私ですか? そうですね、私のことは『会長』、 とでも呼んで下さい。 私のことは、色々な連中が、色々な呼び方をします。 若いくせに頂点に立ったおかげで、 『総帥』とか、『社長』とか、『旦那さま』とか、『ご主人さま』とか呼ばれたりします。 他には『鬼』とか『悪魔』、と言う連中もいますねぇ。 ちょっと変わったところでは、 『お前』と呼ぶ人が一人と、あとは『兄様』と呼ぶ牝が一人。 それで、何故『会長』か、というと、単に名前だけですが、私はとある虐待者の会の『会長』に名を連ねて おりましてね。 だから、虐待師の皆さんには、『会長』と呼んでいただくのが、一番しっくりきます。 もっとも私の呼び方なんてどうでも良いです。 これからするお話には、私以外の人はほとんど出てきませんから。 * * * * …なんというか、つまらないですね。 最近のブリーダーが躾た実装石は全くつまらないです。 全国大会で1位になったブリーダーが仕込んだという、 『最高のブリーダーが育てた、躾が行き届いた仔実装石!!』 というのを購入してみましたが、突こうが切ろうが炙ろうが、 『ありがとうございますテチュ、ご主人様』 で感謝されるようでは、全く虐待のしがいがありません。 馬鹿馬鹿しくなって虐待を止めて放り出したら、 『テェエ〜、見捨てないで下さいテチュ、ご主人様!! 邪魔になったなら一言『死ね』と命令して下さい テチュ〜!!』 とは…。 相手をしないこと、つまり『虐待しないこと』が『最高の虐待』とは全く洒落にもなりませんねぇ。 余りにも馬鹿らしくなり、そいつを放置して、私は夜の散歩にしゃれ込むことにしました。 行き先は近隣の公園。あんな下らない『物』に比べれば、まだ野良の方がマシです。 お目当ては、愛情の深い実装親仔。 ここ暫くショップの実装を責めていたので、自然と親仔ではなく一匹だけの個体ばかり相手をすることにな ってしまいました。 久しぶりに別のものが食べたい、ということで、親仔連れの実装を探します。 公園の入り口やら通路脇やらといった目立つところにハウスを構えているヤツは駄目。どうせ頭の悪い、糞 蟲に決まっています。藪か林の中、気づかれないようになにかの擬装をしているようなハウスを探します…。 …ありました。 林の茂みの中、ハウスを半ば地面に埋め、上からでは木の影になって直接見えないようにしているダンボー ルハウスです。 起こさないように中を覗くと… 親実装と、五匹の仔実装ですか。よしよし。 埋まっているハウスを持ち上げて地面の上に置き、実装達を起こします。 「デデ?デウデデゥ?(な、何事デス?何が起こったデス?)」 リンガルを使って、実装と会話します。 「こんばんは、実装石さん。すみませんねぇ、お休みのところ。」 「デ!デデデス?(に、ニンゲン! な、なんの用デス?)」 そう言いながら、寝ぼけまなこの仔供達を背後に庇ってゆきます。 「少し前に、実装石用の器具を買ったんですが、適当な実装石がおりませんでね。ちょっとテストに協力し て欲しいんですが。」 「デス、デデウ。デウデゥ。(い、いや、今は夜デスし、ワタシ達も疲れているので無理デス。 ま、また今 度にしてくださいデス)。」 人間を相手にしても媚を売るでなく、むしろ警戒してどうにかこの場から逃れようとするこの態度。 それなりに賢い実装石の証、ですね。どうやら、『当たり』を見つけたみたいです。 「判りました。じゃあ、明日にしましょう。」 「デ〜♪デ、デスゥ。((ホッ)。じゃあ、と、とりあえずさようならデス)。」 「いえ、それには及びません。 今、この場から、ハウスごと我が家に来ていただいて、そのまま明日までは休んでいただきます。」 「デ〜!?」 「安心してください、わが屋敷の地下室はちょっとしたハイテクが組み込んでありましてね。