タイトル:【ロ】 サハクウセキ 10/12
ファイル:サハクウセキ10.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1789 レス数:0
初投稿日時:2006/11/04-03:45:47修正日時:2006/11/04-03:45:47
←戻る↓レスへ飛ぶ



( ペラッ……ペラッ…… )
( カタカタカタ…… )

陽が明るく照らす一室。
左の耳にオレンジのリボンを着けた実装石が本を読み耽り、2匹の仔実装が床にノートPCを置いてキーボードを叩いていた。
リボンの実装石がめくっている誌面を埋めるのは見渡す限りの英字。
僅か十数秒で視線は上から下へページを移動すると、次のページへ。
仔実装2匹は、モニター上に映し出された様々な図表を見ながらパラメータを入力し操作をおこなっている。
表示されるグラフを数秒見ると閉じて、次のグラフを表示させる。

部屋の中にはページをめくる音と、キーボードを叩く音だけが静かに鳴り響く。

すると遠くから慌しい足音が聞こえ、部屋の扉が開いた。

「 みんな、仕事デス! 」
「 早く支度するデス! 」

扉を開けて中に入ってきたのは2匹の実装石。
2匹は中に居た3匹に、これから出かけるよう促した。

「 はいデス…! 」

「 フンッ… 」
「 チッ… 」

読書していたリボンの実装石は返事をすると、ページの合間にしおりを挟ませて本を閉じた。
けれども仔実装の2匹は、入ってきた2匹の実装石を一瞥するだけで再びキーボードを叩き始める。

「 お前たち、聞こえなかったデスか? 」
「 時間が無いから急ぐデス! 」

だが、そんな実装石2匹の催促にもかかわらず、2匹の仔実装はノートPCから離れようとしない。
先ほどまでと同じくモニターを凝視しながら作業に没頭していた。

「 今、忙しいテチュ 」
「 面倒は嫌いテチュ 」

ノートPCから視線を外さず、冷ややかに応えた。
そんな2匹の仔実装に対し、2匹の実装石の顔に徐々に怒りの色が浮かび上がる。

「 この馬鹿娘、さっさと動くデス! 」
「 仕事と言ってるのが分からないデスか! 」

「 アタチ達が行く必要あるテチュ? 」
「 うるさいテチュねぇ…そんな仕事、ママ達だけで十分テチュ 」

尚もPCから全く動く気配の無い仔実装2匹。
そんな2匹に対して、親実装2匹の終わりなき応酬が続く。

「 み、みなさん……落ち着いてくださいデスゥ… 」

そしてリボンの実装石が、その4匹を交互に見てオロオロと狼狽する。
4匹それぞれを宥めようとするが、事態は何一つ進展しない。
声を震わせながら宥めていると、更に1匹の実装石が入ってきた。

「 …みんな、何をやってるデス 」

入ってきたのは白髪の実装石だった。

「 早く出かける用意をするデス
  今日はお前達にも手伝って貰うデスから……これは社長サンからのお願いデスよ 」

その白髪の実装石も催促をすると、2匹の仔実装は小さな口から溜め息を零した。
渋々モニターから視線を外し、白髪の実装石の方へ振り返る。

「 先生の命令なら仕方ないテチュね 」
「 社長サンのお願いなら聞いてあげるテチュか… 」

PCの前に座っていた仔実装2匹は立ち上がると大きく背伸びをし、のんびりと欠伸をした。
急かされてるとは言っても2匹に切迫感は全く感じられない。

「 それで世界恐慌でも起こすテチュ? 」
「 どこかの国で内戦でも誘発するテチュ? 」

それでもやはり作業を中断されたのが気に食わなかったのか、嫌味を混じらせる。
長時間モニターと向き合っていて目が疲れたのか、仔実装達は目を擦っていた。

「 そんな事は頼まないデス…
  これから2時間、150人のニンゲン達を足止めするのがオマエ達の仕事デス 」

「 その程度でアタチ達の出番テチュか 」
「 150匹の猿の相手テチュね 」

そしてリボンの実装石が、腰を低くして白髪の実装石に話しかけてきた。

「 それで先生、ワタシは何をすればいいデス? 」
「 あとの者は、ワタシのサポートをしてもらうデス
  オマエにも色々手伝ってもらうデスよ 」
「 分かったデス…! 」

