タイトル:【虐】 「託児」、その後
ファイル:「託児」、その後.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:11187 レス数:1
初投稿日時:2007/01/29-19:23:30修正日時:2007/01/29-19:23:30
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「お前はきっと成功するデス!気合いれていくデス!」
「わかってるテチィ!ワタチはお姉ちゃん達と違ってお利口さんだから出来るテチ!!」
「お姉ちゃん頑張ってレチィ!!」

蛍光灯の明りに照らされた実装石の親子。
親実装は仔を両手で抱え上げ、最後の別れと激励を与えていた。
仔実装は仔実装で母の手の中でふんぞり返って根拠の無い自信を振りまいている。
その親子から30センチほど先の地面には赤緑の液体と細かな肉塊が滴っていた。

「さぁ、行くデス!」

そう、今まさに親実装はこの仔実装を託児しようとしていたのだ。
しかしここは託児の名所、コンビニではない。
今でもコンビニで託児をする実装石達は確かに後を絶たない。
そこでコンビニでの託児が危険であることを中途半端に理解した実装石がいた。
ここはその実装石達が見つけた新たなる託児の名所候補。

「デスゥゥゥ!!!」
「テッチィィィイイイイ!!!」

掛け声が重なったと同時に、親実装の手から仔実装が宙に投げ出される。
そして仔実装はそのまま目標へ向かって突き進み、見事中へ落ちていき・・・

「チベェァッ」

姉達と同様、細かな穴のついた目標に足先から頭頂までところてんのように体を細く寸断されてしまった。

「デェェェェエエエ!!!!?」
「レェェェ?!お姉ちゃん!!?お姉ちゃぁぁぁん!!!」

菱形のところてんと化した仔実装はビチャビチャと生々しい音をたてて地面に真新しい染みを作った。
崩れ落ちるように両手を血について、親実装は涙した。
これでこの親実装は足元の親指実装以外、全ての子供を失ったことになる。

「なんでデスゥ?!ここなら成功したヤツもいると聞いていたデスゥ!なんでワタシの仔は皆死んじゃったんデスゥゥゥゥ!!!?」

親実装の悲鳴が団地中に響きわたる。
ただでさえ煩い実装石の絶叫だ。
この反響しやすい場所であげられれば迷惑きわまりない。

「はぁ・・・また実装石か・・・・」

案の定、管理人が扉を開けて出てきた。
彼はすぐに市販のコロリスプレーを取り出し、やかましく泣き叫ぶ親実装に吹きかける。

「デェェェェエン!!!!デェェェェデボァ・・・・・」
「レビェ・・・・」

親実装の泣き声は小さな断末魔とともに途切れ、巻き添えをくらった親指もその場に倒れた。
文字通りコロリと倒れ付した二匹の体からは体液と糞尿がどろどろと流れ出てくる。
管理人は慣れた手つきでスプレーをしまい、軍手をつけ、さらにその上からゴム手袋をつける。
折りたたんでいた袋を手にし、親子の死体を素早く放り込むと、しっかりと封をしてから電話を取り出した。

「もしもし・・・あ、どうも。いつもありがとうございます。また実装石が出ましてですね・・・・えぇ、今回は一家族だけみたいです。
 はい・・・はい・・・・わかりました。ではいつもの専用集積所に置いていきますので、後はよろしくお願いします・・・」

用件を手早く告げ、電話をしまい、染みの出来てしまった床を雑巾で軽くふき取りると、管理人は死骸袋を「専用の集積所」
に放り出す。

そう、ここは高層住宅地、マンションの駐輪所。
実装石達が新たに見つけた託児場所と言うのは自転車の籠のことだったのだ。



それはある実装石がコンビニにて、自転車で来ていた人間がコンビニ袋を籠に入れていることから思いついたことだった。
人間が自転車を利用するときに確実に一度は見るだろう場所、籠。
高さ的にも届かない位置ではない。
何より親実装自身が存在に気づかれずに子供を発見してもらえる確率がコンビニでの託児よりもはるかに高い。
人間が店内で買い物をしているうちに子供を放り込んでおけばいいからだ。
何匹かの実装石がその方法で子供達を置いてくる事に成功したという信憑性の無い情報が実装石間で流れ出すと、彼女らは
一斉に近所の駐輪所へと走り出したという。



