タイトル:【馬観察】 敷金・礼金無料 12(ごく一部致命的ミス修正…)
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初投稿日時:2006/11/10-12:55:28修正日時:2006/11/10-12:55:28
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敷金・礼金無料 12


 俺の名はやおあき。
 自らは手を下さない、観察型の虐待派だ。
 俺は友達のにじあきと協力して、賢い実装石一家をさらって来た。

 今彼女達は、俺達が整えた(実装石にとっては)最高の住処…古い木造アパートの中に居る。
 雨風をしのげ、外敵から守られる反面、真夏の猛暑に容赦なく晒されるこの密閉環境の中で、
彼女達はどのように生きていくのだろうか?


●アカ組:親×1、仔×1

●キイロ組:親×1、仔×1、蛆×1

●ミドリ組:仔×2、親指×1

●ムラサキ組:親×1、仔×1、親指×1


 以上四家族、親3匹、仔5匹、親指2匹、蛆1匹…合計11匹。

 アパートの構造と部屋割りは、以下の通り。

■1階

 部屋番号は、左上→右下の順で、101〜103、105〜107(104はない)。

 (入り口)
   _
  ||
 □||黄
 □||□
 緑||赤
 ■||▲
  | → 二階へ
 ‾‾‾‾

 □は空き部屋、▲はトイレ、■は風呂場。
 廊下の奥、トイレの脇には、二階へ昇る階段がある。


■2階  
 部屋番号は、左上→右下の順で、201、202、203〜206(204はない)
 
____
▲||紫
□||□
■||□
 | → 一階へ
‾‾‾‾
 □空き部屋 ■は洗面所 ▲は開放済みの無人部屋(家具あり)

 三階や地下室はない。
 入り口には鍵がかけられていて、脱出は不可能。



(前回のあらすじ)

 ムラサキ仔が深夜に行方不明になったため、その捜索を兼ねたアパート探索が行われる。
 実はムラサキ仔はアカ組に捕らえられて虐待を受けており、巧妙に隠され続けていた。
 やがて、“堕落の間”からあらたに発見された菓子詰めの箱を独占するため、アカ組達は封印された
201号室“開かずの間”を利用する事を思いつく。
 試行錯誤の結果、彼女達は201号室の鍵を開ける事に成功する。
 
 菓子箱と一緒に、ムラサキ仔を201号室に閉じ込めるアカ組達。
 絶望の淵に立たされたムラサキ仔は、201号室内で異音を耳にする。

 一方、窓をつたって201号室に侵入したアカ親の姿は、他の人間に目撃されていた。
 やおあきの親は、アパート内に野良実装が住み付いていると確信。
 これを駆除するため、保健所に連絡を取っていた…



■ 第十二話 「ファイナル・カウントダウン」 ■





 ■■■



 その日の朝。
 やおあきが起きるよりも、少しだけ早い時間。

 ここは103号室、ミドリ組の部屋。
 だが今、ここに居るのはミドリ姉ただ一匹だけだった。
 妹達は、最近ずっとアカ組の所に泊まりに行っている。
 アカ組の親と仔と意気投合するのはいいのだが、そのため、姉は独りぼっち。
 今朝も寂しい目覚めだった。

 ミドリ姉は、妹達の気持ちが自分から離れ始めている事を強く意識していた。
 あの仔達は、本来ならばとっくに「悲しい事」をされてこの世にいない筈の存在。
 ミドリ組の母親が、間引き対象として考えていたのだ。
 母親は、一度の出産で一番賢い仔だけを残して、残りは無条件で間引くという豪快な処置を行って
いた。
 ミドリ姉は母親にとって初出産時の生き残りだ。
 今の妹達が生まれるまでは、自分と同期の姉妹達が突然いなくなった理由を理解していなかった。
 間引くという意味すらわからず、ただ悲しくて寂しかった。

 二度目の出産で生まれた子供達は、母親に「全員糞蟲」と判断され、一匹残らず処分される事に
なった。
 きっかけは、母親が近所で保護してきた一匹の禿裸仔実装だった。
 妹達は、その仔が家に入った途端に殴り、蹴倒し、ののしり、糞まみれにした。
 まるで共用のおもちゃを手にしたようなはしゃぎようで、妹達は禿裸仔実装を虐待しまくった。
 ミドリ姉の制止など聞く筈もない。
 母親は、どうやら禿裸仔実装に対する態度で糞蟲かどうかを見極めていたようだ。
 禿裸仔実装は、最終的にミドリ姉に抱き抱えられ保護されたが、時すでに遅く偽石を自壊させて死んで
しまっていた。
 そんな姉をも罵倒する妹達を、母親が捕まえる。
 そして、ミドリ姉の目の前で間引きを行い、それを教えようとしたのだ。

 気がついた時には、ミドリ姉は二人の妹だけを連れ出して逃走していた。

 母親の手でねじり潰され、首を千切られていく妹達。
 その行き着く先は、母親の口の中だった。
 ミドリ姉は、間引きを口実にして仔食いに酔う母親の目を見てしまった。
 自分の寂しさの元凶は、母親の狂気だった!
 それに気付いたミドリ姉は、母親の許を飛び出して逃走生活を試みた。
 もはや彼女の心の中では、「間引き=同族食い=いけない事」という図式が完全に成立していた。
 奇跡的に成功した逃走生活の中でも、妹達の糞蟲ぶりに幾度となくピンチに陥る事があったが、
ミドリ姉は決して彼女達を間引こうとはしなかった。
 以前、狂気に酔う前の母親が教えてくれた知識を総動員して、出来る限りの躾を行ったつもりだった。

 しかし、それは決してうまく行っていなかったようだと、今になってようやく自覚する。
 妹達は、自分よりも頼りになり同調してくれる者が現れると、簡単にそちらになびいてしまう。
 もはや、妹達は自分を必要としていない。
 そう強く認識せざるをえない状況だった。

 だが、このアパートの中で生活していれば、妹達の元気な姿はいつでも見ることが出来る。
 公園だと、少しでもはぐれてしまったら二度と出会えなくなってうかもしれない。
 そんな危険も心配もないだけ、ここの生活は恵まれている。
 色々トラブルはあるが、公園での逃亡生活に比べれは、この程度大した脅威ではない。
 出来ることなら、このままずっと、皆とここで暮らしていきたい。

 そんな事を考えていた。


 ペフ、ペフ

「——オネエチャーン」
「おはようレフー。朝ご飯の時間レフー」

 可愛らしいノック…にならないノック音と共に、聞き慣れた声が呼びかけてくる。
 キイロ組の子供達が、いつものように迎えに来てくれたのだ。
 そうだ、たとえ妹達がいなくても、自分にはキイロさん達がいる。

