タイトル:【?】 人化された糞蟲・3
ファイル:実装3.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:2604 レス数:0
初投稿日時:2007/04/12-14:05:48修正日時:2007/04/12-14:05:48
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現在、俺がいる場所は居間。そして目の前には大きな繭。
実装が繭からかえった時の事が再現されていた。……という事はこれは夢だろう。
『またかよ……手抜きじゃないだろうな』
思った言葉が口から出る。どうやら今度はただの記憶じゃないようだ。身体を自分の意思で動かす事が出来た。
『明晰夢ってやつか』
そして目の前の繭は割れ始めている。本来ならばここであいつが出てくるはずだが……
出てきたのは、あいつとは違った存在。
まるで赤ん坊のような等身の上に人間の頭に実装の顔が貼りついたような姿。……正直グロい。
この後実装が喋るが俺はその声も聞きたくない。だから、持っていた金テコで首を思いっきり殴ってやった。
一撃を食らった実装は横に吹っとび、倒れた後痙攣している。……気持ち悪い。
実装に近づき、今度は頭に金テコを振り下ろす。当たった瞬間にビクンと大きく跳ねる。
気持ち悪い顔を晒しながらこちらを見ている。その顔めがけて金テコの先を突き刺……

そこで目が覚めた。どうやら居間で寝てしまったらしい。身体を起こし、ソファの方を見る。
いつもの実装が寝ていた。俺の服の裾を握ったままで。……中身のわからないため息が出た。
「何だったんだ、今の夢は」
気持ち悪い姿の実装。運が悪ければ繭から出てきた実装があの姿になっていただろう。
「むしろそうあって欲しかった」
人間ではないとは言ったが、なまじ人間に似すぎているだけあってなかなか虐待が出来ない。
……誰だ、今『人間みたいだからって虐待できない奴は虐待派やめちまえ』って言った奴は。
もし力余って殺した場合、死体の処理に困るだろうが。前にも言ったが、俺は殺人者にはなりたくない。
「この歳で捕まるのはもうごめんだ」
それから、そういう事を言う奴は実際に人化実装を見てから言ってくれ。また同じ事を言えるかどうかは疑問だが。
「全部お前のせいだよ。聞いてんのか糞蟲」
実装の額に軽くチョップを打ちこむ。その直後、実装のまぶたがぴくりと動く。
「……です」
実装がようやく起きた。その瞳には光がある。……精神的に回復はしたようだ。
「おう、起きたか糞む……」
「遅いですっ!」
服の裾を掴んでいた手が離され、代わりに重い腹パンチが打ちこまれた。
「ごふぅ!?……手前ぇ、何しやがる!?」
「今更『起きたか』も糞もないですこのクソニンゲン!」
「てーめーえーはーよぉー!?久々にブチ切れたぞコラ!人様に手ぇ上げんなこの糞蟲がぁ!」
助けておいてこの態度。これは誰でも臨界突破するだろう。
「黙らっしゃいですぅ!何で私が呼んだときに助けなかったんですか!」
「俺はマ○マ大使でも完全で瀟洒な侍女長でもねぇ!」
「うるさいです!お前は私がピンチになったら駆けつけてくれればいいんですぅ!」
実装の駄々っ子パンチが俺に炸裂。
「痛だだだだ!ふざけるのも大概に……ん?」
「どうして……来てくれなかったですかぁ……」
威力が弱まったと思ったらいきなり実装の声が鼻声に。
「怖かったです、本当に怖かったです……」
実装の手は止まり、ただ涙を流しながら俺の事を睨むだけ。……先生、これは反則だと思います。
いくら相手が実装とわかっていてもこの『女(一応雌だし)の涙』の威力は十分にあるわけで。
手が実装の肩に向かおうとしている。このまま行けばこいつを抱きしめてしまう。
「お前なんてクソニンゲンじゃないです、真性ダメヲタで十分ですぅ……!」
だが実装の言葉によって目標変更。頬を思いっきり摘まみ、伸ばしてやった。
「誰が真性ヲタだぁ!?今ので完全に切れた!屋上!前歯!」
「ひひゃははははは!はひふうへふぅ!」
「ふははは!何を言ってるかわからんぞ糞蟲くん!」
危うく自分のアイデンティティを崩壊させる所だった。そこら辺はこいつに感謝しておこう。
……俺にとって実装は憎むべき存在。それは決して変えてはいけない。そう、変えてはいけないんだ。

