タイトル:【観察】 遭遇
ファイル:捨て実装とカラス・前編.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:6418 レス数:0
初投稿日時:2006/11/04-19:46:28修正日時:2006/11/04-19:46:28
←戻る↓レスへ飛ぶ

私は生物大好きアウトドア派「」。
休みの日に近所の山に作られた自然公園に行ってみたところ、
入り口の駐車場兼広場に3匹の実装石がいた。実物を見るのはこれが初めてだ。

先週きたときはいなかったから、どこからかやってきたか、捨てられたのであろう。
この自然公園には、よく猫や、飼いきれなくなったペットなどが捨てられるのだ。

私が住むのは大都市に隣接したベッドタウン。
首都圏で実装石が大量発生し、住民が困ったというニュースを聞いたのが先月。
とうとうここにもやってきたのだろうか?

頭巾と服に何か黒いものがある。
単なる汚れではなく文字のようだが、遠いためよくわからない。
私は実装石に見つからないようぐるっと回って移動し、
やつらを見下ろせる大きな岩の陰から観察することにした。距離約8m。

3匹とも子連れであり、カルガモよろしく仔実装たちをひき連れては、
散策に来ている人たちの前で媚を売り、えさをねだっていた。
親は身長40cm、子供は15cmくらいか。

何人かは悪名高いやつらの本性を知っているのか、無視するか追い払うかしていたが、
小さい子供や老人たちはお菓子を与えている。

親切な連中が去ったあとで、デププププと笑う実装石2匹。
一匹は安心した顔でほっと一息ついている。
仔実装たちもテッチューテッッチューと甲高い声をあげて喜んでいる。

(うまくいったデスゥ。ニンゲンなんてちょろいデスゥ)

(今朝起きてみたらまったく見ず知らずのところに来ていて不安デしたが、
餌がもらえてよかったデス)

(良かったテス。良かったテチ。良かったテチュ)

野生動物への餌付けは、動物にも人間にも、正直あまりいい結果を残さない。
私は嘆息したが、ふと、視界に入ったものを見て、実装のこれからの運命に思いを馳せた。


それは桜の木にとまるハシブトガラスたちだった。
しきりにくちばしを枝にこすり付けている。これは苛ついている証拠だ。
どうやら、我が物顔で縄張りに入ってきたうるさい生き物が気に入らないらしい。

この公園最強の生き物はカラスである。

飛行能力、知能、数、結束力。
個体としても、種としても、ここに住むほかの生き物たち、
野良猫や蛇、狸、鼬などを大きく引き離している。

戦闘能力や器用さも群を抜いている。くちばしの一撃は、ハンマーであり、
ラジオペンチであり、ナイフであり、ピンセットでもある。
石膏ボードに大穴を開け内部の保温材を強奪し、
チキンの骨を砕いては骨髄のみを器用につまむことができる。


実装石たちはそんなカラスの様子に気づくことなく、手に入れた菓子を木の下で広げて、
デスゥ!デスゥ!テチーテチーとお祭り騒ぎ。
サイズを考えるとかなり声が大きい生き物だ。
調子っぱずれの歌を歌うもの、それに合わせ・・・ず出鱈目に踊るもの。
あまりの無軌道ぶりに、先ほどえさをあげた人々も眉をひそめる。


カーア!カーア!カーア!鋭い叫びとともに、黒い風が実装たちに襲い掛かった。
実装の手に持った菓子を瞬時に奪い取り、木の上で飲み込んでいく。

デッデッデッデデデ?と小首をかしげる実装石。
数秒後、実装たちはようやく餌がなくなったのに気づいたが、
何で無くなったのかはさっぱりわからないようだ。
そのうち2匹が地面に身を投げ出し、じたばたと暴れ始めた。

それをみた数匹の仔実装たちはテププと笑うが、1匹の親実装に気づかれ、お菓子を奪われてしまう。

「デッデン!デンデスデス!」(親を笑うなんて悪い仔デス。罰としてママがもらうデスゥ)

「テッテッ!テッテチュウ?」(ひどいテス!返せテチ!)

仔実装たちは親に組み付くも、体格の差は歴然で簡単に払いのけられてしまう。
地面にたたきつけられ、悔しさのあまりか涙、鼻水を流し、糞をもらしてじたばたと暴れ始めた。

「テエエェ〜!テーエゥテエエェ〜!」
(ワタチのお菓子返せテスゥ!それでも親テスゥ?!)

