広々としたフローリングの床とシャンデリアからの照明。 木目の鮮やかなセンターテーブルと、それを囲むリビングソファー。 傍には電気式の装飾豊かな暖炉が室内へ温風を運ぶ。 窓からは暖かな陽の光が差し込んでいた。 「 テェ〜♪ 」 一匹の仔実装がピンポン玉を転がして遊んでいる。 フローリングの床をコロコロと転がるピンポン玉を追い、元気一杯に鳴きながら駆けていく。 すると部屋の扉が開き、一匹の実装石が姿を見せた。 「 マドカ、そんなにはしゃいではダメデスゥ… 」 「 ママ〜! 」 マドカと呼ばれた仔実装は転がるピンポン玉をそのままにすると、実装石に抱きついた。 「 そんなにお転婆では駄目デスゥ……でないと、立派なお嫁サンになれないデスよ? 」 「 テチュ!テチュ…! 」 母親実装の言葉に、マドカは抱きつきながら熱心に頷いた。 『 お嫁サン 』という言葉は、それだけの意味を持っていたのだから。 マドカは産まれて目を開けた時から、この部屋に居た。 親実装と自分だけの世界。 ここには餓えも寒さも無かった。 まだ上手く歩けない頃から、暖かな親実装の胸に抱かれ眠っている。 食べ物は毎日三回、母親実装が扉を開けた向こうから持って来てくれた。 産まれた頃から、全てが満ち足りていた。 朝、目が覚めると食事。 用意されていた仔実装用サイズの玩具で遊ぶ。 室内は親実装と仔実装2匹が生活するに十分なスペースを有しており、狭さを感じさせない。 玩具も親実装が隣の部屋から毎日のように変わった物を持ってくるので飽きが来ない。 いつも母親と一緒に遊んでもらう。 昼まで遊び、隣の部屋から母親によって食事が運び込まれる。 お腹一杯に食べた後は、母親の膝を枕にしてお昼寝。 柔らかで暖かな親実装を感じつつ、夢の世界へ。 起きると、母親は三時のオヤツを持ってきてくれる。 とても甘いもの。 金平糖やゼリー、プリン、ケーキ、様々なスイーツ。 眠気が取れ、お腹が膨らむと再びお遊び。 暫く遊び、窓の外が暗くなってくると今度は夕食。 夕食後は、暖かいお風呂で親実装に身体を綺麗にしてもらい一日が終わる。 お気に入りのパジャマを着させて貰い、ふかふかのベッドで母親と一緒に眠りにつく。 そんな生活をマドカは何一つ不満無く過ごしていた。 だが、ある程度日数が経つと、この仔実装に疑問が生じ始める。 「 ママ……どうしてワタチとママだけなのテチュ? 他のお姉チャンや妹はいないのテチュ…? 」 ある時、仔実装用の絵本をフローリングに置いていたマドカが親に尋ねた。 絵本には親実装がたくさんの仔実装を連れて歩いているイラストが描かれている。 「 …そろそろマドカにも話さないといけないデス 」 「 なにテチュ? 」 「 お前は普通の実装石ではないデス……花嫁になるために選ばれた仔なのデスゥ 」 「 はなよめ……テチュ? 」 他の姉妹達は別の場所で暮らしていると言った。 産まれた時、その中からマドカが『花嫁』に選ばれたという。 親実装は、マドカを花嫁にするため、ここで大切に育てていると話してくれた。 「 ママ……はなよめって、何テチュ? 」 「 マドカにも分かるように説明するのは難しいデスが………これを見るデス 」 親実装はテーブルの上に置いてあった四角の物を取ると、何かを押した。 その時、今まで真っ黒だけだった大きな四角の置物が光り、何かが映り始めた。 「 わぁ……すごいテチュ…! 」 「 これはテレビと言うデス。よく見るデスよ… 」 映り始めたテレビの画面には、一匹の実装石。 だが、それは普通の実装石では無かった。 