   *** デスゥ ***

実装と一騒ぎ起こした後。風呂場で篭城を開始した実装は放っといて、ある人物へ電話をかける。
数回のコール音の後、相手が電話に出た。
『はい、もしもし』
「『神は人の上に人を作らず』」
合い言葉の上の句を言う。久しぶりにこの合い言葉を言うが、覚えているだろうか。
『……『人の下に実装を作った』。久しぶりっすね、としあきさん』
「ああ、覚えていてくれたんだね。順君」
『覚えてないわけがないっすよ』
電話の相手は数年前、俺が虐殺の限りをつくしていた頃の仲間。名前は順也。
『どうしたんすかとしあきさん?家は近いんだし会って話したほうが良いのに何でまた電話で?』
「いろいろと事情があってね。用件は一つだけだし手間を取らせられないからさ」
『はあ……で、用件って何すか?』
「順君、君の住んでいる所にさ、ジックス派の人間かマラ実装はいないかい?」
こういう場合は闇雲に調べるよりはそこに住んでいる人間に聞くのが早いだろう。幸い実装がやられた隣街には彼が住んでいた。そういうわけで彼に電話をかけたのだ。
『そうっすねぇ……ジックス派の方は聞いた事もありません。マラ実装の方はもう全滅してるはずですよ?』
「どういう事だ?」
『業者の方でマラ実装を定期的に駆除してますからね。実質上はいないって事に……』
なんだと?マラ実装は駆除されてる!?じゃああいつを犯した奴らは誰だっていうんだ!
「ふざけんな!」
『ひぃっ!?ど、どうしたんすかとしあきさん!?』
思わず怒鳴ってしまい、電話越しの順也が悲鳴を上げた。
「……すまん。少し感情的になった。しかし駆除されたとなると……」
『俺には一体何がなんだかわかりませんよ。もし良かったら説明してもらえます?』
順也の言葉に、俺は困ってしまった。説明した方が話も早いし楽だろう、しかし説明するとなるとどう言えばいい?
うちの実装が人化した。そんな事を言ったら呆れられる事は間違いない。……まあ、よく考えれば人化の部分は伏せても十分説明できる状況だしな。
「ああ、簡潔に言うと。上げ落とし中の実装がそっちの公園で犯された」
『まじっすか?何でそんな事に……』
「いやな。好き勝手にさせてたらある日突然野良にすり変わっていてな。で、そいつに住処まで案内してもらって暴れてたらそれが倒れてたんだよ」
ため息をつく。とりあえず大筋は変えずに済んだのが幸いだろう。
「俺の苦労を返せってんだ、まったく。で、聞いた話だとそこの実装達は何もしてないらしい。それに公園にはマラ実装もいなかった。だからもしかしたら他の所の奴かジックス派かと思ってな」
後半は嘘が混じっている。聞く前に殺してしまったし確認もしていない。
『はあ、それは災難っすね……わかりました。とりあえずちょっと調べてみます』
「飼い実装も調べておいてくれ」
『っ!?』
順也が声を詰まらせた。……当然だろう。今、俺はとんでもない事を言ったからだ。
『待ってくださいよとしあきさん?まさか……飼いを虐待するんすか!?』
「おうよ」
飼い実装を虐待……そんな事をすれば最悪の場合罪に問われる。それを覚悟の上かと彼は聞いているのだ。
「さすがに俺もブチ切れちまってなぁ。上げ落としは自分自身を虐待する事でもあるわけだし、そこまで苦労したってぇのに糞蟲に横取りされるってんだ。こりゃいくら飼い実装でもその罪を償って貰わんとな」
『……それは……そうですけど……』
声が震えているのがわかる。電話越しでもわかるのだろう。虐殺派だった頃と同じ俺の殺気が。
「おいおい順くぅん?向こうは俺の……楽しみを奪った奴なんだぜぇ?殺されて当然。アンダースタン?」
俺の、と言った瞬間出て来そうになった言葉を飲み込み、代わりの言葉にアクセントを付けておく。……これで台詞の言い換えはバレないはずだ。
しかし順也はそれ所じゃないくらいにビビっていたらしく、悲鳴に近い声が俺の耳を突き抜ける。
『わ、わかりました!命にかけても探します!』
「……あー、いやいや。順君に怒りを向けてる訳じゃないから。別に君を殺さないから。落ち着いて」
そういえばつるんでた頃も俺がブチ切れるとすぐに逃げてたな、彼。……そんなに怖いのか、俺って?正直これはヘコむ。虐殺派にさえビビられるって……どうよ?
『す、すいません!それじゃあ!』
口調を戻してなだめたものの、全然落ち着いていない声で順也に電話を切られた。
しかし。マラが駆除されているとは驚きだ。まあ、あんな百害あって一利なしの物体は駆除されて当然だが。過去には子供が襲われる、なんて事件も起きているからな。
居間に戻り、ソファに座る。しばらくはただ天井を眺めていたが、ふと先ほどの会話を思い出した。
「……こら、俺。なんて事を言おうとしてるんだよ」
出そうになった言葉を思い出し、自分の頭を軽く小突く。よりにもよってその言葉はないだろ?説明が説明だけに誤解を招きかねない。

