逢いに行っても、いいですか? 4 ●としあき: 通勤路の途中の河川で、仔実装と親指実装の姉妹を発見した会社員。 姉妹を気に入り、食事などを提供する。 現在、二日間の出張中につき姉妹とは逢えず。 ●姉仔実装/親指実装: 橋桁と堤防の間に出来る隙間を住処にしている、実装石の姉妹。 人なつっこくて大人しく、姉はそこそこ賢いが妹は物忘れが激しい。 現在、異常な飢餓感と喉の渇きに襲われている。 ●ひろあき: 虐待派のフリーター。 最近、河川敷で実装石を見かけなくなりストレスを溜めていたところに 仔実装姉妹を発見し、虐待魂を燃焼させていたが、姉妹の様子がおかしい 事に気付き始める。 ※ ※ ※ 午後3時。 いつもより少ない睡眠時間のせいか、今イチ頭が働かないひろあきは、調べ物のためパソコンの電源を入れた。 あの姉妹の奇妙な症状が、どうしても気になって仕方ないのだ。 久しぶりに、メールを書く。 一番親しく、古くから個人的なやりとりをしていた熟練の虐待師“にじあき”宛。 ひろあきは、姉妹の様子、症状、自分が行った虐待メニューを思い出せる限りまとめて、送信した。 自分がまだ駆け出しだった頃、数多くのアドバイスを惜しみもなく提供してくれた人物。 鍛え抜かれたスマート&マッチョボディと、学生時代女に苦労しなかったというほどのイケメンだというのに、自分 を遥かに凌駕する知識と経験を持つという彼に、ひろあきは大きな憧れを抱いていた。 彼なら、きっと何か良いアドバイスをくれるに違いない。 そう期待せずにはいられなかった。 同時に、検索エンジンで実装石の病気と症状について調べる。 だが、体長10センチ台の仔実装が一度に2リットル近くもの水を飲み干すなどという症例はまったく見つからず、 益々困惑させられる。 午後5時。 いつもなら河川敷に行き、姉妹に虐待を加えに行く頃合だが、ひろあきはまだパソコンにかじりついていた。 今日はバイトが休みのため、少し時間をずらしても大丈夫だろうという「油断」があったのだ。 ♪アーイマーイ3センチ ソリャプニッテコトカイ チョッ♪ 検索に疲れ、一息入れようとタバコを取り出した時、メール着信を知らせるメロディが流れた。 メールの差出人は、“にじあき”だった。 ※ ※ ※ 河川敷に、一人の男が降りて来た。 細身の体格、深く被ったワッチキャップ、だらしなく着こなしたジャケットとハーフパンツ。 肩には、妙に使い込まれた感じの黒いリュックを提げている。 そのスタイルはどこか異様で、とても場違いな印象を与える。 男は橋桁の隙間を覗き込み、しばらく辺りをきょろきょろ見回していたが、やがて巣の奥から黒い塊を拾い上げ、 小さく舌打ちした。 それを巣の中の死角になる位置にセットし直し、ペットボトルを回収する。 水が満タンに補充されている事にほくそ笑むと、男はリュックから半透明のプラ製容器を取り出し、スポイトでその 中身を吸い上げた。 ペットボトルの水を少しだけ捨てて、スポイトの液体を注ぐ。 一回、二回…… 次に、緑色の小さな袋を開き、緑色の粉末をさらさらと流し込む。 これを、二袋分。 吸い飲みのキャップを再装着し、よく混ざるように強く振ると、それを丁寧に元通りにする。 「今日もこいつを飲もうね」 豆腐の穴から親指を救い上げ、指でしばらく贅肉の弾力を楽しむと、仔実装の脇に置く。 次に、さっきとはまた別の、透明なさらさらした液体をスポイトに入れて、二匹の口の中に注ぎ込む。 ゴクン、と喉の鳴る音を確認すると、男は更に黒い錠剤を一粒取り出し、それを姉仔実装にだけ飲ませた。 手に少し零れ付いた透明な液体をぺろりと舐め、男は顔を歪めた。 「うっ……しょっぺぇ」 レ…レチ……レチチ…! テ、テェェェ……テェェェ?!?! 数分後、再び凄まじい喉の渇きに襲われ、二匹は飛び起きた。 