緑姉「おはようございますデス。今行くデスよー」

 さあ、今日は一人でイジイジしてはいられない。
 行方不明のムラサキ仔を捜索しなくてはならないのだから。

 ミドリ姉は、無理矢理身体に気合を入れた。






 ■■■



 102号室での朝食を済ませると、今朝の会議が始まる。
 今回の議題は、昨日とほぼ同じもの。
 だが今回は、ムラサキ仔の捜索の方がメインだ。

 ムラサキ組は、また泣いている。
 昨日も散々言っていたが、ムラサキ仔は彼女達にとって極限の状況を生き抜いてきた大切な家族だ。
 だからこそ、絶対失うわけには行かないのだという。
 いなくなった子供のことなどすぐに諦めるべきという思考が確立している野良実装達には、本来
ムラサキ親の主張はまったく意味不明だ。
 だがミドリ姉は、その気持ちが痛いほどに理解出来た。
 そして、いつしかムラサキ親の姿に自分を重ねるようになっていた。

「ムラサキちゃんを呼びながら、アパートの中を移動するデス!」

 ミドリ姉は、沈黙を破って提案した。
 キイロ組、ムラサキ組はすぐにそれに賛同してくれる。
 だが、アカ組と姉妹達は不満そうな態度だ。
 その意図はよくわからなかったが、ミドリ姉は必死で頼み込み、なんとか彼女達の承諾を得る事に
成功した。


 三十分後、実装石達は全員で二階へ移動した。
 親が総出で捜索する以上、子供達だけを一階に残しておくわけにもいかない。
 そのため、親達は例のカゴを背負い、それぞれの子供達も連れて行く。
 成体実装では入れないような細かい場所の探索を行う場合、子供達の存在が重要になる事もある。
 しばらくして、全員が一階から退出した。

 206号室“堕落の間”を皮切りに、探索が開始される。
 今まで以上に入念に調べ、大声で呼びかける。
 しかし、ここからは膨大なゴミ(以前食べ散らかした菓子袋類)以外は何も見つからない。

 続けて205号室、203号室。
 203号室はムラサキ組の自室だが、それでも念入りに調べられる。
 だが当然ながら、何一つ目新しい発見はなかった。

 実装石達の興味は、自然に“開かずの間”201号室へと向けられる。
 ここは「鍵」で封じられた唯一の部屋で、実装石には開ける事が出来ない。
 つまり、このアパート内で唯一誰も足を踏み入れていない場所ということになる。
 興味を惹かれない筈がない。

 キイロ親が、実装石用に取り付けられたノブを掴み、引いてみるが、当然ながらびくともしない。
 どこかに鍵があると思うから、それも並行して探そうという意見に、ミドリ姉は強く頷いた。


 残りは、202号室のみ。
 ここは、以前アオ組が退避していた場所で、第二次食料庫でもあった。
 今は無人だが、なにかとトラブルの起こりやすい場所である。
 202号室には、アカ組とミドリ仔・親指が先に入り込んだ。

赤親「デベッ?! こ、この臭いは…」
緑仔「アッ! アッキャーデチ」

 アカ組達が、なぜかすごく不快そうな、それでいてどこかバツの悪そうな表情を浮かべている。

赤親「バカ! なんでとっとと流さなかったデス?!」
赤仔「デ、デェェ…うっかりしてたデチ〜」
緑仔「あの時は真っ暗だったから、つい忘れてしまったデチ〜」
緑親指「ここは、ワタチに任せるレチ!」

 アカ組が、何か訳のわからない話をしている。
 ミドリ親指が、なぜか身体をプルプルと震わせているのが見える。
 ミドリ姉は、恐る恐る202号室内に入り込んだ。

緑姉「どうしたデスか? …ゲベッ! く、くっちゃいデスッ!!」

 なんだかわからないが、この部屋は今、とても臭い。
 どこにも何もないのに、とにかく臭かった。
 前に来た時は、こんな事なかったのに…

緑親指「レチ〜♪ ウンチ出たレチ♪」

 突然、ミドリ親指が呑気な事を言い始める。

緑姉「デ、デス?! な、なんでこんな所で、突然脱糞行為?!」
緑親指「う、うっかりしてたレチ! ごめんなさいレチ!」

 珍しく粗相をしてしまったミドリ親指を抱えようとするが、それより前に、ペタンとその場に座り込んで
しまう。
 パンコンしたままで座ったものだから、大量の糞が漏れ出し、床に張られたビニールシートを汚す。

緑姉「な、何してるデス〜?!」
緑親指「レチャチャ…つ、つい座っちゃったレチ〜! オネエチャン、おトイレ連れてってレチ〜!」
緑姉「まったく、どうしてこんな時にウンチしちゃうんデス?」

 ミドリ姉がミドリ親指をカゴに乗せようとしていると、他の家族も202号室にやってくる。
 そして、やはり糞の臭いに鼻を押さえた。

 ミドリ姉は、他家族に事情を説明すると、慌てて一階へと戻っていく。
 臭くて蒸し暑いという地獄のような環境の中、部屋の探索が続けられるが、どうしても探索に集中
できない。

黄親「こ、これは…いくらなんでも厳しすぎるデス! に、臭いが落ち着いたらまた詳しく調べるデス!」
紫親「こんな所にうちの仔が居る筈ないデス。というか、いたら絶対大泣きしてすぐにわかる筈デス」
黄仔「気、気が狂いそうテチ〜!」

 キイロ親もムラサキ親も臭気の毒にギブアップして、さらりと一通り調べただけでとっとと次へ移動する
事を決める。
 アカ組とミドリ仔だけが、その場に残っていた。


赤親「あ、危なかったデス〜」
赤仔「親指チャンの機転がなかったら、怪しまれてたデチ〜」
緑仔「これで二人に貸し一つデチ♪ 気付かれないうちに、流しに溜まったアイツのウンチを流すデチ!」


 臭いの本当の原因は、昨日ムラサキ仔が残していった“流しの中の糞”だった。
 アカ仔達は、うっかり処理し忘れていたのだ。
 ミドリ仔は、親指のせいで手が汚れたからとキイロ組達にいつわってから、202号室の流しに上って水
を流し始めた。

緑仔「テッテッテッ…と。証拠隠滅、完了デチ!」
赤親「とっとと降りて、あいつらの後を追うデス!」

 遅れて202号室を出たアカ組達は、二階の洗面所を調べている他家族の下へと駆けていく。
 実に速やかなオペレーションだった。





 ■■■


 
「テチ…?」

 201号室の流しの中で目覚めたムラサキ仔は、暗い部屋の様子に戸惑っていた。
 昨日までアカ組達に受けた仕打ちを思い出し、めそめそと泣く。
 空腹感と激しい喉の渇きに苛まれ、不安はどんどん増して行く。
 腹の中が空っぽのせいか、今日は糞すらろくにしていない。

 また今日も、あいつらが来るのだろうか。
 せっかくギャクタイニンゲンが見逃してくれたのに、またいじめられなければならないのか。
 ママは、自分が産まれる前に胎教の歌で、この世の素晴らしさと生きる喜び、そして家族やご主人様
と平和に暮らす事の大切さを教えてくれた。
 しかし、それはすべてウソだった。
 何一つ、ママの言う「喜び」などない。
 自分はただ、他者に弄ばれるためだけに生まれてきたではないか!

 自分が何をしたというの?
 なんで、いじめられるの?
 どうして、こんな所に閉じ込められてしまうの?
 ママは、親指ちゃんは心配しているの?

 もう二度と、ママ達に逢えないの?


