『住み着くナマモノに御用心。あなたの生活守ります』 「なんだこれ?」 郵便受けに入っていた一通のダイレクトメール、要は害獣駆除の案内だったようだ。最近は 街にもネズミや蜂が増えてきたっていうし、こんな会社があるのもご時世なんだろうな・・・ 郵便受けに入っていた携帯電話やネットの請求書を流し見ながら、俺は自室にたどりつく。 しがないアパートだが、駅に近いのが利点ってとこだろう。 「晩飯どうしようかね・・・」 木造の古めかしいドアを開けて中に入ると、ドブ川のような腐った様な匂いが鼻についた。 ゴミ出しは今朝やったし、痛むようなものは外にだしていない。いぶかしがりながら足を 進めると、そこにいたのは緑色のナマモノ(大×1、小×5)だった。 「デズズズズzzzzzzzデズズズズzzzzzzz」 「テチー・・・・テチー・・・」(×5) 「・・・やられた」 窓を閉め忘れるという典型的は凡ミスに加え、ちゃぶ台の上に出しっぱなしにしてた煎餅が こいつらを呼び寄せてしまったようだ。 食い散らかしたカス、泥だらけの床、あちこちにちらばる緑色の糞尿、のん気に惰眠をむさぼるナマモノ よし、殺そう。 といってもここはアパートだ。他の住人の迷惑になることは慎まなければならない。 まずは声を殺すために、殺虫スプレーにノズルをつけて鼻の穴に突っ込み噴射する。 プシュ──────────────────────── 「デズzzzゥデヘッ!? デホッデホッ・・・ッ・・・ッ・・・ッ・・・ッ!」 「テフンテフンテ・・・フン・・・フン」 次は糞をもらさないように、四肢をガムテープで簀巻きにした後に3枚重ねのゴミ袋 (子はスーパーの袋)に首以外を突っ込む。首と袋の口をガムテープで固定し、見事な 茶巾絞りができあがった。 ナマモノ共は声を出せないので文句こそ言えないものの、袋の口から頭だけ出した状態で 恨みがましい目が俺を睨んでくる。別に怒られる筋合いもないので、その6対の目玉に 万国旗付きの爪楊枝を刺してみた。 ファンシーな光景ではあるので、記念に写真を一枚撮っておいた。 部屋にこびり付いた汚れを落とすのに1時間、消臭に1時間、ついでに大掃除して1時間。 部屋もこざっぱりしたところで、闖入者ご一行に再び目を向ける。 声も出せず体も動かせず、立ちっぱなしで固定して3時間というのは人間でも酷な話だ。 ましてや実装石は筋肉と呼べるものも少ないため、足腰はそろそろ限界が近いだろう。 よく見ると頭が痙攣しているように震えている。どうやら足の痺れが頭にまで回ってきて いるようだ。 「正座を続けて足がうっ血した状態で触られる感覚」というのを味あわせるのも悪くない。 やることはたった一つ。箒の柄で袋をつつく、突付く、突く、牙突 「デ・・・ズァ!・・・・ァァァァ・・・・デァ・・・!!」 「テチェェェ・・・・・・・!!」 最後の方は力いっぱい突き刺していたが、別に問題ないだろう。どうせ殺すし。 実装石の親子の顔が真っ青になって泡を噴出すまで突きを続けたが、いい加減飽きてきた。 さっさと殺して廃棄しようと思ったが、生ゴミの日までは後3日あることを思い出した。 この季節、死体を3日も置けば腐乱して虫が湧くだろうし、公園にうち捨てていくのも 気が引ける。仕方がないが少しだけ生かしておく必要がありそうだ・・・ 「おいナマモノ、3日だけ飼ってやる」 「・・・デ!? デズゥァ・・・・ェ!」 「チチ・・チプププ・・・・・・・・・・・・」 プッシュ───────────────────────────────────── 大分声が戻ってきたようなので、今度は対G用スプレーを鼻に差し込んで噴霧しておく。 ハエやカ用よりは毒性が強いため、1日くらいは声を聞かなくてすむだろう。 「・・・・・・!?・・・・・・・・・!!」 「!!」 顔を紅潮させ歯を剥き出しにして威嚇してくるが、いかんせん巾着状態なので迫力が無い。 鏡でその姿を見せてやると初めのうちは大笑い(声はでないが)していたが、それが自分の 姿と分かるとしばらく落ち込んでいた。 すぐ近くで俺が夕飯を食べているのにも気づかない程だから、よほど堪えたのだろう。 そして三日間、手ごろなゴミ箱となった実装石親子は生ごみを食えるのを喜んでいたが とうとう別れの日がやってきた。 「そんなこんなで、今日がお前らの命日だ」 「デ?」 「テチ?」 「別に選別の言葉も無いが、最後に面白いものをみせてやろう」 そして俺は再度鏡を取り出して実装石を移した。 「デ・・・・デッデッデデ・・・デヒャヒャヒャヒャ!ヒャヒャヒャヒャヒャゥゲホッ!」 「テチャーッチャッチャッチャ!!・・・エフッエフッエフッエフッエフッ」 笑いにむせて涙すら浮かべている。 周りが何も見えず、何も聞こえない状態のようなので、口をガムテープで塞ぐと俺は ゴミ集積場に袋ごと持っていった。あと10分もすれば清掃業者がきてこいつらを 引き取ってくれるだろう。俺は踵を返して家に帰る。 袋の中でガスが膨張してヒョウタンのような体型に見えたことは、そんなに笑いのツボを刺激したのだろうか そんなことを思いながら、俺は今日も夕飯の献立に頭を悩まされるのだ。
