タイトル:【電躾】 電子実装石2(LAST)
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初投稿日時:2007/01/25-21:08:59修正日時:2007/01/25-21:08:59
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電子実装石 2


 たま誤っちのようなシステムで作られた携帯ペット・みどりっち。
 これは、ネット上で話題になっている実在しない動物・実装石を勝手にパクったものだ。
 だが、なぜかこの商品に対する抗議がほとんどない。
 それどころか、絶賛の声ばかり聞こえてくる。
 その理由を突き止め、ある事に用いるため、俺はこれをあえてプレ値で購入した。

 単なるありがちな電子ペット育成と思ったが、さにあらず。
 なんとこのゲームには、きっちりと「虐待」の要素が仕込まれていた!



 本体横の、説明書にすら説明がない謎のスイッチ。
 これは、実装石(※正式名称はみどりっちだが、誰もそう呼ばない)が初めて仔実装以上に成長した時点から使えるように
なるもので、「撫」「餌」「教」「叱」「流」と5つある育成用アイコンにもう一つ「虐」を加えるものだった。

 シチュエーション的には、このボタンを押す事で実装石に「これから虐待をするよ」という態度を示した事になるらしく、自動
的に「拘束された」状態になる。
 俺はまず、偽石を取り出して栄養剤に漬け、こいつを不死の状態にした。

 それと同時に、俺はネットで二つ目の「みどりっち」を落札。
 今度は接戦による接戦で、落札価格はなんと13,000円にまで上がってしまった。
 …めちゃくちゃイタイが、それでもまあ良し!
 どうせ後で戻ってくる金だしな。
 取引を最速で終わらせるようにして、三日後くらいには届くようにと出品者に懇願する。
 そして物が届くまでの間は、今の仔実装「ミドリ」で色々試そうと考えた。
 がんばって俺を楽しませてくれよ、十三代目ミドリ♪




テチーテチーテチー
『テェェ…ニンゲンさん、なんでひどいことするテチ? ワタチ、ニンゲンさんだいすきテチ。イタイ事やめてテチ』


 呼び出し音と一緒に哀願のメッセージが表示され、俺のサディスト心をほどよく刺激する。
 次は、どうしてやろうか?
 あらためて「虐」を選び、今度は「はげはだか」のコマンドを選択する。

 
 かみむしる
 ふくをとる


 予想通りの選択肢が表示された。
 ではまず、髪の毛からいただこうか。


テチーテチーテチー
『やめてテチ! おねがいテチ! かみのけとらないでテチ!』


 ペンチのような絵が出てきて、ミドリの前髪をわしづかみぐいぐいと引っ張る。
 わざわざアップ画面に切り替わり表示される、ミドリの哀れな泣き顔。
 モノクロのドット絵とは思えないリアルさで、ぷちぷちと毛が毟り取られていく。
 ま、効果音はしないんだけどね。
 心の中で再現ってことでひとつ。


テチーテチーテチーテチーテチー
『イヤアアアア! ニンゲンさんゆるしてテチー!』

テチーテチーテチーテチーテチー
『ごめんなさい、ごめんなさいテチー!』

テチーテチーテチーテチーテチー
『ニンゲンさんの言うこときくテチ! もっといいこにするテチ!』

テチーテチーテチーテチーテチー
『イヤアア! かみのけ、イヤアアア!』


 …あー、うるさい。
 しかし、必死の呼びかけも虚しくミドリは前髪から後ろ髪まで全部引き抜かれてしまった。
 もちろん、これで終わりではない。
 続けて「ふくをとる」だ!


テチーテチーテチーテチーテチー
『イヤアアアア! たすけてニンゲンさんゆるしてテチー!』

テチーテチーテチーテチーテチー
『ごめんなさい、ごめんなさいテチー!』


 あ、さすがにセリフは使いまわしになるのか。
 少し残念だが、画面内では刃物のような絵に次々と服を破られるミドリの絵が表示されている。
 わざわざ顔をアップにするところが、本当によくわかっている。
 一通りの行程が終わると、すっかりみすぼらしくなった禿裸のミドリの姿が表示される。
 ピクリとも動かず、ただぼーっと突っ立っている感じだ。
 ショックを受けている様子の再現だろうか?
 本当に実装石を禿裸にしたら、こんな態度取りそうだよな。


『テェェェェン、テェェェェン!』


 と、突然涙マークをピコピコ飛ばしながら、泣き始めるミドリ。
 だが、これで終わりだと思ったら甘い甘い。
 せっかく偽石を取ったんだから、もっと色々遊ばなきゃね。

 その後俺は、「おる」→「て」や「さす」→「からだ」を選択し、じわりじわりとミドリを痛めつけて行った。
 その度に電子音が連発で鳴り響く。結構うるさいのだが、実装石の悲鳴の代用なんだと考えるとこれもなかなかに心地
よい気がしてくる。


テチーテチーテチーテチーテチー
『テチャアアァァ! おててが、おててがあっ?!』

テチーテチーテチーテチー
『いやあああ! おなかイタイテチ! ぐりぐりしないでテチ!』

テチーテチーテチー
『ニンゲンさん、ごめんなさいテチィ! もうゆるしてテチィ!』


 おーおー、実に良く泣く。
 しかし、なんつーか人間の言葉で悲鳴を上げられるのもなんだかなーという気がしてくる。
 これではだんだん「実装石を虐待している」気がしなくなってくるような…
 と思って再度画面を確認すると、いつのまにか「虐」の中に「リンガル」という選択肢が出ている事に気付いた。
 試しに選んでみると、「ON」「OFF」という選択肢が出る。
 カーソルは、デフォルトでは「OFF」に合わせられている。
 なんだかよくわからないが 試してみよう。


テチーテチーテチー
『テチャアァァァ!! テギャアアアア! テェェェェン!!』


 お? ミドリのセリフが「実装語」のみになった?
 どうやらこれは、自動翻訳機能の停止コマンドのようだ。
 これも後にわかったのだが、人間臭い態度を取る実装石の虐待が嫌な人向けの配慮らしい。
 うーん、気が利いているというか、なんというか。
 しばらくこれで続けてみようかな?


