タイトル:【虐】 307(再修正版)
ファイル:◇猿と豚.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:5367 レス数:0
初投稿日時:2006/12/13-23:57:19修正日時:2006/12/13-23:57:19
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307
◇猿と豚



「よく「愛想を振りまく」って言う人いるよね。でもあれは間違いなの。
 振りまくのは愛嬌。愛想は売るの。最近はどっちでもいーよって声もあるけどさ…
 私は一応、日本語を正しく使った方がいいと思うんだ」

[デッ? ワタシには日本語なんか関係ないデスゥ。
 自分にとって都合良ければどうでもいいデプゥーッビャピャッビャハア!]

「…そーね。日本語なんてどうでもいいから、あんたに死んでほしいわ」



   ※本作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件
    他の実装作品との関連は一切ございません



12月上旬。
人間にも、実装石にも厳しい季節…冬の到来である。

ここに一人の男がいる。
彼は冬が苦手だ。
だが、好きと苦手は相反しない。

日本の四季は素晴らしいものだと思っているし、冬も例外無く好きだ。
冬の良いところも悪いところも、全てその気温の低さにある。
冷やされて澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込むと、とても気分がいい。
雪の降る朝など、詩でも吟じたい気分になる。

冷えすぎた空気は、どんなに厚着しても衣服の間から入り込み、舌打ちしたい気分になる。
雪が降り積もり、バイクを走らせることすらできない日など、
やりすぎだ!自重しろ!と空に向かって叫びたい気分になる。

まぁ、人間にとって冬はその程度のものだ。
雪で電車は止められても、人の営みは止められない。
現在は文明の進歩のおかげで、暖を取る方法にも事欠かない。
まず間違いなく、冬に殺されるというほどのことは無くなった。

しかし、実装石にとっての冬は真に地獄である。
冬を越すためには、知恵を絞らなければならない。それも相当な知恵が必要だ。
愛情深い親は仔を託児して、暖かい人間の家で生き延びさせようとする。
(ちゃっかり自分もお世話になろうと、後から追ってくる親もいるが)
愛情の薄い親は仔を非常食にする。
棲家の入り口を完全に締め切って、中にある食物だけで冬を乗り切るのだ。
そして食物が足りない場合、仔は親に食われる。
熊のように、冬になる前にたらふく食って、春まで寝続けるような真似はできない。

実装石が冬を越すために練った知恵は、無論これだけではない。
個体数だけはバカみたいに多い連中だけに、突然変異が結構な確率で発生する。
それ故、稀にとても賢い実装石が生まれることもあるのだ。

これはそんな(小)賢(し)い実装石が広めた、とある冬越え方法の話。





初冬。もうこの頃から、実装石の凍死体が路傍に現れ始める。
生ゴミと化した(生前から「生」きる「ゴミ」ではあったが)
それらが、市の職員達によってトラックの荷台に乗せられていく。
そんな光景の横を、男の運転するバイクが走り抜けた。

目当てのコンビニを発見し、男はバイクを止める。
白い息を吐き、寒さから逃れるようにコンビニの中へ駆け込んだ。

探していた商品を見つけ、レジで清算する。
買った物はただの缶ビールとツマミだ。
しかし、男の住む部屋の近くでは、このコンビニにしか置いてないツマミである。

(なんでコンビニって同じチェーン店でも品揃えが違うかなぁ…畜生。
 もっと近くのコンビニに置いてあれば、寒い中バイクを走らせることもないのに)

心の中で愚痴りつつ、コンビニから出る。

「……」

そこで男はふとした衝動に駆られ、ゴミ箱の陰を覗いた。

「デッ…?」

予想通り、仔実装を胸に抱いた実装石を見つける。
人間に見つかったというのに、その実装石は何故か嬉しそうな顔をした。
このコンビニに来る人は皆、託児に慣れた者ばかりだ。
最初から肩に袋をかけた状態で出てくる人ばかりでは、仔を投げる気にもならないのだろう。
かといって諦めるわけにもいかず、ここでブルブル震えていたに違いない。
…その労力を別の冬越え方法に注げばいいものを。

「デス!デスッ、デスゥ!デッスゥーン♪」

自分に興味を示した男がいい人間に見えたのだろう。
ワタシの仔を見てほしいデスゥ!といった感じで、仔実装を掲げる。

「うんうん…」

「デェスデスゥーデッスデッスッスッス!」

仔の自慢だろうか。ウットリした表情で何かを語り始めた。
男の携帯にはリンガル機能が付いている。しかし今は使っていない。
使っていないので、何を言っているのかはわからない。それでも実装石の言葉に耳を傾けている。
親実装はしばらく鳴き続けた後、意を決したように頷き、仔実装を再び高く持ち上げた。

「デスッ!」

さぁ、どうぞ!と言った感じである。
仔実装も男を見上げて「テチュー♪」とやる気満々だ。
彼もその意気に応えた。

「よーし、君の言いたいことはわかった。いいんだね?」

「デス!」

「テチィッ!」

力強く頷く親子。
男は親実装の手から仔を受け取った。
手の上に乗せた仔実装を、自分の目の高さまで持ってくる。

「テッチューン♪」

右手を顎の下に、首を傾げて、早速愛想を売ってくる仔実装。

「そうかそうかー」

「テチャ!」

「デスゥ…」

それに対し満面の笑顔を払う男。
ここに異種族間の売買契約が成立した。
世紀の一瞬と言うべき場面に立ち会った親実装は、感無量の面持ちで娘を見つめている。

「じゃ、さよなら」

ブンッ

男はゴミ箱の口に向かって、思いっきり仔実装を投げつけた。

「テェッ——————————————」

「デデッ!?」

ガンッ!