「俺の女、だなんてなぁ……」

口に出してはたと気づいた。……かなりとんでもない台詞を言おうとしていた事を。
「……っぷ」
笑いがこみ上げ、吹き出してしまう。その後はしばらく肩を震わせていたが、ついに我慢が限界に来た。
「…………っく、はははっ、はははははは!!」
おいおいマジかよ!よりによって、あの糞蟲を!笑いが止まらない。いや、もう笑う事しか出来なかった。
とうとう俺も狂っちまったか。馬鹿馬鹿しい。本気で馬鹿馬鹿しい。
一瞬このまま死んでしまおうかと思ったが、それはそれで面倒だ。……どうせ地獄行きなんだろうしな。
だったら、地獄の最果てまで落ちてやる。最果ての果てで鬼に喧嘩でも売ってやろう。
「……とうとう狂ったですか、ニンゲン」
俺の笑い声が気になったのか実装が居間の入り口に立っていた。
「……ああ、糞蟲か。悪いがしばらく一人にさせてくれないか?」
「だから糞蟲って……」
「一人にさせてくれ」
実装の言葉を遮り、言い放った。
「……わかったです。ニンゲン」
居間のドアが閉まる。……しばらくはあいつの顔を見たくなかった。
またしばらく天井を見ていると、だんだんあいつが倒れているのを見た時のあの感覚がわかったような気がしてきた。
「確かに、俺は虐待派失格かもな」
実装を抱えて家に帰った時の記憶が浮かぶ。実装相手にあんなに必死になったのは初めてだった。……本当、何やってんだろうな……
今の俺を虐待紳士が見たら鼻で笑われるだろう。お前は実装を憎んでいるんじゃなかったのか、と。
「虐待紳士殿。俺はこんな糞蟲ですが、あと少しだけ虐待派でいる事をお許しください」
もちろん今も実装を憎んでいる。だからあいつを犯した奴らを許せない。
「うちの実装を犯した奴らに粛清を下すまでは、俺が虐待派でいる事をお許しください」
そして、なにとぞこの糞蟲にわずかばかりの御加護を。

