実装が犯されてから二週間後の早朝。俺はこの二丁目公園に再び来ている。今度は実装駆除者のベストと証明カードを身に付けて。 これから犯人の捕獲を兼ねて二丁目公園の一斉駆除をやらかす。そのための装備は万全だ。 ……本来なら一斉駆除の場合には三人以上の人員が必要だが、今回は私用も混じっているのでそれは出来ない。しかし、どう考えても一人では出来る仕事ではないので順也をヘルパーにした。 まずは一緒に持ってきたダンボール箱二つを公園の前で下ろす。 「……としあきさん、この荷物はなんですか?」 「公園内一斉駆除用装備だ。普通の人は手に入れる事が出来ない代物だからな、今のうちによく見ておけよ」 一つ目の大きいダンボール箱には鉄の柵と網。 「これは公園外に逃げ出さないための物。一部の公園は実装用の柵があるが、それが無い時のための物だ。柵の無い部分にこの鉄柵を設置し、出入り口にはこの網を設置する」 余談だが、この二つを購入する際の初期費用はかなり高い。本部のほうで何割かは持ってくれるが、それでもかなりの量が必要なので必然的に高くなってしまう。 「ちなみに、この公園って柵は……」 「後付けですがありますよ」 ……無法地帯って言うからには市の方も対策とってるよな。ごめん順君。 「じゃあ鉄柵は無しでいいか。……それだけでも助かった」 「どういう事ですか?」 「まず一番の理由が、鉄柵はかなり重い。……順君、この箱持ち上げてみな」 「いやいやいやいや!としあきさんが重いって言うんすから俺には無理っすよ!」 柵の入った箱を指差した俺の言葉に、順也は両手を振って嫌がった。……そりゃそうだよな。 「二番目にメンテナンスがめんどくさい。一回設置するごとにいちいち柵を洗わなくちゃいけないんだ。それも点検を兼ねて全部」 「うわ……」 順也の顔が引きつった。 おまけに生産コストを抑えるためにサビ止めもしてないからすぐにサビる。だから一枚一枚丁寧に洗わなくちゃいけない。 サビ止めを後から塗ればいいのだが、それもめんどくさい。 「さて、最初に出入り口に網を張る準備をするから場所を教えてくれ」 出入り口は計三箇所。柵と柵の間に出入り口があるような状態で、これなら柵の端にカラビナを付けるだけで準備は終わりそうだ。 「犯人の入ってくる入り口はどれだっけ……」 説明と一緒に順也から渡された公園の簡単な図面を広げる。犯人が入ってくるのならその時間まで開けてなくてはならない。 図面の中で印がついている入り口は……二箇所。 「……ああ、そうか。公園の野良もいたな」 一箇所は犯人の出入り口、もう一箇所は野良の出入り口。三箇所目は今の時点で塞いでも構わない、と言っていた。 犯人の出入り口と野良の出入り口には印代わりのテープを付けたカラビナを、もう一つの入り口には普通のカラビナを付ける。 そして一旦荷物のある場所に戻り、ダンボール箱の中から網を取り出す。 「順君、網を張るのを手伝ってくれ」 順也に網の張り方を教えて、三番目の入り口に行かせる。俺は他の二つの入り口に行き、すぐに網を張れるように用意をしておく。 網の端にある輪っかの部分を先ほど柵に取りつけたカラビナに通し、隙間の開いた部分をプラ製のまとめ紐で柵に縛りつける。 そして一回網を広げ、足りなければ専用の止め具で網を繋ぎ、長さを調節する。 端のカラビナに届いたらもう一度同じ手順で止めるのだが、今はまだ止める事が出来ないので網をまとめておく。 もう一つの出入り口も同じように設置し、また荷物の所へ。順也はすでに網を張り終わっていた。 「これで準備は完了。後は待つだけだ」 「わりと簡単なんですね」 「馬鹿、これからが大仕事になるんだよ。まず実装共を眠らせて、袋に詰めて、そして処分。普通はもう次の段階に入ってるが、犯人も捕獲しなけりゃいけないからまだ動けないんだ」 要はこれから午後になるのを待つしかない。その間に準備をしておこう。 二つ目のダンボール箱から農薬散布用の噴霧器とビニール袋を取り出す。 「順君にこれからの行動を説明しておく。