「テチ…もうイヤテチ。何もかもイヤになったテチ…」
 
 ムラサキ仔は、これまでの過去と現状を思い返し、心の中を絶望一色に染めた。


 ——ジ


 ふと、不思議な音が聞こえた。
 前にも一度聞いた、不気味な音。
 どこから鳴っているのか、ここからだとまったくわからない。
 だがそれは、不思議にムラサキ仔の恐怖心を煽り立てる。
 

——デ…ジ……

 また、音が聞こえる。

紫仔「や、やっぱり何かいるテチィィィ!!」

 恐怖に震えるムラサキ仔だが、ここからでは何も知ることが出来ない。
 ただ、姿の見えない何かの存在に圧倒されるだけだ。
 
紫仔「テ、テェェェェン、テェェェェン!!! た、助けてテチィィィッ!!」


 その後も、音は断続的に響き続ける。
 その度に、ムラサキ仔は恐怖に支配される。
 もう、怖くて顔を上げられない。
 虐待を受けていた時とはまた違う恐ろしさに、ムラサキ仔は腹の中のものをすべて垂れ流し切って
いた。


 だが…やがて、ある事に気付いた。


 ——ジ…


紫仔「アレ? …これ…?」

 ——デ…デデ……

紫仔「話し声みたいに聞こえるテチ…」


 ムラサキ仔は、あらためて謎の音に耳を済ませてみる。
 まだかなり怖かったが、それよりも好奇心が先に立ち始めていた。


 ——デ…デ……

 “タスケ…”


 ——ジ…デ…

 “ここに……居”


 ——ジ…ガ……

 “聞こ……なら…”



紫仔「声テチ! 間違いないテチ!」

 空耳かもしれない。
 しかし、今のムラサキ仔には、その音が実装石の声に聞こえ、さらに助けを求めているように感じられた。
 ムラサキ仔の頭の中では、この部屋の中に、自分以外の誰かが甚振られて閉じ込められている様子
が描かれていた。
 何の根拠もない想像だったが、彼女にとってはいつのまにか間違いない現実の話にすり替わっていた。

紫仔「ど、どうすればいいテチ? どうすれば、助けてあげられるテチ?」

 ——デ…

 “ここに来て…”


紫仔「む、無理テチ! とてもここからは出られないテチ!」

 ——デ…


 声が、弱まっていく。
 ムラサキ仔は、それは相手が死に掛けている状態なのだと判断した。
 誰だろう? 
 あの黄色いリボンを着けた仔達だろうか? それとも親指ちゃん?
 どうしよう、助けなくちゃ! でも、どうやって?
 この壁を乗り越えたら、助けにいけるかな?
 一度人生を諦めた反動か、今のムラサキ仔は、奇妙な形の勇気に後押しされていた。

紫仔「テチッ!」

 ピョン!

 ムラサキ仔は、ジャンプして壁の上面に手がかかるか試してみた。
 意外に巧く掴む事が出来た。
 といっても、15センチの身長に対して15センチ前後の高さなのだから、軽くジャンプすれば手が届く
のは当然なのだが。

紫仔「うまくいったテチ! ひょっとしたら、脱出できるかもしれないテチ!」


 ムラサキ仔は、なんとか流しの壁の上によじ登る事ができた。
 だが乗り越えた先は、自分の身長の何倍もの高さの断崖絶壁。
 これは、完全に想定外だった。
 ムラサキ仔は、自分がこんな高い所に上げられている事に、まったく気付いていなかったのだ。

紫仔「テヒ……!! ——キュウ」

 にじあきによって極度の高所恐怖症にされたムラサキ仔は、遥か彼方にある床を見た瞬間、気を
失ってしまう。
 身体のバランスが崩れ、ムラサキ仔は、前のめりに倒れて落下した。
 奇妙な形の勇気は、部分的にしか作動しなかったようだ。

 フラ…ぽてっ


 ぼんっ

 ぼむっ

 ぼんっ

 ぽんっ


 ぺちっ!


「テチャッ?!!?」


 ちょっとした奇跡が起こった。

 ムラサキ仔は、生きたまま床の上に降りていた。
 気絶したせいで身体から余計な力が抜けて自然体落下出来た事と、流しの前に置かれた段々の
踏み台が若干弾力性を持っている材質だった事、そして段差を順番に転がったため、一回辺りの落下
衝撃を低減させながら移動出来た事が幸いしたらしい。
 人間の赤子が十数階建ての建物から落とされて生きていたという記録も実際にあるが、あれと似た様
な理屈だ。
 とはいえさすがに無傷とはいかず、後頭部をしこたまぶつけた上に所々に擦り傷を負い、さらに右耳が
潰れた。
 普通なら、間違いなく全身が潰れて緑と赤の染みになっていた所だから、この程度の負傷なら無問題
の範疇だろう。
 
「イ、イタイテチ…でも、脱出出来たテチ……」

 ムラサキ仔は、必死で身体を引き摺って移動する。


 ———ジ

 また、あの声が聞こえる。
 しかし、ムラサキ仔の視界の中には、他の子供と思われる姿はどこにもない。
 では、あの声はどこから? と思っていると…


 ——ジャ…

 “ここ…”


 声が、誘導している。
 ムラサキ仔には、はっきりわかった。
 その声は、押入の中から聞こえていた。

紫仔「あ、あんな所に居るテチ? とても辿り着けないテチ!」

 思わず腰砕けになる。
 しかし、よく見ると押入の前に、何かが積まれている。
 複数の台のようだ。
 それぞれの台の側面には、小さな段差が付けられている。
 これなら、自分でもなんとか上る事が出来るかもしれない。
 ムラサキ仔はそう思った。
 実際、この台座は実装石の玩具用として発売されているもので、成体実装だけでなく仔実装や親指
でも上る事ができるように作られている。
 台からさらに上の台に移るのは多少コツが居るが、決して難しいものではない。
 やおあきが、「仔実装だけでも押入に上れるように」と選んできたものだ。
 

 勇気と体力を振り絞り、ムラサキ仔は、なんとか積み重ねられた台の最頂部に辿り着いた。
 振り返ったら、きっとまた気絶してしまう。
 それが判っているため、絶対に後ろを見ないようにして頑張った。
 押入は、以前アカ組達が入り込んだ時のままになっており、大きく開け放たれている。
 ここが開いていたから、あの声が聞こえたのかもしれない。
 ムラサキ仔は、台から押入の中に飛び込む、そのまま奥の方を凝視する。
 真っ暗な空間…何も見えない。
 しかし、明らかにそこには、何かが居た。


?「ジ……デ……」

紫仔「き、来たテチ! 誰か居るテチ?」

?「ジ…」

紫仔「まっくらでわからないテチ。どうすればいいテチ?」

?「ジャ……」
 ——水を……


 掠れるような声は、そう呟いた。
 ムラサキ仔は、慌てて周囲を手探りで探したが、まったく判別が利かない。
 そもそも、声の主自体どこに居るのかはっきりわからないのだ。