「—————————————ギャッ!」

投げら入れた仔実装はゴミ箱の内壁に激突し、その衝撃に短く叫ぶ。

「テッ…テェ…チュ……ウ…ン………」

そして息絶えた。断末魔の声は「テッチューン」。
生涯を終えるその時まで、仔実装は愛想売人であり続けた。
その愛想は虚空に放たれたため、受け取る者はいないが。

「デ、ェ…?デ…」

親実装はまだ呆然としている。しかし、愛娘が気高き商売人としての死に様を見せたのだ。
しばらくすれば感動の涙を溢れさせるに違いない。

「うん、いいことしたな」

男には本当に悪いことをしたつもりが無い。
仔実装は男に愛想を売った。男はそれに対価を払った。
ただ過分な対価であったため、釣りを他のもので間に合わせただけだ。
命という釣りで。
実装石如きに人間の笑顔は勿体無い。それが彼の価値観であった。

「デ?デデ?デェ……デ、デッ、デッシャアアアー!デッシャデズゥアアアアアアーーッ!!!」

親実装は何が起こったのかようやく理解し、男に対し威嚇の声をあげた。
色違いの両眼から血涙を滂沱と流し、咆哮する。
もう遅い。威嚇しても、彼女が守るべき仔はいない。
何より威嚇する相手が間違っている。男に仔を差し出したのは親実装自身なのだ。
責めるべきは己だということに気付かず、彼女は泣き始めた。

「オロローン!オッロロロロロロォーン!!オロロ」

「どうかなさいましたか?」

「ロッ?」

「あ、なんか仔実装殺したら騒がれちゃって。すみませんね」

「いえいえ。気にしないで下さい」

親実装の大音声を聞き、コンビニの店長が出てきた。落ち着いた感じの中年男性である。
男の説明を聞くと、特に嫌な顔をすることもなく、エプロンからスプレー缶を取り出した。

「オ、オロ?オン、ロロロ…」

渾身の慟哭を途中で止められた親実装は、どことなく気まずい顔をしている。
店長はその間抜け面に向けて、スプレーをひと吹きした。

「!!デォッウ!デ…ァ…ッ!」

数秒程呻いた後、親実装は完全に動きを止めた。

「おぉー」

「凄い効き目でしょ。どうですか? お客さんも一つ」

「…また今度ってことで」

売り込みに失敗した店長は、コンビニの中に戻っていった。
さすが元酒屋のコンビニ店長である。バイトとは商魂が違う。
男は感心しつつ、リュックサックに買い物の袋を入れた。
後は帰るだけだ。

部屋に戻り、暖房のスイッチを入れ、男は一息吐いた。

「さて、一杯やるか。熱燗もいいけど今日はビールな気分…」


彼はささやかな晩酌の幸せを噛み締め、明日への活力を得ると、満ち足りた気分で床についた。
要するに、この日はとてもいい気分だった。


二日後。
男は相変らず晩酌を楽しんでいた。ただの酒好きである。

カタッ カタッ

一升瓶の半分程を飲み尽くし、頭がふらつく感触を楽しんでいると、なにやら玄関の方から音がする。
各部屋の壁、扉、共に防音性の高いマンションだ。
ストレス解消のため、たまに実装石の虐待を嗜む男にとって、非常にありがたい物件である。
それなのに、何故音が…?
まさか部屋の内側に何か異物があるのだろうか。男は気になり、玄関に近づいていった。

音の原因は扉に取り付けられたポストの口からだった。
それが時々外側から押し込まれては元に戻り、カタカタという音を立てているのだ。

「……」

イタズラだろうか。
何も入った音はしないし、ポスト内に投函物は無い。
ただ何かをアピールするかのように、ポストの口を押しては戻し、押しては戻しを繰り返している。
扉の覗き窓を確認するが、そこから見える廊下は無人のままだ。

「…………」

男は段々気味が悪くなってきた。

カタッ カタッ カタッ

「………………」

カタッ カタッ カタッ カタッ

「(あぁうるせぇ! クソッ! 開けてやる!)」

普通、防犯の面で考えれば、扉の向こうにいるのが何か分からないのに開けるべきではない。
しかし酒を飲んだ男は注意力が低下し、気が大きくなっていた。

「(何か居ても関係ない! 思いっきり開いて吹っ飛ばしてやる!…あ、引き戸だった)」

と、考えた時にはもう遅い。体はすでに慣れた動きをなぞり、扉を開く。
そして…

ドアを引き、開けるた。そこには——————
全身から熟した雌の気を漂わせる——————


——————実装石がいた。


「チェンジで」


男は即座にそう言い放っていた。

「デェスデッスゥ」

「あ?」

その実装石の鼻の穴は何故か通常時(?)の数倍の大きさに広がり、真っ赤に腫れていた。
ビニール袋を背負い、中に何か入れている。
今まで見た個体と違う様子が気になった男は、少しだけこの招かれざる客の相手をするつもりになった。
ポケットから携帯電話を取り出し、アプリ一覧から実装リンガルを起動する。

「…で、何か用か?」

「デスデェスデッスゥ[だからここに入れてほしいデスゥ]」

「馬鹿だろお前」

「デデスデスッ![あの仔の代わりに幸せになるデスッ!]」

「さっぱりわかんねぇよ」

いつもの彼なら飽きて殺すところだが、"廊下での"実装石虐待及び虐殺は、マンションの規則で禁止されている。
この規則には当然、理由がある。まず第一に汚れを落とすのが大変だということ。
週一で清掃業者が掃除していくとはいえ、下水よりも汚い実装石の血液である。
それを掃除するとなると、普段より高い料金が要求されるのだ。
次に騒音の問題がある。部屋の中で悲鳴をあげさせるならともかく、廊下で絶叫されては近所迷惑になる。

男は下駄箱に入れていたゴム手袋を取り出すと、実装石の片耳を引っ掴み、部屋の中に引き込んだ。

「デギャッ…」

バタン!

