さて。 最近起こった事を整理すると、『実装石捕獲→上げ落としのために躾けながら裕福な環境に住ませる→なぜか人化』と言った感じだ。 前半については虐待紳士の諸君なら説明は不要だと思う。というか察してくれ。 問題というか不思議なのが後半。人化実装といえば愛護派の下らない妄想……『愛情を注いだ実装石は翠星石になる』というもの。 しかし現実的に目の前で繭が割れ、人化実装が出て来る所を見た。そして俺はあくまでも虐待派だ……元虐殺派だが。 考えれば考えるほど不思議に思える。なぜ人化したのか?その目的がわからない。 だが、言える事はたったひとつ。 「おいニンゲン!ボーっと突っ立てないで早くお菓子を持ってくるですぅ!」 この実装は人化しても糞蟲だということ。 「…………」 ポットのお湯を茶葉を入れた急須に注ぎ、少し揺すってから実装のところに行く。 「へい、煎茶お待ち」 「あぢゃぢゃぢゃ!何するですこのクソニンゲン!」 緑茶を頭からぶっかけられて涙目で抗議する実装。 「手前ぇはもう少し口の利き方を覚えろ糞蟲が!」 「何を言うです!お前みたいなクソニンゲンはクソニンゲンでじゅうあちゃちゃちゃ!」 「へい、おかわりお待ち」 クソクソ連呼し始めたのでもう一杯かけてやる。 「そうそう、後で床拭いとけよ」 「……自分でやったんだから自分で拭きやがれです」 台所に戻ろうとしていると実装の呟きが耳に入る。すぐに振り向き、一言。 「原因を作ったのはお前だ」 「屁理屈ですぅ」 「屁理屈で結構」 「まったく、何で私はこんなクソニンゲンを下僕に持ったんですかね……」 おそらく俺には聞こえないように言ったつもりだったんだろう。だがしかしばっちりと聞こえていた。 「『高橋名人』で百叩き追加されたいか」 「……わかったですぅ」 『高橋名人』とは自作の虐待用具で、扇風機のモーターに革の太いひもをくっつけただけの物。 その回転速度が名人の十六連射の如きスピードなため、そう名づけた。ちなみに威力は一回当たっただけで腫れが数日残る程度。 実装が俺の横を通り過ぎ、浴室に入る。 「って、どこに行くんだ」 「服が濡れたから着替えるんですぅ。それぐらいさせるです」 「あいよ」 もちろんただ許すわけではない。浴室から戻ってきた瞬間顔面に雑巾をくっつけてやる。 「ほい、布巾」 「でぷっ!」 「ちゃんと拭いとけよ」 「こらニンゲン!私の美しい顔になんて事を!」 ぎゃいぎゃい騒がしい実装をほっといて、俺は部屋に戻った。 ベッドの上で横になりながら、実装が人化した原因を考えてみる。 まず一般的に言われているのが『愛情を注ぐ事』……馬鹿馬鹿しい。愛情なんてあんな糞蟲に注げるかっての。 後は『実装石が自分から望む事』……多分これだとは思うが、しかし理由が思いつかない。 それに望むって言ったって奴らの知能じゃあたかだか知れてる。それだけの意思がないと人間の様にはなれないらしいし。 「もうわけがわからんね」 寝返りをうつ。……考えないほうがいいのか、この一件については。 「ニンゲン、床を拭き終わったです。……まったく、この私に似合わない重労働ですぅ」 ちょうどいい時に実装がやってきた。また後半部分を小さな声で言ってるが、今回は聞こえるように言っていた。 「ちょうどいいや。なあ、お前って何で人間になりたいって思ったんだ?」 「……この私がわざわざ拭いてやったというのに『ちょうどいい』で済ますなですぅ!」 「はいはいポエムポエム。だからお前は何で人間の姿になったのかを聞きたいんだが」 「はあ、まったくこのニンゲンは……いいですぅ、特別に教えてやるです。この高貴なる私がなぜニンゲンなどという下等生物に生まれ変わががががが」 「簡潔に話す」 さすがにウザくなって来たのでうめぼし攻撃を実装に発動。 で、当然ながらグダグダ続くので纏めると。 『実装石の姿のままではニンゲン達に虐待されてしまうのがオチですぅ。ならばニンゲンの姿になれば虐待されずに済むんじゃないのか?と思い早速実行したというわけです』 ……この考え方には少し感心した。普通の糞蟲、いや実装石ではありえない考え方だろう。自分の姿が一番美しいと思うのが実装石の基本思考だからだ。 もしかしてこいつ、意外に賢い個体だったんじゃないのか?