天と地と 3 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 生まれてすぐの仔実装2匹を隔離して手に入れた主人公。 初期の刷り込み知識に微妙に誤った知識を与え、なすがままに成長を見守ろうとする。 他には何も与えない。 親の愛情も、必要以外の生存のための知識も、餌すらも…。 果たして、純真無垢な野良の仔2匹を必要とする主人公の実験とは…。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 一晩が経過した。 2匹は、疲れと空腹も手伝って、非常に良く眠れたようだ。 早くも、躾の行き届いていない実装石の特長とも言える激しい歯軋りを響かせるほどの熟睡振りだ。 目を覚ました2匹は、眠り眼を擦りながら、挨拶の様にお互いの髪や服を整えあう。 初期の愛情…”血族の絆”の名残が根強く残っている。 そして、汚水のトレイを跨いで、トレイの中で身体を洗い出す。 寝ている間に、漏らした糞を洗い流す目的もあるが、 この2匹にとって、まともな娯楽が、コレしかないという事も関わっている。 この様に、1日目の親からの指導と、仔がそれをどう解するかによって、生活に関わるクセが決まってくる。 おそらく、この2匹は、身体を洗うとは、服のまま汚水で擦ることであり、 糞で汚れたら、すぐに洗うべきだと覚えた。 時間が経てば、汚れたら洗う以外にも、習慣的に、とりあえず”朝は身体を洗う”物だとなるようになる。 それに沿って、糞は食べ物ではなく、汚く、臭く、不潔であると認識している。 これは、親や状況によって修正されていくことになるが、 個体としての本能、その根底には、初めて理解したことが根強く残り続けるのだ。 それが実装石にとっての知能の全て… それを延々と繰り返すことが実装石… 故に、”特別な要因”が無ければ、個としての個性はあっても成長は無く、種族としては延々と停滞し続ける生き物でもある。 対応や適応力は高いが、”与えられた”状況にしか、成長の要因が存在しないのだ。 それもまた、俺が実験に必要としている要素である。 俺は、朝の挨拶をしに行く。 顔を見せると、2匹は違った反応を示す。 1匹は、両手でバンザイをしながら「テチュ〜♪」と慌てて駆け寄ってこようとする。 しかし、1匹は、俺の姿を見て「テチ?」と首をかしげその場を動かない。 「おはよう」 「ママ!おはようテチィ〜♪」 もう、1匹は、俺が挨拶すると、キョロキョロと周りを見渡し「ママ?ママ?」と探し、 何度も「おはよう」と言ってやると、ようやく、俺の方を向く。 声の主が俺であると判ると、恐る恐る、もう1匹の背後によっていき、その背中越しに見る。 1日経過して、実装石の本能である”個人の認識”が始まっているのだ。 1匹は、余計な情報が無く、俺を親と判断している。 もう1匹も、同じ情報を持ちながら、本能的に持つ姿の認識で、俺を”違う生き物”と判断している。 「ママ?ママじゃないテチ…」 「ママテチー!何を言ってるテチ?あれはママテチィ♪」 もう1匹も、おそらく、姿では俺を親とは違うと感じているが、 それよりも、まだ、最初に記憶した印象の方が勝っているのだ。 「ママー!遊んで欲しいテチ!ナデナデ〜、お歌も歌って欲しいテチ!お腹も空いたテチ♪」 ブピブピと少量の糞を零しながら、ピョンピョンと跳ねてねだる。 「ママの声テチ!あれがママテチ?でも、ママの声テチ…」 どうやら、素直に受け入れられない様子。 本当は、あと1日放置して、知識的に人語を理解できるあたりまで観察する予定だが、こんな個体差が生じるとは予想外だ。 そいつを水槽から掴み上げる。 「ママ!ママ!ワタチの方が先テチィ!先に抱っこしてテチィィィ!!」 