   *** デスゥ ***

順也から連絡が来るまでは暇をつぶさなきゃいけない。すぐに調べがつくとも思えなかったのであの物体を軽く試しておこうかと思う。
そう、緑の球体だ。財布からレシートを出し、球体が何なのか探してみる。
「……野菜、だよな」
置いてあったブロックは生鮮の野菜コーナー。となればこの謎物体も野菜のはず。
「というか生鮮物なんて買わないからな……」
保存が利く分冷凍の方が重宝する。それこそ急場じゃない限り生鮮物を買う事はない。
「あ、これか」
あのときに買ったのは冷凍食品と牛乳、それからつまみの材料。それと緑の球体……いや、
「……キャベツ?」
らしい。レシートにはそう書いてあった。
「この物体をキャベツと言う……のか?」
そもそもキャベツはこんな形じゃなかった気がするが……
とりあえず真中から切ってみる。手ごたえは感じず、ストンと包丁が落ちてしまった。
「柔らかっ」
中は見事に木の年輪のような円が入っている。たまねぎを横に切ればわかってもらえるはずだ。
「何この同心円」
味も見ておかないと。外皮を一枚剥いで……もとい。剥ごうとしたが。
「隙間どこだよ」
こういう葉野菜(?)には葉と葉の隙間があるはずなんだけれどそれが見当たらない。むしろ完全にくっついている。
仕方がないので包丁で削いでかじってみる。
「……キャベツだ」
他にどう表現出来るか?と聞かれたら即答で出来ないと答えられる。それほどにキャベツ味だった。
……急につまらなくなってきたな。こんなにも見た目が変なのに味がキャベツだという。これじゃあどうしようもなくつまらない。それこそ死んだ実装を虐待するようなもの。
「それは違うだろうな」
死んだ実装は腐るから余計にいらない。例えるなら壊れた実装の方が妥当だろう。
うん、こっちの方が合ってる。いくら刺激を与えても反応しないからまさにその通りだ。
……って、実装のたとえ話よりもこれの調理法が先決だ。一応キャベツといえば煮て良し焼いて良しの万能素材だが……
「とりあえずある程度の事はやってみよう」
削った方をさらに二等分する。さらにその片方を二等分して、他は全てラップにくるんで冷蔵庫に。最後に残った八分の二を一つずつ使う事にしよう。
まず焼き。冷凍ピラフの中の具を取り出し、代わりに細切れ(本来ならざく切り)のキャベツを具にする。
フライパンに薄く油をひいて細切れにしたキャベツを炒め、ある程度火が通ってきたらピラフの米を入れる。
……二色だけじゃああまり旨くなさそうなので取っておいた具を少し加えてみた。
見た目的には悪くないが、少々野菜の色がうるさくなったか。
次は茹で。今度は冷凍食材は使わずキャベツだけで行こう。
雪平鍋にポットのお湯を入れ、一旦沸騰するまで沸かす。その間にキャベツを薄切りにし、なるべく火が通りやすいようにする。
芯、というか小さくなった部分はもう仕方がないのでそのまま茹でよう。鍋のお湯が沸騰し始めたので一旦火を弱め、固形コンソメを入れる。
コンソメが溶けきったところで薄切りにしたキャベツを入れ、蓋をして弱火でじっくりと茹でていく。
茹で終わるまでに先ほどのキャベツピラフを試食。
「……ピラフやん」
少し水っぽく、味が薄くなったがピラフだ。……やっぱり冷凍食品をそのまま使っても意味はなかったか。
「もうちょい塩こしょうを加えておけば良かったな。やっぱりキャベツだけに水が出やすいか」
水を飛ばすために長く炒める必要もあるな。
「というか異常なほどに水分があるな、このキャベツ。やっぱり茹での方が合ってるかも」
ピラフがベタベタになってるのが証拠。普通に炒めればいい感じに炊きあがるが……
ぶつくさと文句を言いながらも完食し、茹でキャベツの方を見る。
蓋を開けるとコンソメのいい香りがした。……こっちが成功か?
スープ皿にすくい、一口飲んでみる。やはり水分が多いせいか味が薄く感じたが、一応コンソメの味がついていた。
キャベツの方はというと予想以上に柔らかく、少しスプーンでかき混ぜただけで崩れてしまう。
「うん、旨い。これはいける」
普通のキャベツなら何十分も煮込まないとここまではとろけないだろう。
「今度あいつが何かやらかしたら、三食これだけにしてやろう」
くく、と笑い……頭を抱えた。あいつの事は考えないようにしてたのに。
あえて頭から外していたのに気を緩めた瞬間に顔が浮かんでしまう。これはもう病気としか言いようがない。
「いや、むしろ意識するから余計に出てくるだけだな」
とはいえ、意識するなと言うほうが難しい。
「……俺もふざけた事を思うようになったよ……」
正直言って実装はうざったい。事あるごとにやれ服を買えだのいい飯食わせろだのとうるさい。そこら辺は普通の実装と同じだ。
だが。犯されて精液まみれのあいつを見た瞬間、思った事は……

