タイトル:【観察】 私の思い出の懐かしプラモ 第68回目
ファイル:カ.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3133 レス数:0
初投稿日時:2006/12/29-20:12:07修正日時:2006/12/29-20:12:07
←戻る↓レスへ飛ぶ

さて、今まで67回にわたり「私の思い出の懐かしプラモ」を紹介してきたが、
流石に東京の我が家の押入れに隠してある「懐かしプラモ」のストックもネタが尽きてきた。

広島の生家に帰ればまだまだ古いプラモが置いてあるのだが、ここ当分は帰省する予定が無いので、
今回は特別編として、私も手に取ったことの無いプラモを紹介させて頂たい。

 
                   ・

それは一月程前、何か新製品は入ってないかと 近所の行きつけの模型店を訪れた時の事だった。
この模型店は 私が上京して大学に入った頃から通い続けている店で、もうかれこれ20数年の付き合いになる。

店の歴史はもっと古く、店主の話では昭和30年代前半に店を始めたというから、日本のプラモの歴史と
歩みを同じくしていると言って良いであろう。

店主はかなりの高齢だが いたって健康であり、店のホームページも御自分でメンテナンスなさってる程
新しい事に意欲的な人物でもある。


プラモを買い終えて いつもの様に店主と

   ・・・ 河の護岸工事が終わったそうだから、またあそこでラジコンを走らせる事が出来る ・・・
    ・・・ 最近の高校生や大学生はラジコンに興味は無いらしい。 買っていくのはオッサンばかりだ ・・・
   ・・・ ラジコン好きと言えば、風呂屋のラジコンマニアだった坊主。今年から社会人だって?
        まったく早いもんだよ ・・・  
    ・・・ 今年の冬も、風呂屋の裏に野良実装が集まって困っているそうだ。 ボイラーの余熱で
       暖まろうとして裏の廃材置き場に何匹も棲みついている。 追い払っても きりがないんだと  ・・・
   ・・・ 風呂屋で飼っている番犬も歳だからねぇ。 すっかり性格が丸くなって実装石と遊んでるんじゃないの・・・

などと雑談をしていた時であった。

「そういえば、実装石のプラモが昔あったな」と店主が話し始めた。

  実装石のプラモ?  

頭の中の記憶をひっくり返し検索するが、私にはそんなプラモは思い浮かばない。
確かにガレージキットなら、ワンフェスやコミケで個人ディーラが製造販売しているのは知っているが、
店主は「昔」と言っていた。 
ガレージキットが世に出るようになってから20年程。 店主にしてみれば最近の事であるし、
第一 キャスト成型のガレージキットと射出成型のプラモを混同するような人物でもない。

思わず引き込まれて
 「それは興味あるなぁ。 どんなプラモです?」 と聞くと
店主は遠い目をして
 「確か外国のプラモだった。 マ○ザンやサン○ョーのプラモなんかも一緒に問屋から仕入れた
  記憶があるから、昭和の30年台後半から40年台前半かな?」
 「一個仕入れたけど、ホントにあれは売れなかった。 いやひょっとしたら いつまでも売れないで
  店先でホコリを被っていたから店頭から倉庫に移した気もする。」
 「倉庫の奥を探しておくから、また来週にでも来てみて。」

私は「また来ます」と言って店をあとにしたが、我が家に着くまでに 私の頭の中は実装石のプラモの事で
いっぱいになっていた。
このようなコラムを書いているぐらいであるから、昔のプラモについては結構知識があるつもりでいたが
実装石のプラモがあったとは知らなかった。

マ○サンやサン○ョーのプラモと並んでいた輸入プラモなら、時期的にA社かMG社、RV社のプラモと考えるのが
妥当であろう。
いや、ひょっとして人体解剖模型のキットを出していたRW社かも知れない。

う〜む、 兎に角 来週になれば何か判るだろう。
   

                    ・
                    ・
                    ・


一週間後  店を訪れると、店主は私の顔を見て 開口一番
「申し訳ない。 実装石 探したんだが見つからなかった。」 と頭を下げてきた。
カウンター上を見ると 倉庫から掘り出したとおぼしき 古い輸入プラモが何個も乗っている。

店主と客の間柄とは言え、人生の大先輩に頭を下げて頂くなどとは こちらの方が恐縮してしまう。
慌てて頭を上げて頂いて 話を伺うと、
  「随分前に倉庫の奥で雨漏りがあって、結構な数のプラモの箱と組立説明書が黴だらけになって
   売り物にならず  泣く泣く廃棄したことがあった。
   今、思い出してみれば あの中に実装石のプラモがあったのかも知れない。
   楽しみにしていただろうに、本当に申し訳ない。」
との事。

