タイトル:【虐】 夾竹桃(キョウチクトウ)+α版
ファイル:夾竹桃(キョウチクトウ)+α版.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4597 レス数:0
初投稿日時:2007/06/11-00:03:33修正日時:2007/06/11-00:03:33
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夾竹桃(キョウチクトウ)


 平日だというのにボランティアに駆り出された。
 下宿の大屋さんのお願いで公園の掃除だ。
 今年は大屋さんが町内会の役職をしているので、公園の掃除などの担当が大屋さんに回ってくる。
 これがただの掃除なら面倒くさかろうが自分ですればいい。

 本当は公園に住みついた実装石親仔を駆除してほしいというのが本音だ。
 町内会にもいろんな意見の人間がいる。
 町内会で保健所に頼んだり、地域住民の自分でやると一部の極端な住民から角が立つ。
 しかし下宿学生ならしょせん余所者でしかない。
 下宿人に公園掃除を頼んだら勝手にしてしまいました、ということにしておけば波風がたたないらしい。
 なんとも姑息なやり方だが、汚れ仕事をおしつけたぶん今月の家賃を一部免除してくれることになった。
 まあ金のためだ、頼まれたことはきれいにケリをつけよう。



  ママがくれたゴハンで今日もおなかいっぱいテチ
  オネーチャン達がいたころはあんまりもらえなかったけど
  今はいっぱいもらえるテチ
  きっとオネーチャン達もがんばってゴハンとってきてくれたんテチ
  ワタチも大きくなったからもうすぐオネーチャン達のところに行くテチ
  もうすぐオネーチャン達に会えるテチ 
  ワタチもママのゴハンさがし手伝うテチ 
  いっしょにがんばるテチ
  


 この時期、公園の周囲に植えてあるキョウチクトウが赤白の花を綺麗に咲かせていた。
 ゆったり花を愛でていたいが、まず公園のトイレを覗いてみる。
 そこそこ汚れてはいるが実装石はいない。平日の午前中だから人間もいない。
 公園の掃除用具入れから道具を取り出す。
 清掃作業中の看板とチェーンを使って公園の入り口を封鎖する。
 誰も来やしないだろうが、それでも余計な支障は避けたい。
 軍手をはめ、枝きりバサミと火箸、それにバケツを持って大屋さんから聞いていた場所に近づく。



  ニンゲンがいるレチ トゲトゲの木にかくれるレチ
  コネーチャとウジちゃんとかくれるレチー
  こわいカラスもトゲトゲの木がおっぱらってくれたレチ
  トゲトゲのハッパはとってもイタイレチ
  このトゲトゲの木がアタチを守ってくれるレチ
  でもオオネーチャみたいに大きくなったらかくれられないレチ
  だから大きくなったらママがつれてってくれるレチ
  大きくなったらママといっしょにくらせるレチ
  アタチはかチこい仔だからそれまでガマンできるレチ



 公園の隅にあるヒイラギの茂みの奥にダンボール箱が見えた。横にしたビールの箱だ。
 耳をすますと箱の中からテチレチ鳴き声が聞える。
 公園の野良実装はたいてい大きいダンボール箱で一家全員暮らしているのが普通だ。
 ヒイラギの周りを調べてみたが、親の成体実装石が立ったまま入り込めそうな隙間はない。
 かがんで這いずっても苦しそうだ。たぶん自慢の髪とやらが引っかかるだろう。
 ヒイラギの茂みの中には生ゴミの喰いカスやビニール袋が散らばっているのが見える。それに空き缶が
何個か転がっている。あれは仔実装が水の入れ物に使っているのかもしれない。
 多少痛いかもしれないが、仔実装なら茂みも出入りできるし、親は別の寝ぐらで過ごすわけか。
 実装石にしてはずいぶん考えたものだ。
 仔実装にとって一番の天敵である他の成体実装石、それにカラス相手ならちょうどいい障壁になる。
 ヒイラギの葉は固く、縁に鋭い棘がある。その茂みにうまく押し込んだビールの箱は実装石の不器用な
手ではまず引っ張り出せない。蛇でも来たら危なかろうが、仔実装の安全地帯としては申し分ないだろう。


 
  ニンゲンがきたテチ でもここにいたらへっちゃらテチ 早くあっちにいっちゃえテチー

  ここならアンシンレチ ママはテンサイレチ そんなママの仔のアタチもテンサイレチ

  レププ ニンゲンがきたらこのウジちゃんがぶっとばすレプ プニプニドレイにしてやるレプー



 枝きりバサミで下のほうの枝を刈りとって、火箸でビール箱を引っ張り出す。



  動いてるテチ? オウチが動いてるテチ? なんでテチ? どうしてテチーッ?!  