耳に体重がかかったことで痛みに喚く実装石。その叫びが外に洩れる前に、急いで扉を閉める。
玄関の床に放り投げると、精一杯腕を伸ばして耳を擦ろうとしながら泣き始めた。

「デスン、デッスン…[痛いデス、酷いデス…]」

「うぜぇ…」

男が呆れていると、その成体実装は彼の右手に飛びつこうとし、何度も飛び跳ね始めた。

「デッスー、デスァ〜、デッススゥー
[あの仔の臭いがするデス、懐かしいデス、ワタシの可愛い娘デスゥ]」

「キモッ! 近寄るな糞蟲!」

腫れ上がった鼻の穴をピスピスと蠢かせ、必死に右手の動きを追う。
あまりに気持ち悪い顔なので、男は思わず蹴り飛ばしてしまった。
実装石は部屋の奥まで転がっていったが、しばらく痛みに呻いた後、むくりと起き上がる。
靴を脱いで上がってきた男を見止めると、また突進した。

「デスーッ![うおおおぉぉデスーッ!]」

その異様な雰囲気を見た男は、自分の右手を確かめてみる。仔の臭い…?

「…あ」

思い当たるものがあった。
とりあえず、足元まで迫ってきた実装石を爪先で転がす。

「デグェ!」

「なぁ。お前、もしかしてコンビニにいたヤツか? いや…そんなはずないよな」

彼は二日前、コンビニで託児を狙っていた実装石の親子のことを思い出した。

「ゲホッ、ゲホッ……デス?デスッ![やっと分かったデス? この馬鹿ニンゲン!]」

「!?」

もう一度その時のことを思い出す。
たしかあの時、親実装はコンビニ店長のスプレーによって死んだはずだ。

「今の暴言は聞き流してやるから、代わりに教えろよ。なんで生きてる?」

「デシャア!デスゥスア!デェデェッス!
[よく読み返すデス! あの時は「完全に動きを止めた」だけデス! 修正前からそうなんデス!]」

「言ってることの意味がいまいち分からないが…何このリンガル? バグってんのか?
 まぁいいや。とりあえず、実装石を気絶させるだけのスプレーだった、と」

「デスッ![そうデス!]」

「な、納得いかねぇ…! 無理矢理にも程がある! なんで殺さないんだよあの店長!」

「デッススン。デスデッシャア!
[世の中は不条理で満ちているのデス。それよりワタシの用件を聞くデスゥ!]」

男は黙る。悔しいが、実際その通りだと思った。
実装石に関わる話には、理屈など通用しないことが稀にある。
あの店長はもしかしたら愛護派だったのかもしれない。
虐待派丸出しとはいえ、客である男にキツイ対応もできず、やむなく取った措置…
こんなところだろう。自分にそう言い聞かせ、男は納得した。
今後ともあのコンビニを利用するつもりなので、
店長相手に問い詰めイベントを起こす気にはなれなかったのだ。

「……」

「デス、デスデスゥ。デデズァ![まず、オマエの家は遠すぎるんデスゥ。大変だったデス!]」

「そう言われてもな。あのコンビニにしか置いてないのが欲しかったんだ」

「デププ…デギャッ!!![下らないデプププ…デギャッ!!!]」

生意気な言葉を吐いた瞬間、また蹴り飛ばす。
その恐怖に染まった顔をもう一度眺めた。ただでさえ醜い実装石の顔だが、
普段小さな鼻の穴が赤く膨れ、凄まじく不愉快な面相となっていた。
鼻が腫れているのは、この寒空の下、必死に仔の臭いを辿ってきたからだろう。
冷えた空気を何度も何度も吸い込み続け、微かに嗅ぎ取れる懐かしい臭いを追ってきたのだ。

「デヒュー、デヒュー…デヒン…」

6㎞も離れたコンビニからここまで来るとは、見上げた根性である。
が、その努力は男にかけた迷惑を償うものにはならない。この実装石が勝手にやったことだからだ。

「床を汚しやがって…で、その親御さんが何の用だ? 二日前の復讐か?」

「デゥ、デゥグゥ…[痛い、痛いデスゥ…]」

「答えろや」

「デッ、デズーッ!デスゥデスゥ![ち、違うデスゥ! ワタシは…]」

鼻血を噴出しながら、慌てて姿勢を正す実装石。
そして、肩からビニール袋を外し、男に向けて差し出した。

「なんだよ…って、うげぇ!」

ビニール袋を覗いた男は、危うく胃の中のアルコールを全て吐き出しそうになる。
袋の中には生ゴミがぎっしりと詰まっていた。

「な、なんのつもりだ!」

「デスデェースデスゥ!デプププププ…
[ワタシは『間借り実装』デス! これで冬を越せるデプププププ…]」

「はぁ? 間借り実装? いやそれ以前にその生ゴミは…」

「デスゥ[家賃デスゥ]」

ますます意味が分からない。
間借り実装とは造語だろうか。最近のリンガルはそんな言葉まで拾って変換する。

「悪いけどさ、間借り実装とか知らないんだよ。諦めて帰…死んでくれ」

ギュッ、とゴム手袋をきつく嵌めなおし、男は実装石の頭に手をかけた。
実装石は更に慌て、男の手をペチペチ叩き出した。

「デデスーッ!デェスゥデデーデッス!デーッス!
[待つデス! ワタシがバカなオマエに間借り実装というものを教えてやるデス! だから待つデスゥ!]」

ドガッ!
グシャグシャグシャグシャ!