まず犯人が公園の中に入ったら網を張り、公園を完全に封鎖。 その後にすぐ合流し、内部に入ってから俺はこの噴霧器で睡眠薬を撒く。順君は薬を吸って寝た実装をビニール袋に入れる。 これで駆除は終了。その後は順君はビニール袋を回収して後で指定した場所に置いてくれ。俺は犯人を捕獲する。 と、こんな感じだ。質問は?」 「あ、はい。袋がいっぱいになったらどうするんですか?」 「大丈夫、あとでちゃんと密封用具を渡すからそれで袋を閉じてくれ。使い方は渡す時に教える」 俺の答えに、わかりましたとうなずく順也。 「それじゃあ、休憩にするか」 *** デスゥ *** ようやく昼になり、早めの昼食を食った俺達は公園前にもう一度集合していた。 ちなみに俺が持ってきた荷物は休憩中に順也の家に置いて来た。残った荷物は俺が背負っている噴霧器と順也が持っているビニール袋と密封装置だけだ。 「……で、このスイッチを押すと空気が排出されて真空状態になる。わかったか?」 「はい」 今は最後の確認と、順也に密封の方法を教えている所だ。 「よし。俺は犯人の出入り口に行く。順君は合図があったらすぐに網を張ること。そして、午前中に教えた通りの手順で駆除する。大丈夫だな?」 二箇所を同時に封鎖するために、一旦二手に分かれる事にした。俺が犯人、順也が野良の出入り口を封鎖する。 「大丈夫っす。それじゃあ行きましょう」 そう言って野良の出入り口に走って行く順也。俺も急いで犯人の出入り口に行く。 到着後、すぐに物影に潜んで犯人が来るのを待つ。……変な人扱いされるだろうが気にしないでおこう。 待つ事数十分。ようやく犯人が現れた。監視映像で見ていた実装にしては派手な服なので間違いないだろう。 二匹は何かを引きずっている。……よく見ると飼い実装だ。 「けっ、糞蟲が……」 小さく呟き、噴霧器を背負い直す。犯人は公園の中に入り、すぐにトイレへと入っていった。 「よし」 携帯電話を取り出し、順也に合図を送るために電話する。その後に俺も気付かれぬように出入り口へ走り、封鎖した。 これでこの公園は人間以外は入る事も出る事も出来なくなった。すぐに順也との合流場所へ走り出す。 合流場所は三番目の出入り口。順也とほぼ同時に到着し、すぐに中に入る。 「作戦開始」 「了解っす」 噴霧器のバルブを開放し、睡眠薬入りの水を放出し始めた。太い円錐状に水が撒かれ、公園の土や草木を濡らしていく。 外を歩いている実装を見つければすぐにノズルを向け、睡眠薬を浴びせる。ダンボールハウスの中にいようとその中に睡眠薬をぶち込む。 順也も眠った実装をすぐに拾い、袋の中へ。袋がいっぱいになったら密封し、その場に置いておく。 「……結構地味なんですね」 「地味だからこそ大変なんだよ」 本来なら暴れまくって肉片を生産してやりたい所だが、それをやったら片付けの仕事量が倍以上に増える。 それにこのやり方は静かだし公園が臭くならない。……短所として、無差別駆除なので賢い個体まで殺す事になるが。 どっちみちここには糞蟲しかいない。うん、そう決めた。 三十分かけて公園全域に睡眠薬を散布し、ようやく全部の実装を袋の中に詰め終えた。 「それじゃあ後は頼んだ。行って来る」 袋の回収を順也に任せ、まだ犯人がいるはずのトイレへと走り……ちょうど外に出ようとしていた犯人と顔を合わせた。 精液まみれの飼い実装を引きずり、扉から出ようとしていた所だ。 「デッ!?なんでこの公園にニンゲンがいるデス?」 「……いちゃ悪いか?」 「悪いに決まってるデス、この糞ドレ……」 「待つデス。このニンゲンは今、私達の言葉で喋ったデス」 さて、次に来る言葉が俺の予想している物ならばこいつらで確定だろう。……というかこいつらしか犯人がいないし。 「デプププ。また実は私達と同じ、とか抜かしやがるデスね。お前みたいなのはドレイ以下デス」 「デプププ。アレは傑作だったデス。しかも私達のマラを使ってやったら簡単に気絶しやがったデス」 その言葉を聞いて、怒りと狂喜で顔が歪む。 