【ラブドール実装】 それは、実装親子が深夜のコンビニエンス・ストアに、 ゴミ漁りに出かけた時のことだった。 人間がゴミ箱に捨てた中華まんの底紙をいつもより多く拾うことができ、 一家はほくほく顔で家路に着いた。 一匹がついてきていないことに親実装が気づく。 振り向くと、その仔実装が呆けたように突っ立っていた。 「早く行くデス」と親実装が声をかけるが、 仔実装は熱病に冒されたように頬を上気させるだけだった。 チッと舌を鳴らし、仔実装のもとに駆け寄る親実装。 こんなところでちんたらしていて、人間に見つかったらどうするつもりかと、 近づきながら親実装は仔実装をなじる。 「何してるデス」 肩を掴まれて、仔実装はようやく我に帰った。 「ママ、何だか胸がドキドキするテチ。 熱いものがこみ上げてくるテチ」 「何か悪いものを食べたデス? だからあれほど白いんげんは生で食べたらいけないと言ったデス」 「違うテチ。 体の中の石が、熱く、熱を持っているみたいなんテチ」 仔実装の告白に、どきりとさせられる親実装。 偽石が熱を帯びる──それは恋のサイン。 「あのニンゲンさんを見ていたら、体の中の石がイゴイゴし始めたテチ」 仔実装が指差す先に、確かに人間がいた。 それは親実装の予想に反し、まだ幼い少女のようであった。 街灯の明かりの下、アニメのキャラクターのような大きな瞳が輝いていた。 冷たい冬の夜、それは幻想的な光景ですらあった。 「ニンゲンなんてもっての外デス」 親実装が声を荒げる。 人間がいかに危険な存在であるか、彼女は身を持って知っていた。 体中に、煙草の火を押しつけられてできた煙草の痕が無数にあるのだ。 一刻も早く逃げなくては。 仔実装を抱えていこうと右手を伸ばすと、不意にその手が弾かれる。 仔実装が拒否したのかと思ったが、そうではなかった。 仔実装が親実装のほうに向いた時、股間の逸物が手に当たったのだ。 「な、何てことデス!? ワタシはお前をマラつきに産んだ覚えはないデス!」 確かに、その仔実装にはマラがなかったはずだった。 それがいかなるホルモン・バランスの崩れからか、 彼女が少女に淡い恋心を抱いた瞬間、陰核がみるみる肥大化し、 たちまちのうちに立派な男根へと変貌したのである。 「ワタチ……ワタチ、あのニンゲンさんに恋をしたみたいテチ」 仔実装の心臓は早鐘のように鳴り響く。 その音が、親実装にも聞こえるようだった。 いくら最近のトレンドとは言え、 実装石と人間が結ばれることなどあってはならない。 親実装の本能がそう叫んでいた。 とにかく、今は逃げなくては。 少女にラブ・ビームを送り続ける仔実装を抱え、親実装は公園へ駆け出した。 その他の仔実装がテッチテッチと親実装を追いかける。 ※ 「今日はもう遅いから寝るデス」 そう言って、親実装は仔実装たちを寝かせつけた。 全力疾走で疲れた仔実装たちは、たちまち眠りに落ちた。 マラ仔実装は、なかなか眠りにつけなかった。 眠ろうとして瞼を閉じれば、あの少女の横顔が浮かぶ。 海綿体が充血して、肉棒に力がみなぎるのだ。 そのたびに肉茎が段ボール・ハウスを叩いて大きな音を立て、 眠っている仔実装が驚いて、びくっと体を震わせた。 ああ、あのニンゲンさんと触れ合いたい。 マラ仔実装はそう考えた。 可愛い、そしてたくましい逸物を備えたこのワタチを見れば、 きっとニンゲンさんもメロメロになるテチ。 そうしたら一緒に愛を育むテチ。 実装石とニンゲンによる愛の異業種交流会テチ。 想像に照れたのか、自分で自分の体を抱きしめ、ごろごろと転がった。 怒張した男根は十分すぎる硬度を持っており、 転がった弾みで妹の頭を潰してしまったことに、マラ仔実装は気づかなかった。 眠れなかったのは親実装も同じだった。 むくりと起き上がると、長女を揺り起こした。 マラ実装がいると、家族に災厄が訪れる。 間引かなければならない。 可愛そうだが明日、処分するしかないと、ひそひそ声で相談した。 マラ仔実装は、その話を聞いていた。 たちまち力を失い、萎れてしまう陰茎。 そうだ、自分は突然マラ実装になってしまったのだ。 マラ実装は間引かれるのが世の習い。 自分も、間引かれる運命にあるのだ。 マラ仔実装は気づかれないように涙した。 そして家族に迷惑をかけないよう、自ら出て行くことを決めたのである。 全員が寝静まったのを確認すると、マラ仔実装はねぐらを後にした。 翌朝、親実装が目を覚ますと一匹の仔実装が頭を潰されて死んでいた。 それはそれとして、実装服が一着、きちんと畳まれていた。 マラ仔実装の姿はない。 