偽石のひみつ 「テ、テ、テ、テッギャアァァァァァァァァッッッ?!?!?!」 仔実装が叫ぶ、叫ぶ。 涙をボロボロ流しながら、ありったけの大声で叫ぶ。 手の平に乗る程度の大きさしかないのに、どうして人間様が耳を覆いたくなるほどの大音量で 叫べるのだろう? まったく、実装石というのは不思議な生き物だ。 「テチャアアァァ…テチィィィィィ…」 左手の上で佇む仔実装。 俺の右手の指からさらさらとこぼれ落ちる、亜麻色の美しい髪の毛。 こいつは、俺の手によって瞬時に髪の毛を毟り取られ、実装服とパンツをビリビリに破かれた。 そして、その姿を鏡で見て悲鳴を上げたという顛末。 長年経験を積み重ねてきた虐待派の俺としては、当然の処置だ。 「テェェェ…テチテチィィィ……」 今まで大事に大切に育てられてきた奴だ、こんな扱いを受けた事などないのだろう。 小さな顔を涙でぐしょぐしょに濡らして、「どうしてこんな事をするの?」と言いたげな顔を向けてくる。 俺は、そんな純真無垢で大人しい躾済み実装石に、取り返しのつかない心理ダメージを与えるのが 得意で、そして何より大好きだ。 仔実装に抵抗の隙を与えず、スピーディに「剥く」には、熟練の技術が必要だ。 状況判断が追いつかず、遅れて泣き叫ぶ仔実装の様を愛でるのが最高の楽しみなのだよ。 伊達に三年も山にこもってないぜぇ。 こもってないぜえ。 まあな、哀れな仔実装チャンよ。 俺の許に来てしまった不運を呪うんだな。 お前のご主人様が軽率過ぎだったんだ。 ひとみも俺なんかに預けず、ペットホテルにでも預けていれば良かっ………… ——-- し 、 し ま っ た あ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !!!!! この仔実装「ぴち」は、先月やっと出来た彼女・ひとみから一時的に預かっていた、大事な 飼い実装だったんだ! 急用で実家に帰るからと、三日間だけ面倒を見る事になったんだっけ。 それをうっかり失念し、いつもの癖で「剥いて」しまった! なんてこった! こりゃほとんど条件反射じゃねーか! いくら熟練の俺でも、実装石の服や髪を完全に戻す方法なんか知らないぞ! どーすんだ! もう取り返しが付かないじゃんかよ! 「テ、テチュア……テェェェ……テェェェ………」 ぴちが、背景にタテ線背負ってさめざめと泣いている。 もう大泣きを通り越してしまったらしく、今はただ我が身の不運を呪っているようだ。 俺に怒りの矛先を向けるより先に、自分に降りかかった悲劇を悲しむという態度に、こいつの大人 しく平和的な性格の一面が覗いている。 それが…実にたまらない。 こういっちゃなんだが、ぴちは俺にとって最高に虐待のしがいがある仔実装のようだ。 って、そんな事考えてる場合じゃねーっての。 ぴちはしっかり躾けられた高級飼い実装で、決して悪い奴じゃないんだが…三日間程度なら問題 も起こさずやっていけるだろうと、大丈夫だろうと思ってたのに… まさか、俺の方から問題を起こしてしまうとは! まずい…ひとみは、こいつの事をすごく大事にしているからなあ。 なんでも、小さい頃に死んでしまった妹の代わりだとか言ってたな。 実装石なんぞが死んだ人間の代わりになる筈なんかないし、そんな馬鹿げた感覚など理解できん が、だからってこいつを痛めつけていい理由にはならない。 しかし…でも……いや待て……うーん…… なんだか無性に腹が立って来たんだが、この怒りは、一体どこへ向ければいいんだろ? やっぱり、こいつしかいないよなあ。 さぁて、次はどんなに目に遭わせてやるか? 下半身ミキサーか、糞抜きして紐でしばってから気絶するまで大回転の刑か、それとも目の前で 別な仔実装の解体を見せつけてやるか、強制出産させて片っ端から子供を食い殺させるか……って、 だから違うっつーにっっ!!! 「テチャア……テェェェ……テッチャア……」 ぴちが、飽きもせずまだ泣き続けている。 その泣き声が心地よくもあり、また大弱りでもあり。 ふと気が付くと、無意識に取り揃えた実装石用虐待・拷問グッズがすぐ脇にずらりと置かれている。 そして、手の中には禿裸に剥かれた仔実装。 その足下の様子と、手の中に広がる生暖かい不気味な感触、そして鼻が曲がりそうになるほどの 臭気が、俺の中にあるナニかのスイッチを瞬時に入れる。 ——おおおっ、なんてこったい! このガキャあ、よりによって俺様の手の中でウンコ漏らしてるじゃないか。 そーかそーか、これから世話してやろうっていうニンゲン様に対して、そういう態度を取るのか。 これはいい口実が出来…じゃなくて、お仕置きする必要があるよなぁぁぁぁ♪ 俺は、仔実装を「いつもの処置」に使うまな板の上に突き落とす。 落ちた拍子に左腕を潰してしまったようで、「チベッ!」と悲鳴を上げた。 安心しろ、その程度すぐに治るぜ。 俺は痛みに苦しみ悶える仔実装の四肢に細い釘を容赦なく打ち込んで、まな板に固定した。 「テギャアァァァッッッッ!!!!」 今度は、身を切る(笑)ような激しい悲鳴。 あまりにもうるさいから、口の中に人さし指を突っ込んで、ゴリッと顎の骨を外す。 アウアウと声にならない声を上げる仔実装に暖かな微笑みを向けてやると、俺はまだ五匹しか 切り裂いていない比較的新しいカッターを取り出し、仔実装の腹に突き立てた。 少しずつめり込んでいくカッターの刃の先端を、怯えた目で見つめる仔実装。 「やめて、やめてお願い!」とでも言いたいのだろうか、その恐怖に満ちた表情は実に素晴らしい。 ほどよくサディズムを刺激された俺は、心配しなくていいよ、と声をかけてやる。 ほんの僅か「え?」