【実装石アミューズメントパーク 2】 ※双葉 : 高級飼い実装のブリーダー。現在のミドリの飼い主。 ※ミドリ : 行きおくれの飼い実装候補。どうしようもない糞蟲。 ※赤緑 : 『実装石虐待アミューズメントパーク』の社員。我慢強いお方。 ※グリン : パークの『キャスト』。なにか暗い過去があるらしい。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 エレベーターの扉が開くと俺はその音、いや声に気が付いた。 遠くから響く『ウォオオオオン!』とか『デギャァァァァス!』とかの様々な声が重なり合って音の『うねり』を作っている。 これは、夥しい数の実装石の悲鳴? そして鼻孔にまとわりつく実装石の血の臭い…。 と、赤緑氏が先回りして目の前に立っているのに気が付いた。 衣装もさっきのさえないツナギから、深い緑色のスーツに着替えている。 彼は恭しくこちらに一礼すると言った。 「お待ちしておりました。ようこそ『実装石虐待アミューズメントパーク』へ!」 実装石虐待アミューズメントパーク、それがここの本当の名前らしかった。 「突然の事でさぞ驚かれた事でしょう。 ここは虐待派の皆様に楽しんで頂けるように作られたアミューズメントパークでございます。 表向きは実装石愛護派向け施設をカモフラージュ的に営業してはいますが、実際はここが当パークの中心施設なのです」 虐待派のための娯楽施設。 つまり表向きの愛護をうたった看板とは正反対の、実装石を虐待する姿を楽しんでもらう展示施設ということか。 ネットの噂はあながち間違いではなかったというわけだ。 赤緑氏が施設について解説してくれた。 「そう、ここは実装石の虐待を愛好される趣味の方に『実装石虐待』を最大限楽しんで頂けるように作られた施設です。 まずは実装石に対して考案された古今東西の効果的な虐待・拷問の数々を展示した『実装石拷問展示コーナー』を見学して頂きます。 そちらをご覧頂いた後は、ご希望される見学者に実際に実装石に虐待を加えて頂く『実装石虐待お楽しみコーナー』を用意してございます。 そこでは、お客様がお望みの虐待を実行するための場所と、ありとあらゆる道具をご提供させて頂いております。 その他にも私どもの食品開発部が研究致しました、実装食をご賞味頂ける実装石レストラン『ル・ヴェール』もございますし お帰りの際にはショップで記念のお土産のお買い物もして頂けます。 中でも長期保存が可能な『仔実装真空パック詰め合わせ』はお客様にたいへんご好評をいただいている当ショップの主力商品です。 このように、『実装石虐待』に関するあらゆる娯楽を提供させて頂くのが当パークの使命と心得ております」 「へぇ…しかし、肝心のお客はどうやって集めているんですか? おおっぴらに宣伝できない以上、秘密と言うのも痛し痒しなのではないですか?」 「それは当然の疑問と存じます。 私どもは当社設定の条件を満たすお客様をリストアップした『虐待紳士名簿』を作成しておりまして、それに基づき招待状をお送りしています。 大手実装ショップや○ーゼン社にもご協力頂いていますので、今の所広告を打たなくても順調に営業成績を伸ばしている次第です」 「条件とはどういう…それなりの社会的地位があって、虐待に関する事を公言しないとかそんな事でしょうか?」 「ご理解が早くて助かります」 「しかし、娯楽的に虐待を供する施設は法律的に問題あるのではありませんか?」 「おっしゃる通り、虐待専門の娯楽施設を営業する事は出来ません。 ですが、基本的に当社のメイン事業は実装石の生態と社会的影響の総合的研究、そして実装石の生産事業なのです。 それに付随する虐待をお客様に業務公開するのは問題ないという事でして、そのことは特に法的に問題では無いという確認も行政から頂いています」 なるほど、会員制度を利用した秘密性の高い虐待施設か…。 