だがその頃、既に男の姿はなかった。 ※ ※ ※ その頃。 ひろあきは、モニターに表示された“にじあき”からのメール本文を、何度も何度も読み返していた。 にじあきからのメールは、「その症状なら、ちょうど今“実装石・虐待紳士社交コミュニティ”内で話題になっている から参照するといい」というものだった。 この前覗いた時は、毒殺トピック以外の新規投稿がなかった事から、嫌な連想をしてしまう。 すぐにでも河川敷に行きたい心境に駆られたが、ふと思い返す。 ちょっと、待った。 これでは、まるで自分があの姉妹の心配をしているようではないか? いや心配はしているが、それは自分の虐待趣味を他人に邪魔されたくないだけで。 でも……だから……けれど……ああイライラするっ!! 自分の気持ちが整理できなくなったひろあきは、もう一度「実装石・虐待紳士社交コミュニティ」を訪問してみる事 にした。 見慣れたトップページを通り過ぎ、「実装石の毒殺を考える」トピックを開く。 あまり良い気はしなかったが、ひろあきは数回深呼吸をして、過去ログを読み込み始めた。 ……が。 あまりにも投稿数が多すぎるので、比較的新しい所だけを読む事にした。 そのトピックは、「すれあき」を名乗る新人が立ち上げたものだった。 ※ ※ ※ ・すれあきさんの投稿: やっぱりただ毒飲ませて苦しむのを見るだけだとつまらんと思う おいらですwww >にじあき 実装石に毒を使う方法ですがおいらのやり方を説明するっスww 先に言うとおいらは劇薬や法律に触れるような危険物は使いません おかしなもの使ってアシがつくのやだしwwww だから身の回りで手に入るものだけを利用する事にしてますwwww 実装石ってああ見えても味覚が鋭敏なんですよ 食べ慣れないものやおかしな味のものは最初すぐに吐き出そうと しちゃうんです(それはみんな知ってると思うけどwww) だから迂闊なものを食べさせるとすぐバレるんですがそれなら “吐き出させないようにしてやればいい”わけですwwwww ・やおあきさんの投稿: 横からごめんすれあき 吐き出させないってどうやるの? そんな事してもすぐに脱糞して緊急回避したりするんじゃない? 実装石が毒に強いっていうのは、そういった解毒・抗毒能力が 高いってのもあるんだしさ よほどうまくやらないとむずかしいと思うんだけど ・なべあきさんの投稿: そうだよな だからこそコロリやゲロリ、ドドンパは解毒能力が働く前に効果が発揮 されるように作られてるんだし ・すれあきさんの投稿: >やおあき >なべあき 簡単だよww 一発ですぐ効果が出るような単純な物を使わなきゃいいだけwwwww みんな結果を急ぎすぎなんだよwww 実装石が毒だと思わないような物を与えながら少しずつ調子を狂わせりゃ いいwwww じっくり時間をかけないと虐待にならないしwwwww 大事なのはさじ加減って奴だねwwwwww ・ひゃっはあきさんの投稿: >すれあき もったいぶらずにとっとと教えれヒャッハー!! ・すれあきさんの投稿: >ひゃっはあき いいよww まず実装石の味覚と嗅覚を破壊して何食ってるか自覚できない状態に すんのねww これでだいたいの奴は何を口に入れてもヤバイと感じなくなるよwwww ただ賢い奴だと自分の感覚が狂ってる事に気付いちゃう時があるんだ そうすると食べ物をよく観察して安全かどうか確認する癖がつく こうなっちゃうともうダメwwwww 面白くねぇwwww そうならないように理性も同時に破壊しておくとベストwwwww そこでおいらが考えたのがキャベジソを使う方法wwwwww ・やおあきさんの投稿: キャベジソって あの胃腸薬の? 