タイトル:【虐・ホラー】 野良編
ファイル:コドク4.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3061 レス数:0
初投稿日時:2007/03/10-05:22:29修正日時:2007/03/10-05:22:29
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コドクな実装石 〜 町の実装石編 忘れられた世界 〜

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コドクが彷徨う町は冷たかった。

コドクの姿に目を向ける者もない。

コドクは人間を避けた。

優しいと思った手が、自分を意味もなくヒドイ事をしようとしたからだ。

人間の言葉がコドクの頭で繰り返される。

『お前はコドク…蟲毒…孤独』

コドクは、今になって、思い起こしたように自分の名前の意味を考える余裕と知能はあった。

実装石にとって、名前は自身の存在が評価され認められた事をを表す大切なもという本能があり、
それを持つ事は、彼らにとって知能の証であり、ただ存在しているのではないという事を実感させる。

それだけに知能を持つ親程、名前を付ける仔や順番を選び、その仔に与える名前に意味を与えようとする。
そんな親に育てられた仔は、名前に、その数バイトと言われる容量の小さな脳みそを回転させ意味を見いだそうとする。

コドクの脳に思い浮かんだコドクという単語は、人間語での”孤独”…ひとりぼっちを意味する悲しい言葉だけであった。

「ペチャァァァァ…ペッチューン…」
《ママ…ママ…どうしてワタシは孤独なのデチュ…》

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コドクは、相変わらず舌が回らず言葉が不自由で、身体の動作もぎこちないが、
時間が経つにつれて、蟲毒が眠っている間は、コドクとして不死である事を除いて実装石の肉体のままであった。

意思も何もかも、コドクの意識がコントロール出来ていた。
耳かき程と呼ばれる知能や意識が、むしろ蟲毒に喰われることなく順応して、暴走を押さえる事を身につけていた。


コドクの蟲毒は大人しく眠りについている。

蟲毒は、コドクと意識を共有する間借り人であり、
知能年齢の幼いコドクの意識に連動して、無邪気に惰眠を貪っている事でも満足できている。

蟲毒が眠っている間は、不自由なりにコドクはコドクだった。


その発動の条件は、コドク自身が正気を失う程の感情の高ぶりによって泣く事と、命の危機が重なったときである。



コドクは、早朝の町で、ネットの掛けられたゴミの山に群がるナカマ達を見つけると、
無邪気にその輪に加わった。

ほぼ殴り合い、奪い合いの中でも、コドクは喜んで輪に加わった。
彼らの真似をして、袋を歯で破り、中身を撒き散らし奪い合う。

「デスゥー!!デスデッスデギィィィィ」
「デズァァァァァ」
「テッスゥ!テスラァァァァテッピァァァァ…」
「テチュテッチュー♪テチャ!テチャァァァァァァァ!!」

輪に加わったコドクはその生死の掛かった乱闘に笑顔を振りまいた。

「ペリュゥゥゥゥン♪ペッチュー♪」《綱引き楽しいデチュゥン♪もっと引っ張るデチュー♪》


「ペチャーペチャー♪ペチャチャチャ〜ン♪」《これもこれも、これもあげるデッチュ〜ン♪》
新しい袋を破いては、楽しそうに中身を撒き散らし、ゴミにまみれる。


仲間達がゴミを貪り食う姿を真似して、一緒にゴミを喰う。
「ペチュ♪ペチュ♪ペリュリュンペッチュー…」《おいしいデチュ♪ママの味デチィ♪妹ちゃんもいっぱい食べて幸せデチューン…》



現実は、奪い合いによって仔も親も関係なく殴り合い、仔は潰されてすら居る。
罵声と悲鳴が入り乱れ、死体と体液が舞い散っている醜い食事風景だ。

餌場に、まだ右も左も判らない大きさの仔を連れてきて餌をとらせる事自体が非常識極まりない行為だが、
仔を道具としか考えていない親は、少しでも餌を多く拾おうと数を展開したがる。
また、そんな被害者の肉を期待して、たいした物がなくてもゴミ捨て場には沢山の実装石が群がる。


道具として使われ、殴打されたり潰された瀕死の仔を横に、コドクは昔を懐かしんだ。
初めて母親に連れられて、餌取りを習った時の光景を思い出していた。

殴られても、痛み自体を感じないコドクにはじゃれられているのと同じである。
それが、都合の良いコドクの解釈を妨げずに夢を見せている。

自分に痛みがないため、他人の痛みも伝わらない。


今も、すでに足を喰われ、上半身も足跡が付いて偽石も破損して居るであろう瀕死で呻く仔実装に、
暢気にゴミ屑を渡して、ニッコリと語りかけている。

「テッ…テチッ…ママ…タスケ…サムイ…タス…」
「ペチュペチュペチュリュー」《妹ちゃん、もっと食べて大きくなるデチュー、本当におねだりばかりで甘えん坊デッチュ》

コドクは…寂しいのが嫌で、仔実装らしい解釈によって現実逃避する事を選んでいた。

「テギッ!テギャァァァァ!テェェェェェッ…」
餌を渡された仔は、死に瀕しながらも本能か、渡された腐敗汁の付着したビニール片を食い物と思い口に含むが、
その瞬間に引っ張られ喰われていった。

その頃、コドクはそれに気付かないまま、夢中でその場を掘り進んで、大きなキャベツの芯を掘り起こす。
キョロキョロと見回して、さっきの瀕死の仔が居ない事に気が付くと、
近場にいる成体実装にポテポテと歩み寄ってそれを掲げてみせる。

「ペチィペチィペッチュペチィー」《ママーママー、ワタシこんなに大きいゴハン見つけたデッチュー♪》

コドクは、拾った物をとにかく身近にいる実装石に渡しまくって歩いた。
誰でもママと呼びかけ、物を渡し、渡している間は構って貰える事がうれしかった。

渡された方は、コドクの事など眼中にはない。
第一、会話の不自由なコドクの言葉など理解は出来ない。
ただ、差し出されれば当然の如く、獲物を奪い去り、奪われないように口に放り込んだり、服や袋に隠す。
そして再び、コドクの事など存在しないかのように何か無いか探し出す。

コドクに返事を返したり、よくやったと撫でてくれる者も居ない。

そして、疲れてきたり、めぼしい物がなくなると、ポツリポツリと数が減りだしていく。


「ペッ…ペチィ!?ペッ!!!ペペッ!ペチィィィィィン!」

やがて、コドクが気が付いたときには、周りに実装石の姿はない。


コドクは叫び声を上げながらパタパタと、去りゆく実装石達の中から一番近いと感じた家族の後ろ姿を追いかけた。

「ペチィィィィィィン…ペッチャァァァァァァァ」



パタパタペタペタと足音を鳴らし、全力で掛けるコドク…不自由な肉体は、僅かに左右に勝手に進路を歪め、
コドクは蛇行しながら、一向に距離の縮まらない家族を追い求める。

コドクの追った家族は、曲がりくねった細い路地へ路地へと入っていく。
2匹の仔を、それぞれ右手左手に手を繋ぎ、楽しそうに語りかけながら歩いている。
親も仔も薄汚れ、親は服は至る所が激しく破れ、顔を腫らしている。
仔はそれぞれ、繋いでいない手にゴミを詰めたビニール袋を抱えていた。

その姿に、記憶に残る家族との楽しい時間を見たコドクは、がむしゃらに追いかけた。
あまりにも、昔の自分たち家族の貧しくも幸せな姿に似ていた。

向こうは仔の歩調に合わせてゆったりと歩いている。
それを疲れを感じないままに全力で走り続けているが、不自由なコドクはほとんど追いつけない。

まっすぐ走っているつもりでも、時に壁に激突し、時に足をもつれさせながらも、コドクは見えるその姿を追い求めた。



やがて家族は、狭いビルの隙間の路地を抜けて、ビルに囲まれて陽も差さない裏口のスペースにたどり着いた。
裏口ではあるが、無計画に建てられたビル同士が隣接して機能していないために、滅多に掃除される事もなく放置されている。


そこに幾つかのみすぼらしいダンボールハウスが作られていた。
水を溜めるためか、割れたバケツ、豆腐のパック、卵のパック等のゴミが所々に並べてある。

筵…ではなく、新聞紙やビニール袋にくるまって震えている者もいる。

陽が差さないために寒いのだが、こうした場所なら人間から迫害や駆除を受ける確率は少ない。
逆に言えば、こうした場所にしか町の実装石が(少なくとも人間から)安全に体を休めて寝られる場所はない。