昨夜、実装親子が入り込んだこの住宅地は、駐輪所の託児においてまだ具体的な対策を見出せずにいた。
この地域で実装石達が駐輪所に頻繁に姿を現すようになってからすでに一ヶ月。
実装石の出入りを封じる具体策が出来ていないのはこのマンションの住人達だけのようだ。

明確に区別出来る程の愛護派も虐待派も住んでいないこのマンション。
実装石に対して知識も無く、つまりは猫や犬と同じ動物として実装石達を扱ってしまう。
それが思い切った対策を取れない原因だった。

某マンションでは、「実装石は全て糞蟲であり、積極的に駆除すべき存在である!」と虐待派の住人が吹聴し、その言葉を
信じた住人達が見つけ次第その虐待派に引き渡し、駆除してもらうという対策をとっている。
このマンションでは駐輪所にこの虐待派住人が仕掛けた数々の仕掛けがあり、駐輪所で託児を始める前に実装石を捕らえ、
捕獲することが出来るのだ。

某マンションでは、「実装石は全て良い仔達であり、積極的に保護するべきである」と愛護派の住人が説いてまわったが、
ほとんどの住人はその言葉を聞き流していた。
業を煮やした愛護派は、「こんな連中に可愛い実装ちゃん達が捕まってしまったら酷い目に合わされてしまう」と言って、
大金を費やし、駐輪所を実装石達が入れないように強固なアクリルのケースで囲ってしまった。
ケースの中へはドアを経由しなければならないので、人間に支障が出ることは無いが実装石達は入ることが出来ない。
この強引だが画期的な対策の後、住人達はこの少々痛い愛護派を見直したという。


等々、どのような形であれ、実装石に関する知識を持った人間がいる住宅地ではすでに様々な対策が為されている。
だがこのマンションだけはそのような対策が何一つ発案されておらず、入ってきた実装石達を地道に始末するという
完全に受け身な状況なのだ。
他の住宅で行っている対策を真似ようにも、ここには実装石相手に金をかけてくれる愛護派も、積極的に処理に参加
してくれる虐待派もいない。

「掃除に見回り・・それはまだいいとしても・・・業者への出費がかさんできてしまっているなぁ・・・」

石の地面に付着した実装石の血液は落ちづらく、また非常に臭い。
さらに駆除した実装石達の死骸の引き取り先を正式な業者に依頼しているため、出費もバカにならない。
その他にも清掃業者を呼び、駐輪所に近い住人達へ謝罪に行き、そして毎朝毎晩の見回り・・・このままでは心身ともども
疲れ果ててしまう。

「何かいい手は無いものかね・・・」

そう言っていつもどおり駐輪所の床を掃除していた管理人。
今や地域中の実装石のほとんどがこの駐輪所を目指し始めている。。
ここが最も安全に託児できる場所だと気づいてしまっているのだ。

「・・・・・・」

そんな管理人の後姿を眺める男がいた。
男は疲れきった管理人の背中を見ると踵を返して走り去った。
自宅に向かう管理人とは逆の方向、駐輪場の方へ。




「デスゥ・・・最近はどこも入りづらくなってるデスゥ・・・」
「テチ・・・さっきもニンゲンさんに捕まってバラバラにされてたお友達がいたテチュ・・・・」
「こわかったテチィィ・・・痛そうだったテチィィィ・・・痛いのイヤテチュゥゥゥ・・・・」
「入れなくなっちゃったところもあるテチ・・」
「レフレフー」

今日も実装石の親子が街をさまよっていた。
この親子、どうやら託児をする前に駐輪所での対策が始まってしまい、タイミングを逃してしまったようだ。

「でも「こんびに」だと危険がいっぱいデスゥ・・・・」

実装石らしくないため息を吐き、とぼとぼと歩く親子の前に、あのマンションが立ちふさがった。
駐輪所がある。
なんのケースも無さそうだ。
同属の死骸も転がっていない。
ニンゲンの姿も見当たらない。
親実装は期待に満ちた目で顔を上げた。

「お、お前達!あそこを見るデス!まだ安全な場所があったデスゥ!!」
「「「テチ?!」」」
「レフレフー、レ?」

一斉に親実装と同様に顔を上げて目を輝かせる子供達。
まるで桃源郷を発見したかのような喜びようだ。
あまり大きな声で叫ばないよう子供達に注意しながら、親子は一斉に駐輪所に向かって駆け出した。