と緊張を緩めた瞬間を見逃さず、俺はカッターの刃をずぶっっ! とめり込ませた。 そして、一気に下腹部までずず〜〜っ! と切り裂く!! 「グテジャギャボワァァァッッ!!!」 なんだ、顎外されてるくせに器用に泣きやがる。 なんとなくうざったくなった俺は、笑顔のまま、仔実装の顔面に少し控えめにパンチを食らわせてやる。 三度ほど殴ると泣き声を上げなくなったので、掻っ捌かれた腹の中に指を突っ込み、偽石を 探す。 わざと乱暴に、わざと強く、必要以上に時間をかけて。 最初に触診で位置を確かめておくのもいいが、適当に切って適当に探して、その分無駄に苦しめる のもいいものなのだ。 幸か不幸か、偽石はすぐに見つかってしまった。 予定の半分も楽しめなかったのにちぃとムカついた俺は、もう一発顔面にパンチを食らわせてやる。 手馴れた動きでそれを取り出すと、俺は間髪入れずにこれを栄養剤に漬ける。 よぉし、これで準備は整った! ………って、いったい、何の? 「テヒィ……テヒィ……」 今にもこと切れそうなほど弱っている、(けれど死ねなくなった)哀れなぴちの姿。 俺、ナニかのスイッチオフ。 みるみる意識が冷静に戻っていく。 額に汗がにじむ。 状況を認識したくない気持ちが渦巻く。 出来れば逃亡したい心境に陥る。 ———う、うわあぁぁぁぁぁっ!!! な 、 な ん だ こ り ゃ あ ぁ ぁ ぁ ?!?! なんてこった! またか、またやっちまったのか俺?! よりによって、偽石除去かよ!!! 俺、ひょっとして何かの病気か?!?! 長年培った虐待の腕と知識、経験が災いし、どうやら俺は、仔実装を見るや無意識に「処置」を してしまう体質になっていたようだ。 顔面をグシャグシャにされた上、血と涎、体液と涙で原型を留めないほどグチョグチョになって しまったぴちは、四肢を固定されたまま既に虫の息となっている。 まあ、偽石は除去したから死にはしないが…… ううーむ、俺が悪いとはいえ、いったいこれからどうすればいいのだろう? なんでこう、次から次へと状況が悪化していくかな〜。 これも、きっとこの仔実装のせいだそうに違いないよし決まった。 よぉし、次は………って、そうだ、この短絡的な思考がすべてイカンのだな。 何はともあれ、たかが実装石如きで、せっかく出来たカノジョを不意にするわけにはいかんのだ。 俺は過去の経験を遡り、なんとかぴちを完全復元する方法を検討した。 え、回復じゃないのかって? いや、復元だ、復元! 要はパッと見が元に戻っていればいいんだよ! 所詮は糞蟲、その程度の扱いで充分だって! …と、発想したはいいが、問題は山積みだよなあ。 ヒィヒィと弱々しい声を上げ続けるぴちを前にして、俺は腕組みをしながら考える。 こんなに頭を使うのは、中学二年の期末テスト以来だ。 色々考えたが、ぴちの肉体そのものを元に戻すことは、一応可能ではある。 髪に関しても、以前別な虐待師から元に戻す方法を教わっていた事を思い出したからいいとして。 問題は実装服の復元と、「俺に虐待された」という記憶のリセットだ。 特に、後者は最も難しいだろう。 ぴちが結構物覚えがいい個体なのは、以前から良く知っている。 数日間を空けてから逢っても俺をきちんと覚えていられる奴だし、躾けもしっかり身に付けているし、 それを忘れた事もないらしい。 さすがは、ひとみが貯金を全額下ろして購入した高級飼い実装なだけはある。 だからこそ、ひとみの家に戻った時に実装リンガルなどを使われたひにゃ……まずい、それだけは 絶望的にまずい! 大地を揺るがすほどの超絶愛護派・ひとみのことだ、たとえ五体満足に戻ったとしても、俺から散々 責め立てられたという話を聞いた途端、即座に縁切りを申し出てくるだろう。 いや、恐らくそれだけでは済まず、俺を徹底的に糾弾してくる筈だ。 えちぃ事はおろか、まだ手を握ってすらいない相手なんだ、そんな展開だけは何があってもゴメンだ! とりあえず、俺はとっておきの秘薬・実装活性剤を棚の中から取り出した。 これがあれば、身体のダメージはだいたいなんとでもなる。 さて、服と記憶……この問題をどうするか。 さらに悩み続けていると、突然、部屋のHDDレコーダーが稼動する音が聞こえてきた。 CSチューナーと連動して、自動的に録画を開始したようだ。 この時間だと、ファミ●ー劇場で放送中の「逆転●っパツマン」だな。 確か今日は31話、隠球●郎に撃たれて敗北したイッ●ツマンが復活する回だ。 ここからは、豪●九が直接変身するんだよな。 それにしても、実は今まで出ていたイッパ●マンは、豪そっくりのアンドロイドでしたってオチは、 なんだかなぁって思わされたよなぁ。 ? アンドロイド? 復活? 変身? ……次の瞬間、俺の頭の上に電球が浮かび、パリンと割れた。 そうだ、一つだけ可能性があるぞ! これから行う事は、俺にとって初の試みだ。 正直な話、成功するかどうかはまったく自信がない。 いわば「賭け」だがやるしかないし、この経験はきっと今後の虐待生活の参考になる筈。 俺が何を考え付いたかは、以下のプロセスを参照してくれたまえよ。 思わぬ所から思わぬアイデアを賜った俺は、まず近所の公園に向かった。 そして、実装石共が潜んでいるだろうと思われる辺りに無造作に金平糖をバラ撒きおびき寄せる。 デスデス、テチテチと鳴きながら飛び出してくる奴等の中から、比較的小奇麗で、ぴちと同じくらい の体格の仔実装を三匹ほど見繕い、瞬時にかっさらう。 泣き声など一切上げさせない、道具などいらない。 風よりも早い技、炎より熱い心があれば、俺には造作もない事だ。 …なんて大げさなものじゃなく、単に群れの後ろに回り込んで腕を伸ばしただけなんだけどね。 仲間が数匹居なくなった事にも気付かずに大騒ぎしている奴等を尻目に、俺は、夢を抱き締めて シビビ〜〜ンと帰路を急いだ。 帰宅してからリンガルを使って三匹と会話し、こちらに悪意がない事を説明しながら、それぞれの 知的レベルを観察する。 既に飼い実装になった気満々の一匹目と三匹目に対して、まだ警戒心を解かない二匹目。 これは要チェックだな。 次に、仔実装共を風呂場に連れて行き、服を脱がす。 抵抗しようものなら、金平糖あげちゃうよ作戦でなだめる。 うん、見立て通りいずれもぴちとほとんど変わらない体格だから、これなら期待できそうだ。 たっぷりのお湯に浸けながら丁寧に身体を洗ってやり、その過程で触診にてそれぞれの偽石の 位置を確認する。 ついでに服を洗濯してやる事も忘れない。 手洗いの上に柔軟剤も使用、しかも陰干しだよ。 俺から洗濯についての説明を受け、身体もすっきりしてご機嫌になった裸んぼの三匹には、 冷蔵庫から取り出したとっておきの嗜好品・カニカマを一本ずつ丸ごと与えてやる。 思わぬ好待遇に、テチテチと喜びの声を上げる仔実装共。 そして俺は、そんな三匹の様子を、さらにじっくり観察する… 風呂の中で、俺のことをバカニンゲン呼ばわりしていた一匹目は除外だな。 他の奴のカニカマを横取りしようとした上、行動に品位が見られない三匹目も論外。 しかし二匹目だけは、とても野良とは思えないほど態度が良く、また言動も糞蟲っぽくなく、賢くて 理知的な一面を覗かせている。 やっぱり、この中でまともなのはこいつだけのようだ。 幸い、こいつも偽石の位置は腹にある。 食事に夢中になっている三匹のうち、ダメ出しした二匹の襟首を後ろから鷲掴み、一瞬のうちに 部屋の反対側へブン投げる! 二匹目の仔実装に、その瞬間を見せないところがミソだ。 テチャァァァァァッッッ?!×2 ぷちっ!×2 哀れ、壁の染みとなって生涯を終える仔実装達。 ナマンダブ。 「テチ?」 何があったの? といった表情の二匹目の仔実装に、俺は「君を飼う事に決めた」と説明する。 さらに、「君に名前をやろう。今日から君は"ピチ"だよ」と補足する。 途端に大喜びする仔実装。 飼い実装になれた上、名前をもらえた事がとても嬉しいようだ。 盛大にブリブリ漏らしながら飛び跳ねているが……い、今は我慢だ。 何度か入りかけるナニかのスイッチを、心の中で懸命に押し戻す。 こ、ここでこいつまで壊してしまったら、計画がすべてオジャンなのだ! 耐えろ俺!! 二匹が食べ残した(笑)カニカマも全部与え、満腹満足の状態にさせた後、暖かいタオルで保護して ゆっくりと休ませてやる。 二匹目の仔実装がぐっすり眠った頃合を見計らい、さっき投げ殺した二匹の死体を回収し、掃除 する。 奴等は、見事に頭と上半身を潰してこと切れていた。 俺様ナイスコントロール。 さて、ぴちの方は……うす塗りした活性剤のおかげで傷はほぼ塞がりつつあるが、まだ意識が 混濁しているようだ。 釘の拘束も解いてやってないから、身動き一つ取れない。 偽石除去してなかったら、とっくにパキンと逝ってただろうな。 俺は、栄養剤を入れた瓶をさらにもう一本用意すると、それをぴちのとは別に用意したまな板の脇に 置く。 そしてぐっすり眠りこけている“ピチと名付けた”仔実装の身体を静かに乗せ、目隠しを施した上で、 瞬時にカッターで腹を掻っ捌く! 今度は、ぴちの時みたいにゆっくりじっくりなどしていられない、スピード勝負だ。 「テチャアァァァッッッ?!?! テギイィィィィッ!!!」 激痛に目を覚まし、暴れる仔実装を出来るだけ傷つけないように押さえ、偽石摘出処置を施す。 ヘタすると身体を潰してしまいそうなので、なかなか力加減が難しいが、なんとか摘出に成功する。 偽石はすぐに血を拭き取り、新しい栄養剤入りの瓶に詰める。 どうせすぐ取り出す事になるんだが、ヘタに放置してパキンとなると困るので、保険代わりだ。 さて……やるぞっ!! 作業は、次の段階に移る。 ぴちの偽石を瓶から取り出し、仔実装の腹の中に埋め込む。 だいたいの位置合わせをした後、俺は左右に裂けた腹を中央に寄せ、血と体液を拭き取ってから 活性剤を原液のまま注ぎ込み、包帯でぐるぐる巻きにした。 まるで割腹の傷を押えるサラシみたいな状態だ。……ってか、そのまんまか。 「テェェェェ……」 自身の偽石を、別な個体の体内に入れられたぴちは…否、「ぴちだった肉体」が、突然弱々しい 悲鳴を上げた。 何か違和感を覚えたのだろうか? 「ぴちの身体」がピクピクと痙攣し始める。 ふと、以前聞いた「実装石にのみ存在する見えない神経網」の話を思い出し、少しだけ不思議な 気分にさせられる。 少しやばそうな雰囲気がしてきたので、素早く次の処置に移るとしよう。 今度は、さっき仔実装から取り出した偽石を「ぴちの身体」に収納する。 そして、先程と同じ処置を行って包帯を巻く。 みるみる傷口が塞がっていく、二匹の仔実装。 ぴちの肉体が放つ、弱々しい悲鳴が止まった。 仔実装だった肉体の方は、特に悲鳴は上げなかった。 俺は額に流れる汗を拭うと、ひとまずここまでは成功した事を確信する。 続けて、野良仔実装の前髪と後ろ髪を、頭皮ごと削ぎ落とす。 同時に、ぴちの肉体の同じ箇所を削ぎ落とす。 双方の頭皮を交換し、傷口に再び活性剤をうす塗りする。 これもかなりの激痛を伴う筈なのだが、なぜか二匹は少しビクッと身体を反応させだけで、特に 大声を出したり騒いだりはしなかった。 それぞれの偽石がまだ馴染んでいないため、反応が鈍くなっているのだろうか? どっちにしろ、面倒がない事はいい事だ。 