腹を満たした者達が、それぞれの家に戻っていく。


家の入り口で、それを覗いて待つ仔達が居る。
朝早く、親が彼らと共に餌取りに出たのだろう…帰ってくる者達を見ては、親を探し待っているようだった。
だが、戻ってきた者達の中に親が居ないと判ると、入り口でがっくりとうなだれた。

「テチィー…ママ遅いテチュ…お腹スキスキテッチュ…」
「テェェェェ…いつもママはツヤツヤお顔で帰ってくるテチュ…ワタチ達は味付のゴミしか舐めた事無いテチィ」

「きっと、今日は抱えられない程ゴハンがあるテチィ!!だから待つテチィ!ママを信じるテチ!」

だが、その希望が叶わない事を知っているのは仔実装達自身であった。
餌取りが下手なだけでなく、自分の事しか頭にない親の事を…。
あの親は、どんな理由がアレ、一仕事を終えた後の睡眠を取るために、誰よりも早く戻ってくる事は有るが、
決して他の親より遅れて帰ってくる事はない。

自分たちの親は、もう2度と帰ってくる事はないのだと。

そして、そんな親でも居る事で、この場所を…家を維持して居られて生きていける事を。

「オイシイものを食べたママのウンチダンゴでもいいからお腹に入れたいテチュ…」

「お前達…早く中に入るデチィ…そんなところで物欲しそうにしていると、ママが居ないのがバレルデッチュ!!」
「そうテチィ!はやくコッチにきてイッパイ居る蛆ちゃんや親指ちゃん達に、
 せめてワタチ達のウンチでもあげないと、かわいそうに飢えちゃうテチュ!!イッパイ泣いてるテチュ!!」

「テェェェェッ…もう、食べられるかたまりウンチなんて出ないテチィ…出たらワタチが食べたいテチュ…」
「ママ、蛆ちゃん達産みすぎテチュ…ワタチ達お世話に疲れたテチ、養うより食べちゃいたいテチュー…」

仔達は、すでに周りの家無しからベットリまとわりつく視線を受けながら、しずしずとダンボールの戸を閉める。


最後尾の、あの仔連れ家族も家にたどり着いた。

崩れかけたダンボールの”塊”の隙間から仔達がワラワラと溢れ出ると、一斉に親たちの周りを回り出す。

「ママー、ママー、今日も良い仔でお留守番できたテチュー!ナデナデ、ダッコして欲しいテチ!」

「ワーイ、今日もゴハン一杯レッチュ〜ン♪お姉たちも流石レチィ!」

「「レポポ♪レププ♪ゴハンレチィー♪レポポ♪レププ♪ゴハンレチィー♪
  レッポポ、今日はお米レチィ?レッププ、今日はサラダレチュ?
  それとも、お肉も混じってるレチュ〜?いろんなお味の染みたパンも捨てがたいレッチィ〜♪
  レポポ♪レププ♪ゴハンレチィー♪レポポ♪レププ♪ゴハンレチィー♪」」

「みんな落ち着くテッチュ…ママ達は疲れているテチィ…でもイイニオイするから踊っちゃうテッチュー♪」

仔達は、餌を拡げ準備する姉や母親達を中心に、仲良く輪を描いて踊り回る。
すでに傷の癒えた親たちは、それをニッコリした目で見つめている。

こうした無防備で幸せな光景を、この場所で見せつけられる事は、それだけで他者より生活水準の高さを誇れる。
そういう考えが親達の疲れを吹き飛ばす。

ようやく追いついたコドクは、その光景を見て、さらに鮮明に家族達と過ごした時を思い出す。
装飾されてはいるが、妹たちと僅かなゴミを仲良く分け合った昔を思い出させる光景だ。


「ペフィフィ♪ペヒュヒュ♪ペッチャーペフィフィ♪ペヒュヒュ♪ペリュ〜♪」

コドクは追いつくと、勝手に踊る仔達の輪に入り込んで、不器用な仔実装ダンスより、さらに醜い踊りを見せた。

最初は気が付かなかった踊る仔達も親や姉達も流石に、自分たちの家族ではないと気が付いて戸惑う。

「デチィ?!ママ…アレは何デチ?」

「ママ、何かヘンなヤツが混じっているテチ」

「レチャチャチャ!!ヘンなヤツレチ、ヘンなヤツレチ!何テッチ?すごいマヌケ顔レッチュー」

いつしか、ほとんどが踊りを止めているのにコドクは楽しそうに踊り続けていた。


「ペヒュヒュ♪…!ペリッ!?ペリャリャ?ペチャーン♪」《レププ♪…デチッ!?妹ちゃん達どうしたデチュ?もっと踊るデッチューン♪》

そう言って、踊りを止めた親指の頭を撫でる。


「レジャァァァァ!!ナニレチィ!ナレナレシイヤツレジャァァァァ!!」

歯を剥き出し、眉間に皺を寄せて怒りを表す親指…。

何故、妹が歯を剥き出して威嚇するか判らないコドクは「ペ…ペチュ…ペチュ…」と戸惑う。


家族…そう思った者達が、一様に睨み付ける冷たい視線がコドクを後退させる。

「ペリュ?!ペチャチャー?ペッチャーペチィ?」《デチュ?!みんなどうしたデチィ?ワタシはコドクデチュどうして怒るデチ?》


バキ!グチャ…


そんなコドクに、つかつかと詰め寄った親実装は、問答無用、手加減無しの拳をコドクに打ち付ける。

「ペピッ!ペリャ!ピロペッ!!」

コドクは側頭部を陥没させ、首を斜めにしたまま吹っ飛ばされ、3回地面に跳ねて身体を打ち付けた。
突っ伏したコドクは、やや遅れてパンツをムリュッと音をさせて膨らませた。

「ワタシの仔達を怯えさせるとは、フトドキセンバンデス!このマヌケオカチメンタイコ!
 どうせ、クズビンボーのマヌケのクセに、ワタシ達のゴハンを横取りしようと言うハラデス!?
 カワイイワタシの仔は、そんなマヌケヅラで、醜い踊りはしないデス!
 一発で見抜いたワタシは賢いデスゥ〜♪オマエはそこで、醜く死にやがれデス」

「「テェェェェッチャチャチャチャ〜♪」」「「レキャキャキャキャレピャピャピャピャ♪」」

見事に転がり回ったコドクの姿が滑稽なのか、母親が制裁を下した醜い仔を見下しているのか、仔達は一斉に笑い出す。

そうなるとお決まりなのは、実装石らしい弱者への多数での排斥…

我先にと、仔達は弱々しく震えるコドクの元に集まり、輪になって逃げ場を塞ぐように取り囲む。


コドクはガタガタと身体を震わせ顔を上げる。
その肉体は蟲毒の力で再生速度が速く、殴られて陥没した場所も、折れた首も通常より短時間で元通りになっていた。
そして、痛みも感じない。


だが、コドクは震え泣いた…それぞれの目から赤と緑の涙を流して泣き、取り囲む冷たい視線を見上げた。
その涙は薄く、体液に加えて心の痛みの透明な涙も混じった為だ。


「ペペッ…ペチュ?!」《な…何故デチュ?!》
母親と妹たちと信じた者達に受けた辱めが信じられない事…それが悲しく、心に痛かった。


「デチャチャチャ、ママ、この醜いブタは食べちゃっていいデッチュ?」

「ダメテチュー、コイツ、ヘンな声で鳴くめずらしいウンコ蟲テチュ♪飼うテチ飼うテチ」

「剥くレチィ!破るレチィ!抜くレチュ!毟るレチュ!殴るレチ!蹴るレチ!きっと楽しいレチュー♪もっと泣かすレチュー♪」

「デプププ…ちゃんとお前達のウンチで世話するなら飼ってもいいデス♪
 ペットまで飼えるなんて、ワタシ達はなーんてセレブなのデスゥ!?まぁ、生活に余裕が有りすぎて丁度良いデス♪
 やっぱり出来る実装石には何でも自然に転がってくるデスゥ〜ン♪
 これじゃ、すぐに金持ちなニンゲンに見つけられて飼われてしまうかもデスゥ〜ン♪心の準備がまだデスゥー♪」