こいつを失いたくない!

この一言だった。俺ってどれだけマゾなんだよ、と。
けれどその思いしかなかったのは事実だ。そうでなければ犯人に殺意を抱かないわけがない。
それも順也に言ったような『ただムカついたから』ではなく『腹の底から湧き出る怒り』で生まれた殺意。
本当に訳がわからない。どうして俺はこんな風になってしまったのだろうか。
「やっぱり、本気で狂い始めたのか?」

   *** デスゥ ***

順也に捜索を頼んだ日から二日が経った。当然ながらまだ連絡はない。が、そんな事を忘れるくらいに現在の俺は大ピンチだった。
「おいこら早く出て来い糞蟲!俺を殺す気か!」
ドンドンと必死に便所のドアを叩きつづける俺。……あろう事かこの糞蟲は便所で篭城しやがった。
どういう事かというと、例の一件以来、喧嘩後の実装の行動は『家を出る』から『何処かに引き篭る』に変わった。
場所はランダムで、風呂場、便所、押し入れなどなど。とにかく個室のような所に引き篭るようになった。
しかし。運命の女神はかなりの悪戯好きらしく、こうやって最悪のタイミングで便意が直撃したりする。
「けけけけ、そのまま漏らすがいいです。この私に逆らった罰ですぅ」
便所の中から実装の笑い声。この糞蟲、と便所のドアを壊そうとして一つ思い出した。
一旦便所から離れ、台所でスプーンを手に取ってからもう一度便所へ。ドアノブの中心にあるマイナスのネジ頭状の部分にスプーンの先を挿し、捻る。
「ほぁー!?」
捻ったと同時にノブを回し、ドアを開ける。向こう側では実装が驚愕の表情を浮かべていた。
「簡単に開くの忘れてた」
便所に滑り込みながら実装を便所の外へ放り出し、鍵を閉めて下を脱ぎ、便座に座ってあの擬音を付けたい位に勢いよく排出。
「はー、すっきりした。ほら便所が開いたぞ。思う存分引き篭れ」
便所から出て実装に声をかけるが、返事がない。
「どうしたんだよ、一体」
「……クソニンゲンの糞臭が酷い中で引き篭りたくないです」
何処に行ったかと思えば、居間のソファでふて腐れていた。
「お前の糞だって臭いだろ?」
誰だって臭いもんは臭い。それと実装の糞は規格外に臭い。俺は正論を言ったつもりだったが……
何を思ったのか実装が俺に近づいて来た。
「なんだよ、自分のは臭くないってか?」
「っこの、クソニンゲン!」
罵声と同時に脛に足刀を打ち込まれた。
「っだぁ!?何しやがる!」
「言っていい事と悪い事があるです!それがわからないですかこの大馬鹿ニンゲン!」
さすがに急所を打たれたら俺も飛び跳ねる。立ったまま膝を抱えるというアホな体制をとりながら抗議した。
「正論じゃねぇか!誰だって糞は臭ぇ!ましてやお前ら実装なんて一嗅ぎで食欲無くすくらいの……」
「といやー!」
もう一発足刀が入った。今度は反対側の足に。
「そういう事は乙女に話すものじゃないって私は言ってるです!」
「手前ぇよぉ、だったらいきなりキレて蹴り入れるのが乙女だってぇのか!?」
「私はニンゲンの失礼な言動を粛清しただけです!」
そしてまた喧嘩が始まった。

