とある住宅街の道端にダンボールが3つ並んでいた。 その中にはそれぞれ仔犬、仔猫、仔実装が3匹ずつ入っている。 それらは同じ飼い主によって飼われていたが飽きたという理由だけで捨てられたのである。 さらにダンボールの側面には 「最後まで責任を持って飼ってくれる方だけ拾ってあげてください」と自分の事は棚に上げて勝手なメッセージが書かれていた。 通りすがりの人達もそのメッセージを見て不愉快そうな顔をするがダンボール内で泣いている仔を見ると笑顔になった。 「可愛い〜、このくりくりした目が最高〜!」 「こっちの仔のつぶらな目も可愛いよ〜」 「飼っちゃおうかな〜」 主に女の子がメインとなって頭を撫でたり抱っこしたりと仔達を可愛がっていた。 「クーン」 「ニャー」 仔達も知らない人間にいきなりの行動に驚いていたが優しくしてくれると理解すると甘えだす。 「よし!私このワンちゃん飼う!」 「それじゃ私はこっちのネコちゃん!」 「いいな〜、うちはハムスター居るから飼えないのに〜、それよりちゃんと育てなきゃダメだよ?」 「分かってるって!」 「この仔達を捨てた飼い主みたいには絶対ならないって!」 前の飼い主がいい反面教師になったようだ。 こうして女子高生達によって犬と猫が一匹ずつ貰われていった。 だが… 「テチュー!テッチューーーン!!」 「テチテチテチーーーーー!!!」 「テチュ!テッチューーーーーーー!!!」 おっと、忘れるところだった! 仔実装も居たんだった。 犬や猫にばかり人が寄ってくるが仔実装のところには全くといっていいほど人が寄り付かなかった。 仔犬や仔猫の愛らしさに比べれば仔実装など汚物を撒き散らす怪生物でしかない存在だからだ。 しかし仔実装達にはそれは理解出来ていない。 「何でワタチ達を可愛がらずにあんなクソ犬やクソ猫ばかり可愛がるテチ!?」 「あんな奴等よりワタチ達のほうが数億倍も可愛いテチ!!」 「ニンゲンの目は節穴テチ!?」 全く自分達を構おうとしないニンゲンに暴言を吐く仔実装。 ダンボール内は仔実装の汚物によって既に緑色に染まっていた。 「テ!?またニンゲンが来たテチ!」 「今度こそワタチ達を可愛がってもらおうじゃないかテチ!」 「ついでに飼わせてやるテチ!」 人間の親子が歩いてきたのを確認し、仔実装達は全力の媚を披露する。 「テチューーーン♪テッチューーーーーン♪」 「テチュン♪テチュン♪テッチュン♪」 「テッテレー♪」 しかし人間の親子は仔実装達をスルーし、仔犬や仔猫の方へ寄っていく。 「母ちゃん、この仔達可愛いね」 「そうだね、生まれてまだ間もないといった感じだね」 「ねぇー、飼ってもいい?」 「飼いたいの?うーん、一匹だけなら」 「やったーー!」 「その代わりちゃんと世話するんだよ?」 「うん!」 「もし途中で投げ出したら代りにお前を捨てるからね!」 「!!わ…分かったよ!母ちゃん!!」 親の言葉に子供は少しチビった、これならキチンと最後まで世話するだろう。 子供は仔犬を選び去っていった。 「テェ!?何でワタチ達を無視するテチ!?」 「さっきのは全身全霊を込めた最高の媚だったテチ!」 「あれを見て何故ワタチ達を可愛がらないテチ!!」 仔実装達の怒りをよそに再び人間がやってきた。 今度は若い男だ。 「テ!?今度こそ!」 「今こそ究極の媚を見せてやるテチ!」 「受けてみるがいいテチ!ワタチの媚を!!!」 しかし男は華麗に仔実装をスルーし、仔猫の前で止まった。 「…たま!?たまじゃないか!ど…どうして…!?」 「ニャ?」 「いや…違うよな…たまはもう死んだんだ…」 実はこの男、最近飼い猫を交通事故で失っていた。 愛情込めて世話をし、まさにパートナーに相応しい存在になっていた。 そのパートナーを失いしばらく仕事にも手がつかず休暇を取っていて、呆然と道を歩いていたところへこの出会いだ。 「そうか、きっとたまがもう一度俺と暮らすため生まれ変わったんだ、そう思うことにしよう!」 男はそう自分に言い聞かせて仔猫を一匹抱き上げた。 「またよろしくな、たま」 「ニャー」 止まっていた男の時間が動き始めた瞬間であった。 だが面白くないのが仔実装である。 「何でテチーーーー!!」 「ワタチ達の声は聞こえてるはずテチーーー!!」 「どうして…!どうしてーーーーーーーーー!!!」 怒り爆発といった感じだ。 「テ!またニンゲンが来たテチーー!!」 「今度こそ…!今度こそテチーーーー!!!」 「今こそ見せるテチーーーー!!ワタチの媚をーーーー!!」 やってきたカップルの男女に究極の媚を見せ付ける仔実装達! 