェチャン、プニプニシテホシイレフ」 「わかったテチ」 蛆と遊んでいた仔実装が蛆の腹をぷにぷにし始めた。 「レヒャッレヒャッレッフーン♪」 仔達の中でもこの末っ仔2匹は特に仲がよかった。 いつも一緒に行動をし、いつも一緒に遊んでいた。 その為かその蛆の事はその仔実装にほとんど任せていた。 「蛆ちゃん、たかいたかいして欲しいテチ?」 ある程度腹を押して液糞を出した蛆に仔実装が尋ねる。 「シテホシイレフー」 短い手足を動かして鼻息を荒げる蛆実装。 「じゃあ、いくテチよ」 そう言うと仔実装は蛆実装を抱き上げる。 重量的には仔実装でも簡単に持ち上げられるので上に向かって放り投げるのも問題は無い。 仔実装は腕に力を込めると蛆実装を上に投げる。 「レッフューン♪」 「テチ!」 落ちてきた蛆実装をキャッチする仔実装。 投げるというとそれなりに高さがありそうだがニンゲンからみるとほんの1〜2cm程である。 だが、蛆実装にはそれだけでも満足なのであろう。 「レフ♪オネェチャンモウイッカイレフ♪」 「いいテチよ。テチッ!」 仔実装は気合を入れて蛆実装を上へと投げる。 しかし、これが運命の歯車が狂い始めた時だった… 「レフ?」 何事かと思い蛆実装が間抜けな声をあげる。 「テ?」 投げた仔実装も同様に間抜けな声を上げる。 それもそのはずである。 今投げた蛆をキャッチしようと上を見た時。 蛆実装が空中で止まったのである。 「う、蛆ちゃん。なんでおそらとんでるテチ?」 仔実装が空に浮いている蛆実装に聞く。 「ワカラナイレフ」 しばらく蛆実装は体をくねらせるが空中に浮いたままであった。 「タカイレフー♪」 自分の置かれている状況がわかっていないのか高い所にいるというだけで楽しそうである。 仔実装が蛆実装を下ろそうとジャンプするが実装石のジャンプ力などで届くはずもなかった。 「テェェェ!蛆ちゃん!」 仔実装は涙を流しながらジャンプ。 「レッフーン♪」 蛆実装はそんなことも知らず喜ぶ。 そうこうしている内に空中に浮いている蛆実装よりも上の方で影がのそりと動き始めた。 その影に気が付いたのか仔実装はジャンプするのをやめて影の正体を確認する。 「テ?テチャァァァァァ!!」 影の正体を見た仔実装は叫び声をあげる。 仔実装の叫び声を聞いた親実装は走り出した。 「デス!?どこデス!?」 声のした方へと走り出す親実装。 現場に到着しその光景を遠めではあるが見て親実装も思わず叫ぶ。 「デェェェェ!?」 それもそうだろう。 蛆実装に近づく影。 それは蜘蛛であった。 8本の足を器用に動かしあっという間に蛆実装の近くへと寄る。 蛆実装も蜘蛛に気が付くが 「レフ?プニプニシテクレルレフ?」 蛆実装の本能が出てしまった。 蜘蛛はじっと蛆実装を見ていたが獲物だと認識すると口を開き鋏角で噛み付いた。 「レッピャァァァァ!」 蛆実装の体に鋭い痛みが走る。 「イタイレフー!オネェチャンタスケテレフー!」 短い体をじたばたと動かす蛆実装。 だが、そんな抵抗する蛆実装を尻目に鋏角を刺し続けた。 「テェェェェェ!!ウジチャーン!!」 仔実装は緑と赤の涙を流しパンコンをしながら懸命に届かないジャンプをし続ける。 地面に緑と赤のコントラストが広がる。 「レフ…、ナンダカネムクナッテキタレフ…」 蜘蛛は蛆実装に毒を注入していた。 獲物が暴れないために注入する毒である。 毒がある程度回りだしたのを確認すると蜘蛛は腹部後方から糸を出し始めた。 そして、器用に足を動かし糸を蛆実装に巻き始める。 「テェェェェ!蛆ちゃんをはなすテチ!」 仔実装は近くにあった石を掴み蜘蛛目掛けて投げる。 だが、悲しいかな仔実装の力では蜘蛛に届かず地面に落下してしまった。 「レフー、マッシロレフー」 尻尾から絡まり始めた糸はとうとう顔面まで来た。 「蛆ちゃーん、今行くデスー!」 親実装が蜘蛛の所まで走ってきた。 だが、実装石の走る速度では到底間に合うはずも無く蛆実装は完全に糸に包まれた。 「レ…フ…」 弱々しく聞こえてくる蛆実装の声。 その糸の塊を蜘蛛は自分の食卓へと運び始めた。 「蛆ちゃーん!テェェェェェェェェェン!」 連れて行かれる蛆実装を救うことも出来ず仔実装は大声泣き始めた。 親実装が到着したころには蛆実装はすでに実装石では届かない場所に連れて行かれてしまった。 「デシャァァァァァァァァァ!!」 親実装は蛆実装を連れていく蜘蛛に威嚇するが意味がなかった。 蛆実装が完全に連れて行かれた現場は静かな空気が漂い始めていた。 「う、蛆ちゃーん。テェェェン」 仔実装はただ泣くしかなかった。 親実装も泣きたかった。 自然とはそういうものだ、そう頭で理解していた。 「…もう行くデス。泣いても蛆ちゃんは戻ってこないデス」 親実装は泣き続ける仔実装に非情とも思える言葉をかけた。 「テェェェ!?蛆ちゃんをみすてるテチか!?」 「しょうがないデス…。これが自然の掟デス…」 強いものが弱いものを食らう。 まさに弱肉強食の世界がそこにはあった。 だが、仔実装には理解ができなかった。 「マ、ママはひどいテチ!」 「デシャァァァァ!ママだって泣きたいデス!