タイトル:【虐】 実装石の旅立ち
ファイル:旅立ちのお終わり.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:22651 レス数:0
初投稿日時:2007/02/15-23:39:55修正日時:2007/02/15-23:39:55
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         旅立ちの終わり

秋の青空の中、成体にはまだ満たないサイズの実装石が何かを探している。
彼女は今年初めて親実装から巣立った実装石である。
賢い彼女の親実装は、様々な苦難を乗り越え初めて我が仔を無事一人立ちさせた。

実装石は多産で繁殖力が強いものと思われがちだが、成体になれる確率は高く無い。
飢え、病気、カラスなどの害獣、危険な同族、そして人間。
世界はあまりに実装石に厳しく、どれだけ多産であってもほとんどが死滅する。
実装石の数の多さは、偽石が壊れない限り死なないという不死性によるところが大きい。
成体になれば生存率は大幅に(それでも死亡率は高いが)上昇するが、
成体になれる幸運は限りなく小さい。
現に同時期に一人立ちできた仔実装は彼女一匹だけだ。
「やっと見つけたデス・・・」
池を中心とした都心にしては大規模な公園が彼女の世界。
一人立ちした実装石がまず初めに行うことは、安全な住居を作ること。
家となるダンボールの確保がまず最初の難関となる。
「少し臭いデスが十分な大きさデス。」
自分より大きな荷物を背負ってヨタヨタと歩き始める。
ぼさっととしていると同族に横取りされる可能性がある。
生き抜くためには迅速でなければいけない。
「重いデス・・・」
今迄頼ってきた親実装のありがたさが身に染みる。
彼女が住居に選んだのは公園と住宅地の境、コンクリートの外壁の近く。
木々で陽があたらず薄暗い茂みの中だ。
ダンボールを横向きに設置すると中に転倒防止の重石を置き、何度か出入りを繰り返す。
そして「デスゥ〜ン」と満足にひと鳴きした。
「(ここが私の家デス・・・)」
初めて作った我が家を見て感慨深げに眺める。
暫く眺めていたが、はっと気付いたように少し離れた茂みに向かう。
「ママから貰ったタオルを入れるデス・・・」
一人立ちの日に餞別に貰ったタオルを探す。
ところどころ緑色の染みが付いたお世辞にも清潔とは言い難いものだが、
自分の服以外の防寒具は非常に貴重だ。
これから凍死の危険がある冬を迎えるにあたり、タオル1つが生死を分ける可能性がある。
茂の中からタオルを回収するともに、ビニールに入った生ゴミも持ってくる。
これも彼女の親実装からの餞別だ。家の中に入りビニールの中を覗き込む。
「すごいご馳走デス・・・」
卵の殻、乾いたご飯、鳥の骨、どれも滅多に食べられるものではない。
「リンゴ!、リンゴもあるデス!」
何より彼女を驚かせたのはデザートのリンゴの芯。
実装石にとって甘味は最大の贅沢。
野良である実装石にとって、生ゴミの中で果実の甘みは何よりも貴重。
餌場で常に争いの原因になり、手に入れることはかなりの困難を伴う。
「・・・デェー・・・」
彼女の親実装がどれだけ自分を大切に思ってくれているのか分かった。
「(怪我の原因はこれだったデスね・・・)」
旅立ちの数日前から生傷が絶えない親実装。
何度理由を聞いても「何でもないデス」と硬くなに口を閉ざした。
それでもどこか嬉しそうな顔が思い浮かぶ。
リンゴの芯を取り出しほんの少しだけ齧る。
「甘い・・・、デス。」
甘味をかみ締めながら親実装を想う。
暖かな気持ちとともに目に微かな涙が浮かんだ。

住居の問題が一区切りついた彼女の次の仕事は食料の調達である。
餞別の生ゴミは数日で底を尽く。その間に食料を確保できなければ避けられない死が待っている。
日が高く、朝出される生ゴミは期待できない。
公園に自生する植物と、木の実が命を繋ぐ糧になる。
野草でいえば「あけび」「ムカゴ」、木の実は「銀杏」「南天」。
保存が利く木の実は貴重な保存食になり、普段は手を付けない。
公園には「柿の実」という最上級のご馳走もあるのだが、同族の争奪が激しく
一人立ちしたばかりの彼女にはリスクが大き過ぎる。
彼女は親実装とよく行った場所に行こうとして、途中で止めた。
「まだ会うには早すぎるデス・・・」
親実装に連れていかれた場所に行けば、当然親実装に会う確立も高い。
一人立ちしたばかりで会う気恥ずかしさと、ちょっとしたプライドで
彼女は少し遠い場所へ行くことを決めた。

日が傾きかけて木の実を半分ほど入れたビニール袋を手に持って家路に着く。
「デフ〜。疲れたデス。」
この季節冬を越すために同族が同じように木の実を拾う。
今日一日ではとても十分な量は確保できない。
まだまだ家の環境も満足できる状態ではない。
トイレの穴や、食料貯蔵庫、飲み水を入れるペットボトル、
雨を弾くための補強用のビニールシート・・・
まだまだ生きて行くには足り無いものが多すぎる。
「デフ〜。一人で生きるのは大変デス。」
今日何度目かの溜息。親実装と暮らしていた環境がいかに
恵まれていたか、ことある毎に感じてしまう。
「(早く家に帰ってご馳走を食べるデス・・・)」
あの甘いリンゴが待っていることを思い出し暗い気分を振り払う。
しかし幸せな妄想は聞き慣れたれた同族の断末魔によって切り裂かれた。