紫仔「どこに居るテチ? お顔を見せて欲しいテチ!」

?「ギ…」
 ——ここに

紫仔「どこテチ?」

?「ギャ…」
 ——奥

紫仔「奥テチ? 今行くテチ!」

 勇んで駆け出したのはいいが、突然見えない壁にぶち当たり、コロンと転がってしまう。

紫仔「テチャッ! い、痛いテチィ! 何かあるテチ!」

 ムラサキ仔がぶつかったのは、アカ組が隠した菓子入りの段ボールだった。
 ぎっしりと食べ物が詰め込まれた箱。
 箱の高さは20センチ。
 とてもムラサキ仔には上れない。
 だが…

紫仔「テチ! ここが狭くなってるテチ!」

 箱の壁を迂回するつもりで移動すると、押入の壁と段ボールの隙間が開いている事に気付いた。
 これなら、隙間に潜り込んで身体を壁で支えながら上る事が出来る!
 もはや空腹も疲れも忘れ、隙間へと潜り込む。
 やがて、箱の中から微かに美味しそうな臭いが漂ってきた。

紫仔「よく見えないけど、何かあるテチ。おいしいものがありそうテチ♪」

 一分もしないうちに、ムラサキ仔は段ボールの上に辿り着いた。
 蓋は少しだけ開かれており、ムラサキ仔なら中に潜り込む事が出来る。
 それを悟った瞬間、ムラサキ仔の頭の中からは、あの声の主を助けるという使命感が一時的に消失
した。

紫仔「甘い物があるテチ! すごいテチ!」

 箱をしまう時、恐らくアカ仔かミドリ仔のどちらかがこっそりつまみ食いをしたのだろう。
 ムラサキ仔が飛び込んだ場所のすぐ傍には、甘い香りを漂わせるものがあった。
 口の開いたチョコフレーク。
 ムラサキ仔は、迷わずそこに飛び込んだ。

紫仔「甘いテチ♪ ウマウマテチ♪ こんな所においしいものがあったテチ♪ 後でママと親指ちゃんにも
 分けてあげるテチ♪」

 カリカリ、パリポリ、ボリボリ
 
 生まれてこのかた、一度も味わった事のない甘みに、舌鼓を打つ。
 しかも、今なら誰の邪魔も入らずに食べ放題。
 これまでずっと食べ物にありつけなかったムラサキ仔は、ここぞとばかりに食べまくった。

 だが…



?「デジ……ャ…」
 ——ワタシにも…

 
紫仔「テチッ! わ、忘れてたテチ!」

 謎の声に、本来の使命を思い出した。
 箱の中を漁り、何か水分になるようなものはないか調べるが、ムラサキ仔の体格ではお菓子の山は
掘り返せない。
 やがて、ぶよぶよしたものにぶつかる。

紫仔「これは何テチ? なんだかたぷんたぷんしてるテチ」

 ムラサキ仔が見つけたのは、懐かしの駄菓子・チューブ入りのジュースだった。
 口の部分をかみ切って、チュウチュウと吸うアレだ。
 長い奴ではなく、10センチ程度の短いタイプのものだ。
 なんとなく先端部の端を軽く齧ってみると、中から甘い液が出てくる。
 これなら、なんとか使えるかもしれない。
 必死になって、チューブを引っ張り上げる。
 ムラサキ仔にとっては結構重いものだが、餌も食べられたので少しだけ踏ん張りが利く。
 ムラサキ仔は、全身の力を振り絞ってチューブを箱から取り出した。

紫仔「どうやって飲ませてあげればいいテチ?」

?「デジャ……デシャ…」
 ——かける…デ

紫仔「かけるテチ? これをテチ?」

?「デ…」
 ——そう…
 
紫仔「よくわからないけど、やってみるテチ!」

 ムラサキ仔はチューブの先端部分をさらに齧り、中身が出やすくすると、それを奥へ押し出した。
 口が下を向き、中身が零れる。
 みるみるうちに、チューブがしぼんでいく。
 
?「デ……」

 どうやら、新しいのをよこせと言っているらしい。
 ムラサキ仔は、もう一本新しいチューブを取り出して、同じように処理して押しつけてやる。
 またまた、チューブの中身がなくなっていく。

 ムラサキ仔は、結局箱の中のチューブがみつからなくなるまで、押入の奥にいる誰かに水分を与え
続けた。
 押入の中に、甘ったるい臭いが充満する。
 この時ムラサキ仔は、奥にいるのは自分の知る仔実装の誰かだろうと信じていた。
 だからこそ、自分の不幸な身上を重ね合わせて、なんとか助けてやりたいと思っていた。


 だが—— 


?「ゲブウゥゥゥ……」

紫仔「テ…テチ?!」

 奥からは、まったく聞き覚えのない実装石の声が聞こえてきた。

?「デズゥ…染みこんで行く…デズゥ…」

紫仔「テ、テチ?! テチ?! テチィッ?!」

 誰? ワタチの知らない声?

 予想もしてなかった事態に、ムラサキ仔は怯えて震え出す。
 だがそれを見越していたかのように、奥に居る何者かは、静かな声で話しかけてきた。


?「話は聞いたデズゥ…。力を貸してくれたら、ワタシが……助けてやるデズゥ…」

紫仔「本当に助けてくれるテチ? だったら、力を貸すテチ」

?「デズゥ…」

 己の非力さを自覚するあまり、つい、見ず知らずの存在に頼ってしまう。
 そんな選択が、後にこのアパートに多大な影響を及ぼす事になろうとは、この時のムラサキ仔には
知る由もなかった。
 

?「ワタシと一緒に……地獄へ堕ちようデズゥ…」





 ■■■



緑親指「スッキリしたレチー♪ でもノーパンレチー。エッチレチー♪」
緑姉「もう、あんな所でお漏らししちゃダメデスよっ!」
緑親指「わかってるレチー!」

 103号室の窓際にミドリ親指の洗濯済みパンツを干し、ミドリ姉は呆れた声を上げる。
 親指はレプププと含み笑いをしていたが、あまり深く追求せず、とにかく早く上に戻るべきだと考えた。
 親指をカゴに乗せ、階段をよじ登り始めたその瞬間——


 キイッ、バタン…バタン

「こんにちはーっ、○○市保健所から参りました……」


 外から、車の止まる音と…人間達の声が聞こえた。
 その言葉の中に「ホケンジョ」という単語を聞き取る。
 続けて、何人かの人間の足音と、話し声が聞こえてきた。

緑姉「デスっ?!」
緑親指「だ、誰か来たレチ!」
緑姉「ホケンジョって……た、た、大変デスっ!!」

 以前、仲の良かった公園の実装石に聞いた事がある。
 ニンゲンの世界にはホケンジョと呼ばれるものがあり、そこから来た者は問答無用で我々を皆殺しに
すると。
 とにかく、ホケンジョやクジョという言葉をニンゲンの口から聞いたら、今居る所から逃げ出すべきだと
教えられた。
 ミドリ姉は全力で縄ばしごをよじ登り、二階へ向かう。
 そして、洗面所の前で何やら話し合っているメンバーに駆け寄り、事態を説明した。
 全員の顔色が変わる。

