■登場人物■ トシ‥‥双葉大学二回生。アキとは双子の姉弟。 アキ‥‥双葉大学二回生。トシとは双子の姉弟。 真夏の昼下がり。これからが正念場。 茹だる様な暑さと戦わなきゃならない。 なんせウチのクーラー去年からぶっ壊れてるかんな。 クールビズじゃないけど部屋の窓全部開けとかねーと昇天するわい。 「あっ‥だる‥‥煙草切れちゃたよ‥‥」 おーおーアキの奴、タンクトップの下に俺のトランクスなんか穿いちゃって。 露出多すぎて端から見りゃどこの痴女?って感じだ。まぁ俺も大して変わりない格好してんだけどさ。 姉弟同士とはいえもう少し恥じらいってもんをだな‥‥‥ ‥‥なんだよその目は‥‥あ‥まずい‥‥この目は‥‥‥無視無視、触らぬ神に祟り‥‥ 「ねぇ、煙草買ってきて?」 ‥‥ありですね、本当にありがとうございました。 アキよ、お前にゃ眼前の室温計が見えねーのか‥‥勘弁しろよ‥‥ 「‥‥なにその顔。いーよ別に。もう御飯作ってやん」 「あーはいはい金金」 アキの言葉を遮って金の催促。諦めよう。ただでさえクソ暑いのにこれ以上温度上げられちゃ困るからな。 重い腰を上げてソファーの上に掛かっていたアジデスのジャージを穿き、縁側から庭に降りる。 ふと後ろを向くとつまらんお昼のワイドショーを観ながらソファーに寝そべってるアキの姿。 あーイラつく。満面の笑みでこっちに手ぇ振ん——————ぶぢゅっ。 「ヂッ!!」 地面に広がる赤緑の染み。そしてこの臭い。 やっちまったよ。仔実装踏んじまった。マジ汚物。 つーか何勝手に人ん家の庭入って来てんだよコイツ。これだから実装石ってやつは‥‥ 「‥‥うわ‥最悪‥‥サンダル汚れちまったじゃねーか‥‥」 「テヂャアアアアアアアアアアッ!!!」 お?なんだ?他にもいたのか。この染みの姉妹だな。糞蟲が。 さしずめコレを殺された事にでもキレてんだろーな、チリィくせに生意気すぎる。 手前のスペックも考えずに突っ込んで来る辺り本気で頭悪いよなー。 とりあえず己の愚かさを身をもって理解してもらわねーと。 爪先を少しばかり上げて姉妹の染みが付いたサンダルの先端をポフポフ叩いている仔実装の動きを止めてやる。 仔実装にとっちゃ眼前にいきなり大きな壁が現れたかのように見えたろーな。 「‥‥お前等ゴミが人間様に勝てる可能性なんて1%もねーんだし土下座して謝ったら許してやるけど?」 「テエッ!?テチャア!!テチュウウウ!!!」 携帯のリンガルを起動させるまでもねー。分かりきってる。 『馬鹿言うな、お前なんて瞬殺テチィ!!』ってぐらいのモンだろ。 どこぞの勇者様じゃあるまいし自分の丈の17倍はある俺にどうやって勝つつもりなんだか。 所詮実装レベルじゃ例え天地がひっくり返ったとしても人間様にゃ掠り傷一つ負わせられねーってのに。 「——少しは考えろよ」 ぶぢっ 「ヂッ‥‥‥ヂャアアアアアアアア!!!!!!!!」 うるせーなー。チリィ身体に似合わず声だきゃでけーんだからお前等。 ちょっと踏み潰されたぐらいでギャーギャー騒ぐなよ。一日経ちゃ再生するくせに。 ‥‥おっ、仔実装の奴、ガクブルしながら俺を見上げてやがる。 半身を失ってやっと理解したんだな、己の愚かさを。偉いぞ糞蟲。 「ほら、命乞いしてみ?助けて下さい言ってみ?」 「テッ‥‥テチャア‥テチュウウウン‥‥」 媚と悲哀が混じった鳴き方しやがって。よし、リンガルアプリ起動っと。どれどれ? 『ゆ、許しテチィ‥‥ワタチが悪かったテチ‥‥可愛いワタチに免じてこれ以上痛いコトしないでテチィ‥‥』とな? ははは、もう遅せーっつーの。最初っからそーしてりゃもっと楽に死ねたのになー。 ‥‥ん?何コイツ‥‥俺が笑ってるから助かったって思ってんの?はは、本当に救いようがねー‥‥ 「だが断る」 「テエッ!?」 —————ぶぢゅっち 少し広めの庭に赤緑の染みが二つ。別に何の変哲も無い光景。 身体を目いっぱい伸ばして空を仰いでみる。今日もムカつくくらいの快晴。 さーて本題の煙草買いに行かなきゃ。あ、そうそう、忘れてた。 「アキー、そっちの茂みに糞蟲何匹か隠れてるからよろしくやっといてー」