食べる前に飲むってアレ? ・ピザあきさんの投稿: それのどこが毒だピザ ・ほりあきさんの投稿: 適当こいてると夜明けのコーヒーを一緒に飲ませるぞゴルア ・すれあきさんの投稿: >ほりあき ちょwwww ケツ勘弁っスwwww キャベジソって空腹の時に飲むともっと腹減った感じするんよww 成体実装でも人間の半分量程度与えれば充分で仔実装以下ならもっと 少なくても良い 水か何かに溶かして実装石に飲ませたり眠ってる間に口の中に粉 ブチブチ込むと あいつら空腹感に弱いから薬が利いて来た途端えらい大騒ぎするよwww それと何度も飲ませてると消化能力が高まるみたいねwwww 仔実装ならエサ食べた一時間後にはもうウンコ吹き出すよwwww それに量もすげ〜増えるwww おいらはキャベジソを常習させてすぐに腹が空くようにしてから次の ステップに進むんよww そーすればだいたいの奴らは餌があると疑いもなく食いつくようになる ねww 何も考えられなくなるよwwww ・やおあきさんの投稿: それはつまり毒を含ませやすくする呼び水ってこと? ・すれあきさんの投稿: >やおあき そうだよwwww 水に混ぜて飲ませるのが経験上楽で効果高いよwww でも実装石は水なんてそんなに沢山飲まないから飲ませるためにも工夫が いるんだwwwww 塩分の濃いものを沢山食べさせるのが簡単でいいねwww 本人が気付かないうちに塩分摂取過多になってすぐ喉が乾くように なるwww 実装石の場合それが極端に早く出てくるみたいに思うwwwww ついでにある物も併用して味覚もぶっ壊しておくwwww ・にじあきさんの投稿: ここまでのをまとめると a.キャベジソで空腹感を与える b.塩分の濃いものを与えて水を沢山飲ませるようにする c.味覚と嗅覚を破壊する かな これの順番はどうなんだろうか あと知覚破壊って具体的にどーすんのよ 実装石って回復力高いでしょ 一時的に破壊しても意味ないんじゃないの ・すれあきさんの投稿: >にじあき おいらは 1.塩分 2.キャベジソ 3.感覚破壊 の順だね 塩分濃度は最初は低めにして少しずつ濃くしていくのがコツwww いきなり塩辛すぎるとあいつら生意気に食わねーから これは何度も丁寧に根気よくやらなきゃならない めちゃ塩辛いものを食べさせる頃には味覚を完全に壊しておかないとね ・すれあきさんの投稿: >具体的にどーすんのよ 器官自体を破壊すると確かに再生するけど感覚だけを狂わせるとそうでも ないんだよwww まず香りが異常に強いものをこっそり飲ませるwww スポイトでバニラエッセンスを薄めずに原液のまま流し込むのが効果的だねwww 甘い臭いだから本人も嫌がらないし喜んで飲んじゃう だけど何回も繰り返してるとその香りも感じなくなるよww あれって原液だと相当匂いきっついからねwww これで嗅覚は殺せるwwwww 味覚破壊はもっと塩分濃度高いものを与えるとかカルピ○の原液を直飲み させるとかを何度も何度も執拗にやるwwww あれも味が濃すぎるから本来薄味好みの実装石には大きいダメージになる んだww 頃合いを見て途中から濃い塩水をそのまま飲ませてみよう それで暴れなくなったら味覚が完全にイカれた証拠だよwww ・やおあきさんの投稿: カルピ○の原液? バニラエッセンス? 塩水? 初めて聞く話ばかりだな ・ほりあきさんの投稿: おいちょっと待て 実装石は味が濃いのも好きだぞ そんなんで効果あるとは思えねーな 適当こいてると夏休みに二泊三日の二人きり旅行に誘うぞゴルア ・すれあきさんの投稿: >ほりあき おいら結婚まで純ケツ守り抜く主義だからごめんねwww 実装石は脂の味が好きなんだよwww それさえあればかなり濃い味でも受け入れる だけど本当は猫や犬みたいに薄味嗜好なんよww ソースとか醤油とかを薄めて飲ませてみるとわかる おいら達が平気に飲み込める薄さでも全然ダメだしねwww