部屋の中では 人間と実装石とが直接会話できるようになっています。複数箇所に組み込んだスピーカーを使い、ステレ オの応用で反対の波長の音波をぶつけて音を消したり、特定の相手にだけ声が聞こえるようにしたり…。 優れ物ですよ。導入してからは何とも快適です。やっぱりリンガルでの文字表示では、悲鳴を聞いてもつ まらないですからねぇ。」 「デス!? デウ…(ひ、悲鳴!? ど、どうしてそんなものが聞こえて…)。」 「それはやっぱり、私が虐待者だからですよ。ふふ…。」 「デ〜!! デ、デウ、デウ!!デデゥ!!デ〜!!(ひ〜!! い、イヤです、イヤです!! そんなところには行きたくないです!!止めてデスゥ!!)」 「すいませんが、私もわざわざ出向いてきたんです。少しは報いて欲しいんですが」 そう言って、部下にダンボールハウスごと屋敷に運ぶよう指示します。 「デェエ、デーデーデー!!(デェエ、そんなこと知らないです、は、離してくださいデス〜!!)」 実装石は絶叫しますが、もちろん部下は相手にしません。ダンボールの蓋を閉じると、ずいぶんの静かにな りました。 さて、じゃあ私も帰って眠るとしますか。明日は地下室で実装達を『可愛が』らなといけませんし。 * * * * で、次の日。 件の『実装石用の器具』を彼らに披露しました。 簡単に言うと、それは四角い枠の中に、高出力のレーザーが何本も格子状に出るようにしたもの。 透明度の高い専用のアクリルケースの中に実装を身動き取れないように閉じこめ、この枠の中を通すと、レ ーザーはアクリルを透過し、中の実装だけをまるで『ところてん』の様にスパッ、と切断します。 但し、センサーが働いて、偽石だけは傷つけないようにレーザーが部分的に停止するのと、レーザーの細さ は『ところてん』切りの針金とは比べ物にならない程細く、且つ傷口を焼くので、これを通過しても実装石 が即死する、ということはありません。 つまり… レーザーでカットした仔実装を、そのままアクリルケースから出してやり、親実装のケースから少し離れた ところにそっと置いてやります。親が気が付いて仔実装に必死に声を掛けます。 この地下室の中では、ハイテクのおかげで直接実装達の言葉が判ります。 『デスゥウ!! 仔供!! 私の仔供!!』 おや、仔実装も気が付いたようですね、 『テッチ〜♪ ママ〜♪』 嬉しそうに鳴いて親の方に手を振ります。 しかし… バサ。 裁断されていた右手を振り回したことで、曲がったところから切れ目が広がり、右手がそのまま、玉すだれ のように分断してしまいました。 『テチ? ヒァァィイイ〜!!』 手に違和感を感じた仔実装が、何事かと右手を見て、分断された手にパニックを起こします。そのまま泣き ながら親の水槽に近づいてゆきますが、足を踏み出し、身体を動かしたせいで、瞬く間に全身が同じように 千切れてゆきますねぇ♪ 『あ、足が!? あああ、足が切れてゆくテチ!! か、身体も? ば、バラバラになってゆくテチ!! ひ!? い、いやテチ!! ま、ママ〜ッ!! た、助け、たしゅえぺにれれれ…!? ぴぃ〜〜〜〜!!』 バラッ!! ほんの数歩の距離だったのに、母親の元に近づくこともできないまま、仔実装はいくつかの四角くて長細い 肉片になって死んでしまいました。 『デェェェエエエエエエ!!!!』 母親が絶叫しています。どんな気持ちでしょうかねぇ。 「どうです? この新しい実装石虐待器具、『デスゥスライサー』は? 抜群の切れ味でしょう。」 『うう、何で、何でワタシ達ばかりこんなヒドイ目に会うのデス…。世の中には幸せに暮らしている同属だ っているのに… あんまりデス…』 幸せに暮らしている実装石? ほう。そんなものがいるのですか。これはちょっと聞き捨てなりませんねぇ。 親実装石の隣の水槽に入れておいた仔実装達の中から一匹を摘み上げ、首を締めあげます。 