タイトル:【虐】 実装エステサロン
ファイル:実装エステ.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:5527 レス数:0
初投稿日時:2007/03/05-03:45:22修正日時:2007/03/05-03:45:22
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 実装エステサロン あるいは、あるカップルの……




よく晴れた日曜の午後。
由香里は暗い気持ちで昼食を摂っていた。
昨日、由香里は結婚の約束までしていた恋人と別れた。
恋人の名前は俊明。
俊明と由香里の交際は今年で二年になる。
先日プロポーズされた由香里は、涙を浮かべて喜んだ。
来週は結婚式場を見に行こうね。
そんな約束もしていたのに。
由香里は今も俊明を愛していたが、どうしても受け入れられない部分が見つかったのだ。
そして、それが別れの原因となった。

特に目当ての番組があるわけではなく、なんとなく点けたテレビには情報番組が映っていた。
女性レポーターが話題の店を紹介するという、よくある内容のものだ。
テレビ画面に映った女性レポーターが、高級感のある建物の前に立つと、笑顔で話し始める。
「今日は予約で一杯、大人気のエステに来ています!」
エステか……。
一度行って見たいな。
都心の賃貸マンションに住みながらOLをする由香里の給料は、生活費と少しの貯金でほとんど無くなってしまう。
とてもエステに通うような余裕は無かった。

「このエステ、普通のお店とは違うんですね。どこが違うかというと……」
レポーターの声に合わせ、画面が切り替わると、そこには一匹の実装石が映っていた。
「そう!なんとこのお店は実装石専門のエステなんですね。今画面に映っている実装ちゃんはエメラルドちゃん。
 なんと実装石なのに毎週このお店に通うという、非常に美容に気を使った実装ちゃんなんです」
レポーターはエメラルドという名の実装石にリンガル付きのマイクを差し出した。
「では、エメラルドちゃん。毎週通ってしまうほどの、このお店の魅力について話してもらえますか」
「はいデスゥ。まずこのお店は一流のエステシャンが……」
実装石が話し始めたところで、由香里はテレビのスイッチを切った。
今の由香里にとって、実装石を見るのは少し辛かった。

由香里が俊明と別れることになったのは、実装石が原因だった。
由香里は実装石にあまり詳しく無く、犬や猫なんかの動物と同じように捉えていた。
ときどき生ゴミを荒らしたりして、人間を困らせることもある生き物。
でも、ペットにして可愛がっている人もいる、と。
そんな由香里に俊明は昨日告白したのだ。
実は自分は虐待派だ。結婚するんだから、本当の自分を知っておいて欲しいと。

俊明の告白に由香里は激しくショックを受けた。
「抵抗できない弱い生き物を甚振って喜ぶなんて、正常な人間のすることじゃない」
と由香里は糾弾した。
もちろん俊明は反論した。
「実装石は由香里の思っているような生き物じゃない。犬や猫は可愛いけど、実装石ははるかに卑しい生き物なんだ」
俊明の言葉に由香里は納得できなかった。
虐待派をやめなければ別れる、とまで言った。
「実装石を虐待するのって、すっごく楽しいんだ。由香里も一度やってみろよ。そうすれば楽しさがわかるよ」
「馬鹿なこと言わないで。小動物を痛めつけて喜ぶなんて、あなたは異常者よ!」
由香里の言葉に俊明は随分と傷ついた顔をした。
そして俊明は由香里の前から去って行った。
「由香里なら、きっとわかってくれると思ってたんだけどな」
という言葉を最後に残して。



ずっと部屋にこもりっ放しだから、気持ちが暗くなってくるのかも知れない。
そう思い、食事を終えた由香里は散歩に出ることにした。
俊明から仲直りのメールが来るかもしれない。
由香里は携帯電話を持って行こうかと一瞬悩んだが、結局持っていかずに部屋から出た。
扉の鍵をかけながら、由香里は俊明に合鍵を渡していたことを思い出した。
「合鍵、返してもらわなくっちゃね……」