 唐突な虐待の数々に、ミドリはただひたすら泣き続けているだけだ。
 これまで幸せで穏やかな生活を送っていたせいだろうか?
 プレイヤーに対する文句・罵詈雑言がまったく行われない(途中から翻訳してないけど)。
 いい感じだ、俺がやってみたかった「賢くて大人しい実装石をいじめぬく」が実践できそうだ。
 
 それはともかく、泣き声がうるさい。
 「キャンセル」を押しながら「決定」を押すと、消音モードになる。
 これでもう、テチーテチーとうるさい電子音は聞こえない。
 その時俺はふと、「キャンセル」を一回余分に空押ししてしまった。
 すると画面が横にずれていき、何やら文字が表示された。


・ねんれい:5
・せいかく:おとなしい
 

 おっ、一応最低限のステイタス表示があるのか。
 「ねんれい」とは日数換算で表された実装石の歳。
 「せいかく」は、言わずともかな。
 ネットで少し調べてみたら、どうやらかなり多くの性格が設定されているらしい事がわかった。
 他にも「わんぱく」「あたまがいい」「くそむし」「やさしい」「おくびょう」「げどう」「いろっぽい」なんてのがあるらしい。
 …いろっぽい? どんなんだそれ?
 色々と補足説明が記述されてはいるのだが、とりあえずネタバレは避けてみる事にする。
 ミドリの「おとなしい」は、「かしこさ」と「やさしさ」が高めで、「くそむし」が低いとなるらしい。
 いわゆる「良蟲」状態ということらしい。
 ふーむ、という事は…こりゃ並行して糞蟲野郎を育ててみたくなるってもんだな。
 二台目のみどりっちでは、是非ともそっちの方向で行くとしよう。

 とりあえず、俺は寝る前にミドリの泣きを「叱」→「禁止」で止めさせた。
 モノクロドット絵で再現されるミドリの悲痛な表情に大爆笑してから、心穏やかに寝床に就いた。

 しかし、翌日確認してみると、どうやら前日受けた虐待のダメージは回復しているようだった。
 システムやプレイバリューの都合もあるんだろうけど。



 十日目。
 マニュアルにある簡単な参考資料を見たところ、本当ならミドリはそろそろ成体実装に成長している年齢に達するらしい。
 それを知った俺は、試しに九日目に一切餌を与えない事にした。
 すると仔実装のままで成長が止まったようで、成体にならなかった。
 例のサイトのどこかに記されていたものをちら見した記憶によると、これにより成長に制約をかけられる仕組みらしい。
 仔実装も、親指ほどではないにせよ食欲旺盛で、半日食事出来ないだけでもやばい。
 それなのに完全放置されているのだから、かなり辛いようだ。
 加えて、しょっちゅう遊んで欲しがる年頃なのにそれもないのだから、ストレスもかなり溜まっている筈だ。

 「しつけ」でトイレを教え込み覚えると、実装石はこちらの操作がなくても自立でオマルを引き出してきて用を足すようになる。
 一度オマルに糞をすると、どうやら糞は自動的に消滅してしまうようだ。
 これは多分、ゲームの性質上処理の手間を簡略化させる目的もあるのだろう。
 ところが、充分な餌が得られず飢餓感に襲われ始めると、実装石はせっかく躾られたトイレを行わなくなり、わざとオマル
以外で用を足し始める。
 そして、その糞を食って餓えを満たすわけだ。
 もちろん、このゲームは名目上一般向けなので食糞を示すアンモラルな表現は一切ないが、画面を見ていると何をさせた
がっているのかは、よく理解できる。
 こちらから何か入力しない限り、実装石は飼い主の行動に気づけない事を利用し、俺はもう一体のみどりっちが届くのを
待っている間、その一部始終を観察していた。

 そろそろ食糞行為を「禁止」させようと思ってボタンに指をかけたが、ふとある事が気になり、「キャンセル」でステイタスを
確認した。
 「おとなしい」性格のミドリを放置して食糞までさせたのだ、何か変化がないもんかな?
 すると…


・ねんれい:7
・せいかく:おくびょう


 おっ、性格の表示が変わっている?!
 見込み通り、この一日放置はパラメータに影響を与えたようだ。
 そういえば、あまり呼び出しをしなくなったな。
 さて、では臆病者になったミドリに、どんな過酷な試練を与えようか?
 今日のメニューは徹底的に…


 「虐」→「きる」→「あし」

 刃物でスッパリと切断され、転がっていく両脚!

『テギャアァァァ!!!』
 

 「虐」→「さす」→「あたま」

 ぶっとい針が、額から後頭部に向けて貫通する!