2匹の仔実装とは対称的に、リボンの実装石は快く返事をした。



「 ……? 」

部屋を出て、白髪の実装石の後ろについて歩くリボンの実装石は、後ろから僅かに覗き込む。

「 ……先生? 」
「 なんデス 」
「 先生……さっきから顔色が悪いデスよ…? 」
「 …気のせいデス 」

白髪の実装石……サトは教え子の問いに言葉を濁らした。

先ほど飼い主の下に訪れた冬香と名乗る少女。
女社長の姪に当たる少女は、何か願い事が有って遠くからやってきた。
サト達が肩を貸したこともあり、女社長は渋々ながらも折れて願いを聞くことになった。
それをサト達は笑いながら見ていた。

だが冬香の話を聞くにつれ、急に女社長の顔が険しくなってきた。

冬香は前まで飼っていた片目の獣装石を駆除される前に助け出したいと言う。
それを聞いていた女社長の表情が変わってくるとサト達は笑えない。
いつも愚痴りながらも笑顔を絶やさない女社長の、あんな怖い顔を見るのは初めてだった。

「 ……サ、サト先生? 」

突然立ち止まったサトの顔を、リボンの実装石が横から不思議そうに見つけた。


……その時、サトは思い出した。
女社長の怖い顔を見るのはこれで2回目という事を。

今から数ヶ月前の春、自分が前の飼い主から女社長に引き取られた日。
それは自分と、このリボンを着けた実装石が始めてここへ訪れた時だった。

これから一緒に住むことになる女社長の家のミドリ、タロ、ジロという名の実装石達。
タロ、ジロと初対面の挨拶を交わした後、寝室で伏せっていたミドリと初めて顔を会わせた。

あの時のミドリの反応は忘れようにも忘れられない。

女社長や事務員は、妊婦のミドリは精神的に不安定だからと慰めてくれた。
だがサトには当然、そのようなフォローは通じない。
あの日、生まれて初めて会った筈のサトを……初対面のサトを、なぜかミドリは以前から知っていた。

白髪の実装石をミドリは以前から知っていたのだ。

あの後、女社長とミドリは部屋で何かを話していた。
何を話していたのかは分からなかったが、1時間ほど話しこんでいたのを記憶している。

そして部屋から女社長が出てきた時…ミドリとの話が終わった後の女社長の顔がソレだった。
とてつもなく焦燥しきった険しい表情。
事務員の制止も振り切り、女社長は何かを忘れるように酒を飲んで酔い潰れた。

あれ以来、事務員が訳を聞こうとしても決して話してくれない。
ミドリもあの日、部屋で何が有ったのか教えてくれない。

あの日から数ヶ月。
さっきの女社長の顔を見るまで、今まで綺麗に忘れていた。
もう思い出す必要も無いと思っていたかもしれない。


そして冬香の話が終わると、女社長はサトに幾つかの指示を与えて直ぐさま山へ向かおうとする。
しかしその時、何かを思い出したのか振り返ってサトの顔を覗き込み……女社長の顔が一瞬緩んだ。

『 サト……アンタは……なんかじゃない 』
「 デ… 」

女社長は困惑するサトの頭に手を置き、撫でながら耳元に小声で囁いた。


『 ……サトをサハクなんかにはさせないってことさ 』


「 デェ……? 」

この時の女社長は、今までサトのどの記憶よりも優しく微笑んでいた。
それだけ言い残すと女社長は再び険しい表情に戻り、冬香の言う山へ向かった。


結局、今のサトに女社長の言葉の意味は想像も付かない。
だが今の自分がやるべき事は知っていた。
そして一刻も早く、女社長の後を追わねばならないと感じていた。








「 な…!なんてニンゲン……デス……! 」

枯葉の中に顔を半分埋めながら、テンが人間の後姿を見上げていた。
辺りには他に倒れこんでいる自分の部下の獣装石が5匹。
いずれも息は有るものの、自分と同様にダメージが大きく身動きが取れない。