「デッデデーン♪デッデデーンデスゥ♪・・」
(お菓子うまいデスゥ♪親のために仔はあるんデスゥ♪あまりうるさいとお前も喰っちまうデス)

バサバサバサ! デギャッ!!?

再びカラスたちの襲来。

また餌がなくなって騒ぐ実装たち。いい加減気づけと思うが、
体の構造上、上方向は死角となるため、首を左右に振って見回すばかりだ。
こいつらは短い首と、上に乗っている大きな頭のせいで首の上下への可動範囲が非常に狭い。
無理やりに上を見ようとするなら、でかい頭のせいでバランスを崩して後ろに倒れ、
後頭部を地面に激突させることは必至である。


お菓子がなくなったことで、地面にへたり込み泣き始めるもの。
先ほど同様、再び地面に身を投げ出し、じたばたと暴れ始めるもの。
デェッ!デェッ!と声を上げながら、首ふり人形のように左右を見回すもの。
三者三様のブザマがそこにあった。

親の狼狽した様子をあざ笑う仔実装たち。
首振り親がいきなりキレて駆け寄り、1匹の仔実装をぶん殴った。
さらにストンピング。

「デエエッス!デデェッ!デン!デェエ!」
(お前がお菓子盗んだデス!許さないデス!殺して喰ってやるデス!)

「テッテスエェ〜!テーエゥステッテエエェ〜!」
(違うテス!誤解テスゥ!許しテスゥ!)

見ていた一般客も顔を背け、さっさと歩き去ってしまう。


アホー!アホー!アホー!カーァ!
1羽のカラスがあざけるように声を上げる。まあ、実際そのとおりなのだろうが。
カラスはイルカやサルと並んで、他の生き物をからかって遊ぶ動物だ。

ようやくカラスに餌をとられたと気づいた実装たちが木の下に駆け寄ってデスデス騒ぎ出す。

(このクロドリ!お菓子を返せデスゥ!!)

木の幹を必死にペシペシ叩き、地団駄をぴょんぴょんとふみ、
20cmほど木に登ってはずずっとずり落ちる。

カラスたちは気にした様子も無く餌を飲み込む。それを見ていっそうヒートアップする実装石たち。
とうとうキツツキのごとく、頭を木に叩き込み始める者が出た。

必死の形相で涙と、擦り切れた体のあちこちから血を流す実装石の様子を見て、
カラスたちはガアッカッカッカ!と大笑いだ。

種類が違っても馬鹿にされていることには気づいたのだろう。
実装石は褒められるOR馬鹿にされる と言う行為には敏感だからな。

「デスウゥゥゥッ!デスウゥゥゥッ!デスウゥゥゥッ!」
(ブッ殺してやるデスウゥゥゥッ!返せデスゥゥゥゥ!!)

吼えること吼えること。
実装石以外ならば鬼気迫る姿であろうが、さっぱり怖くない。
むしろ滑稽だ。私からも笑いがこぼれる。

——————!——————

ふと、気配を感じ振り返る。
後方3m、ひときわ大きな木の枝の陰にそれはいた。
ネジくれたような、不気味に盛り上がったくちばしを持つ大柄なカラス。
この山のボスである。

山に来るたび、私はカラスたちを観察しているが、ボスの賢さは空恐ろしいほどだ。
とてつもなく慎重で、時に大胆。他のカラスたちとは身にまとう雰囲気からして違っている。
顔つきも、まるで中世絵画の猛禽のようにいかめしい。

ちなみに、この公園において、カラスと人間の関係は、まあ問題ないといえるレベルである。
ときに、雛を抱え気の立ったカラスが近づく人間に威嚇攻撃をしたり、
散歩中の飼い犬の毛を引っこ抜いたりするが、
人間側もいたずら小僧がエアガンで撃ったり、市が捕獲トラップをしかけたりするので
どっちもどっちであろう。

このボスは、人間に気を許すことなく、餌があっても地面には降りず寄ってない。
大概、自分のテリトリーである森の奥地に潜み、たまに飛翔と木立に止まる姿を見せるだけだ。

