「こんなもの飲めないノダワ!」 実装紅は俺が出した紅茶をひっくり返した。 近くのスーパーで買ってきた高級紅茶。スーパーで売っているものなので、高級といっ ても、高が知れている。味もたいしたことはない。本物の高級品に慣れた身にとっては、 不味い紅茶だろう。 俺は結構美味しいとと思うんだけどな。 倒れたティーカップを直しながら、俺は雑巾を用意した。 「お嬢。贅沢を言ってはいけないぞ」 言いながら、俺は雑巾でテーブルを拭く。 この子は、友人が飼っている実装紅。名前は……教えられていたはずだが、忘れてしま った。俺はお嬢と呼んでいる。実装紅と呼ぶよりはいいだろう。古風とか言うな。 しつけを失敗して、すっかり増長してしまい、どうにも困って俺にしつけのやり直しを 頼んできた。物書き業で一日中家にいるからって、俺も暇ってわけじゃないんだけどな。 締め切りとかあるし。 テーブルに置いておいた万能リンガルは耐衝撃耐水製だから、壊れてないけど。 「下僕、新しい紅茶を用意するのダワ」 「俺は君の下僕じゃないぞ」 ヒュン 腕めがけて、ツインテールが飛んでくる。 俺は適当にそれを躱して、軽く微笑んだ。実装紅のツインテール。鞭のように叩くこと もできるし、刃物のように斬ることもできる。ただのしなやかな髪の毛で叩く斬るとをや り分けているのだ。器用なものである。 「やれやれ、乱暴なお嬢さんだ」 俺はひらひらと手を振った。 しつけをするといっても、暴力は振るわない。生き物であれ、実装シリーズであれ、俺 は殴ったり蹴ったりと暴力を働くのは嫌いだった。傷口や打撲、破損した組織や血を見る のも苦手である。暴力反対。 「無能な下僕にはようはないノダワ。前のちょっと有能な下僕のトコロに戻すノダワ。も たもたしてないで早くするノダワ」 ピー。 イヤホンが鳴る。 実装紅が壁にかけてあったスピーカーに目をやった。 「なんの音なノダワ?」 庭の家庭菜園に設置してあるトラップである。実装石が時々盗み食いにやってくるの で、仕掛けてあった。かかったらしい。 「では、調教を始めますか」 俺は隠し持っていた針を、一瞬で実装紅の眉間に突き刺し、引き抜いた。 慌てて眉間を押さえる、実装紅。だが、遅い。針に塗られていた実装ネムリが効いて、 何も言えぬまま昏倒する。 ◇ 「下僕、早くワタシを開放するノダワ!」 作業部屋と化したリビングにて。 椅子に固定された実装紅が、暴れている。 実装紅サイズの椅子。ホームセンターで材料を買い、即席で作った。高い背もたれと肘 掛がついていて、腰と肩と左右の腕を、紐で固定していある。 目の前には、小さな台。 「ま。そこでちょっと見ててくれ。面白いことするから」 「面白いことなんか、どうでもいいノダワ! わたしを解放するのダワ」 実装紅は無視して、俺は水槽に放り込んだ実装石を見やった。 「ニンゲン、ワタシをここから出すデス!」 「出すテス!」 「出せテチィ」 「出せレチィ」 「レフー」 成体実装一匹に中実装一匹、仔実装一匹に、親指実装一匹、蛆実装一匹。 面白い家族である。 大きさも見た目も、どこにでもいる普通の実装石で、知能も普通だろう。パンコンしな いように、裏ドドンパを食べさせてから、服を脱がせ、身体を洗浄剤(汚れを含めて皮膚 を薄く溶かす薬)で洗ってから、服を着せて、水槽に放り込んである。 「騒ぐな、騒ぐな。出してやるから」 床に新聞紙を四枚広げ、道具箱から注射器と小瓶を取り出した。近くには、二種類の霧 吹きが置いてある。 注射器に液体を吸い取り、俺は仔実装を一匹つまみ上げた。 「テチィィィ! 放せテチィィ!」 注射器を素早く仔実装の心臓に突き刺し、液体を注入する。 注射器を床に置いてから、仔実装を新聞紙に下ろした。 