親実装は、口に手を当てて拡声させ、盛んに近所に自分たちのレベルの高さを宣伝してみる。
奴隷を”飼う”と言うのは、それだけでどんな卑怯な形であれ、どんな弱い相手であれ、
戦って勝ち取ったという証であり、自分の強さを誇り、
飼う事で、奴隷を食わせられる生活力がある証にもなるからだ。


それを聞かされた、この路地裏にわびしく屯する家無し達は、耳をピクピクと動かすとノッソリと立ち上がった。
そして、無言でゾロゾロと、先程の親を失った仔達の家に集まり、そのダンボールの壁や戸を、小石を手に襲い出す。

何事にも影響されやすく、対抗意識を燃やす実装石そのままの行動である。
まず、家を手に入れてのし上がろうというのである。


コドクへの暴行が始まると、同時に、あの家でもガタガタという揺れと共に、幾つもの悲鳴が上がる。


執拗に蹴りつけ、殴られ、服は引っ張られ、髪も反対方向に引っ張られる。
コドクより小さい仔実装や親指達の暴行だけに、それは、徐々に身を毟られていく行為。
コドクに痛みはないが、視覚から感じる痛みや苦しみがコドクを責める。

「ベチャー!!ベチッベチュァ!!ベビッ!ビャァァァァァー」

「レピピピピピッ!!今、ブチッて音したレッチュー♪見て見て、くっちゃい髪の束レッチュー♪
 クッチャ!クッチャ!何日風呂に入っていないレチィ!レププ…貧しさの表れレチュー」

自分たちが風呂に入っていない、より酷い姿である事を棚上げして貶すのはお約束だ。


「レピャピャピャ…ウケルレチィ〜♪10円ハゲレチィ〜♪もっとつくってみすぼらしくしてやるレチ」

毟った毛を弄びはしゃぐ親指達…力がないだけに、数十本程度づつをむしり取っていく。
毟っては、その毛を目の前にちらつかせたり、判るように口にしながら撒き散らしたり、糞を掛けたりする。

コドクで無ければ、下手をすれば偽石の崩壊死にも至る行為…
ただ本能としての行為ではなく、そこを楽しむまでが、知能低い親指実装にまで染みこんだ生態である。


「ベビャァァァァァ!ベッチャベッチャー!!ベチュチューベッチャァァァァァ!!」

「ほら、お姉ちゃんがボコボコにしているうちに、ウンコ詰めるデヂィ!
 口も、耳の穴も、鼻にもクサイクサイにしてやるデッチュ〜♪」

「デッパパパパ…汚いドレイデチュ!!漏らしたクサクサウンコをウンチ穴に戻しておくデチュ!
 こんなにボロボロ漏らされたらクサくてたまらんデチィ!!!泣くデヂィ!這いつくばるデヂャァ!!」

「ジェベッ…ゲグッ…グパァ…ベチ…」


殴り、蹴り、踏みつけ満足感を味わい、糞を穴という穴に詰め込み征服欲を満たし、
コドクの漏らす糞を下着を破り取って、総排泄口に蹴り入れては残虐性を楽しむ。


「テエッ!テエッ!テアッ!!テチィー…しぶとい服テチュ!クソウンコ蟲のクセにナマイキな服を着ているテチュ!!」

「ペボッ…クペッ!ペァペァペァ!」

「何、押さえているテッチュ!ノータリンが服を着ているだけでもカンチガイテッチィー!!」

「デプププ…お前達何をしているデス、もっとおしとやかにひん剥いてやるのがセレブというものデス」

「テッ…ママー、こいつがナマイキにも抵抗するテチュー」

ボコッ…「ペポァッ!!!」

コドクがガードする腕ごと、親実装は腹をつま先で1撃蹴りつけると、一気に服に手を掛けてベリベリと剥ぐ。
小さい仔実装の力では容易に破れなかった服も、親実装の力では容易に裂ける。

「「テッチャァー!!さーすがママテッチュー!!ワタシもヤルテチィ、ヤルテチィ」」
仔達は、親の引きちぎった布地を裂いたり、残る服を小さくむしり取っていく。
一旦裂け目が出来れば、仔実装の力でも少しずつ切り取っていける。


「ペリャー…ペッペリャー…ペリャーン…」
むなしいコドクの鳴き声が、冷たい路地裏に木霊し続けた。


何故…只、自分は寂しいのがイヤなだけなのに…ママや妹ちゃんになって欲しかっただけなのに…
何故、こんなことをされるの?あんなに幸せそうだったのに、何故、こんな怖い事をするの?
どうして、周りの人たちはワタシを助けてくれないの?
どうして、どうして、こんな怖い事をしながらみんなでワタシを笑うの?



ボロ布の様に蹂躙されたコドクに飽きたのか、親子達は中断していた食事に戻った。

禿裸…傷は治っても、全身泥まみれのコドクは、排泄口に石を詰められ、ガニ股状態で突っ伏している。
その首にはその家族の所有物の証と言える、ゴミのビニールひもが、
不器用な実装石らしく無茶苦茶な結び目できつく縛ってあり、
その紐の反対側は家の傍に落ちている大きなコンクリートブロックの破片に縛ってあった。


そのコドクの目線の先には、あの襲われて崩れかけている家の扉から、
コドクに負けないぐらい嬲られた仔実装が3匹程、放り出されていた。


最後の仔を放り出した実装は、食いかけでまだ泣き叫ぶ親指実装を銜えたまま手に入れた建物に戻っていく。


「デチィィィィィィ!!妹チャァァァァン、蛆チャァァァァン!!その仔達に罪は無いデッチュゥゥゥゥ…食べないで!中に入れてデヂィィィ」
「テェェェェェェェン…服…服…髪…お家ぃ…とられちゃったテチィ…寒いお外でどうするテチ…ママァァァァ」
「イ…タイ…イタイテチュ…テェェェェッ…ち・ちぬテチ?ワタチちんじゃうテチィ?イヤテチィ…テェェェェン…テェェェェェン」

中に捕らわれた妹達を助けようと、壊れ掛けた戸を叩く者、
禿裸にされた事で悲観し、その姉にすがりついて震える小さい仔、
激しい損傷で身動きも取れずに喘ぎ続ける仔…。


その姿を見たコドクの記憶に蘇るのは、妹達の最後の姿。
あるいは、あの親達が公園の実装石を襲って繰り広げた惨殺劇の光景だろうか…。
それとも、コドクの、眠る蟲毒の誰かの記憶…それをされた側の視点での記憶であろうか…。


コドクは「ベッチャァァァァァ!!」と叫び出すと、身体に石の詰まった肉体でムクッと起きあがると、ヨボヨボと駆け出す。
石に結ばれていた紐は適当すぎたのか、簡単にハラリとほどけてしまう。
だが、首に食い込む紐はコドクの動くたびに痛々しく食い込む。

「ベチャァァァァァベッチャァァァァ…」《妹ちゃん!!ワタシが守るデチ、タスケルデチ》

「「テ〜チャチャチャチャ」」「「レヒャヒャヒャヒャヒャ〜」」
それを見た、あの家族の仔達が、ボロボロと食い物を口からこぼしながら笑う。
腹を抱え転げる親指や、突っ伏して地面を叩く仔も居る。
他人を見下すという事が、何よりの娯楽であり快感になるのだ。


一方、家を奪われた方の仔達は、禿裸にされた惨めな肉体を晒し、
陽が差さず寒いビルの裏路地で為す術無く抱き合って震えていた。

このまま、飢え死ぬか、凍え死ぬか、何者かに捕食されるか…それとも、他者に奴隷として飼われるか…
いずれにしても、さして抵抗する事もなく、そして、さして長くない時間で命を失う事は避けられないし、
それを本人達が誰より苦痛として感じているのだ。

「デチッ…みんな死んじゃったデチュ…」

「テェェェェン…ワタシの服…髪…こんな姿で寒いテチ…お外でなんて生きられないテチ
 お姉ちゃん、ワタシの服だけでも取り返してテチィ!!」

「お姉ちゃん…きっとワタチのイノチノイシ割れちゃってるテチ…蛆ちゃん達が笑って呼んでいるテチィ…あっちに逝きたいテチ…
 こんなワタシはきっとハッコウの美少女テチュ…でも、こんな時にきっとニンゲンが助けに来るテチ…おヤクソクテチュ♪まだテチ?」