もう1匹が顔を真っ赤にして地団駄を踏み、片手を振り回して、ニュニュニュと軟便を漏らしながら抗議する。 『まぁ、性格的には、この方が実験向きで良さそうだ』 「そうだよ、俺はママじゃない人間だよ。ニ・ン・ゲ・ン」 ニンゲンと聞いて、2匹は「テチ?」と一瞬、首を傾げるが、 すぐに2匹は、片手を口元に運び小首を傾げる。 本能に記憶されたキーワードから2匹が選んだ行動だ。 どうやら、この2匹の親は、本能的に人間には媚びる物と言う幼児記憶を持ち生きていたようだ。 普段なら、そんな仕草を見せれば首と胴体を捻り切ってやる所だが、実験なので我慢する。 「ニンゲン!ニンゲンママテチィ!金平糖をくれる生き物テチィ!金平糖ママ〜♪」 まぁ、本来、生後1日目で覚えるべきことを何も教えていない状態では、 この知恵の足りなさは致し方ない。 むしろ、こうなるように仕向けたのだから。 手の中の仔は、親ではないと判った俺に掴まれて不安なのか、媚び姿勢をとりながらも震えている。 「ママは何処テチ…お水を運んでくれたテチ…ご飯を探しに行ったテチ…やさしいママテチー…」 認識が変われば、昨日、母親と認識していた物への記憶と見え方が異なるので違うものと思っている。 「残念だけど、君達のママは突然、事故にあったんだ。判るかい?じ・こ」 「テ!」下の仔が、飛び上がるほど驚いて尻から一際大きくブビッと音を立てる。 手の中の仔も、プリプリとパンツを膨らませながら、目から同じ色の液体を零し始める。 「事故…わかるテチィ!とても怖い事テチィ!チンだりするとても痛い事テチ!」 「怖いテチィ!怖いテチィ!ママは…ママは大丈夫テチィ!?」 「残念だけど、ママは死んでしまった。 代わりに俺が君達を飼って育てるんだよ。 俺が君達の新しいママだ」 すると、下の仔は。 「飼う…飼う…ニンゲンに飼われるテチィー♪金平糖にフカフカベットに玩具テッチ!ステーキもあるテチィ♪」 まぁ、何と切り替えの早い、というか、こいつ、数字の4以上を認識できるか怪しいな…。 しかし、手の中の仔は。 「ママ、ママが居ないと嫌テチィ!ママが帰ってこないテチィィィィ!テェェェェェェン」 愛情というか、甘えたい欲求を満たせないのが我慢できないらしい。 1匹は、既に親などどうでも良く、飼われる事に喜び、1点をクルクル回りながらはしゃいでいる。 もう1匹は、派手に泣き叫び、ついに手足を激しくバタつかせて泣き叫ぶ。 「俺が新しいママだ、ママの言うことを聞いて大人しくしなさい」 「イヤー!ママも一緒テチィ!洗いっこするテチィ!一緒に寝るテチィ!子守唄テチィ!ニンゲン、ママも用意するテチィ!テェェェェン!」 「そんなに我侭な仔は、いい仔とは一緒に飼えないなぁ」 俺は、その仔を、水槽より上に持ち上げる。 同時に、水槽の黒い幕も取り払う。 2匹に部屋の様子がわかるようになる。 目に付くのは、もう1つの水槽だ。 仔実装の居た水槽と、同じ大きさの水槽が隣に用意されている。 その水槽には、全面に黒い幕が張られ、中の様子は見えない。 その水槽の上に、手にした仔実装を持っていく。 「ニンゲンは、やさしいママとは違い、言うことの聞けない仔には、オシオキをするんだ。 良い仔は、イッパイイッパイやさしくするけど、悪い仔にはとてもとても怖い事をする。 君は悪い仔だから、これから、こんなゴミだらけで、汚くて、臭くて、住み難い所で寝ることになる」 服の襟首を掴んで吊るし、仔実装に水槽の様子を見せると、仔実装の顔は青ざめ激しく暴れる。 「イヤァァァァ!!何かイッパイあるテチィ!狭いテチィ!臭いテチィ!」 その様子は、反対の水槽にいる仔実装からは丸見えになっている。 水槽の仔実装は、その声と、吊られた仔実装の暴れる姿を見て、腰を抜かして震えだす。 「ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!言うこと聞くテチィ…言うこと聞くから許して欲しいテチィィィィィ」 「ニ・ニ・ニンゲンママー!許してあげてほしいテチィ! イモウトは大切な家族テチィ…二人だけの家族テチィ…一緒にいたいテチィィィィ」 水槽の方の仔から、こんな言葉が聴かれるとは思わなかったが、俺は無視して手にした仔をそっちの水槽に降ろす。 「臭いテチィィィィィィィ、イヤイヤイヤイヤイヤイヤ〜!!テェェェェェェンテェェェェェェン」 「何も心配することは無いよ、妹は悪い仔だから罰を受けて当然なんだ。 君は良い仔だから、これからイッパイイッパイ贅沢が出来るんだよ」 姉の水槽に話しかけてやる。 妹の水槽から、絶叫が響くたびに、姉はビク!としながらも、俺の機嫌を損ねまいと「テチュ…」と返事をする。 「じゃぁ、お腹空いているだろうからご飯にしよう」 そう言うと、流石に姉の方も表情や態度が一変する。 まる1日、胃の中には何も入っていないのを、水と遊ぶことで気を紛らわせていたのだ。 食事と聞いて、態度が変わらない訳が無い。 姉の仔実装は「テチュ♪テチュ♪」と小躍りを始める。 もう、頭の中にも耳にも、妹のことや叫び声は聞こえていない。 ”ニンゲンに飼われて贅沢が出来る…ご飯があたる”それが全てを支配していることだろう。 そんな姉の前に、星型をした塊を2個置いてやる。 「ほら、金平糖だよ」 「テッチュ〜ン♪」 喜んで手に抱えベロベロとしゃぶりだす。 「アンマ〜イテチュ〜♪アンマイのは金平糖テチュ〜♪」 俺が置いた、”星型をした塊”は、乾燥した仔実装自身の糞である。 仔実装の糞に申し訳程度の砂糖を混ぜて金平糖の様な形に整形して固めたものだ。 一応、臭いも少ないし、微かに甘味もある。 なにより、この仔実装には、本能的な知識以外、何も存在しない。 そして、本能での情報は非常に曖昧で断片的なものでしかない。 それを、親と居ることによって、情報を整理しなおしていくのだ。 ”汚水”を”水”と認識したのと同様、今度は金平糖というものを認識させる。 実装石が本能的・断片的な記憶として持つ、金平糖の大きさ、形、それが甘く美味しいものという共通記憶で、 実際にそれと同じ、情報の偽物を用意してやれば、その個体にとってはゆるぎない記憶となる。 金平糖に似せた実装コロリとは、やや、意味合いが違うが、ようはアレに引っかかるのと同じだ。 仔実装は、記憶どおりの物体を与えられ、体験したことの無かった味に触れたことで、 仔実装にとっては、これが”金平糖”になってしまったのだ。 「よしよし、良い仔だ…お水も替えてあげようね」 俺は、今まで通り、新鮮な”汚水”を補充してやる。 対する、妹仔実装にも餌を与える。 妹の水槽には、姉の水槽から響く「アンマイテチュ〜オイチイテチュ〜♪」という声が響いている。 2つの水槽には、カメラと共に、マイクとスピーカーも設置されている。 双方向で2つの水槽の音を拾い、お互いの水槽に流すのだ。 その音も、仔実装の大切な情報となる。 妹仔実装は、水槽の隅で座り込んでいる。 見慣れない風景、嗅ぎ慣れない臭い、この世に唯一存在した仲間との別れ、 記憶に曖昧として存在するが名前すら知らない物ばかりがある世界にひたすら恐怖していた。 しかし、同時に空腹感によって、聞こえてくる姉の声にだらしなく涎を垂らしていた。 ”姉は美味しいものを与えられている” ”姉は素直に言う事を聞いたので、幸せになっている” ”何の恐怖も存在しない『あの』世界に居る” しかし、俺が覗き込むのが見えると弱々しく震えだす。 そんな、怯える仔実装の前に、俺は本物の金平糖を置いてやる。 