油断したわけではなかった。
山頂へ向かう人間の女の前を塞ぎ、立ち去るように警告すれば引き返すと思った。
だが突然、女はノーモーションで部下の顔面に蹴りを入れた。
直ぐさま、戦闘態勢に入る自分達だったが、瞬きする間に再び部下が1匹やられた。
何とか部下の1匹だけ山頂へ報告するよう指示する頃には、自分しか残ってなかった。
そしてその自分さえ、群れで最も脚の速い自分よりも速く動くと、全身がバラバラになるような衝撃。
人間の、しかも女の蹴り一撃で身体が動かなくなってしまった。

救いは、山頂へ報告に行かせたことだけだった。



 サァ——………

曇り空から山に細かい雨粒が降り注いできた。
その山道を1人の女が枯れ木を踏み折りながら登っていく。
谷道に沿って山頂へ。
そして山頂への入り口付近に巨大な影が立ち塞がった。

「 ここから先は通さないデス!! 」

チィが腕を組んで仁王立ちしていた。
そして左右に数匹の獣装石が素早く展開する。

『 ……へぇ、アンタがここの門番かい? 』

女が谷道の途中で立ち止まると、一際大きな獣装石を見上げた。
対して、堂々と見下ろす指揮獣装、チィ。

『 …アンタに用は無い
  邪魔するのなら力づくでもどいてもらうよ! 』
「 通れるものなら通ってみろデス!! 」
『 ……ッ!! 』
「 デャアアア!! 」

冷たい秋雨の降る山中にて。
1人の女が山道を駆け上がり、一匹の獣装石が駆け下った。


『 だぁっ!! 』
「 デシャア!! 」

女とチィの闘いは続いていた。
しなりの効いた女の上段蹴りがチィの上腕部に直撃し、その巨体が吹き飛ばされる。
しかし辛うじて踏み止まると、全体重をかけたチィの正拳が女の上半身へ振り下ろされる。
避けきれず肩に直撃するが、女も踏ん張って倒れようとしない。

「 デェ……デェ………なんてニンゲンデス…! 」

今までどんな人間だろうが肉弾戦で圧倒していたチィが女の強さに唸りを上げた。
イノシシの突進さえ受けきれるこの身体が、目の前の女の蹴りを受けて堪えるのが精一杯だった。
しかも今まで一撃で人間達を倒してきたこの拳を受けても、目の前の女は倒れもしない。

「 こ……この、化け物ニンゲン……! 」

チィの膝が笑っていた。
幾度と無く女からの攻撃を受け、蓄積されたダメージが膝に来ていたのだ。

『 はぁ……ふぅ…………ば、化け物はどっちだい! 』

全身に小雨を受けながらも、女はチィに怒鳴りつけた。
汗と雨粒が額から流れ落ちる。
やはりチィと同様に息を切らせつつ、疲労で膝が地面に付きそうなのを必死に堪えていた。

「 オレは……オレは、絶対に負けられないデスッッ!!! 」

チィは最後の力を振り絞ると、女の方へ疾走した。

「 デ、シャアアアアア!!!! 」

加速をつけ、全体重を乗せたストレートが女に振り下ろされる!

『 せやああああああ!!! 』

女も同じタイミングで正拳をチィへ叩きつける!


!!!


チィの全体重をかけた攻撃は女の顔の横を素通りし、女の拳がチィの顔面に命中した。

「 デ………グァ…………… 」

拳に乗せた勢いが、カウンターで全て自分のダメージへと変化したチィは、そのまま地面へ崩れ落ちる。
巨体が地面に倒れると、僅かに地面が揺れた。

「 チ、チィが……!よくもやったデスね……!! 」

部下の獣装石達が女に立ち向かう。
しかし並の獣装石で歯の立つ人間ではなかった。





『 ぜぇ……ぜぇ……! 』

髪の毛からは雨粒が滴り落ち、服は獣装石達の返り血と泥で汚れていた。
肩で息をしつつ、山道を登りきって山頂へ。

登り切ると、目の前に広がるのは既に廃墟となった実装石達の住処。
空き家の主達はもう居ない。
小雨に濡れ、主人を失った家屋がひっそりと並んでいた。

だが、この村へ初めて足を踏み入れた人間を迎え入れる獣装石達が見える。
真ん中の一際巨躯の獣装石。

女は息を整えると、隻眼の獣装石を睨みつけた。

『 ……アンタがセキかい? 』
「 そうデス……ワタシが指令獣装、セキデス…! 」

小雨は等しく隻眼の獣装石と女の身体へ降り注ぐ。
この村、最後の戦力である獣装石8匹を率いるセキ。
しかし女の目に他の獣装石は見えていない。
ただ、一匹の獣装石だけを見ていた。