と思ってしまった。 「とりあえず!頭をグリグリするのをやめるでででででで」 思いながらもうめぼしは続行したが。いくら賢い事を言っても言動が糞蟲じゃあ感心も出来ない。 「しばらくはそのままだと思いなこの糞蟲」 その後数十分くらいうめぼしり続け、開放したのは実装が完全に気絶してからの事だ。 「……まあ、確かにそうだよな」 気絶した実装は床に放置し、一人ごちた。 確かに人化してからはこの実装を虐待していない。するとしてもうめぼしや軽い肉体言語くらいだ。 人化した以上虐待の加減がわからないし、下手をすれば暴行・殺人事件に間違われるからある意味では正解と言えるだろう。 しかし、むかつくものはむかつくのだ。糞蟲言動とかなどは聞くに堪えがたい。 そういう時はどうするのか?決まっている。公園に行くのだ。 実装を居間のソファに寝かせ、クローゼットから装備一式をセットしたベスト、それと一枚のカードを取り出す。 ネックストラップにつながったそれを首にかけ、ベストを着て準備完了。 「って、忘れるところだった」 一旦居間に戻り、置いてあったサングラスを手に取り装着する。 「それじゃ、行ってくる」 実装にそう言い残して、外に出た後に鍵を閉める。 外に出ると太陽の光に照らされて首から下げたカード……実装駆除者認定証が輝く。 この許可証は市が発行している物で、これを持っている人間は野良の実装石を合法的に駆除(言い方を変えれば虐待)出来る。 そして大型の対実装用武器を扱う場合にもこのカードが必要だ。 ただし、月に数回行われる集会に最低でも一回は出席しなければならないし、試験は虐殺派対策のために人格検査まで行われる厳しいものだ。 このカードを手に入れるのにどれだけ苦労した事か。……とは言っても駆除作業はかなり地味で(というか地味じゃなきゃいけない)少し拍子抜けしたが。 さらに、この実装駆除者のやるべき事は駆除だけじゃなかったりする。 歩いて数分のところにある公園。ここが俺の憩いの場……なんだけれど…… 「イエェェェア!糞蟲は消毒だぁぁぁ!!」 すでに虐殺派が暴れてるし。しかも虐殺正義型っぽい。 大きなため息をつくと暴れてる虐殺派に近づく。 実装駆除者のもうひとつの業務……それは、暴走した虐殺派、もしくは虐待派の鎮圧。 大きな理由として、彼らが暴れた後は実装石の死体や糞、腐臭などで公園の美観を損ねるから。……要は後片付けをしないということだ。 そしてそれを片付けるのは公園の管理人さん、もしくは町の人たちだ。 「すいません、そこの虐殺派」 「あぁ!?」 振り回していたバールがこちらに向かったがあわてずに避ける。 「とりあえずそれ以上暴れるのはやめてもらえませんか?正直迷惑だ」 我ながら丁寧じゃない丁寧語で虐殺派に話しかけてみる。……反応はわかってるが。 「うるせえ!糞蟲は殺されて当然!そして俺はそれを実行する者!すなわちオレイズジャズティス!」 やっぱり正義派だったよ。というかテンプレまんまだよその発言。 「俺の行動を止めるお前は糞蟲と同じ!だからここで叩き潰すぜヒャッハー!」 「少しは落ち着けと、うおっ」 バールの乱舞が襲ってくるがすぐに間合いから離れる。 「逃げるな糞蟲!お前らがいるからこの世は汚いんだよ!」 俺も糞蟲扱いかよ?それはそれで腹立つな。 「まあお前らヒャッハーな奴らは口で言ってもわからない奴らだからな」 乱舞の隙を見て腹に蹴りを叩き込んだ。 「ぐふっ」 「糞蟲は取り消してくれないか?いや、取り消せ。俺を糞蟲呼ばわりするにはお前はまだ若い」 倒れこんだ虐殺派の腕を足で踏みつけ、見下す。 「誰が取り消すか、お前は俺の行動を邪魔した糞蟲だ!それは覆らない!」 「……なあ、この目を知ってるか?知ってるなら話が早いが」 そういって俺はサングラスを取る。……現れた目の色は、赤と緑。 「なんだ、やっぱりお前は糞蟲じゃないか!」 そういった虐殺派の顔を踏みつける。 「知らないのか。なら一回しか言わない。よく聞けよ? 昔、実装病ってもんがあったんだ。そのウィルス持ちの実装に噛まれると実装になっちまうって言う恐ろしい病気さ。 現在は予防用ワクチンがあるから発症する事はないが、昔は下手をすれば発症するまで感染したかどうかわからなかったんだ。 