「デェェ・・・ここが「ちゅーりんじょ」デス・・・?」
「すごいテチ・・・ニンゲンさんの乗り物がこんなにいっぱいあるテチ・・」

親子は物珍しそうな顔で世話しなく視線を上へ横へとキョロキョロさせた。
初めて駐輪所に入る彼女らにとって、ここは未知の領域なのだから無理もない。
途中自転車を触ろうとしていた仔実装を嗜めたりしながら、親子は出来るだけ低い位置に籠を据える自転車を探した。
ここの自転車は何故か総じてサドルが低いが、それでも実装石にとっては結構な高さがある。
可能な限り成功率を上げるために親実装は最も低い籠を探しているのだ。

「デ〜ス・・・デ〜ス・・・デ!」

駐輪所の半ばまで差し掛かったところで、かなり低めの、地上30〜40センチ程の高さに籠のあるものを発見した。
アニメプリントが施された補助輪付きの自転車だ。
籠はプラスチック製で穴が一つも無い。
この高さならたとえ打ち所が悪くても生きて籠の中に入ることが出来る。
そのすぐ横の自転車の籠の下には、随分と古いであろう黒く変色した実装石の血液が染み込んでいる。

「穴の開いた籠は危ないっていうのは本当だったみたいデス・・・」

その染みに目をやった親実装は嫌な想像をして冷や汗を流した。
一度不安になってしまうと嫌な想像が頭の中を駆け巡ってしまう。
親実装の脳裏を、籠に届かず地面の染みとなった子、籠の中で打ち所が悪く死んでしまった子、よしんば成功したとしても
自転車の持ち主が虐待派である可能性・・・・様々な失敗例が頭をよぎった。

「デデデ・・・デェ・・」
「ママ?どうしたテチ?」
「お顔が青いテチィ」
「デッ?!な、何でも無いデス・・」

子供達の心配そうな声を聞いて、ようやく親実装は決心した。
今の自分の生活水準で子供達全員を養う事は出来ない。
たとえどのような結果になろうとも、今ここで託児をしなければ可愛い我が子達は皆飢えて死んでしまうのだ。
ならば可能性が少しでも上がる託児に賭けてみたい。

「じゃあ三女ちゃん、こっちへ来るデス」
「テチュ〜ン♪」

呼ばれた三女が嬉しそうに親実装の元へ走っていく。
長女と次女は浮かない顔をしてその姿を見つめていた。

「三女ちゃん、アナタはあんまり賢くないデスゥ、でもそれを補う程の可愛さがあるデス。いつもその可愛い笑顔を振りまいて
 ニンゲンサンに気に入ってもらうデス」
「テチュ!私ならきっとニンゲンサンに気に入ってもらえるテチ!任せるテチィ〜!」

三女は親と離れ離れになるということをあまり自覚していないのか、やけに元気だ。
それが三女を選んだ原因の一つでもあった。
一番おつむの足りない三女、彼女は一家の中で最もお荷物的な存在だった。
糞蟲というわけでは無いのだが、とにかく本能のままに動いて家族の列を乱してしまう。
だが家族の中で最も愛らしい振る舞いが出来るのもまた三女なのだ。
その利点も踏まえての判断であった。

「行くデス!デェェェッスゥゥゥーーーーー!!!」
「テェェェェェェェーーーー!」

出来るだけ力加減を調節して投げた結果が幸いしたのか、ポスッという音をたてて三女は籠の中へと見事投入された。

「三女ちゃん!大丈夫デス?!」
「大丈夫テチーー!どこも痛くないテチィ!」

親実装の声に元気な反応を返す三女。
長女と次女もほっとした顔でテチテチと喜び始めた。
が、

「テチ?」
「?どうしたデス?」
「なんだか足場が悪くて動きづらいテチー・・」

そういえば先ほどから三女が動く度にカサカサと音がなる。
その音は実装石ですら、いや実装石だからこそよく聞く音であった。

「デ・・袋の音がするデス・・」

聞こえるのはビニール袋の音だった。
良く見ると籠の両端にテープで袋の端が固定されているのが見えた。
三女が訴えた足場が悪いというのは、袋が籠の底についていないという事なのだろうか。
だが何故?
なんで籠の中にビニール袋が?
さらに周りを見渡せば、駐輪場の自転車の籠全てに袋は固定されていた。

「デデェ・・・いったいなんなんデスゥ?」

不審に思った親実装だったが、この袋のおかげで我が子が無傷で入ることが出来たのは事実である。
もしかしたらここの人間は自分達を受け入れてくれるのかもしれない。
そんな手前勝手な期待が不安を一挙に塗りつぶした。