「お嬢、よく見ておいてくれ」 「いいから、放すのダワ!」 仔実装の五十センチ先に、金平糖を置く。 「テチュゥゥゥン♪ コンペイトウテチィ♪」 仔実装は金平糖めがけて、走っていき、 「チベェ」 お約束通り、こけた。 顔面から新聞紙に倒れる。 「ヂュゥゥ。ごケちゃッたでヂぃ」 起き上がった仔実装。 明らかに声がおかしい。それだけではない。丸かった顔が、平らになっている。顔だけ でなく、身体や手も床にぶつかった部分が平らになっていた。 さらに、右足がもげている。 「ヂュゥゥァァ! わだチのあんヨが、取れてるデヂィィ……」 「でも、痛くは、ないだろ?」 「ヂィ?」 仔実装ははっとしたように自分の足を撫でて、 「痛くナいデヂュ♪」 「よかったな」 俺は仔実装を摘み上げた。 用意しておいた霧吹きを何度か吹きかけてから、両手で包み込み、おにぎりを握るよう に両手で圧縮する。 「ヂュ、ヂュベ、ヂュバァ」 苦しげな鳴き声が聞こえてくるが、俺は無視して両手を動かした。おにぎりではないの で、力加減が難しいのだが、それでも起用に形を整えていく。 俺は出来上がったものを新聞紙の上に置いた。 「ヂュゥゥゥ…………」 丸くなった仔実装。 手足と胴体、ついでに服と髪が一体化して、実装団子と化している。 「ニンゲン……ばやぐわだちをもどに戻してでぢゅぅ」 「戻すと思う?」 俺は仔実装の千切れた足を摘んで、片手で丸めた。 それを団子仔実装の口に押し込み、頬の両側からぐにぐにと動かす。道具箱から取り出 したナイフで、変形した口の周囲の皮膚と押し込んだ足とをくっつける。 団子仔実装の口が消えた。 最後に、固定剤を注射して終わり。 「…………」 肌色と緑と茶色の混じった団子。赤と緑の目から血涙を流しているが、口が完全に塞が れているので声はでない。口の中の歯も舌もくっついているので、何も食べられない。放 っておけば、じきに死ぬだろう。 「お待ちどうさま、お嬢」 俺は団子仔実装を実装紅の前の台に置いた。 「どう?」 「…………」 実装紅は何も言えずに、仔実装の成れの果てを凝視している。顔は真っ青になっていた。 恐怖のせいで、体が小刻みに震えている。 こうなるならば、死んだほうがましだろう。 「これは、実装軟化剤。体を溶かしてしまう液化剤とは違って、これは細胞結合を緩めて 粘土状にする。神経やら血液やも粘土みたいになって、傷を受けても出血しないし、痛覚 は働かないらしい。普通の生物なら、即死だけど、実装シリーズは死なないみたい。つい でに、活性剤やら偽石自壊防止薬やら色々混ぜてある。偽石取り出すのは、面倒だからね」 説明しながら、俺は取り出した注射器を実装紅の胸に突き刺していた。滑らかな動きで、 気づかれないように両手を動かしている。 「ダワ!」 気づいた時には、針先が心臓に達していた。 俺は震えている実装紅を見つめ、安心させるように声をかける。 「先に言っておくと、むやみに動かないほうがいい。手足がもげたら、直すのが大変だか らね。骨や筋肉が変形しても大変だ。歯を食いしばるのも危険だね。歯と歯茎が変形して おかしな形になる。声を出すのもお勧めしない。声帯がおかしくなって、そこの仔実装み たいにまともな声を失う。瞬きもやめておいたほうがいい。体を硬直させるのも安全とは いえない。硬直した筋肉が、骨格に作用して、体格そのものが変化する。ええと、ようす るに、絶対に動くな」 「ま、まつのダワ」 静止には構わず、ピストンを押し込み、注射器を引き抜いた。 実装軟化剤が心臓に注入される。心臓に送られた軟化剤は血液に乗って、全身の組織に 行き渡り、体を粘土状に変化させていった。 動けない実装紅に、俺は霧吹きで軟化剤を吹きかける。実装シリーズの髪や服は、基本 的に自分の体と同じ素材。