だから刺激の強い物を与え続けるとその分効果は大きい 本当はハバネロみたいな死ぬほど辛いのがいいんだけどそうすると 本人もすぐ気付いて暴れるからね あいつらの好きな甘い物で破壊力のあるのっていうとカルピ○原液とか コーラ煮詰めて濃縮させた液体とかwww そんなのを何度もしつこく与え続けるのさwww 寝てる間にねwwwwwww おいらは実装石自身が気付かないうちに感覚を壊していくのが好き なんだよ 食べ物の味や匂いがわからなくなった時のあいつらの態度とっても かわいーよwww ギザモユルスwwww ・なべあきさんの投稿: なるほどね これは結構参考になるネタかもしれない 俺にはなかなか新鮮な情報に思える ・やおあきさんの投稿: で それからどうするの? ・にじあきさんの投稿: そう、それが知りたい ・すれあきさんの投稿: 下準備バッチリなら後は何やっても平気www おいらはここからさらに飢餓感を煽り立てるねwww しばらく餌与えないで放置して自分の糞とか土を平気で食うようになったら こっちのものwww 正露丸飲ませたり酒飲ませたり風邪薬飲ませたりとかやりたい放題 特に正露丸はいいよwwww 便秘になってウンコ出来なくなったり突然何度も吐いたりするんだ 一粒飲ませるだけでホント良いおもちゃになるwww 超オススメwwwww 濃縮コーラ飲ませ続けるのでもいいよwww コーラを鍋で1/5くらいになるまで煮詰めるのwww あれ飲んでると体質が急激に悪化していきなり太り始めるんだ 大して食ってない筈なのに太っていくってのは見てて楽しいよwww しかもそれなのに本人腹減りまくりでさえらく慌てるんだwww あとさ太るだけじゃなくて凄い効果も期待できるよwwww ピザあきやってみwwwww ・ピザあきさんの投稿: それは俺に対する挑戦と見たピザ 明日うちの糞蟲に早速試すピザ 濃縮は1/5でいいのだなピザ ・ゆりあきさんの投稿: それだけ濃度の高い糖分を一度に摂取すると、 深刻な体質変化が起こりますね。 太るだけじゃなくて、痛風になったり髪が抜けたり、 内臓器官も相当弱っていくと思います。 人間でも起こる事ですから、小さな実装石ならば 効果覿面でしょうね。 ・ひゃっはあきさんの投稿: 正露丸で強制妊娠&糞詰まり状態にしてさ そこに消毒剤浣腸するのも楽しそうだなヒャッハー!! ・にじあきさんの投稿: >ひゃっはあき それ前にあんたがレポートしたネタだよな 確か妊娠中の奴にやったんだっけ えらい大騒ぎになったらしいけど ・すれあきさんの投稿: >ひゃっはあき >にじあき 何ソレ何ソレwwww どのトピ? 誘導よろwwww ・にじあきさんの投稿: >すれあき 「俺のヒャッハー記を見やがれヒャッハーその16」だったと思う ・なべあきさんの投稿: あれはエグいぞ〜 強制堕胎された子供がドロドロになって出てくるんだっけ? しかもそれ母親に食べさせるんだよな 俺はあれでひゃっはあきさんを尊敬するようになったんだ ・すれあきさんの投稿: ちょwwwwww スゴスwwwwwwwww すげwwwちょwwwwwwおまwwwwwwww ・ひゃっはあきさんの投稿: やっとすれあきに知恵を返せたぜヒャッハー!! ※ ※ ※ 途中まで読んで、ひろあきは眩暈がしてきた。 すれあきの振っているネタの内容は、もはやひろあきが知っている虐待の領域を大きく超えるものだった。 これは邪道だとか、虐待はもっと地道にやるものだとか、そういった反論をする気にはならいが、どうにも納得が 出来なかった。 だが、このトピックの情報自体はとても役立った。 バニラエッセンス、カルピ○の原液については、思い当たる事がある。 それに、このやり方なら姉妹の異常な枯渇感にも納得がいく。 