タイトル:【哀?】 ミドリとリョク後編〜良い日旅立ち5〜
ファイル:ミドリとリョク後編.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:2835 レス数:0
初投稿日時:2007/05/27-03:51:29修正日時:2007/05/27-03:51:29
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「ん、あれ? ・・・・・・よく見たら、巣じゃないか」

 この市の新しい市長に就任して、はや2週間。双葉 利明は、今回の駆除計画に自ら
参加して作業を楽しんでいた。そのまま、なぶり殺しにしたい・・・・・・と思っているが、今は
人の目がある。参加者に殺害自粛を要請した手前、自分もいそいそと作業に集中していた。
今後、悪い噂が立たないように。

「・・・・・・あ、本当ですね。コレは巧く作ってあるなぁ」
「居るかな?」
「分りませんね。巣の作り具合から優秀なようですから、すでに逃げているやも」

 副市長と共に発見した巣。ダンボールに泥を塗り、さらに木の枝や草等を使って、巧く
隠している。素人や、実装石ではまったく気が付かないであろう。

「ココから、麻酔噴射しながら近付いた方がいいですね」
「OK。俺、行きますわ。副市長は、実装石が逃げ出したら、捕まえてくださいね」
「分りました」

 ハンドガンタイプの噴出し口から、特に実装石の神経に作用する強力な麻酔を霧状に
噴射しながら、利明は巣に近付いた。反応は見られない。
慎重に、木の枝を取り除き調べる。あった。ダンボール側面に不振な切れ込み。入り口だ。

「よっと・・・・・・お?」

 入り口を押し開くと、近い位置に実装石が倒れていた。手を入れて後ろ髪を掴み、そっと
引っ張り出してみる。下半身が無い。


「なんと、足が無いですね?・・・・・・それは、歯型ですか」
「あらら?なんだよ、お前。襲われたのか?」

 血は止まり、傷口は塞がりつつある様だ。

「・・・・・・あ、これ濃度1以下だわ。どうしよっか?」
「予定数はすでに集まっているので、市長の判断にお任せしますよ」
「了解。じゃ、連れて行こっか。予備って事で」

 下半身をなくした実装石 リーもこうして人間にその身を確保された。



■ミドリとリョク後編〜良い日旅立ち5〜■



 広場に置かれた4トントラックへ、軽トラから次々と袋が投げ入れられていた。
不要個体の入った袋である。

「まだいける?」
「あー大丈夫、押して詰めりゃまだまだいける」

 投げ入れられた袋には、最低でも5匹の成体実装石が入る寸法だ。床に着地した衝撃で、
目を覚ます実装石もいるだろう。そうなれば、袋の中は大惨事だ。何せ同族喰いが一纏めに
されている。最後の1匹になるまで、袋の中では喰い合いになるだろう。

「・・・・・・蠱毒」

 利明は呟いた。まさに蠱毒の作り方じゃないか。あの袋を全部開けて、喰い合いを
させてみたい。どの個体が最後まで生き残るか見たいもんだ。
どんどん空になっていく軽トラの荷台を見ていたが、利明はふと視線を月に向けた。

 一方、荷台が空になった1台の軽トラへ、7つの袋が集められた。
彼ら曰く、優秀個体が入った袋である。その中の1袋には、あのミドリが入っている。
積み込み作業が終わったこの軽トラは、一足先に目的地に向け出発した。

「あの体半分の奴は、何処へ?」
「ああ、一応 回復するまで市役所で預かります。今日来てたシンゴ君に預けました」
「・・・・・・ああ、家で飼った経験があるって言ってたからね。適任じゃない」
「そうですね。では市長、我々も退散しますか」

 軽トラも、全台作業を終えた。装置を全て回収して積み込んである。
後は、この4トントラックが出発すれば終了。軽トラに乗って帰るだけである。
利明は、吸っていたタバコを携帯灰皿に捨てると、手の空いた者を集めて
解散を宣言した。

「おつかれさまでしたー」

 現在の時刻は20時。約2〜3時間の出来事だった。

 あの4トントラックへ乗せられている実装石達は、燃えないゴミを細かく砕いた物を
口から無理やり詰められて、頃合を見計らって焼却処分されるのだ。
胃袋に入った物は何でも糞に変えることから、燃えない物も分解して燃える糞に。
その特性を生かした、不燃ゴミ埋め立て対策の一環。

