タイトル:【虐】 実装のいる風景6 夏の夕暮れ
ファイル:実装のいる風景6 夏の夕暮れ.txt
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初投稿日時:2007/06/22-22:32:30修正日時:2007/06/22-22:32:30
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実装のいる風景6 夏の夕暮れ


 今日はどんよりした一日で、夕暮れになっても蒸し暑い。
 この時期は畑の草取りが大変だ。
 ちょっと目を離すと、すぐ草が大きくなる。

 草取りに息子と居候の実装紅を徴発した。
 ぶつぶついう前に手を動かせ。
 実装紅もツインテールで刈り取るな。ちゃんと根まで抜かんか。


 オレが手鍬で雑草の根を掘りおこしていると、実装紅がダワダワ騒いでこちらにきた。

 リンガルを起動して何事か聞いてやる。

 「スゴイのダワ 見るのダワ アリさんが引越ししているのダワ」

 ピンときた。
 ああそうか、ちょうど蒸し暑いからな。

 地面を面白そうに息子が眺めている。
 何度見ても面白い光景だから見ていたい気持ちはわかる。
 オレも子供のころ、日が暮れるまでこの行列を追いかけていたことを思い出した。
 たぶんこの調子では草むしりがはかどらん。
 さっさと草取りを再開できるように、これは引越しじゃなくサムライアリのドレイ狩りなんだ
と教えてやる。


 結婚飛行の後、サムライアリの女王アリは単身クロヤマアリの巣に突入する。
 この襲撃に失敗することもあるが、うまく巣の女王アリを倒したサムライアリの女王アリは
女王のにおいを体にすりつけて自分が女王だと偽装する。
 この偽装によって巣のクロヤマアリは今までの女王と同様にサムライアリの女王アリを世話
するようになる。
 サムライアリの女王アリの産む卵からはサムライアリが生まれる。
 しかしサムライアリは自分で餌取りや幼虫の世話などの労働をしない。
 だからこの時期になると、サムライアリは新たにドレイにする働きアリを確保するため他の
アリの巣を襲撃する。サムライアリが自分で働くのはこの時だけだ。
 もちろんクロヤマアリは普通の生物が巣を襲撃してきたら兵隊アリなどが対応する。
 しかしサムライアリはクロヤマアリの防御システムを効果的に無効化する手段を持っている。
 社会性昆虫であるアリはフェロモンによって行動する。
 サムライアリは襲撃の際にクロヤマアリを幻惑するフェロモンを分泌する。
 その結果、クロヤマアリはサムライアリは襲撃の対して何の反応も示さず、巣に侵入してきた
サムライアリによって幼虫と蛹が連れ去られるのをただ見送ることになる。
 連れ去られた幼虫と蛹はサムライアリの巣で成虫になった後、サムライアリの巣の新たな働き
アリとして生きることになる。


 サムライアリの狩りは何度も見たことがある。
 黒い塊のようなサムライアリの群れが蟻の巣に吸い込まれるように雪崩れこんでいく。
 そして2、3分もすると白い幼虫や蛹の入った繭をアゴに咥えてどっと出てくる。

 確かにアリの引越しに見える。
 オレも最初はそう思っていた。


 解説を聞いた実装紅が 「でも引越しだといってるのダワ」 といってきた。


 いっている?

 
 よく見るとサムライアリのアゴに咥えられているアリの繭がなんとなくおかしい。

 目を近づけてみると…… 蛹の入った繭だと思っていたのは、ほとんどが小さな蛆実装だった。

 リンガルを集音モードにして声を拾ってみる。


 「わーい わーい おひっこしレフー あたらしいおウチにおひっこしレフー」


 「アリさんアリガトレフ おさんぽラクチンらくちんレフッ」


 「ひさしぶりのおそとレフー でもおヒさまゲンキないレフ」 

 

  ……… …… … … ・・ ・  結局この後、畑の草取りがぜんぜんはかどらなかった。



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 「あたらしいおウチについたレフー」

 「ながたびでウジちゃんつかれたレフ オナカすいたレフ」

 「アリさんゴハンほしいレフー ウジちゃんオナカペコペコレフー」

 「アリさんドコいくレフー?」

 「ミンナでてっちゃったレフ?」
 
 「おいてっちゃイヤレフー」



 「アリさんかえってきたレフー」

 「おかえりレフ はやくゴハンちょうだいレフー」

 「レフ? アリさんがオトモダチつれてきたレフ」

 「あたらしいおウチレフー」

 「よろしくレフー」

 「わーい オトモダチいっぱいレフー」



 「ゴハンはやくほしいレフー」

 「アリさん アリさーん」

 「レフ? アリさん またおひっこしレフか?」

 「レフー ウジちゃんもうつかれたレフー」

 「こんどはべつのおヘヤにきただけレフ」

 「このおヘヤ アリさんのウジちゃんもいるレフ」

 「レフレフッ やっとゴハンもらえたレフ」

 「アリさん ゴハンおそいレフ なにしてたレフッ」

 「でもよかったレフ ちゃんとゴハンたべられるレフ」


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 後で調べてみたら、あれは最近発見されたクソウジミという実装生物だった。