真紅の絨毯の上をゆっくりとエレガントに歩いていく実装石。 その身体を包むのは透き通るばかりの純白でシルクのウェディングドレス。 ウェディングベール越しに薄っすらと見える横顔。 恥ずかしげに頬を赤らめ、目を伏せれば頭に添えられたティアラが光を受けて煌びやかに輝く。 大きく開けられた胸元には花の刺繍。 アイボリー色に統一されたドレスに大きく栄える。 花嫁実装石が進む絨毯の両脇には多くの実装石と人間達。 両者共々花嫁の歩く姿をおごそかに…その美しさに見とれて眺めていた。 「 ママ……? 」 「 これが花嫁デス……そして、こっちが花婿デスゥ 」 真紅のバージンロードの向こうには純白のウェディングタキシードに身を包んだ人間の青年。 ジャケット、パンツ、ベスト、全てを白で揃えた新郎が花嫁実装石に手を伸ばした。 差し出された青年の指先に、ウェディンググローブにフィットした実装石の手が触れる。 新郎は自分より半分程の背丈の新婦実装の手を柔らかく握ると、自分の隣に迎えた。 柔らかな光りを受けて並ぶ新郎の青年と新婦の実装石。 両者の前に神父が現れ、祝福の言葉を述べた。 当然、マドカにはその意味が分かるはずもない。 しかし、その祝福の言葉を受ける青年と花嫁の表情が幸福に満ちているのは分かった。 『 …それでは誓いの口付けを 』 神父の言葉に、新郎と新婦が向き合った。 新郎の青年は花嫁実装石の前で膝をついて屈むと、視線の高さを合わせた。 甘く微笑みかける青年。 瞳を潤ませる実装石。 青年は実装石の肩へ静かに手を置き… ドレス越しに優しく腰へ手を回し… 両者は瞳を閉じた… 青年の唇と実装石のミツクチがお互いに接近して—— 「 ……これが結婚式デス。分かったデス? 」 「 ……チュ…… 」 大画面に映る人間の男と実装石の女の愛。 まだ、この部屋から一歩も出たことの無いマドカにとっては非常に刺激的な映像だった。 「 ……マドカ?マドカ、どうしたデス? 」 「 テ……テチュ…! 」 母親に身体を揺すられ、ようやくマドカは夢の世界から現実に引き戻された。 なぜかは分からないが心臓の鼓動が早くなっている。 「 ワ、ワタチが、この花嫁になるのテチュ? 」 「 そういうことデス……オマエはこれから、花嫁になるように修行するデスよ 」 「 修行…テチュ? 」 「 そうデス……マドカは、こんな花嫁になりたくないデス? 」 「 な、なりたいテチュ! 」 「 大丈夫デス……マドカなら綺麗な花嫁になれるデスゥ… 」 その日からマドカと母の生活に変化が訪れた。 親実装から走り回って遊ぶのははしたない行為と止められる。 遊べる時間は有ったが、前より大きく削られた。 しかも、あのテレビの花嫁のように上品に振舞うよう告げられる。 今までは好き勝手にしていた食事も上品にするよう注意される。 遊び道具の後片付けも、全て自分でやるよう言われる。 最初はまだ遊び盛りの仔実装だったが、その度に親実装が同じ言葉で戒めた。 「 それでは花婿サンに、お嫁サンにしてもらえないデスよ? 」 あの時、テレビで見た真っ白な服装に包まれた青年。 何時しかマドカも、あの青年と結婚する事を夢見るようになった。 お風呂に入って、今まで親に洗ってもらっていた髪を自分で洗うようになり、手入れするのを覚えた。 ( ガラ…… ) シャワールームの扉が開き、湯煙の中からマドカが姿を現す。 湯上りにはバスタオルを身体に巻き、湯気を纏いながら鏡の前に座る。 今しがた浴びた湯がバスタオルに張り付き、マドカの艶かしい肢体が鏡に曝け出される。 あれからマドカは鏡を見るようになり、女として…花嫁として身嗜みを整えるのが習慣付いていた。 