『テヒィィィィ! テギィィィ!!』 


 「虐」→「デコピン」→「強く」×3回

 へこむ! へこむ! ミドリの頭!

『テヒ…テヒィ……ヒィ……』


 両脚を失い、血だらけ(を表現していると思われるほとんど黒一色)のドット絵がアップになる。
 全体像を見ると、ミドリは頭部を大きく陥没させた半達磨状態になっている。

 他に何かできる事はないかなと思って再度コマンドをたどってみると、いつのまにか新しい選択肢が表示されていた。

 「虐」→「さす」→「め」

 目を潰すってか?
 こりゃまた…残酷極まりないねえ。
 実装石の目は特別なものなんだから、潰すよりももっと別な活用をして欲しいものだけど。
 …とりあえず試してはみる事にする。
 なんてったって好奇心、出来る限りの事はしてみるべしということで。

 コマンドを選択すると、なにやら不思議な形状の道具が出てきてミドリに迫っていく。
 顔がアップになり、惨めな表情が映し出される。

『テキャ…テヒィ…!』

 怪しい器具の先端が、ミドリの左目に近寄っていく。
 最初は針だと思ったのだが、どうやら違うようだ。
 器具は目に突き刺さる事はなく、何か液体(を表しているようなもの)を垂らした。


『テ? テ、テ、テ……テチャアァァァ!!』


 叫び声と共にミドリの全身が表示され、どんどん腹が膨らんでいく。
 必死で頭を振って訳のわからない悲鳴を上げ続けるが、膨張は止まらない。
 あっという間に二倍くらいの太さになった腹が、気味悪くウネウネ蠢く。
 どうやらこれは、「強制出産」のスイッチだったらしいな。
 という事は、今ミ゛リはスポイトで両目を赤にさせられたってことか。
 

『テッチャアァァァ!!!』


『テッテレー♪』
『テッテレ〜♪』


 ミドリの足下から、ちっこい二匹蛆実装が出現した。
 あんなに膨らんだのだからもっと出てくるのかと思ったが、ちょっと意外。
 しばらくすると、子供達の名前入力が求められる。
 めんどくさいので、名前なんか無視。

『テェェ……テチ……』

 さすがにミドリはかなり弱っているようだ。
 餌も与えられず虐待を沢山受けて、さらに強制出産だからなあ。
 さぞかし酷いパラメータになっていることだろう。
 それでも俺は、ミドリに何もせず放置を決め込む事にした。
 当然、蛆共も同様だ。

 と、その時…


 ピンポーン♪

 宅配便が届いたようだ。
 いよいよ、二体目の「みどりっち」を手にする時が来た!
 今回落札したのは、偽石割れバージョンほどではないけどそれなりに希少な「ブラックバージョン」。
 ただ本体色が違うだけで、中身は一緒なんだけどね。
 俺は早速絶縁体を抜くと、設定の入力を開始した。





——いきなり飛んで、十四日目




 あれから俺は、二体のみどりっちを並行プレイさせ、それぞれで違うタイプの実装石を育ててみる事にした。

 まず、一台目の状況。
 その後もしばらく餌を与えなかったのだが、ミドリはついに糞だけでなく自分の子供まで食いつくしてしまい、性格も
すっかり「くそむし」と表示されるようになった。
 調べてみると、これは「くそむし」のパラメータが突出していると変貌してしまうもののようだ。
 ここまでのミドリの災難と行動を考えると、無理もないかなと思う。
 
 十二日目からは対応を変え、「実装フードC」と「肉」を与えてみることにした。
 ミドリはこれを喜んで食べ、今までの遅れを取り戻すかのようにあっという間に成体へと成長してしまった。
 なんとも、適当な奴である。
 これでようやく、全身像と表情が充分確認できるようになった。
 今は思いついた時しか虐待を加えなくなったが、すっかり態度は豹変した。


テチーテチーテチーテチー
『腹へったデスニンゲン、はやくメシよこせデス!』


 禿裸で「おとなしい」筈だったミドリが、今ではこのていたらくだ。
 虐待で刷り込まれた筈の恐怖感もなければ、仔実装時代の控えめな態度も何もない。
 どうやらやり方次第では、禿裸でも糞蟲度を増長させる事が可能らしい。
 当初の予定は狂ってしまったが、これはこれで面白いので続ける事にする。
 こういう態度の時は、餌を食わせた直後に…


 「虐」→「さす」→「あたま」
 貫通極太針! これ対比的にどう見ても4センチはあるぞ!

 テチーテチーテチー
『デギャアッ!イタイイタイ、イタイデズゥゥゥ!!』


 「虐」→「きる」→「あたま」
 磁光真空剣、真っ向両断! 