外は天気も良く、爽やかに吹く風は、由香里の心を優しく撫でてくれているようだった。
あてもなく歩いていた由香里の耳に、動物の鳴き声のようなものが聞こえた。
なんとなく気になって泣き声の方に歩いて行くと、一匹の実装石がうずくまって泣いているのが見えた。
頭にリボンをつけて、ピンク色の服を着ている。
どうやら飼い実装のようだ。
「実装石だ……」
由香里の頭に昨日の俊明との別れのことが浮かんだ。
俊明のことを思い出させる実装石にはあまり近づきたくなかったが、泣いている実装石を見ると同情の心が湧いた。

「ねえ、どうしたの?」
由香里が声をかけると、実装石は顔をあげた。
その顔は涙と鼻水でグチャグチャになっている。
由香里は一瞬、汚いな、と思ったが構わず話しかけた。
「どうしたの?飼い主さんとはぐれちゃったの?」
声をかけられて泣き止んだ実装石は、由香里に向かってデスゥデスゥと鳴いた。
「困ったな。何て言ってるのか、わからないわ」
リンガルのない状態では実装石の言葉はわからない。
由香里の使っている携帯電話になら、リンガルの機能がついていたが、それも部屋に置いてきてしまっていた。
言葉が通じないとわかった実装石は、また泣き出してしまった。
よく見ると、実装石は足をに怪我をしていた。
どこかで転んだのだろうか、膝小僧に血が滲んでいる。
「可哀想に。怪我をしているのね」
由香里は実装石を抱き上げた。
部屋に連れ帰って、手当てをしてやろうと思った。
身なりからして飼い実装なのには間違いないだろう。
携帯電話のリンガルで飼い主を聞いて、連絡してやろう。
抱き上げられた実装石は、由香里におとなしく抱かれていた。



部屋に戻った由香里は、まず実装石の涙と鼻水を拭いてやり、怪我の手当てをしてやった。
実装石は幾分落ち着いたようだが、まだ少し不安そうにキョロキョロと部屋を見回していた。
リンガルのスイッチを入れる為に、携帯電話を手に取る。
携帯電話には、俊明からのメールも着信も入っていない。
そのことを少し寂しく思いながら、リンガルのスイッチを入れた。
「これで、この子の言葉がわかるのよね」
由香里は携帯電話片手に、実装石に話しかけた。
「もう大丈夫よ。すぐに飼い主さんに連絡してあげるからね」
「まったくグズなニンゲンデスゥ。とっととご主人様を連れて来いデス」
「えっ?」
実装石の返事に由香里は耳を疑った。
リンガルが壊れているのだろうか?
由香里は気を取り直して、実装石に質問した。

「どうしてあんなところで泣いていたの?飼い主さんはどうしたの?」
「ご主人様とお出かけしてたら、いつの間にかご主人様がいなくなっていたデス。探したけど見つからなかったデス
 探しているうちに転んで怪我をしたデス。痛かったデス。ワタシは世界一可哀想な実装石デス」
実装石の言葉になぜか心がモヤモヤとしたものの、それでも由香里は飼い主とはぐれた実装石を不憫に思った。
「そうだったの……。それで、不安になって泣いちゃったのね」
「違うデス。そんな理由で泣いてたんじゃないデス」
じゃあ、なんで泣いてたのかと、疑問に思う由香里に実装石は言葉を続けた。
「ご主人様が見つからないワタシは考えたデス。もしも可愛いワタシが泣いているのをニンゲンが見つけたらどうするだろう。
 きっとワタシに同情して、ご主人様を探してきてくれるデス。だからワタシは泣いてみたデス。
 思ったとおり、馬鹿なニンゲンがすぐに引っ掛かったデス。ワタシは世界一賢い実装石デス」
胸を張る実装石を見て、由香里はぽかんと口を開けた。
泣けば人間に助けてもらえると考える狡猾さ。
その考えを当の人間に悪びれもせず話す愚かさ。
目の前の実装石は、由香里の考えていた実装石とは、遠く懸け離れていた。