黄親「保健所デス? 本当デスカ?」
緑姉「本当デス! ワタシ達の姿を見られたら、全員殺されるデス!」

「「「「「デ、デェェェェッッッ?!?!」」」」」

 皆は、それぞれの子供をカゴに乗せると、踵を返して二階奥へと移動を開始した。


黄親「どこへ逃げたらいいデス?」
紫親「ヒィィィ、ニンゲンイヤぁ、嫌デスぅっ!」
赤仔「ど、どこかの部屋の押入はどうデチ?」
黄仔「ニンゲンさんにとって、そんなの隠れたうちに入らないテチ。部屋の中をくまなく捜されたら、一発
 でおしまいテチ」
緑仔「じ、じゃあどうすればいいデチ?!」
緑親指「あの部屋に行けばいいレチ!」
緑姉「あの部屋?」
緑親指「あっちの部屋レチ!」

 ミドリ親指が指し示したのは、“開かずの間”…201号室。
 途端に、アカ親と仔、ミドリ仔の顔色が変わる。

黄親「それは無理デス。さっきも試したデスが、あそこは開かないデス」
緑仔「そ、そうデチよ〜〜♪ 無理な事は言っても仕方ないデチ〜♪」
赤仔「そ、そうデチ〜♪」

 懸命に話題を逸らそうとするが…

緑親指「アカママが鍵を持ってるから開けられるレチ!」

 ぴたっ。

 全員の足並が、止まる。
 青ざめるアカ親と仔、ミドリ仔と、「なんだとえ?」という顔で振り向くキイロ親達。
 ミドリ仔達の努力は、まったくの無駄に終わった。

黄親「今、なんと言ったデス? ミドリの親指ちゃん?」
緑親指「アカママはここの鍵を持ってるレチ。入った事もあるレチ!」
紫親「ほ、本当デスか?」
緑姉「ど、どうしてそれを今まで黙ってたデス?!」

 思わず語尾を荒げてしまうミドリ姉と、それに驚き「レチュ〜…」と塞ぎこんでしまうミドリ親指。 全員の
視線が、アカ親に集中する。

赤親「デ、デデ…こ、これはつまり…」
黄親「早く出してくださいデス。今は一刻を争うデス」
赤親「で、でも、それは…デデデ」
紫親「早くしないとニンゲンがやってくるデス! ワタシ達はきっとみんな捕まって殺されてしまうデス!」
緑姉「言い訳は中で聞くデスから、早く!」

赤親「デ…」

 アカ親がどこからか錆びついた鍵を取り出し、キイロ親に渡す。
 アカ仔とミドリ仔の態度から、昨日の第二班は全員この事を知っていたらしい事を全員が理解する。
 ミドリ姉はジロリと妹達を睨みつけると、キイロ親に判断をゆだねた。

黄親「今、開けるデス」

 少し背伸びをして、キイロ親は鍵を穴に差し込む。
 やがてガチャッという音が響く。

黄親「開いたデス!」

赤親・赤仔・緑仔「「「突撃デッス〜〜!!!」」」

 突然、三匹が201号室のドアを開き中に突進した。
 一瞬呆気に取られたが、ミドリ姉達も慌てて中を覗く。
 アカ組達は、なぜか真っ先に流しの前に置かれている台に上り、しきりに中を覗き込んでいる。
 なんだか慌てているようだ。

緑姉「どうしましたデス?」

赤親・仔「「デデッ?! ……な、なんでもないデスゥ♪」」

緑仔「あいつ…なんでいないデチ!? どこへ行ったデチ?!」
黄蛆「レフレフ、ミドリちゃん、ここに誰か居たレフか?」
緑仔「デベッ?!?! い、いえ〜そんな事ないデチよ〜♪」
黄蛆「レフ?」

黄親「話は後デス! とにかく、早く入るデス!!」

 全員を急かし、201号室の中に入れさせる。 
 ドアを閉じ、間髪入れずに鍵も閉める。

 ふと、空気の流れを感じる。
 見ると、部屋の窓は開きっ放しになっていた。
 キイロ親はそれに気付くと、すぐに窓際に走って窓枠へよじ登り、カーテンの隙間から外の様子を窺った。
 カーテンが少し外にはみ出す。
 眼下では、若い男がこちらを見上げていた。
 向こうから、若い男とは違うお揃いの格好をした人間達が、三人ほどやってくる。
 三人は、若い男に挨拶すると、何やら色々と話を始めた。

 …自分の姿が見られた?
 だが、若い男はやって来た三人の方に注意が向くと、もうこちらには向き直りもしなかった。


緑姉「どうだったデス?」
黄親「保健所の駆除係で間違いないデス。前に見たのと同じ格好してるデス。ミドリちゃんの言ってた事
 は本当デス」

「「「デ、デデェェッッ!!」」」

黄親「今はここから出ない方がいいデスね。それより…」

 キイロ親は、部屋の中をきょろきょろ見回している。
 釣られてミドリ姉も見回すが、沢山の家具や不自然に置かれた台などが、とても奇妙な雰囲気を作り
出している。

 やがて、少しだけ外の様子が騒がしくなり始めた。







 ■■□



 俺は、やおあき。
 本当にまずい事になった。

 今回は、アパート内に自分の私物が沢山あり、駆除時の薬品散布による変質・劣化を避けたいという
要望を強引に押し込んだが…代わりに、俺がきちんと中に入って実装石達の存在を確認、状況によって
は駆除処理をしてその証拠を提示しなければならなくなった。
 これは、保健所の係員に対してではなく、むしろ母に対しての意味が強い。
 もしこのアパートが野良実装の巣窟になっていると判断されたら、周辺住民から強い反発も受けて
しまうし、何より今度こそ保健所が黙ってはいない。
 そうなっては、もう実験なんてやっていられない。
 まったく、前回の実験でもこんな展開にはならなかったのに…俺はなんて運がないんだ。

 とにかく、今はあいつらがどこかに身を隠してくれている事に期待するしかない。

 さっき、201号室の窓を見た。
 カーテンが窓からはみ出していたという事は、中から風が吹いていた事になるが、あの揺れ方は違う。
 恐らく、カーテンの向こうから誰かがこちらを見ていたのだろう。
 ならば、今201号室には実装石達の一部或いは全部が退避している可能性が高い。

 俺は、裏口からアパート内に侵入すると足早に一階の各部屋を確認していく。
 意外なほど、実装石臭が漂っていない。
 予想通り、一階には何もおらず、部屋の中も結構綺麗な状態だ。

 次は、二階だ。
 頼むから、そのまま隠れていてくれよ。

 ギシギシ音を立てて階段を上り、二階へ辿り着く。
 同様の理屈でさらりと様子を確認していく。
 一部散らかったりドアが開きっ放しになっていたり、妙な異臭を感じる所はあったが、実装石の姿は
まるで見られない。
 この様子なら、いくらでもごまかせそうだ。
 結局、201号室を除くすべての部屋内に、あいつらの姿はなかった。
 どうやら予想は当たったようだ。

 さて。
 最後に俺は、201号室を開けなければならない。
 手の中には、保管しておいた合鍵がある。
 201号室の窓が開いているのを保健所の連中に見られているから、一回は入って何かしらの処置を
しなければならないのだ。