『テチャァアア! ま、ママ、く、苦しいテチ〜、た、助けてテチ〜!!』 『デェェエエ、こ、仔供になにをするデス!!』 『ちょっと興味が湧きました。すいませんが、その『幸せに暮らしている同属』とやらの話を聞かせてもら えますかねぇ。』 『は、話すデス! 話すから仔供に乱暴しないでデス! 別に隠すような話でも無いデス…。』 * * * * もともとワタシ達の家族は、ワタシと七匹の仔実装たちの合計八匹だったデス。 それが…、オマエに捕まる前の日のことデス…。、 その日ワタシはハウスの近くの広場で、仔供たちを遊ばせていたデス。 みんな、仲良く楽しく遊んでいたデス…。 * * * * 「あ、ちょっと待ちなさい。」 『デス?』 摘み上げていた仔実装を持ち替えて、右手で頭を、左手で足を、それぞれ掴む。 そのまま雑巾を絞る要領で(もっとも私は雑巾など絞ったことは無いですが)、仔実装を絞りあげる。 『テ、テチャァアアアァアアアア〜!?』 絶叫する仔実装。そのまま体表がパンパンに膨れ上がったかと思うと、所々に裂け目が生じ、 紅と翠の汚らしい体液が溢れ出しましたが、気にしない。 『デェェエエエ、な、何をするデスゥ!? ワタシの仔供を放すデスゥ!!!』 「実装石ごときが、人間を『オマエ』呼ばわりとはなんですか。私を含め、『人間』のことは『ニンゲンサマ』 と呼びなさい。ペナルティとして、この仔実装は潰します。」 『テェエエ? し、死にたくないテチ〜! ママ助けてテチ〜!』 『デェ〜、や、止めるデスゥ〜!!』 「駄目です。」 泣き叫ぶ仔実装をそのまま締め上げると、「チブッ!!」と一声鳴いて仔実装は張り裂けました。 「いいですね、同じミスをやったら、また仔供を潰しますよ。」 『…わ、分かりましたデスゥ…』 血涙を流しながら、親実装がうなずきます。物分りが良いのは好きですよ。もっとも分かりすぎると、先の ペット実装のように手ごたえが無くなって困るのですが。 「それでは話の続きを聞かせてもらいましょう。」 * * * * …ワタシの仔供たちが、公園の通路のわきの草むらで遊んでいたときデス。 その公園の通路に、首輪をはめ、綺麗な服を着て、いい臭いをさせた親子連れの同属が通りがかったデス。 それは、ニンゲ…ニンゲンサマに飼われている『飼い実装』達だったデス。 親実装と仔実装四匹の親子連れだったデス。 飼い主らしいニンゲンサマに手を引かれ、皆楽しそうに公園の通路を歩いていたデス。 そして手にはコンペイトウ…。 ワタシ達がめったに口にできないご馳走を、幾つも幾つも、あたりまえのようにポリポリと食べていたデス。 ワタシ達、特に仔供達は、その同属の身なりや食べ物に激しく憧れたデス。 その時、その飼い実装の中の一匹の仔実装が、食べかけのコンペイトウをポロリと落としたデス。 それは転がって、ワタシの仔の目の前で止まったデス…。 その仔はそれまでコンペイトウなど、食べるどころか、臭いを嗅いだことも、見たことさえなかったデス。 その仔はそのコンペイトウを拾い上げたデス。 きっと本当はものすごく食べたかったはずデス。でも食べようとはしなかったデス。ワタシは仔供達に、『ニ ンゲンさんや飼い実装のモノは取ってはいけない』と教えていたデス。ニンゲンサマを怒らせたら、ワタシ 達はあっという間に殺されてしまうデスから…。 その仔は拾ったコンペイトウを返してあげようと、飼い実装達に近づいていったデス。 『落としましたテ…』 バシィイ!! 次の瞬間、その仔はコンペイトウを落とした飼い仔実装に殴り倒されたデス。 『汚い野良のクセに、高貴なワタチの物に触れるなテチ!! あつかましい奴テチ!!』 そのまま、ワタシの仔供はその仔実装に何度も殴られたデス。 『テェ!? 痛いテチ、止めてテチ!!』 