「早くご主人様を見つけるデス。ワタシは忙しいんデス。今日は予定がぎっしり詰まってるんデスゥ」
「よ、予定?」
思わず聞き返してしまった由香里に、実装石は笑いを堪えるように口元を押さえた。
「そうデス。ワタシは今からエステに行く予定デス。その後は地中海料理のお店デス。
 こんな小さな部屋に住んでいるような貧乏人には、一生行くことの出来ないお店ばかりデス。デププププ」
実装石は抑えきれない嘲笑を口から漏らした。
その笑顔を見た瞬間、由香里の体中に感じたことのない不快感が、駆け巡った。
「デギャッ」
気が付いたときには、由香里は実装石の後頭部を鷲掴みにして、顔面を床に打ち付けていた。

由香里は我に返ると、急いで実装石を抱き起こした。
「ご、ごめんなさい。痛かったでしょう?」
自分はどうしてしまったのだろうか。
理由もなく実装石に暴力を振るうなんて、まるで……虐待派だ。
「デギャギャ。なんてことするデス」
自分の起こした行動にショックを受けながらも、由香里は騒ぐ実装石の赤くなった顔面を撫でてやった。
「さてはワタシの美しさを妬んでの行動デスゥ?ワタシは罪な実装石デス。デプププ……デビャゥッ」
実装石に更なる不快感を感じた由香里は、またも無意識に実装石を痛めつけた。
顔面を撫でていた手を、そのまま前に押し出された実装石は、後頭部を壁に激しくぶつけた。

「私、どうしちゃったのかしら」
実装石を痛めつけた自分の手を見つめ、由香里は呆然とした。
一度ならず二度までも、罪なき生き物に暴力を振るってしまったのだ。
しかし由香里には、暴力を振るった罪悪感とは別の感覚も浮かんでいた。
「でも……なんだか、気分がスッとしたわ」
そう、由香里は実装石の悲鳴を聞いたとたんに、体の中の不快感が爽快感に変わっていたのだ。

「デギャギャギャギャ。いい加減にするデス」
起き上がって抗議の声をあげる実装石を、由香里は恐る恐る殴った。
「デギョッ」
実装石は無様な叫び声をあげ、殴られた部分をへこませた。
やはり実装石の悲鳴を聞くと、体が爽快感で満たされる。
間違いない。
自分は実装石を殴ることで快感を得ているんだと、由香里は自覚した。
今度は、もう少し強く殴ってみる。
「デビッ」
もう一度。
「デピョッ」
もう一度。
「デギュゥ」
もう一度。
「デゴォッ」

ものすごく楽しかった。
実装石の無様な悲鳴、醜く歪む顔、へこむウレタンボディ。
それら全てが由香里の気持ちを躍らせた。
昨日の俊明の言葉がよみがえる。
“由香里も一度やってみろよ。そうすれば楽しさがわかるよ”
俊明の言う通りだった。
楽しい。
気持ちいい。
快感の中で由香里はいつしか涙をこぼしていた。
「俊明……。ごめんなさい」
俊明を虐待派だという理由で罵った自分が、実装石を虐待して快感を得ている。
流れる涙は後悔の涙だった。
由香里はこの場にいない、俊明に謝り、自分を罵倒し、泣き崩れた。
「デ……ゲ……エ、エ」
嗚咽を漏らす由香里の隣で、実装石が醜い声を出し呻いた。





どれくらい泣き続けただろう。
由香里は立ち上がり、洗面台で顔を洗った。
俊明に会おうと由香里は思った。
会って謝ろう。
異常者だとまで言ったのだ。
俊明とは以前のような関係に戻るのは無理だろう。
それもしょうがない。
ただ一言、ごめんなさいと謝りたかった。

顔を洗い、リビングに戻ってきた由香里の目に、殴られ気絶した実装石が映った。
この実装石はおそらく、かなり恵まれた栄養状態で育てられてきたのであろう。
由香里の殴ったあとに、早くも回復の兆しがあった。
へこんだウレタンボディは元の形に戻り始めている。
由香里が手当てしてやった傷も、既に全快しているのかもしれない。
「俊明に会いに行く前に、この実装石をどうしようかしら」
すでに由香里の頭の中には、飼い主に連絡するという選択肢は無かった。
実装石を見つめる由香里の眼差しには、暗い炎が宿っていた。