 俺は、わざと足音を大きく鳴らしながら201号室に近付き、ドアの前で声を出した。

「おかしいな、どこにも実装石なんかいないじゃないかー」

「あとはこの部屋だけだなー。きっと、この中にもいないと思うけど」

「よーし、さっさと中を見て帰るとするかなっ」

 途端に、中でドタバタという騒音が聞こえる。
 おーおー、やっぱりここに全員集まっていたのか。
 ドアに耳を当てると、微かに「デスデス、テチテチ」という声が聞こえる。

 俺は、慌ただしい音が聞こえなくなるのをわざわざ待ってから鍵を開けた。

 カチャ…ギィィィィ…


 芳香剤の香りが飛び込んでくる。
 相変わらず、とても強い香りだ。これなら実装臭や多少の糞の匂いでもかき消すだろう。
 実装石達の姿は、ここにもない。
 というか…どう見ても、行き場は「あそこ」だが。
 押入の襖が、ごく僅かに開いている。
 それにわざと気付かないふりをして、窓から顔を出す。
 下の方で待機している保健所の皆さんに軽く手を振って、声をかけてみる。

「お騒がせしました、何もいないみたいです」

『本当に大丈夫でしたかー?』

「はい、隅々まで見ましたけど、問題ないです。置いてある物も無事でしたし」

『その窓が開いていたのは?』

「ええ、ここに私の大事な物が置いてあるので、通気用に元々少し開けておいたんです。立て付けが
 悪いせいか、何かの拍子に開き過ぎちゃったみたいです。でも異常はないですよ」

『そうですかあ、わかりました』

「今、降りていきます!」

 この会話は、押入内に潜んでいる実装石達にも聞こえた筈だ。
 賢いキイロ組辺りなら、意味を理解できるだろう。
 俺は、少しだけ隙間を残して窓を締めると、帰りがけに襖を軽くトンと指で突く。
 中で「テッ!」と短い悲鳴が聞こえた。

 流しの中を覗き込むが、ムラサキ仔の姿はない。
 ニンゲンが来る可能性がある以上出しっ放しというわけにはいかないから、あいつらに回収されたのか
な?

「よぉし、この部屋異常なし!」

 わざと大きな声で言って、廊下へ出て鍵を掛け直す。
 母から無理矢理押し付けられた駆除用の実装コロリは、トイレにでも流していこう。

 ——これで、巧く皆をごまかせると思うが、さて…?





 □■■



 その後、もう一度保健所の係員に平謝りして、帰還していただく事にした。
 かろうじてだが、実験が中断される事にはならなかった。
 母はものすごく胡散臭い目で見ていたが、実装コロリを念の為ばら撒いて来たという言葉を一応信用
してくれたようだ。

 結局、201号室の窓にくっ付いていた実装石は、「単なる見間違え」という事で押し切る事にした。
 完全封鎖されているアパート内から、二階の窓を伝って実装石が行き来する筈がないという俺の言葉
は、それなりに説得力があったと思う。
 思わぬ時間を取られてしまったが、これでようやく、実験観察を再開できる。

 俺が色々後始末をして自室に戻ったのは、もう夕方に差し掛かる頃だった。


 カメラで、201号室の様子を確認する。

 どうやらあいつらは、押入の下の段に隠れていたようだ。
 ちょうど、ぞろぞろと出てくるところだった。

 念の為確認してみると、どうやらムラサキ仔だけが居ないようだ。
 おかしいな、てっきり一緒に居ると思ったんだが。


黄親「ふー、危なかったデス」
緑姉「見つからなかったというより、見逃してもらったみたいだったデスが」
紫仔「あの、うちの仔はどうなってしまったデス?」
黄親「そうデス! もう一度捜さないといけないデス!」
緑姉「早速捜すデス!」

 良識派の連中は、即座に行動に移ろうとする。
 だが、アカ組達は…

赤親「どこに行ったデス? ムラサキのガキは?」
赤仔「あそこから出られるはずがないデチ! ネズミに捕まったデチ?」
緑仔「でも、血が流れてなかったデチ。まるで忽然と消えたみたいデチ!」
緑親指「いったいどこへ行ったレチー?」
赤親「仕方ないデス、奴等にバレないようにこっそり捜し…」

黄親「アカさん、聞きたい事があったのを思い出したデス」

 突然、キイロ親が割り込んでくる。
 四匹の顔がものすごく引きつっていて、こちらも思わず笑ってしまいそうになる。
 ああ、そうか。
 そういえばこいつらがどうして201号室に入ったか、その辺の事情見てなかったからな。
 何か色々揉めたのかもしれない。

黄親「どうしてここの鍵を持っていたのか、まだ説明してもらってないデス」
赤親「デ…デデ…」
緑姉「昨日調べていて見つけてたデスね! どうして秘密にしていたデス?」
赤仔「そ、それは…デチ」
紫仔「うちの仔は見てないデスか? 本当に知らないデスか?」
紫親指「オネーチャンどこレチ?!」
緑仔「デ…デシャ…」
黄仔「どうやら、いろいろと隠しているみたいテチね」
黄蛆「じっくり聞き出してみる必要がありそうレフー」
緑親指「レ、レチャ……レェェェ…」

 おお、年貢の納め時が来たかな?


 その後、アカ組達四匹は徹底的な追求を受けて、202号室の流しの中で鍵を見つけた事と、
“堕落の間”の押入から新しい菓子箱を手に入れた事を白状した。
 しかし、ムラサキ仔についてだけは、とうとう最後まで隠し続けた。
 さすがに、さらって虐待を加えたなんて言えないだろうからな、これは当然だろう。
 アカ組達は他家族から散々叱られたが、恐らく本人達はまったく反省してないだろうなあ。

 その後、隠した菓子箱を取り出そうかという案が出たが…

緑姉「待ってくださいデス。あの箱は、そのままにしておくべきだと思うデス」

「「「「「デデ?」」」」」

緑姉「だって、前はあのお菓子のせいでみんな酷い目に遭わされたデス。これは、またご飯がなくなった
 時までとっておいた方がいいと思うデス」

 妹達が堕落する瞬間を目の当たりにしたミドリ姉、熱弁を振るう。
 その意見に、キイロ組やムラサキ親は納得しつつあるようだ。

紫親指「ワタチお菓子食べたいレチー」
紫親「我慢するデス。お菓子はたまに食べるからおいしいデス」
紫親指「レェェェ…」
黄仔「押入の中、妙に甘い匂いがすると思ったら、そういう事だったテチね」
黄親「わかりましたデス。では、今はそこに置いておくという事で…」
緑姉「そうしましょうデス。それより、早くムラサキちゃんを捜しましょうデス」

赤親「ゲゲ…かえってまずい事になってしまったかもデス」

 ミドリ姉の提案に従い、実装石達は201号室を出て捜索を開始する事になったようだ。
 アカ組達は菓子箱の入った押入に未練たらたらだが、キイロ親の「だぎゃ」発言に脅されて、渋々
従う事にしたようだ。

 それにしても、ムラサキ仔は本当にどこに行ったのだろう?
 本当にネズミか何かにさらわれたのだろうか?


