タイトル:【馬?】 走るワタシ
ファイル:走るワタシ.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3028 レス数:0
初投稿日時:2007/04/14-23:53:36修正日時:2007/04/14-23:53:36
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「テッテッテッテッテ・・・・・・」

 彼女は走っている。同じ所で、同じように、同じ毎日を走って過ごす。
休む事も許される。走らなくてもかまわない。しかし走るのは、彼女の意思。

「デ〜」

 朝昼晩の食事を与えられる時、どれだけ走ったかで貰える物が違う。
そうなれば実装石は当然、良い食事を得る為に与えられた仕事をこなすのだ。
彼女等に与えられた仕事は至極単純で、走る事。

 しかし、ながら強制ではない。走らなければ食事抜き。怠ければ、ランクの下がる食事。
賢くても、バカでも、糞蟲でも、ここではみな同じように扱われる。

「テッテッテッテッテ・・・・・・」

 昼休憩は12時から。もう少しだけ頑張れば食べる物が得られる。
彼女は、同僚の99匹と共に、この場所で走り続けている。



 ■走るワタシ■



 配膳係の人間が実装石用の食堂で次々に仕事をこなす。
実装石は一列に整列し、自分の順番を待つ。ピッと音をたてる機械の前に
実装石がが立つと、走った距離が登録され与えられる食事が決定するのだ。

「デェ〜、今日も、これデス?」
「惜しかったなぁ、もうチョッと頑張れば高級実装フードだったのになぁ」
「デェ〜頑張るデス!」

 彼女達は、野良や保健所で処置を待っていたもの、元飼いなど等である。

「デ、利明さんデス」
「や、リョクちゃんか。お、今日は頑張ったね?高級実装フードに金平糖五個」
「デッ!やったデス!」

 ここが始まってから、2週間経った。配膳は人間の手で行われるので顔見知りの実装石も
当然出てくる。この実装石は、元飼いだと言っていた。すごく賢い実装石で、
人懐こい事から数人から名前を呼んで可愛がってもらえている。

「はやく退くデス!このバカ!」
「デ、ごめんデス」
「ほらバカ人間、さっさとメシをよこしやがれデス」

 そして、逆に受けの悪い個体も出てくる。だが、そういうバカ蟲に限って体力があり
結構な距離を走るから、邪険に扱えないのである。
その筆頭ともいえる元マラ実装がコイツだ。

「てめぇ、メシが欲しけりゃぁ、それなりの態度でお願いしろよ。あぁん?」
「ッケ! うるせぇデス」
「糞蟲っ!」

 振り上げたオタマ。それは、糞蟲にぶつけられることなく、静かに下ろされた。
冷静に戻って、理性で何とかこの糞蟲を潰さないですんだ。

「・・・・・・覚えてやがれ」


 ●


 リョクは夢を見ていた。 捨てられ、野良になった自分。
公園にから去る、ご主人様を追いかけて走った事。見失って絶望した事。
必死で食べ物を探して回った事。せっかく見つけた寝床から、雨に追い立てられたこと。

 それを住む場所と、食事を与えてくれる人間達。・・・・・・感謝した。
何か黄色い丸い物の中に入って、言いつけを守り走れば金平糖だって、まだ見ぬステーキや
おすしとかいうモノも食べられるかもしれない。私はいま幸せだ。。
 しかし、現在の立場を良しとしない個体もいる。何が不満なんのだろうか?

「・・・・・・」

 この日、リョクが目覚めた時に同室のモモが居ない事に気がついた。
確か、彼女は走る事を数日前から止めていた。走れないと言っていたな。
モモも元飼いだった。リョクは彼女に日々の不満、愚痴を良く寝付くまで
聞かされていた事を思い出した。

 どうしたのだろうか?ひょっとして病気になったのかもしれない。
気になったが、ここでリョクが彼女の安否を確認できる術は無い。

「・・・・・・デェ? 時間デス」

 走る時間が来た。ガチャリと扉が開いたのがその合図。
リョクは立ち上がり、寝床を正し部屋を後にした。

 この日、リョク達の所にモモが返ってくることは無かった。たまたま、利明がモモのこと
を知っていたので、教えてくれたのだが・・・・・・。
モモはどうやら、悲しい事になったようだ。
数日経てば、新しい仲間が来ると教えてもらった。リョクは彼女の分まで幸せになろうと
決意し、走る足に力を込めた。


 ●


 エネルギー及び地球環境問題の解決。
新エネルギーの開発と、実証試験がこの施設の建設された目的である。
経済産業省の研究開発プロジェクトチームの一部門。それがここである。

 近年、IT技術の革新や、産業のオートメイション化から電力は大切なエネルギーと
なった。安全性の問題から、原子力発電所がこれ以上建設できないこの国では、
様々な発電技術開発、研究に努力をしていた。

 設備や投資額のわりに、まずまずの効果を上げる風力発電。初期費用が膨大だが、有効
性が実証されている太陽光発電、太陽熱発電、太陽宇宙発電衛星。
様々なプロジェクトが模索される中、少し異様なモノもあった。


 ・・・・・・実装石による発電である。


 要は、風力発電の欠点を補うにはどうすれば良いか? と言った課題に答えるべく
提案されたプロジェクトで、無風の間別の物がモーターを回し発電すれば良いのでは?
見たいな事だったはずだ。

 しかし長い検討期間を得て、結果 このような施設がテストとして作られた。
発案者も、まさかこの提案が通るなどと思ってもいなかったらしく、酷くあわてたらしい。
 用意された物は、小中学校の体育館ぐらいの大きさの建物一つと、直径150cmの輪。
ハムスターの回し車の様な物である。その軸にくっつける発電用モーター。そこから先は
太陽光発電の設備の使いまわし。実装石が、回し車を回せば発電されると言う仕組み。

 関係者も、これだけで効果があれば良いし、悪けりゃ止めりゃ良い。実装石はタダで手に
入るし、つぶしも利く。給料も無ければ雇用費もない。有るとすれば餌代。それだって
人間の雇用費に比べりゃ安い物。どうせ国民の税金なんだからってなもんだろう。

 で、だ。これが以外に使えるのだ。そりゃ、あれだ。家庭用電気とかには全然足りない。
しかし、我々も使う身近な電源装置への充電には事足りる。電池。そう、電池への充電。
試験的に建てた、無料電池充電スタンドがえらく好評で、有料化しても軌道に乗せれると
判断されたのだ。これにより、数%でも石油使用量を減らせるし一石二鳥。

 3ヶ月の試験機間が過ぎれば、実装石はもっと増やされるかもしれない。施設も、もっと
増えるかもしれない。品種改良して走るのが速い、それこそ実走石なんてのもできるかも
しれない。

「テッテッテッテッテ・・・・・・」

 そんな事情はお構いなしに、今日も彼女達は走り続ける。
自分の意思で。うまい物を喰う為に、今日も明日も明後日も・・・・・・。


−終-


・・・・・・実装石が二酸化炭素吐き出すんなら、あんま意味ねぇなぁ。
と書き終わってから思いました。


初スク ある市の復興記
2作目  二度と行きたくない
3作目  もう一度、行きたい
4作目  走るワタシ


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