ある程度傷口が癒着してから、頭も包帯でグルグル巻きにしてやる。 ちょっとしたミイラ実装ペアの誕生だ。 ふう、やれやれ。 これで、やるべき事は一通りやり終えたぞ、と。 以前、ネット上の某所である話題が盛り上がり、我々実装石虐待を趣味とする紳士達が集って 大変内容の濃い意見を交わし合った事があった。 話題は「実装石における偽石とは、一体どういう働きをするものなのか?」というもの。 実は、これについては未だに明確な研究結果がまとめられていないらしい。 偽石は、実装石という生命体最大のブラックボックスだ。 過去、様々な研究者・研究機関によって実験調査が繰り返されたが、いずれもその機能・正体に 言及し切れず、推論を組み立てる程度に留まっている。 というのも実装石の偽石とは、他既存生物の体内器官のどれにも該当せず、また共通性を持たない 特殊なものだからだ。 そりゃまあ、個体によって存在する場所がてんでバラバラだわ、たとえ体内から取り出しても本体は 生き続けるわ、偽石砕きゃ本体が無傷でも致死するわ、接着剤やコーティング剤でくるむと生体劣化 を起こさなくなるわ、とあれば、確かに既存の生物学知識に当てはめて考えるのは難しいだろう。 生体構造がいい加減である分、そのシステムを追求するのは想像以上の困難を極める。 それが、実装石なのだ。 ——閑話休題。 先のネット上で挙げられていた説の一つに、「偽石はPCで言うところのHDD(ハードディスク…記録 保存媒体)に相当するのではないか」というものがあった。 一方、実装石の「脳」はPCにとってのCPU(中央処理装置)に相当するのだというのだ。 偽石をHDDだとすると、記録されているのは単なる個体の記憶だけではなく、各種生体情報など 実装石が生きるために必要な各種情報が含まれているだろう。 肉体再生のプログラムや、生活環境への適応性など、そういった細かいものが一通りインストール されているものと考えられる。 そして「脳」をCPUだとすると、偽石が蓄えている各種情報を的確に判断・処理し、身体各所に命令 を促し総合管理している事になる。 しかしメモリーに相当する機能が備わっていないため、「脳」は常に「偽石」の情報を読み取り続け なければならなくなってしまう。 この辺りのメカニズムの中途半端さが、実装石独特の思考力・生態の無茶苦茶さに関連している のではないだろうか? 加えて、偽石と実装石の肉体の間に「人間にはわからない“見えない神経網”」のようなものがある と仮定すれば、偽石が身体から離されていても「生体・記憶情報の提供」は行えるわけだから一応 問題はない事になる。 それだけだと、生きるために必要な物が奪われた事にはならないわけだから。 しかし、偽石を砕かれると生きるために必要な情報の読み込み作業がまとめて強制中断されるわけ だから、そりゃあ脳が無事でも死んでしまうだろう。 「見えない神経網(仮)」は、各方面の研究者をもっとも悩ませている問題のため、ここでもさすがに 言及されず仕舞いだったが、この説は大変な説得力があり、俺を幾度も頷かせ感嘆させた。 さて。 この説を踏まえた上で、先程「ぴち」と「ピチと名付けた野良仔実装」に行った“偽石交換”の概念を 説明しよう。 「HDD(記憶中枢)」を交換した両者は、それぞれ中身が入れ替わる事になる筈だ。 つまりピチはぴちとなり、ぴちはピチとなったということ。 細かい情報の差異は、実装石特有のいい加減な身体構造で補正される事を祈ろう。 「飼い仔実装ぴちの肉体」さえ無事に治す事が出来れば、たとえ中身が野良の仔実装だったとしても、 外観上はぴちとして通ってしまう筈だ。 一方、「野良仔実装ピチの肉体を得たぴち」は、飼い実装としての記憶を持ちつつもぴちとは認められ なくなり、野良実装として生きていくしかない。 哀れだが、俺に虐待されたという記憶を持ち続けてしまう可能性が高い以上、こうするしかない。 そして本物のぴちには、いずれ闇に消えていただく事としよう。 要は、ひとみのところに「心身共に無問題な“ぴちの肉体を持つ仔実装”」が戻りさえすれば、それで いいのだ。 手術前にわざわざ風呂、餌、洗濯と好待遇を施したのは、「野良仔実装の記憶」に俺への信頼感や 安心感、良くしてもらった思い出を刻み付けるためだ。 他の二匹を瞬時に抹殺したのも、野良仔実装に気付かれないようにするため。 手術中も目隠しをされていたから、俺から酷い目に遭わされたという記憶もない筈だ。 また術前に名前を与えられているわけだから、こいつは「他の実装石の名前を騙っている」わけでは なくなる。 自分が「ピチ」という名前だと、堂々と言い切れる。 無論、ひとみの許に戻った後に色々と問題を起こす可能性はあるにはあるが、そこはそれ「環境が 変わると、実装石という奴は云々」とか、テキトーな言い訳を後から行えばいい。 ここからは、約束の日にひとみが迎えに来るまで「ぴちの肉体を持つ野良仔実装」を可愛がって大事 にしてやればいい。 うーむ、さすが俺。 完璧だ、あまりにも完璧だ! 一時はどうなることかと思ったが、なんだかんだで巧く誤魔化しきってしまうなんて、ひょっとしたら 天才なんじゃないかしら?! と、まあそれはともかく、今はこの二匹の回復を待つしかない。 ま、本当はもう野良実装の肉体の方はどーでもいいんだけどな。 ややこしいから、ここからは「野良実装の肉体に飼い実装の偽石を入れた方」を“ぴち”、「飼い実装 の肉体に野良実装の偽石を入れた方」を“ピチ”と呼ぼう。 要するに「偽石」の名前で呼ぶということだ。 