泣き叫ぶその仔を見て、その仔のすぐ上の仔が飛び出したデス。 『乱暴は止めるテチ!!何も悪いことはしていないテチ!!』 そう言ってその仔を突き飛ばしたデス。 『テテッ、の、野良の分際で、飼い実装のワタチに何をするテチ!! 許さないテチ!!』 『妹は落し物を届けただけテチ!! なぜ殴られなければいけないテチ!!』 『目 ・ ざ ・ わ ・ り ・ テチ!! 理由はそれで充分テチ!! 第一、優秀な飼い実装の ワタチが、落としたりするようなミスするわけ無いテチ!! そのコンペイトウはそこに置いただけ テチ!! 勝手に触るなテチ!!」 『!! いいかげんにしろテ…』 飛び出した仔供が、好きなことを言う飼い仔実装に怒って、思わず殴りかかろうとしたデス。 でも、ワタシはそれを止めたデス。 『飼い実装』を本気で怒らせると、確実に『飼い主』に皆殺しにされてしまうデスから…。 『デェエエ、お、前達、何をするのデス! 『飼い実装』に手を上げてはいけないデス!!』 その一言で、その飛び出した仔は動きを止めたデス。そこに… 『オマエ、野良のブンザイでワタシの妹に何をするテチ!!』 『生意気テチ!! 許せないテチ!!』 『みんなでやっつけてやるテチ!! そこを動くなテチ!!』 飼い仔実装達の姉妹がやってきて、ワタシの仔供達に殴りかかっていったデス。 四対二で向こうの方が数が多い上に、向こうは遠慮なく殴ってくるデス…。こっちは手が出せないのにデス …。 『ま、まずいデス…、と、とりあえずオマエ達は早く逃げるデス!!』 とりあえずワタシはその場にいた他の五匹の仔供達を逃がしましたデス。そして飼い仔実装達に絡まれてい る二匹の仔供達のところに行こうとしたデス。 でも…そこに飼い実装達の飼い主が現れたデス…。 「どうしたの『ヒア』ちゃん。」 『テッチ、テチテチ、テチテテ〜!!(テチ〜、ご主人様〜!! この野良どもが悪いことをするテチ〜!! ワタチのコンペイトウを盗んだ上に、ワタチに手を上げたテチ〜!!)』 「まぁ、なんて腹立たしい野良かしら。私の可愛い『ヒア』ちゃんに手を上げるなんて許せないわ。処分 しちゃいましょう。」 そう言って、ワタシの二匹の仔供達を蹴り飛ばして、飼い実装達から距離を取ったデス。 それから仔供達にスプレー缶を向けたデス。 …ワタシは、一体どうすれば良いか、その一瞬、固まって何もできなくなったデス。 そのとき、ニンゲンサマに狙われていた仔供の一匹が叫んだデス。 『ママ、ワタチ達にかまわず逃げるテチ!!』 そう言って、ワタシ達とは反対の方向に走りだしたデス。 …このとき、ワタシもその仔供達を諦めて逃げ だしたデス…。 …飼い実装達の親が止めに入ってくれはしたデス。 『デェ!!デデデス、デス!!(ご、ご主人様待ってくださいデス!! 粗相をしたのはワタシの仔の方 で、この同属の仔達は悪くないデス!!)』 「あら、『ルク』は優しいのね。でも、気にしなくていいのよ。血統書のあるアナタ達と、こんな薄汚い野良 とじゃつりあわないでしょ? 可愛い私の『ヒア』ちゃんのいうとおり、悪いのは全部こいつらでいいの よ。」 『テッチ〜、テチテチ(その通りテチ、悪いのはみんなこいつらテチ)。』 『テッテ、テチチ(『ヒア』ちゃんの言うとおりテチ、野良がいけないテチ)。』 『テチ〜、テテチ(さすがご主人様テチ、セイギのみかたテチ)。』 『チッチ〜、チチチ(悪い奴らはやっつけろテチ〜)。』 『デ、デ〜…(デ、デも、…)。』 「い・い・の・よ。 私を困らせないで、『ルク』。」 『デ〜、デス…(は、はいデス…)。』 ワタシの仔供達は何とか逃げようと走りだしていたデス。 だけど、ニンゲンサマの足の速さにはまるで敵 わなかったデス。 しゅっ。 必死で逃げていた、ワタシの二匹の仔供達は、そのスプレーから出た空気が触れただけで、 『テヒャアァァアア−−−−!!!』 