「三女ちゃん、きっとこれはニンゲンサン達がワタシ達のために作ってくれたデス!」
「テェ!ホントテチュ?」
「きっとここのニンゲンサン達は優しくて親切な人ばっかりデスゥ!だから三女ちゃんもニンゲンサン達に迷惑かけないように
 いい子で暮らすデスゥ!どんなに辛くても絶対幸せをつかむデスゥーー!」
「任せるテチ!ニンゲンサン達に可愛がられるようにがんばるテチュ〜♪」

籠の中からは三女の声とともにカサカサという音がせわしなく聞こえてくる。
親実装は励ましの言葉を送ると、長女と次女の手をとり、蛆実装を長女に渡して歩き出した。
歩く親実装の目から涙が一筋流れ落ちる。
それを見た姉達も妹との別れに涙した。

「テチュ〜・・カサカサ・・・チィ・・・カサ・・チ・・・・・」

次第に遠ざかる袋の音と三女の声。
振り返りたい衝動を耐えながら彼女達は駐輪場を後にした。





「ここは座りづらいテチュー・・早くニンゲンサンに会いたいテチュー・・・」

浮いた状態の袋の真ん中で、仔実装は座りづらそうに腰を下ろしていた。
早く自分を迎えに来てくれる人間が来ることを祈って。

-2時間後-

「テェェ・・・座ってても立ってても寝てても疲れるテチュー・・っていうか寝れないテチュ・・・」

-4時間後-

「お腹すいたテチィィ・・・・・・」

-6時間後-

「テェェェ・・・・!ウンチしたくなってきちゃったテチィ!!」
「我慢・・・できないテチィ〜・・・・・!」



そしてついに日が昇ってしまった。
自分のした糞で多少重心の安定した袋の中央で、その糞をクッション代わりに寝てた三女が目を覚ます。
籠に放られたときの野良にしては清潔な外見は見る影も無く、糞便を食って生活している野良と変わらない。
そんな彼女の前に、ついに人間が姿を現した。

「テェ!ニンゲンサンテチィ!やっと会えたテチィ!」

三女は喜びの声を上げて人間を見上げた。
今の自分の喜びを精一杯身振り手振りも踏まえて伝えようとテチュテチュ鳴く三女。
だが、

「ニンゲンサン、こことっても立ちづらくて臭いテチュ。だから抱っこして欲しいテチュ〜♪」
「・・・・」

彼女がどんなに話しかけても反応が無い。
人間・・青年は喚く仔実装を見下ろしているだけだ。
無論、このマンションには虐待、愛護派はおろか実装石に詳しい人間すらいない。
糞塗れの仔実装に対して、普通の人間がまず抱く感情。

「テェ?ニンゲンサン?」
「キモイ・・・しかもクサイ・・・」

そんなもの、嫌悪以外の何があるだろうか?
青年は立ち込めてきた糞の臭いと汚れきったその容姿に思わず顔をしかめて鼻をつまむ。

「こりゃあ管理人さんも苦労するよな・・・こんなんが毎日ここを汚しにくるんだから・・・・」

独り言をつぶやくと、彼は近くで見つけてきた手頃な枝を箸のように器用に使って仔実装をつかみあげた。

「テェェ?!コワイテチィ!高いのコワイテチィ!お手手で抱っこして下さいテチィーー!」
「うわっ・・また糞した・・・」
「テァァァ!?チュベッ・・」

恐怖でさらに糞をひりだす仔実装。
すでに夜に出した先客でいっぱいだった下着から半液体状の糞がむりむりと出てきては袋の中に落ちる。
青年は糞が飛び散るかもしれないという可能性を考えて再び糞塗れの袋に仔実装を落とす。
落とされた仔実装は糞のクッションで怪我せずにすんだようだ。
しかし先ほどの恐怖からか下着からはまだ糞があふれ出してくる。
そのあまりにも汚らしい姿に、青年は再び顔をこわばらせた。

「・・・袋から出さない方がよさそうだな・・・」
「テェェェン!テェェェェエエエン!!」

恐怖の名残で泣き喚く仔実装を無視して、青年は軍手をつけてから籠にとりつけていたテープを剥がして袋の口をきつく結んだ。
そして結び目の隙間に先ほどの枝を差し込み、出来るだけ自分に近づけないように離して持ち上げる。
袋は汚い緑色を透かしてガサガサと動いているが、彼は気にせずに歩き出した。