「おまえらうるさいデス!ワタシの家の前で騒ぐなデス!!
 これでもくれてやるから食べたらドコにでも行くデス!このビンボーウンコデス!!」

「何がワタシの家デス!これはワタシの家デス!白黒決着付けてやるデス!!
 言っておくがワタシはリアルモンクデス!ちょーつよデス!家族もイッパイで、オマエをボコボコデス♪」

「デプププ…オマエの家族って部屋の奥でボコボコにされているアレデス?
 あまりの弱さと汚さに、ココに居たヤツかと思ってみんなで食べていたデッスゥ♪残りもワタシが喰ってしまうデス♪
 そんなに強いなら、みんなで最初にオマエ血祭りデス〜♪」

「デッチャァァァァァ!!ワタシの仔は喰ってもイイデス、けど、ワタシはタスケルデス!!
 でもその前に、みんな食べてしまうデスゥ…食べて今の事は水に流すデス…この蛆プリプリデス♪」

家を奪い取った実装達が早くも我が物顔で、3匹の姉妹に物を投げつけて中に戻る。


投げつけた物は、先程まで一緒にいた親指実装の、絶望に歪んで涙を流す顔…
残留電気で機能が停止するまで動く玩具のように「ジジャァァァァァ…」と叫びを上げる、もぎたて新鮮な生首だった。

ほんの数秒の出来事ではあるが、口を歪ませ叫び続ける…
その後、声を失ってもヒクヒクと口元が動き続けている生首に、哀れな姉妹は現実を直視させられる。

「デジャァァァ!!妹ちゃん!!」
「「テチャァァァ!!恨むなら無能なママやお姉ちゃん達テチ!!」」

3匹はよりいっそう密着するように抱き合って立ち上がり、生首を前に、漏らしながら後ずさりしていく。

「ベッチャーーーー!!ベッチューーー!」《妹ちゃん達!!助けに来たデチュ!!》

そこに近寄ってきたのが、腹に石を詰められ首を絞められた中実装になりかけた小太りのコドクである。


「「プッ…テププププ…」」
コドクが寄ってきての最初の3匹の反応である。


自分たちも大差ない状態とはいえ、コドクの姿はより滑稽で、”自分たちより”は格下に思えたのだ。
そして、自分の現状が如何に陰惨で絶望的でも、その自分より格下がいれば、貶さずにはいられない生き物なのだ。


コドクは、生命力を失ってもなおピクピクと蠕動だけしている親指の生首に寄っていき、そっと抱える。
「ベチュ…ベチァベチベッチィ」《妹ちゃん…死なないでデチュ…ワタシをコドクにしないでデチ》

その姿を大分離れてから見た3匹は、先程とはうって変わり後退を止め、顔を歪めて怒り出す。

「テチャ!!アイツ、ワタチ達の食べ物奪う気テチィィィ!!」

ついさっきまで、肉体の損傷で呻くだけだった仔が真っ先に気勢を上げる。

しかも、数秒前まで妹と認識していた物体を”食べ物”と呼んだのである。

限定的ではあるが、ある種の知能に関しては他の生物を超える知能を持った生物らしからぬ、
そして、それだけに実装石が実装石である生々しく、たくましい姿である。


「そうテチィ!ワタシ達のゴハンをあんなヤツに取られるなんておかしいテチュン!!」


コドクは親指の生首を抱え座り込んだまま、顔を横に向ける。
「ベチャッチャー、ベッチュー!ベッチューン!」《守るデチュー、みんな守るデチュ!ほら妹ちゃん達が来たデチュ!》

3匹の禿裸の仔が、剥かれて露わになった色白に茶色い斑の汚れが付く肉体をふるわせ駆けてくる。


そして、油断をしたコドクの顔面に、お約束のように短い足を振り上げた”ケンカキック”が炸裂する。
体格の近い仔の蹴りは、油断したコドクをキレイに吹き飛ばすのに十分だった。

そして、コドクの手放した親指の生首を3匹で我先にとひっしと掴み合い、
引きちぎるように奪い合い、千切った肉を頬張りながらコドクに近寄っていく。

グチャグチャ…
「このブタどうするテチュ?」

グジュグジュ…ゴクリ
「フテブテしいヤツテチュー…こんな浅ましいクズはウンチ奴隷でコキつかっていいテッチー!!」

ングング…ゴクン…ゲフッ
「冷静に考えるデチュ…ワタシは、こんな不幸さえなければ…カミサマがワタシの才能に嫉妬して不幸にしなかったら、
 きっと、あんなバカママじゃなく、ニンゲンに飼われてセレブちゃんだったハズの知能で考えるデチュ…
 ワタシ達はお家がなくなってしまったデチュ、これではこのウンコブタを飼う余裕なんてナイデチュ。
 こんなのを連れ歩いていたら、カンペキ足手まといどころか、ワタシ達がコイツの家族と間違われるデッチュ!
 ここはおいしく喰っちゃうのが賢いデッチュ♪」

3匹は、最初から、その答えが決まっていたかのように妹の肉を片手に頷きあう。

「流石、お姉ちゃまテチュ〜♪こんな小さな親指のお肉じゃ、ゼンゼンお腹ふくれないテチュー」

「やっぱりワタシ達は天才テチュ〜♪たっぷりお腹イッパイにして、それから考えるテチュン♪」

しかし、禿裸にされた仔実装が、無事に生き抜く事が不可能…
襲われた時点で嬲り捨てられたことすら奇跡である事などまったく考慮はされていない。


一方、顔面を梅干しのように潰されたコドクは、その損傷もすぐに癒えてしまい、
3匹の仔に囲まれ、震えるしかなかった。


あの家族も違う…この家族も違う…

どうして?ワタシはみんなの家族…
仲良くなって、一緒に楽しい時間を過ごして、お歌を歌ったり、踊りをしたり、花輪を作ってあげたり。

つらいときも一緒に過ごして、暑いときも水浴びをして、寒いときも一緒に抱き合って、ママに習ったように過ごして。
ワタシが守るから…一生懸命に守るから…

ただ、仲良くして欲しいのに…それだけなのに…どうして?



「ベチャァァァァァァァァァァ…」

コドクは目を剥き、天に向かってあらんばかりの声で叫んだ。


「「テチャチャチャチャチャ…」」

それを醜い断末魔として笑った仔らは、その手に、足に、頭に噛みついた。


「ンチンチ…なかなかの歯ごたえテチィ!」

「テチ…ハムハム…テチィィィィ…クズバカブタのクセにモチモチしていやがるテチュ〜♪」

「ギギギギギギ…モチモチというか、プニプニでのびやがるデチュ!!」

「ベヂィベヂャ!!ベジャジャジャ!!」

手を振り、足をバタつかせて抵抗するも、同じ実装石の仔に噛みつかれてはどうする事も出来ない。
それに、コドクにはまだ”躊躇い”があった。

だが、そのコドクを襲う3匹の目は、自分の優位を確信して楽しむ光をたたえてギラギラとしていた。

コドクを奴隷にしようとした家族のような…



「テエッ!テエッ!これは歯ごたえと言うより、ママが拾ってきた延びるゴミみたいテチィ!!」

「確かにこれは、あのゴミと同じテチ!ママがゴハンというから一晩噛んでたクサイアレテチュー」

「デチャチャ…クソムシはあのゴムとかいうゴミと同じデッチュー」

禿裸の仔達は、それが異常な事とは気が付かなかった。
食いちぎった肉が、そのウレタンボディに似合わない伸縮性で糸を引いて千切れない事に…

小さな肉片を噛み千切っても、噛み切れない部分がいくら銜えて引っ張っても延びて切れないのだ。

頭を引き、それでも千切れず、左右に頭を振り、さらに両手で肉片を掴んで体ごと後ずさりもした。
それでも油断をして手を放せばパチンと元に戻りそうな抵抗感があり、
仔実装達は手を放す事が出来ず、咀嚼に全力を注ぐ事も出来ず苦戦していた。