「やぁっぱりお前らかぁ。うちの実装が世話になったみたいだなぁ」 「……聞いたデス?あのドレイの仲間みたいデス」 「デピャピャピャ!こりゃおかし過ぎて腹がよじれるデスゥ!……で、もしかして、あのドレイの仇とか言うつもりデスか?」 その後にしばらく笑い転げる糞蟲二匹。……笑いたいのはこっちだよ。 「ふん、お前なんか私のドレイの力を借りるまでもないデス。とっととくたばるデス!」 犯人の片方がこちらにやってくる。しかし俺はその頭を掴み、ポイと投げた。 「あのなぁ、お前らが人間に勝てるとでも思ってんのかぁ?」 「何を言ってるデス。私達は簡単にニンゲンを倒せる事が出来るデス」 やってみろよ。糞蟲共。 「デェェェッス!」 のろい動きで俺に手に持った何かを当てようとする。……その腕を掴んで持ち上げてやった。 「ッデシャァァ!何するデス!」 糞蟲が持っていたのはデスゥタンガン。バチバチと火花が散る。 「遅い。遅すぎるんだよ糞蟲がぁ!」 そのままデスゥタンガンを糞蟲に当ててやる。 「ギィィィィィ!」 おー、しびれてるしびれてる。……っと。これ以上やったら死ぬか。手を離して、荒い息をしている糞蟲に睡眠薬のシャワーを浴びせる。 「デヒーッ、デヒーッ、デヒー……」 べちゃ、と倒れる糞蟲。……一匹目、捕獲完了。 「デプププ、馬鹿な姉デス。……おい、ニンゲン。私達に仕えるデス。そうすればこの場は許してやっても構わないデス」 お前も十分馬鹿だぞ。と言いたいがここはこらえて黙っておく。 「さあ、契約の証として私のケツを舐めるデッスーン」 そう言ってパンツを脱ぎ、汚い尻を晒す。……あまりにもおぞましいので描写は控えておこう。 汚い総排泄口を見せつけられては、こっちも少々切れてしまう。噴霧器のノズルを排泄口に当て…… 「手前ぇの黒い腹ん中、掃除してやるよ」 睡眠薬を噴出。 「デッ、デッスーン!そっちは初めてデスーン!」 ……この台詞、突っ込んだ方がいいのか?突っ込みたくないけど。 「デッー!デッー!」 阿呆な悲鳴を上げた後、この糞蟲も流水の勢いを受けて飛んだ後に倒れた。……捕獲した喜びより脱力感が大きいのは何でだろうか…… 最初に眠らせた糞蟲の方を見ると、存在を主張していたマラが消えていた。なるほど、隠れマラって奴か。 確かに、隠れマラならマラを持たない普通の実装として生活する事が出来る。駆除も受ける事は無い。 犯人二匹の頭を掴んで持って行こうとした時、一つ忘れていた事があった。 「……おい、生きてるか」 犯された飼い実装だ。一応飼い主には連絡しておいてやるか。 「……デ……ェ」 「あ、生きてた」 身体中ボロボロの癖してよく生きてられるな。さすがデタラメ生物。軽く足で踏んでやると精液が足の間から出てきた。 「うわ、きたねっ。……洗浄洗浄、と」 近くに水がないし触りたくないので噴霧器の睡眠薬で飼いの身体を洗い流してやる。洗い終わった後、飼いはぐったりとしていた。 「……ま、当然か」 多分寝ているのだろう。この飼いはほっといて、順也のいる入り口へ引き返した。 俺が入り口に着いた時、順也は近くのベンチでタバコを吸っていた。俺に気付いて、タバコを消す。 「としあきさん、捕獲は終わったんですね」 「おう、思った以上の糞蟲だ。片方を眠らせても自分は助かると思ってたんだろう。俺に喧嘩を売りやがった」 あははは、と苦笑いする順也。 「こりゃ楽しめそうだ。……ところで、袋の回収は終わったよね」 「あ、はい、公園にある分の袋は全部ここに集めました。でも……多いっすね、ここの実装」 入り口に置いてある袋の数はざっと見て十八から二十個。一袋の最大容積が成体実装十二匹くらいだから最低でも二百匹前後はいたことになる。 仔実装を含めればそれ以上になるかもしれない。……恐るべき繁殖力だ。 「無法地帯って言われるくらいだしな。この数があいつに襲いかかってきたんじゃあ倒されるのも無理はない」 この数なら子供や力のない老人を簡単に倒すことが出来るだろう。 「あ、そうだ。