「 ……デス? 」

セキは自分を見つめる女の表情に気付いた。
今までの駆除の人間とは明らかに違う。
自分達獣装石に対する憎しみなどは無く、寧ろ憐れみすら感じられた。
この非常時に、なぜかセキは飼い主のことを思い出した。
いつも自分のことを気にかけてくれた飼い主を。

この女は、どこか飼い主に似てるような気がした。


『 セキ……アンタには悪いが死んでもらうよ…? 』


女は俯きつつ、擦れるような小声で申し訳無さそうに呟く。
今まで仲間の獣装石達を倒してきた人間が、自分に謝ってるように聞こえた。

「 下がるデス…オマエ達では歯が立たないデス 」

女が前に歩き、セキも歩み始め、両者の間合いが詰まる。

『 でやぁぁぁ! 』
「 シャアアア! 」

もはや打ち捨てられた山頂にて。
女と隻眼の獣装石の闘いが始まった。





「 デッ…!デッ……! 」

山頂への道を一匹の獣装石が全力で駆け上っていく。
しかしこの獣装石はセキ達の部下ではない。

移住最後尾を守っていた筈の獣装石である。

「 セ、セキィ!!どこデス!?…………デェッ!!?? 」

山頂へ駆け上った獣装石が見たのは、セキと戦う見知らぬ女。
そして見守るセキの部下の獣装石達。

『 でゃっ…! 』
「 デギャッ…! 」

女は指令獣装のセキを相手に圧倒していた。
ここに残った獣装石達の中では傑出した腕力と体格を持つセキ。
だが、それでも単純な腕力ではチィに及ばない。
そのチィと互角以上に闘いを繰り広げた女に、セキが敵う筈は無かった。

「 デッ………デェェ…… 」

腹部を抑え、セキは倒れこむのを必死に堪える。


「 セキ、大変デス!そんなことをしてる場合じゃないデス!! 」

「 い、今は戦闘中デス……!静かにしてる……デス!! 」

ホウの部下獣装の声を振り切り、尚も女に闘いを挑もうとするセキ。
だが、そのセキに…その場に居た獣装石全てに声を上げて報告した。


「 村の者達は皆、ニンゲンに捕まったデス!! 」


 …!

足を踏ん張っていたセキ、回りで見ていた部下の獣装石達が、ホウの部下に振り返った。

「 みんな……獣装石も実装石も、みんな捕まってしまったデスゥ!!
  仔供たちも……残らず……!!
  ホウは、ワタシだけ逃がしてくれて……デスッ……! 」

報告を聞き、1匹の獣装石が肩を落とした。
次いで1匹…更に1匹戦意を喪失していく……村は今、この場にいる獣装石達を残して全滅した。

「 そ……そんな………デス… 」

セキもまた肩を落とし、目の前が真っ暗になった錯覚を覚えると膝を付いた。
だが絶望するセキに、女は足を引きずって近づいていく。

『 ……でゃ!! 』
「 ッ!! 」

無防備なセキに女の渾身の回し蹴りが炸裂し、セキの身体は大きく吹き飛ばされた。
雨に濡れる地面の上を転がり、実装石達の住処だった一つの家屋にぶつかった。

「 デェ……ェ…… 」
『 す…すまないが……死んでもらうよ……! 』

吹き飛ばされたセキの身体を起こし、女がコブシに力を込めた。

自分以外の指揮獣装は全て倒れ、生き残った部下の獣装石達も全て戦意を失った。
村の者達の運命は決まり、大切な物は全て失った。
ホウは自分だけでも生き残れと言う。
だが最も尊敬している老獣装の言葉とはいえ、その言葉だけには従えそうに無かった。

大切な仲間を全て失い、自分だけ生き残る気力は残されていなかったのだから。

『 ……なぁ、セキ……聞いて良いかい? お前達は獣装石なんだろ…? 』
「 それが…どうしたデス…? 」
『 …なぜ、爪を使わないんだい? 』
「 … 」
『 ここに来るまでの間、戦ってきた獣装石達は1匹も爪を使わなかった。
  もし使えば、アタシに勝てたかもしれないのにね…。