「テテテェッ!テテテェッ!これは歯ごたえとかオイシイとかのレベルじゃねーテチィ!!」

「テッチャァー!!ようは食えたモンじゃないって事テチャァァァァァ!!」

仔実装達は数分の格闘…何度も噛む場所を変えたり試行錯誤してイライラが頂点に達した。

中でも生き残った中で一番大きな仔は、怒りのあまり、普段は動かす事も出来ないだろう、
自分の頭より僅かに小さいコンクリートの塊を高々と抱え上げた。

天然の石よりは軽い軽量コンクリートとはいえ、非力な実装石が掲げるその様は、
まさに人間の家に侵入するために窓を割る姿である。

禿裸仔にとっては、この場でコレを喰わなければ当分食事にすらありつけない…
コレさえ喰っておけば、次に腹が減るまでは、隠れて生き延びられるという危機感が心の中にある。

「きっと、新鮮すぎるのがダメなんデチュ!!ブチ殺してしまえば、きっと喰い頃になるデチュー」

ピフピフと鼻息も荒く、目を剥いた仔実装は、容赦なくそれをコドクの頭に叩き付ける。


ムギョ…


それがコドクの断末魔なのか、肉が潰れた音なのかは判らない。
ただ、その一撃で、顔には角張った大きな石がめり込み、花が咲くように”エメラルド”の液が舞い散った。

その仔実装は、さらに、再び石を持ち上げる。
石のなくなった後のコドクの顔は、目や鼻や口の存在が判らない程潰れたミンチになっていたが、
仔実装は再度、同じ部位に上から石を振り落とした。

ペチョ…という水を叩くような音だけが響いて、コドクの体は動かなくなった。



コドクの肉体は、絶対に死なない…
多少の傷は、蟲毒が瞬時に再生してしまう。
いや、再生と言うより、肉体自身が蟲毒であり、それはコドクの体の容積の万倍以上の実装石や人間の肉そのものであり、
次々と湧き出る事で、コドクの形を保とうとしているのだ。


それが、コドクが死なない秘密であるが、コドクが正気の間は、基本的にそれが眠っている形。
つまりは攻撃性を失った状態でコントロールされている。

攻撃性がない蟲毒は、無意識の間に体を保とうとするが肉体の形を防御するのみで完璧ではない。
つまり、一撃で死に至る状態となれば、治す間もなくコドク自身は死ぬのである。
そして、それこそが、今のコドクの眠れる蟲毒の暴走スイッチとなる。
コドクの眠りが、蟲毒の目覚めである。

完全なる防御…それは、肉体の維持と共に、触れる物全てを排除する攻防一対にして一体の”カミサマの力”。



「「テチャチャチャ…これで食べ頃、食い放題テッチュ〜ン♪」」

「デ〜チャチャチャチャチャ〜!!クズが大人しく喰われないから悪いデッチュ!
 この天才で無敵なワタシに楯突いたのが運のツキデチ!デピャピャピャピャ♪デプププププ♪」

コドクの死を確認した仔実装達は、機嫌を直してコドクの肉体にむしゃぶりつき出す。

大きな仔は、石を投げつけ殺すという行為が余程楽しかったのか、
目的を果たして持ち上げる力も集中力も失われたが、それでも石を膝まで持ち上げては手を放して、
肉が潰れる音、様子を楽しんでいる。

その様子を、コドクを嬲った家族が、食事を終えて見守っていた。

「デチャチャチャチャ…醜いクズが醜いクズを喰っているデチィ…やっぱり醜いデッチュー」

「テチャ…でも、せっかくのウンコ奴隷が食べられているテチ…ワタシ達の持ち物テチュ!!」

「デスデス、それは許せないデス!でも、ママは賢くて寛大デス♪
 奴隷が死んだら、殺したクズ共を奴隷にすればよいデス〜♪奴隷が増えたデス」

「「テァ〜…流石ママテチ!」」
「お姉ちゃん…ワタチ、お馬さんしたいレチュ…」
「お姉チャン…ワタチはおっきい蛆ちゃんが欲しいテチュ!」

「デチャチャチャチャ〜♪ママのお許しは出ているデッチュ♪お姉ちゃんに任せるデッチュ〜ン♪」


その反対側、3匹の禿裸達の元の家では、家にいた蛆や仔の食事が終わったのか、激しい振動と悲鳴が響いていた。
小さな家の奪い合いである。

”リアルモンク”と自身を誇っていた実装石が、顔面を痣と瘤と陥没だらけにし、
体を喰われ、片手片足の状態で這って、最初に家の入り口から出てくる。

「デッ…デェェェ…タス、タス…」

「デギャァァァァァァ!!」「テチャァァァァァァ!!ママー、お腹と足が潰れちゃったテチュゥゥゥゥ」

そこに、やはり、乱闘で負傷した実装石が、頭に幾つもの歯形を付け、破れた自分の服と潰れた仔を抱えて、
大事な部分が緑に膨らんだパンツ1丁で走り出してきて、這っている自称モンク(武闘)実装を踏みつぶして走り去っていく。

「ムギャ!!デ…デズゥゥゥゥゥ…」

さらに、追い打ちを掛けるように、自らの髪を首に巻き付けられて締められた中実装が外に投げ出され、
その実装石の頭に激突する。

「デギョ!!パァッ!」
「テヒュゥゥゥ!!ヒギィヒギィ!テヒャァァァァ」

背中に足跡を付けた半死の実装石の唯一自由だった頭は脳天が激しく陥没し、両目がポンと飛び抜け、
声もなく飛び出た舌だけが痛みを表現し、無事な手と足が脳を失うまでの動きを繰り返し、パタパタとむなしく宙を掻いていた。

一方、投げられた中実装も、頭を半壊させながらも、首に食い込む自分の髪をほどこうと、
必死にガレガリと喉を掻き、顔を紫にしながら起きあがり、その動作のままフラフラと歩き出す。

「テヒィィィィィ…ヒューヒュー…」

自らの服ごとガリガリと髪を、喉を掻くが、どうにかなる気配はなく、
泡を吹き、涙を流し、声を発する事も出来ずにヒューヒューと僅かな呼吸音だけを鳴らして、
数歩歩いたところで、カクンと膝から崩れ落ちて、舌を出したまま失神した。



そして、その死体や負傷者を求めて、この小さな空間に住む実装石達が寄り集まって来る。
小さな騒ぎが、生活に娯楽の少ない野良達の祭りに拡大していく。


その中で中心となっているコドクに変化が起きる。


「テチッテチッ…お姉ちゃん、ゼンゼン食感が変わらないテチュー」

「デェェェ…どくデス!禿裸のクセに贅沢デス!この肉を食わせるデス」
すでにコドクに群がっているのは禿裸3匹だけではない。
家争いに落伍した者がウサ晴らしに食いついていた。

「ング…お前達トロイクズにはこうしてかみ切る事も出来な…い…デ?!デデデェェェ!?」

腕をかみ切って飲み込んだ実装石が、突然、跳ねるように直立すると、
腹を押さえて、口を開けたまま目を剥く。

「デッ…デッ…デッ…」

呻き声が定期的に漏れ、汗がブワッと噴き出し、鼻水や涎がタラリとスジを描く。

その様子に、一瞬、周囲の注目が集まる。

すると、その腹部がみるみる間にプクゥ…と膨らみ出すと、その実装石はガチガチと歯を鳴らして震え出す。

「ハラ…ハラ…ワタシのハラが…ややややや焼けるようデスゥゥゥゥゥ!!」

その実装石は、服をほつれさせる程パツンパツンに膨らんだ腹を叩いたり掻いたりして騒ぎ出す。

グキ!