順君にこれの処理と後始末を頼みたいんだけど……」 「俺がっすか!?」 「大丈夫。処理っていっても本部の方に電話して引き渡すだけだから。『代理の者です』って言っておけば何とかなる。処理の人が来たらこれを見せておいてくれ」 そう言って順也に証明カードを渡す。 「他に何か聞かれたら適当に答えておいてくれ。むこうもお役所仕事だしほとんど聞かないとは思うがな」 駆除者のベストを脱ぎ、ズボンのポケットから出した折りたたみ式のトートバッグに詰めた。 バッグを肩に下げ、糞蟲二匹の両手を持ってぶら下げる。 「すまないが、後は頼んだ。俺はこいつと楽しいお遊びをしなくちゃいけないんでね」 「はーい……」 テンション低めで返事をする順也を置いて、俺は家に帰った。……さあ、スーパー虐待タイムの幕開けだ。 *** デスゥ *** 家に帰った後、ぶっ倒れている実装を発見。……外傷はない。というかこの件に関しては原因がはっきりとわかる。 台所に空の皿と「昼に食うように」と書いた張り紙。……昼飯を作っておいたのに我慢できずに食ったんだな。 だが今は糞蟲共を触っているので飯を作る事が出来ない。……準備は手早に済ましてこいつの飯を作るか。 L字型の廊下の曲がった奥の角……物置しかないところまで来ると、物置の扉を背にして下の床に触れ、軽くいじる。 するとどんでん返しの要領で床の一部が回転し、取っ手が飛び出した。これを引っ張ればあら不思議、秘密の地下道が出てきました、と。 地下に続く階段を下り、重苦しい造りの扉を開けた。……ここを使うのもひさしぶりだっけ。 扉の向こうはコンクリートむき出しの粗末な部屋。隅のほうに一つ大きな装置があり、その他にもう一つ大きな物体がある。布で覆われたそれは、これから始まる虐待の幕開けにふさわしい物だ。 大きな装置を起動させ、手に持ったままの糞蟲二匹を放り捨てた。服を丁寧に脱がせ、頭巾も外す。この二つは後で必要になってくるので破棄はしない。 感触を頼りに偽石を探し、取り出した後に大きな装置についていたプラスチック製のコップを外し、その中に入れる。もう一度装置に戻すと、コップの中が液体で満たされた。 この大きな装置は『半永久型実装延命装置』。実際には実装の生態研究をしてる人間しか扱わない装置だ。というか一般人にはバカ高くて買えるもんじゃない。 昔の仲間の一人(順也以外)が前記の研究室でバイトをしていたらしく、そこの教授が旧型のこの機械を格安で売ってくれたのだ。……格安と言っても六桁は行ったが。 ちなみに延命装置に限らず最新型の科学装置は最低でも八桁はする(実話)。それが旧型とはいえ六桁だ。そこの教授には感謝しなければ。……と、話が逸れてしまった。 糞蟲を縛り倒してからこいつらの服を持って上に出た後、服を適当に隠して手を洗ってから簡単な飯を作り、実装を起こしてやる。 「おい、行き倒れ」 「うぅ……誰が浮浪者ですかぁ……」 だるそうに起き上がる実装のこめかみに拳を当て、うめぼしを開始する。 「あががががががが」 「ひーるーにー食ーえーって書いてあったろうがこの大糞蟲が!」 「いたたたた、ニンゲンの字なんて読めるわけないですぅ!」 「何を……」 うめぼしが止まる。あれ?こいつ、字が読めないんだったっけか?実験のために台所の張り紙を裏返し、一言書いてみる。 「ほれ」 実装に見せるが反応はない。むしろ何やってるんだと俺を睨んでいる。 「本当に読めないんだな」 紙に書いた言葉は「あなたは糞蟲ですか?」。読めるならこの文を見せただけで切れるはずだ。 「まあいいや。お前のためにわざわざ飯を作ってやった。感謝しろ。……本当なら見捨てる所なんだがな」 「……貰っておくです」 飯……サンドイッチを渡し、更に一言告げる。 「ああ、それから。俺、これからちょっとの間家にいなくなる事があるから。今日みたいに昼飯は用意しておく。必ず昼に食えよ」 「……朝ご飯はないですか?」 「ない。運がよければ一緒に食えるかもしれんがお前の場合はほとんど無理だろうな」 実装の朝は遅い。