『ヒギャアアァアア−−−−!!!』 …苦しみもがき、血を吐き、脱糞して死んでしまいましたデス…。 ….今でも、そのときの二匹の仔供の叫びが耳から離れないデス…。 『プップ〜♪テチ。テッチ〜♪(プップ〜♪天罰テチ。いい気味テチ♪)』 『テチテチ♪』 『テチ〜♪』 『テチ♪…』 「ふう、これでスッキリした。 …あらやだ、さっきのコンペイトウがこんなところに落ちてるわ。」 『テチ。テッチテチ(もういらないテチ。あんな汚い野良が触ったものなんて、バッチくて食べられない テチ)。』 「そうね、捨てちゃいましょうか。」 …『飼い主』のニンゲンサマは、そのコンペイトウを摘み上げて、傍にあった排水用の穴に捨ててしまった デス。 そして、必死で逃げるワタシ達の背後を、そのまま飼い実装一家は悠々と通り過ぎていったデス。多分あい つらが追いかけてこなかったのは、そんな価値もワタシ達には無いと思ったからデス…。 通り過ぎるとき、親実装だけは、「…ごめんなさいデス…」と謝っていたデス。 でも他の仔実装達は、 『テプ!ブサイクな奴らテチ!!』 『チプ!!やっぱり野良は駄目テチ!!』 『ヘプ!!飼い実装石のワタチ達とはウンデイの差があるテチ!!』 そう言って笑っていたデス。 そして、コンペイトウを落とした仔実装はこう言いやがったデス。 『テププ!家族を殺されて平然としているなんてサイテイな奴らテチ!!』 …本当は、本当はそのまま取って返して殴りかかってやりたかったデス!! そのままその首に噛み付いて食いちぎってやりたかったデス!! あの飼い実装達を片端から皆殺しにしてやりたかったデス!! …でもそんなことは無理デス。 そんなことを試しても、触ることもできないまま、きっと、ワタシも、ワタシの他の仔供達も皆殺されてし まうデス…。 だから、殺された二匹に心で謝りながら、必死で逃げたデス…。 それなのに…、その次の日に、ニンゲンサマに見つかって捕まってしまったデス…。 きっとこのまま、 花でも摘むように簡単に次々と殺されてしまうデス…。 …ワタシの仔供達は、コンペイトウをただの一度も食べることさえ無いまま殺されてしまったデス…。 あの同属は、あの同属の仔は当たり前のように貪り喰っていたというのにデス!! ワタシの仔供達は、何も悪いことはしていなかったのに、殺されてしまったデス…。 あの同属の仔が手を 滑らせてコンペイトウを落としたせいでデス!! ワタシの二匹の仔供達の命の代償は、ゴミとして捨てられてしまったデス…。 あの同属の仔が『バッチい』 とただの一言で片付けてしまったせいでデス!! こんな理不尽に我慢して一生懸命生きてゆこうとしているのに、それさえ許されないのデスか!? あんまりデス、あんまりデス!! 何でワタシ達ばかりこんなヒドイ目に会うのデス…。 世の中には幸 せに暮らしている同属がいるのに…あんまりデス…。 こんなことなら、あの飼い実装どもと刺し違えた方 が良かったデス…。 * * * * なるほど、『幸せな実装石』とは『飼い実装』のことですか。 しかし、この親実装の話を聞く限りでは、 ちょっと楽しめそうな感じがしますね…。 「いいでしょう。あなた達を『可愛がる』のは中断して、その『飼い実装』とやらをここに御招待してみま しょうか。」 『デス?』 「ククッ。『幸せな実装石』…。話を聞く限りでは、躾済みの実装やら、野良実装やらを潰すよりよっぽど 面白くなりそうじゃないですか。」 『デ、デェェエエ!? ニ、ニンゲンサマ、い、一体何をするつもりデスゥ?』 自分達に危害が加えられることを心配した野良実装が、仔供を背後にかばいつつ不安げな声を上げます。 「ふっ、楽しいことですよ。少なくとも、粗相をしない限りは私はもう貴方達に危害を加えません。