自分で虐待するまでは行かなくても見るのは楽しい初心者や、実装石を虐待していることを家族や知人に知られたくない虐待愛好者もいるだろう。 個人では用意しづらい大掛かりな道具を使いたかったり、自宅で虐待場所を確保できないなどの潜在的欲求を抱えている虐待派も多いと聞く。 実装石を自由に虐待できる施設を会員に適切な料金で解放していれば、需要が見込めるのは間違い無さそうだ。 「とりあえず双葉様には『実装石拷問展示コーナー』をご覧頂きたく思います。ミドリちゃんの事についてはその後でお話し致しましょう」 「そうですね、是非拝見させて頂きます。 それと、こいつにもここを見せてやりたいのですが、構いませんか? 何かミドリも感じる物があるかもしれませんし…」 「ええ、もちろんです。きっと楽しんで頂けると思いますよ」 赤緑氏は笑みを浮かべると、グリンを連れて見学コースに俺たちを引率してくれた。 俺はミドリをケージから出すと、実装石用の手押しカートを借りてそこに乗せてやった。 ケージに押し込められていたせいかミドリは狭いだの腹減っただのとギャアギャア騒いだ。 だが『ばらおとめ堂の金平糖』をくれてやると意地汚く抱え込んで夢中でしゃぶり始めた。 俺は肩をすくめて、カートを押すと赤緑氏の後を付いていった。 入り口正面の薄暗い通路を抜けると、目の前には実装石の虐待展示コーナーが広がっていた。 地上とは裏腹に、地下は実装石の虐待・拷問を楽しむための客で賑わっていた。 愛護派の楽園の地下には虐待派の楽園が広がっているとは、何とも皮肉な話だ…。 「この実装石虐待展示コーナーでは、人間用に考案された拷問器具からヒントを得た虐待道具、そして数々の虐待派が実装石虐待の ために考案した専用の虐待道具を使用し、実際に実装石を虐待する所を見ながら実装石虐待について学んで頂けます」 まず最初は日本の拷問をモチーフにした、和の虐待展示コーナーに案内された。 そこでは時代劇でしか見たことが無いような、竹の箒尻での『笞打』や、膝の上に石の重しを乗せる『石抱』、『海老責め』、『釣責』にされている実装石や 虐待というよりむしろ処刑法である、竹のノコギリで首を少しずつ挽いて罪人を苦しめる『鋸引き』や『磔刑』にされている実装石に 実装石にとっては再生不可能であるが故に非常に辛い虐待である『釜茹で』や『火炙り』にされた実装石が、その苦痛で人間に怨嗟の絶叫を上げていた。 むしろさっさと『打ち首』にでもしてもらった方が、実装石達にとって遥かに楽に違いない。 でもそんな幸せな実装石がここにいるわけも無かった。 ここの展示のラストは『牛裂き』と呼ばれる、両足を牛に結びつけて引っ張らせ身体をまっ二つにしてしまうという、いかにも痛そうな虐待だった。 ただし設備スペース上、牛の形をした牽引装置になっていたのは残念だったが…。 そしてステージ裏から禿裸実装石が引きずり出され、両足に縄をかけられそれぞれの牛メカに繋がれた。 「デシャアアアアア!高貴なワタチに何するデス!許さんデスご主人様に痛い目に遭わせてもらうデスー!」 準備が終わり合図が出ると、カウントダウンとともに2つの牽引装置が徐々に別方向を目指して動き出した。 レールの上に乗ったファンキーな顔をした牛メカは着実にロープを引っ張り続け、実装石の両足は限界を超えて開かれていく。 強制開脚させられてデップーンと顔を赤らめるヒマも無く両足の付け根に堪え難い痛みが走る。 「デアアアア!オマタがァァ、オマタが裂けるデスゥー!イダイイダイイダイデズー!」 そして実装石があまりの激痛にに声も無くなったその時、『ブツン!』とイヤな音を立てて実装石は赤黒い内臓と緑の糞を派手にぶちまけてまっ二つになった。 