早くても九時から十時なので俺がいつも朝飯を食う八時頃に一緒に食えないだろう。 「そういうわけで今から俺は消える。夕飯までには現れるから安心しろ」 実装のいる居間を出て、また地下室に入った。扉の前に近づくとデスデスと声がする。……起きやがったな。 「おいこらドレイ、一体これは何のマネデス?早くほどくデス」 「デッスーン、今度はSMプレイデス?まったくとんでもない好き者デス」 扉を開けた瞬間、早速かかる罵詈雑言。自分が置かれた立場も知らないのか。 「やあ糞蟲共。実装ランドへようこそ」 「実装ランド?この何もない変な部屋がデスか?」 「デプププ、面白い冗談を言ってくれるデス。私達専属の道化師になるデスゥ」 「さて。ここには二つのコースがある。通常コースと特別コースだ。セレブを自称する君達なら当然特別コースだな」 「何を言ってるデス。自称も何も私達は本物のセレブデス」 「選ぶなら当然特別コースデスゥ。デププ。私達は選ばれるに相応しい実装石デスゥ」 ……確かにお前らは特別だよ。そう、「特別にヤバイ人物に喧嘩を売った」んだからな。 「デッ?」 「何デスかそれは」 糞蟲共の前に布に覆われた物体を持ってくる。どうせおいしいご馳走だのが出てくると思っているんだろう。顔がにやけている。 「それでは…………実装裁判を開始しよう」 「デス?裁判デス?」 「きっとコースの一環デスゥ。それに私達は罪人じゃないデス」 勘が良いな。そう、こいつはコースの前菜さ。 「被告、隠れマラ」 右手を布の端にかける。 「被告、糞蟲二匹」 左手をもう一方の端にかける。 「判決は……死刑だ!死刑!死刑!死刑!死刑!死刑!死刑!!」 絶叫とともに布を取り去る。現れたそれは「ガトリング砲」と呼ばれる機関銃だった。……中身はおもちゃで発射するのはBB弾だが。 「なぁにが『罪人じゃない』だぁ!?手前ぇらは罪を犯したんだよ!さあ、罪深き糞蟲を根絶やしにしてやる!」 三脚に取り付けられたそれを糞蟲へと向ける。 「目標、『糞蟲』!! 死 刑 執 行 !!」 トリガーを引き、弾幕を糞蟲共に浴びせてやった。秒間数十発のBB弾が糞蟲共に降り注ぐ。 『デギャァァァァァ!』 「叫べ!喚け!お前らは楽器だ!阿鼻叫喚の音色を奏でる一個の楽器なんだよ!」 潰れていない所にはたっぷりと弾の雨を食らわせ、身体全体を擦り潰していく。 やがて用意していた弾も尽き、その頃には首から下が肉片と化した糞蟲共があった。 「デ……デェ……」 「な……んで、こん……な……」 さすがは糞蟲。頭だけの状態になっても生きてやがる。 「何故、だと?愚問過ぎて呆れるな。……手前ぇらは俺の女を犯しやがった。それが全てだ」 糞蟲共に御魔化す必要はないだろう。それに代わりの言葉が思いつかないので今度はそのまま口に出した。 「あ……んな……もの……が……?」 「デプ……プ……。面白……い事……を……」 あんなもの。そう言われ、笑われた瞬間。『糞蟲』と呼ばれた時とは段違いに頭に勢いよく血が登った。 「グボォッ!」 「ゲブァ!」 気が付けば糞蟲共の頭を踏みつけ、潰した後だった。 「……あー、なんだかな。どうせ再生するしいいやな」 頭を掻き、ひとりごちた。とりあえず糞蟲(の肉片)に活性剤と栄養剤を混ぜたものをぶっかけ、地下室を後にした。 「今日はこれくらいにしてやる。ありがたく思いな」 監禁二日目。今日はジッソウ殺しの金テコバールを持ちこむ。 地下室に入ると糞臭が鼻の中に入ってくる。……朝飯食ったばかりだって言うのにこの糞蟲は。 糞蟲共は糞にまみれながらぐったりしていた。どうやら空腹のせいのようだ。 「おい、起きろよ糞蟲共」 「デ……ス……飯はまだデスか?」 「まっ、たく……使えないドレイデスゥ……」 ……まだそんな事言うかねお前らは。 「飯?そんなもん無いに決まってるだろ?お前らみたいな糞蟲に食わせる飯は無い」 「デッシャァァ!何を抜かしてるデス!言うのはこれが最後デス!飯を!用意しろ!デス!」 