ついで に、貴方の希望も叶えてあげましょう。」 『デェ!?』 なんて私は優しいのでしょうか。まるで愛護派みたいですねぇ。 * * * * 私は屋敷の者に指示を出し、野良実装の話にあった『飼い実装』とやらのことを調べさせました。 野良実装達を拾った公園に部下を配置し、そこに散歩に訪れる飼い実装の中で、親仔五匹の飼い実装、親の 名前が『ルク』、仔の一匹が『ヒア』、という条件を満たす実装石を探させました。 条件に合致する飼い実装親仔はあっさりと見つかりました。 ついでに飼い主の簡単な身辺調査も行い、 その性格、そして実装石達の『血統書』とやらも確認しておきました。 ブリーダーに飼育され、選別された親実装と、その親が今の飼い主の下で生んだ仔実装達…。 どおりで、きちんと躾された親に比べて、仔供の性格は『アレ』なわけですね…。 しかし、どうやら『飼い主』は予想した通りの人物らしいですね。くっくっく。 報告書を確認した私は、これからの楽しい一時を予想し、つい笑みをもらしてしまいました。 私が野良実装を拾ってから4日目。件の飼い実装を屋敷の地下室に案内する準備を整え、部下に指示を出し ます。 家族揃って散歩中、飼い主がちょっと目を離した隙に実装用睡眠スプレーを使って飼い実装親仔全員を速や かに眠らせ、手際よく誘拐させました。 さすがに優秀な部下達が、訓練までして作戦を行っただけのこと はあります。完璧な結果でした。 …しかし、わざわざ実装石ごときに訓練までして誘拐団の真似事をさせるなんて、無駄もいいところですね ぇ。 地下室に案内して二時間ほどすると、水槽の中で眠っていた飼い実装達が目を覚ましました。 『…ムニャ…で、デス!? …い、一体ここはどこデスゥ?』 『…ニュ〜…テチ? …テチ?おうちじゃ無いテチ?』 『…ティ〜…テチ? …テチ?なんだか寒いテチ?』 『…シュ〜…テチ? …テチ?ご主人様はどこテチ?』 『…ピィ〜…テチ? …テチ?知らないニンゲンさんテチ。ニンゲンさん、こんにちはテチ。』 ふむ、飼い実装だけに、人間相手の時はとりあえず礼儀を守るようにできているわけですね。 白、赤、青、黄、ピンク…色違いながらデザインはおそろいの実装服 …生まれたときから着ているあの緑 色の実装服ではなく、専門店の高級実装服ですか。 おまけにリボンまでつけて… 何が楽しくて実装ごと きにここまで… …いや、それを言ったら部下を実装石誘拐団に仕立て上げた私も同じですか。 望む結果が違うだけで、 やってることはある意味よく似ていますね。 『わ、ワタシ達はご主人様と公園で散歩していたはずデス! に、ニンゲンさんは何者デス!? ワタシ達 に何をしたのデス!?』 親の飼い実装が、仔供を背後に、庇うように集めました。なかなか愛情深い親実装のようです。実に面白い。 「私は貴方達をさらった誘拐犯、ですよ。公園で散歩中の貴方達を、眠らせてさらった者達の親玉です。」 『デァ!! わ、ワタシ達はゆ、誘拐されたデスか!?』 「そうです。ところで、貴方達はこの野良実装達を憶えていますか?」 そう言って、水槽を等分していた仕切りに掛けていた幕を外しました。 仕切りはアクリル製の透明なもの で、仕切りの向こう側が良く見えます。 仕切の向こうには、親実装と三匹の仔実装達… 先日の野良実装親仔がたたずんでいます。 『だ、だれデスゥ…?』 『テチ… ! 思い出したテチ!! この間公園でやっつけてやった、悪い野良達の親仔テチ!!』 『…あ! そうテチ、あの薄汚い野良の親仔テチ。』 『本当テチ、なんでこいつらこんな所にいるテチ?』 『すると、このニンゲンはこのブサイクどもの下僕テチか! ププ、野良の下僕とはサイテイの屑テチ!! 同じニンゲンでもワタチ達のご主人様とはウンデイの違いテチ!! オマエ、野良どもの下僕をやめて、 ワタチの下僕になれテチ!! そしたら特別に高貴で可愛いワタチのウンチを舐めさせて… …テ〜!? 