「あ、仔実装だ!しかも捨て実装!」 「お!元飼い実装か!いい感じの糞蟲だな!」 「それじゃやる?」 「おう!」 やった!ついにワタチ達の愛らしさに気づくニンゲンが来た! 仔実装達はここぞとばかりに媚ダンスを踊る! 「それじゃ一匹ずつな」 「うん」 仔実装は男と女にそれぞれ一匹ずつ抱き上げられた。 だが選ばれなかった仔実装は怒り心頭だ。 「テッチーーーン♪これでセレブな生活満喫テチーン♪」 「さあ!早くお前達の家に連れてくテチ!」 「どうしてワタチを抱き上げないテチーー!!」 「テププ!お前はブサイクだから選ばれなかったテチ!」 「お前は一生そこでテチテチ喚いてるのがお似合いテチ!」 「テーー!!ニンゲーーン!!そんなブサイクなんかぶっ殺してワタチを選ぶテチーー!!」 「テププ!無様テチ!お前みたいなブサイクはさっさと…テェ!?テッチャアアアア!!!」 「テ?どうしたテ…テッヂーーーーーー!!!」 「テェ!?テーーーップププププププププ!!!!!」 仔実装達に何が起きたか?それはこのカップルが虐待派だったからだ。 虐待派がする事と言えば虐待しかない、抱き上げられた2匹はあっという間に禿裸にされたのである。 そして残された仔実装はみすぼらしい姿となった姉妹を見て嘲笑う! 「やっぱ禿裸はいいね♪」 「ああ、基本とはいえいい反応してくれるからな」 「それじゃ次はどうしようっか」 「俺は火あぶりにでもする、お前は強制出産でもさせれば?」 「そうだね」 男は持っていたライターで禿裸仔実装を火達磨にしてじっくり鑑賞。 女は口紅を緑の目に塗り両目を揃え禿裸仔実装が蛆や親指を次々出産する様を鑑賞した。 「あぢゅいいいいいいい!!!ワタヂの体があああああああ!!!あぢゅいいいいいいいいい!!!」 「ああ、あああああああ…ワタチの子供が生まれてるテヂ…でも…ちょっと生まれすぎ…テヂ…」 「テーーーーーーップププププププププ!!!無様テチ!あの世でその愚かさを悔い改めるがいいテチ!」 「あぢゅ…い…」 「テ…ェェェェ…」 完全に焼け落ち灰になった長女。 出産のしすぎで栄養を全て奪われた次女は最後の最後で偽石を崩壊させて死んだ。 「なかなか面白かったね」 「ああ」 「あと一匹残ってるけどどうする?」 「他の虐待派のため残しといてやろうぜ」 「そうだね、あ!隣に猫ちゃん居るよ!」 「今まで全く気づかなかったな、向こうに犬も居るぞ?」 「ねぇ、猫飼おうよー」 「飼うなら犬だろ」 「猫!」 「犬!」 「…ならジャンケン」 「いいだろう」 「「ジャンケンポン」」 「…」 「…」 「猫」 「分かったよ、まあ猫ならそんなに手間かからんだろうし」 「それじゃさっそくペットショップで道具揃えなくちゃ!」 「予想外の出費は痛いな」 「私も半分出すから安心なさい」 「マジか?さすがは俺の女、出来てるな!」 「褒めても何も出ないよー」 「その割には嬉しそうじゃないか」 「うるさいなー!」 カップルはイチャイチャしながら去っていった。 もちろん後始末はキチンとして。 灰になった長女と干乾びた次女とそれが生んだ蛆と親指をダンボールの中に戻した。 「テププ!無様テチ!無様テチ!」 一匹残った三女は灰になった長女や干乾びた次女を蹴って遊んでいる。 「テ?ついでにワタチのご飯も用意してくれるなんて気が利いてるテチ!」 そのご飯とはもちろん蛆と親指である。 「レッピャアア!!」 「レッヂイイイイ!!」 「美味いテチ!これぞ至高の味テチ!」 そこへまた人間が現れた。 今度は大人しそうな若い男。 「うわ!仔実装!?しかも共食いしてる!!」 「テププ!テーップププ!」 「捨て実装か、でもこれじゃ誰も拾ってくれないだろうな」 仔実装は蛆と親指を食うのに夢中で人間に気づいていなかった。 「あ、こっちに仔犬が居る」 「クーン」 「可愛いな…飼いたいな…」 「クーン」 「でもちゃんと飼えるかな…」 「クーン」 「うーん」 「クーン」 「…」 「クーン」 「そ…そんなつぶらな目で見つめないでくれ…」 「クーン」 「…」 男が動くと仔犬の視線も動く、また男が動くと仔犬の視線がそれを追う。 「これは僕に飼ってほしいというアピールなのか?」 「クーン」 「やめて!そんな目で見つめられると…」 「クーン」 「…」 「クーン」 「…」 「クーン」 「う…うおおおおおお!!!」 男はいきなり叫ぶと仔犬を物凄い勢いで抱き上げた! 「お前は僕のものだ!絶対放さない!」 「ワン!」 「正直飼い方分からないけど本やネットで調べれば済むことだな、よし!」 