テチーテチーテチー
『デベチャベデッ!!』


 …と、立て続けに食らわせてみる。
 頭が真ん中から真っ二つになり、傷口がVの字型に開いてしまう。
 懸命に元に戻そうと振り回す腕が悲しく、滑稽だ。
 ここで今度は「虐」ではなく、「撫」を使用してみる。
 これは最近発見した新たな虐待法だ。


 「撫」→「ぐりぐり」

 テチーテチーテチー
『デッギャボゲベベベ!イダビイダビグリグリ嫌デズベデベ!!』


 頭を切られた状態でこれをやると、傷口を触られている事になるようで、実に面白い悲鳴が聞ける。
 リンガルオフだと、ここはとてもつまらないので、例外的にオンにして実行している。
 まさか、こんなに応用の幅が広いとは思わなかった。
 いやあ、楽しいなあ♪


 一方、二台目の方。
 こちらは逆に、丁寧に丁寧に育ててやる事にした。

 名前は「エメラルド」ちゃんだ。
 性格は「かわいい」と出たので、一発目からそのまま育ててみる事にした。
 「餌」は「実装フード」のABCを適度に混ぜて与え、仔実装になってからは優しすぎず厳しすぎず、丁寧に「教」と「躾」を
施した。
 言葉遣いも丁寧だし、何より驚くほど粗相がなく、甘えも少ない。
 呼び出しもよほどの事でない限り行わないし、遊ぶ時も不満を述べない。
 もちろん、「虐」モードは封印している。
 明らかに仔実装時代の十三代目ミドリよりも出来がいい。
 性格も「かわいい」のままで成長しているようなので、俺はこちらはミドリの対極に位置するように仕向け、成体になったら
赤外線ポートで両者を合わせてみる事にした。


 テチーテチーテチー
『ママ、お腹がすきましたテチュ。ご飯をおねがいしますテチュ!』

 この仔は、ミドリと違って俺をママと呼ぶ。
 どういう違いでこのような差が生まれるのか、興味深い。
 エメラルドの呼び出しを受けた俺は、今回は「実装フードB」を選択する。
 すると、初めてエメラルドが難色を示してきた。

『ママ、ステーキってどんなお味テチュ? ワタチ知りたいテチュ』

 ステーキ?
 なんとまあ、贅沢な!
 …と思ったけど、このゲームの場合は単なる選択肢の一つだからな、別に俺の懐が痛むわけじゃないし。
 そういえば一度も選んだ事なかったから、試しにやってみるのも悪くないか。
 エメラルドも態度が良好だし、たまにはこんなご褒美も悪くないかな?

 俺は、あらためて「餌」→「ステーキ」を選択した。
 飛び跳ねて喜ぶ仔実装のドット絵。


 テチーテチーテチーテチーテチー 
『やったテチュ♪ ステーキゲットテチュ☆』

 笑顔で食べ始めるエメラルドを、微笑ましく眺める。
 本当に実装石がいたとして、リクエストに即応してステーキを与えたら、こんな態度を取るのだろうか?
 ちょっとだけ愛護派の気持ちが理解できたような気がした。
 

『チププフ♪』


 一瞬、ほんの一瞬だけ、サブモニターにおかしなセリフが表示された……ような気がした。
 見直してみるが、別に何も表示されていない。
 一度表示されたメッセージは、こちらが任意で切り替えない限り何度でもリピート表示される筈だ。
 多分、気のせいだろう。


『ごちそうさまテチュ♪ ママだいすきテチュ♪』


 バンザイをして喜ぶエメラルド。
 うーん、とっても良い子に育っているなあ♪

 …それにひきかえ…


 テチーテチーテチーテチー
『腹へったデスゥ。とっとと飯よこせデスゥ〜』

 テチーテチーテチー
『クソニンゲンはワタシ達のドレイになってはたらくデスー』

 テチーテチーテチーテチー
『何ボヤボヤしてるデスウ、かわいいワタシを飢え死にさせるつもりデスゥ?』


 日が経つほどに、どんどん自分の立場をわきまえなくなっていくミドリイズ糞蟲。
 ふふふ、だが我慢するのだ。
 エメラルドが成体になったら、二匹を逢わせるのだ。
 優しくて可愛いエメラルドのことだから、きっとミドリを侮辱したり虐待したりはしない筈。
 憐れみの視線か何か送ったりしてな。
 そしてミドリは、自分の惨めさを再び自覚し苦しむのだろうか。
 どうせ成体になったら、もう「しつけ」も通用しなくなるんだし、それまではせいぜい好きなようにさせてやるさ。
 本当なら今すぐ逢わせてみてもいいんだが、万が一エメラルドにミドリが襲い掛かったら大事なので、あえて見送る事に
する。
 俺はXデーの到来を、首を長くして待ち続けた。





“
Q:「赤外線通信をして二匹の実装石を逢わせてみたのですが、突然片方の態度が変わり
   ました。
   元に戻しても、態度が治りません。
   これもバグなのでしょうか?


A:これはバグではなく、「みどりっち」の暗黒面の一部です。
   実は赤外線ポートを利用した実装石同士のコミュニケーションには相性による当たり
   外れがあるようで、実装石は互いに影響を受けます。
   その結果、一部のパラメータが大きく変化したり、相手から受けた行動で基本値が
   増減したりします。

   そしてもう一つ、プレイヤーの期待を大きく裏切る要素が含まれていたりします。
   これは初心者には結構ショッキングなものなので、詳しくは別ページの「こちら」を
   ご覧ください。
 ”




 ——十六日目。

 この日の午前中、エメラルドが成体に成長している事を確認した。
 実装石の成長は眠っている時に行われ、目覚めた時に体格が変化している。
 だからポ●モンみたいに、変化する瞬間をプレイヤーが見る事はない。
 俺は喜び、成長のご褒美として「すし」を与えてやると、早速ミドリと合わせる準備をした。
 めんどくさいので、ミドリの方は夕べから放置状態である。
 朝飯もやらずいきなり「虐」でたたき起こし、両機の赤外線ポードを向かい合わせる。
 この状態で「虐待モード突入ボタン」を押す事で、通信が展開するという仕組みだ。
 なるほど、これがこのスイッチの表向きの名目なのか。
 それにしても、通信のやり方がマニュアルに書いてないってのは不親切だなあ。
 ひょっとしたら、また何か「書かない理由」があるんだろうか?