 4トントラックが廃棄物処理場を目指し、ゆっくりと走り出す。

「駆除もする。利用もする。両方やらなくっちゃあならないってのが 、市長の辛いところ
だな」

パーンとクラクションを一鳴らし。その音は、実装石へのレクイエムだった。

●

 軽トラは、快調に速度を上げ目的地に予定よりも早く到着した。小、中学校に
有る体育館のような外見を持つ建物。門から中に入り、指定の場所へと駐車する。

「あ、来た来た。」

 そこには、グレーの作業服を来た青年が、横50cm×縦70cmの台車を準備して待っていた。
どうやら彼1人のようであるが、手際良く軽トラから袋を下ろし台車に積み終えた。

「じゃ、ココに受領印を」
「はいはい、っと。これで」

 軽トラの運転手が、紙を5枚青年に渡した。コレも慣れたように判子をリズミカルに
ポンポンと押して、運転手に返した。

「OKです。はーやっと終わった」
「お疲れさん、じゃ」

 この青年は、この施設の職員で青田 利明と言う。奇しくも新市長と同じ名前なので
あだ名は市長だ。恐れ多くて辞退したが、いまだに新しいあだ名は決まっていない。
利明は、台車をゆっくりと移動して施設の中へ入っていった。

「さってと」

 長い廊下を進んで突き当たり。ドアノブを押して中に入る。
そこに用意されているのは、12個のケージ。実装石が立って、寝て十分の広さがある
寸法で、かなり使い古されたものだ。

 袋を丁寧にあけて、中に入っていた実装石を1匹づつケージの中へ。
全ての固体を入れ終わると、次に実装フードをケージの中へ据付けられた皿に盛り、
ケージ毎に備え付けてある自動水飲み器に水を補給する。

「コレでよし・・・あ、オマル入れとくの忘れた」

 全てが終われば、続きは明日の朝。実装石達が目覚めてから。
利明は部屋を出て鍵をかける。逃亡の可能性など無いに等しいが、一応規則だ。

「・・・・・・腹減った。あ、そうだ。カップラーメンまだ有ったよな」

 鍵を戻した後、夜の見回り。それが終われば、消灯。で、宿直室で待機。
・・・・・・そう言えば妊娠してる奴がいたな。もう、今日は疲れた。
面倒な事は明日の朝でいいだろ。あくびを一つ噛みしめて、利明は歩き出した。

●

「ココは、何処デス?」

 ミドリが目を覚ますと、見知らぬ場所であった。朦朧としている意識。
どうしたのか?なぜこんな所にいるのか?ミドリは眠ってしまった時の事を思い出す。

「そういえば、あの時ニンゲンサンに・・・」

 そう呟きながら、辺りを見回す。見た事がある。買われていた時、自分の部屋として
与えられケージと言うものだ。ミドリは、自分が檻に入れられている事を理解した。
ただ、以前と違うところは、扉は硬く閉ざされ自由に出入りできない事。
 そして、周りには同じように檻に入ってる同族の姿。しばらく様子を窺ってい時に、
突然ギイィという音がした。

『お、起きてるのもいるな。残ってんのも起きろよ、ホラ!』

 音のした方向。そこには、扉を開けて部屋に入ってきた人間が二人、立っていた。
その内の1人が、まだ眠っている同族の入っているケージを蹴り飛ばし、無理やり
覚醒させる。

『いいか、良く聞け糞蟲。お前達は、人間様の公園を不法に占拠した罪で、これから
 罰を受けてもらう!ああ、安心しろ虐待とか、殺害とかじゃぁないぞ?人間様の施設で
 死ぬまで働け。逆らうなよ?危険分子として、死ぬより酷い目にあわせてやるからな』
『主任、主任。落ち着いて』
『ああ、すまんな利明君。こいつ等見てるとな、もうイライラきちまってな』

 ワルイニンゲンさんに捕まったのだと、ミドリは思った。しかも、ヒドイニンゲンに。

『あぁ、デスデスうるせぇな!リンガルねぇから、わかんねぇ。聞く気も無いがな!』

 そういって、また同族の入ったゲージを蹴り始めた。驚いて漏らしたのもいる。

『漏らした奴は、残れ。他は俺と来い。ここのルールは、お前らの先輩に教えてもらえ。
 あ、あとアレだ。妊娠してる奴も残れ。ココじゃ勝手に出産は許されないからなぁ』

 ゾクッとするいやな笑みを浮かべた男。最後に言った台詞は自分に向けてだろう。妊娠し
両目が緑になっているのは、自分しかいなかったからだ。どうしてこんな事に。
ミドリは力なくその場に項垂れた。