この実装紅は、生まれ持った自分の服に愛着があり、市販品は どんなに豪華なものでもよほどのことが無い限り、着ないらしい。これで、髪や服も全て 粘土状に変化した。 「さて、お嬢」 俺は声をかけた。 実装液化剤の小瓶を、団子仔実装の横に置く。 実装紅は恐怖と怒りの混じった視線で俺を睨んでいる。返事はない。 「もしかしたら、君は今注射した液体が、実はただの水か何かじゃないか? と思ってい るかもしれない。偽者の薬を注射して、脅しているんじゃないか? 自分を本気で傷つけ る意思はないんじゃないか? そんな希望的観測を持っていると思う。悪いけど、その望 みは絶たせてもらうよ」 俺は実装紅の両袖をまくった。 実装紅は動かず、目も動かさない。体を硬直させることもできない。 俺は持っていたナイフを右腕に当て、動かした。丸い腕が肘掛に押し付けられて、平た く潰れる。肘の辺りから先が、半分ほどの厚さと二倍ほどの幅になった。 左腕にナイフの刃を当て、動かす。 前腕の中ほどと肘の辺りで、きれいに輪切りになった。傷口からは、一滴も血が流れて いない。痛みもない。 「俺が注射した軟化剤は本物であると、証明できたわけだ」 俺はナイフを動かしながら、のんびりと笑いかけた。 実装紅は、恐怖に満ちた眼差しを俺に向けてくる。そこに怒りや憎しみの感情は残って いない。しかし、逃げることはおろか、体を竦めて恐怖に耐えることもできない。 「そこの親子」 水槽の隅で震えている親子に目をやる。 俺は水槽に手を突っ込み、蛆実装を摘みあげた。 「レフー、レフー」 「蛆ちゃぁぁぁん!」 両手を挙げて、追いかけてくる親指実装。 「おや。お前も来るか?」 「レチィ!?」 驚く親指実装をつまみ上げ、蛆実装と一緒に新聞紙の上に乗せる。 「レフレフー。プニプニしてレフー」 自分が置かれた事態が理解できず、おねだりをしている蛆実装。蛆実装に知能というも のを求めること自体、間違っているが。 「レチィィ……」 親指実装は頭をかかえていた。一応、自分が窮地であることは理解しているらしい。た だ、決定的な部分で、やはり知能が足りていない。 蛆実装を守るような位置に立ち、両手を広げる。 「蛆ちゃんは、ワタチが守るレチィ。ニンゲン、かかってこいレチィ」 「オッケイ」 俺は快く承諾して、注射器を親指実装の胸に突き刺した。文字通り親指ほどのサイズの 対象の、そのさらに小さい心臓に注射針を差し込むというのは、かなり難しい芸当だ。何 度もやっているので、ずいぶんと慣れたが、集中力がいる。 ピストンを少し押してから、蛆実装にも注射器を差し込んだ。 「レピャァ……!」 軟化剤を注入してから、注射器を置く。 「安心しろよ。殺したりしないから」 「ホント、レチィ……?」 「ああ。でも、『死ぬ』ってのは、楽な選択肢だと思う」 言いながら、親指実装を摘み上げた。 実装服と下着と靴を剥ぎ取り、後ろ髪を毟り取る。だが、悲鳴を上げる暇は与えない。 両手を素早く動かして、親指実装の胴体を団子状に丸めた。 「レチィィィ……?」 俺は蛆実装の服も剥ぎ取り、丸めた親指実装を摘み上げる。 両者をくっつけ、俺はそのままこね上げた。両手を動かし、加工していく。 「レチィ、レチュ、レピャー」 出来上がったものを新聞紙の上に置いた。 頭の二つある、大きめの蛆実装。 剥ぎ取った実装服に軟化剤を吹きつけ、一度丸めてから引き伸ばす。それで、双頭蛆実 装を包み込んで、新たな実装服にする。 最後に、固定剤の注射と霧吹きで終了。 「親指ちゃん。これで、ずっと蛆ちゃんと一緒だ。よかったな」 「レフレフ〜これで、ずっとおねーちゃんといっしょレフー♪」 うれしそうに尻尾をぴこぴこ動かす蛆実装。さすが蛆実装。