蹴り倒され、物凄いスピードで四肢を踏み潰された結果…蛆実装モドキが完成し、床に転がる。

「デギュエッアアアアアアア〜!!!…デヒィーン、デヒィイーン…」

男は床に落ちた生ゴミの袋を拾い、その実装石を入れ、首の後ろで硬く縛った。
ギリギリ声が出せる程度のキツさで縛られ、しばらくビニール袋を着た実装石は暴れていたが…
説明しないと先に進めないと悟ったのだろう。苦しそうにしながら、間借り実装について語り始めた。

「デゥウ…デスッスッウゥン…[頑張って集めた家賃が…傷口に当たって気持ち悪いデスゥ…]」

「とっとと話せ。残った頭も潰されたいのか?」

「デヒッ!…ヒック…デスー、デスデスー[待ってほしいデス! ニンゲン様…今、今説明するデス]」

「早くしろ」

「デスゥ…[はいデスゥ…]」

実装石の話をまとめるとこうだ。
間借り実装というのは、一匹の賢い仔実装が考案した、冬越しの手段らしい。
食べ物を持って人間の家を訪ね、お土産としてそれを差し出し、
代わりに冬が開けるまで衣食住の保証を要求するというものである。

「……」

「デデオカデス!デデーッス[素晴らしい才能デス! 全実装石の前で発表するデス!]」

「なにそれ」

「…デス、デスゥ[その仔実装が、自分でそう言ってたデス]」

その仔実装殺したいなー、と男は思った。
ちなみに、成体実装の声なのでリンガルは語尾を[デス]としたが、
仔実装が言っていた場合[素晴らしい才能テチ! 全実装石の前で発表するテチ!]だろう。

どうでもいい。

「いや、全然頭良くないだろ。そいつ。
 なんで実装石一匹が運べる食物程度で一冬面倒見なきゃいけないわけ?
 成功した奴なんていると思えないんだけど、いたのか?」

少量であっても高い価値を持つ高級食材ならともかく、
実装石如きが集めて運べる食物に、一冬分の衣食住を世話する価値など無い。

「デ…[い…]」

「あ、やっぱり言わなくていい。成功したのは愛護派相手だろ」

「デスゥ…「そうデスゥ…]」

「でも俺は虐待派だぞ?
 本格的な連中と違って金や時間はかけてないが、暇だからって理由でお前らを虐めてる奴だぞ?
 どうしてそんな人間の所に来るんだか、全く理解できないんだけど」

「デデースッ![それでもここがいいんデス!]」
「何故」

「デス、デスゥ。デス、デッス、デェデッス…
[虐待派は、虐殺派じゃないデスゥ。虐められても、死ななければ、あの仔の臭いの側で暮らせるデス…]」

床に仰向けで転がされ、傷口を刺す異物(魚の骨だろうか?)の痛みに耐えながらも、
実装石は男の右手に擦り寄ろうとする。

「デッゥ、ヒッグ、フゥ、デフゥ…」

我が仔を受け取り、投げ捨てた右手。そこに未だ残る臭いを求め、一心に動き続ける。
男の目は、その姿をじっと捉えていた。

「……」

ひょいっ

「デェグッ」

急に首を締め付けられた実装石が呻く。
男がビニール袋の結び目を掴み、持ち上げたのだ。

「デヒィイ…」

目の前に男の顔がある。実装石はこれから何をされるのかと怯えた。

「…お前の面倒を見ることはできない」

「デスゥ[お願いデスゥ]」

「駄目だ」

「デス…[お願いデス…]」

「駄目だ。これをやるから我慢しろ」

男は実装石を床に置くと、右手のゴム手袋を外し、裏返した。
それをビニール袋の中に入れてやる。

「デ、デスッ!?」

「少しはお前の仔の臭いが付いてるだろ。それで我慢できないなら殺す」

実装石は首だけを動かし、ゴム手袋をチュバチュバと吸い始めた。

「デヂュゥ〜ン♪デッヂュウウゥゥー…」

「……」

バシン!

「デヂブッ!」

男は無言で実装石の顔面を張り飛ばした。

「気に入ったか? あとは一つ言うことを聞けば、生きたまま帰してやるぞ」

「デス?[え?]」

「間借り実装とやらを考え付いた仔実装の居場所を教えろ」

「デスゥー」

ゴム手袋で満足したのか、実装石はスラスラと語り出した。

要約するとこうなる。

[あいつはニンゲン様のことを『猿』って呼ぶデスゥ。
 普通のニンゲン様より頭が良くて、よくカイシャって所でご馳走されているデス。
 羨ましいデス…でも、住む所は決まってないデス。
 ニンゲン様のオウチがたくさんある所をうろついて、適当なオウチでお世話になってるデスゥ。
 そこのオウチはどれも立派で、凄く羨ましいデス…
 ワタシの住んでいた公園のすぐ近くなのに、この違いはなんデスゥ? 納得いかないデスッ!
 デッシャアアアアアアアアアア!]

バシッ!ズガッ!ゴッ!ドゴッ!グチグチグチィ!