男は仔犬を抱いて去っていった。 こうして仔犬と仔猫は全て貰われていった、残るは… 「テ?テェェェェェェェ!?」 最後に残された仔実装はようやく自分だけになった現実に気が付いた。 「何でテチ!こんな可愛いワタチを置いて何であんな犬や猫を飼うテチ!?」 仔実装は全く相手にされなかった腹いせを親指や蛆をいたぶる事で解消した。 「レッピャアアアアア!!!」 「レヂィィィ!!レッヂィィィィィィィ!!!」 禿裸にしたり手足を食ったりひたすら暴行を加えたりとあらゆる苦痛を味あわせていた。 そんなこんなで、もうまともに動いてる蛆や親指は居なくなってしまい仔実装はこれからの事を考えた。 「とにかくもう少しここで待ってみるテチ、ワタチくらい可愛ければすぐニンゲンに飼われるはずテチ!」 1日経過 「テェ…何時まで待たせるつもりテチ!?世の中間違ってるテチ!」 2日経過 「テッチーーー!!いい加減にするテッチーーーーー!!!」 3日経過 「テェェェェェン!テェェェェェェェェン!!」 4日経過 「テ…誰か…来て…ワタチを拾って…テチ…お腹空いたテチ…ウンチも…出ないテチ…」 5日経過 「…ェェェ…お腹…ペコペコ…お…おてて…食べるテチ?美味しそう…テチ?」 6日経過 「…ァァ…チ…ィィ…」 7日経過 「…ヂィィィィィ…」 捨てられて一週間後、仔実装はついに餓死した。 最初の数日はいたぶり殺した親指や蛆を食料にしていたがやがてそれも尽き、それから先は地獄であった。 小さい仔実装ではダンボールから出る事も出来ず水もない。 ここ一週間は雨も全く降らず仔実装はだんだん弱っていった。 食うものが無くなった仔実装は食糞を始めたがやがて糞も出なくなった。 すると今度は自分の髪と服を食い始めた。 それがなくなると自分の手足も食ったが所詮一時しのぎでしかない。 栄養の補給が無い為手足の再生も始まらず蛆のように這うだけの毎日。 それでも人間の気配を察知すると弱弱しい声を上げて助けを求めた。 しかし禿裸、しかも凄まじい悪臭を放つダンボールに近づくものなど皆無。 仔実装は絶望と苦しみに満ちた鳴き声を上げながらパタリと顔を地面に落とし息絶えた。 そして数日後… 一組のカップルがその道を通りかかった。 「ニャー」 「みかん、たかいたか〜〜い!」 「ウニャウン♪」 「仲がいい事で、一応俺が飼い主なんだがな」 「ニャウ」 「何だ?今度は俺にたかいたかいしてほしいとでも言いそうな目をしやがって」 「ウニャ」 「わーったよ!ほーれ!」 「ニャウーーン♪」 「嬉しそうな声で鳴いちゃってるね、よっぽどアンタの事好きなんだね」 「そうなのか?」 「分かるよ、私の時とは明らかに声が違うもん」 「ふーん、確かに可愛いけどな」 「ちょっと嫉妬しちゃう…あれ?」 「どうした?」 「あそこにあるの、もしかして…」 「ああ、一週間前にみかんを拾ったダンボールだな、まだあったのか」 「あれは糞蟲の入ったダンボールじゃない?だって糞蟲特有の匂いがするもの」 「確かに…」 カップルが見たときダンボールは1つしかなかった。 仔犬と仔猫の入ったダンボールは撤去されたが仔実装の入ったダンボールだけはそのままであった。 何故?それは簡単、臭いからである。 何より餓死した仔実装の死骸がそのまま残されていたからだ。 「…結局誰にも拾われることなく虐待もされなかったわけだ」 「こんなことならあの時虐待しとけばよかったね」 「いや、これはこれで糞蟲には相応しい末路だと思うぞ?」 「そうだね、それより仔犬や仔猫はみんな拾われたかな?」 「だといいな、うちのみかんみたいに今度こそ幸せになってもらいたいもんだ」 「そうだね」 「ニャ」 「ん?どうした?」 「ニャウ」 みかんは餓死した仔実装をじっと見つめていた。 そして飼い主を見つめ何かを訴えるように鳴く。 「ニャー、ニャー」 「どうした?この糞蟲の死骸がどうした?」 「ねぇ!コイツ生きてない!?」 「何言ってるんだよ、こんな状態で生きてるはずが…」 「チ…ィ…ィィ…」 「マジか!?」 「…キモイ…」 何と仔実装は生きていた!死んだと思われていたがどうやら仮死していただけのようだ。 仮死することにより消費するエネルギーを最小限に食い止め偽石の力で何とか生き延びていたのだ。 「そんなに生きていたいみたいだね」 「なら生かしてやろうじゃないか」 「みかんのあそび相手にも丁度いいしね」 「だな、くっくっくっ…」 不適な笑みを浮かべるカップルと飼い猫のみかん。 仔実装の地獄はまだ始まったばかりだ。