頭の中身は空っぽだ。 一方、元親指実装は、絶望の表情を見せている。 「いやレチィ……。ワタチは蛆ちゃんなんかになりたくないレチィ……。ニンゲンさん、 お願いレチィ、元に戻してレチィ」 「はっはっは、却下」 俺は、双頭蛆実装を水槽に戻して、中実装を掴み上げた。 「テアアア! 放せニンゲン! テアア! ボールなんかになりたくなテスゥゥゥ! 蛆 なんかにもなりたくないテスゥゥゥ!」 盛大に暴れる中実装。 中途半端に知能があるせいで、これから自分に何が起こるのかが分かってしまう。だが、 そんなことはどうでもいい。 俺は軟化剤を注射してから、とりあえず口を塞いだ。唇の上下をくっつけてから、何度 か指でもみ合わせ、ナイフで平らにする。これで、何も喋れなくなった。唇を切れば、喋 ることができるだろうが、そこまでの根性はない。 軟化剤を霧吹きで吹き付けつつ、 「暴れたら、手足もげるぞ」 それで、ぴたりとおとなしくなる。 俺は中実装を抱えたまま、実装紅を見やった。 「さて、お嬢……」 「………………」 反応はない。声を出すこともなく、動きもしない。まるで人形のように。ただ、うっす らと冷や汗を流していることから、生きていることは分かる。 「声は出せないんだったな。まあ、聞いてくれ。俺は生き物だろうが、実装だろうが、暴 力を振るうのは嫌いだ。優しいわけじゃない。殴ったり蹴ったりすると、血は流すは傷口 はグロいわで、どうにも汚いんだ。だから、暴力は反対だ」 語りかけながら、俺は実装石の正中線をとんとんと叩いた。 胴体の左右を掴んで、ぐいと上下にずらす。 正中線を境に、体の左右が十センチ近く縦にずれた。皮膚はつながっていて、内臓も筋 肉も露出していない。 「………………」 「まあ、汚くない虐待を目指したらこうなった」 中実装の胴体をぐるりとひねる。 胸の辺りから、前後が逆になった。 「こんな虐待をやってて気づいたんだが……実装シリーズに限らず、生き物にとって死っ てのは結構楽な選択肢だ。生き物が本気で恐れるのは、こういうこと」 俺は中実装の体をこね回しながら、突起や羽のようなもの、余計な肢や触覚や角のよう なものをつけていく。すでに、原型を留めていない。 「自分が自分じゃなくなること。……月並みとか言うなよ」 俺は変形した中実装を実装紅に見せた。 何と形容してよいのか、分からない物体。足が七本あり、羽のようなものが三枚、とり あえず目のある部分からは、ねじれた角のような突起が生えている。 怪物体に固定液を注射し、水槽に戻した。 うねうねと手足を動かしながら、涙を流して、水槽内を徘徊している。 俺は親実装を掴み、 「さあ、最後はお前の番だ」 「デシャアァァァァァ! このクソニンゲン! デアアア! 放すデスゥゥゥゥ! ワタ シを開放するデェェェェス! デシャァァァ!」 騒ぐのを無視して、軟化剤を注射する。 こちらを向かせて、喉を指で一突き。 「テ…………! デ…………!」 へこんだ喉を押さえて、必死に声を出そうとしている親実装。 しかし、かすれた声と息だけが漏れている。 「ああ。声帯潰したから声はでないよ」 「デ…………!」 目を丸くして俺を見る、親実装。 俺はナイフを掴んだ。さきほどから使っている、刃渡り十五センチほどの細身のナイフ。 刃の部分と柄部分がひとつの金属でできている。粘土細工に使われるものだ。 一応、きちんと研いであるので、斬ることもできる。 「じっとしてろよ、手元が狂ったら面倒だぞ」 俺はナイフを握り締め素早く動かした。 目、鼻、頬、額、口、顎と改造していく。粘土細工を行うのとさほど難しさは変わらな い。慣れるまでが大変だが、慣れれば結構簡単にできるだろう。。 およそ一分ほどで、実装石ではなくなった。 