赤親「もし、ワタシ達がムラサキのガキを見つけたら…」
赤仔「見つけたら?」
赤親「食い殺すデス。絶対に奴等に見つかったらいけないデス。ワタシ達がした事がバレたらキイロの奴
 は怒って、きっとみんな犯し殺してしまうに違いないデス」
緑仔「デ、デデェッ!」
緑親指「ワタチもきっと食われちゃうレチー!!」
赤親「いいデスか? 絶対奴等より先に見つけて消すデス! 命がけでやるデス」

「「「わ、わかったデチ!」」」

 キイロ達の後に続くアカ組達が、何やら物騒な話をしている。
 という事は、あいつらが機転を利かせて別な場所に隠したわけじゃないのか…

 俺は、モニターをどんどん切り替えてムラサキ仔の行方を捜した。
 しかし、俺にすら見つける事は出来なかった。

 だがこの時、俺は201号室の押入の中を確認する事をつい忘れていた。
 201号室にはもういないし、ここまで一匹で辿り着ける筈がないという先入観があったせいらしい。

 それにしても…201号室の押入かあ。
 もしあいつらが、上の段に逃げていたら、今頃どうなっていたかな?





 ■■■



 バリボリ、バリボリ

「おいしいテチュー♪ いくらでも食べ放題テチュー!」

 ぐびぐび、ぐびぐび

「ゲフウ、あいつらもいなくなって、やっとまともに動けるようになったデスゥ」

 ぱくぱく、ぱくぱく

「でも、どうしてみんなの所に出ていっちゃダメだったテチ? ママの声が聞こえたテチよ?」

 グビグビ、グビグビ

「ゲフう。…それはすぐにわかるデスゥ。お前には感謝しているデスゥ。命を救われたデスゥ」

「どうして、こんなところに居るテチ?」

 グビグビ

「ワタシは、悪いニンゲンに捕まったデスゥ。それで、ずっとここに閉じ込められていたデスゥ」
「テチ…ギャクタイされていたテチ? ワタチと同じテチ?」

「お前もニンゲンに虐待されていたデスゥ? ならワタシと仲間デスゥ」

「テチ! 仲間、お友達テチ!」

「お前をここから助け出してやるデスゥ。これからは、ワタシの傍に居るデスゥ」

「うん、わかったテチ! じゃあ、もっと一杯お菓子食べて元気つけてテチ」

「ゲフフ…お前もたんと食えデスゥ。ジュースも飲ませてやるデスゥ」

「ありがとーテチー♪」


「頼りにならないお前の母親なんか忘れるデスゥ。今から、ワタシがお前の新しいママなって守ってやる
 デスゥ」




 
 ■■■



 そろそろ寝ようかと思った頃。
 俺は、念の為アパートのすべての様子を順に確認していた。
 いつもの確認作業みたいなものだが、ふと見ると、201号室の前に何者かがやって来た。

 アカ組とミドリ仔・親指の悪玉カルテットだ。


赤親「このままだと、お菓子はまたあいつらに取られてしまうデス」
赤仔「だから少しでもワタシ達の分を確保しておくデチ!」
緑仔「大丈夫、ムラサキ達はぐっすり眠ってるデチ!」
緑親指「早く開けるレチ!」


 ——懲りない連中だな、ホント。

 俺は、半ば呆れて四匹の動向を見守った。
 201号室の鍵はキイロ親が引き取ったようだが、結局皆の要望もあり、普段は鍵をかけない事になったようだ。
 日中のような緊急退避の時以外、使用しないという事だろうか?
 アカ組達は、そこにかこつけてお菓子のさらなる強奪に参上したわけか。

 こっそり室内に侵入し、押入の傍までやって来る。
 そして、襖を開けると上の段に上がり、侵入する。
 しばらく中でごそごそやっていたが…


赤仔「お菓子がないデチ!」
緑仔「食い荒らされてるデチ?!」
緑親指「いつの間にレチ?」
赤親「誰がここに入り込んだデス?」

 え? どういう事だ?

 俺は201号室の押入にモニターを切り替える。
 ここに使われているのは、公園観察の際に使用されていた暗視機能付きの赤外線カメラだ。
 モニターには、四匹の実装石達と開けられた段ボール、そしてその中に散らばっている開封済みの
菓子箱や袋が映っている。
 どうやら、ペットボトル飲料や駄菓子のチューブまで全部空になっているみたいだ。
 さすがに、まだいくつか手付かずのものは残っていたが、ぱっと見た限り七割以上は食べられている
ように見える。

 そして俺は、押入のさらに奥を見る。

 ——ない!

 そこにあるべき筈のものが、ない!

 俺がこの中に隠しておいた、実験の最終イベントアイテム? が!

 …あいつ、どうやってここから脱出出来たんだ?
 それ以前に、どうやって復活できたんだ?

 これは、眠るどころではない。
 今夜は徹夜しなきゃならん。
 俺は、完全に想定外の出来事発生に、激しく心が躍る。
 気がつくと、夜中にも関わらずにじあきの携帯に電話をかけていた。





 ■□□



『…なんだあ、こんな夜中に?』
「にじあき、俺達の実験がそろそろ完結するかもしれん」
『え、なんだって? そりゃ随分早いな。いったいどうした?』
「詳しい事はこれから調べるけど、とにかく俺の予想を覆す出来事が発生した。最終イベントが発動した
 みたいなんだ」
『な、何っ?! …やおあき、今からそっち行ってもいいか?』
「もちろんだ! 今夜はここに泊まれ! これ見逃したら絶対後悔するぞ!!」
『よっしゃ、じゃあ悪いけど頼むわ。すぐ行く!』

 にじあき、今夜はお菓子なんか買って来るヒマはないかもしれんぞ?
 俺は、にじあき到着まで監視を続ける事にする。
 そして、押入の奥に居た筈の「者」の行方を、懸命に探し回った。




 □□■



 やがて、泣きそうな顔でアカ組達が降りてきた。
 
赤親「納得がいかないデス! さてはあいつら、あんな綺麗事言ってて自分達で食べたデスね!」
赤仔「油断もへったくれもないデチ!」
緑仔「でもおかしいデチ。どうしてあんな暗い所で食べたデチ? 下にジュースを溢すくらいなら、ここまで
 降ろしてから食べればいいのにデチ」
緑親指「本当レチ。なんだか、あいつらとは別な奴が食べちゃったみたいに見えたレチ」


?「その通りテチよ!」


 え?
 201号室内に、突然、五匹目の声が響いた。
 これは…

赤親「だ、誰デス! どこに居るデス?!」
緑仔「その声は…まさか、ムラサキ?」
赤仔「デベッ?! ど、どこに隠れていたデチ?!」


紫仔「ここテチ♪」


 ムラサキ仔は、本棚の最上段の中に隠れていたようだ。 
 本棚には、仔実装クラスの体格の者が使える縄ばしごが下がっているが、まさかこれを伝って上った
のだろうか。
 ——高所恐怖症はどうなったんだよ?!

 それにしても、いったいどうやって流しからこんな場所まで移動を?

