昼下がりの公園 ベンチに座って缶コーヒーで一息ついていると実装石の親仔が近寄ってきた 集られるのかな、などと思っているとその親仔はベンチの横にあるゴミ箱の前で立ち止まった 「デッ…!デェェェッ!」 親が自らの2倍はあろうゴミ箱に向かって飛び掛っている ドスドスという着陸音が例えようの無い悲壮感を醸していた この様子だと日が暮れても中身を漁る事はできないだろう また、両脇に立つ仔は今にも泣き出しそうな、とても不安げな表情をしていた 本来ならば人間である俺に何かしらの要求をしてくるであろう実装石が、まるで俺が居ないかのようにゴミ箱へのジャンプを繰り返している そうかそうか…そう思った俺はスッとゴミ箱へ手を伸ばした 「デッ?」 俺の手を目視した親はようやく俺という存在を認識したらしい 実装石からしてみればとんでもない巨体であろう人間が眼中に無かったということは相当飢えていたのだろう 俺は無言で親仔に微笑みかけた その時、心なしか親仔の目には希望が宿り、その両頬は薄っすらと赤みを帯びてきたように見えた ガサッ 「テッ…テッチー!」 仔達は小さな喜びの声をあげ互いに微笑みあった 「デ…デデッ…」 親は、飼い実装がその主人を見上げる時のような曇りの無い表情をして俺を見上げていた ガサガサッ 「デエッ?」 「テチュー?」 突然素っ頓狂な声をあげた親仔 俺がゴミ箱から引っ張り出したものは新聞紙だった 相変わらず親仔の頭上にはクエスチョンマークが飛び交っている 「ああ、これはね」 そう言った俺は新聞紙をクルクルと丸め棒状にした 未だに疑問符を飛び散らかしている仔達をよそに、唖然としている親の顔からは生気がまるっきり無くなっていた 「デッ…!?デスァァァッ!!」 親が短い両手でその頭部を抱えるようにしゃがみこんでいた その保護しきれていない頭には微小な重みをもった棒状のものが幾度と無く打ち下ろされていた 仔達は情けない鳴き声を上げ親の両脇でまごついている 俺が確かな感情の高鳴りを感じていたその時、公園の時計が目に入った 突然興を殺がれた俺は小さく舌打ちすると親の横っ面を棒状のもので張り倒した 親は真横からの突然の衝撃にバランスを崩し尻餅をついた 慌しく棒状のものをゴミ箱へ戻し鞄を抱えると、中身の残っている缶コーヒーを片手に俺は公園を去った 頬をかばい放心している親と、それにすがりつき相変わらず情けない鳴き声を上げる仔達 去り際にして、それがとても遠く胡散臭い光景だと俺は思った。