その日は、朝まで二匹をゆっくり休ませてやることにした。 二匹を別のダンボール内に分けて寝かせ、それぞれを離れた部屋に置いて来た。 もちろん、拘束を解いた上で。 翌朝になると、二匹は完全に復活しもぞもぞと動き始めていた。 頭と身体の包帯のせいで動きにくいようだ。 まずは「ピチ」から。 タオルの布団から起き上がり、眠そうに目をこすって俺の顔を見上げる。 寝惚けているのか、まだポカーンとしている。 俺はリンガルを用意して、おはようと優しく声をかけてやる。 「テエ……?」 状況がまだ良く理解できていないらしい。 俺は、夕べ君は疲れていつのまに寝入ってしまったんだよと、嘘の説明をしてやった。 「ピチ」は自分の格好を眺め、しばらく頭を抱えて考え込んでいたが、やがて顔を上げて声をかけて 来た。 「ニンゲンサン、オナカスイタテチュ」 早速空腹を訴えるという事は、どうやら身体上に問題はないようだ。 予想していた事とはいえ、なんといういい加減な生態構造なんだよこいつらは。 ひとみが置いていった高級実装フードを皿に盛り、水皿と一緒に与えてやる。 中身が野良実装の「ピチ」には、これは初体験のご馳走になるだろう。 実装フードを手に取り、しばらく不思議そうに見つめていたが、やがてゆっくりと口に含む。 「テェ? テ…テチュテチュ………イタダキマステチュ」 角の方からカリカリ齧り始める「ピチ」に対して、俺は一杯あるからゆっくり食べろよ、と声をかけてやる。 だが「ピチ」は反応することなく、一心不乱に食べ続けている。 どうやらかなり気に入ってくれたようで、安心する。 俺は、今実装服は洗濯中だから乾いたらすぐ返してやる、と説明する。 それでも「ピチ」は反応する事なく、わき目も振らず懸命に食事を続けていた。 カリカリコリコリポリポリという耳障りな音を聴きながら、俺は静かに部屋を出た。 あのままずっと様子を見続けていたら、またいつスイッチが入ってしまうか、わかったもんじゃない。 続けて、「ぴち」を入れたダンボールを覗く。 こっちは、まだグースカ呑気に眠り続けている。 おいおい、いくら外見が飼い実装(の禿裸)だからって、随分な態度じゃないか。 俺は、クークー寝息を立てている「ぴち」の即頭部に、潰れない程度に加減したデコピンを垂直方向 から食らわせてやる。 「ピギッ?!」 突然の激痛で飛び起きた「ぴち」は、慌てて周囲をきょろきょろと見回す。 「テチ……テ、テェェェェェッッ!!! テ、テェェェェェェン、テェェェェェェン!」 自分が裸である事に気付き、大声を上げて泣き出す。 当然、その瞬間デコピンが顔面ド真ん中に炸裂する。 今度はさっきの倍くらいの力だ。 「デピャッ?!」 もんどり打って倒れる「ぴち」。 中身は飼い実装だが外観は野良実装のこいつは、もはや俺にとって純粋な虐待対象でしかない。 さて、今度はためらう事なくスイッチオンだ。 そもそも俺は、こいつが前から気に入らなかったんだ。 糞蟲の分際でひとみといちゃつきやがって、あまつさえ(俺ですらまだ遥か彼方の理想である)ベッド で一緒に眠っているというのだから! 手で掴み切れないほど大きく、しかも形の良いバストに、さも当然といわんがばかりに何度も抱きつき おってぇ! あまつさえ、自分の特等席だといわんがばかりにたっぷり見せつけるように頬ずりまでしくさって… 何度「俺と変われ!」と言いたかったことか! 俺だってまだ触ってすらいねーってのに、羨ましいったらねぇぞコンチクショウ!! そもそもなぁ、糞蟲ってのはウンヌンカンヌン………その癖しやがってブツクサブツクサ…… ひとまず、この機会に実装石とはなんぞやという事を、しっかり叩き込んでやらねばなるまいて。 そして最期は、実装石としてもっとも惨めな結末を与えてやろう♪ 俺のひとみに今まで好き放題していた報いって奴だ。 「テチャアアアア!! テチャアァァァ!!!」 「テギィィィッッ!! テチャジャアァァァッッ!!!」 今度は激しく威嚇し始めるが、もはやこいつとは会話すら交わす必要はない。 よってリンガルなど不使用。 さっきよりさらに強いデコピンで、箱の隅まで吹っ飛ばす。 「テギャオッ!!」 威嚇など無意味だと悟ったのか、「ぴち」は今度は怯え始め、箱の隅でブルブル身を震わせる。 だが容赦なくふんづかまえて無理矢理引き寄せ、まずは挨拶代わりに右腕をポッキリとへし折ってやる。 数秒の間を空けて、大声を上げる「ぴち」。 「——テッヂャアァァァァァッッッ?!?!」 ああ、癒される…♪ 素敵…素敵だわ、貴方の悲鳴は私を酔わせるの♪ 折れた腕を軽くつまんで、身体を宙に浮かせてぷら〜んぷら〜ん♪ 「テジャビャアァァッッ!!! デチャチャチャ、テジャアァァァァッ!!!」 だんだん訳のわからない悲鳴になっていくが、とにかく良し! 適当に振り回して腕が千切れかけるくらいまで楽しませてやった後、今度は右手でがっしりと身体を ホールドする。 「テ…テヒィ…」 奇妙な浮遊感に気分を害したのか、それとも激痛のせいか、「ぴち」はお願い、もう許して…と懇願する ような眼差しを向けてくる。 だがそれは、俺の虐待魂にターボをかますようなものなんだよ♪ さあ「ぴち」よ、野良として生まれ変わった元高級飼い実装よ。 実装石としてこの世に生を受けた以上、今まで溜まりに溜まっていた「果たすべき義務」をしっかり 果たしていただこう。 ニンゲン様によって極限の苦しみを味わわされるという、もっとも大事な義務をね♪ 腹部をカッターで縦に何度も切り裂き、傷口にたっぷりと天然塩をすりこんでやる。 「テ、テ、テッチャキャワゥワァァァァッッッ?!?!?」 