向かった先はすぐ隣の公園。
虐待派も愛護派も、実装石になんらかの感情を抱くものなら必ず立ち寄っている公園。
入り口をくぐった青年がまず見たのは実装親子をわざとゆっくり追いかける虐待派。
執拗にダンボールハウスを踏み潰している者や、薬の類を撒いて楽しんでいる者もいる。

「・・・・・」

もともと汚い物である実装石をさらに凶悪な汚物にして楽しんでる者達の意図が全くわからず、青年は三度顔をしかめて目をそらした。
そらした視界の先にいたのは愛護派。
ベンチに座って金平糖をハトの餌のようにばら撒いている。
自分のズボンや靴が汚れるのもいとわないようだ。
あれはあれで耐え難い。
それ以前にばら撒いた金平糖の取り合いで惨たらしい殺戮やリンチが起こっている事に気づいていないのだろうか。

「・・・・・」

やがて中央の噴水までたどり着くと、彼は腰を降ろ・・そうとしてやめた。
噴水の淵は実装石の糞及び体液で緑色に染まっており、強烈な異臭を放っていたからだ。
ちなみに、この悪臭は公園に近づいたときからずっと鼻を苛んでいる。
彼はため息を一つつき噴水の淵に仔実装入りの糞袋を下ろした。
すでに底の方から妙な汁がにじみ出ていた袋に触るのは抵抗があるのか、袋の一部を枝でつつき穴を開ける。
すると中からぐったりとした仔実装がビクビクと奇妙な動きをしながら自力で這い出してきた。

「テ・・・・・テェェ・・・テチュァァ・・・ェ・・・」
「う・・・・・・さて、これでいいかな。殺すなんて可哀想なまねはさすがに出来ないし・・・・・置いてくか・・・・。
 これだけ見晴らしのいい場所なら母親か別のやつが見つけて助けてくれるだろ・・・」

直接手を下さなければ罪悪感は無い、ということなのだろうか。
殺すのを躊躇うようにというよりは臭いに耐えかねたかのように、青年は早足で公園を後にした。
だが数十分糞の中でにいたせいで酸欠その他もろもろの状態の仔実装はそれどころではない。

「・・・テ・・・ェェ・・・」

袋からなんとか這い出した後、仔実装は自分が出てきた穴から流れ出る糞に再び浸からないように袋から距離をとった。
ぼちゃぼちゃと自分の排泄物が噴水内に落ちていくのを尻目に、幅の狭い噴水の淵で仰向けになり天を仰ぐ仔実装。
糞に塗れた体と服、悪臭を放つ髪、袋内で糞に圧迫され不自然に折れ曲がった手足。
託児前の小奇麗な野良仔実装の面影はもはやどこにも残っていなかった。

「・・チェェェ・・・・・臭いテチ・・・ヂュベェ・・・汚いテチィィ・・・・苦しいテチィィィィ・・・・・」

荒い息とともに時折吐き出される腐ったトマトを潰したような血液と糞便。
目や鼻からも涙なのか鼻水なのか血なのかわからない程の体液がとめどなく流れている。
さらにもともと緩い総排泄口が痛みと恐怖からくるショックで更に緩くなり、液状の便が仔実装の下に新たな染みを作る。
垂れ流される便が後背部を再び濡らしているのを知覚する。

「テェ・・・テェェェェ・・・ママ・・・ママァ・・・・」

親元から離れてわずか半日。
そのたった12時間前後の時間で起こった地獄のような体験。
あまり賢くなく、三匹の仔実装の中ではもっとも母親に対する依存性の低かった三女。
そんな三女も今わの際に助けを求めたのは優しかった姉達でもニンゲンでも無く、いつも厳しかった母親だった。

「ママ・・ママ・・・助けてテチィ・・・死にたくないテチィ・・・臭いのイヤイヤテチィィ・・・・」

見上げる空、太陽の円に黒い影が一つ、二つ。
いつの間にか噴水のまわりは水を飲みにきた鳥達でにぎわっていた。

「・・寒いテチ・・あっためて欲しいテチィ・・・ママァァ・・・」

一羽、二羽と次々に噴水の淵にとまり、我先にと水を飲み始める鳥達。
そうやって輪を狭めているうちに、仔実装が倒れこむ辺りにも鳥達が集まってきた。
鳥達はどんどんと仔実装の周りを埋めていく。
そして、そのうちの何匹かが寝転ぶ仔実装を邪魔だといわんばかりに突っつきだした。