絵に描いたような美少女の顔になっている。つぶらな瞳に、ほっそりした顔立ち、すら りと通った鼻筋。ただ、体が実装石なので、えらく不自然だ。 整形の終わった親実装に鏡を見せる。 「デ…………!」 ぱっと表情を輝かせ、鏡を見つめる親実装。 俺はナイフを持ったまま、実装紅に向き直った。 「意識はあるか? 正気は保っているか?」 「…………」 実装紅は微かに目を動かす。意識はあるらしい。目はまだ生きている。正気は保ってい るようだった。ただ、かなり精神が磨り減っている。 俺はナイフで頬を撫でながら、 「今の見てただろ? 不細工なヤツを美少女に変える。無論、逆のこともできる。君を二 度と見ることもできないほどの不細工な顔にすることともできる」 「…………!」 実装紅の目から涙がこぼれる。 「今はやらないさ」 俺はナイフをくるくると回しながら、優しく笑いかけた。 「ただ、君が下僕と呼んでいたやつが君のことを嫌いになれば、君は捨てられる。あいつ は優しいやつだ。君が我侭を言ったり、身勝手な指図をしないかぎり、君を嫌うことはな い。あいつは君が好きみたいだからな。あと、二度と下僕なんて考えるなよ? 君よりも あいつの方が地位は上だ。あいつがいなければ、君は生きていけない。そのことを忘れな いように。あと……」 タァン! ナイフが実装紅の顔の真横に刺さった。 刃先一センチが木の背もたれに埋まっている。 実装紅は小さく、本当に小さく身を震わせた。 口調を変えずに、俺は続ける。鼻の頭を指でかきながら、 「あいつが君を捨てたら、その時は俺が引き取る。新しい奴隷になるなんて考えるなよ。 君は実装オブジェの材料だ。次は、本気で加工する。そこの実装石よりも異形の姿になり ながら、死ぬこともできず、狂うこともできない。戯れに虐待を受けるだろうな。延々と 生かされひらすら苦しみ続けて……俺か、君を買い取った買取主が君に飽きて、運がよか ったら、もしかしすると死ねるかもしれない」 「…………」 まったく動かず、言葉も発さず、両目から涙を流す実装紅。その姿は、人形が涙を流し ているようにも見えた。 俺はナイフを抜き取り、変形させた右腕と切った左腕を元に戻した。切れた左腕は皮膚 をつなぎ直し、前と変わらぬ形に作り直す。あとで、実装活性剤廉価版の希釈液を飲ませ れば、完全に傷は消えるだろう。 「これは選別だ」 俺はナイフで、右目の下に小さな星印をつけた。皮膚が薄くへこんだ星印。 それから、固定剤を心臓に注射し、霧吹きで念入りに吹きかける。 これで、元に戻るだろう。 「気が向いたら動いてくれ。もう大丈夫だ」 固定する紐を解いてから、俺は鏡を見ながらうっとりしている親実装を掴んだ。 「デ…………!」 「すまん。気持ち悪いから」 「デォ…………」 親実装の顔を左手でこね回す。 ぐにゃぐにゃと顔が崩れ、目や口や鼻が混じっていった。ばたばたと暴れる親実装。手 足がちぎれて、床に落ちる。十五秒で、顔の部品が完全に混じり合った。 俺はナイフを掴み、顔を滑らかにする。 のっぺらぼうの出来上がり。 手足を適当につなぎ合わせ、固定剤を注射して、おしまい。 「…………!」 親実装は自分の顔を撫でてから、本来なら目のある位置に手を当て、首を上下に動かす。 どうやら泣いているらしい。 鼻も口もないのに、窒息はしていないようである。 さすがでたらめ生物。 「自分で作ってなんだが、えらく不気味だな」 ◇ 俺はキッチンで紅茶を飲んでいた。 「あの、ニンゲンさん……。ようやく動けたノダワ」 「遅かったぞ」 歩いてきた実装紅。 今までの高飛車な態度はどこへやら。借りてきた猫のように、おとなしくなっている。 というか、明らかに怯えている。どうやら、ちょっと効きすぎたらしい。 