 実装石のカオス属性によって生じた実装石の変種だ。
 どこまでも他者に依存して楽したがる実装石の本質そのままに進化した実装生物の典型例として
紹介されていた。

 クソウジミはクロヤマアリの巣に寄生する実装生物だ。
 その生活環はシジミという種類のチョウに似ている。しかしシジミの幼虫の多くがアリから餌を
もらう代わりに甘い蜜を出して対価を支払う相利共生を行っているのに対し、クソウジミは糞しか
よこさない。

 春、緑色のアリマキに擬態したクソウジミの幼体はクロヤマアリにしがみついて巣に忍び込む。
 そしてちゃっかりアリの幼虫のふりをして働きアリから食べ物をせしめたり、身のまわりの世話
をさせたりしてぬくぬくと成長する。
 クソウジミはアリの幼虫が分泌するフェロモンに似せた成分をもつので、働きアリは巣の幼虫を
世話するようにクソウジミを世話するらしい。
 アリもこんなニートに住みつかれたらたまらんだろうと思う。

 しかし人間に対して実装石お得意(と自身は思っている)の媚びがたいして通用していないよう
に、実際にはクロヤマアリに対するクソウジミの擬態も充分ではない。

 自然のほうも負けてはいないのだ。
 理由は判明していないが多くの場合、反自然的存在である実装石が関わると自然のほうも過剰な
までのカウンターを喰らわす傾向がある。


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 「ゴハンすくないレフッ」

 「ウジちゃんオナカすいたレフーー!」 

 「もっとゴハンちょうだいレフー」

 「プニプニもあんまりしてくれないレフーーッ」

 「ウンチもかたずけてくれないレフッ」

 「なんかおかしいレフ? はたらくアリさんがすくないレフ」
 
 「にーとのアリさんがいっぱいいるレフ」

 「だんだんはたらくアリさんがいなくなってくレフ」

 「まえのオウチの方がよかったレフーー」

 「せまいレフッ オマエでていけレフッ」

 「イヤレフッ ウジちゃんがのこるレフ オマエこそでてけレフッ!」

 「こうなったらアリさんのウジちゃんたべるレフ」

 「ダメレフ アリさんたべたらウジちゃんのメンドウだれがみるレフッ」

 「ならオマエがウジちゃんのゴハンになれレフッ」

 「レェェッ! ウジちゃんゴハンじゃないレフーーッ!」

 「おとなしく喰われろレフーーッ!」

 「レピャァーーッ!」

 「レェェーーンみんなやめるレフー」」

 「みんなオナカすいてイライラしてるレフー」

 「アリさーーん なんとかしてレフーーン」


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 クロヤマアリはクソウジミをなるべく巣の上層にまとめ飼いする。
 クソウジミはクロヤマアリの繭とほぼ同じ大きさと形状をしている。サムライアリは襲撃の際、
成虫になるまで期間の短い蛹を優先的に略奪する。そのためクソウジミはサムライアリの襲撃の際
に誘拐されやすい。
 クロヤマアリは自分たちの幼虫と蛹を安全な位置におく一方で、おとりにしたクソウジミをサム
ライアリに押しつける。

 サムライアリはドレイ狩りで誘拐してきた繭や幼虫を巣に運び込んでしまえば、後は何もしない。
 巣で働くドレイの働きアリに後は任せきりだ。
 ドレイアリはクソウジミを蛹ではなく幼虫として認識する。
 そのためドレイアリはクソウジミをアリの幼虫と同様に食料を与えて世話をする。
 だがクソウジミをさらってきても巣の労働力になることは決してない。それどころか役立たずの
穀潰しが増えるので、巣の労働力不足にはかえって拍車がかかる。
 世話しきれないクソウジミの排泄物は巣の衛生環境を極端に悪化させる。さらに腹を空かせたクソ
ウジミはアリの幼虫を食い殺すことも多い。

 もともとサムライアリ自身が生産性のない寄生生物といえる。そんなところにさらなるニートを押
しつけられたサムライアリの巣はやがてヤツらに食いつぶされて崩壊することになる。
 クロヤマアリは一方的に寄生されているかに見えて、実はクソウジミをうまく利用していたのだ。



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 「レェェ… ウジちゃんウンチでおぼれちゃうレフ……」

 「アリさんもいなくなっちゃったレフ… …」

 「ウンチもういやレフ あかるいおソトにでたいレフ」

 「もっとヒカリを… レ フ … ・・ ・  」
 

                          ・
                          ・
                          ・

 
 進化論を超越したイキモノというかナマモノどものでたらめさ、そしてそれにつき合わされねば
ならない大自然に同情する。

 なんか頭が痛くなった。


 さっさとビールを飲んで寝よう。





−− 終わり −−

                                    《 大鍋146 》

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