[ヒギィィ…ご、ごめんなさいデス、もう騒がないデス。落ち着いて話すデスゥ…
 あいつは週三回夜の公園に現れては、よく分からない話をして帰っていくデス。
 サイケンとかエンソウバとか、さっぱりわからんデス! 実装語喋れデスッ!
 デッシャ…なんでもないデス。
 あ、そういえば今日は丁度公園に来る日デスゥ]

「…わかった。それだけ聞ければ充分だ」

そう言うと、男は出かける準備を始める。
しばらくして、片手に実装石を持ち、部屋を出ていった。


自分の住むマンションから数百メートルほど歩き、男は足を止める。
人通りの少ない道だ。

「デヂュウ、デッヂュ〜?[ニンゲンさん、ここでお別れデス?]」

ゴム手袋を吸いながら、実装石が聞く。

「バイクでお前の町まで運んでやりたいところだけど、鞄もシートも汚されたくないんだ」

「デヂュウゥヴヴヴッヴ![ワタシは汚くないデスゥアァアアアッア!]」

「はいはい」

男はその耳障りな抗議を軽く聞き流し、実装石の入ったビニール袋の口を解く。

そして、近くにあった電柱のボルトに結びつけた。
ビニール袋は実装石の顔だけが出た状態で、ぶらぶらと揺れた。

「デェッ———グムゥ!モゴォ!」

何か叫ぼうとした実装石の口に、ゴム手袋を丸めて詰め込む。
舌や喉の動きだけでは外に出せないほど深くまで入れる。
左手のゴム手袋も外すと、唾液に触れないよう注意し、また口に詰めた。

「オゴ!ムォゴォッ!フォ、グモ…」
「じゃあな」

そして男は立ち去った。

「ゴモオオオォオオォォ——————————!!!!!」

暗い路地に、低く、くぐもった声が響いた。

当然、男は悪いことをしたと思っていない。
手足の無い状態で近くの公園にでも返したらどうなるか?
リンチの末、食い物にされるだけだ。
あの場所なら同族の手は届かない。都合の良いことに、袋の中には食料がある。
それを食べて手足が生え揃った後、降りればいい。
…降りることができれば、の話だが。

また、その前にカラスなどに喰らわれようと、男の知ったことではない。
彼は最善の選択をしたのだ。少なくとも本人はそのつもりで

(あれが死ぬまで何日かかるかなー。時々見に来ようっと)

やっぱり虐待だった。


そして、男は部屋に帰らず、マンションのバイク置き場へ向かった。

バイクを走らせる。
冷たい夜の風に当たりながら、実装親子と出会ったあのコンビニを目指す。
親実装の語った、賢い仔実装の発言が脳裏に甦る。

[あいつはニンゲン様のことを『猿』って呼ぶデスゥ]

自分達の方がよほど猿に近い顔をしているくせに…賢さは猿に及ばないくせに…
男は激怒した。必ず、かの増長した仔実装を除かなければならぬと決意した。

「さて…その仔実装とやら、どれだけ俺をムカつかせてくれるかな?楽しみだ」

そんな呟きを漏らして、男は更にスピードを上げた。

十五分後、目的の公園を発見した。
コンビニにバイクを停めて、公園内に入る。
耳を澄ませると、デスー、デッスー、と、複数の実装石によるざわめきが聞こえる。
茂みに隠れ、その声の聞こえる方向へ近づいていくと、
滑り台を囲み、数十体の実装石が集まっている光景に出くわした。

「テチ、チッチチューン♪[愚民ども、今日もワタチを崇めるテチー♪]」

この馬鹿丸出しの発言をしているのは…月を背負い、滑り台の頂点に立つ仔実装だ。
例の賢い仔実装と見て間違いない。

[いいテチ? ワタチのように賢く可愛い特別な存在はともかく、
 オマエ達愚民が猿の家で冬を越すことなどほぼ不可能テチッ!
 アイゴハの猿に食べ物をねだって生き延びる…そんなコンペイトウの様にあんま〜い幻想も捨てるテチ!
 冬は寒いんテチ! 大っ嫌いテチ! 猿共も寒いのは苦手テチ!
 だから、冬の間はアイゴハの猿もほとんど公園には来ないんテチィ! 諦めるテチ!]

[そ、そんな…ワタシたちはどうやって生きればいいんデスゥ? 教えてほしいデス、コジッソ様!]

(…何、コジッソって。多分人間が付けた名前なんだろうけど、センス無いにもほどがあるだろ)

茂みの奥で息を潜めつつ、男は心の中でそう思った。

[無理テチュ。死ねばいいテチ]

[あ、あんまりデスゥ〜ッ!]

[冗談テチ。ワタチより年上のくせにみっともなくうろたえて、バッカみたいテチ。
 これだからババァは困るテチ! チププププププププププププププ! チププッ!]

[このガキ…]

[何か言ったテチィ?]

[な、なんでもないデス!]

…どうやらカリスマ実装というわけではないらしい。
当然といえば当然の話だ。
実装石はどれも似たような顔をしているくせに、自分が全てにおいて世界一だと思い込んでいる生物。
秀でた能力を持つ個体とはいえ、尊敬することは無い。
あるのは嫉妬と利害関係の一致だけだ。
コジッソは野良実装達を見下すことで自分を満足させ、野良実装達はコジッソの賢さを利用する。
カリスマ実装など存在しない。

[…まぁ、いいテチ。これからオマエ達に冬を越える方法を教えてやるテチ!
 耳の穴かっぽじって…あ、オマエ達は自分の耳掃除してないんテチィ?
 ワタチは猿に掃除させてるテチュ。こりゃ悪かったテチ! テキャキャキャキャキャキャ!]
[……]

野良実装達は必死に耐えている。
自分達の頭で考えた冬越えでは、まず間違いなく生き延びることができないからだ。

[オマエ達が冬を越すために必要なものは…]

[なんデス!? さっさと言うデスゥ! このガキャア!]

["オンセン"テチュッ!………それはそうとそこのオマエ、死刑テチ]

[デジャアアアアア! 離せ! 離すデスッ!
 みんなだってあのガキにムカついてるはずデス! なんで言うこと聞くんデ…デギャ!]

演説の最中に立ち上がり、コジッソに口答えした実装石が、十数体の同族にボコボコにされた。

(うわ、無言でリンチされてる。あの仔実装がそこまで大切なのか?)