体の傷が全快したころ、実装石は目を覚ました。
むくりと起き上がり、見慣れぬ部屋で首をかしげる。
「デエエ。なんだか悪い夢を見ていた気がするデス。ここはどこデスゥ?」
「あら、やっと目を覚ましたのね」
由香里は実装石の側にある椅子に座り、足を組んで実装石を見下ろしていた。
「お前は誰デス?」
「あら、私のことを忘れちゃったの?」
「忘れたも何も、お前のことなんか知らないデス」
実装石は、由香里のことを覚えていないようだった。
激しく殴られすぎたショックで、一時的な記憶喪失に陥っているのかもしれない。
「ワタシは今日はエステの日なんデス。ご主人様はどこにいるデスゥ?」
どうやら実装石は、由香里に出会う前後のあたりの記憶からを、失くしているようだった。

「早く行かないと、予約時間に間に合わないデス。美容のための、週に一度のスペシャルケアなんデス!」
「エステねぇ……」
由香里は実装石をどう虐待するべきか、考えあぐねていた。
虐待などしたことが無いのだ。
とりあえず、腕の一本でも切ってみようか。
そんな事を考えていたが、目を覚ました実装石の言葉で、虐待の方向性は決まった。
そんなにエステが楽しみなら、自分が特別に実装石のためのエステシャンに、なってやろうではないか。

「私はエステに行ったことがないんだけど、エステってどんなことをするの?」
由香里も女性なので、行ったことは無くとも、エステでどんなことが行われるかぐらいは知っていた。
だが、あえて実装石に質問してみた。
「デププ……。エステに行ったことがないデスゥ?貧乏人はかわいそうデス」
実装石は由香里を蔑み笑った。
「可哀想な貧乏ニンゲンのために、ワタシが通ってるエステのコース内容を教えてやるデス。
 最初はシャワーを浴びるデス。いい香りの石鹸で体中洗ってもらうデス。
 その後は全身マッサージデス。マッサージで日頃の疲れを取るデス。
 最後に海草パックをするデスゥ。パックを流し終えれば、お肌ツルツルデッスン!」
話しているうちに、エステの気持ちよさを思い出したのか、実装石は興奮しだした。
「エステのコースが終わったら、あまーいジュースを飲むデス。エステ後の冷たいジュースは最高デスゥ。
 早く飲みたいデスゥ。ご主人様に連れて行ってもらうデスゥ」
涎がこぼれそうなほどに顔面を弛緩させる実装石は、とてつもなく醜かった。

「デェ?そういえば、ここはどこデス?ワタシはなぜ、こんなところにいるデス?」
今になって実装石は、やっと最初の疑問に立ち返った。
「え、ここは……ここは、そうねぇ」
由香里は少し考え、にっこりと微笑んだ。
「ここは、あなたのためのエステサロン。実装エステサロンよ」



実装石はきょとんとした顔で、由香里を見た。
「デデ?何言ってるデス。ここはどう見ても、エステサロンなんかじゃないデス」
「いいえ、エステサロンよ。あなたの為の、特別な、ね」
由香里の表情に、不穏なものを実装石感じた。
思わず後ずさる実装石の前髪を、由香里はがっしりと掴み、そのまま持ち上げた。
「まずはシャワー、だったかしら」
実装石の重みに耐えかね、前髪が数本引き抜かれる。
「デギャアア!何するデス!やめるデス!痛いデスゥ!大事な髪の毛が抜けちゃうデスゥ!」
実装石は痛みに叫び、体を振って暴れた。
しかし悲しいかな、どんなに体や手を振り回したところで、短い手足の実装石は体の構造上、由香里に手が届かない。
それどころか、暴れた分だけ負荷が掛かり、余計に前髪が引き抜かれていく。
由香里がバスルームに着くまでには、実装石はかなりの量の前髪を失っていた。

