公園、それは今現在実装石によって占拠されたといってもいい場所である。 その有様は昔のように小さな子供が遊ぶための公共の遊具施設と呼ぶことは出来ない。 一度でもその公園に入ろうものなら野良実装石達による媚の嵐が吹き荒れることになる。 そんな公園にもはや人間は近づくことはなくなっていた…… ここに一人の青年がいる、青年は荒れ果てた公園の入り口に立ち佇んでいた。 入り口からでも分かる異臭、実装石の糞や死体の匂いだ。 市の業者が何度公園にいる実装石を駆除し徹底的な掃除を行っても数日には元に戻ってしまう。 その為か市は最早サジを投げている状態である。 「ここも凄い荒れようだ……でもこれくらいなら想定内だな……」 一人ぽつりとつぶやくと入り口を入っていく青年。 その瞬間実装石の大群が青年の周りを取り囲む、餌を貰おうと媚に来たのだ。 『おいニンゲン!早く可愛いワタシに美味しい餌を山ほど献上するデス!そしてワタシを飼う事を許可してやるデッス!』 『テチュ!あまーいコンペイトウが食べたいテチ!』 『デジャァァァ!何やってるデス!ワタシが寛大な心で待っててやってるデス!早くするデス!』 賢さとは無縁の馬鹿全開の言葉、人間を奴隷や下僕にしか思っていない態度、正真正銘の糞虫だ。 この公園にも賢い個体はいくつか存在するが糞虫の方が圧倒的に多いため見つける事すら出来ない、恐らくは茂みの中で様子を伺っている事だろう。 「そんなに食べ物が欲しいのか?だったらやるよ、ほーら金平糖だ遠慮しないで食え」 青年が背負っていたリュックから未開封の金平糖の袋を取り出した瞬間、実装石達が騒ぎ出した。 大方全部自分に寄越せだのもっと出せだの言っているのだろう、しかし青年は気にすることなくそれをばら撒き始める。 「沢山あるから好きなだけ食べていいぞ、ちゃんと皆で分け合うんだぞ」 実装石達は青年の言葉など聞こえていなかった、ばら撒かれた金平糖に意識が集中してしまい乱闘騒ぎにまでなっていたからだ。 青年の言った様に『分け合う』といった概念が皆無な糞虫達は皆我先にと金平糖に群がる、そのさまはさながら地獄絵図にも見えるだろう。 青年は自分に向けられている視線に気づき茂みを見る、すると木や物陰から青年をじっと見つめている実装石達がいた。 それは賢い個体だろう、すぐに近寄ってこないのは青年を警戒しているからだ。 稀に虐待派が公園に来てドドンパやコロリを撒いていくので彼もその類だと思ったのだ。 糞虫な実装石を観察しすぐに死ぬようならそれは毒であり青年は虐待派という事になる、非常に頭がいい連中だ。 だが糞虫達はそんな過去などとっくに忘れ今は金平糖の甘味に酔いしれている。 すると青年は茂みに近づき賢い個体達に話しかけた。 「お前達も食べるか?まだまだ沢山あるんだ、このままだとあいつらに全部食われちまうぞ?」 そう言って袋を逆さにして中身を出す、最初は警戒していた実装石達もこの青年は虐待派ではないと判断して金平糖を食べ始めた。 特に仔のいる個体は喜んで仔実装に食べさせている、これが異臭放つ公園でなければ非常に微笑ましい光景だったろう…… 全ての実装石達が金平糖を食べ終わる頃にはお昼を過ぎようとしていた。 その様子を見ていた青年は公園を出ようと出口に向かう。 途中『自分を飼え』等言っている実装石達がいたが全て無視して帰路についた。 その日の夜、青年は昼間訪れた公園に再び来ていた。 しかし、現在の時刻は深夜0時をまわっている、実装石だけじゃなく良い子も悪い子も寝ている時間だ。 「そろそろ効果が現れる頃だな……さて、今回はどうだろうな……」 そう呟くと公園の中から声が聞こえてきた、紛れも無い実装石の声だ。 青年は気づかれない様に身を隠しながら公園に潜入する、すると茂みの中にあるダンボールハウスからうめき声が聞こえる。 『デジャァァァ……ナンデズゥ……クルジイデズゥ……』 『ママ……オナカイタイテチィ……キモチワルイテチィ……』 『テチィ……』 『デ…………』 そんな光景が公園中で見られている、すると青年は懐から偽石レーダーを取り出した。 範囲は公園内全て、その中に点滅していた偽石反応が消えたのを確認すると青年は自宅に戻った。 「効果は上々、全ての個体の死滅を確認、任務完了」 実は彼が公園に来た本当の目的は実装石の駆除である。 しかし業者が行うような方法を試しても効果が薄い、特に賢い個体には通用しないのがほとんどだ。 そこで市の役員の一人が青年に駆除の依頼をした、この役員と青年は知り合いである。 市の要望は『糞蟲も賢い個体も関係無く、公園内に生息する全ての実装石の駆除』だ。 青年は趣味で金平糖に似た駆除道具を作っており、今回はその一つを使用した。 『超々遅効性金平糖型コロリ』 通常のコロリは食べるとすぐに効果が表れる、遅効性のコロリも一般に出回っているがそれでもあまり遅いとは言えない。 青年はその遅効性の効果が表れる時間を極限まで遅らせたコロリを作り出した。 それは実装石が体内に入れておよそ12時間後にコロリとしての効果を発揮するというものだった。 このコロリの利点は警戒している賢い個体もいずれは警戒を解いて食べるという点にある。 今回のようにお昼頃に食べさせれば効果が表れるのは深夜過ぎ、これならば賢い個体も食べるだろう。 その効果は絶大で公園内に生息していた実装石は全て死んだ、糞蟲・賢い関係無く。 青年は夜中なのに携帯で役員に電話をかける、あとは朝に業者が現れて死体の処理と公園の掃除が行われるだろう。 自分の作った道具で実装石を駆除した青年はいつも以上に晴れやかな気持ちで帰路についたのだった……