右往左往しようとしても、そのハラによって足は自由を奪われ、それどころか、重みに音を立てて折れ曲がって崩れた。
だが、その実装石は、足が折れた事の痛みは感じていないのか「ハラ、ハラ」と呻いて掻き続けている。

「デピャピャピャピャ!!そんなバカウンコ蟲の肉をがっつくからハラを壊したデスゥ!
 ワタシ達はセレブだから、そんなものは食べないデッスゥ〜ン♪」
端で見ていた、あの家族の親実装がそれを笑う。


だが、異変はそれだけではなかった。


無心で噛みついている禿裸仔の1匹が変異し始める。
足の先、腕の先、体の末端が”内側”に飲み込まれている。

「テチテチ…ウマウマ…ジュルジュルウマーテッチィ」
目の焦点が合っていないまま、ひたすら口がコドクの千切れない肉を噛んでいる。
だが、その仔の末端は、ドンドンと体の内側内側へと引き込まれている。

この仔実装は、生きたまま、裏返しに自分の体を”吸われて”いるのだ。
自分の体が裏返され、溶かされ吸い取られているのを、自分が食べていると錯覚しているのだ。


蟲毒が攻撃を開始したのだ。
一旦死んだコドクを蘇生するために、目を覚まし、命を吸い取りだしたのだ。


別の禿裸仔は、そのみるみる引き込まれていく仔に気が付き、伏せの姿勢で食べていた体勢から体を起こす。

「テチャ!!妹ちゃん!?」

確かに上半身は、起きあがったが、その仔は頭が”そのまま”だった。

ネトっと糸を引くように、起きた体と、床に付いた頭の間に皮膚や肉が糸を引くように伸びている。
そして、それとは別に、エメラルドに輝くゲルも糸を引いていた。

それに引かれた顔が動いて自分の正座する体を眺める。

「テ?これは誰テチュ?ハダカテチュー!マヌケで醜いテチュ〜ちっちゃいクセにブクブクテチュ♪顔が見てやりたいテチュー♪
 テァッ!そんな事より妹ちゃんテチュ!妹ちゃぁぁぁぁぁんカラダがヘンテチィ!!
 テチュ!?起きられないテチ!?ワタチのカラダドコテチ?」

体が無い事に気が付いた仔だが、視界に入っている身体がソレとは気が付かない。

体は体で、仔が体を探そうとする動作を懸命にパントマイムのように行っている。



夢中でコドクの顔面に石を落としている仔には、突然、石を持ち上げる感触が伝わらなくなる。
コドクの潰れた頭部が、いつしか元通りに膨らみ、石が、仔実装の持てる高さより上がってしまったのだ。

「デチッ!?デッ?デッ?デッ?」

さらに、仔実装の目線の高さまで持ち上がるコンクリート片…
仔実装は、驚いて後ずさりしようとして気が付いた。

痛みがないのに、いつしか自分の足が溶けて居る事に…。
そこは、潰した頭部から飛び散ったコドクの体液だった。

さらに、石がドンドンと持ち上がる。
コドクの鼻や口からエメラルドの液が触手のように延びて持ち上げているのだ。


「デデデデェ、デッチャァァァァァァァァ!!!!!!」


顔を歪ませたまま凍らせ、プシューと水状の糞が小便のように噴き出す恐怖の最高潮と共に、
仔実装の頭上から、コンクリート片が自由落下で脳天から押しつぶす。

「ペポァ」


頭が胴体に潜り込み、石と共に体を裂いていく。
石を中心に肉が真上から見れば花を咲かすように裂け散っていた。


一方、膨らむ腹を抱えていた実装石は、動けないのを良い事に、
早くも他の実装石が、苛めたり喰いに入っていたが、当人は、その痛みを感じていないように腹を掻いていた。

すでに皮膚は裂け、肉は抉れ、掻いている腕もボロボロであるが、体液は出ていない。

「焼けるデスゥー!!焼けるデスゥー!!」

腹だけではなく、首から下がすでに風船人形のようになっていたが、さらにふくらみ続けている。

その腹に食らいついていた実装石は、膨らむ腹に顔を挟まれていた。

「ブベッ!!顔が動かないデス…息苦しいデッ…イタイイタイ!放すデス!!」

だが、挟まれた顔は、さらに膨らむ腹に飲まれるように埋まっていく。
体は、懸命にその腹を叩いて抵抗を試みるが、間もなく肉を掴んだまま、ヒクッと体が痙攣すると、
グシャ…という鈍い音と共に、頭の埋まっていた肉の狭間から体液が飛沫を上げた。
解放された胴体だけが、その肉壁に寄り添ってヒクヒクしながら崩れ落ちる。


これだけの異変が起こって初めて、見物していた実装石達は、尋常ならざる事態に気が付いた。

「「デギャァァァァァァ!!バケモノデスゥー!」」

その叫びと共に、成体、仔、十数匹が一様にパニックを起こしてデタラメに駆け回り出す。


「テチャァァァァ!!タイヘンテチィ!ワタチも逃げるテチィ!」
頭だけの仔も、懸命に逃げようとする。
しかし、動くのは、視界に写る誰とも判らぬ体だけ…それが、ムクッと立ち上がり後ろを向いて走り出す。
仔実装がそうしようとしているためだ。
そして、その離れていく後ろ姿を見ている仔は、その体が頭が無いまま動いている事に気が付く。

「テッ???」
そう疑問を抱いた瞬間、体も立ち止まりくるりと向き直る。

そして、無くなった頭に手を当てて探す動作をする。

そう、仔実装がやろうとしているからだ。

そして、理解した。

体は、その瞬間パタンと糸が切れた人形の様に倒れ、仔実装が大口を開け、舌を飛び出させ、
「ンァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」と超音波域のカン高い音を発して”壊れた”。

それが、自分の体である事を無意識に理解してしまったのだ。



パンパンに膨らんだ実装石は、やがて、限界を超え、パン!!と音を上げて破裂した。
肉片や内臓も砕けて八方に飛び散ったが、体液は無かった。
代わりに、エメラルドのゲルが小さな滴として逃げまどう実装石達に降り注いだ。

破裂した実装石は、頭だけが破裂した後も生きていて、そこだけは体液を吹き、
「デギャァァァァァァ!!」と叫び声を発しながら、破裂した勢いで上に飛ばされていく。

やや軌道が、斜めに変化して、ビルの二階の壁面にブチ当たり、腐ったトマトの様に破裂してシミとなった。


逃げまどう者達は、何とかバケモノから逃れようと隠れる場所を求める。
そう言った者と、訳も分からず走り回る者が激しくぶつかり合い、お互いに負傷する。
負傷しても逃げようとし、さらに別の者に踏みつぶされる。

あるいは、蛆や仔を、我が子だろうと他人の仔だろうとお構いなしに踏みつぶし、跳ね飛ばし、
ある者は、自分より小さい者を闇雲に放り投げて時間稼ぎをしようとする。

「テチャァァァ…ママァァァァママァァァ、ドコテチィ!足折れちゃったテチィ!たぶん折れてるからとってもイタイテチー!!」
あの家族も、訳も分からず逃げ出す仔は跳ね飛ばされ取り残され泣き叫んでいる。

「レチャァァァァ〜…ペパァ!」
親指は、邪魔するなとばかりに姉の仔実装に摘み上げられ、放り捨てられ脳天から地面に当たり、
その潰れた頭での逆立ちの姿勢のままピクピクと蠢いている。


「ママァー!!置いていかないでテチャァァァ…」
その仔は、親を見失い、関係ない実装石のスカートを母親と思って掴み引っ張ると、
逃げようとする実装石の動きと、掴んだ仔実装の動きでビリビリと服が破れてしまう。

「デ!デスゥ!?このクソガキャ!!ワタシの服に何て事しやがるデス!!!」

怒り狂った実装石は、逃げているのも忘れ、その仔実装の胸ぐらを掴み、地面に叩き付けると、
馬乗りになって両手で殴り出す。

「テチャ!!ママじゃないテチ!?何でテチィ?ブボォ!ゲバァ!タスケッ!パァ!ジャベ!!」


また、とにかく近くのブロックの隙間に逃げ込もうとした親指と仔実装は、隙間に入ろうと手を繋いで身を低くした。
「妹ちゃん!!ここデチ、ここならワタシたちなら入れるデッチュ!安全デチィ」
「お姉ちゃん、ママが、ママがアッチにいってしまったレチュゥゥゥゥ…怖いレチィ」

その時、明らかにその隙間には絶対入らない実装石が、そこに飛び込もうとダイブを敢行した。

「そこはワタシが入るデスゥ〜ン!!」

声と影に気が付いた2匹が見た光景は、眼前に自分の倍以上の物体が宙に舞っている姿だった。

「ホゲベブラァ!!」「レピャ」「デズゥゥゥゥゥン♪」

グシャ…

大きめの仔実装と親指は、一瞬にして実装石の腹の下に潰され、
そのまま、ズザァァァァァっと実装石は潰した体液で滑空し、ブロックの隙間に入れず顔面を強打する。

潰れてしまった顔を押さえてガクガクとうずくまる実装石の腹にはベットリと磨りつぶした肉片と体液が付き、
30cm程の滑空のスジが赤と緑に彩られている。

「デギャ…こんなハズではないデス…何で滑ったデス!なんで華麗に入れないデス!?
 デェェェ目が見えないデスゥゥゥ…歯が折れたデスゥ…というか、目はこんな場所にはないハズデス」