由香里はバスタブの中に、実装石を乱暴に下ろした。
「デベッ」
「それじゃあ、シャワーを浴びましょうか」
由香里はシャワーのカランを捻った。
シャワーからは暖かな湯が出てきて、実装石の服と体を濡らした。
「あったかいデスゥ」
今から何をされるのかと、戦々恐々だった実装石は、暖かなお湯にひとまずホッとした。
しかし、お湯がどんどん熱くなるのを、実装石は感じ始めた。
由香里がシャワーの湯の温度を上げた為だ。
「ちょっと熱い……デギャッ、ちょっとじゃなく熱いデスゥッ」
実装石はバスタブ内を走り回り逃げ惑うが、熱湯を含んだ服が体に張り付き、うまく走れない。
さらに、ステンレスのバスタブは、水気のせいでよく滑る。
由香里の操るシャワーの湯は、容赦なく実装石を追い掛け回した。

逃げ回る実装石を見飽きた由香里は、シャワーをとめてバスタブから出した。
バスルームの床にがっくりと膝をつき、ゼェゼェと息をあげる実装石。
「やっと熱いのがなくなったデス。なぜかわいいワタシがこんな目に会うデスゥ」
嘆く実装石の頭に、冷たいものが、つたった。
「デデッ?今度はなんデス」
冷たいものは、浴室用洗剤だった。
由香里が実装石の頭上から、洗剤を大量にかけている。
「次は体を綺麗に洗わなくっちゃね」
「目に、目に洗剤が入ったデスゥ!」
由香里は両目を押さえる実装石を無視して、タワシを手にとった。
服の上から実装石の体を、ゴシゴシと擦りあげる。
「やめるデスゥ。そんなので擦ったら、お洋服がぼろぼろになっちゃうデスゥ。このお洋服は一番のお気に入りなんデスゥ!」
「お気に入りなら、尚更きれいにしなくちゃね」
実装石の言葉を聞いて、由香里の手の動きはいっそう激しさを増した。
タワシは服の布地を擦り破り、実装石自身の皮膚も激しく、擦りあげた。
「デギャア!肌に当たってるデス!痛い、痛いデスゥ!ワタシの玉のお肌が傷だらけになっちゃうデスゥ!」
「体を洗ってるんだから、服だけじゃなく、肌も洗わないと綺麗にならないでしょ」
由香里はその後も、頭部まで擦りあげ、実装石の全身を洗い尽くした。

息も絶え絶えにバスルームに横たわる実装石に、由香里は冷水を浴びせかけ洗剤を流した。
「なんでこんなことするデスゥ。ワタシの美しさを妬むにしても、やりすぎデスゥ」
「あら、ここはエステサロンなんだから、あなたをより美しくするために、体を洗ってあげたんじゃない」
「こんなところはエステじゃないデス!おうちに帰してデス!」
由香里は言葉を無視して、実装石を持ち上げようと、服を引っ張りあげた。
ベリッと実装石の重みで、ボロボロになった服が破れる。
「デデッ、ワ、ワタシのお洋服が破れたデス!」
「もう、これじゃ着れないわね」
由香里は実装石の服を容赦なく剥ぎ取った。
「ひ、ひどすぎるデス……。デェェェェン、デェェェェン」
ついに実装石は泣き出してしまった。
由香里が初めて出合ったときの嘘泣きとは違う、本気の涙であった。

「デェェェン、デェェェン……デボアッ」
泣きじゃくる実装石を、由香里は蹴り上げた。
倒れた実装石は、由香里の足でぐりぐりと踏みにじられる。
「今度はデトックスマッサージよ。体に刺激を与えることで、毒素を排出しましょうね」
執拗に腹を踏まれ続けた実装石は、耐え切れず糞を総排泄口から噴出させた。
「ほら、毒素が出たわよ」
バスルームに糞の臭いが充満する。
「やだ。臭いわね。こんなに臭いものが、体に詰まっていたなんて、本当に不潔な生き物ね」
由香里はこれ見よがしに、鼻をつまんで見せた。
プライドまでも激しく傷つけられた実装石は、もはや声も出ないようで、バスルームの床に横たわったまま、黙って涙を流していた。