う〜ん、実に良い声で鳴く♪ さぁて、今度は耳かきしましょうね〜♪ いつもひとみにしてもらうのが楽しみだったよね〜? 竹製のありふれた耳かきを逆手に持って、せぇの………ズブシッ! 「チビャアアァッッッッ?!?!」 パツンと膜を突き破る感触が、妙にツボにハマった。 はい、もう一方もね〜♪ ……ブシュウッ!! 「ギベギャアアァッッッ?!?!」 おっと、ごめんね痛かった? どこが痛かった? ナデナデしてあげるからね〜♪ グリグリグリグリグリグリグリグリ。 「デベピャッ、デベピャッ、デベピャッ、デベピャッ!!」 鼓膜を突き破った上に三半規管を引っかき回してやったので、「ぴち」は平衡感覚が保てず勝手に ごろんごろんと転がり悶える。 初めて耳にする奇怪な悲鳴が滑稽で、思わず頬が緩む。 これはこれで大変滑稽なのだが、まだなんとなく足りない気がする。 ——そうだ! 突然思いついたが、四本足の実装石を作ってみよう♪ まず足を付け根まで縦に真っ二つに裂いて、それぞれが癒着しないように切断面に活性剤を薄塗り してから包帯をきつく巻く。 股下から四本の足を生やした、不気味極まりない実装石の出来上がり! 「ドビャアァァッッッ!!! デピャアアァァッッッ?!?!」 今まで以上に暴れ、抵抗する「ぴち」。 うーん、ジタバタしてうるさいから、ひとまず背骨でも折って静かになっていただこうか。 頭を真上から押し付けて、押しながら上体をずらしてやると…ボキッ♪ 「デ……!!! テ、テ、テ、テチャ………?!?!」 見事に背中が折れた! だが、まだだ……まだ終わらんよ♪ 俺は緑色の絵の具を溶いた水をスポイトで取り、「ピチ」の右目に点眼する。 みるみるうちに腹が膨らんでいくが、出産には至らない。 「テ、テギイィィィィ?!?! ギ・ギ・ギ・ギュベエェェェッッッ!!!」 どんどん膨らんでいく自分の腹を見て、恐怖の表情を浮かべる「ぴち」。 こいつは、本当に表情豊かで俺を楽しませてくれる。 いい野良仔実装を拾ってきたもんだなあ自分♪ あんまり連発で痛めつけると、交換したばかりの偽石にどんな負担がかかるかわからんから、本当 なら強制出産といきたいところをぐっと我慢して、妊娠に留めてやる。 ま、その方が長く遊べるだろうからいいけどね。 せいぜい、お腹の子供達に全身の栄養を吸い取られるといいよ☆ もちろん、栄養はたっぷり「注射器で」直接補給してあげるから、心配しないでね〜! ああ、楽しい♪ やっぱり、実装虐待は何物にも代え難い至高の趣味だ! その後、中途半端はイカンと思い返した俺は、両腕も足同様に切り裂いて「八本足」に改造した後、 適当な布で作った猿轡をかましてやる。 栄養剤を多めにぶち込んでおけば充分だろうと、たっぷり一分くらいの時間をかけて、眉間に注射針 を差し込んでやる。 わざと「ぴち」に見えるようにね。 じわりじわりと針を近づけてやったら、刺す直前に失神しやがった。 なんだ、案外根性がないな。 眉間から栄養剤をぶち込まれた「ぴち」は、顔全体を不気味に膨らませた状態でダンボール内に放置 。 もっと遊びたいところだが、今回はこんなものかな。 さて、「ピチ」の様子を見に行かなくては。 「テチュ? テッチュウ」 部屋を訪れると「ピチ」はすっかり食事を終えており、俺の姿を見ると頭を下げてきた。 少し顔色が悪いようだが、まあいわば病み上がりみたいなもんだから、しばらくは仕方ないだろう。 こいつ、野良の癖に結構厳しく躾けられていたみたいだな。 大人しすぎてつまらんが、これ以上問題を起こさないに越した事はないから無視する事にする。 ようやく実装服が乾いたので、「ピチ」に着せてやることにする。 見立て通り、ほとんどぴったりだった。 「テチャア♪ オフクモドッテキタテチュ!」 「イイニオイガスルテチュ、キレイキレイテチュ♪」 これは本当は赤の他人が身に付けていたものなので、「ぴちの肉体」にはそぐわない。 しかし、中身の「野良実装ピチ」にとっては紛れもなく自分の服だから、愛着は強いだろう。 これで、「ピチ」は外観を完璧に復元し、そして「俺から禿裸にされた」という記憶もない状態にされた。 よっしゃ、オールグリーンだっ! 後は、今日を入れて残り二日間、必死で虐待派としての欲望を抑え続けるだけ。 勿論、溜まった鬱憤は「八本足のぴち」を虐待する事でたっぷりと晴らさせてもらうが。 なんて合理的な展開だろう! やっぱ俺って天才じゃん?! 「テェ……」 ふと見ると、「ピチ」がまっすぐ俺の事を見つめていた。 その無表情な顔からは、考えを読みとる事は出来ない。 どうかしたのか? と尋ねてみるが、「ピチ」はただ首を横に振るだけで何も言わない。 なんだって言うんだろう? その後、エセ愛護派と化した俺は「ピチ」に対して最高の待遇を繰り返し行い、さらにスキンシップも 取り、前よりかなり仲良くなる事が出来た。 俺自身は極限まで我慢しまくったんだがな。 「テチュウ! ニンゲンサンモットアソンデテチュウ」 じゃれついてくる「ピチ」を適当にかわしながらも、ふてくされない程度にはかまってやる。 一年前に上げ落としを食らわせてやった仔実装の玩具を与えてやり、適当に満足させてやったり。 飽きるまでセッセッセをやってやったり。 なんでこんな事せにゃならんのかと思うたび、心の奥底にストレスが蓄積する。 これを発散するために、「ぴち」の存在は大切だ。 俺は、後に控える楽しみに身体をウズウズさせながら、ひたすら我慢して「ピチ」の遊びに付き合った。 ふと、スポンジボールの応酬が止まる。 「ピチ」が、また無表情にこちらを見つめている。 「ニンゲンサン、マタアッチノオヘヤニイクテチュ?」 