二度も喧嘩した日からさらに三日経ち、捜索を頼んでから五日目。
ようやく順也から報告があった。……ただし、まだ完全に捜索が終わってないらしいが。
『としあきさん、とんでもない事が判明しましたよ』
途中だと言うのに電話をかけて来た、という事はそれだけものすごい事態なのだろう。
『あ、その前に。すいません、としあきさんに頼まれた時に何処の公園か聞くの忘れてましたね。あの時のとしあきさんがすごく怖くって……』
「いや、俺も悪かった。あの時はかなり苛立ってたもんでな」
……ちなみに、公園の名前を覚えていなかったのはここだけの話だ。
『とりあえず全部の公園に撮影機材を置いて、あと近くの人に聞いてみたんすよ。そしたら、最近は実装達が強姦、もしくは未遂に遭う事件が多発してるらしいんですよ』
「ほう」
確かに、それは愛護派には大事だ。順也は話を続ける。
『それで、二日ばかし撮影して様子を見ていたら二丁目公園の方で動きがあったんです。飼いらしき実装が二匹の実装に引っ張られてたんですが、引っ張られてる方はぴくりとも動かなくて。
 それを見た後すぐに公園のほうに行ったらトイレの裏に精液まみれの飼い実装が捨ててあったんすよ』
「……うちの糞蟲と同じだ」
『他の公園じゃあそういう動きは無かったもんすから、今は二丁目だけに絞ってあります』
「そうか。あ、機材の代金は俺が立て替えるよ。無駄金使わせたし」
『機材については家の奴で十分足りましたんで大丈夫っす。それにとしあきさんに金を払わせるだなんてそんな事出来ませんよ』
「すまないな、順君」
電話を切り、腕を組んで唸った。一応犯人、というか犯マラは見つかったと。後は彼の完全な報告を待つのみ、か。