「ヂュァァァ!?いたいテチいたいテチィィィィィィ!!!!」

ぼんやりと空を眺めながら静かな死を待つ、ある意味幸せに聞こえる死に方だが、それすら仔実装には許されなかった。
あまりの痛みと寒さに麻痺しかかっていた体が、外部からの新たな刺激に苦痛を訴える。
仔実装の口からは何度も甲高い悲鳴が上がった。

「チュァ、チュァァァァ・・・・!!いやテチィ・・・テェ?!真っ暗になっちゃったテチィ?!こわいテチィィ!!!」

あらゆる方向から突き出される爪と嘴が仔実装の両目を抉り取る。
体中に赤黒い穴が次々と穿たれ、もともと折れて体にぶら下がるように繋がっていた手足は右手を残して全て千切れてしまった。

「テァ・・・テェェァァァ・・・」

瀕死の状態で喉を酷使したせいか、悲鳴もだんだんとかすれはじめている。
そしてある鳥の嘴が仔実装の頭に伸びたそのとき、噴水に止まっていた鳥達が激しい音をたてて一斉に飛びあがった。
仔実装は何が起こったのかわからずただ呆然と無数の黒い点で覆われた空を見上げている。

「・・・テ・・・?もしかして・・・助かった・・・テチ・・・?」

微かに動く顔だけを左右にゆっくりと傾けて周囲を確認するが、鳥の姿も同属の姿も見当たらない。
仔実装はようやくほっと一息ついた。
自分はもうすぐ死んでしまうかもしれない、だが苦痛からは解放された。
更に「生き残りたい」という願いが届いたのかどうか、目や口周りなど、顔のパーツから優先的に少しずつ再生されていく。

「よかったテチ・・・もういたいいたいのないテチ・・・・テェェェン・・・」

視力が戻り始めた目からは涙が零れ落ち、そのまま口の中に落ちる。
かすれた声で仔実装は泣いた。
しかし、仔実装の泣き声は大きなはばたきと耳障りな声によって遮られてしまう。

「カァーーーー!!」
「テチェェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエ??!!」

突如自分の上に出現した大柄なカラス。
ギラギラと鈍く光る黒い瞳が、仔実装には何よりも恐ろしいもののように見えた。
擦り切れる寸前の喉からまだ悲鳴は上がり続ける。

「カァァ」
「テェェェェァァァアア?!テチャァァァァアアア?!」

一難去ってまた一難、仔実装は新たな危機に直面して完全にパニックに陥っていた。
首から上だけで暴れる仔実装を睨めつけるカラス。
その嘴がゆっくりとのび、仔実装の胴体をくわえた。

「デッチャァァァァッァァアアアアアアア!!!!ヂュァァァァァァァアアアアアアアアア?!?!?!・・・・・・!!!」

さしたる痛みは無いはずだが、「食われる」という原始的な恐怖から、仔実装は最後の大声を搾り出した。
だが、それも二度大きな悲鳴を上げたところで完全に途切れる。
ついに喉が限界を迎えてつぶれてしまったのだ。
今度は声なき声が大きくあけられた仔実装の口からあふれ出す。

「カァ」
「・・・・・・ェェ?!・・・・・テ・・・・・・・・・ェェ」

泣き続けていた子実装の顔が驚愕に歪んだ。
不意に嘴から解放されたのだ。
だが喜んでいる暇など無い。
つまりは空中に放り捨てられたのだから。

「・・・・ェァァァ?!・・・・・・チェェ・・・・・ェェ!!」

どうやらカラスも先ほどの鳥達同様、単に仔実装の事が邪魔なだけだったようである。
放り投げた仔実装の事など全く気にせずに、一羽ガブガブと水を飲みあさっていた。

「・・・・・・!!・・・・・・・・・・!!!」

首以外どこも動かす事の出来ない仔実装はもうどうすることも出来なかった。
歪な放物線を描いて地面へ近づいていく仔実装。
脳裏に楽しかった家族との生活が浮かんだと同時、何かが潰れる音とともに仔実装の意識も途切れた。






「テェェ・・・・?」

差し込む朝日、視線の先には黄土色の空。
仔実装が目覚めたのはダンボールハウスの中だった。
どうやら生きているらしい、混乱している仔実装にわかるのはそれだけだった。