「次の準備をしてくるから、楽しみに待っていてね」
「デビョッ」
糞を洗い流した由香里は、実装石を踏みつけて、バスルームから出て行った。
バスルームには実装石だけが残された。
「なんでワタシがこんな目に会うデス……。ワタシは幸せを約束された飼い実装のはずデス」
横たわったまま、ブツブツと呟く実装石。
「きっとこれは夢デス。目が覚めたら、あたたかなおうちにいるデスゥ……」
実装石は目を閉じた。
次に目を開いたときには、あたたかな我が家に帰っていることを、望みながら。

もちろん、その願いは叶う事はなかった。
しばしの安息を得ていた実装石の体を、またも痛みが襲う。
由香里が傷だらけの実装石の足を掴み上げた。
持ち上げられた実装石の体が、宙に浮き、揺れた。
「最後の海草パックの準備ができたわよ」
実装石は戦慄した。
きっと、次もひどい目にあわされるのだ。
足をじたばたとさせ、暴れる実装石。
「あっ」
由香里の手から実装石の足が離れた。
宙吊りになっていた実装石は、したたかに体を打ちつけ、痛みを感じた。
しかし、実装石は痛みを無視して立ち上がり、走り出した。
「駄目よ!待ちなさい!」
背後から由香里の叫び声が聞こえた。
足を上げるたびに、体を痛みが駆け抜ける。
だが、そんなことを気にしている場合ではない。
捕まったら死ぬかも知れないのだ。
痛みに耐えて、実装石は走った。
そしてついに玄関まで辿り着いた。
この扉を開ければ、外に逃げられる。
あの理不尽な痛みを与えるニンゲンから、さよならできるのだ。

だが、運命は無常だった。
「デェ……。ドアノブに手が届かないデス……」
ドアノブにあと少し、手が届かないのだ。
実装石は必死で飛び跳ね、ドアノブに手を掛けようとした。
「早くしないとニンゲンに追いつかれるデスゥ」
幾度か飛び跳ね、実装石の手は、ついにドアノブをつかんだ。
実装石はぐっとドアノブに体重をかけて、扉を開けようと試みた。
ぎいっと音がして、扉がわずかに開いた。
外の空気が実装石を撫でる。
「やったデス!なんとか助かったデス!」
小躍りする実装石の体を、背後から由香里が掴んだ。
由香里は扉を閉めると、鍵をかけた。
ガチャリと鳴る施錠音に実装石は絶望した。
「惜しかったわね。あと少しだったのに」
由香里は実装石の後ろ髪を引きずり、キッチンへ向かった。
「放すデスゥ!もうひどい目に会うのは嫌デスゥ!」

キッチンにはヤカンが置いてあり、注ぎ口からは、湯気が出ていた。
流しに無造作に放り込まれた実装石は、怯え、震えていた。
由香里は大きなボールに、乾燥ワカメを大量に入れ、熱湯を注ぎ入れた。
ワカメは湯を吸い込み、あっという間にボール一杯になった。
「さ、海草パックの出来上がりよ」
由香里は実装石の後頭部を掴み、ボールの中身を見せ付けた。
「やめ、やめ、やめるデス……」
実装石の声が震える。
これから何をされるかは、実装石の頭でも容易に予想がついた。
由香里が実装石を掴む手に力を込め、湯気があがるボールに実装石の頭を押し付けた。
「デッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
実装石はこの日一番の悲鳴をあげた。
「今の声、最高よ」
由香里は微笑んで、実装石を押し付ける手に、更なる力を加えた。