ただ私は、以前、巣立ちに失敗したボスの子供を偶然に保護したことがあり、
その縁で近距離での拝謁を許されている。

「やつらが気になる。いや、気に障るのか?」

視線がちらとこちらを向く。肯定の意味だ。
否定ならば視線はそのまま、私を見ようともしない。

周囲の木々を見れば、カラスたちがひっそりと集まってきていた。
ボスが一声あげれば、すぐさま動くだろう。

この入り口広場はカラスのテリトリーであり、下り坂になる道路に沿って
街の中央を一望できる見張り場所だ。
カラスが訪問客から餌をもらうことはめったに無いが、この場所は、
餌であるごみが出されたとき、敵であるカラス捕獲業者がきた時、
そのほか自分らに益をなす、あるいは害をなす存在を知るための大事な場所だ。

実装たちから菓子を奪ったのは、先遣隊による警告だった。
新入りがあまり、デカイ顔するなというわけだ。


実装たちに目を戻す。

どぺどぺどぺ

先遣隊がフンを爆撃。ピンポイントで実装たちの口に飛び込んでいった。

「デベギャベァァァ!!」

地面に倒れのた打ち回る実装たち。
フン交じりのつばをデビャデビャ吐き出し、激しくむせる。
仔のうち何匹かは親にあわてて駆け寄るが、あいも変わらず、親をあざ笑うものもいる。
ただ少しは学習したのか、親から離れた草の陰で笑っている。

アホー!アホー!アホー!カーァ!

先遣隊はそう鳴いて山の奥へと飛び去っていった。
ボスもまた、重々しい羽音を立てて飛んでいった。
周りにいたカラスたちもまた、一羽、あるいは数羽連れ立って、入り口広場から去っていった。
これから実装たちの処遇を決めるのであろうか。

不意に強い風が吹いた。空を見れば日が翳ってきている。
低気圧が近づいてきているのだ。
何か起きる前触れのような、そんな感じを受けた。


カラスがいなくなった今、何か持ってなかったかとバッグをあさると、
デジカメがあった。こないだ使って入れっぱなしにしていたらしい。
ズーム機能で実装たちを観察してみることにする。

頭巾と服の文字がはっきりと見える。
「みど」「どり」「みり」こいつらは飼い実装だったのか。

だんだん3匹の性格の違いもわかってきた。
「みど」と「どり」こいつらはよく言われる愚かな実装石。
「みり」は比較的マシな様だ。

記憶をよく思い出してみる。
お菓子を貰っとき、デププ笑いをしたのが「みど」と「どり」。
一息ついてたのが「みり」。

木の下で親子仲良くお菓子を食べていたのは「みり」。
歌を歌っていたのが「みど」おどっていたのが「どり」。

カラスに餌をとられたときの1回目、
「みど」と「どり」は地面に身を投げ出して暴れた。
その後、「みど」は仔実装から菓子を奪った。
2回目のときに、へたり込み泣き崩れたのが「みり」。
やつあたりで仔実装を喰おうとしたのが「どり」だった。

今、「みど」と「どり」およびその子供たちは、必死になって餌をもらおうと
そのあたりの人に媚びているが、効果は薄い。
というか、人が明らかに「汚いもの見た」と言う顔と態度で歩き去っていく。
たくさん貰おうと考えたのか知らないが、媚をレベルアップして、くねくねセクシーダンスと
パンツ見せのコンボにしているせいだろう。

「みり」はそこら辺に生えているクローバーの花を摘んでは、いじくりまわしている。
あ、口に入れた。クローバーには蜜が多い。私も子供のころ吸ったことがある。

「デッスゥウ♪」(甘いデスゥ♪)

「みり」は自分の子供たちを呼ぶと、クローバーを一緒に食べ始めた。
そして、残りの2匹にも声をかけるが・・・

「みり」:「デッスゥンデッスゥウ♪」
(この花甘いデスウ。一緒に食べるデス♪)

「どり」:「デーンデ。デデーンデッ!」
(そんな草食べ物じゃないデス!お前おかしいデス!)

「みど」:「デーデッス!デスデッデデ!」
(お菓子のほうがもっとおいしいデス!いらんデス!)

2匹の反応を見るに、どうやらにべも無く断られたようだ。

愚かな個体のほうが何でも食べるのかと思いきや、そうではないとは。
まあ、よく考えれば、いろいろ試行錯誤するのは知恵のあるものの行動だしな。

空はどんどん曇ってきて、人々は雨を心配して帰り支度を始めた。
私を除いて、広場近くから人影は消えた。


「デデッデス!デスデス!デデッス!」(ドウシテお菓子よこさないんデスゥゥ!!?)
「デデッデチ!デチデチ!デデッチ!」(ドウチテお菓子よこさないんデチィィ!!?)