恐らく、誰かがこのトピックか、或いは別所の似たような情報を参考にして、あの姉妹に処置を施しているのでは ないだろうか。 もしそうなら、あの姉妹はいつか間違いなく殺されてしまうだろう。 ひろあきは、早速荷物を担いで、アパートを出る事にした。 だが、途中でトピックを読むのを止めたひろあきは、最新タイムスタンプの投稿を見逃していた。 2007年○月□日 16:51:29 ・すれあきさんの投稿: さっき仔実装に正露丸くれてやったよwwww うまく糞詰まりになってくれるといいなwwww ひゃっはあきにならっておいらも消毒液買って来たwwwww 明日浣腸試すっスwwwwww ※ ※ ※ 午後五時。 河川敷に辿り着いたひろあきは、恐ろしい形相で豆腐に食らいついている姉妹の姿を見つけた。 テ…テテ……テテ……テフ、テフ…… レチ……レ、レ………レレ…… とても食べ切れないと思われた木綿豆腐は、もうほとんど残っていなかった。 裸の姉妹は、すぐ傍にひろあきが接近して来ているのに全く気付かず、皿の奥に顔を突っ込み、何度も嘔吐を 繰り返しながら、残った水と僅かな破片を舐め取ろうとしている。 親指は大量の排泄をしているが、姉仔実装は一滴も漏らした様子がない。 嫌な予感がして、ひろあきは姉仔実装の後頭部を掴んで無理矢理顔を上げさせた。 テチィ…テプゥ!! デテテ…!! うつろな目、異常にむくんだ顔、色艶を失った髪と、くぼんだ眼孔。 それは、初めて逢った時の姿とはまったく違う、まさに「醜悪な糞蟲」そのままの外観だった。 こんな短時間でここまで様相が変わるなんて、過酷な監禁虐待を与え続けない限りありえない。 だが姉仔実装の状態は、明らかにそれと同等か、或いはそれ以下だ。 朝に与えた活性剤の効果が、なくなってしまったかのような印象を受ける。 テ……チベッ!! 姉仔実装を脇に放り投げ、続けて親指を掴み上げる。 レ、レヂィ?! 途端に、ハラハラと髪の毛が零れ落ちた。 とぷん、という贅肉が弾む不気味な感触を覚える。 よく見ると、親指は前髪と後ろ髪のほとんどを失っており、禿裸になりかけていた。 それでも、自分に襲い掛かった悲劇に気付こうとせず、懸命に水分を得ようとあがく。 これは、朝方見かけたあの時よりも酷い状態だ。 ひろあきは我慢して、親指の口に鼻を近づけてみる。 顔をそむけたくなるような汚臭に混じって、微かに甘い香りが漂っていた。 ——それは、コーラの匂いによく似ているような気がする。 レヂィ…!! レヂィィィ!!! 「……」 必死で抗議する親指だが、その態度に以前のような可愛らしさ・あどけなさの面影はまったくない。 それどころか、これでは単なる糞蟲でしかない。 ひろあきは親指を姉仔実装の脇に置き、ため息を吐きながら豆腐の容器を捨てに行った。 そこらの草むらに捨てようとして、ふと、嫌な匂いが漂っている事に気付く。 よく見ると、近くに実装石の家族と思われる死体が転がっていた。 足で死体を裏返してみると、いずれも大量の汚物にまみれ、おぞましいほどの苦悶の表情を浮かべていた。 見たところ、目立つ外傷はない。 何か奇妙な感覚に捉われたひろあきは、もっと死体を調べるべきかと考えたが、さすがに臭いがきつ過ぎるため、 それ以上は触れられなかった。 以前も、こんな感じで行き倒れた実装石の死体を見かけた事が何度かある。 ひろあきは、まるで誰かがこの河川敷の実装石だけを狙って抹殺しまくっているのではないか…という考えに 捉われ始めた。 戻ってみると、姉妹は弱々しく四肢を振るい、醜くあがき続けていた。 さっき放った拍子に右腕を折ったのか、姉仔実装は左腕だけで立ち上がり、何かを探すようにきょろきょろと 見回している。 ひろあきは、実装リンガルのアプリを立ち上げて話しかけた。 「おいお前、いったい何があった?」 