●

 主任にも困ったものだ。利明はそう呟きながら、残された実装石を見る。その主任は、
ケージから実装石を出して連れて行った。

「さてと。お前達。コレにパンツの中の糞を入れて、こっちの水でパンツを洗え」

 実装石でも使える大きさの、青いポリバケツを床に置き、その隣に水の張ったタライを
置く。腰を抜かして怯えきっている実装石達。すぐに行動を起こすのは無理だった。

「おい、早くしてくれよ。この後、色々予定が有るんだからな」

 ここでまたキツく言ってしまうと、さらに酷い事になる。今までの経験から思い知って
いた利明は、できるだけ優しく言う。そうすると、1匹がゆっくりケージから這い出てき
て、テチュ〜ンと鳴いて媚を売った。

「はぁ。違う違う、ここに糞を入れるんだよ」

 実装石は、言われた通りにパンツを脱いで、中に溜まった糞をバケツに入れる。
上出来、上出来。しかし、次の洗う段階で実装石は「デェ〜?」と、こちらを向いて首
をひねった。

「洗う・・・ってのがわからないのか。まぁ、野良なら仕方がないな、こうやるんだ」

 ゴム手袋を装着し、パンツを実装石からひったくってタライの中で擦り始めた。
透明な水が緑に染まっていく。大変クサイが仕方がない。お仕事お仕事。

「ホラやれ。騒ぐな。お前がやるんだよ」

 勘違いしてやがるな。今ので、俺が奴隷かなんかだと思っか?騒ぐ実装石を持ち上
げて、ポリバケツの上に。片手でホールド、そして逆の手で拳を作り、思いっきり
腹を殴った。

「デェボボッォ〜」
「勘違いするなよ。お前がやるんだ」

 殴られた実装石が盛大に脱糞する。たったコレだけで、ポリバケツが一杯になって
しまった。やれやれ。実装石の下半身を水につけ、数回振っておく。綺麗になったところで
再び地面に着地させ、パンツを持たせて今度は少しきつめに言う。

「やれ」

 渋々洗い始めるのを確認すると、俺は残っている実装石を無理やりケージから引っ張り
出して、軽くデコピンをする。痛がっている実装石達に「やれ」と言ってやった。
先ほどの光景を見ていたので、拒否すればどうなるかわかっているはず。実装石達は
我先にと、糞を捨てる為ポリバケツに向かった。

「あ、それ一杯だから。こっちに入れろ」

 3つの新しいポリバケツを用意し、2つの新しいタライを用意する。まぁコレで
綺麗になったし、廊下を歩かせても大丈夫だろう。後は・・・・・・。

「お前。そう妊娠してるお前だよ」
「デェ、デスゥ〜」

 ギクリとしてケージの後ろへ思いっきり下がった。何をされるか理解したのだろうか?
全身を震わせて、横に首をブンブン振って、利明が近付くのを拒否している。両目から
流れる涙は、本気涙と言う奴だ。

「ほら、暴れるなよ」

 新しく用意したタライの一つに、捕まえた実装石(区別する為に妊娠石と呼ぶ事にする)
を持っていく。捕まえるまでに少々手間取ったが、捕まってしまうと死んだように
大人しくなった。

「まぁ、別にとって喰うわけじゃないから。ホラ上向いて」

 両目に食紅で色をつけた水をかける。しばらくして、体が震えだした。そして、妊娠石を
タライに入れて、新しい命が生まれるのを待つ。

「・・・・・・ん、なんだ洗い終わったのかチョッと待ってろ。オ・ト・ナ・シ・ク・だぞ?」

 わかったのか、わからないのか。先ほどまでパンツを洗っていた実装石達は、閉ざされて
いる扉へ向かって走り、開く筈のない扉をポフポフと叩いている。

「あぁ。まぁ、いいか。お、ほれ頑張れ、もうちょい、ってか早く生まないと溺れるぜ?」

 水中出産。総排泄口から顔を出しているが、苦しそうだ。ほれほれ、とゆすってやる。

「お〜。1匹目〜」

 次々出てくる蛆のような実装石の幼体。緑の粘膜を親に代わって取ってやる。傷つかない
ように丁寧に。何せ、この仔達にも色々と使い道と言うか貰われ先が有るから。そして、
仔は1匹1匹ちょうど入る位の仕切りが作ってあるダンボールへと入れていく。