  ダイジョウブレチ ダイジョウブレチ ここにいたらぜったいダイジョウブレチィィィィ

  ニンゲンさんムダなテイコウはやめるレフッ  いまならゆるしてやるレフーーッ



 仔実装達がテェェーーンレェェーーンと激しく鳴いているが、箱から出て逃げだそうとはしなかった。
 たぶん仔実装どもにとってここは鉄壁の城なんだろう。
 バケツの出番はなかったな。



  ニンゲンが来るテチー! ギャクタイハテチー! テェェーーン 助けてママ ママー! 

  まだダイジョウブレチーーッ! もっとオクに逃げるレチィィィィン!レェェーーン 

  ウ ウジちゃんこわくないレフッ でもウンチとまらないレフーー



 箱を立てて上から中を覗くと、仔実装と蛆を抱えた親指がいた。
 さんざん鳴き喚いていたが、こちらに気づくとテチューーンレチューーン鳴いて媚びてくる。
 金のためだ。恨みはないが死んでくれ。



  テェェェェ…・・ ニンゲンさん いじめないテ゛チューン いぢわるしないテ゛チューン  出しテチューーン

  アタチはテンサイレチューン トクベツなジッソーセキレチューン アタチだけはたすけるレチューーン

  ウジちゃんのウンチふかせてやるレフーン ぞんぶんにゴホウシするレフーン コウエイにおもうレフーン 



 仔実装をうまく逃げられないよう捕えたので、親実装か他の仔実装がいないか公園の周りを調べてみる。
 仔が一匹と蛆親指ではずいぶん少ないような気がする。
 仔実装は見つからなかったが、公園を囲むフェンスの金網が一ヶ所破れていたのを見つけた。
 その穴を通って隣接している水路との間にちょうど実装石が通れるくらいの隘路がある。
 ここから親実装は出入りしていたようだ。
 近くで音がしたので見ると、フェンスの向こうの草むらにフードの片耳が破れてなくなっている実装石がいた。
 涙を流しながらこちらを見ている。きっとこいつらの親実装だ。
 コンペイトウで釣って始末してやろうとしたが、さっと遠くに逃げて見えなくなってしまった。
 予想はしていたが知能の高い個体だったか。 
 仔の鳴き声を聞きつけて来たところをみると、近くに寝ぐらがあるのかもしれない。
 親の駆除は失敗したが、仔が全部いなくなったらもう戻ってこないだろう。
 あれほど警戒心と知能の高い個体なら、おそらく二度とこの公園で営巣しようとはしないはずだ。


 仔実装を捕えたビール箱と刈りとったヒイラギの枝を公園のゴミ焼き場に持っていく。
 そこには前に剪定した時のキョウチクトウの枝が積んであった。
 生木は燃えにくいから、古新聞と乾いたキョウチクトウの枯れ枝をビールの箱に押し込んで火をつける。
 パチパチという音をたてて内側からビールの箱は炎に包まれた。



  テヂャーーッ?!火がついてるテチャーッ!このままじゃ死んじゃうテチーーッ!逃げるテチィィィィィッ!  

  コネーチャなんとかするレチーッ! はやく外のオミズもってくるレチ!なにモタモタしてるレチャーーッ!

  あついレフあついレフッ マッカなパラパラでセナカあちちレフーーッ! ウジちゃんコロコロするレフッ
  コロコロしたらセナカあつくないレフ ウジちゃんテンサイレッフン こんどはオナカあついレフーーッ?!

  出られないテチィィィン! ママ助けテェーー!オネーチャン助けテェーー!誰かココから出しテェーーー!

  レヂュァーーッ?! アタチのダイジな服が燃えてるレチ゛ーッ!キレイな髪が焼けちゃうレ チ ゛ ャ ー ッ !