「デギャァァァ!!」
「デブォォーァア!」
「デヒッデガァァ!」

悪魔が来た。人間という悪魔が。
「デヒッッ!」
彼女は声が聞こえると一瞬悲鳴を上げて硬直し、周囲を確認し一直線に茂みに身を隠す。
隙間から覗くと広場の中央で実装石を殴り殺している人間が見える。
手に持ったバー(ry で実装石の頭をかち割る。腹を踏み抜く、手を引き千切る。
排泄肛にバー(ry を差込み貫通、そのまま地面に打ち付ける。
成体、仔実装見境無く死を振り撒く。
あまりの凄惨な風景にパンコンしそうになる。
「惨すぎるデス・・・ああ、蛆ちゃんまで・・・」
強制妊娠させられた成体から排出される蛆実装を、片っ端から踏み潰していく。
あまりの地獄絵図に目を背けようとしたとき、思わぬものが目に入る。
「ママ・・・!?、デス・・・!」
先日別れたばかりの親実装が人間に捕まっている。
髪を掴まれ、空中で足をバタつかせる。
「なんで!?どうしてデス!?」
あんなに賢い母親が、人間に捕まるはずがない、そう信じてきたことが崩れる。
それはほんの少しの気の緩みだったかもしれない。
子供の一人立ちを見送り、一抹の寂しさを紛らわせるため広場に出た。
他の親子を眺めながら思い出に浸っていたのかもしれない。
そこで会ってはならない人間に会った。
ほんの些細なことで全てが終わってしまった。
人間が親実装の服に手をかける、髪を引き千切る。
仔実装時代に包まって寝るのが好きだった亜麻色の髪。
無残に地面に落ちる。
「デグッ、ママ・・・!!」
助けたい、駆け出していきたい!
そんな行動を抑える1つの約束を思い出す。

『家族が万が一人間に捕まっても決して助に行ってはいけないデス』
『なんでテチュ!?絶対助けに行くテチュ!』
『絶対に駄目デス!!』
『テェ!?』
『人間には絶対敵わないデス。
 私は散々、嫌というほど見てきたデス!
 お前は優しい仔だから敢えて言うデス。
 お願いデス、必ず逃げるデス』
『テェェ・・・』
『お前は私の宝物デス。どうしてもこの約束を守って欲しいデス』
『分かったテチュ・・・』

歯を食いしばり目を見開く。
せめてその最期だけでも目に焼き付ける。
人間が刃物を取り出し、親実装の腸を掻っ捌く。
手を突っ込み臓物を引き摺り出し、振り回す。
散々地面に叩き付けてから高々と掲げ、首を絞める。
事切れる寸前であろか、断末魔と思える最期のひと鳴き。
「デギャァァァァァァァ」
人間には耳障りな声。
でも彼女にははっきりと聞こえた。

「生きて」、と。

人間が帰った後は死屍累々の惨状が広がる。
すぐにでも親実装の遺体に駆け寄りたかったが、これも耐えるしかなかった。
間も無く実装石の死体を狙って同族達が押し寄せるからだ。
この乱痴気騒ぎに巻き込まれたら無事では済まない。
同族食いの連中は栄養状態も良いのか力も強い。
喧嘩になったらまず勝てないであろう。
彼女は無言で背を向け家に帰った。

木の実入りのビニール袋を家の中に放り投げ、ご馳走の生ゴミも手を付けずにタオルに蹲る。
彼女は気付いてしまった。
今日、自分がいつもの場所に行っていれば、
母親に会っていれば、最悪の事態は防げたのではないかと。
例えそうではなくても、ほんのちっぽけなプライドが、
母を助ける機会を、踏み潰してしまったのではないかと。
「ッ!・・・ママァッ!・・・ママァァ・・・!」
嗚咽を耐え切れずタオルで口を塞ぐ。
タオルに染み付いた母の体臭が鼻をくすぐる。
走馬灯のように母との思い出が溢れだす。
そして堤防が決壊したかのように叫び出す。
「なんで!!何で死ぬんデス!
 一人は嫌デス!怖いデス!寂しいデス!辛いデス!
 こんなのって無いデス!頑張って生きてるデス!
 どうしてこんな不幸になるデス!」
想いのたけを叫び、荒い呼吸を落ち着ける。
暫くして夜の静寂の中、彼女は呟いた。
「もう、生きたくないデス・・・」









       グシャッ!











刺繍入りのパーカーを着た若い男がダンボールから
金属バットを持ち上げる。
「デスデスうるせぇーんだよ糞蟲」
煙草の灰を落としながらダンボールの中の気配を伺う。
ダンボールは完全に潰れ、緑色の体液が外側まで染み出している。
公園にたむろしている輩だろうか、虐待派だろうか。
どんな理由で彼女を殺したのかは分からない。
一匹の煩い実装石を殺した。
彼にとっては、ただそれだけのこと。

計らずも彼女の願いは敵った。
それが幸運だったのか、不幸だったのか。
苦しまずに一瞬で死ねた。
それだけが事実。
月明かりの中、公園は再び平穏を取り戻した。

彼女だけを除いて。

END

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