『テェェ…ニンゲンさんが……ニンゲンさんが……お腹苦しいテチ…』 「そんな事どうでもいい。何をされたか言え」 『ニンゲンさんが、ワタチ達をいじめたテチ! 急にお腹苦しくなったテチ! ニンゲンさんのせいテチ!!』 と、姉仔実装がひろあきを指差して怒り始めた。 その意味不明な態度が、なんだか物凄く勘に触った。 ひろあきは、なおも怒鳴り続ける姉仔実装をデコピンで吹き飛ばし、無理矢理二匹を巣の中へ連れ戻した。 勿論、服を返してやるつもりなどない。 『お、お、お、お水ぅ〜!! 欲しいテチィ!! お水テチィィィィ!!!』 『オネーチャン…ワタチにも、ワタチにも飲ませてレチュゥゥゥッッ!!!』 ダンボールマットも失われ、露出した地面を無様に這いながら、姉妹は奥に置かれたペットボトル目指して移動 する。 だが、ひろあきはあのトピックの内容を思い出して、咄嗟にペットボトルを取り上げた。 テチ?! テチャアッ!! レチィッ!! 抗議する姉妹を無視して、ひろあきはペットボトルの水を観察した。 ひろあきが水を足してからは、姉妹は巣に戻っていない。 それなのに、中の水は少しだけ減っていた。 キャップはしっかり締めたから、漏れる事はありえない。 それだけでなく、水の色が少し緑色ががっていた。 何かを混ぜ込まれた事は明らかだった。 ひろあきは、すぐに中の水を捨てて新しく詰め直すと、姉妹の前に戻してやった。 ※ ※ ※ その後、二匹に少量のヨーグルトを与え、新しく準備したダンボールマットと布団代わりのタオルを提供し、更に 朝食代わりのチョコレートを置いて、ひろあきは退出した。 親指は、ヨーグルトこそ食べられたものの意識朦朧の状態で、どうやら正常な思考も出来なくなってしまったらしい。 いまだ、自分の髪の毛がほとんどなくなった事に気付いていない。 姉仔実装は、結局ほんの一舐め程度しかヨーグルトを食べられなかった。 見たところ、豆腐のせいで普段の二倍ほどに膨れ上がった腹が相当苦しいらしく、ろくに食べ物も喉を通らない。 それなのに喉の渇きだけは相変わらずなので、吐き戻しながらも水を飲もうとする。 リンガルで呼びかけても、もう耳を貸そうとすらしない。 姉妹は、もはや身体の異常に引きずられるだけの「生きた屍」になりつつあった。 ひろあきは、一先ず実装石活性剤の水溶液を再度二匹に与えて体力回復を促すと、それ以上苛めたりはせずに 帰宅する事にした。 というより、こんな状態で甚振っても楽しいとは思えなかった。 ひろあきは、元々実装石を精神的に追い詰める事が好きで、肉体的に苦しめる事は二の次と考えるタイプだった。 だからこそ、心が壊れかけた姉妹には、被虐心よりも同情心が先に立ってしまう。 本人はそれを心の中で懸命に否定していたが、それは紛れもない事実だった。 ひろあきは、どうして自分が愛護派みたいな真似をしなくちゃならないのか、それがどうしても納得が行かなかった。 かといって、このままあの姉妹を放置しておく気にもなれず、頭を抱えていた。 もし、朝にあの男さえ来ていれば、仔実装達はあんな目に逢わなかったかもしれないのに…… と、そこまで考えて、ひろあきはハッと顔を上げた。 もし、あの男が毒を与えている張本人だとしたら? 自分以外の者(ひろあき)が食べ物を与えている事を、良しとしていなかったとしたら? 姿を見た時間帯から、会社に閉じ篭っている事務職員だと勝手に分析していたが、外回り等の営業職だという 可能性もある事に気付く。 或いは服装がスーツというだけで、本当は自由業か自営業なのかもしれない。 ならば、立ち回れば時間はある程度自由になる。 もし、あの姉妹を援助するような態度を取りつつ、実際は毒で苦しめているのだとしたら…辻褄が合うのではない か? そう考えたひろあきは、明日の早朝スーツ姿の男の挙動を確認する事にして、その日は早めに休む事にした。 ※ ※ ※ 翌朝、いつもならようやく布団に潜り込む時間に、ひろあきは河川敷へ向かった。 真っ直ぐ巣へ向かうと、姉妹の無事を祈りながら、中を確認する。 ——だが、遅かった。 テ、テゲェェェ…… レプ、レブ……ペチャペチャ…… 昨日の朝と、まったく変わらない惨状が広がっていた。 いや、むしろもっと酷い有様だ。 姉仔実装は必死に吸い飲みにすがり付いているが、飲むたびに吐き、飲むたびに吐きを繰り返している。 既に相当量吐き戻したようで、吸い飲み周辺だけでなく、床のほぼ全体が水びだしだ。 吸い飲みを譲ってもらえない親指は、やはり昨日同様、姉の吐瀉物を舐め続けて喉を潤していた。 こちらも腹が異常に膨らんでおり、もはや腹ばいにすらなれない状態だ。 床に顔を近づけている親指の両脚は、シーソーの理屈で宙に浮いてしまう。 姉仔実装は腹の中に物が沢山詰まっている感じの膨らみ方だが、親指の方は明らかな「肥満」で、贅肉が脇に 流れてぶよぶよと波打っていた。 二重三重になった脂肪が、喉・延髄にも確認できる。 まともな餌もろくに摂れなかった筈なのに、こんな短時間で親指は醜悪なまでにでっぷりと太ってしまったのだ。 これも、コーラの濃縮液の影響なのだろうか。 スーツの男が来た痕跡を確認するが、姉妹が裸でいる点から、まだ現れていないと判断する。 昨日自分が置いていったチョコレートも、手付かずのままで放置され、昨日から干しっ放しだった二匹の実装服も、 コンクリートの上に置き去りのままだった。 2リットルペットボトルの水は、既に半分以上減っている。 デェェ…ゴクゴクゴク……ゲボゲホ…… よく見ると、姉仔実装の右目が緑色に染まっていた。 何かの拍子で妊娠してしまったらしい。 しかし、母体がこの状態、しかも仔実装程度の体格では、まともな出産などほぼありえない。 ひろあきは、リンガルを起動させて姉仔実装に話しかけてみた。 「おい、このままだと、お前も腹の子供も死ぬぞ!」 『テェェ……喉が、喉が渇く……テ……』 「その水を飲むな! 毒が入ってるぞ! お前らは、あの男に騙されたんだ! ここから出ろ! 逃げるんだ! さもないと妹も一緒に殺されちまうぞ!!」 『テェ……ニンゲンさん……今日も来てくれないテチ…?』 「え?」 『いつもご飯くれて…親指チャンと遊んでくれてたテチ… なんで、急に来てくれなくなったテチ…? ワタチ…ニンゲンさんに飼って欲しかったテチ……』 「それって……」 『テチ……喉が……ゲエェェェ!!』 もはや、姉仔実装とはまともな会話も成立しなくなっていた。 あのスーツの男に対する絶対的信頼感が、彼女の心を狂わせたようだ。 ひろあきは、なぜか急に悲しい気持ちになり、何もせずその場を立ち去った。 しかし、あの男がここへ来ていない? ひろあきは、姉仔実装の言葉に疑問を覚えた。 もしあの男でないとしたら、いったい誰がこんな事を? それとも、何かの理由であえて彼女達に気付かれないように行動したというのか? まさか…俺の存在に気付いて、その裏を掻くためとか……? 背後から、再び姉仔実装の嘔吐する声が聞こえた。 ※ ※ ※ 正午。 河川敷に、ワッチキャップの男がまたやって来た。 姉妹の巣の中の惨状を見て、満足そうに何度も頷く。 そして、姉仔実装の目の色が変わっている事にもすぐに気付いた。 ——長い間裸だから、何かの花粉を入れてしまったようだ。 男は、汚水の中で悶え苦しんでいる姉仔実装を捕らえ、足を掴み総排泄孔を開かせると、イチジク浣腸の容器に 詰まった液体を取り出し、先端部を挿入しようとした。 レェ…ベピュピュッ!! とその時、突然、脇にいた親指が激しく水便を噴き出した。 それが、男の左前腕と、手首に巻かれた高級そうな腕時計に降りかかった。 