何をするテ…』 分をわきまえず、好き勝手なことをほざく飼い仔実装を摘み上げます。 「実装石ごときが、人間を『オマエ』呼ばわりとはなんですか。 私を含め、『人間』のことは『ニンゲン サマ』と呼びなさい。 ペナルティです。」 本来なら『処分』を前提とした処置を行いますが、この後本番がありますからね。とりあえず死なないよう に手加減しなければ、ね….。 ベギ!! まずは右腕をへし折ります。 『テチャアァア〜!? な、なにテチ〜!!』 ビギ!! 次に左腕。 『ホパァアアアァア〜!? や、やめ〜!?』 『ひ〜、や、止めて、止めてください、仔供に乱暴しないでデスゥ〜!!』 飼い親実装が嘆願しますが無視します。 ボギ!! 更に左足。 『クギャァアアァア〜!? ィイアタイイタイ〜』 グギ!! 仕上げに右足。 『テ、テヒェヒェアァア…』 チクリ!! 最後に、このまま回復しないとこの後の予定にさしさわりがあるので、回復薬を注射します。 これでなにも食べなくても、半日程度で再生するでしょう。 手足をへし折った飼い仔実装を水槽に戻します。いままで、それなりに好き勝手(まあ、飼い実装として最 低限の躾は親なり飼い主なりがやっていたようですが)にやっていた飼い仔実装達には、相当こたえでしょ う。 水槽に戻したとたんに飼い親実装が寄ってきて、手足をへし折った飼い仔実装を介抱しました。 『デェ〜、『テス』! 『テス』! デェェエエ、可愛そうに、可愛そうに…。』 『ま、ママァ… テェエエ〜ン、痛い、痛いテチ〜。』 『テェエエ…』 『ひ、ヒドイテチ〜…』 『こ、こいつはきっと『悪いニンゲン』テチ…』 「さて、ちょっと横道に話が逸れましたが、本題に戻りますか。 親実装さん、確か名前は『ルク』でした ね、貴方、この野良実装達を憶えていますか?」 『…す、少し前に公園で散歩していたとき、で、出会った野良実装石さん達デスゥ…。』 「…ずいぶん怯えていますねぇ。そんなに怖がらなくてもいいですよ…。 ところで、この野良実装達に出 会ったとき、何をしました?」 『デェェエエ、そ、それは…』 どうやら私がこの野良たちの味方だと思っているのでしょうね。 で、なにをやったかは憶えているが、 それを口にすれば、復讐されるだろうと思っているのでしょう。 飼い親実装は口ごもりました。 『やっつけてやったテチュ!! こいつらはワタチの物を台無しにした屑テチュ!!』 親実装が口篭もっていると、一匹の仔実装が声を張り上げました。 なるほど、この薄いピンクの服の仔実 装が『ヒア』ですか。 『デェ!! 『ヒア』、黙っているデス!! う、ウカツに喋るんじゃないデス!!』 『どうしてテチュ? 誰が見たってワタチの方が正しいテチュ!!』 『そうテチ!! どう考えてもこいつらが悪いテチ!!』 『だいたい、こいつら生意気テチ!! さっさと死ねばいいテチ!!』 『ェエエエエェエェ…』 飼い親実装がパニックを起こします。 この状況で野良達の機嫌を損ねるようなことを言えば、私がそれを理由に自分達に虐待を加えると思ってい るのでしょうね。 無知で愚かな仔供達と違って、きちんとブリーダーに躾られた親実装は、もう少し物が 分かるようです。 一方、野良たちですが… 『テジャアア!! 何をほざくデス!! あのとき殺された二匹の仔供のカタキを今こそ討つデス!!』 『やつつけてやるテチ!! 許さないテチ!!』 『悪者はオマエ達テチ!! 思い知らせてやるテチ!!』 『お姉ちゃん達のカタキテチ!! 覚悟しろテチ!!』 「まぁ待ちなさい。」 とりあえず、水槽から『ヒア』を摘み上げます。他の仔実装でも良いのですが、こいつが一番、野良達に恨 みを買っているようですからねぇ。 