そして、威圧感をこめた口調で語る。 「おい、貴様は悪い仔だ!!姉とは違い、救い難いクズで汚く、バカで醜い能無しだ! そんなクズにまともな食べ物など与えられるか!!貴様にはウンコ以下のものしかくれてはやらない。 ありがたく食えよ!!」 口調の変化で会話内容が変化するのは、実装リンガルと同様だ。 おそらく、仔実装の耳には、俺の言葉はとんでもなく汚く激しい侮蔑と罵りのオンパレードであろう。 こんな侮蔑の言葉は、ヒステリックに育った裕福な飼い実装数匹が、 公園で、1匹の飢えた野良実装に服を汚されたときぐらいしか出てこないだろう表現。 それが、直接、耳にガンガンと叩き込まれたのだ。 仔実装は、ブバッと糞を噴射して、後ろに腰を抜かす。 「どうした?ウンコ以下の汚らわしい食い物を食べないのか?それしか食べ物は無いぞ!」 仔実装は、”それしか食べ物は無い”と聞くと、恐る恐る這って近寄り、手にとってかぶりつこうとする。 「硬いテチッ!」仔実装の力では金平糖は噛み砕けない。 金平糖というものを理解していれば、本能的に舌で舐めるだろう。 「歯が折れるテチ、食べられないテチ、レロレロ…変な味テチ…ウンチと違うテッチ、これはまずい物テチィ」 仔実装は、昨日、1回だけ空腹から糞を食べている。 その味は記憶している。 そして、ウンチは食べ物ではないということも。 しかし、それ以外の味は、本能的に『金平糖=甘い』『ステーキ=旨い』ぐらいの曖昧なもの。 実際の味は、親が「コレが金平糖デス」と持ってきて、最初に味わったものが全て。 それが、ウンコ以下の味といわれて最初に味わったものは、その味がウンコ以下と記憶され、 本能的にまずい物に認識される。 これが、無垢で知識の入っていない野良の仔実装を捕獲してきた最大の理由である。 人間に飼われていた実装石の仔では、親の体験した事が、本能的記憶として、 教えられていなくても、人間の物を認識してしまう事がある。 野良の成体が、よくステーキや寿司を要求するが、それは、本能的には記憶された事柄でも、 実際に味わったことが無いために内容は曖昧だ。 とりあえず、”人間によってしかもたらされない豪華なもの”という表現でしか判らない。 当然、その仔も、言葉としてステーキとかを知っていても、内容は親から聞くままである。 しかし、一旦、人間に関わった実装石は、直接知らなくても、野良より多くの情報が仔に入っている。 味の優劣などが、最初はいいが、時間の経過と共に感覚的に判ってしまう事があるのだ。 水槽の環境もそうだ。 最初に居た何も無い空間。 2匹には全ての世界だ。 そこから、妹は、物の沢山ある空間に落とされた。 ペット実装用のダンボールハウス、常に清潔な水をたたえた簡易プール、シャワー、開いた空間には沢山の玩具…。 水槽の床には毛足の長い清潔な絨毯、ブランコなどの遊具もある。 家の中には、タオルが敷かれたベット。 消臭の為の消臭元〜花の香りも置かれている。 割と金の掛かった、平均より上の飼い実装の環境である。 しかし、俺が言った一言のおかげで、何も知らない仔実装のファーストインパクトで、 この環境は、元居た世界より、悪い環境としか感じない。 臭く、汚く、狭い環境にしか。 「あーあ、只でさえ小汚い環境なのに、糞を撒き散らして」 「テ!テテェ!」金平糖をまずそうに食い尽くした仔実装は、その言葉に驚く。 「あ・洗いますテチ、キレイにしますテチィ!お水で洗うテチィ!お水をくださいテチ」 俺は、綺麗な水を満載するプールを指差す。 「貴様みたいな汚いヤツには、普通の水など使わせるか!あそこのアレで洗え」 「テェェェ!あれは、お水じゃないテチィ!何かキラキラして透き通っているテチィ!」 「当たり前だ、お前にキレイな水などやれるかバカ!