「テェェェ・・・?!」

そして自分の体を見て今度は驚きの声を上げる。
両手と左耳が無い、正確には乱雑に食い散らかされたかのように千切れていた。
ポタポタと滴る血と化膿したような傷の断面はまだ新しい。

「いたいテチィィ?!なんでおてて無いテチィィ?!」

大声を上げて両足をばたつかせる仔実装。
それはこの家の主の耳にも届いてしまった。

「テ?ママ、起きたみたいテチ」
「うるさいテチー・・・」
「・・デェェ・・・起きるとうるさいデス、お前達、もう一度寝かせておくデスゥ。お腹がすいてるなら適度に食ってもいいデス・・・・」
「「「わかったテチ〜〜」」」

大柄な実装石とおそらくその子供達。
自分がいる部屋の隅とは反対側の隅にいたようだ。
親実装はそう一言だけ口にするとすぐに横になってしまった。
対して仔実装三匹は三女のもとにわらわらと集まってくる。

「テチッ!」
「テヂャ?!」

唐突に顔を殴られる三女。

「テッチィ!!!」
「ヂュァァァ?!」

今度は腹を踏みつけられる。

「とどめテチィ♪」
「テギャ・・・・・!」

最後に顔を踏みつけられて、三女は再び意識を混濁させた。
三匹の仔実装は三女の両足と右耳にそれぞれかじりつく。
軟骨をかじるような音がハウスに響き渡り、その中に三匹の嬉しそうな声が混じる。

「おいしいテチ♪コイツきたないけどおいしいテチ!」
「それにいくら食べてもいじめても死なないテチ!」
「オモチャにもゴチソウにもなるテチュ♪最高テチュ♪」

あの日、地面に落ちた仔実装は、カラスの脅威が去った後に一番乗りで噴水にたどり着いた実装石に拾われた。
頭部の七割がひしゃげて、右手以外の四肢が無く、体中穴だらけの仔実装。
こんな状態になってまで生きてる仔実装に、多少悪知恵の働くこの実装石は興味を持った。

連れてきてからたった一日で全快した仔実装を見て、さらに実装石は考える。
これだけ再生が早いなら子供の飯くらいにはなるのではないかと。
この仔実装をしばらく子供達の餌に出来るなら、これからは自分の餌だけ探せばよくなる。
餌の確保の際の危険が大幅に減るのだ。

案の上、手足を食べようが耳を食べようが、ときには顔半分体半分がなくなろうが仔実装は生きていた。
そして次の日には再生してまた眠っている。
実装石はどうしてこんなことが可能なのか、そんな事まで考えなかった。
ただ単に自分はついていると、美しいからついているのだと思い、この仔実装を家の中で食料として確保している。

「おいしかったテチ!」
「お腹イッパイテチュ!」
「じゃあまたこいつが起きるまでおうちの中で遊ぶテチィ♪」

三匹に脳まで食われる事が多々あるため、三女の記憶はだんだんとあやふやになっていく。
いずれは自分が誰なのかなどもわからなくなるだろう。
しかし、今の三女にはそんなことは関係無いのかもしれない。
最終的にこの親子に「託児」されてしまう結果となった時点で三女の命運は尽きているのだから。





「ママ、ママ!」

「何デス?」

「そのキレイな石、何テチュ?」

「ワタチも気になるテチィ〜」

「レフレフ」

「これは三女ちゃんデス」

「テチ?」

「三女ちゃんには絶対に死なないで欲しかったデス。だからママは三女ちゃんが死なないようにこうやってるんデスゥ」

「そのお水は何テチュ?」

「これはちょっと前に優しいニンゲンサンがくれたデス」

「キラキラキレイテチィ・・・」

「このお水にいれておくとどんなに辛い目にあっても生きていられるデス。生きてさえいればいつか必ず幸せになれるデス」

「三女ちゃん、幸せテチ?」

「デス。きっと今頃幸せになってるデス。もし今辛い目にあってたとしても、きっといつか・・・」

「今度様子見に行ってあげるテチ!」

「匂いをたどればすぐに場所はわかるデス。この冬を乗り切ったらおいしい食べ物と綺麗なお花をを持って会いに行くデス」

「「楽しみテチュ〜ン♪」」

「レフ〜ン♪」








 ———————パキッ・・・






































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