「ソレトモ、ピチトアソブテチュ?」 突然話しかけられ、思わず面食らう。 こいつには「ぴち」の存在を知られるわけにはいかないので、適当に言い訳を述べて席を立つ。 あの「虐待専門」部屋の悲鳴は、ここまで届いて来ない事は、過去何度も確認済みだ。 だから、安心して遊んでこられる。 そうだ「ピチ」よ、本当は遊びに行くんだよ「ぴち」の許へね♪ そんな事を考えながら、俺は「ピチ」を残して部屋を出た。 「八本足のぴち」は、その後も俺からさらなる過酷な虐待を与えられ続けていた。 強制妊娠が出産モードに転化するまで、一切餌は与えられない。 すべて、眉間からの栄養剤注射のみでまかなわれる。 しかし、その栄養も今は出産のエネルギーに費やされるのみだ。 身体的には問題がなくても、極限の飢餓感に突き動かされている状態の「ぴち」は、癒着を始めた 八本足で無様にダンボール底をはいずり回り、全身で苦しみを表現している。 その姿がとても面白おかしく、俺の「エセ愛護で」すさんだ心を満たしてくれる。 三半規管は復元されて平衡感覚は戻ったようだが、八本足にはまだ慣れていないようで、相変わらず 滑稽な歩き方だ。 飢えているせいか、目が殺気走っている……この調子だと、産んだ端から子供を食い殺しそうだな。 俺は、出産用の水皿を置いてやると、「子供は全員産め。一匹も殺すな」「全部無事に育てられたら、 餌をたっぷり食わせてやる上に家族ごと開放してやる」と釘を刺してやった。 「テェ…」と短く呻く「ぴち」を嘲笑する俺。 さぁて、言いつけを守って子供を育てられるかな? 多分無理だろうけど、ここは元高級飼い実装の意地の見せ所だぜ? と、さらに焚きつける。 しかし、「ぴち」の反応はほとんどない。 ちょっとつまらないなと思った俺は、ひとまず「ぴち」の後頭部をしばいてやった。 「テベチェッ!!」 その日の夜、早速「ぴち」は八匹の仔を生み落とした。 そして、そのうち二匹をわざと水皿から上げず溺死させ、その肉体を貪り食った。 どうやら死産だったという事にして、頭の中で勝手な言い訳を構築しているみたいだ。 俺は「一匹も殺すな」と言ったのになぁ。 テチテチと泣きながら、涙目で悲劇を訴えてくる「ぴち」と、その後ろに隠れて震えている親指達に 向かって、俺は満面の笑顔を浮かべながら、暖かい言葉をかけてやることにした。 「気が変わった。今すぐその子供達を全員食い殺せ」 「「「「レ、レチャアアァ———ッ!!」」」」 「「レピャア———ッ!!」」 悲鳴を上げる親指と蛆達。 しかし、どうした事か今回だけは、「ぴち」は一言も声を上げなかった。 「ぴち」が、可愛い子供達に振り返ったのは、その直後だった—— 約束の三日が過ぎた。 ひとみが、ぴちを迎えにやって来た。 俺は、預かっていたケージに収めた「ピチ」を手渡し、名残惜しそうな態度を演出する。 ひとみは、見惚れるような可愛らしい笑顔で「ピチ」を眺め、俺に深々と頭を下げた。 この件のお礼という事で、今度の週末は二人きりで過ごそうという約束まで取り付ける事が出来た! やったあぁぁぁぁぁ! ついに、ついに! チャンス到来っっっっ!! 顔にこそ出さなかったが、ひとみの申し出に、俺の心は激しく躍る。 いや、実際は思い切りニヤけていたかも試練。 ウッヒャホ——♪ こ、これで…これで! 俺も、つつつ、ついに童(ry あの巨乳を、今度こそこの手で思い切り揉(ry ——さて。 その後、見事に子供達を全部食い尽くした八本足のバケモノ「ぴち」は。 大量の糞便を撒き散らしながら、ダンボールの中でふてぶてしくでんぐり返っていた。 よほど栄養状態が良かったのか、こんな短時間で随分と肥えたように見える。 いまや、とても元飼い実装(中身)とは思えない糞蟲っぷりだ。 同族食い、しかも自分の子供に対して行ったことで、何かのタガが外れたのだろうか。 今まで過酷な虐待・拷問を受けていた事すら忘れたといわんが態度で、思いきり増長しまくっている。 俺の顔を見ると、メンドクサそうに顔を上げ、ウンコ弾を投げ付けてくるほどだ。 真っ二つに裂かれた腕で、よくそんな器用なことができるもんだ。 めちゃくちゃムカつくが、こいつが居なかったら三日間のエセ愛護なんかとても出来なかったわけだから、 むしろ感謝しなくてはならない。 当初の約束と違うのだが、俺はせめてもの感謝の気持ちを込め、こいつを開放してやることにした。 その話をした途端、ちゃっかり元気を取り戻してテチテチを騒ぎ立てる糞蟲。 無性にムカつくが、約束だからここで手を出すわけにゃ行かない。 人通りが少ない頃合を見計らい、ダンボールごと公園に持ち出し、実装石達を呼び出してからリリース!! ダンボールから糞ごと「べちゃっ」と地面に落とされた「八本足のぴち」は、即座に野良達からの嘲笑を 受ける。 そして、早速始まる集団リンチ! 「テチャアアァァッッ?!?!」という悲痛な叫びが、耳に心地よい。 そして、俺の心を暖かいもので満たしていく。 さらばだ飼い実装ぴちよ、お前はひとみに知られる事なく、ここでこいつらのエジキになって果てるのだよ。 俺の手の上でウンコもらした罪を、死ぬほど後悔するんだな! …え、何か忘れちゃいないかって? 気のせいでしょ。 面白いように袋叩きにされ、糞と砂と血にまみれる八本足。 やがて、クタクタになった所で全身を引き千切られ始める。 腕が飛び散るババンバン、足が千切れるババンバン。 またまた響く、「ぴち」の悲痛な悲鳴。 よく見ると、特定の野良実装にしきりに話しかけているようにも見える。 どーれ、最期くらい何を言ってるのか聞いてやろうじゃないの。 俺は、実装リンガルのスイッチを入れた。 