 互いのポートの認識が終了し、それぞれの画面に

 →おでかけ?
  おまねき?

 という選択肢が表示される。
 エメラルドを「おでかけ」、ミドリを「おまねき」にしてみよう。
 双方の選択が完了した後、最終確認のメッセージが表示される。


“おでかけすると、みどりっちのおうちはからになります。
 どろぼうがはいらないようにきをつけてね♪”


 なんとなく微笑ましいメッセージを読んだ後、「決定」を押して通信開始!
 データ転送の表示がしばらく出た後、エメラルド側のみどりっちの画面は空白になった。
 ミドリ側のみどりっち画面内には、若干縮小表示されたエメラルドとミドリが佇んでいる。
 おお、こうやって実装石同士を合わせるのか!


エメラルド(以下エ)『デデッ?! はげはだかデス!』


 エメラルドのセリフの後、こちらの切替入力を待たずに、ミドリのセリフが表示される。
 どうやら実装石同士が出会うと、会話はフルオートで進んでしまうらしい。
 おっと、それじゃあ見逃す事ができないじゃないの!


ミドリ(以下ミ)『デェェェ? お前はなんデスぅ?』

エ『デプププ♪ なんてぶざまでみっともない奴デス♪ 生きててはずかしくないデス?』

ミ『デ、デェェ? いきなり何をいうデス! 失礼なやつデス!』

エ『お前みたいな奴はドレイにしてやるデス♪ くそくらえデス♪』


 と言うが早いか、エメラルドはパンツの中に手をいれ、ミドリに何かを投げつけた。


ミ『デビャ?! デヒィィィ! ウンチデスゥ〜』

エ『デヒャヒャヒャヒャ♪ お前のようなクソドレイにはウンチがおにあいデス! もっとくらえデス♪』

ミ『デビャアア♪ もっとよこせデスゥ! 腹がへってるデスゥ!』

エ『ウンチ食ってるデス! やっぱりさいていのクソドレイデス! ワタシがドレイらしくもっとしつけてやるデス♪』

ミ『デ、デビャアァァ』


 ちょっと、まて。
 なんだ、なんだなんだこの展開は?!
 エメラルドが、あの優しくて大人しくて穏やかなエメラルドが。
 ミドリに逢わせたとたん、突然嘘のような態度を取り始めてしまった。
 俺は状況が理解できず、ただ呆然と画面を見守り続けた。
 当初の予定だと、綺麗で可愛くて素敵で理想的なエメラルドに嫉妬したミドリが逆上して、俺はそれを口実にミドリを更なる
地獄に落とすつもりだったのだ。
 …あ、もちろんある程度俺の脳内演出含まれているけどね、これは。

 それにしても、エメラルドの態度の豹変は異常だ。
 「キャンセル」でステイタス確認をしようとするが、どうやらこの状態では受け付けないらしい。
 仕方なく俺はこの不可解な現象について、例の情報サイトで確認する事にした。


 ——ほどなく、Q&Aで転送後の性格変化についての解答を見つけ、さらにそこから詳細リンクに飛んだ。
 飛んだ先は「かなりネタバレのページ」というタイトルだったが、やむなく部分的に情報を拾うことにした。

 
●性格が変わっていないパターン

 一見性格が変わったように見えて、本当は全然変わっていないというパターンもあります。

 実装石の性格の中に「げどう」というものがあります。
 これは「つよさ」「かしこさ」「くそむし」が高いと確定しやすいもので、いわゆる「演技で飼い主を騙し続ける」事ができる糞蟲
性質です。
 この性格になると「おとなしい」や「やさしい」の性格みたいな態度を取り続けますが、たまに飼い主をあざ笑ったり、
へりくだった態度で豪華な餌を要求してきたりします。
 もちろん、ステイタス確認ですぐにわかりますし、良い仔なのに不自然かと唐突にステーキを求めてきたりするので
バレバレなのですが、実装石に過剰な思い入れを持ってしまうプレイヤーは結構騙されてしまうようです。

 「げどう」になると、他実装と出会う事で化けの皮がはがれます。
 相手を見下したりバカにしたり、時には過激ないじめを始めます。
 その後は速やかに「くそむし」と変貌するようです。
 そうなると、もはや大人しい態度や礼儀を重んじる態度は見られなくなり、呼びかけも「ニンゲン」や「バカニンゲン」と
挑発的なものに変わります。
 かなり悪意のこもった仕掛け(だと管理人は思います…)なので、愛護プレイされている方は特にご注意ください。


 画面から目を離し、呆然とする俺。
 なんと、そんな仕掛けがあったとは!
 どうやら俺は、賢くて心優しい同情的な実装石を育てようとして、全然別なベクトルの性格に育て上げてしまったらしい。
 よく実装スクにある「愛護派が虐待派に転ずる心境」が、少しだけ理解できたような気がする。
 だって、元々虐待好きだったつもりの俺ですら、少なからずショック受けるくらいだもんなあ。
 本当に実装石がいてこんな態度取られたとしたら、そりゃやってらんなくなるよなあ…

 おっと、こうしている間にもエメラルドによるミドリ虐待が進行している筈だ。
 俺は、ミドリの本体を手に取ろうとしたが…ふと違和感を覚え、エメラルドの本体を先に取った。

 …何も居ない筈の液晶画面の中に、なぜか成体実装石と仔実装が居る。
 待て、なんなんだこいつらは?!
 どうして、誰も居ない筈のエメラルド本体の中に、勝手に実装石が湧くんだ?!