なかなかの見ものに観客から拍手が起こる。 ミドリは血の臭いに興奮したのか、ピスピス鼻息を荒げながら腕を振り回している。 「…いや、さすがに目の前で見るとスゴいですねぇ」 俺は正直な感想を赤緑氏に伝えると、赤緑氏は恭しく礼をして 「ありがとうございます。 当展示のモットーはリアルを信条と心がけておりますので、虐待は全て本物の実装石にて行う事にしております。 毎日100匹を超える数の実装石が当パークで虐待されおりまして、すべて生きた実装石を使ってこそ、お客様の心に残る虐待が出来る物と心得ております」 「しかし、それでは新しい実装石も毎日大量に必要になってくるのでは?」 「おっしゃる通りです。当施設のラボによる高度な実装石再生治療、そして大量生殖を可能にする生産技術によって 現在はなんとか実装石の安定供給は出来る様になっていますが…まぁ他にも悩みの種はありまして」 「と、いいますと?」 「それについては、長くなるので見学終了後にお話しするという事で。 せっかくお越しいただいたのですから、まずは当パークをお楽しみ下さい」 赤緑氏にはいろいろ聞きたい事があったが、確かに一通り見ておきたかったので案内を続けてもらう事にした。 日本の展示の次は、西洋の拷問道具を使って実装石が虐待されている『西洋拷問道具セクション』。 西洋の様々な拷問道具によって生きながら苦痛を味あわされている実装石達が、ここでも断末魔の悲鳴を止むことなくあげている。 鞭叩き、水責め、火刑といった基本的な拷問から、日本では見たことも無いような奇妙な道具による責め苦がずらりと並んでいる様は かなり刺激的で興味深いものだった。 「この三角錐が付いたコーンのような物は何なんですか?」 「これは中世の拷問器具で『ユダの揺りかご(Judas Cradle )』といいまして この上に実装石を縛って乗せると自分の重みで総排泄腔に三角錐が食い込んで苦痛を与えるのです」 赤緑氏が合図をすると、腕を縛られた実装石が一匹連れてこられた。 とっくに禿裸にされて体中は虐待で付けられた痣だらけである。 「デギャー!離すデス!もう痛いのは嫌デスー! なんにもニンゲンさんに悪いことはしていないのにどうして痛い事するデスー!」 処刑人の格好をしたエキストラが、有無を言わせずその実装石を『ユダの揺りかご』に据え付けた。 三角錐にはガラス片が埋め込まれていて、実装石の総排泄腔をズブズブと切り裂いていく。 「ギャアアアアアア!イタいイタいイタいデスー!トンガリがアソコに食い込むデスー!!」 処刑人は慣れた手つきで実装石の両足にどんどん重りをぶら下げていく。 1kg、2kg、3kg…重さが増えるたびに実装石は深く沈み込んでいき、その度に総排泄腔に加わる激痛で実装石は絶叫する。 「ギャアアアアァ!イダイデスー!これ以上オマタが裂けると子供が産めなくなるデス!もう止めるデスー!」 実装石の悲痛な訴えがまるで聞こえないかのように、処刑人はさらに重りを増やしていった。 そして三角錐が食い込んで拡張しきった実装石の総排泄腔はとうとう限界を迎えたのか、『ビチッ!』と音を立てて裂けた。 「ギャアアアアアア…オ、オゴゴー…!」 一気に実装石の体が沈み込み、体を貫通して口から三角錐の頂点が勢いよく突き出した。 実装石はその生命力でかろうじて絶命はしていないものの小刻みに体を震わせていて、体が裂けた激痛に気を失うことも出来ないようだ。 処刑人はこちらに一礼すると、実装石が刺さったままの『ユダの揺りかご』を引っ張って奥に消えていった。 「ゲゲゲゲゲ!面白いデース! バカな実装石がイタい目に会ってるのは楽しいデース!」 一部始終を目を輝かせて見ていたミドリが、ゲラゲラ笑いながらバシバシ両手を叩いて喜んでいる。 