「お。終わり? はい、お疲れさん」

 思ったより仔は少なかった。全部で5匹。全部入れ終わったところで、ダンボールの蓋を
閉め、ケージの上に乗せて置く。この仔達は、躾を受ける為にトレーナに渡される予定だ。

「静かにしろって。殺しゃしないって。あ、ほれ。別の所で幸せに暮らすって」

 無事出産の喜びも束の間、仔を全て取り上げられて怒ると言うのは自然な流れだ。だが、
そうも言っていられない。利明は暴れる元妊娠石を、一旦ケージに戻し、他の実装石を
現場に連れて行くことにした。

「ほら、もって行かれるまでは側に置いておくから、お別れの挨拶しとけ」

 元妊娠石を入れたケージの上に、ダンボールケースを移してやる。
テチーテチーと鳴く声に反応して、親がピョンピョンと跳ねてデスーデスーと鳴いている。
実にシュールな光景だった。

「ホラお前達行くぞ。あ、逃げるなよ。どうなっても知らないぞ?」

 脅し文句が聞いたのか、扉を開けても逃げ出したりせず、おとなしくついてくる。
長い物には巻かれろ、だっけ。利明はカルガモ親子の親鳥のように、実装石を引き連れて
目的の場所まで歩いて言った。

●

「ああ、お前達!ママはここデス〜!」
「ママー、ママー」

 ミドリは歯痒かった。強制的に生まされたにしろ、可愛い我が仔。一度も触れることなく
取り上げられ、箱に入れられてしまった。その箱も自分の頭上ある。背も届かないし、
飛び上がった所で届くような物でもない。ケージに体当たりして振動で落とすか?
いや、受け止める事ができなければ、皆死んでしまう。こうなっては、成す術がない。

「・・・・・・デデェ!?止めてデス!仔を連れて行かないでデスゥ!!」
『ほら、最後の別れだ』
「嫌デス!嫌デス!あぁ、ヒドイデス!ヒドイデスゥゥゥゥ!!!」

 出産を強制した男とは別の男が現れて、仔の入った箱を持って行ってしまう。
ミドリにできる事は、足にまとわりつき、泣いて懇願する事だけだ。

「アァァァァァァァァ!!」

 無常にも、目の前で扉は閉められる。どうして、なぜこんなヒドイ目に・・・。
ミドリは絶望に打ちひしがれ嗚咽をもらし、呆然と扉を見つめ続けていた。

『うわ、ビックリした。・・・お出迎え、ではなさそうだな。ああ、仔が持ってかれたか』
「デェ・・・・・・」
『ふぅん。珍しく、仔に愛情がある個体だったか。さぁ、行くぞ』

●

 利明はピクリとも動かない元妊娠石を見て、偽石の崩壊を心配したが・・・大丈夫のようだ。

「まぁ、同情はするがなぁ」

 歩くよう促しても歩かないのでは仕方ない。利明は元妊娠石を小脇に抱えて、目的地へ
向かう。その場所とは、この施設に所属する実装石たちに与えられた住処。
地下1階に作られた場所で、人間のカプセルホテルのような形態に近い。

 2匹で1部屋を使い、2匹分の布団とトイレが設置されている。同じ部屋の2匹は
それぞれ、先輩と後輩で組み合わされる。この様にしてあるのは、仕事の内容を先輩から
後輩に教えさせる為である。
 そして、もう一つ大事な事。互いの協力関係を深める為。失敗の責任は、失敗した者だけ
でなく、そのパートナーにも連帯責任を取らせる。案外、この政策は巧く機能しており、
今のところ深刻な苛めや、同族喰いは発生していない。

「よっと、ホラ着いたぞ。いつまでもそうしてるんだ? はぁ、今日からここが、お前の
 部屋だ。良かったな、この部屋の先輩は良い奴だぞ。ちゃんと挨拶ぐらいしとけよ」
「デェ・・・」