 テチーテチー
『デプププ♪ すみやすそうなおうちゲットデスゥ!』

 テチーテチーテチー
『やったテチィママ♪ おいニンゲン、はやくエサを運んでくるテチ! コンペイトウとステーキがいいテチ!』

 ……んあ?!
 まさかこいつら…野良実装か何かか?!
 ひょっとして、留守にすると乗っ取られる事があるってのか?
 ど、どうすればいいんだよ?!

 俺はとりあえず「虐待モード突入ボタン」を押してみる。
 すると、いつものように「虐」アイコンが出現する。
 だが、その後の選択肢が微妙に変わっていた。


→実装コロリ
 ドドンパ
 ぶっつぶす
 デコピン
 おる
 ちぎる
 はげはだか


 出た! コロリとドドンパ!
 うげ、こういう流れでやっと出てくるのか、この駆除剤アイテム関連!
 しかし、「ぶっつぶす」とは、これまた…

 まず俺は「ぶっつぶす」→「こみどりっち」を選択し、野良仔実装を“大きな手の絵”でぶっちゅりと潰して差し上げた。


 テチー
『チベッ!』

 テチーテチー
『デギャアアアア! ワタシの子供ガアアアア! ところでせきにんとってワタシを飼うデス♪』


 ………リアクションに困りながら、続けて選択肢を選ぶ俺。
 よし、使うぞ「実装コロリ」!


 テチーテチー
『コンペイトウデスゥ! ニンゲンみどころあるデス。ごほうびに世界一うつくしくてゴージャスなワタシを飼うことを許すデスゥ♪』


 好きにほざけ。
 お約束通りのリアクションのあと、思ったより可愛らしい動きでコンペイ…もとい、コロリをほおばる野良実装。
 次の瞬間、突然倒れてじたばた身もだえを始めた。
 わざわざ苦しんでいる過程を再現しようとしている点が気に入った。


 テチーテチーテチーテチーテチーテチー
『デ、デ、ゲエエェェェ!!! グ、グルジビデズゥ゛ヴヴヴ!!!』

 テチーテチーテチーテチー
『デ、デゲ…ク、クソニンゲ……デベチャ!』

 テチーテチー…
『ゲ、ゲロ……』


 野良実装は、大量の血反吐(と思われるドット絵)を吐き出し、動きを止めた。
 おお、この機体初の天使マーク出現!
 さすがに今回は「おかわり」は出てこなかったが…なるほどね、移動させる事にはこういうデメリットもあるってことか。
 しかし、なぜこんな仕掛けが? と思い、また例のサイトを見てみる。
 すると、こんな質問と回答を発見した。


Q:「実装コロリ」や「ドドンパ」、「実装音叉」「バールのようなもの」みたいなお馴染みの駆除アイテムが
   まったく出てきません。
   これは仕様なのですか?


A:コロリもドドンパも音叉もバールの(ryも、ちゃんと出現します。
   純粋に殺傷目的のアイテムはこの四種だけになっています。
   この中でドドンパだけはトイレの「しつけ」の過程で出現しますが、プレイヤーの任意で使用できる
   ドドンパは、特別な方法でないと使えません。 
   その他、アイテムではありませんが「ぶっつぶす」という新選択肢も出てきます。

   この四種のアイテム(+1)は、いずれも「通信機能」を使用しなければなりません。
   別項で触れましたが、留守にした本体の中に野良が湧く事があります。
   これを駆除する時に初めて四種アイテムのどれかがランダムで出現します。
   以後、これを一度でも使用すると、以降その機体内で常時使用可能になります。
   ただし、毎回望んだ選択肢が追加されるわけではないので、四つ(+1)の選択肢を全てそろえる
   ためには、何度も何度も転送を行い、野良を撃退させる必要があります。

   ドドンパを仔実装に使うと、高速で画面外に吹っ飛び、タイムラグを置いて落下してきますが、大変
   笑える画面なので是非見てください♪


 なぁるほどねぇ。
 そうか、こういう風に虐待材料を増加させるために、他機種との通信を頻繁に行わなければならないわけか。
 ちょっとしたゲーム性みたいなものかな、本当に良く出来てる。

 その後、この通信システムによる影響について興味を得た俺は、「ネタバレはなるべく見ない」という禁を少しだけ破り、
詳細ページを読み漁ってしまった。
 「バール(ry」を使うと、ぶん殴られた実装石以外の奴ら(主に仔実装)の性格を変える事ができるとか。
 「ぶっつぶす」は、プレイヤーの意志による子供の間引きに使えるとか。
 「おんさ」…すなわち実装音叉は、すべての育成を放棄して強制リセットをかける効果があるとか。
 「ドドンパ」も、先に「虐待モード突入ボタン」で拘束してから使用すると、殺す事なく糞抜きができるとか、応用方法が存在
する事を理解した。

 俺は、思わずウンウン頷きながら、さらに読み進めようとして……あの後ずっと本体を放置し続けていた事を思い出した!