こいつには他の実装石の苦痛も、面白い出し物か何かにしか見えていないようだ。 次に目が止まった虐待道具は、世間に疎い俺でも知っている有名なものだった。 「これは…いわゆる『鋼鉄の処女』ってヤツですね? それにしては大きさが小さいけど…」 「そうです。こいつは海外の拷問器具工房に特注して作らせた、実装石サイズの『鋼鉄の処女』なのです。 ドイツのニュルンベルクで実際に使われていた物から採寸して精巧に縮小した、まさに芸術品です」 それは一見金属製の釣り鐘に見えたが、てっぺんには女性の顔がレリーフで刻まれていた。 胴体の空洞の中には無数のスパイクが植えられていて、観音開きの扉を閉めると閉じ込められた犠牲者の全身にスパイクが刺さる仕組みになっている。 この中に入った実装石は『鋼鉄の処女』による『血の抱擁』を受けるのだ…。 スパイクをよく見ると、既に何百匹もの実装石の命を奪った証であろう、実装石のどす黒い血や髪の毛がたっぷりとこびりついていた。 「只今から『鋼鉄の処女』コーナーにて、『キャスト』の実装石ちゃんによる実演ショーが行われます。 まだお楽しみでない方は、どうかこぞってご覧下さい」 アナウンスが流れると、『鋼鉄の処女』が設置してある舞台裏から、槍を持った処刑人に追い立てられた実装石が数匹飛び出してきた。 さっきの実装石もそうだが、『キャスト』というからには、こいつらはここで雇われているのに違いない。 陽気な仔実装達と違って、親と思しき実装石はガタガタと恐怖に震えているようだ。 『鋼鉄の処女』を経験するのは初めてではないようだ。 「デ、デェッス! もうこの『悲しい部屋』に入るのは嫌デェッス! せっかく仔を育てたのに、ここに入ったらまたみんな死んでしまうデェッス!」 「ママー? 新しいお家にお引っ越しするんテッチュー?」 「テッチューン!ひろいおウチでうれチいテッチュー!早く入るテチュー!」 前の家族は全滅してしまったので新しい家族を作ったはいいが、再び同じ目に遭うとは思っていなかったのか。 いや、おそらくこの実装石はそれも込みで虐待されているのだろう。 処刑人の持つ槍で突かれる痛みに抵抗できず、一家はそろって『鋼鉄の処女』の中に押し込められてしまった。 さすがの仔実装たちも様子がおかしいと悟ったのか、恐怖で親にしがみついている。 赤緑氏はマイクを取ると集まった観衆に向かって呼びかけた。 「お客様の中で、この『鋼鉄の処女』の扉を閉めるスイッチを押したい方はおられませんか?」 ハイハイと一斉に手が挙がる。 普通に暮らしてて『鋼鉄の処女』を使う機会はまず無いからな。 「では…ミドリちゃん、ここはあなたにスイッチを押してもらいましょうか?」 俺は苦笑するしかなかった。 ミドリは犠牲者の実装石一家を指差して、カートをバンバン叩きながらゲラゲラ笑っている。 親実装がミドリに必死で呼びかけた。 「オイ、そこの頭の悪そうな実装石!笑ってないでワタチを助けるデェッス!早くこいつらを血祭りに上げるデェッス!」 ミドリはその叫び声を聞いてさらに爆笑する。 「ゲゲゲゲゲ!セレブ飼い実装のワタチが何でそんなメンドくさいことするデスか!負け組のオマエらはそこで死ぬがいいデース!」 そして赤緑氏から差し出された『鋼鉄の処女』のスイッチをためらい無くポチッと押した。 『鋼鉄の処女』の扉がゆっくりと閉じ始め、スパイクが実装石一家をじわじわと苦しめていく。 親実装は逃げられないと悟ったのか、仔実装を自分の身体で守ると思いきや… 逆に子供たちをを体の周りに抱えるとスパイクが自分に刺さらない様に盾にし始めた。 なるほどこの糞蟲親は、どうやら前の家族もそうやって自分で殺してしまったらしい。 「オマエたちママを守るデェッス!仔なんかまた産めばいいんデェッス!ワタチが死んだら元も仔もないデェーッス!!」 「テチャアアア!