そして俺も実装病の被害者、それも赤ん坊のころにだ。おかげで学生時代はとことん差別されてな。とにかく俺をこんな風にした実装が憎かった。 憎くて殺した。何十匹も何百匹も。虐殺派の中で有名になるほどにな。……最近は虐殺してないから知らんやつらも多いが。 そしてな。俺、よく人間も暴行したんだよ。理由はお前がさっきから言ってた言葉だよ。なんだかわかるか?」 「わかるわけないだろ、この糞むぐぅっ」 「そう。『糞蟲』だよ。く・そ・む・し。俺は実装石が憎かった。だから俺のことを奴らと同等に呼んだ奴は許さなかった。とことん殴ってやったよ」 虐殺派の顔を踏みにじりながら続ける。 「正直駆除者の立場がなけりゃお前を半殺しにしてた。でも鎮圧は手っ取り早く済ませるほうがいいんでな」 ベストのポケットからスタンガンを取り出し、肩口に当てる。 「〜〜〜〜〜ッ!?」 放たれた電撃に悶絶する虐殺派。これでしばらくは動けないはずだ。 ついでに右手と左足を合わせ、背中側で手錠をはめる。後は警察に連絡してこいつを引き取ってもらえば終わりだ。 警察に連絡を済ませ、来るのを待つ間。もう一度サングラスを装着し生き残りの実装がいるかどうか探してみる。 「……デ…………」 かすかに聞こえた実装の声。声のした方に向かうと、親子だろう数匹の実装が固まっていた。 「あ、こら!行っちゃダメデス!」 子供の中の一匹がこちらに近づいてくる。 「ニンゲン!お前にはこのわたちを飼う資格があるテチ!さあお前の家に連れて行ってわたちを飼うテチ!」 「やめるデス!……ニンゲンさんすいませんデス。この仔の言葉を許してやってくださいデス」 ……どうやら子供が糞蟲なのに間引き出来なかった親のようだ。 「間引きはちゃんとしなきゃ駄目だろうが」 「こんな糞蟲どもはどうでもいいテチ!さあ、わたちを連れて帰るテチ!」 「……ごもっともデス。デスが、この仔を間引く事は私には出来なくて……」 「ニンゲン!聞いてるテチか!?」 「まったく……ところで、ここに住んでいた実装の数はどれくらいだったかわかるか?」 やかましい仔実装は無視して話を続ける。 「そうデスね……確か三つか四つくらいの家族がいた気がするデス」 「割と小規模だな。片付けは楽みたいだが……お前らをどうしようか?割と人の話を聞いてくれる個体だから殺すには惜しい」 「だ・か・ら!お前のところに行ってやるって言ってるテチ!」 「一応この仔を除いて後は糞蟲じゃないことは確かデス」 「……そうか。なら警察がそのうち来るから彼らに保護してもらおう。むこうにとってはいい迷惑だろうけど」 「テチャ!?何でこいつらまで一緒なんテチか!?」 「ありがとうございますデス。ほら、お前たちもニンゲンさんにありがとうするデス」 「……テチュ」 「……テス」 おそらく糞蟲の上と下の姉妹だろう仔実装たちが俺にお辞儀をした。……余りうれしくないのは仕方がないとして。 「テチャァァァ!そんなの許さんテチ!おいニンゲン!わたちが許すテチ!こいつらを虐待するテチ!」 問題はコレだ。さっきから喧しいことこの上ない。 「で、だ。こいつをもらっていいか?」 「……余りお勧めできないデスが、どうするつもりデス?」 「いやいや、糞蟲を好んで持っていく奴のやる事はひとつだろう?」 その言葉を聞いた親実装が固まる。 「に、ニンゲンさん……もしかして、虐待派だったんデスか?」 「その中でも良識はある方だ。糞蟲しか虐待しないし飼い実装にも手を出さない」 「だったら早くこの糞蟲どもを虐待するテチ!」 ……やれやれ。どうしてくれようかこの糞蟲は…… 「あー、君?通報してくれたとしあきくんかね」 「あ……はい。実装駆除者のとしあきです」 警察の人に話しかけられ、すぐに証明カードを見せる。 「虐殺派は確保したよ、ご協力、感謝する」 警官が敬礼し、それにあわせて俺もお辞儀をする。 「……それで、なんですが……もう一つ頼めます?」 「何か?」 「ええ、この実装達をそちらで保護していただきたいんですが……話してみたところ、一匹以外は割と賢いようですし」 「……わかった。こちらのほうで預かるよ」 「ありがとうございます。それと、そっちの騒がしいほうは俺がもらう事にしたんで」 警官の足元から仔実装を拾い上げ、また礼をする。