 慌てて確認してみると。

 エメラルドの本体では、また別な野良実装親子が発生しており、エメラルドのおもちゃで遊んでいたり、糞をばらまき
まくってたりと好き勝手な事をしていた。

 一方、ミドリの本体の方では…ミドリがいびり潰されていた。
 しかも強制出産までさせられたようで、複数の蛆実装に身体を食われ始めている。
 ほとんど食い尽くされてしまったようだ。
 これでは、いくら偽石を除去していても助かるまい。


『レフレフ♪ ママのお肉おいしいレフー♪』
『ママは蛆ちゃんたちのご飯になれてしあわせレフー♪』

『レピャアア♪ 蛆ちゃんたべないで、タベナイデレフー!』
エ『ガツガツ…蛆ちゃんはウマウマデスゥ♪』


 心優しく優雅で、清らかで清純、大人しくて大人びた、綺麗で麗しい筈のエメラルドは、いまやミドリに勝るとも劣らない
糞蟲っぷりを発揮して、ミドリの子供達をポイポイ口に放り込んでいた。


エ『クソニンゲン、このドレイの蛆ちゃんは最高のエサデッチュ〜ン♪』


 素敵に醜い笑顔をわざわざドアップで表示させつつ、エメラルドが媚ポーズで微笑んでくる。
 その仕草は、俺の中のあるスイッチを全力でオンにした。

 虐待モードっ!! スタート!


『デギャアアア!!! クソニンゲンハナシヤガレデスゥゥゥ!!!』


 本体横のボタンを押すと、ミドリの死体と蛆実装の絵が消滅し、ロープで吊るされたエメラルドの姿が映し出される。


 「虐」→「はげはだか」→「かみむしる」

『デギャアアア! かみのけやめてデス! とるなデスこのドレイニンゲンー!』


 「虐」→「はげはだか」→「ふくをとる」

『デプププ♪ お前もワタシの体にみせられたデスゥ? とくべつにすきにさせてやるデスゥ♪』


 …こんな勘違いメッセージまであったのか…なんてことだ。
 それにしてもこのゲーム、倫理表現基準をどうやってクリアしたんだろう?
 それとも、ゲームだからってあまり深く追求されてなかったのか?!


 「虐」→「おる」→「あし」
 「虐」→「さす」→「あたま」
 「虐」→「ちぎる」→「て」


 三連コソボを食らい…やがれぇぇっ!!


『デッギャバシャアァァァァ!!!』


 みるみるうちにボロボロになっていくエメラルド。
 吊るされている状態なのにどうやって服を奪い取れたのか少し不思議だったが、まあいいか。


『デゲベベ…も、モウユルジデ…ゲベバ……デジィィィ…』


 その後、適当に連続攻撃を叩き込み、たっぷりと悲鳴を堪能した後、俺はそろそろ超必殺技を食らわせる事にした。


  「虐」→「とりだす」→「くわせる」


 ミドリの時同様、あっさりと体内から偽石を除去する。
 そして、それをエメラルドの口に移動させる。
 …って、別にこちらが操作しているわけじゃなくて、画面内で勝手に動いているだけだが。

 偽石を口に含まされたらしいエメラルドが、ドアップで驚愕の表情を浮かべている。
 何か必死でもがいているようだが、サブモニターにはもう何も表示されない。

 少し待っていると、縫い針のようなものを持った手が出現し、エメラルドの口を縫いつける…ような動作を行った。
 エメラルドのA型口は、あっという間にただの一文字に変わる。

 どうやらコマンドの動作はこれで終わりのようなので、俺は立て続けに「きる」→「あたま」を選択した。

 しばらくじたばたともがいていたが…

 バキッ!
 
 という大きな書き文字が一瞬表示され、突然、エメラルドがぐったりして動かなくなった。
 どうやら、暴れているうちに自分の偽石を噛み砕いてしまったらしい。
 
 吊るされたままの絵が十数秒間表示された後、見慣れた天使マークが表示された。
 エメラルド、さらば!
 そして、また「おかわり?」が表示された。
 とりあえず、今回は「いいえ」を選んでおく。
 

 その後、ミドリが産んだ蛆実装の生き残りはどうなったかなと思ったが、残念ながらついに再表示される事はなかった。
 どうやら虐待モードに突入した時点で、存在がリセットされてしまったらしい。
 というより、「おかわり」が表示された時点で、そこまでの流れがなかった事にされると判断できそうだ。



 さて…ここまで手塩にかけて育てて来た二大実装石を失った俺は、これからどうすればいいのか?
 ひとまず、ここまでひっそりと書きためてきたプレイレポートを再確認してみるが、まだまだ不確定要素が多い。
 こんな内容では、とても上司は納得しないだろうなあ。

 やむなく俺は、ものすごくぞんざいな扱いで再度実装石の育成を始めつつ、今回は攻略サイトの情報を丸写しにして、
レポートとして提出する事に決めた。
 まあ、いずれ全部の項目に目を通したいという欲求もあったからな。