動かなくなった実装石を横目に、由香里は溜め息をついた。
「これで、実装エステサロンの特別コースは終了ってところね」
実装石に声を掛けたが、ピクピクと時折動くだけで、反応は返ってこなかった。
「これから、この子をどうしようかしら。外に放り出す訳にもいかないし」
うっかり外に逃がして、飼い主の元に戻られては大変だ。
「とりあえず、死んでもらおうかしら」
由香里が引き出しから包丁を取り出していると、実装石の搾り出すような声が聞こえた。
「おま……え、絶対に許さない……デス……」
「あら、まだ喋る元気があったのね」
「許さないデス……。百倍……にして……復讐するデス」
「へえ、どうやって復讐するの?ここには私とあなたの二人きりなのよ」
由香里は包丁の先で、実装石の額をつついた。
「今頃ご主人様はワタシを探している……デス。ご主人様は……ワタシを見つけてくれるデス……」
実装石のなんの根拠もないであろうセリフに、由香里は苦笑いした。
「あのね、ここは密室で、私たちしかいないの。あなたのご主人様も、他の誰も、あなたがここにいるのは、知らないのよ」
実装石をこの部屋に連れてくるまでの間に、誰にも会わなかったことを由香里は覚えていた。
「でも、ご主人様は来るデス……。カワイイワタシがここで死ぬはず無いデス……。ご主人様……」
もはや実装石の心は、主人が助けに来るという妄想に支配されていた。

うわごとの様に繰り返す実装石に、由香里は苛立ちを覚えた。
「残念ね。あなたは今から死ぬのよ」
由香里は両手に包丁を構え、胸元に狙いを定めた。
「心臓はこのあたりかしら」
由香里は実装石の胸に、包丁を突き立てた。
「デギャアアアァアア」
実装石が悲鳴をあげて、のた打ち回る。
由香里の予想では、実装石はこの一撃で絶命するはずであった。
しかし、実装石は悲鳴をあげるばかりで、死ぬ気配がない。
「けっこう、しぶといわね」
更に一突き加えるが、実装石は死ななかった。
二突き、三突きと突き刺すも、実装石はまだ死なない。
ただ、悲鳴を撒き散らすのみだった。
「どうして、死なないの?」
由香里は突き刺すことに疲れ、手を止めた。
「デギャ……ギャ。ご主人様が、もうすぐ来る……デス」
相変わらず妄言を繰り返す実装石。
由香里は困り果てた。
死なない以上、この部屋から出すわけには行かないが、しかし、この実装石をここに置いておくつもりは、もちろん無い。
「首を切り落としたら、死ぬかしら?」
由香里が実装石の首に包丁を当てた、その時だった。

ピンポーン。

部屋に、来客を告げるベルが鳴り響いた。
こんな時に誰が?
由香里は身を固くした。
ピンポーン。
もう一度、ベルが鳴った。
「ご主人様が……助けに来た……デスゥ」
「馬鹿なこと言わないで。そんな訳ないじゃない」
そう言ってはみたものの、由香里は、少し不安になっていた。
帰り道、誰にも会わなかったはずだが、気付かぬうちに、誰かに見られていたのだろうか。
「きっと、宅配便か何かよ……」
由香里の口から出た言葉は、まるで自分に言い聞かせるように、弱々しかった。

コンコン
今度は扉をノックする音。
そして、ドアノブをガチャガチャと回す音が聞こえた。
「ご主人様、ワタシはここデスゥ!」
残った力を振り絞るかのように、実装石は叫んだ。
「だ、黙りなさい!」
由香里は慌てて実装石の口を塞ごうとした。
「ご主人様!ご主人様!」
実装石は由香里の手から、身をよじって必死で逃れ、叫ぶ。
何とか実装石を押さえつけ、黙らせると、由香里は息を潜めて、扉を見つめた。

扉の向こうからは、何の音も聞こえなくなった。
留守だと思って、諦めて帰ったのだろうか。
「残念だったわね。あなたの飼い主かどうかは知らないけれど、お客さんは帰ったみたいよ」
由香里は勝ち誇ったように、実装石に告げた。
「それじゃ、続けましょうか」
由香里は包丁を持ち直し、再び実装石の首筋に刃をあてた。
「デゲェー」
実装石が絶望の声を上げた、その瞬間。
カチャリと音がして、扉が開いた。
実装石の体液の臭いで満たされた部屋に、外の新鮮な空気が流れ込んだ。