「そこらの糞でも食っとけ。あいにくとうちには実装フードも何も無い。あるのは人間様の飯のみだ。さっきも言ったがお前らは飯抜き」 こちらは当然の事を言ったのに怒り出す糞蟲。 「ふざけるなクソニンゲン!私が出せと言ったら出す!これは基本デスゥ!」 「私たちは腹ペコデス。腹ペコなら当然飯をねだるデス。だからとっとと持ってくるデス」 糞蟲なら当然だが、言葉では通じないようだ。……身体でわからせてやるよ。 金テコを振り、糞蟲の腹を掠めさせる。腹の肉が金テコの先端でえぐれ、ちぎれ飛んだ。 「もう一度言う。飯は、無い。……わかったな」 「おいクソニンゲン!こんな事してただで済むと……ジュアッ!」 まだ何か言おうとした糞蟲の、今度は胸をえぐる。 「そうデス!私達のドレイがお前をボロボロに……ギャピッ!」 もう片方の糞蟲は腕を切り飛ばす。 「ふーん、だから?」 「だからお前は普通に生活出来なくなるデ……ジュゥッ!」 夢物語を語る糞蟲の下あごをえぐり飛ばす。 「だから何だって言うんだ。クソ愛護派の言う事なんかろくに信用されねぇぜ?」 「お前なんか私達以下の、ジュボォ!」 あの言葉を言いそうになった糞蟲の口に金テコを突っ込む。 「おおっと。それは口に出しちゃいけねぇ。間違っても『糞蟲』なんて言っちゃいけねぇぜ?……その瞬間にミンチが一つ出来あがり、とくらぁ」 んー、俺ってなんて愛護派。 「手前ぇらよぉ、世の中にゃあ喧嘩を売っちゃなんねぇ相手ってのがいるのをわかってねぇみてぇだなぁ。 ヤクザの怖いあんちゃんとか、マッポもそうだ。だが、手前ぇらが一番喧嘩を売っちゃいけねぇのは……俺みたいな虐待派だよ」 隣であごを砕かれた糞蟲がケヒュケヒュ言っているが気にしない。 「どんなにいい暮らしをしていても、虐待派に捕まれば絶望へまっしぐらだ。こうやって散々なぶられた挙句、死んだほうがマシな位の生活を送る。どうよ、こんな生活送りたいか?」 しかし口を貫かれた糞蟲は鼻を鳴らす。……そんな目に逢うはすが無い、私は可愛いから全ての人間に愛される、といった所か。 「おいおい、まさか『私にひれ伏さないニンゲンはいないデス』とか言うつもりか?こりゃ傑作だ。 ……いいか糞蟲。虐待派ってのは実装の存在自体がムカつくって奴が多い。いくら媚びたって俺らには『キモい事してんじゃねぇ』位にしか感じねぇぞ。 要は、手前ぇらの事を嫌ってる奴もいるって訳だ」 反論を聞いてみようと一旦金テコを抜いてやると。 「何をふざけた事を言ってるデスか!私達の可愛さがわからない奴なんて糞蟲以下デス!」 あーあ、言っちゃった。 ふっ飛びかけた思考の隅でそんな事を思いながら、あごをふっ飛ばした糞蟲共々金テコでボコボコにした。 「デジィァァァァァァァァ!」 「ケフィィィィィィ!!」 気が付けば、昨日と同じような肉片が転がっていた。 「あーもう、こうなったら虐待できねぇだろが。俺の馬鹿野郎」 しぶしぶ活性剤と栄養剤の混合液をぶっかけ、地下室を後にした。 監禁三日目。地下室に入った瞬間、驚愕の光景を目にした。 糞蟲どうしが共食いしあっているのだ。……さすが糞蟲。飼いとしてのタブーを簡単に破りやがった。 こりゃ虐待しようもないな。つまらなすぎる。すぐに外に出て、階段を登ろうとした時。 「……ドレイが去っていったデスゥ。デププ。とうとう私達の怖さがわかったデス」 「というか、こうすれば二人とも腹が減らないデスね。デププ。私達は頭がいいデス」 なんだ、意識がはっきりしてるじゃん。てっきり壊れたのかと思ったぜ。 「誰が去っていったって?」 扉越しに声をかける。 「デデッ!?ま、まだいたデスかクソニンゲン!いるならとっとと飯を持って来いデス!」 「あれ、お前らの飯なら今食ってるじゃないか」 「デ、これは別バラデス!いいから持って来いデス!」 「何?『オニク最高デス!これさえあれば他はいらないデス』?わかったわかった。それじゃあ二日くらい食っててくれ」 「あ、コラ、ニンゲン!