約束どおり倉庫を探して頂いた事は、カウンター上の古い輸入プラモを見れば明らかだ。
探して頂いた御礼を言い、古い輸入プラモの中から適当にひとつを買うと 私は家に急いだ。

こうなると是が非でも、実装石のプラモの事を知りたくなってきた。

興味のある事には 異常なまでに情熱が湧いてくるのがマニアの常。
「その情熱を家族サービスに向けてくれたら・・」と いつも女房に愚痴られているのだが、
すまぬ 妻よ、息子よ。  この埋め合わせは常になんとかしたいと考えては居る。


昔なら図書館に向かい、業界新聞や模型雑誌のバックナンバーを探すところだが、
現在はインターネットという便利なものが存在する。

                   ・
                   ・
 
家に帰ると早速 パソコンを開き「実装石」「模型」で検索をかけた。

何件か引っかかったが、どれもガレージキットばかり、
変わったところでは建築設計用に 実装石を示すシンボル模型があった。 
これはこれで興味深いが、今 調べたい事と関係ない。

「実装」とか「キット」とか検索ワードを変えたりしたが、実装石のプラモとは関係ないもの
ばかり引っかかる。

そうだった、外国のプラモだったと思い出し「JISSOU」「KIT」で探したが、結果は芳しくなかった。
アメリカ自然史科学博物館のミュージアムモデルに 700ドルの実物大完成模型があったが、これはどう考えても違うだろう。
それにしても 実装石の長ったらしい学名に「ニッポニア」の文字が入っているとは知らなかった。


こうなれば最後の手段。   海外のオークションサイトの模型カテゴリを虱潰しにあたっていくしかない。



そして 夜になる頃、やっと見つけたのが以下のサイトであった。

  
    [画像    
       オークションサイト画面  模型箱が中央に写っている ] 


私達の見慣れた あの間抜けな表情の実装石とはかなりイメージが違うが、
丸顔にオッドアイ、緑の服と頭巾 それに仔沢山。

間違いない。 これは実装石だ。 

大学を出てから 随分長い間書いたことの無い英文で、出品者に
「キットの詳細とキットの中身写真」の問い合わせを送ると、翌日 返信が届いた。

古いプラモの場合、オークション出品者はプラモの中身写真を見せたがらないものだと聞いていたが
彼の場合、是非見てくれとパーツ写真を送ってきてくれた。

また、自分のサイトに画像を転載しても良いかとの問い合わせに、「自分の他の出品物のリストを載せる事」を
条件として許可してくれた。
  
   このコラム公開現在、彼は以下のプラモをオークション出品しているとの事である。
       
          [ 出品 プラモリスト ] 

     (尚、 オークション取引はあくまでも自己責任であることをお忘れなく。
          当方はオークショントラブルの責任は負いかねます。)
    

                  ・
                  ・

模型会社はやはりアメリカのA社だった。 1967年の発売というから店主の話とも一致する。

70年代半ばに倒産したA社は、この様な一風変わった模型を好んで出した事で知られた会社であり、 
50年代から60年代には 飛行機、船、自動車、フィギュア さまざまなジャンルの模型を手がける大手メーカーであった。

この会社のプラモには熱烈な収集マニアが結構いて、プラモによっては空箱だけでも数十ドルの値で取引される事もある。
写真を提供してくれた オークション出品者もその一人であり、複数集めてしまった同一プラモの余剰分を
放出しているのだろう。
     
ネットで67年、68年のA社のカタログを調べてみたが、フランケンシュタインや魔女のプラモは載っていたが 
実装石は載っていなかった。
カタログ出版時期に間に合わなかったか、それとも 売れないのですぐに絶版になったのか。
もっとも、海外メーカーのカタログは日本のメーカーのカタログと違い、販売しているのに載せていなかったり、
開発予定なのにカタログに注意書き無しで載せていたりするから 要注意である。

                  ・
                  ・

 さて プラモを見ていこう。 まずは箱絵。
 
         
          [ 画像  箱絵    正面  側面 ] 


A社のプラモ独特のやや縦長で深さのある箱。
ボール紙で箱を組んでから 箱を包む様にパッケージ紙を貼った貼箱形式である。
最近のキットでは こんな人件費の掛かる箱は滅多に無い。

全体的に暗い色調であり、油絵タッチでレンガ道をこちらに向かって走ってくる実装石が描かれている。
A社の箱絵には名作と言えるものもあるが、これはどちらかと言えばハズレだろう。
見るからに購買意欲が湧かない。 