蛆ちゃんを助けたいデス!」 「テェェェェ!?」 突然大声を上げる親実装に驚く仔実装。 「でも、これが自然デス!ワタシ達がいる世界デス!」 「ママ…」 「わかってくれデス…。蛆ちゃんがいなくなって悲しいのはママも同じデス…」 「…」 親実装の話を黙って聞いていた仔実装。 親実装は賢かった。 故に仔実装も賢かった。 親実装の言っている事はほぼ理解できていた。 だからこそ、だからこそなのだろう。 「…テチ」 「デ?」 仔実装が何かボソボソとつぶやき始めた。 「ワタチの…テチ…」 少しずつだが聞き取れる大きさになってきた。 「どうしたデス?」 親実装が心配そうに声をかける。 「ワ タ チ の せ い テ チ」 今度は親実装にもはっきり聞こえた。 仔実装は親実装が悲しむのは自分のせいだと考えてしまったのだ。 親を思う仔だからこそ行き着いた答え。 「ワタチが殺したテチ。ワタチが蛆ちゃんを殺したテチ。」 壊れたテープレコーダーの様に喋りだす仔実装。 その顔は絶望に満ち溢れ、目は曇りまるで死実装のようだった。 ピシ 「な、何を言ってるデスか!?お前のせいじゃ無いデス!」 親実装は必死に仔実装を正気に戻そうとした。 仔実装が狂い始めてる、そう親実装は理解した。 「ワタチ殺したテチ。蛆ちゃん死んだテチ。死んだテチ。ワタシもテチ。死ぬテチ。蛆ちゃんテチ」 だんだんと言葉が意味を成しえなくなり始めた。 ピシィ 「しっかりするデス!」 親実装は仔実装の肩をつまみ前後に揺らす。 「死んだテチ。死ぬテチ。死死死死死死;@[;`:;*;`[+}」 もう後半の言葉は言葉の意味を持っていなかった。 目の瞳孔を限界まで見開き始め、口も開き舌が抜け落ちるくらいに垂れていた。 「テッチャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」 目の瞳孔が完全に開いた時、仔実装は凄まじいまでの大声で叫んだ。 パキィィン 乾いた音が辺りに響いた。 「デ?」 肩を掴まれていた仔実装が首をダランと後ろに垂れて動かなくなった。 親実装は何が起きたか解らなかった。 解っていたが解りたくも無かった。 死んだ。 だた、それだけだった。 偽石が砕けて死んだ。 仔実装が行き着いた答え。 親実装を悲しませ、蛆実装を殺してしまったと思った仔実装の末路。 「デス?起きるデス…?」 死んで動かなくなった仔実装に話しかける親実装。 「帰ったらご飯デス…、だから起きるデス…」 がくがくと体を揺らすが動くのはダランと垂れた首だけだった。 「嫌デス…。皆で広場に行くデス…」 親実装の顔に涙が流れ始めた。 「起きるデス。もう怒らないデス」 「…」 仔実装は答えなかった。 「デス…。デェ…。デェェェェェェェェェェェェェン!!」 親実装は泣いた。 眼球が枯れるほど泣いた。 服が緑と赤で色が変わるまで泣いた。 抱いている仔実装が砕ける程抱きしめて泣いた。 ただ、泣いた。 親実装は家の前まで重たい足を引きづり帰ってきた。 他の仔達になんて説明するか、そんな事を考えてたら家についてしまった。 「ママテチィ♪」 何も知らない仔実装達が出迎える為に走り寄ってくる。 だが、いつもと雰囲気が違う親実装違和感を感じ足を止めてしまう。 「マ、ママ…?」 親実装は目の前にいる仔実装達を見つめていた。 残った仔達に先ほど死んだ仔実装の姿がだぶって見えてしまった。 「…仔デス」 「テ?」 「お前達はママの仔デス…」 そう細い声で言うと近くにいた仔実装を引き寄せ抱きしめた。 「ママ…?どうしたテチ?」 「ママ、妹ちゃんと蛆ちゃんはどうしたテチ?」 2匹が死んだ事も知らない妹仔実装が尋ねる。 「あの仔達は遠くに行ったデス…。もう帰ってこないデス…」 「テチ?もう会えないテチ?」 「もう、会えないデス…」 一番年上の姉仔実装は理解した。 もう2匹がこの世にいない事を。 「妹ちゃんと蛆ちゃんはきっとニンゲンさんに拾われたテチ」 そう言って他の仔達に説明した。 「そうなんデチ?」 妹仔実装は親に聞いた。 「そ、そうデス」 「妹ちゃんと蛆ちゃん、うらやましいテチ」 今頃暖かいご飯でも食べてると思ったのか妹仔実装が頬膨らます。 「でも、幸せになったならよかったテチ♪」 親実装は胸が締め付けられた気分だった。 仔を悲しませない為に嘘をついた。 「そうテチ♪」 姉仔実装も同じだった。 母親と同じ嘘をついた。 「テチューン♪蛆ちゃん遊ぶテチ♪」 安心したのか蛆と遊び始める妹仔実装。 その後ろ姿を見て親実装は複雑な表情だった。 「ママ…」 姉仔実装が親実装に近づく。 「デ…」 親実装は無言で姉仔実装を抱きしめた。 姉仔実装も親実装を抱きしめた。 親実装は誓った。 この仔達だけでも守ると。 : : : : : : ここはある公園。 どこにでもある公園。 ただ、そこに実装石がいた。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 初スクです。 後半がgdgdになってしまいました。 作品内容は実装石にとっては重大な事でも 人間にとってはただの日常という感じです。