鏡に映る紅潮した自分の素顔。 ふとテレビの一場面を思い出した。 青年と実装石の口付けのシーン。 マドカの脳裏から焼き付いて離れようとしない。 「 テチュ… 」 鏡に向かい、マドカは自分のミツクチに手先で触れた。 ミツクチの感触……あの青年の唇に触れるのを想像すると、更に頬が赤く染まる。 マドカは自分の胸に手を当てた。 バスタオル越しに伝わる高まった乙女の鼓動。 湯上りの柔らかな肌が桃色に染まった。 月日が経ち、マドカは成長して親実装と同じくらいの背丈となった。 「 ママ、花嫁は花婿と結婚するデスね? 」 「 そうデス 」 「 結婚した後は、どうなるデス? 」 「 そ、それはデスゥ… 」 親実装はマドカの質問に言葉を詰まらせた。 「 ママ……どうして話してくれないデス…? 」 「 …ワタシは今からお風呂に入ってくるデス。マドカ……その間、これを見てるデス… 」 手元にあったリモコンのスイッチを押すと、テレビの画面が点いた。 更に再生させると、親実装は立ち上がってマドカを残しバスルームに行ってしまった。 「 デス?…………デェ…! 」 再生された画面に映し出されたのは、どこかの部屋だった。 窓から眼下に夜景が見える。 そこは柔らかな光に満ちたベッドルーム。 視点が移ると、部屋の扉が静かに開いた。 現れたのは腰にバスタオルを巻いただけの裸の青年。 青年の胸に抱かれたのは身体にバスタオルを巻いただけの裸の実装石。 この両者が、以前に見た結婚式の新郎と新婦であるのは瞬時に分かった。 「 デスゥ…… 」 『 フフ……怖がらなくても良いんだよ 』 青年の胸に抱き上げられた実装石が、頬を赤く染めて何かに怯えている。 いや、青年の胸にしがみつく彼女は何かに期待していた。 あの結婚式の誓いの口付けの時以上に瞳を潤ませ、青年の顔を見上げていた。 『 …さぁ、ここへ 』 「 デ… 」 実装石の身体は柔らかなベッドの上に置かれ…僅かに沈み込んだ。 青年は瞳を潤ませた少女の如き実装石の頬に手を添え… 濡れた髪を指で軽やかに梳いていき… バスタオルの結び目に指を伸ばし… 「 …デスゥ! 」 突然実装石が驚いた声を上げ、結び目に触れた青年の指の動きを止めた。 『 どうしたんだい…? 』 「 デ……デスゥ… 」( 字幕:初めてデス…優しくしてほしいデスゥ… ) 『 分かってるさ…ハニー…… 』 男の逞しい指先は強張る処女実装の手を取ると甘く囁き……ベッドの上へ置いた。 観念して、バスタオル一枚の無防備な身体を新郎の前に差し出す乙女の実装石。 だが、その身体は時折僅かに震え——頬を染めたまま瞳を閉じ、顔を背けていた。 男の指先が再びバスタオルの結び目に……捲り上げると呆気なく曝け出す。 「 デ……スッッッ…………! 」 羞恥に耐え切れず、実装石はシーツを掴んだ。 ピンク色に火照った肢体に新郎の容赦の無い視線が突き刺さる。 『 ふふっ……いただくよ…………ちゅ〜…… 』 新郎はそんな羞恥に震える新婦の姿を見て口元に笑みを浮かべた。 更に、その顎に手を置くと向きを変えさせ顔が近づき……そのミツクチを自らの唇で塞ぐ。 「 ……ッ! 」 唇が触れた瞬間、ベッドの上の新婦の身体が大きく震えた。 口内では実装石の愛らしさにたまりかねた新郎の舌先が実装石の舌に絡みつく。 男は可憐な唇を蹂躙すると、口の中を存分にかき廻す……。 ……カタッ マドカの手からリモコンが床に落ちた。 だが、今のマドカにはテレビの画面以外……正確には新郎と新婦の絡みしか目に入らない。 ( ワタシも……あんな風に……デス… ) 画面の中の新婦実装がマドカに重ねられる。 『 ……ン……ふぅ………… 』 男が唇を話すと、唾液が線を引き照明を受けて輝く。 新婦実装は激しいキスで早くも息を荒くしていた。 『 綺麗な碧色だね……んっ…♪ 』 「 デスンッ…! 」 視線を下に移すと新婦の胸へ。 男の舌先が弾くように碧色の乳首を舐め上げると、実装石は肩を震わせ白い顎を見せた。 敏感に反応してしまった部位に、男は執拗に愛撫を続ける。 『 ちゅうぅぅ…………ン………んるっ……… 』 男は零れ出た量感豊かな乳房をいやらしく揉み解す。 更に実装石一倍敏感な乳首を舌先で転がし、指で揉みしごく。 「 だ…だめデスゥ……そんなに吸っちゃ……デスッ…! 」 たまらず少女は……妄想の中のマドカは柔軟な身体をくねらせ、大きく反らした。 しかし男の愛撫が止むことはない。 マドカと新婦実装には息も絶え絶えに喘ぐ行為しか許されなかった…。 『 こっちはどうなってるんだい…? 』 男の指先が実装石の柔らかな太腿の張りの有る弾力を楽しむ。 その太腿は徐々に左右へ押し開かれていき…。 「 ッ…! 」 声にならない叫び……指先が新婦実装石の秘烈に触れた。 「 デッ……くっ……ゃ………スゥ… 」 敏感な割れ目を男の指がリズミカルに撫で擦ると、シーツを掴む腕に力が入る。 実装石はそのみだらな刺激にじっと耐え続けた…。 ( ああ、いけないデスゥ……からだがしびれて………変になりそうデスゥ……! ) テレビの前でマドカは膝を付き、股間に指を這わせた。 マドカの口元から熱い息が零れる。 そして画面の中の実装石は、いやらしい指から逃れようともじもじしながら前後に腰を振って恥らう…。 だが新婦のそんな可愛らしい仕草は、男をますます興奮させ、そそる結果となり… 潤んできた媚肉を更に責め立てていく……。 「 マドカ 」 「 デェ…!! 」 何時の間にかバスルームの扉は開いており、そこから母親実装がマドカの痴態を見ていた。 マドカの股間に伸ばした手の動きが止まり……顔を真っ赤にして身体を震わせた。 「 デ、デ……デスゥゥゥゥ〜〜〜! 」 火照った自分の身体を抱きしめ、パニックに陥った。 頭の中は真っ白で何も考えが浮かばない。 「 デェ……落ち着くデス、マドカ…… 」 母親実装は床に落ちていたリモコンを拾い上げるとテレビに向かってボタンを押した。 新郎と新婦の姿は即座に消え、黒い画面に映り変わる。 「 お嫁に行った花嫁の実装石は、夜になると花婿に愛されるデス 」 「 あ、愛される…デス? 」 「 そうデス……今のテレビの花嫁みたいに熱く…優しく愛されるのデスゥ… 」 マドカは既に黒くなった画面に再び視線を向けた。 僅かな時間、見ていただけで容易に治まらない程の胸の高まり。 今までは口付けしか性行為を知らなかったマドカにとって、その映像は限りなく刺激的だった。 「 ……そしてマドカも同じように愛されるデスよ? 」 「 デッ…! 」 母親実装の言葉にマドカは身体を硬直させた。 先に比べ、治まりつつあった自らの顔が再び紅潮していくのが分かる。 「 愛されるのは嫌デス…? 」 母親の問いにマドカは俯いたまま、返答しなかった。 いや、否定できなかった。 先ほどの刺激的な花婿と花嫁の夜の営み。 その時のマドカは胸の昂まりを感じつつも、顔が赤くなるのが分かっていても、 決して視線を逸らすことができなかった。 寧ろ瞬き一つできなかったであろう。 「 ママ……ワタシ………デスゥ…… 」 何を言って良いのか分からないマドカの両肩に、背後から手が置かれた。 