『テェェエエエ、な、何をするテチ、は、離せテチ〜!!』 暴れまくる『ヒア』。 その鼻先にスプレーを当てると、 しゅっ。 『テピィィ…!! …テス〜、テス〜…』 ほんの一吹き、それまで暴れていた『ヒア』はおとなしくなりました。 『デェェエエ、い、一体仔供に、『ヒア』に何をしたデス〜!! ま、まさかコロシた…』 「安心しなさい、眠っているだけですよ。 これはただの睡眠スプレーです。 貴方達をここに連れてくる ときに使ったものと同じものです。」 『…ホッ、よ、良かったデス…。』 「本当にねぇ。貴方達の飼い主が使ったものだったら、今ごろ死んでいたでしょうねぇ。」 少し厭味を言ってやります。 『デデ、それは…』 『デジャァァアアア!! カタキ!!ワタシの仔供達の仇!! に、ニンゲンサマ、そいつを、その仔実装 をこっちに下さいデスゥ!! 思い知らせてやるデスゥ!!』 それを見て再び飼い親実装が慌てだします。 『…あ、あわわ。 に、ニンゲンサマ、わ、ワタシはどうなっても良いですから、こ、仔供達だけは助けて くださいデス!! お願いしますデスゥ〜!!』 野良達の怒りを買った以上、自分達に虐待が加えられると思った飼い親実装が、私に仔供だけは助けてくれ と懇願してきます。 う〜ん、全く愛情深い。立派なものです。 『ふざけるなデスゥ、ワタシの仔供達をコロシておいて、自分達の時は助けてなんてそんなこと…』 「良いですよ。」 『許すわけが…デ?』 『デス?』 「とりあえず、この仔実装を飼い主のところに返してあげましょう。 で、その後、貴方達の飼い主が貴方 達を必要としていることが判ったなら、残る全員を飼い主のところに返してあげますよ。」 『ほ、本当デスか!!』 「本当です。私は嘘は言いませんよ。」 『…あぁ、良かったデス… 『ヒア』、良かったデスゥ〜ン。』 安心した飼い親実装が涙を流します。 『テチ〜♪ 『ヒア』ちゃんの後で、ワタチ達も帰れるテチ〜♪』 『よかったテチ〜♪ 本当は『良いニンゲンさん』だったテチ♪』 『テ、テチ、助かったテチ…』 とりあえず一匹、続いて全員を家に返す、という言葉を聞いて安心する飼い実装達。最後の元気が無いのは 四肢をへし折ってやった仔実装です。 一方、不満の声を上げる野良実装達。 『デェェエエ、な、なぜデスゥ? わ、ワタシ達の復讐を手伝ってくれるんじゃないのデスか?』 「おや? そんな約束しましたか? 私は、『貴方の希望を叶える』とは言いましたが、『復讐を手伝って やる』なんて言っていませんよ。 で、あのとき、貴方は『復讐』なんて一言も言ってないでしょう?」 それまでの興奮した顔から、一気に絶望の表情に沈み込む野良親実装。私に裏切られたと思ったのでしょう ねぇ。 『…デェェエエ〜ン、け、結局ワタシ達をイジメたいだけだったデスね!! 仔供のカタキを討てると思わ せて、騙して楽しむだけだったデスね〜!! ひどい、ひどいデス〜!!』 『ママ〜、泣かないでテチ…。』 『テスン、テスン….テェエエ〜ン!!』 『悔しいテチ…。どうしてワタチ達ばかりこんな目に会うテチ…。』 私に裏切られたと思って残念がる野良達。 目の前に仇がいるのに何もできないことに、野良実装一家は涙 を流しています。 一方、飼い仔実装達は… 『ざまぁ見ろテチ〜♪ セイギは勝つテチ〜!!』 『選ばれたワタシ達が幸せになるのは当然テチ〜♪ オマエ達はニンゲンさんにイジメられて不幸になれ テチ〜!!』 涙ぐむ野良達に罵声を浴びせています。 くっくっく。 まあ見ていなさい。飼い実装達にも言ったとおり、私は嘘は言いませんよ。 貴方達、野良実装一家の希望 もかなえてあげます。 貴方達がこの場で直接手を出すよりずっとすごい方法でね。 飼い実装虐待の真髄、見せてあげますよ、ふふっ。 −−−−−− 後編に続きますよ。ふふっ。 −−−−−