「デチュ…デチュ…妹ちゃん?妹ちゃぁぁぁぁぁん!」

大きめの仔は親指と繋いでいた手を見るが、そこには潰れて引きちぎれた自分の肘しかない。
それどころか、顔を残しては斜めに半身がキレイに潰されて地面にすりつけられていた。

「デチャデチィィィィィィィ…ママ、ママ、ママ、ママァ…」

無事な頭は、血の気が引き真っ青になる。
ガチガチと歯を鳴らし、唯一残ったまともな右手が、潰れたからだと潰れ残った体を探る。

「イ…イノチの石が壊れちゃったデチュ…」

まだ、コドクが殆ど何もしていないのに、パニックだけで多くの命が失われていた。



コドクは、そんなパニックの中でムックリと体を起こし立ち上がる。
先程までの潰された頭、暴行され、噛みつかれた体の傷はない。
首に巻かれた紐も、ドロドロと溶け、首に吸い込まれるように消え首が元に戻る。
石が詰められ、不格好な下半身も、徐々にへこんでいく…小石すら腹の中で溶かされ吸収されているのだ。
そして、他者の命を啜って、抜かれた髪がジワジワと生えだし、
服すらも、まるで皮膚が再生するように皮膚の下から浮き上がってきた。


コドクの再生能力は、そこまで”凶悪”であった。

外見もだが、死んだコドクの魂…精神までもつなぎ止め、入れ物に戻したのだ。
蟲毒自身が長く、この世界に留まりたいための器として、食ったもので形の入れ物と、心の入れ物を作り直すのだ。


そのコドクの左足のつま先には、裏返しに体の中から喰われている仔実装が、ほぼ自分の頭だけになりながらも、
「ジュル…ジュル…ウマイテチュ〜〜ン♪モット、モット、オナカイッパイニスルテッチュー…」
とコドクの足をしゃぶりつつ、コドクの体に吸われている自分の肉を舌で味わっていた。

それも、徐々に口の中から頭も裏返しになっていき、コドクの体にチュルっと吸われる。


ソレを見て、さらに、パニックを起こす一帯の様子を見て、
コドクは涙を流した…心の純粋な涙でも、痛みの血涙でもなく、透き通ったエメラルドの涙を…。

「ベヂャァァァァァァァァァァァァァァン」


すると、騒がしい実装石達からさらにカン高い絶叫の合唱が起きる。

ジュジュジュジュ…

あの破裂した実装石の振りまいたエメラルド色の蟲毒の滴が硫酸のように、
実装石、いや、それが付着したコンクリート等も、煙を上げながら”焼き溶かしている”のだ。

「「デジャァァァァァジャビャァァァァァァ…」」

「「テチャァァァァァァ!!」」

数匹が走り回り、あるいは、もがくように天を仰いで動きを止める。
髪や肌が焼け落ちていき、徐々に徐々に生きたまま溶かされていく。

その様子に、理解の範疇を超えた実装石達は、
もはやパニックで逃げ回っていた者達も、僅かな隙間を見つけては潜り込もうとしていた者達も、
その動きを止め、ビチャビチャビチャと一様に糞を漏らしながら両手を胸元で合わせて、
あるいは、額の辺りで合わせて祈りだした。
両目からは血涙を、鼻、口からも止めどなく液を流していた。

「デスデスデスデッスァァァァァァァァン…」(カミサマ、どうして優れたワタシがこんな目に遭うデスゥ?)


しかし、その実装石の珍しい祈りの姿も、ほんの一瞬といえる間だけであった。


いざ、足下に得体の知れないエメラルドの液体がジワジワとにじり寄ってくると、
再び、ビデオの一時停止を解除したようにあわただしく動き出す。

自分の走っている方向も定かではないままに動いている者は、ソレに足を取られ、飲まれ始めた。

隠れる場所のない者は可能な限りの力でダンボールの戸を叩いている。
実装石の数に対して、家の数も家の中の広さも十分ではない。
早い者勝ちで、家の限界まで入り込んでいた。

中の者は、必死に体で戸を押さえたり、入り込もうとする者を殴ったり蹴ったりしている。
家に入りきれず、尻だけが家の外に出て、それを引きずり出しあっている光景もある。

あのとても入れない隙間めがけて飛び込んだ実装石も、隙間に潰れた頭を無理矢理押し込んで、
まだ、奥に入らなければ…身体も隠さなければともがいていた。


あの家族も、今は母親と両手に手を繋いだ仔が2匹だけとなり、しかも、自分の持ち物だった家に、
先に別の家族が逃げ込んで戸を塞いでいた。

「デッスゥ!!キサマらここはワタシの家デス!!何をしていやがるデッス!!どきやがれデスゥー!!」

「テチャァァァァァン!来る来るゥ!ドロドロ来ちゃうテチュゥゥゥゥゥ!」

「デェェェェェェチュ!コラァ、オマエもママを手伝ってこの小汚いケツを私達の家から引っ張り出すデチュ!!」


「デスゥゥゥ!イヤデス、イヤデス、ワタシは助かってオマエらは野垂れ死にやがれデスゥー
 オマエらが死ねばこのお家はワタシの物にもなってイッセキニチョウってヤツデッスン!!」

下半身だけがボロ屋から出ている実装石も、
何の根拠か、建物の中なら大丈夫というのか、懸命に家族に引き出されるのに抵抗する。
抵抗と言っても、中のスシ詰めの誰かや家の外壁にしがみつき、足をバタバタ動かすだけである。

また、先に家の中に潜り込んだ実装石も、戸が閉まっていないと安心できないのか、
その抵抗する実装石を足蹴にして、家の中から追い出しに掛かっている。

「デッズゥゥゥゥ!!定員オーバーデスゥ!」

「デズゥ!そんならオマエが出て行くデス!!」

入り口実装が器用に、その蹴り足をキャッチしてしがみつくと、家の中の実装石が今度は壁に引っかかりを求めて暴れ出す。


「判ったテチュ!!クサイケツテチュー、テキューテキュー…重いテチュ!ナニテチュ、このデカケツは…
 おパンツ緑でクサクサテチィ、足にウンチ付いているテチュー、ウンチ1つ満足に拭けないテチュ?
 キタナいけど、こんなヤツは噛んじゃうテチュ!このウンコブタ!!」

小さな仔は、周りを気にしながら言われたとおり足を引っ張り出す。
だが、それは、入り口実装を懸命に母親と引っ張る姉の足だった。

「デヂャァァァァァ!!オマエはナニをやっているデチュ!!ワザとデチュ!!姉を愚弄したデッチィ!
 ウンコをキレイに拭けないのはオマエの方デチー!!」

感情のままに、足を後ろに振る中仔実装、その鈍い動作を避けられずに蹴り飛ばされる仔実装。

「テチャ!グボァ!…テッ、テリャァァァァァァ!テ・テ・テ・テ・テ・テェェェェ」

腹に直撃を受け、嘔吐しながらはじき飛ばされた仔実装は、ベチャっとエメラルドの液体の中に背中を打ち付ける。
直後にジュジュ!と煙が上がり「テッチュァー!」という悲鳴と共に跳ね起きた仔実装の後ろ髪が焼け溶けて落ちる。

仔実装の背中は、服も頭巾も下着も接した背中の部分だけがキレイに溶け、剥き出しの肌は真っ赤になって、
その肌からも煙が上がっている。
「ジチャ!ジチャ!テチュワチャチャチャ〜」

仔実装は、今度は立ったまま、足をバタバタさせ、ダンスを踊る。
靴も、足の裏も、どれだけ努力をしても、何処に歩を進めても、徐々に溶けていき、
少しでも、その痛みから逃れようと懸命に死のダンスを踊り続ける。

ソレを見た、家族は、もはや猶予がないと、入り口にすがる実装石に噛みつき始めている。

家の中の実装石達も、なんとか戸を閉めようと、その実装石を協力して殴りつけ、
その実装石は、頭をディンプルのあるゴルフボールの様にベコベコになっていた。

「デジャァァァァァ!!ヘンなのがソコまで来ているデチュ」

「もうちょっとデス!!あと一息で引きずり出せるデス!」

「しぶといデス!戸が締められないデス!」

その実装石は、もはや死体であった。
だが、最後の抵抗か、家の戸にしがみついたまま死んでいた。
それを家族は無理矢理引きはがした。

バリバリバリ…グシャ!!