ママー痛いテチュー!トンガリが刺さるテチュー!」 「ママーッ!可愛いワタチを助けるデチュー!イタタデペッ!」 しかし、仔実装は体が柔らかすぎて身を守るのには全く役に立たない。 スパイクは動きを緩めることなく仔実装の盾をズブズブと突き通して親実装の体に突き刺さった。 「デシャアアアアアー!痛い痛い痛いーッ!全く役に立たない仔実装どもデェッス! オマエェー!同じ実装石のくせに許さんデェッス!死んでも呪ってやるデェッス!アガガガガガ!!」 親実装はミドリを睨みつけ血涙を流しながら呪詛の言葉を叫んでいたが、扉が閉まるとその叫び声も弱く響くだけになった。 「仔実装はほぼ即死でしょうが、親実装は偽石が抜いてあるので死ぬ事も出来ずに苦しみ続ける事になります。 もちろんこの子は大事な『キャスト』ですから、完全死する前に中止して再生治療させますのでご安心下さい」 つまり偽石が消耗し尽くして完全に再生不可能になるまでこの実装石一家の茶番劇はくり返される事になるわけだ。 永遠にくり返される虐待と苦痛。 まさにここは実装石にとって『地獄』に違いない。 俺の足下では、その光景を見ながらグリンは全身から脂汗をたらしてブルブル震えていた。 恐らくグリンも数多の虐待を経験し、死と再生を重ねてついにここから解放されたに違いない。 しかし偽石に刻み込まれた虐待の記憶を消す事は出来ない。 くり返された強烈な体験が実装石の精神に甚大な影響を与えるのは間違いないのだ。 見かけはマトモでも既にグリンは『壊れてしまった』のだろう。 それが、俺がグリンに感じた違和感の原因だったのだ…。 その後、俺たちは『バールのような物』や『ドドンパ』『釣り天井』『フードプロセッサー』などまさに 虐待基本アイテムの並ぶ『街の虐待派展示コーナー』を見学し、併設されたレストラン『ル・ヴェール』で軽くランチを取った。 そこで食った『ベーグルサンド〜蛆実装とチーズのアボカドソース和え〜』と『仔実装フライ フィッシュ&チップス風』は 非常に美味かったことを付け加えておきたい。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ひととおりの見学を終えて、俺たちは事務所に戻ってきた。 「当施設のご感想はいかがでしたでしょうか?」 「いや、圧倒されました。これだけの虐待が一望の元に楽しめるのは確かにここだけでしょうね…。 そういえば、さきほどこれでも問題があるとおっしゃってましたが、それは?」 「ええ…ここの実装石達『キャスト』の調達に関わる事であり、またミドリちゃんをお呼びした理由でもあります」 赤緑氏は改まった様子で話を続けた。 「実際の所、実装石生産工場で生産した実装石で虐待キャストの頭数をそろえる事は出来るのですが、問題点もありまして。 実は、工場で大量に生産された実装石には『個性』が薄い実装石が多いのです。 安定した環境で育成されるためにメンタリティが安定するのがその理由ですが、その分虐待に対する『抵抗力』というか『反抗心』が少ないか ほとんど見られないために、いざ本番で虐待されると簡単に偽石が崩壊してしまうケースが多いんです」 「なるほど…でもある意味コントロールし易くていいのでは?」 「そうですね。その性質は食品用に生産された食用実装石などではいい方向に働くのですが…。 ことウチのような虐待娯楽施設ではそういう『抵抗力』の無い実装石ばかりでは、お客様に充分に虐待を楽しんで頂く前に実装石が完全死してしまうんです。 結果、消耗が激しくなって実装石の生産を増やさざるを得なくなるという悪循環でして」 なるほど、ただホイホイと実装石を連れてきて虐待すればいいというわけでも無いのか。 「かといって、外から連れてきた野良実装ではやはり品質にバラツキがありすぎますし、組織的に狩り集めるのも一企業では限界があります。 