「 マドカは何も心配する必要無いデス 」 「 デス… 」 「 花婿サンにリードしてもらえば上手く行くデス… 」 それからマドカは花婿のことを夢見るようになった。 いつか自分の目の前に現れる白いスーツに甘いマスクの男性。 その隣にはドレスに身を包んだ眩いばかりの美しさを放つ自分自身。 誰もが羨ましがる、お似合いのカップルだと思った。 周りの参列客からは惜しみない賛辞。 そしてちょっぴりの嫉妬と羨望。 男達は、そんなマドカの美しさに目を奪われ……女達は、マドカの美しさに嫉妬する。 結婚式という華やかな舞台の主役はマドカだった。 更に数日後。 花婿が頭から離れないマドカは、ふと大切な事に気付いた。 「 ママ、花婿と結婚したらワタシはどうなるデス? 」 「 いつまでも一緒に幸せに暮らすデス そして…花婿との間にできた愛の結晶を育むデスよ… 」 「 愛の結晶?……それは、なんデス? 」 マドカの問いに、母親実装は立ち上がるとテレビのリモコンを手に取った。 テレビ画面が映り、今まで見たことの無い別の画像が現れる。 そこは青々とした芝生の広がる邸宅の庭先。 優しい日差しが降り注ぐ芝生の中に置かれた白いガーデンチェアに緑の影が見える。 全てを優しく包み込むフォルムのチェア。 座っているのは実装石……そして胸に抱かれているのは仔実装。 「 ママテチュ、ママテチュ-♪ 」 仔実装が、実装石に——母親に向かって可愛らしい小さな手を振っている。 テチュテチュと鳴く仔実装に母親の手がそっと触れた。 「 ワタシはここにいるデス……早く大きくなるデスゥ… 」 「 テチー♪ 」 仔実装が一際大きく元気に鳴いた。 そよ風が優しく吹き、白い紋白蝶が親仔の周りを舞う。 そこへ画面端から別の影がガーデンチェアに歩み近寄ってきた。 『 …仔供の様子はどうだい? 』 「 さっき起きたばかりだから、とっても元気デス… 」 『 はは……それ。 』 男は優しく微笑みかけると、仔実装の手に指で触れた。 「 パパテチュ、パパテチュ〜♪ 」 仔実装が更に元気に、楽しそうに鳴いた。 男の——父親の指に触れると、ひ弱な力で決して離そうとはせず、すがりついたままだ。 そして母親の肩に手を回し…身体を寄せ合うと、二匹に囁いた。 『 大丈夫だよ、僕は……僕とママはいつでも一緒さ。』 「 デスゥ…… 」 母親実装が身体を男に預けた。 男がその身体を受け止め、支える。 仔実装は両者を見て、テチュテチュと元気に鳴いている。 そこは幸せの空間。 雌雄の紋白蝶が親仔の周りで舞い踊った 「 ママ……あれは…? 」 「 愛の結晶デス……花婿と花嫁が愛し合うと産まれる仔なのデスゥ 」 マドカの本能が母親実装の言葉の事実を裏付けた。 愛の結晶 あの花婿と花嫁の夜の営みの結果が、あの仔実装なのを理解した。 そして自分もまた同じように愛し合い、新たな仔を宿す運命にあることも。 「 マドカの仔なら、とっても可愛いに違いないデス… 」 「 マ、ママ…ッ! 」 母親の言葉を聞くと瞬時に頬を赤く染め、顔を伏せた。 まだ異性の手に触れたことも無いマドカにとって、やはりその言葉の真意は刺激的だった。 しかし顔を伏せつつも、マドカの瞳がチラチラとテレビの親仔の映像に向けられる。 ( ワタシも……仔供を産んで……… ) 花婿と産まれた仔と自分。 マドカが画面内の若き母親実装へ自分を重ね合わせるのに時間はかからなかった。 そしてある日の午後。 くつろいでいるマドカと母親実装へ、この部屋に初めての来客が訪れた。 