捜索を頼んでから九日目。部屋の掃除をしているとドアが叩かれた。
『ニンゲン。客が来たです』
先に出たらしく、実装の声がリンガルの合成音声に変換されている。
「誰だって言ってた?」
『確か、順也って言ってたです』
……おい。ちょっと待て?順也って順也だよな?
「……あー、もしかして顔出したか?」
『客の対応するなら顔を出せって言ったのはニンゲンです』
……いかん、話がややこしくなるかもしれん。
『追い返しとくですか?』
「入れって言っておけ……」
頭を抱えた。……彼にいろいろ説明を付け加えなくちゃあならないな。
掃除の手を止め、部屋から出る。ちょうど玄関から入ってきた順也と顔を合わせた。
「お久しぶりっす」
「あー、うん」
とりあえず順也を居間まで招いて、ソファに座らせた。
「いきなり来たもんだからびっくりしたよ。で、例の件は?」
「あの、その前に……さっきの娘って誰っすか?」
……来た。さて、どう説明したらいいものやら。そう考えていると。
『そこのニンゲンと一緒に住んでる実装です』
「こら糞蟲、話がややこしくなるから……」
当然というか何というか、横から言ってくれましたよこの糞蟲は。
「え、君ってあの実装?」
『あんな糞蟲共と一緒にするなです。私はあの不細工な奴らより愛されるようになった賢い実装ですぅ』
順也の目が点になっている。……そりゃそうだろうな。
「えっと、としあきさん?」
「俺に振るな。……どうもこいつは頭の中が他の奴らと違ってるらしい」
「いや、そうじゃなくて……」
言いたい事はわかる。何で普通の実装じゃなくて人化がここにいるかって話だろう?
「こいつが言った通りだ。自分の姿が嫌になって人化したらしい」
「あの、もしかして例の件の実装ってこの娘っすか?」
「……そうだよ」
嘘をついていた事は謝らなくちゃいけないな、と思い、答えたら。
「……急にあの糞蟲共がムカついてきました」
順也に真顔で返された。……えっと、どう反応しろと?
実装を部屋から追い出して、本当の話と嘘をついた事の謝罪をした後に順也からの報告を受ける。
「結論から言います。犯人は飼い実装でした」
「ふむ」
順也は持ってきたDVD……監視映像をまとめた物を何枚か出し、俺に渡した。
「奴らの行動した日の物だけを持ってきました。これに詳細が載ってます。
 それと、奴らは他実装までも襲っていた事がわかりました。その映像が入ってる物はレーベルに赤ペンで印を付けてあります」
順也の説明は続く。
犯人(マラ)の出てくる時間帯は大体午後〜夕方。犯行現場の二丁目公園は実装だらけで人が寄り付かないらしく、実装による無法地帯と化しているそうだ。
犯人はそこの野良達と手を組み、適当に公園に近づく実装を黙らせては犯す、という事を繰り返していた。
実装にしては知恵が回る方で、いつも犯す時は発見現場であるトイレの中でやっているらしい。
公衆とはいえ障害者兼用のトイレなので広いし防音性も申し訳程度だがある事はある。後は猿轡でも噛ませておけば声は封じれるだろう。
そして、順也が犯行現場に潜んで犯人を追跡したところ、一軒の家にたどり着いた。
しかもそこは近辺で有名な盲目愛護派の家だったらしく、話している順也もかなり嫌な顔をしていた。
「ある意味じゃあ俺らよりタチが悪いんすよ?糞の始末しない、自分の実装が他の飼い実装に暴力振っても何もしない、かといって自分の実装がやられるとギャーギャー言い出す、もう他の愛護派はうんざりしてました」
「まさに糞蟲、だな」
そりゃ最悪だ。赤さん以下の外道っぷりじゃないか。……赤さんに失礼だろうけど。
「しかしまあ、それならこっちも虐待のしがいがあるって事だな」
「だからとしあきさん、飼いはさすがに……」
「知ってるだろ?俺の性格を。『ルールなんて関係無ぇ、俺がルールだ』ってな。
 それに俺には奴らを虐待する正当な理由があるんだ。うまくすりゃ罪の重さも減るだろうよ」
話を聞いててさらに怒りが沸いた。誰も糞蟲共を粛清しないなら俺が粛清してやろうじゃないか。……まあ、その後でムショに入れられるかもしれないがな。その時はその時だ。
実際、他の被害者の飼い主だって犯人を殺してやりたいだろう。……別に俺が被害者達を代表して、ってわけじゃないが。
「それに、順君もさっき言ってただろう?本当の事を知った後に『糞蟲共がムカついた』って」
多分、順也の怒りは別のところから来る物だろうけど。
ともかく、世の中には迂闊に手を出しちゃいけない奴らがいるって事を教えてやらなきゃな。……もちろん、授業料は高いが。
「偽石を洗って待ってろよ、糞蟲共」


   *** あとがきデスゥ ***
一旦ここで区切ります。

かなり肩が赤いですが掲示板に感想を書いてくださった方へ。
暖かい言葉をありがとうございます。そして、こんなダメな上に厨臭いスクリプトでごめんなさい。
ただの妄想垂れ流し文だと思ってジト目で眺めていただければ……

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