 利明は、実装石では届かない位置にある、扉の開閉装置を操作した。ガチャリと音がして
扉が上に持ち上がって行く。

「ほら、入れ」

 元妊娠石の背中を押して、無理やり中に押し込む。躓いて転んだようだが、気にしない。
再び装置を動かし、今度は扉を閉めた。現在朝の7時。作業開始まで2時間ある。
作業の説明には十分だが、はたしてそれを受け入れ仕事ができるだろうか。

 利明はため息をつくと、使われるかわからない新入り用の器具を点検する為に、
1階にある作業現場へと向かった。

●

「デェ?」

 扉が開いた。しかし、まだ、作業開始の時間ではないと思う。では、何故だろうか。
利明さんが近いうちにと言っていたから、ひょっとすると来たのかもしれない。
モモちゃんの代わりの新しい仲間が。そう思っていると、仲間の姿が現れた。
しかし、その足元はふらふらしている。案の定、躓いて転んだ。

「だ、大丈夫デス!?」

 慌てて駆け寄る。その後ろで、扉が閉まるのが見えた。やっぱり。今日から
ワタシはまた、先輩になれたのだ。

「だ、大丈夫デ・・・スゥ・・・オロロォ〜ン」
「デデ!?大丈夫じゃないデス!どうしたデス?」

 蹲ったままで、床をダンダンと叩きながら彼女は泣き出した。

「デェデェ・・・仔が・・・仔がぁ・・・」

 絞り出した声。ああ、可愛そうに。仔を取られてしまったの。
悔しさに身震いする背中を擦りながら、可哀想に可哀想にと声をかける。

「あ、アナタは、誰です?」

 しばらくして大分落ち着いたのか、彼女は、不思議そうな顔をしてワタシに
そう尋ねてきた。笑顔浮かべて「ワタシの名前は、リョクと言うデス。
アナタは?」と答えた。彼女は暫くためらった後、細く弱い声で「ワタシは、
ミドリと言うデス」と言った。

●

「黄色いのをクルクル回せばいいデス?」
「そうデス。難しい事は、よく分らなかったデス。でも、ニンゲンサンは、クルクル一杯
 回すと誉めてくれるし、ご飯の内容もすごくなるデス!」

 リョクは、ミドリにここがどういった施設なのか、作業とは一体何をするのかを
一通り教しえた。作業の後には、その作業内容にあわせて褒美が出たり、作業するしないは
各自の自主性に任されている辺り、ただの虐待施設ではないと教えたのだ。

「でも、回さないとご飯抜きデス」

 ミドリはできる事なら、今日の作業はパスしたかった。精神も肉体も疲労しきっている。
この先輩、リョクにそう言うと彼女は首をひねった。

「デスが、せめて何か食べないと、回復し無いデス」
「デェ〜。それでは1回しだけでもいいデス?」
「でも、どんな物がご飯に出るか、やったこと無いのでわからないデス」

 その時、ガチャリと音がして扉が開いた。作業開始の合図だ。これから外にでて、
階段を上がり、自分に与えられた作業場へ向かわなくてはならない。

「分ったデス。ワタシが頑張ってミドリちゃんの分を持ってくるデス」
「デェ!?いいデス?」
「困ったときはお互い様デス」
「・・・・・・ありがとうデス、ありがとうデス」

 リョクは布団を引いて、そこにミドリを寝かせた。部屋に、食料を持って帰っては
いけない。そのルールがあるのをリョクが知らない訳ではなかったが、聞いた話、
余りにもミドリが可哀想だった。そうだ、利明さんに頼んでみよう。

 手を振るミドリに答えながら、リョクは扉を抜け部屋を後にした。

−続−


 前作リストが下記にあるのは、こうして旧作とクロスオーバーしていますので
前作を是非読んでおいて欲しいと思ったからです。


 1作目 ある市の復興記  2作目 二度と行きたくない  3作目 もう一度、行きたい
 4作目 走るワタシ    5作目 逢魔時                6作目 良い日旅立ち
 7作目 愛は盲目〜良い日旅立ち2〜
 8作目 危険なニオイ〜良い日旅立ち3〜
 9作目 ミドリとリョク前編〜良い日旅立ち4〜
10作目  ミドリとリョク後編〜良い日旅立ち5〜

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