『誕生』 「とりあえずお母様は席を外して貰えますか?保護者とはいえプライベートなことですし」 母子で訪れた産婦人科の女医にそう促されて母親は診察室を後にした。 押し黙ったままの少女に諭すように女医は言った。 「父親はマラ実装石ってことであっているのね?人間の男性とは経験していないのね?」 人間女性が実装石の子供を妊娠する例は少なく、学会にもほとんど報告が無いのが実情である。 頷く少女の目は真剣で嘘を言ってる様子はなさそうだ。 「先生。産んではいけませんか?」 女医は困った顔をしている。産まれてくる子の法的立場はどうなるのかなど考え出したらきりがない。 「世の中には産まれてこないほうが幸せということだってあるのよ。」 そもそも人間の卵子とマラ実装の精子で受精が起こって無事に核分裂が進んでいくものなのか? それとも何か寄生卵のようなものが挿入時に植えつけられたものなのか? マラ実装自体の精子の染色体が生殖相手ごとに変化するという話もあったようだけども・・・・・。 「あはは、なんだ今日は4月1日じゃないだろ・・・、悪い冗談はやめろ!TVか?ドッキリか?」 「お、俺は真面目に働いてきたんだ・・・サービス残業だって家族を守る・・・何度も額を地面につけ・・・。」 「頼むよ・・・、お願いだから嘘だと言ってくれ!!! 相手の男は誰だ?!誰かにそそのかされてるんだろ?」 母子に産婦人科の診断書を見せられて動揺し泣きながら頼んだり怒鳴ったりする父親。 「有りえないだろ・・・だ・・・だって・・・実装石との子供なんて・・・有りえるわけないだろ。」 「お前がちゃんと躾をしないからだ!!!」 母親を張り飛ばす父親、倒れる母親を庇おうとした少女の身に異変が起きる。お腹を押さえてうずくまる少女。 争っている場合ではない慌てて産婦人科へと急いだ。 「わたし産みたい、だって産まれてくる赤ちゃんに罪はないでしょ?」 産婦人科では流産の可能性があるので、というか異常な速さで成長している様子が外部からもうかがえたので、 少女の身体を守るために堕胎させることが決まり緊急手術に入ろうとしていた。 心配そうに祈る両親はすぐに我が耳を疑うことになるのだった。 「テッテレ〜♪」 実装石を飼ったことの無い両親は耳慣れない場違いな効果音が聞こえてきたことに驚いた。 あまりの心労に幻聴でも聞こえてきたかと思ったがお互いに顔を見合わせているということは現実らしい。 顔面蒼白になった百戦錬磨の女医先生がやってきて呟いた。 「信じられませんが赤ちゃんがもう産まれてしまいました、女のお子さんということになるのかしら。」 両親ともに気絶寸前状態で口をパクパクさせている。 堕胎のはずが産まれて来てしまったともなれば心の準備も出来てないので仕方が無いともいえるだろう。 「本日はお帰りになって後日またお越しください、産まれた赤ちゃんはまだ見ないほうが良いでしょう。」 奇形児というか異種混血児というか丸々と太った翡翠のような色の身体に可愛らしい少女似の顔でオッドアイ、 小さな手足をバタつかせてレフレフと泣いている生物。それが産まれてきた赤ちゃんである。 しかもまだ妊娠期間1ヶ月という早さで・・・、早産でなければ人間型で産まれてきたのだろうか? 堕胎手術しようと準備していたら、身の危険を察知したのか股間から妖しい音を鳴らして出てきたのだ。 少女には下半身麻酔をしていたので陣痛はなかったようですんなり産まれた。 しかも産まれてすぐなのに羊膜を口にしているし、言葉らしきものも話したりする。 「うまうまレフ〜うまうまレフ〜 ママ抱っこしてレフ〜」 少女は何か悟りを開いたかのように全てを受け入れて抱いてあげていた。 あらためて思う母は強しと。 _______ 公園 _______ 「このへんで少女を犯すマラ実装石を見なかったか?知らないのか、そうか。なら死ね!」 グチャッと無表情で実装石を尋問しては砂を詰めた皮袋で撲殺していく中年の男性、少女の父親である。 なんとかマラ実装を捕らえて事の真実を知りたいと思い実装石狩りをはじめたのだ。 つづく予定