コスッとな。 ピチ「テチャアアア!! ママ、ママーッ! 殺さないでテチ! ワタチ、ママの子供テチーッ!! 忘れちゃったテチーッ?!」 野良「何を言いやがるデスこのバケモノ! お前みたいな不気味な奴なんか産んだ覚えないデスッ!」 ピチ「テチイィィィッッッ!!! こうなったのはあのニンゲンのせいテチーッ!! ワタチのママ———っ!!! 助け————チベッ!」 頭を踏み潰されたと同時に、パキンという乾いた音が響く。 一方俺は、翻訳された「ぴち」の言葉の意味を把握出来ず、しばし戸惑いを覚えていた。 ママ? ママだって? こいつは、「飼い実装ぴちの偽石」を移植した野良仔実装だぞ?! 見た目はともかく、中身はひとみのペットだった「ぴち」なんだ。 それなのにどうして、野良時代の母親のことなんか覚えていられるんだ?! ——って、まさか? 俺は、ひょっとしたらとんでもなく大事な事を失念していたのでは?! 背中に、大量の冷や汗が流れる。 シャツがみるみる汗ばんでいくのがわかる。 待て……落ち着け、落ち着け、冷静になるんだ。 これは何かの間違いだ、間違いなんだ……天才の俺に間違いなんかあるわけがないんだ。 だって現にこの二日間、「ピチ」の奴は……… ポケットの中で携帯が振動したのは、思考がループを始めた時だった。 見たくない、すごく見たくない、でも出ないわけにはいかない。 覚悟を決めて、携帯の液晶画面を見る。 案の定、ひとみからの電話だった。 出るしかない…物凄く嫌な予感に襲われながら、俺は、通話ボタンを押した……… 携帯を耳に当てた瞬間、耳に届いたのは…怒り狂ったひとみの怒声だった。 その後、どうやって家に帰りついたのか、覚えていない。 精神的に大打撃を受けた俺は、ボロボロの廃人状態で帰宅した。 ひとみは俺に、問答無用で絶縁宣言を叩きつけて来た。 しかもそれだけではなく、俺の「実装石虐待嗜好」を周囲に公表し、徹底的に糾弾し追い詰める事を宣言 した。 甘いひとときも、童貞喪失のチャンスも、あこがれの巨乳も、すべてが遠ざかっていく。 なぜかって? それは、俺がぴち達にしでかした事が、すべてひとみに知られてしまったからだ。 その後、ひとみは自宅でリンガル越しに「ピチ」と話したらしい。 すると「ピチ」は、何もしていないのに俺から髪と服を奪われた事、偽石を除去された上に別な実装石 のと交換された事、さらにはその実装石に凄惨極まりない虐待行為を連日行っていた事などを、漏らす 事なく洗いざらい暴露したのだ。 その告白内容にブチ切れたひとみは、俺に電話をして以下略…という顛末だ。 俺はどうやら、まんまと「ピチ」……いや「ぴち」にハメられたようだ。 俺は…否、ネット上で説を唱えていた奴等は、大きな間違いをしていたようだ。 というより、俺を含めた誰一人として、「あの説は正逆も成立する」という可能性を失念していたのだ。 「記憶を司っている」のは、偽石ではなく「脳」の方だった。 俺は、いわばあいつらのCPUだけを交換し、HDDはそのままにしていた事になる。 それじゃあ、「ぴち」が俺からの虐待を記憶しているのも当然だ。 それだけではない。 実装石本体と偽石を繋ぐ「見えない神経網」は、他の実装石の体内に入り込んでもなお生き続けていた らしく、「ぴち」は偽石を通じて「八本足のピチ」が受けていた虐待の情報もリアルタイムで受け取っていた ようだ。 その上で状況を把握し、俺と仲良く接する「演技」をしていたとしか考えられない。 という事は、「八本足のピチ」も「ぴち」が受けていたエセ愛護経験を受け止めていた事になる。 「八本足のピチ」の最期の頃の態度は、野良が好待遇を受けで増長した時のそれに良く似ていた。 あれだけ過酷な虐待を受けたのにあんな態度を取っていられたのも、これが関係していたせいなのか?! これは後に知ったのだが、どうやら偽石の「性能」は個体により高低があるようで、知識や記憶・経験を 巧く使いこなせるかどうかはその「性能」にかかっているらしい、という見解もあるようだ。 これがもし本当だとしたら、飼い仔実装ぴちは、それよりもっと高度な性能を持っていた「野良仔実装ピチ」 の偽石をもらった事で賢さと知恵の活かし方が劇的な向上を果たしたのかもしれない。 だから、俺を騙すなんて事ができたのかも? そして、より劣る性能の偽石を得た「野良実装ピチ」はあのていたらくに……? いずれにせよ、俺はあの時「偽石と一緒に脳も交換」しておくべきだったのだ。 考えてみたら、専門の研究者達がいまだ解決し切れていないメカニズムを素人が弄ろうとしたのだ。 こういうペナルティは、充分想定できた筈だった。 あらゆる可能性を熟考して、より徹底すべきだったんだ! ——なんて、今更後悔しても、もう遅い。 自分の妹同様の存在に、無残極まりない経験と恐怖を与えたという事で、ひとみは益々愛護の念を 強め、同時に虐待派への憎悪を爆発的に膨らませたようだ。 もう、あの見事な巨乳を揉みしだく夢は完全に潰えた。 それどころか………ああああああ! ——俺、これからどうしよう? それから数日後。 ひとみの要請を受けた警察官数名が我が家を訪れ、俺は実装石虐待行為について洗いざらいゲロ させられるハメになった。 その後の俺の人生については………適当に想像してくれ。 ぎゃふん。 (終) ------------------------------------------------------------------------------------------- ここにまとめた偽石の設定云々は、あくまでこのスクの中限定という事で、よろしくデスゥ。