『 こんにちは〜、係の者ですよ 』 『 えぇっと、この子が花嫁の実装石……お嬢様ですね 』 「 はい、ご苦労さまデスゥ 」 現れたのは人間の女性が2人。 彼女等は実装石達に向かって深々と頭を下げてお辞儀した。 その手には大きなバッグが抱えられている。 「 ママ……このニンゲン達は誰デス? 」 「 この方達は、マドカにドレスを持ってきてくれたデス 」 女性の一人がバッグを開けると、中から煌びやかな衣装を取り出した。 その衣装をハンガーに吊るし、マドカの前へ開けた。 『 どうでしょう……お嬢さんにお似合いだと思いますが? 』 「 ェェ…! 」 それはマドカが夢にまで見ていたウェディングドレス。 実装石用にリサイズされたドレスにマドカの手が触れる。 触れたのが分からない程の軽やかな柔らかな素材。 着付け係の女性達によって、マドカの着ていた服が脱がされる。 「 デェ… 」 手際良くマドカの着衣が外され、その裸体が正面に置かれた等身鏡に映し出される。 だが今のマドカの関心はハンガーのウェディングドレスのみ。 着付け係の女性がドレスを取り、マドカの肢体が覆われていく。 透け感の麗しいデコルテにビージングの花が咲き誇るクララ・モデラート。 実装石の肌を綺麗に魅せるオフホワイト系の優しいニュアンスカラー。 サテンにチュールを重ねることでシュガーケーキを錯覚させるスウィートな色彩。 ネックラインをシャープに演出し、緩やかに広がるラインで足長効果のあるシルエット。 ( 注:書いてて頭が痛くなった ) 実装石用にリサイズされたドレスにマドカの震える手が触れる。 触れたのが分からない程の軽やかな柔らかな素材。 『 いかがです?このドレスのラインは足を長く見せるんですよ。 』 「 足にはちょっと自信が有るデス……更に長く見えちゃうデスゥ…? 」 マドカは正面の鏡を見た。 着付け係の言も有ってか普段より脚線美に磨きがかかる。 「 そ、そこは……開け過ぎデス… 」 『 いえ、そんなことはありません。最近は大胆なのが流行りなんですから。 』 マドカの胸元が大きく開かれ、真っ白な乳房の谷間が覗いた。 慣れない大きな露出にマドカが頬を赤らめる。 『 それに形の良いバストだと思いますよ?殿方の視線を独占すること間違い無しですね。 』 「 そ……それほどでも………デスゥ… 」 褒められればマドカもまんざらでは無い。 恥ずかしげに頬に手を当て、赤面しつつ身体をくねらせた。 『 いえ、私も何年か仕事をしてきましたが、お嬢さまのような美しいお客様は初めてですよ。 』 『 手入れのなされてる髪ですね、素晴らしいです。 』 「 そ、そんなに言わないで……デスゥ……♪ 」 ドレスを着けていく女性の2人から投げかけられる美麗美辞の数々。 しかし正面の鏡に着飾った自分の姿に暫く陶酔すると、マドカの中に一つの疑問が湧きあがった。 「 …ママ、どうして今日ドレスを? 」 「 当然デス……なぜなら今から結婚式デスゥ 」 「 デェ…! 」 突然の宣告。 驚いたマドカのドレスが緩やかに波打った。 「 普段から言ってきたデスね。 マドカは、いつでも花嫁に行けるよう頑張ってきたデス…だから今更怖がる必要は無いデス 」 「 だ、だけどママ…! 」 「 花婿が待ってるデス 」 「 …! 」 「 美しい花嫁を……格好いい花婿が優しく出迎えてくれるデス… 」 親実装がマドカの手を取った。 力を入れられると、それに抵抗することもできずマドカの身体が引かれていく。 ( ワタシの……王子サマ…… ) 産まれて初めての外界へ一歩を踏み出す。 言い知れぬ不安は胸の鼓動を高まらせ 待ち受ける花婿への期待がマドカの頬を赤く染めた