コジッソは気を取り直し、演説を続ける。

[そのバカは道路にでも捨てておくテチュ。どうせ猿が掃除するテチ]

[コジッソ様!"オンセン"って何デスゥ? それはどうすれば手に入るデス?]

[それをこれから話すテチ。いいテチ? オンセンはオマエ達の足下にあるテチュ]

[デ!?]

慌てて自分達の足下を探り始める野良実装達。一瞬にして場は大騒ぎとなる。
その姿を見たコジッソは爆笑した。

[テピャピャピャピャ! そんな簡単に手に入ると思ったら大間違いテチュッ!
 オマエ達は本当にバカで笑えるテチィー! テピャピャピャピャピャッ!]
[……]

(……)

男は野良実装達に同情し始めていた。コジッソはあまりにも 糞蟲すぎる…

(今は耐えろ! 耐えるんだ! そしたら俺があいつ殺してやっからな!
 その結果お前らが凍死しようが、全然知ったこっちゃ無いけど!)

彼は決意を新たにし、観察を続行した。
本当は今すぐにでもコジッソを始末したいのだが、何せここは住宅街の近くである。
数十体の実装石の前に姿を晒せば、必ず大騒ぎになる。
演説の終了を待ち、コジッソが一匹になったところで始末するしかないのだ。

[オンセンは地面を掘らなきゃ手に入らないテチュ。
 オマエ達、生き延びたければ掘って掘って堀りまくるんテチィ!
 まるで猿共が入るお風呂みたいにあったかいお湯が、たーっくさん出てくるテチ!]

[そいつはすごいデーッス! 冬でもお湯があれば楽勝デスゥウ〜♪]

[みんな掘るデス! 掘るデス! デシャッ! デシャハハハッ!]

[デァデァデァデァデァデァデッスアー!!!!!]

凄まじい勢いで滑り台の近くの地面を掘り始める野良実装達。
土は寒気によって冷たく固められているというのに、お構いなしで掘り続けている。

ザシッ ザシッ ザシッ ザシッ!

しばらくすると、一匹の実装石が手を押さえて飛び上がった。

[デギャウ! ウ、ウゥ…このくらいの痛みがなんデスッ!
 ここでオンセンを見つけないとみんな死ぬデス! ワタシも! ワタシの仔も!]

その実装石は悔しそうに己の手を見つめる。そこからは赤緑の血液がダラダラと流れていた。
傷は深く、痛みに堪えて穴掘りを続けようとすると、両手ともだらんと垂れ下がってしまう。
地面の固さとは反対に、実装石の手は柔らかい。
非力とはいえあれだけのスピードで掘り続ければ、すぐに皮膚が破れてしまうのだ。

[デ…デスッ! 手がダメならぁあ…口があるデスゥーッ!!! ハグハグッ…ベッ! ハグッ…ベッ!]

力を失った両手をしばらく見ていたが、気合を入れ直し、今度は口で堀り始めた。
地面に噛み付き、一口分の土を含んでは、穴の外へ向けて吐き出す。
その形相はまさに鬼気迫るものであった。
他に両手を負傷した実装石達もそれに倣い、口で懸命に穴を掘る。

[チププ…]

その光景を特別席から眺めつつ、コジッソは冷笑していた。
どんなに笑っても、穴掘りに必死な野良実装達は気付かない。
そう見くびっていた。

しかし、その顔を見ていた者がいる。

(……)

男は基本的に実装石が嫌いだ。
とはいえ、積極的に駆除するほどではないし、自分の生活の邪魔をしなければ見逃す程度。
マンションのお隣さん(愛護派)が飼っている性格のいい実装石とは、たまに遊んでやる。

コジッソは別格で嫌いだ。だから殺す。
恐らく野良実装達は公園のど真ん中に大穴を空けるだろう。
温泉が出てこなければ、今度は他の場所に穴を開けるかもしれない。
そうなれば、子供達の遊び場は徹底的に破壊される。
コジッソを生かしておけば、また野良実装を唆し、人間社会にダメージを与えるに違いない。
自分の手は汚さずに。

[ワタチはもうねむねむテチュ。先に帰るテチ]

[今日もありがとうデス、コジッソ様!]

[頑張って掘るテチ。そうしないと家族みんな死ぬテチ!]

[はいデスゥ!]

[チプププ。バイバイテチュ♪]

[さよならデス! また次の集会もよろしくデスー!]

そして、コジッソは公園から出て行った。男もその後をつけ、静かに移動する。

(よし…行くか)

コジッソの向かう先は住宅街の中心部だ。そこまで入り込まれては手が出しにくい。

(おいおい…こっちに住んでる連中って言ったら、
 どっかの社長とか市議とか、そんなのばかりじゃねぇか!)

そう、この先は高級住宅街。
この住宅街は中心部に向かうにつれて、家一つ一つのサイズが大きくなっていくのだ。

(そんな連中に気に入られてるとなると、かなりヤバイな)

男はノリでここまで来たことを少し後悔した。
しかし、今更引くことはできない。コジッソは人間、実装石の双方にとって害悪でしかない。
どれほど賢かろうと、それは確かなことなのだ。
別に正義を気取りたいわけじゃない。ただ、許せないだけ。
あれを生かしておけば、必ず害を成す。
だがそれを排除したからといって、誰にそれを褒められたいわけでもない。知られる必要も無い。

(つーか知られたら社会的に抹殺されそうだし)