  ウジちゃんウンチするレフッ オナカあつくなくなったレフ ウジちゃんすごいレフ やっぱりテンサイレフ
  マッカなメラメラがくるレフーーッ でもウジちゃんへっちゃらレフ ウジちゃんウンチあるからダイジョウ
  フ ゛ ッ レ ッ ヒ ゜ ャ ア ァ ァ ァ ァァァッ! アピャ ア ピ ャ ピ ャ レ ビ ィ ヤ ァ ァ ァ ー ー ーッ!
  
  ニンゲンさん許しテェーーッ!せめて妹ちゃんは助けてあげテェーーーッ!ウジちゃん!ウジちゃぁぁぁぁあん!



 テチ゛ャーレチ゛ャーと喚いていた仔実装の鳴き声もじきに聞えなくなった。
 ぐずぐずしてたら昼からのバイトに遅れる。
 ほうっておいても消えるだろうが用心のため水をかけて消火しておく。
 蛆と親指は消し炭になっていたが、仔実装はまだ塊で残っていた。



  アツイテチ イタイテチ… ナニモミエナイテチィィィ…・・ オヤユビチャン… ウジチャン ドコ  ドコ…
  クルシイテチ シンジャウテチィ ママ ママ オネーチャン タスケテ…ェ・・ ママ ママ ドコ タスケテ…… ママ・・ ・・ ・  



  オマエだけでもノコってヨカッタデスゥ  サァ オマエもオネーチャンのトコロにイクデスゥ




 昼からのバイトが終わった後、あの公園に立ち寄ってみる。
 今まで実装石は人間に似ているだけの汚い害蟲だから殺してしまえばいい、汚物は消毒だと安易に思っていた。
 しかし、あの親実装の涙を見てしまった後では、なんとなく気分が重かった。
 親が子を思う気持ちに人も動物もかわりがあるまい。


 せめて仔実装の亡骸に花を手向けてやろうと思う。
 白いキョウチクトウの花を一輪手折ってゴミ焼き場に近づいた。
 そこにあの親実装が倒れて痙攣していた。
 よく見ると仔実装の焼けカスを口から吐き出している。

 そういえば昔読んだ推理小説のトリックにあった。キョウチクトウには毒があると。
 読んだのがずいぶん昔だったからすっかり忘れていたが、アレクサンダー大王の兵士がキョウチクトウの枝を
肉に刺して焼いたら、この毒で死んでしまったという逸話もあとがきに書いてあったな。
 たしか焼いた煙にすら毒があるとか書いてあったような気もする。本当に猛毒だったようだ。

 言葉にできない何かがふつふつと湧き上がってくる。
 思わずキョウチクトウの花を握りつぶしていた。
 仔喰いの糞蟲が。泣いていたのは食い物をとられたからかっ。
 どうりで仔が一匹と蛆親指しか残っていなかったわけだ。
 ニンゲンモドキのクセして自分の仔の肉でも平気で喰うナマモノめ。
 中途半端な知性はともかくその性根が気にいらん。

 火箸でトイレのバケツに押し込む。
 まだ完全に息の根は止まっていないが、このままコンビニの実装回収箱に放りこみにいこう。
 公園に入った時には気分が重かったが、出て行くときには別の意味で気分が悪かった。
 やっぱり汚物は消毒だ。

 


−− 終わり −−

 なんとなく実装視点の+α(蛇足ともいう)版も用意してみました。
 お手軽炙り実装燻製風と同じ密閉空間で焼死なのでなんか抱き合わせみたいになりました。
 ちなみにキョウチクトウの毒は心臓に作用する強心配糖体で、致死量は0.3mg/kg だそうです。
 毒の煙が滲みこんだだけだったので親蟲は死なずにいたことにしておいて下さい。


春の味                  初スク
春の味2 実竹煮             2スク
春の味3 身近な野草の天婦羅       3スク
実装のいる風景1 春の思い出       4スク
実装のいる風景2 春の災難        5スク
実装ストーンステーキ           6スク
川辺の蛆実装               7スク
蚊取り実装                                8スク
海実装の食べ方              9スク
実装のいる風景3 初夏の思い出     10スク
仔実装ちまき                            11スク
実装のいる風景4 実装玉        12スク
お手軽炙り実装燻製風          13スク
夾竹桃(キョウチクトウ)                14スク


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