そこでミドリちゃんのような、『飼い実装でありつつも糞蟲である』メンタリティを持った外部の実装石を定期的に導入してやるといった強化策が必要になるわけです。 野良実装よりも洗練されていて大量生産石よりもバイタリティがある実装石を仔実装成育過程で接触させて彼らの『糞蟲化』を促進させてやったり ラボで開発中の『偽石記憶転写システム』のような方法で直接糞蟲にマインドセットすることも考えております。 ですが、根本的にはやはりミドリちゃんのような実装石自体を…」 「…ロボットのような張り合いの無い実装石よりも、ウチの糞蟲の方が虐待しがいがあると」 「有り体に言うとそういうことですね」 俺が身もふたもない事実に思わず苦笑すると、赤緑氏も頭をかきながら笑った。 「このグリン君も、もともとは某大企業の重役の奥様がお飼いになっていた実装石なのですが、あまりの糞蟲ぶりに手を焼いて ショップに持ち込まれたのが、巡り巡ってここにやってきたという経歴の持ち主でして。それが3ヶ月ほど前の事になりますかな。 もう偽石が大規模な再生に耐えられなくなったので、最近『地下』から卒業したばかりなのです。 …グリン君は過剰な虐待によるストレスで過去の記憶に混乱をきたしているようで、あまり昔の事は思い出せないらしいですが」 グリンはさっきよりは落ち着きを取り戻した表情でこちらにうなずいた。 たった3ヶ月で、折り紙付きの糞蟲だという実装石がここまで変わったという事実に、俺は驚きを隠せなかった。 過酷な虐待の連続がグリンを変えたのなら、ウチのミドリもあるいは…。 俺の心は固まった。 「本題に戻りますが…ミドリちゃんをお預かりさせて頂きたいのですが、いかがでしょうか?」 「こちらこそ、是非お願いします…ミドリ、良かったな!オマエは今日からここで飼われるんだぞ」 自分の運命を決める会話の内容など1ミリも理解していなかったであろうミドリは、それを聞いてますます増長したようだった。 「デース!ようやくワタチのすばらしさを理解するニンゲンが現れたデス! オマエは毎日ステーキとお寿司と山盛りのコンペイトウと産みたての蛆をバケツで用意するデス! ケージなんかに住ませたら3秒で半殺しにしてやるデス!分かったデスかバカニンゲン! そこの頭の悪そうな実装石!オマエはワタチの身の回りの世話をするデス! あとフタバニンゲン!オマエは今までよくもワタチを貧乏な目にあわせたデス! オマエの顔など二度と見たくないデス今すぐ死んで詫びろデス腹を切るデース! でもワタチの糞を食うなら奴隷として生かしてやらん事も無いデス!」 といってさらに独り言を呟きながらデププププと高笑いを始めた。 もう既にミドリの脳内の妄想世界ではバラ色の極楽生活がスタートしているようだ。 「では、このまま『上げ』の準備期間を置いてから、『キャスト』としての虐待プログラムを開始する事になります。 ミドリちゃんの賃金契約と、万が一の突然死に対しての死亡保険等の契約条項に関しては、ご確認の上また後日書面を送らせて頂きます」 「わかりました、ではミドリをよろしくお願い致します」 特別な感慨は湧かなかった。 このままただ潰してしまったり、逆に俺の家で腐ってしまうよりは、この地下での生活の方がよっぽどミドリのためになるだろう。 例え虐待されるためだけに生きるのだとしても、少なくともその瞬間を生きている実感だけは味わえるはずだ。 そしてここでの虐待に耐え抜ければ、グリンの様に再び地上で暮らす事が出来るかもしれないのだ。 難しいだろうが…チャンスはゼロではない。 しばらくしたらミドリに会いに来よう。 きっとミドリにとってはいい虐待になるだろうし、と俺は心の中で笑った。 その時は俺の事を憶えていてくれれば良いが…。 <終>