そう思っているにも関わらず、男の足取りは軽い。
これから大好きな実装石虐待が待っているのだから。

虐待派は誰も自分の行いを正当化したいとは思っていない。
正当と化する必要は無い。自分で正当だと思えればいい。
正当でないことを行っている、その背徳感に酔えるのであれば、それもいい。
だが、他人に正当性を認めさせたがる虐待派など、虐待派ではない。
誰かに認めてもらわなければ虐待できない臆病者なら、最初から手を出してなどいない。
自分で選んだ。自分が選んだ。だから虐待を続けているのだ。

今回はたまたま、それを大義名分に繋げる余地があるというだけだ。
男には己の行いを誇るつもりなど無い。ただコジッソに対する怒りだけがある。
ポケットに入れた道具を握り締め、住宅街中心部の手前で、男はコジッソに接近した。

「…、…♪……、♪」

更にコジッソとの距離を縮める。歌声が聞こえた。
男は目の前のコジッソを見る。この糞蟲が歌っているのだ。
リンガルを起動し、携帯の画面を覗いてみる。

「テッテチーチテッチュー テッチュー テッテッチュー♪[ワタチは天才 大天才 猿よりママより偉いテチュー♪]
 テチューテテーチュウ テェテッテェー テチュテッチャ♪[誰より強く 美しい 神様よりも凄いテチ♪]
 チュア〜 テテッテチューテ テチュンチュチュン♪[嗚呼 ワタチは素晴らしい こんな自分が怖いテチィ♪]」

「……」

「テーチー テーテチー チュッチュー♪[パソコン ネットがあればいい 世界はワタチの自由テチュ♪]
 テッチィ〜ン テェチュゥー テッチャアテッチャア♪[株価も〜 選挙もー 全部ワタチが操作テチッ♪]

歌が止んだ。コジッソはかなり近づいたはずの男にも気付かず、今度は独り言を始める。

[チププププ…今日も最高だったテチュ。
 間借りとかオンセンとか、あいつら頭悪くて可哀相テチュッ♪
 猿共が困るだけテチ。ていうか猿の困り顔見るほうが楽しいテチ。
 どの猿もワタチの仕業と気付かないし…これだからバカな野良豚共を操るのはたまらんテチィ!
 あんな方法で冬を越せるわけないテチ。みんな凍死しちゃえばいいテチュ! テキャキャキャキャ!
 あ、でも公園の豚が全部いなくなったらつまんないテチ。
 そしたら猿に命じて、どこかから輸入テチッ! 全く、優雅な楽しみのためとはいえ…面倒テチィ♪]

…これ以上聞く必要は無い。正確にはこれ以上耐えられない。
男は即座に行動を開始した。

ザッ!

「テェッ!?」

行動と言っても、コジッソを頭陀袋に入れてその場から離れるだけだが。


男は住宅街から1㎞ほど離れた狭い路地裏まで辿り着くと、袋を逆さまにし、コジッソを地面に落とした。

「ふぅ…」

「テギャッ!」

体は温まっていたが、すぐ冷えるだろう。男は懐から小さめのウィスキーボトルを取り出した。
酒好きである。常にアルコールは手放さない。
それを飲みつつコジッソの様子を見ると、落とされた場所でバタバタと転げまわっていた。

「テェ、テテェヂアッ![痛い、痛いテチッ!]」

それほどの高さから落としたわけではないのだが、コジッソは痛いと喚き続けている。
あんな傍若無人な生き方で成長したのだ。痛みに対する耐性は少ないのかもしれない。
その姿を横目で捉えながら、男は頭陀袋を覗いてみた。
中は暗くて見えないが、実装糞の臭いが充満している。
どうせ安物の袋だ、と割り切り、投げ捨てた。

「さてと、コジッソちゃん?」

「テシャッ、テシャアアアアアアッ!シャア![何テチ、オマエはああああああ!ぶっ殺すテチィ!]」

「あれ? 俺を殺せるの?」

「テチャッ![当たり前テチ!]」

「じゃあなんで、ロクに抵抗も出来ず連れて来られたのかなー?」

「テチチィ…テエッテテッチ、テチッ!
[それは…オマエがワタチに用があるみたいだから、わざと運ばれてやったテチ!]

多少の恐怖は感じているようだが、コジッソに動揺の色は見られない。
思い上がった糞蟲故か…否、ここで男はある可能性に気付いた。

「テチェッ!?[なにするテチッ!?]」

素早くコジッソを裸にする。そしてその服を地面に置くと、思いっきり踏みつけた。

パキャ!

小さな、何かを破壊する音が響く。

「…発信機か、やっぱり」

「チプププププププ!チププ!チプゥーップップ!
[オマエはもうおしまいテチ!
 もうすぐワタチの奴隷猿達がやってきてオマエは八つ裂きテチィーッ!]」

「残念だなぁ」

「テピャピャ!テチャテッチャアキャキャキャ!
[せいぜい残念がるテチ! ワタチにこんな無礼なことをしたオマエは絶対許さないテチーッ!]」

裸にされても、コジッソの尊大な態度は変わらない。
服の代わりなど他にいくらでもあるからだろう。
しかし、コジッソが今後服を着ることはないのだった。

「いやあ、本当に残念だ。お前をじっくりと虐待する暇が無くて」
「テ?テウェッ…オ!」

ジュオオオオオオオオオオッ!!!