  なぜお前達は爪を使わなかったんだい…? 』

小雨は雨へ。
問いかける女と問いかけられる獣装石に激しく降り注ぐ。

「 …ワタシ達は、ホウに育てられた獣装石デス 」
『 ……あぁ 』

セキはホウに教えられた事を反芻していた。
最も尊敬すべき老獣装の言葉を思い返していた。

「 たった1人のニンゲンに……しかも素手のニンゲンに、爪なんか使えないデス… 」

雨音にセキの声が消えてゆく。
その消えていく声を、女は一言も聞き逃さず耳を傾けていた。

『 ……アンタみたいな奴、嫌いじゃないよ 』

俯きつつ、女はコブシを握り締め力を込めた。

『 せめて苦しまずに死なせてやる……! 』

自分の渾身の一撃が顔面へ命中すれば、頭蓋骨諸共粉々に粉砕するだろう。

「 デ…ェ… 」

セキは両目を閉じ、覚悟を決めた。




『 な……何をしてるんですか、社長…? 』

山道への入り口から、別の人間の声がした。
眼鏡をかけた女性が慌てて、女の方へ駆け寄って肩に手を置いて引き止めようとする。

『 その子、もう動けないですよ……?
  もう…もう、良いじゃないですか…!? 』


『 うるさいっ!!!! 』


『 きゃっ! 』

近寄ってきた事務員に、女社長が腕を引き剥がして怒鳴りつけた。
女社長によって勢いよく引き剥がされ、事務員の身体は雨に濡れた地面に倒れこむ。

『 しゃ…社長…? 』

突然の怒鳴り声に事務員は当惑し、更にそこへ2匹の実装石が姿を現す。

「 社長サン! 」
「 お姉サン! 」

するとサトも駆け寄って女社長の肩に手を置き、セキの身体から離そうと揺らした。

「 社長サン、どうしたんデス?
  もう、その獣装石は戦えないデスよ……ギャッ! 」

サトも女社長を窘めようと駆け寄る……だが、その手を女社長は振り払った。

『 アンタ達は邪魔をするな!! 』

事務員もサトも、こんな乱暴な女社長は見たことが無かった。
だが、それでも止めさせようとしつこく食い下がる。

『 もう、その子は戦えないじゃないですか!? 』
「 社長サンらしくないデス!そんな酷いことをしては駄目デスよ…! 」

事務員とサトの抗議にも女社長はセキを離そうとはしない。
無言でセキを睨みつけた状態が続く。


『 なぜ……なぜ、その子を殺さないといけないんですか……!? 』


一際大きく響いた事務員の悲痛な叫び。

『 り……理由、かい…? 』

すると暫く無言だった女社長は振り向いて……

「 デ……ス…? 」

……白い髪の実装石、サトを見ていた。
サトはなぜ、女社長に見つめられるのか理解できない。


肩で息をしながら女社長はサトに視線を向け……そして再び口を開き始めた。



『 …さ……はく………せき………… 』



『 …え? 』
「 …デェ? 」

雨音で事務員もサトも、女社長の声を上手く聞き取れない。

すると女社長はセキの方を振り戻って目を見開き、コブシを大きく振り上げて握り締めた。





『 …… ”サハクウセキ ”! それがアンタを殺す理由だよ、セキ!! 』





コブシに力が込められ、セキは再び覚悟を決め、両目を閉じた。

「 ミ、ミドリサン!アナタからも社長サンに……ミドリ……サン…? 」

ミドリからも獣装石を助けるように懇願するサト。
だが、ミドリの姿を見て言葉が止まった。


「 ゴ…ゴメンなさいデス…… 」


ミドリは謝っていた。


「 本当に……本当にゴメンなさいデス……! 」




涙を流しながらミドリは地面に手をつき

今にも最期を迎えるセキに向かって 何度も頭を下げて謝っていた






■感想(またはスクの続き)を投稿する
名前:
コメント:
画像ファイル:
削除キー:スクの続きを追加
スパムチェック:スパム防止のため8112を入力してください
戻る