金属ベルトの隙間に、どろどろと潜り込んでいく濃緑色の糞便。 男の顔色が、みるみるうちに紅潮していく。 「……のやろ!!!」 男は一声叫ぶと浣腸を放り捨て、銀色の小さな袋をバッグから取り出した。 それを指先でさっさっと振り、中の粉末を底の方に寄せる。 袋の口を破くと、男は親指の頬を指で押さえ、無理矢理口を開かせた。 レ?! レボォッ?! サラサラ……サラサラ……サラサラサラ…… レ、レボボ…ケホケホ、ケホケホ……ゲッ!! 口に粉末を流し込み、指先で押さえ込む。 大量の乾燥粉末をいきなり流し込まれた親指は、しばらく目をパチパチさせて驚いていたが、突然暴れるように 四肢を振り回し始めた。 ……!! ……!! ………!! この間、ちょぼちょぼと垂れ続けていた水便が、ピタリと止まった。 親指の全身が、プルプルと小刻みに痙攣を始める。 それを確認すると、男はようやく親指を解放し、姉仔実装の傍に置いてやった。 レ……!! ヂ………!! ガ、ハッ!! ただでさえ喉の渇きが癒えていないのに、身体の体積の半分ほどもある乾燥粉末を注ぎ込まれたせいか、親指 は今までとは比較にならないほどの枯渇感に襲われた。 それだけではない。 徐々に全身の感覚が麻痺し、自分の意志とは無関係に手足が踊り始める。 頭の中が熱くなり、かと思うと急に冷めたり、目の奥から大量の水が溢れてくる。 ぶくぶくに肥え太った身体をぶるんぶるん揺らしながら、親指は身をよじって未知の感覚に抵抗していた。 やがて、総排泄孔から血便が…否、血そのものが流れ始める。 目が飛び出し、まるで何かのギニョールのような奇妙な変化を見せる。 全身の汗腺から、生臭い汗が大量に噴出し始める。 振り回され続ける小さな手足は、やがて衝撃に耐え切れず破損し始める。 だが、そこまでの状態にありながら、なお親指は激痛を感じていなかった。 それどころか、まるで夢心地のような気分を味わっていた。 レ………ママ……レチ…… 親指は、離れ離れになった親と、他の姉妹の事を思い出していた。 異常に鮮明な走馬灯が、次々にフラッシュバックする。 高級飼い実装として人間に長年育てられ、すべてにおいて完璧だった母親と、間引きを経て良い仔だけが 残された姉妹。 だが、ご主人様に散歩に連れて行かれた先で、見知らぬ男から貰ったクッキーのせいで、家族は大量の脱糞を してしまった。 高い服も可愛くて綺麗なアクセサリーも汚してしまい、ご主人様は何度謝っても許してくれなかった。 気が付いた時には、家族全員河川敷に捨てられていた。 気が付いた時には、親指は泥だらけで姉に抱かれていた。 他の姉妹も、ママもいなくなっていた。 お腹が空いていたけど、優しくてあったかいニンゲンが来て沢山ご飯をくれた。 とてもおいしかったし、とても嬉しかった。 レチュ…ニンゲンサン……レチ… 大きな手の中に抱かれ、とても安心した感覚。 指に抱きついて頬擦りをした時の喜びを思い出した所で、親指の意識はプツンと途切れた。 そして、そのまま二度と戻る事はなかった。 「…新しいの買ってもらお」 汚れた時計を外すと、男はそれを川に放り捨てた。 テェ…テチィ……? 動かなくなった親指を見ながら、姉仔実装が何かを囁きかけている。 もはや事態を把握する能力も失われたようで、微動だにしない妹の姿に疑問を抱く様子すらない。 男は、あらためて浣腸の容器を取り上げると、差込部分を姉仔実装の総排泄孔に挿入した。 テェ………テ、テギャァァァァァァァッッッッ!!!!! 数秒後、今までで最も大きな悲鳴が、周囲に木霊した。 (続く) ----------------------------------------------------------------------------------- 次回ラストです。 VIP語?はかなり適当。