「とし……あき?」
扉の開いた先には、俊明が立っていた。
片手には、コンビニのビニール袋をぶら下げている。
「由香里、俺はやっぱり由香里が好きだ。でも、虐待派はやめられない。
 だから、由香里に虐待の楽しさを知ってもらいに来たんだ!」
立ち尽くす由香里に、俊明は持っていたコンビニ袋を掲げた。
コンビニ袋からは、テチテチと仔実装の鳴き声が聞こえた。

「由香里には、虐待派の素質があると思う。二年間、由香里を見てきた俺が言うんだから、間違いないよ。
 一度やってみれば、すぐに楽しさがわかると思……」
そこまで話して、俊明はやっと、いつもと違う由香里の様子に気付いた。
緑と赤の何かで汚れた服。
手には血液のようなものが付着した包丁。
部屋に漂うのは、何やら嗅ぎ慣れた臭い。
「俊明……」
由香里は俊明の姿を見ると、安堵の気持ちからか体の力が抜け、床に跪いた。

駆け寄る俊明に、由香里は事情を説明した。
散歩に出て、実装石を連れ帰ったことや、それがきっかけで虐待に目覚めたことなどを。
「私、あなたにひどい事を言った事、後悔してるの。本当にごめんなさい」
ぼろぼろと涙を流す由香里を、俊明はそっと抱きしめた。
「お前が虐待の良さを知ってくれて、嬉しいよ」
「俊明……」
「由香里……」
二人は見つめ合い、そっと唇を重ねた。
「デ……ギャ……ア……。ご主人様じゃ……なかったデスゥ……」
台所に放置されていた実装石がうめき声をあげた。



「なかなか死なないのよ、この子」
由香里は台所で震える実装石を指差した。
「包丁で何度も胸を刺したのよ」
「へえ、なかなかしぶといな。偽石の強化剤でも与えられてるのかな」
「偽石?」
偽石の存在を知らなかった由香里は、俊明に聞き返した。
「ああ。実装石の体には必ず偽石というものがあるんだ」
俊明は由香里に、偽石について簡単に説明した。
「実装石って、つくづく変わった生き物ね」
「まあ、ここまでやれば普通は偽石崩壊をおこすんだけど。よっぽど高価な強化剤をもらってるのかもな」
俊明は実装石の体をまさぐり、腹のあたりを押さえた。
「こいつの偽石は、ここにあったよ」
由香里も実装石の腹を押してみる。
たしかに、指にほんの少し、硬い感触があった。
実装石はもはや自身の命を諦めたのか、己の核である偽石を探り当てられも、抵抗しなかった。

由香里は実装石の偽石のあるあたりに、包丁の切っ先を当てた。
「ここを刺せば死ぬのね」
「ああ。偽石が割れるとき、すごく良い音がするんだ。俺の経験では、長く苦しめる程、良い音が……」
由香里は、俊明を熱の籠もった視線で見つめていた。
「俊明って、すごいわ。なんでも知ってるのね」
「いや、虐待暦が長いだけだよ」
俊明は照れを隠すように、頭を掻いた。
「由香里……。俺たち、やりなおせるよな?」
「もちろんよ。俊明……」
二人は見つめ合い、口付けた。
先ほどの唇を重ねるだけのキスとは違う、舌と舌を絡め合うような、情熱的なキス。
いつしか由香里の体から力が抜け、包丁が手から滑り落ちた。
由香里の手から離れた包丁は、実装石の偽石に突き刺さった。
「デギャッ」
実装石の短い悲鳴の直後に、パキンと澄んだ音が二人の耳に届いた。
「本当……。素敵な音」
「だろ?これからは、二人でいっぱい聞こうな」
事切れた実装石の傍で、二人はいつまでも、いつまでも、愛し合った。


おしまい


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