今ならステーキ500グラムで許してやる……」 地下通路に続くドアを閉める。……何が500グラムだ。俺だって食った事無いぞ。 「ふん、しばらく頭冷やしてろ」 何に対してかは知らないが、自然とこの言葉が口から出た。……多分、500グラムの辺りだろう。 パンピーな俺にとってステーキ500グラムはかなりのご馳走。それを平然と要求しやがった糞蟲の生活に腹が立ったんだろう。 「……何やってるですか、ニンゲン」 顔を上げてみれば、ちょうど廊下の折れ曲がる辺りにある居間のドアから実装が顔を覗かせていた。 「あ、いやな。ちょっと床が痛んできたかなって」 「そりゃまあニンゲンが入れるくらいの大きさに穴が開くぐらいです、そろそろ工事でも頼んだ方がいいですぅ」 …………見られてるな。そりゃ予想はしてたけどさ。むしろ想定の範囲内だ。別に隠すつもりも無いしバレても問題は無い。話す手間が省けるだけだ。 「しばらく消えるって言っておいて、ニンゲンは鍵もかけてないし火の元も見てなかったです。 この私を置いて外に出るなら普通は鍵を閉めるはずですぅ。だから家の中で見つからなくなる場所を探したらそこの扉が見つかったです」 「……ここは開けてないよな?」 「もちろんですぅ。開けたら何されるかわかったもんじゃないです」 それはよかった。万が一、開けてたとしたら最悪の事態になりかねん。 「何されるか、については合ってるぞ。ただしこの中の糞蟲共にだがな」 「でっ?」 驚く実装。一旦扉から離れ、実装の元に近づく。 「立ち話もなんだ。とりあえず朝飯を用意してやるよ」 さあ入った入った、と実装を居間に押し、その後に台所で実装の朝飯と俺のコーヒーを用意する。 居間のテーブルに朝飯を乗せた皿とコーヒーカップを置き、俺は実装の対面に座る。この話を聞いたら、多分驚くだろうな。 「一つ聞く。単刀直入に話したほうがいいか?」 「当然です。めんどくさいのは嫌いですぅ」 「それじゃ簡潔に。扉の下にいるのはお前を犯した奴らだ」 聞いた瞬間朝飯のサンドイッチが喉に詰まったらしく、実装は思いっきりむせた。 「げほっ、げへっ……な、何でそんな物家に入れるですか!」 「決まってるだろ。復讐だ。自分がやった事がどれだけ愚かなのを教えてやるためだよ。 いやー、これがまたすんごい糞蟲でさ。俺もついついブチ切れて虐待を忘れてミンチにしちまうほどさ」 「だったらちゃっちゃと殺してやるですぅ!」 やられた側としてはその方がいいのだろう、実装がテーブルを叩いて叫ぶ。しかし俺にはそれはできない。 「……落ちつけ。一応奴らも飼い実装だ。殺したりしたらそれこそ俺らが訴えられる。前科持ちの身だしそんな事はしたくない」 「私が許可するです!あんな糞蟲共はやっちまうべきですぅ!」 興奮しきったままの実装にため息をつき、答えてやった。 「なあ。逆に考えてみるんだ。『死すら生ぬるい罰を与えようじゃないか』と。 俺だって殺してやりたいさ。でもな、殺したらすぐに楽になっちまう。だからとことん苦しめるんだよ。『死んだほうがマシ』ってくらいになぁ」 ニヤリと笑ってみせると、実装の頭が後ろに下がった。 「……ニンゲン、お前のその顔は久しぶりに見たです」 「そう引くなって。俺は本気で糞蟲共に切れてるんだ。この顔になったって仕方ないさ」 引いた状態で少し固まってから、実装は元の位置に戻る。 「……って、そういえば何で私の事なのにニンゲンがそんなに怒ってるですか?」 今度は俺が黙る番になった。……その質問は答えづらい。 「あー、その……ぶっちゃけ、俺もよくわからないんだよ」 「ふーん。私はてっきり『俺の女に手ぇ出しやがって』とかそんな感じじゃ……」 『俺の女』と聞いて、思わずコーヒー吹いた。 一瞬にして妖怪コーヒー実装になる実装。しばらくむせてしまったが、ようやく呼吸が落ちつき。 「おまっ、ふざけるのも大概にしろよ!」 「その前に!コーヒーまみれの私に何か言う事はないですか!?」 ここからまた喧嘩になって、昼飯は実装と別に食う事になった。 監禁六日目。