戸は、その折しろから壁の部分まで裂けて大きく破れた。

グシャ!!「「デッギャァァァァァァァァ…」」


その家は、いつの頃からだろう、このビルの裏口に捨てられたゴミだった。
その最下段のダンボールをくり抜き、中身を引き出して利用した物だった。

ココにある家の殆どはそうして作られていた。


この家の上には、風雨で溶けた書類や雑誌の塊が乗っていたが、奇跡的なバランスで、
後から中身を抜いても、ダンボールだけの強度で崩れずにいたのだ。

その支えの一カ所が弱くなったために、一気にダンボールが崩れ落ちたのだ。


「デ!!!ワ・ワタシのお家がぁ…」

崩れ去った家の中にいた実装石数匹分の体液が流れ出てきており、家族の元には上半身を挟まれた死体だけが残った。

それどころの状況ではないのに、目の前で自分に関わる突発的な事が起きると目が奪われ、
注意力や思考まで奪われるのが実装石である。

つい数分前まであった幸せな時間を奪われたショックで、親仔は、ヒシッと抱き合って泣き崩れた。

「デェェェェェェェェン、ワタシのお家ィィィィィィィ…無くなったデチ」
「デェェェェェェェン、なんにも無くなってしまったデズゥゥゥゥ…このバカ共のせいでなくなったデズゥ」


その様子を蟲毒はじっと待っていた。
蛇が鎌首を上げるように、液面が持ち上がり、今にも襲いかからんとする状態で、親仔が気が付くまで待った。


それに気が付いた親が、「デェェェッ!!」と呻く、そして、震えながら強く我が子を抱きしめる。


その動作に、仔も鎌首を持ち上げるエメラルドの液に気が付く。

「デチャ!!ママ!守ってくれるデチュ?…あれ怖いデッ…デデ!?」

そして、親はその抱きしめた仔を、ブンと全身を使って後ろに振り投げる。

「身代わりヤルからワタシはタスケルデスゥー!!」

「デジャァー!!このクソババアァァァァァァァァ」


液面に激突し、飲まれる仔…

だが、蟲毒は、仔を溶かさずに、鎌首が親実装を頭から襲い飲み込む。

「ジュバァ!!何故デスゥ!?こんな事があって良いはずがなっ、デギャァァァァァァ!!アツイデスー」

溶かされなかった仔は、息をするために立ち上がり、自分が無事なのと、自分を捨て駒にした親の姿に指を差して笑い出す。

「デチャチャチャチャ〜♪そんな浅ましい事を考えているからデッチュ♪」


だが、腰に手を当てて大笑いする仔も、すでに両足が膝まで溶けて止まっている。

仔はキョロキョロと周りを見渡すと、自分が助かった確信にピスゥーと強い鼻息を吐くと、
その場を走って逃げようとする。

ベチャ…

1歩も動けずにコケたところで、仔実装は、自身の下半身の状態を確認させられた。

「デチュ…デ…デ…ワタシの足はドコデチィ?!」

仔実装が自分の体を認識したのを見計らって、蟲毒は痛みを与え始める。

「デジャ!!アツイ!アツイデチュ!ママァー、遊んでないでワタシをタスケテデチィー…」



家や隙間に隠れた者達も安全などではない。


ある家は、完全に外周を液に覆われ、外気を遮断され、
今まさに空気がなくなるという恐怖に飛び出してくるのを待っている。

ブチャ!

こらえきれなかったのか、仔実装が戸を開け飛び出すが、
エメラルドのゲルシートに、ムニュ〜ンとその焦った形相を押しつけ、その姿勢のまま、
まるで蠅取り紙に付いた蠅の様に捕らえられている。

その向こうでは、閉じこめられた親仔が、その様子を怯えながら眺めている。
中の酸素は大分少なくなっているのだろう、
紫の顔で動かない蛆が居たり、喉を掻きむしる仔達が居て、
一様に怯えた表情のままに親は我が仔を抱き留めて、捕まった仔の姿を眺めていたが、
やがてパタリと動きを止めると、中にコドクが進入した。


別の家では、家そのものを徐々に溶かし、怯える実装石達の悲鳴を楽しんだ。
実装石の持つあらゆる力が無力である事を見せつけ、突きつけ、そして食べたのだ。



『カァァァァァ…カァァァァァ…カ!ガガァガガァァァ!!』

それだけではなく、騒ぎを聞きつけ実装石を餌にしようと現れたカラス達すらも、
地面に足をつけた物は蟲毒の餌食となった。


いや、実装石を何匹かわざと生かし、そこに来たカラスさえも罠に掛けたのだ。

2匹ほどのカラスが巻き添えを食う形となったが、それでも鳥類でしかも猛禽随一の知能種であるカラスは、
すぐにその異変に気が付いて近寄るのを避け『カァー!カァー!』と仲間に警戒音を送った。
カラスは僅か2匹の被害で危険を認識できたといえる。


コドクの蟲毒が食事を終えると、辺りに舞った蟲毒は、
きれいに、まるで逆再生のようにコドクの体に収まっていった。


そして、また、元通りの汚れ1つついていないコドクの形に戻った。

蟲毒が食事をした事によって、コドクは何から何まで元に戻ったのだ。

その代償は、この忘れられた路地裏のゴミとゴミに等しい数十匹の実装石達と野生の2匹のカラスの命である。


コドクは意識が戻ると、周りをキョロキョロと見回して泣き出した。


罪の意識ではない。


ただ、何もなくなってしまったのが悲しかった。
意識がなくなる前まであった物が”また”なにもかも無くなって、
周りに話し掛ける物すら無くなっているのがとても寂しく、悲しく、辛いから泣いた。

カタン…

ゴミが崩れ、プラスチックの小さな箱が落ちてくると、ガガガ…と音を立てた。

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ガガ…ザザー…

双葉市で起きた謎の公園騒動の続報です…

公園内で発見された”数点”の人骨と思われる骨は、本日、改めて人骨の可能性が高いと発表されました。
発見された人骨と思われる骨は、腐敗による損傷が余りに激しすぎ鑑定が難航しておりますが、
警察では、○日より消息がわからない清掃業職員3名の可能性が高いと見て引き続き捜査を行っております。

△後勝広さん、○門自紋さん、□島龍平さんの3名は、○日深夜に市の要請で、
公園の清掃に出向いた事が確認されておりますが、作業車両は公園傍でエンジンが掛かったまま発見されて居りました。

発見前日は、深夜に異臭騒ぎがあり、実装石の姿がまったくなく、作業車に使用の形跡が無い事等と共に、
発見された骨が、強い薬品で処理された為に腐敗した可能性が高い状況から、
警察は3人が実装石駆除に絡む何らかのトラブルに巻き込まれた可能性も否定できないとしており、
近く、過激な活動で知られる(自称)小動物保護団体グリーンデース、実装石虐待派協会GJシェパード両者に、
任意で事情を聞くとしております。

グリーンデースとGJシェパードは、ともに実装石駆除をめぐり、関係者の妨害、拉致や暴行の前科があり、
事件に薬品が用いられた事もあることから、公安調査庁も、両団体の捜査に乗り出すものと思われます。

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コドクは、偶然残って、落下の衝撃でスイッチの入ったラジオを前に、
その言葉を聴きながら「ペチャ♪ペチュ♪」と言葉を交わした。

しばらくして、音が鳴らなくなると、再び、肩を落として入り組んだ路地を孤独に彷徨いだした。

自然と、あった辛い事は忘れ、不自然に満腹感を覚えた身体で、
コドクは、「ペチュン…ペチィ…」とグズリながら、また仲間の姿を求めてヨタヨタと歩き出したのだ。

コドクが、一人でいる寂しさを紛らわそうと何かに頼る限り、
コドクには、何物も手元には残らないのだ。

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コドクな実装石…つづく

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