「みど」と「どり」アンドその子供たちが地面に身を投げ出して暴れている。

「デーデデッデース」「♪〜テッチュー」「♪〜デッスーン♪」
(お腹いっぱーいデス♪いっぱーいテチ♪楽しいデスか?楽しいテチー♪)
一方、「みり」の家族は、クローバーを食べたおかげで満足そうだ。座った「みり」を中心に、
子供たちがじゃれ付いている。

他者に頼ったものと、自ら考え行動したものの差がそこにあった。

突如、「みど」と「どり」がデズゥッ!と語気荒く立ち上がると、「みり」のほうに詰め寄っていく。
尋常ならざるその様子に、「みり」は立ち上がり、背に子供たちを隠した。

「みど」&「どり」:「デーンデーデンデ!デンデーデーンデッス!デーデッデデッデデッス!」
(お前だけずるいデス!憎たらしい野郎めデスゥ!私たちにもあの草よこすデス!)

「みり」:「デーデデッデース。デーデスデッデース!デーデス!!」
(もう無いデス。断ったお前らが悪いデス!自分の子供でも食えデス!)

「みり」はそう叫んで、威嚇のためかファイティングポーズ(のようなもの)をとる。
「みど」と「どり」は、クローバーを食べて元気いっぱいな威嚇のしぐさに気おされたのか、
自分の背後にいる自分の子供たちに視線を移す。
おや、口の端からよだれが・・・・喰う気か。

獲物が手に入らなかったから、腹いせに子供を食べるとはチンパンジーみたいである。
たいていの哺乳類なら、同属と争ったりするのはできるだけ避けるし、ましてや、
共食い、仔食いをするのはよほど飢えたときか、例えば肉食獣のオスがメスに発情を促すために、
自分の血を引かない子供を殺すなどの、特別なケースを除いてはありえないのだが、
こいつらは人間並みに本能が薄まっているから性質が悪い。
そして理性のタガは緩みっぱなしだ。

・・・いや、むしろ人間並みに高等というべきであろうか?


「デーッースウ♪デッスーン〜デッスーン♪」
(子供たちぃ〜こっちに来るデスゥゥ〜ン♪いいものあげるデスゥゥ〜ン♪)
「みど」と「どり」はあからさまな猫なで声を出して子供たちを呼び始めた。
しかし、顔が歯をむき出してヨダレだらだらな食欲満載ではさすがに子供たちも寄ってこなかった。

ならば、実力行使とばかりに仔実装に駆け出す「みど」と「どり」
しかし、バサバサという音ともに奔り抜けた黒い風が親たちを跳ね飛ばした

デギャッ!

悲鳴を上げて倒れる「みど」と「どり」の目に映ったのは、広場をぐるりと囲むカラスたちの姿だった。


森の奥から無限にわいてくるかのようにカラスが一羽、また一羽と飛んできては
木の枝に止まっていく。
あたりの木々はたちまち黒に染め上げられた。

暗くなってきた空と合わせ、この世の終わりを思わせるファンタスティックな光景だ。
土の中から死体が這い出してきそうだ。

実装石の様子を見ると、「みり」はさすがに空気が変わったのを察したのか、子供を抱えつつ
じりじりと後ずさり始めた。

馬鹿2匹は、カラスたちに「デッズィィィィィー!デッズィィィィィー!」と
歯をむき出し、ぴょんぴょん跳ねながら抗議の声を上げている。
(また来やがったかデズィィィ!!邪魔するなデズィィィ!!)

カアアアア!!!!!

周りのカラスが一斉に鳴いた。人間である私にとってもかなりの音量だ。実装石たちは
なみだ目になり腰を抜かしている。
「みど」と「どり」の子供たちも硬直状態の後、
パンツを糞で膨らませつつ、親のところに戻ってきた。

そしてついに、灰色の空をバックに、悠々とボスが飛んでくる。

もっと観察を続けたかったが、どうやらここで終了のようだ。



■感想(またはスクの続き)を投稿する
名前:
コメント:
画像ファイル:
削除キー:スクの続きを追加
スパムチェック:スパム防止のため1891を入力してください
戻る