「まあ、いいや。そこに座れ。紅茶用意するから」 「はいナノダワ」 実装紅は、椅子によじ登り、テーブルに向き直った。前は抱き上げろとか言ってたが、 さすがにこの状況で言う勇気はないらしい。 俺は紅茶を入れて、実装紅の前に置く。 「ちょっと訊いていいか?」 「何ナノダワ……?」 「君の名前なんていうんだっけ?」 おまけ それでは、実装三分クッキングを始めます。まずは成体実装一匹。軟化剤を注射し、霧 吹きで全身に吹きかけた後、適当にこね回して団子状にします。 これには、さきほどののっぺらぼう実装を使います。 このように暴れていますが無視しましょう。押しつぶして、こね回します。適度にこね て全身の組織が混じり合ったら、丸めておきましょう。 はい、できあがり。 これは、皮の部分ですね。 ぴくぴく痙攣していますが、気にしないでください。 次に、具の部分です。 この怪物体となった中実装をバケツに放り込みます。 最初に眼球を取り出しておきましょう。あとで使います。 視覚を奪われた怪物体実装。暴れてますが、無視です。 実装液化剤を少々多めに注射します。はい、見事に溶けました。体のあらゆる器官が混 ざっていますが、品質上問題ありません。糞も服も髪も一緒になって溶けていますが、問 題ありません。 固定剤を注射したいとういう誘惑に駆られますが、耐えてください。ちなみに、ここで 固定剤すると、組織内部で糞が腐敗して、その毒素により体組織が死滅し、体が生きたま ま腐っていくという、面白い様子が観察できます。 時間があったら、お試しあれ。 続いて、この双頭蛆実装と団子仔実装を溶けた液体実装に放り込みます。 「レフレフー!」 「レピャッァ!」 「…………!」 液体実装の液化剤に反応して、溶けていくさまをじっくり楽しんでください。 ここであらかじめ用意しておいた、砂糖を加えてください。ごく普通の砂糖で構いませ ん。量は三掴みほどで十分です。他の調味料を混ぜてもいいでしょう。 そこに、市販のゲル化剤を投入して、かき混ぜてください。どこで売っているか分から ないひとは、各自ググるなりしてくだささい。 なお、かき混ぜる際は素手でかき混ぜないように、くれぐれも注意しましょう。液体化 した実装石が皮膚につくと、皮膚組織と半一体化して簡単には取れません。液化剤をかけ れば溶けますが、場合によっては病院にいく羽目になるので気をつけてください。 さきほどの丸めた実装石を棒で引き伸ばし、丸く器の形にしてください。そこに、ゲル 状となった液体実装を流し込みます。上手く流し込んだ後は、皮をまとめて饅頭のように 中身を包み込んでください。 これで実装饅頭完成です。 最後に、さきほど中実装から取り出した眼球を、適当な位置に埋め込みます。 ほどなくして、眼球が組織と一体化しました。 こっち見てますね。 笑顔で手を振ってあげましょう。 涙を流して喜んでいます。 両目を緑や赤に塗ると、面白い現象が起こります。それは、次回のお楽しみです。 では、これから近くの空き地に出かけようと思います。 空き地に住んでいる実装石たちに、完成した実装饅頭を無料で試食してもらいます。食 べると、実装軟化剤や液化剤の効果で、体が粘土状になったり液体状になったりしますが、 問題ありません。 それでは、出発です。

| 1 Re: Name:匿名石 2015/03/17-22:13:41 No:00001680[申告] |
| いやあ、怯え竦む赤い子は本当にかわいいなあ
しかし実装を使った工作スクは、なんでこうも面白いんだろうか 今更ですがGJでした |
| 2 Re: Name:匿名石 2024/01/05-22:08:29 No:00008602[申告] |
| おぞましすぎて好き |