赤親「やっと見つけたデス。今までどこに居たデス?」

紫仔「ずっとこの部屋に居たテチ。ずっとみんなの事見てたテチ」

赤仔「嘘つくなデチ!」
緑仔「どーでもいいデチ! お前はとっとと殺して、証拠隠滅するデチ!」
緑親指「そうレチー! 覚悟しやがれレチー」

紫仔「覚悟するのは、お前達の方テチっ!」

 おや、なんか妙に挑発的だなこいつ。
 高い所にいるから、自分が安全だと思って見下しているんだな、きっと。
 まあ、実装石にはよくある無根拠な自信って奴で……


 ザアッ!


 ブンッ!!

緑親指「レ……?」


 突然、モニター内からミドリ親指が消えた。
 何かが横切ったと思った瞬間、消滅したのだ。
 それ以来、俺はミドリ親指の姿を見る事はなかった。

 って、えっ?


赤親「デ…?」
緑仔「親指チャン? どうしたデ……」

 ブン!


 ぶちっ、ゴロゴロ……

 何かが、室内を転がっていく。
 画面には、事態を把握出来ていないアカ親とアカ仔、そして、首のなくなったミドリ仔が佇んでいる。

赤親「デ…デ?! デデデェェッッ?!?!」
赤仔「み、ミドリチャァァァン!?!」


 がぶっ、がり…がり…がり…

 ゲフフフ……久しぶりの子供は、おいしいデスゥ……


赤親「なん…なんデス?! こいつ、こいつ何デス?!」

 ぶりぶりぶり

赤仔「ば、バケモノ?! ミドリちゃん達…まさか?!」

 ブリブリブハッ

紫仔「アハハハハ♪ ワタチをギャクタイした報いテチ! みんな殺してやるテチ!」

赤親・仔「「 デ、デェェェェッッ?!?! 」」


?「グフフフ…お前達もみんな食ってやるデスぅ」


 なんてこったい。
 あいつ、やっぱり復活しちまったのか。
 しかも、ムラサキ仔が復活させたのか?
 よくまあ、あんな状況でそんな事できたなあ、かなり見直したぞ。
 つか、それ以前にどうやったんだよっ!!


 アカ組達を狙う謎の存在。
 こいつは、201号室の先住者だ。
 そして、この実験の締めとして用意されていた、最大最強のイベント材料。



 —— 前 実 験 の 最 後 の 生 き 残 り 実 装 石


 俺はやおあき、虐待派だ。
 今まで色々と実装石達に特典を与えてきたが、こういう仕掛けを最後に持ってくるのも、俺の性質だ。

 こいつは身長約80センチ、体重も普通の成体実装よりも重い。
 それでいて、結構瞬発力もある。
 獣装石ほどではないが、なかなかの強敵だ。
 予定よりかなり早いエントリーとなったが、実装石達が目覚めさせてしまったのなら、仕方ない。

 まずは。
 アカ組はこいつから逃れて、他の連中に緊急事態を伝えなければならないという使命が課せられた。
 もし、ここでこいつらが全滅してしまったら、ほぼ確実にアパート内全滅の引き金が引かれるだろう。

 俺は、いつしか眠気すら振り払い、画面に見入っていた。
 にじあき…早く来い、メインイベントはもう始まっているぞ!



紫仔「ワタチの新しいママ、そいつらをヌッコロしちゃってテチ!」

赤親・仔「で、デヒィィッッ!」

「グフフフ、じっくりいたぶってやるデスゥ」


 アカ組はじりじりと後退し、木のテーブルに背をぶつける。
 そして、テーブルの上に逃げ場所を求めた。
 テーブルの中央まで行けば、確かに実装石の攻撃は届かなくなる。
 だが同時に、二度とそこから脱出できなくなる事でもある。

 まんまと、俺が用意したトラップにかかってしまった。
 この部屋の家具、道具、窓などは、このために俺が準備を整えたのだ。
 そうやって高い所に逃げ場を求めても、それは一時的なものでしかないんだよぉ。
 もちろん、テーブルの上だけじゃないけど。
 この室内で逃げるなら、それなりに考えないといけないんだよ。
 アカ組の賢さも、限界が見えてきたかな?


赤親「テ、テヒィ!」

 アカ親が、テーブルの上のアルミ灰皿を取り、シールドのように構えている。
 そして実装石は、それをじわじわと脅かすように、ゆっくりテーブルの周囲を歩き回る。
 アカ組のパンコンの跡が、すごい事になっている。
 本棚のムラサキ仔は、もうノリノリだ。
 本当なら下を見下ろすのも恐い筈なのに、もうすっかりそんな事を忘れてしまっている。
 こいつも、結構テキトーな性格なんだなあ。


「さて…デス…」

赤親・仔「「デ、デシャアァァッッ!!! く、来るな、来るなデスゥゥッッ!!!」」

 実装石が、ついにテーブルの上に乗ってきた。
 こいつ、いつでも乗れる事がわかってて、いままで焦らしてたんだな。
 まったく、一年前から全然変わっていない性格の悪さだ。
 さすがは、最強の糞蟲!


 この瞬間、アカ組の命運は決まった。——って言い切っていいのかなぁ?


 と、ちょうどにじあきが到着したようで、携帯で呼び出しがあった。
 妙に早いが、あいつ…相当無理して飛ばしてきたな!



 アパートに賢い実装石家族を住まわせる実験。
 ファイナルカウントダウンは、始まった。

 これっていわゆる、ラストバトルって奴なのかな? うひっ。



 (続く)


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 ■ 現在の状況 □

 
●アカ組:親×1、仔×1

●キイロ組:親×1、仔×1、蛆×1

●ミドリ組:仔×1

●ムラサキ組:親×1、仔×1、親指×1


 残っている実装石:9匹


 これまでの犠牲者:23匹

・モモ仔1、2、蛆 …エレベーター実験の犠牲になり死亡
・アカ仔2 …206号室で、ゴキブリに襲われて死亡
・アオ親指2 …206号室でアオ仔4に首を落とされて死亡(事故)
・アオ仔2、4 …206号室でネズミに襲われて死亡
・アオ親指1 …アオ親に壁に叩きつけられて死亡(事故)
・アオ仔1、3 …激昂したアオ親に踏み潰されて死亡(事故)
・アオ親 …子供全滅のショックで、偽石崩壊
・モモ新仔1、2、3 …出生直後、キイロ親2に間引かれる
・モモ親 …子供をほとんど失い、ショックで自壊&偽石崩壊
・糞蟲仔1、2 …トイレ拷問中、糞蟲親に偽石を破壊され死亡
・糞蟲仔3 …糞蟲親に蹴飛ばされて死亡
・糞蟲親 …キイロ親2の必殺技を受けて自壊・死亡
・キイロ親1 …糞蟲親によるダメージと精神的ショックのダブルパンチで自壊・死亡
・モモ親指 …ミドリ姉に抱き締められて圧死
・ミドリ親指 …201号室の実装石に捕食されて死亡
・ミドリ仔 …同じく、201号室の実装石に断頭され死亡


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 ご指摘を受けたため、ごく一部「致命的なミス」の修正を行いました。
 といっても5文字程度削除しただけですが…

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