四日目と五日目は本当に放置しておいた。俺は言った事は必ずやるからな。 「……本当についてくる気か?」 呆れた顔で俺の前に立つ実装に問う。 「当然ですぅ!あの糞蟲共に一矢報いてやるです!」 完全防備……というか頭に鍋をかぶり、手には包丁を持っている実装の姿はある意味笑いを誘う。 許せないのはともかくとして、その格好はギャグにしかならないぞ。 「わかったわかった。武器を貸してやるから包丁はしまえ。奴らの体液がついたら捨てなきゃいけないだろうが」 百均で売ってる包丁ならともかく実装が持っているのは切れ味の良い業物だ。それで糞蟲ごときを捌かれたくない。 「……わかったです」 しぶしぶ包丁を棚に戻す実装。金テコの入っていたクローゼットを開いて別の武器を適当に物色する。 武器庫と化している名ばかりのクローゼットの中を探し、トンファバトンを取り出して実装に渡す。 「とりあえずこれだな」 トンファでの殴り方を簡単に教え、地下室へと降りていった。 「ものすごく薄暗いです……」 階段を降りながら、実装が呟いた。 「いかにも隠し通路って感じだろ?足元、気をつけろ」 答えながら実装の後ろをついていく俺。階段を降りきり、扉の前に立つ。 扉を開けると、ぐったりした糞蟲共が転がっていた。その身体にはかじられた跡が所々に残っている。 「さあ、復讐開始だぜ。思いっきり殴ってやれ」 実装が糞蟲に近寄り、トンファを振り下ろした。 「デギャッ!」 「それもう一発!」 もう一度糞蟲にトンファが振り下ろされる。 「ギャピッ!」 二、三発食らわせたところで一旦実装の手が止まる。……どうしたんだ? 「おい、どうしたんだよ……」 声をかけられ、振り向いた実装は……笑っていた。それも懐かしい笑い方で。 口を最大まで歪ませ、その眼はまるで獲物をなぶる虐待派。……目覚めたな、こりゃ。 「うふ、うふふふふふふふふ……」 笑う。実装が笑う。張りついた笑みで。虐待派の笑みで。 「糞蟲が」 トンファを振り下ろす。 「糞蟲が」 トンファの先で突く。 「糞蟲が、糞蟲が、糞蟲が、糞蟲が」 呟くたびにトンファが糞蟲を襲う。……不気味だ。なんか、順也の気持ちがわかった気がする。 「ほどほどにしておけ、とは言いづらいな……」 ああなったら誰の言う事も聞かない。俺自身そうだったからわかる。 「まあいいや。もう片方も同じようにすりゃいっか」 金テコを手に取り、もう片方に振り下ろした。 *** デスゥ *** 俺が糞蟲を拉致してからちょうど一週間後。 電柱に張ってある張り紙……糞蟲共の捜索要求の紙が一部剥がれてペラペラと風ではためいている。俺はそれを剥がして破り捨てた。 「ふん、こんな文章じゃあ誰だって探したくないさ」 紙に書いてあった内容を要約すると『うちの実装ちゃんを探しなさい。そうすればいくらでも報酬は払ってあげます』。 「まあ、見つかってよかったじゃないか。……どんな状態であれ、な」 風で紙片がヒラヒラと舞う。その中の糞蟲の嫌味ったらしい顔が目に付き、空中で受けとめて更に破いてやった。 人がいなくなって久しい二丁目公園の入り口に、久々に人だかりが出来た。その中心にあるのは二匹の実装。 小綺麗な服を着ている事から飼い実装に間違いはないだろう。しかし様子が違った。 服を押し上げるほどに巨大なマラがビクンビクンと脈打ち、精液を噴水のように吹き出している。 正気を保っているためデギャデギャとやかましい実装達。しかし身体が縛られているため動く事も出来ず、ただ精液を出し続けているだけだ。 二匹が縛りつけられている柱の上のほうには紙が張り付けてあり、こう書かれていた。 『この糞蟲共は度重なる姦淫を繰り返し、更に反省の色無しとして六日に渡る拷問の上晒しマラとして罰する。 決して手を触れぬようお願いいただきたい。 実装殺し』 *** あとがきデスゥ *** 物足りないと思う方もいらっしゃるでしょうが、これで一旦マラの虐待が終わります。 あと1、2回で終わると思いますのでどうか後少しお付き合いください。