 それから二日間かけてレポートを暫定完成させた俺は、さらに次の日、上司へと提出した。


 題目は「携帯用液晶育成ゲーム“テッチっち(仮名)”開発のための研究レポート」。

 
 そういえば自己紹介がまだだった。
 俺は、全然売れていない弱小玩具製作会社の一社員。
 「みどりっち」の爆発的人気に目をつけた上役達の無謀な企画…てっとり早く言うと「パクり商品販売」製作に向けて、
このゲームの徹底分析を依頼されていたのだ。
 インターネットのイの字すらまともに理解しているとは思えない老害共は、たとえレポートの内容が丸写しだったとしても
納得はするだろう。
 俺には、そういう打算があった。

 しかし「みどりっち」のパクり商品を出したいなら、単にデータを吸い出してグラフィックや一部の表示単語を書き換えれば
いいだけだ。
 わざわざこんなプレイレポートをまとめて検討する必要なんか、ありはしない。
 いったいうちの部長は、何を考えているのだろう?
 俺は、電池を抜いてリセットしたみどりっち二体をレポートと一緒に提出する。
 経費購入だから、名残惜しいがこうするしかない。
 って、俺ちゃんと経費請求の書類提出してたっけなあ?

 レポートの大まかな記述方針は、「みどりっちは、一見電子ペット愛護目的のように作られているが、実際は小動物を適度
に虐待する要素の方に力が注がれており、これが人気と結びついた可能性がある」というもの。
 とりあえず、その結論に至る理由で論理的かつわかりやすくまとめておいた。
 これなら、頭の固い上司共も理解を示してくれる筈だ。
 後は、適当にロムコピーと改造をすれば、お手軽新商品完成。
 売れ行き見込み云々はともかく、俺の仕事は終わりだ。



 後日。
 俺は「テッチっち」開発担当チーム(笑)と共に部長に呼び出され、大幅な仕様変更とそのためのアドバイス担当を命ぜられた。
 驚きの声を上げる俺達に、部長はこう言った。


「みどりっちはあまりにも残酷すぎる。小動物を自己中心的な理由で虐待したり殺したりするのを楽しむなんて、まったく
 けしからんじゃないか。こんなものではいかんと思うよ」

「私はこのままの仕様でテッテっちを発売する事は、大きな問題だと判断した」

「テッチっちは虐待要素を一切撤廃し、誰でも簡単に、穏やかな気持ちで可愛いペットちゃんを育てていける内容に変更する
 事を決定した」

「すまないが、君達にはみどりっちのシステムの中から虐待や残虐描写に繋がる部分を完全排除する所から取り掛かって
 欲しい。——以上だ」


 その後風の噂で聞いた話によると。
 その部長、俺が使ったみどりっちを自分でプレイしてうっかり虐待要素を展開させてしまい、一晩怒りと悲しみで枕を濡らして
から、翌日虐待撤廃を会議で主張しまくったそうだ。

 …部長、愛護派なのか…愛護派属性だったのか……


 その数ヶ月後、「テッチっち」はほとんど原型を留めない内容になって発売された。
 当初こそ、みどりっちとの比較という事でネット上の話題になったが、所詮はパクり商品。
 虐待がない以外みどりっちそのまんまの内容である事が暴露された上、実装石の「悪い性格」については完全放置だった
ためシステムが破綻、無駄に難易度を高めてしまいファンからそっぽを向かれる形になった。
 また、テッチっち発売とほぼ同時に、再生産版のみどりっちが広く普及したのも影響した。
 それでも部長は、持論を曲げずさらに完成度を高めた新しいテッチっちの開発計画を提出しまくり、周囲から顰蹙を買い
まくった。

 はあ、たとえ現実に居ても居なくても、実装石って人間に迷惑をかけるだけの存在なんだなあ。
 俺は、今更ながらそれを深く実感させられた。


 テチーテチーテチー

 おっ、呼び出し音だ!
 そろそろ繭が孵化する頃だと思ったが…はてさて、どんな最終形態になっただろう?!


 テチーテチー
『…クソが…デスゥ』


 睨み付けるような鋭い目と、黒一色の実装服、色の濃い髪の毛…そして悪態。
 げえっ! よりによって「超糞蟲」になりやがった!
 畜生! また翠星石にしそこねたああぁっ!!
 画面内で傍若無人に暴れまわる超糞蟲に目を奪われていると、親友から携帯メールが届いた。
 俺と同じ日にプレイし始めたあいつは、なんと「初期実装」の育成に成功したそうだ!
 すげえ! 一番難しい奴じゃん! つか本当に育てられるのかよ!
 俺は早速賛辞の返信メールを送り、後日初期実装を見せてもらう約束をとりつけた。

 ——だがその後、そいつからの連絡が途絶したのは言うまでもない(嘘)。

 

 
 テッチっちが一部のオークションで「クソゲー的レア度」を高め、高額取引されるようになるのは、それからさらに数年後の
ことだった。

 もっとも、本社には何の恩恵も及ぼさいから、そんなの嬉しくもなんともねーだけどな。


 
 (完)


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 旧「たまごっち」シリーズのシステムを応用して書いてみました。
 それを知らない人には痛い内容に見えるかもしれませんが、ご容赦ください(笑)。

 なお、mayにて実装育成?ゲームを作りたいとおっしゃっていた方がおられましたので、
それを真面目に受け止め(笑)、後日、本スク執筆用に準備したプロットを修正したものを別途上げさせていただきます
(かなり適当な内容ですが)。
 というわけで、「電子実装石3」はスクではなく単なる設定覚え書きなので、あらかじめ
ご了承を。 
 

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