丸顔ではあるが、口が小さなA形ではなく もっと横まで裂けている。
それに オッドアイに白くハイライトが入っているので目の焦点が合っている。
実物より凶暴そうだ。 

口から覗く歯も尖っていて、両手を前方上にかかげたポーズとあいまって まるで襲い掛かってくる
妖怪の様なイメージである。
私は 何故か此れをみてタスマニアンデビルを連想した。

最大の違和感があるのが実装服であろう。 実物のつんつるてんで薄っぺらな実装服ではなく、手の先まで隠れる
ゆったりとした服で、麻の様な硬く厚い生地でできているように見える。 まるで キリスト教修道会の修道僧服
の様だ。
そしてエプロンは実物より遥かに細く小さく、ネッカチーフの様に首の下で波打って書かれている。

同じ様な仔実装達が実装石の後に付いて走っているが、仔供というよりドラキュラに従うコウモリ達と
いった風情だ。

実装石の後ろには、アメリカで使っていそうな やたらリブの入ったゴミバケツが、中身を撒き散らしながら
ひっくり返っている。

箱絵の下部に書きなぐりの様な飾り文字で 「G'saw  Green Monster」と書かれている。
どうりでローマ字表記の「JISSOU」では検索に引っかからなかった訳である。

A社は実装石をフランケンシュタインや狼男と同じ「怪物」として模型化していたのである。


                  ・

 続いて パーツ。
 
         
          [ 画像  パーツ画像 1 ] 


此の頃の外国プラモと同じく、パーツをぐるりと囲むランナーは存在しない。
ビニール袋にも入っていないで、箱の中にパーツと組立説明書だけが入っている。

大きなパーツが箱の中にゴロゴロ入っている他に、小物パーツが1本のランナーから両サイドに生えている。
小物パーツの何個かが もげて転がっているのは仕方の無い事。  パーツ欠品は無いようだ。

       
          [ 画像  パーツ画像 2 ] 


本体の実装石はボディー、左右腕、両足を 正面、背面で張り合わせる モナカキットという奴である。
全部で8パーツだが、箱絵の雰囲気を再現したメリハリのある彫刻が施されている。

5匹の仔実装はそれぞれ一体成型。

       
          [ 画像  パーツ画像 3 ] 


アメリカのフィギュアプラモには必ず台座が付いているが、此のキットには実装石本体より大きな
レンガ道の台座が付いていて、他にもアメリカの街角に置いてある新聞販売機、ゴミバケツ、
こぼれ落ちたゴミとして齧りかけのリンゴや野菜屑、丸めた新聞紙、破れた雑誌 等々が
箱絵のとおり全部パーツ化されている。

       
          [ 画像  4つ折の組立説明書 表、裏 ] 


可動ギミック 一切無しのフィギュアモデルである。

                  ・

オークション出品者は90ドルで買わないか? と聞いてきたが、結局 丁重にお断りした。
A社のマニアでは無い私としては15ドルぐらいでなら考えるが、コラム読者の貴兄なら如何であろうか。


尚、この後「G'saw」で検索すると、此のキットを出品しているオークション出品者が他にも複数存在した。

調べていくとA社の他のプラモと比べると割安である事から、現存するキットの数は少ないが 
A社の熱烈な収集マニアしか欲しがらないし、熱烈な収集マニアなら皆持っているといったプラモの様である。

67年当時 日本にも絶対、数百個は此のプラモが輸入されたと思うのだが、模型掲示板で呼びかけても此の存在を
覚えている日本人モデラーは現れなかった。

                  ・
                  ・
                  ・


A社が消えてから30年余り。 A社がプラモを作っていた金型は四散し 他の会社が手に入れて再生産したり
金型が壊れて捨てられてしまったりした。 
極一部の金型は 熱烈な収集マニアが私蔵しているとも聞く。
実装石の金型は何処へ行ってしまったのか、誰もその行方は知らない。

数年程前、金満家のマニアがA社のキットを参考に 新たに金型を起こしてP社の名前でA社のレプリカプラモを
発売した事があったが、実装石のプラモはそのラインアップの中には無かった。


ここ数年のワンフェスやコミケでは実装石を、可愛くデザインしたり、極端に醜悪にデザインしたりした
ガレージキットが数多く作られ 売られている様であるが、A社の実装石のプラモは '40年早すぎた' プラモだったのかも知れない。




                      次回は  「サーキッ○の狼」バ○ダイ編 其ノ3 の予定 






■感想(またはスクの続き)を投稿する
名前:
コメント:
画像ファイル:
削除キー:スクの続きを追加
スパムチェック:スパム防止のため2572を入力してください
戻る