その汚いモノでウンチを洗え! 今度からは、それがお前にとっての水だ!お前にはそれで十分だ」 仔実装は泣く泣く、プールに跨いで入り身体を洗う。 「テェェェェ…テチィィィィ…」力なく呻きながら股を擦りだす。 一部始終は、やはり、反対の仔実装にも丸聞こえであり、また、そっちからは、 水槽を覗き込む俺の姿も見えているだけに、余計に怖さが増している。 どっちに対して喋っているかが、姉仔実装の方からははっきり分別が出来るのだ。 ”きっと、妹はとんでもない場所でニンゲンにいじめられている”といった所か。 「お前が怖がることは無いよ。これは、クズだから当然なんだ。 お前は何も心配しなくていいよ」 姉仔実装のほうにやさしい口調を向ける。 「おやおや、ウンチをしたのかい?」 「ウンチ漏れちゃったテチー下着汚れたテチィ、ママに言われたとおり洗うテッチィ♪」 姉仔実装もトレイに向かい、見せ付けるようにジャブジャブと汚水で身体を洗う。 「怖かったんだね、いいんだよ、お前は良い仔だから、漏らしても怒らないよ」 一方、目を向けると、妹仔実装は、プールで身体を洗い終わって居た。 糞で水が汚れて濁っているのを見て、安心しているようだ。 自分が知っている水と同じだと。 仔実装は、水面に顔を付けて水を飲もうとする。 すかさず「あーあ、お前!勝手に水をキレイにしやがって!」 「テテェェ!!」 汚れたものを洗って、水がキレイになるなんてことは無い。 しかし、そんな知識の無い仔実装は、俺の恫喝に訳も判らずに、判断する余裕も無く萎縮するしかない。 「ゴメンナサイテチー、ゴメンナサイテチー」 「お前には、キレイな水を使うことは許されない! お前が飲むのに、身体を洗えるほどキレイな水はやれない!コッチの水しか飲んじゃダメだ!」 仔実装の襟首をやさしく掴んで、水飲み用の小さな容器にやさしいタッチで顔を付けさせる。 そこには、やはり、澄んだ新鮮な水が用意されている。 これで、飲む水と身体を洗う水で、共に新鮮な水を分けて使うことを覚えさせる。 本人には、汚れた水のみしか使わせてもらえない地獄だ。 レロレロ…仔実装は渋々と舌を出して、丁度良いサイズの容器から水を舐め取って飲む。 その表情は、顔の肉がところどころヒクヒクと歪み、血涙と鼻水を流しながらの嫌がりぶりだ。 その間に、プールの水を新鮮にしてやる。 「多々でさえ、お前は汚いんだ、この汚れた水でも少しはマシになるだろう。 少しでも汚れたら、この汚水で洗うんだぞ!糞まみれより遥かに良い。 元が汚いお前には、汚水まみれがお似合いだ」 徐々に責め口調を過激にしていく。 こうして、2匹を隔離してそれぞれ、口調とは真逆の対応をして過ごさせてやる。 片方は、妹の酷く扱われる様子が声だけで伝わりつつも、故に自分は優しく大切に扱われていると感じている。 それだけに、何も無い水槽の空間を自由に使い、好きなだけ駆け回って遊び、自由に身体を洗える。 好きなときに好きな場所に糞をし、服を汚しても怒られない。 要求すれば餌も水も与えられている。 自分は幸せなのだと実感していく、ここは人間に与えられた天国なのだと…。 片方は、姉の自由に遊ぶ歓喜の声を聞きながら、臭く、汚く、狭いと信じ込んだ空間に落とされ、 周りに無造作に置かれた玩具が、今にも襲ってきそうで、遊具は只の障害物…自由に動き回ることすら恐怖である。 言葉で責められ、不潔な水と食事しか与えられず、少しでも身体を汚せば怒られる。 本来求めるものは、全て与えられている。 しかし、仔実装は言葉によってのみ感じている…ここは人間によって与えられた地獄なのだと…。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 〜 天と地と 3話 完 〜