その後に実装達の方に向き直り、ベストのポケットから袋を取り出す。 「とりあえずよかったな。これは俺からの選別だ」 袋の中はコンペイトウ。それを見た糞蟲がさらに喧しくなった。 「デヂャァァァァ!?ニンゲン!何でわたちにだけくれないテチィィィ!?」 「こ、こんなにデスか!?」 「ああ、子供たちと分けてくれ」 「コン・ペイ・トウ!コン・ペイ・トウ!お前らよこしやがれテチャァァァ!」 俺の手の中でじたばたともがく糞蟲。 「それじゃあ、実装達の事をよろしくお願いします」 「……あ、ああ」 唖然としている警官。……って、この光景を見れば当然か。 家族そろってお辞儀をした後、歩き出した警官の後を実装達が付いて行く。 「おいニンゲン!この美しいわたちに何もないとはどういう了見テチャァ!?まだ今なら許してやるからさっさとコンペイトウを出すテチ!」 手の中でうるさい糞蟲。ベストのポケットを探り、コンペイトウ……と見せかけてドドンパを一個口の中に入れる。 「ふぁりなひへひ!ふぉっふぉふぁふへひ!(足りないテチ!もっと出すテチ!)」 「はいはい後で出してやるよ」 ドドンパを口に入れながらまだうるさい糞蟲。とりあえず取り出したビニール袋の中に入れる。 「なんテチかこれは!?わたちはゴミじゃないテ……テェェェェ!?」 一気に腹が膨らみ、総排泄口から糞が一気に噴出する。しかし低圧式だから上に跳ばず、ただ糞を排出し続ける。 仔実装にしてはなかなかの量を出した。すでに上の口を縛っているので臭いはもれていない。 「これぞ正真正銘の糞蟲ってか」 「テェェェ!臭いテチ!べたべたするテチィ!」 「お前は一生そのままだ。糞の中でおぼれていろ」 「デヂャァァァァァ!」 ……さてと。まずは公園の片付けをやらないと。 まばらに散った実装の死骸を見渡し、俺はため息を付いた。 * デスゥ * 「ただいま」 「遅いですぅ!私をずっと待たせるなんてなんて使えないニンゲンです!」 帰ってきてまず聞こえるのは罵詈雑言。 「なあ、たまには『おかえり』の一言も言ってくれよ、ていうか言えよ」 あの後ずっと死骸を拾って袋に入れ、満杯になったら密封処理して……を繰り返し、正直言って疲れた。 ついでに言うと、親実装の申告より量が多かったのが一番の疲労点だろう。 糞蟲も虐待どころじゃなかったため、軽くひねって袋の中に。 「ふん、私に一言も言わずに出て行くようなニンゲンには言ってやらんです!」 正直満足すら出来なかった。……それもこれも全部虐殺派のせいにしておこう。 「何言ってるんだお前は」 頬を膨らませて怒る実装を冷ややかな目で見ながら、ソファに座る。 「ったく、最悪だ。久々に公園でゆっくり虐待しようかと思ったらヒャッハーが暴れてるし、その後にいい糞蟲見つけたけど虐待どころじゃなかったし、 おまけに帰ってきたらどこぞの偽人間にグチグチ文句言われるし……」 「お仲間に会えてよかったですね」 「阿呆、俺はもう虐殺派は卒業したんだよ。傍から見たらヒャッハーやってる事がアホらしく思えてきてな」 そう。昔はぜんぜん気にならなかったが思い出すと昔の自分を殴りたくなるような事ばかりやってたな。 ……人はそれを若さゆえの過ちという。 「嘘つくですぅ。最近だって私を虐待してるじゃないですか」 「お前のは虐待とは言わない、暴行だ」 「……自覚あるくせにやめないなんて最低ですぅ」 「なんか言ったか?」 聞こえていたがあえて聞こえない振りをする。実装がため息をついた。 「何でもないですこのクソニンゲン」 「さらりと糞言いやがってこの糞蟲」 「クソニンゲンはクソニンゲンで十分ですぅ」 「よっしゃ、お前今夜は寝かせないからな!」 パキポキと骨を鳴らして立ち上がる。その言葉、宣戦布告と見たり。 「何を言ってるですぅ!?って、え、何その荒縄は!?一体何をするですぅ!?まさか、私の体を……」 「安心しろ。……この年で父親になりたくないしジックスの気もない」 近くの公園はさっき行った一箇所しかない。……とりあえず軽い肉体言語からランクアップしてみるか。 とりあえずSMっぽく虐待してみよう。……というかまんまSMか。 「さあ、豚のような悲鳴を上げろ」 久々にうちの実装を虐待した。……まずい、これは癖になりそうだ。