「あの仔……」 親実装はマラ仔実装の実装服を抱きしめた。 栗の花の匂いがした。 ※ ねぐらを飛び出したマラ仔実装の行く先は決まっていた。 あの少女がいた場所だ。 いくらマラつきとは言え、親元を離れた仔実装の運命は風前の灯である。 ならば、自分の想いだけは少女に伝えておきたい。 不純な生き物である実装石にしては珍しい、純粋な想いだった。 しかし、少女を見かけたのは数時間前のことである。 果たして今でもあの場所にいるのだろうか。 いた。 コンタクト・レンズを探しているのか、四つん這いになっている。 マラ仔実装に尻を向ける格好だった。 マラ仔実装は運命の出会いを感じた。 これはもう、思いの丈をぶつけるしかないテチ。 ワタチのマラと彼女の粘膜との摩擦で、「お肌の触れ合い会話」をするテチ ──やはり、不純な生き物である。 マラ仔実装は有無を言わさず、少女の尻に飛びついた。 体重をかけて下着をずらし、性器をむき出しにする。 それはもはや本能的な行動であった。 スリットに肉棒をあてがうと、ぐいと、一息に挿入した。 「何だ、すっかり受け入れ準備ができているじゃないテチ」 これも、本能が言わせた台詞。 「何とか言ったらどうテチ? いい声で鳴いてみせるテチ」 両手両足で臀部に取りつき、腰をかくかくと動かしている。 最初は無反応だった彼女だが、マラ仔実装の動きが激しくなると、 たまらずよがり声を上げ始めた。 その声を聞いて、ますます興奮するマラ仔実装。 「いいテチ? ここがいいんテチ?」 そう言いながら、果てたのはマラ仔実装のほうだった。 しかしたちまち回復すると、再び腰を振り始めるのだった。 一振り一振り、自分が生きている証を刻みつけるかのように、 マラ仔実装は腰を振り続けた。 ※ やっぱり、あのまま捨てるのはまずいよなと、男はゴミ捨て場に戻った。 バックスタイル型エアーダッチ「姫川亜美」。 男が捨てたのは使用済みダッチワイフだった。 面白半分でそのままゴミ捨て場に置いたが、目の前の道路は通学路だった。 何か問題があるといけないと、急に心配になったのだ。 「何だ、あれは?」 姫川亜美の体重は軽い。 風で軽く飛ばされて四つん這いの姿勢、 即ち亜美が最も得意とする体位でゴミ捨て場から道路に躍り出ていた。 その臀部にマラ実装が取りつき、一心不乱で腰を振っていたのだ。 心なしか、その不自然なアニメ顔は喜んでいるように見えた。 振動に合わせて、アニメ声のあえぎ声が再生する仕かけがついていた。 その声を聞き、男は意味もなくジェラシーを感じた。 しかし、頭を振ってその嫉妬心を追い払った。 考えてみれば、あのマラ仔実装と穴兄弟になったのだ。 実装石と、穴兄弟である。 「悔しい、でも……」 誰かと穴兄弟になるという経験は初めてで、少し嬉しかった。 けれど、ダッチワイフをこのままにしておくわけにはいかない。 「おい、兄弟」 男は、せわしなくピストン運動を続けるマラ仔実装に声をかけた。 ※ ゴミ捨て場からそう遠くない川原に、男とマラ実装が腰かけていた。 間には、亜美が四つん這いの姿勢で川を見つめていた。 夜明け前の寒さが身にしみた。 「そうか、マラ実装ってのも大変なんだな」 男は、間引かれる運命のマラ仔実装に同情した。 マラ仔実装は返事をする代わりに、ぶるっと震えた。 男は何も言わず、首に巻いていたマフラーをマラ仔実装にかけてやった。 「けれど、ワタチには亜美ちゃんがいるテチ。 亜美ちゃんと一緒なら、何だってできる気がするテチ。 一緒に、明るい未来を築くテチ」 「お前はもう、大人なんだな。 好きな女を幸せにしてやろうというその気概、いつまでも大事にしろよ」 「はいテチ」 元気良く頷き、亜美のほうを向く。 取ってつけたような巨乳が風に揺れた。 「本当に行くのか?」 今度は、マラ仔実装は返事はせず、黙って首を縦に振った。 それは強い意志の表れだった。 ぎゅっと、亜美の手を握る。 一人と一匹、それに一体は無言で川原を降りる。 男は亜美を川面に浮かべ、その上にマラ仔実装を乗せてやった。 空気の入ったダッチワイフは、十分な浮力を持っていた。 亜美をそっと押し出し、川の流れに乗せてやった。 少し川を下れば、海である。 その海の方角から、力強い朝日が昇ってきた。 マラ仔実装と亜美は、朝日を浴びてきらきらと輝いていた。 「亜美ちゃん、いつまでも一緒テチ」 マラ仔実装はダッチワイフに声をかけた。 彼女からの変事を待ったが、亜美の口はいつまでも開いたままだった。 (終) ※本当のタイトルは【ラブドール「と」実装】です。 ごめんなさい。