男は開きっ放しのコジッソの口にウィスキーボトルの口を押し当て、中身を流し込んだ。
間髪入れずライターを取り出し、口から垂れるウィスキーに点火した。

「チェギィヤヤヤャャァァァァァッァァッァァッァッァァ!!!!ギィヤッア!!アアヂァュウァウァ——————ッッッ!!!!!!」

「とくと味わえ。実装石如きに酒なんて高級品、勿体無くて涙が出るけど…
 でもお前のためだ、俺我慢するよ! 涙を飲んで我慢するよッ!
 しかも人間様との間接KISSだぜ?…光栄に思うんだな」

「ァテアァ゛ァ!アッ…ウ!ピギィウ!チェピィイギイギギッギエ゛ォ゛ッテテテテティゥイウ!!ヒッ…ヒッガ!」

燃え盛るアルコールに唇、舌、喉、食道を焼かれ、コジッソは凄まじい声をあげ続ける。
この場合、叫び声をあげられることを褒めるべきか。
体内に炎が燃え盛っているのだ。酸素は吸い込むそばから燃焼され、普通なら声を出すことすらできない。

「ピィ!ヒキィィギィ!エ゛ゥ゛!ォッエェ゛!!!」

コジッソにとって幸いだったのは、ウィスキーの量が少なかったことである。
男は酒好きのうえ差別主義者で意地汚かったので、コジッソの小さな体を少し焼く分だけの量を残し、
ウィスキーのほとんどを自分で飲んでいたからだ。
コジッソに使われたのはほんの一口。人間ならば、口内に溜めたまま会話が可能な程度である。

「ヅォッォォオfdァjィオオqウエオオオァァオオplヒkオオオオ———ッ!!!

ドパァ!バプッ!!プバパパパ!!!と、コジッソの股間から勢い良く糞が飛び出す。
その途中から更に悲鳴が甲高くなった。総排泄孔まで焼かれたのだ。
火傷の上を高速で通り過ぎる糞。その刺激に悶絶し、滝のように血涙を流す。

[イタイ!アツイ!イタイ! ウンコォッオオオオオ! アツイタイテチィー!!]

リンガルにはそう表示されている。
痛みに混乱する頭で、自分が脱糞していることに気付けるとは大したものだ。
いや、この叫びを解読できるリンガルの方が凄いのだろうか。
とりあえず、人家の少ない地域とはいえ、ここまで凄い悲鳴はよろしくない。

「よしよし、ちょっと物足りないけど、そろそろおしまいにしようか。時間も無いし」
「ギッヒィヒィ…テゥ?」

プス

「tヒッ」

コジッソの胸にマチ針が刺さっている。

「tッ、tッ、tッ…?」

グリグリグリ…

「tェ!tェ!tェ!」

針が体内を探るような動きを見せ、肉を抉る。
リンガルは何も言葉を拾わない。
体の中から炎に焼かれ、正常な思考能力を失っているのだろうか。男は針を動かし続ける。

「ウヅォゥオァアァッー!!!」

一際反応の大きい所を見つける。叫んだ後コジッソは男の顔を見た。
笑っていた。

「じゃ、さよなら」

ギシッ!!!

「ギッ…ギ…ェ…ヂ…ッエッエエ!!![この…さ…猿…が…ワタチは天才…!]」

奇妙な声を発し、コジッソは気絶する。
あの場所に入っていたのはコジッソの偽石。
男はそこを狙い、マチ針で傷を付けた。これで死ぬならそれで良し。
死なずとも、実装石の個性たる情報の詰まった偽石が傷ついたのだ。
以前のような小賢しさはもう失われているだろう。

「よし、逃げるか」

男はゆっくりと歩いてコンビニまで戻った。
急いで走れば怪しまれるからだ。
その後はお気に入りのツマミを買い、バイクに跨って、悠々と帰っていった。

コジッソの家畜猿…現在の飼い主が空き地に到着したのは、それから十分後のことだった。







「これに怒った政財界の大物と虐待派集団が対立してね。
 そのことが原因で、日本は虐待派と愛護派による、争乱の時代に突入するんだ」

[戦争嫌いデスゥ…でもお隣さんはいいことしたデス!
 ワタシもお話聞いてて、コジッソにはムカついたデスッ! 死んで当然デス!]

「いや、いいことなんてしてないよ。
 ただムカついたから痛めつけただけだから。チンピラと変わりはしないさ。
 エメラルドちゃんに喜んでもらえたのは嬉しいけどね?」



[…って、お隣さんが言ってたデス]

「そ、そうなの〜。戦争は怖いわねぇ。(ガチ電波ね!)」

[ほんと怖いデスゥ。あと、お隣さんはこうも言ってたデス。
 「でもエメラルドちゃんはいい子だから、僕が守ってあげる」とかなんとか、デス]

「……(虐待派と思ってたのに、まさかジックス派?)」

[ご主人様? どうかしたデス?]

「いえ、なんでもないのよ。
(とりあえず人間には興味無いのかしら…オエッ、これだからキ印の考えてることは分かり難くて困るわ)」



男が言ったことはどこまで本当なのか、コジッソは結局どうなったのか…それはまた別のお話。



End






























































◆あとがき
特にありません。




あえて一言述べるならば
先日自分の部屋を訪れたどう見ても密○者な女性の顔が正直微妙だったのに気が弱いせいで「チェンジ!」と言えなくて
結局いたしてしまったうえになんか辛い身の上話をされてどうせ作り話だとわかっていたにも関わらず涙腺を刺激され
規定の料金に色をつけて渡してしまいそれからもやしと納豆の生活を三週間続行中でしかも腰を痛めて椅子にも座れない
そんな環境で冗長なスクを書き上げた僕へ「NOと言えない日本人」の称号を授与してあげたいです。
ついでに恥知らずにも修正版を上げ直したくせにまた失敗し再修正した勇気と手間を誰か讃えて労ってください。



ご愛読ありがとうございました。


愛なんてまやかしだとわかってるけど一応礼は言っておきます。紳士ですから。
紳士=礼儀を守る=僕は紳士=僕は礼儀を守る人間。
中学校二年生レベルの問題ですね。

尊敬する人は秀夫。でも部長職じゃ満足できない。
そんな僕をこれからもよろしくお願いします。修正作業大好き。

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