敷金・礼金無料 10 俺の名はやおあき。 自らは手を下さない、観察型の虐待派だ。 俺は友達のにじあきと協力して、賢い実装石一家をさらって来た。 今彼女達は、俺達が整えた(実装石にとっては)最高の住処…古い木造アパートの中に居る。 雨風をしのげ、外敵から守られる反面、真夏の猛暑に容赦なく晒されるこの密閉環境の中で、彼女 達はどのように生きていくのだろうか? ●アカ組:親×1、仔×1 ●キイロ組:親×1、仔×1、蛆×1 ●ミドリ組:仔×2、親指×1 ●ムラサキ組:親×1、仔×1、親指×1 以上四家族、親3匹、仔5匹、親指2匹、蛆1匹…合計11匹。 アパートの構造と部屋割りは、以下の通り。 ■1階 部屋番号は、左上→右下の順で、101〜103、105〜107(104はない)。 (入り口) _ || □||黄 □||□ 緑||赤 ■||▲ | → 二階へ ‾‾‾‾ □は空き部屋、▲はトイレ、■は風呂場。 廊下の奥、トイレの脇には、二階へ昇る階段がある。 ■2階 部屋番号は、左上→右下の順で、201、202、203〜206(204はない) ____ ▲||紫 □||□ ■||□ | → 一階へ ‾‾‾‾ □空き部屋 ■は洗面所 ▲は秘密 三階や地下室はない。 入り口には鍵がかけられていて、脱出は不可能。 (前回のあらすじ) アパート内に乱入した、野良実装親子「糞蟲組」との戦い。 なんとか全滅させる事は出来たものの、損害は大きかった。 段ボールハウスは潰され、汚され、食料の蓄えはすべて台無しにされた。 さらに二階も荒らされた上に、キイロ親1が犠牲になるという悲劇もあった。 リーダー格だった実装石を失い、悲しみに沈むアパート内。 しかし、悲しみの余りミドリ姉は、モモ親指を抱き締めて圧死させてしまった! 何やってんだ、ミドリ姉?! ■ 第十話 「ヘヴンズ・ドア」 ■ キイロ親1が死んでから、早や一週間。 実験を開始して、もうすぐ一ヶ月に達しようとしている。 俺の観察メモもすでに新しいものに変わり、実装石達が生活の中で見せた数々のアイデアと工夫は、 可能な限りすべてまとめられている。 しかし。 メンバーの中で、最高のアイデアマンだったモモ親と、最高の技術者だったキイロ親1が居なくなった 影響は大きい。 あれ以来目を剥くような画期的アイデアはほとんど見られなくなり、また目覚ましい生活環境改善も なく、いかに一部の者の能力に頼っていたかが浮き彫りになってきた。 仔実装達もかなり背が高くなり始め、また季節も本格的な真夏に入った事もあり、アパート内の生活 はどんどん苛酷になってきた。 この一週間の様子を、大雑把な時系列順に触れてみよう。 まず、食料事情。 糞蟲組事件後、一番最初にぶち当たった問題がこれだ。 102号室に持ち込まれた食料と飲料水はすべて部屋内にぶちまけられた上に直射日光で照らされ 続けたため、ほとんどが腐ってしまい保存などとてもできないものになってしまった。 もちろん、野良上がりのメンバーはそんなものでも我慢して食べたが、ぶちまけられた物の中には、 味皆無・食感ボソボソ・粗食に慣らされた高級飼い実装ですら敬遠するという最低ランクの安売り実装 フードも大量に含まれていたため、彼女達の反応は酷かった。 そんなものでも我慢して食わなければならなかったが、結局三日も経たないうちに蛆が湧き始めた ため、残り…つまりほとんどすべてのものは、トイレに捨てられる結果となった。 野良実装の中にはそんな状態のものでも食べてしまう者が居るが、ここにはそこまで割り切った奴は いなかったようだ。 また、何体かの仔実装が腹を壊してしまうというトラブルも加わったため、トイレはしばらくとても賑やか になっていた。 一方、実装石達の死体だが、これはすべて勝手口の前に置かれていた。 俺に処理を任せる気満々のようだ。 きっと、キイロ親1が生前に話した事を参考にしたのだろう。 おかげで俺は、夜中にアパート内を徘徊することなく実装石達の死体を処理できたわけだが、どちらに しろ一度に六体もの死体を運ぶのはかなりの苦痛だった。 特に、白濁にまみれた糞蟲の臭さが…うっぷ、思い出しただけで吐きそうになる。 段ボールハウスは、キイロ組子供用の複雑な構造のもの以外は結構簡単に復旧が利いた。 糞の付着跡は若干残ったものの、湿らせた新聞紙で丁寧に拭き取られた上、強い日差しで徹底的に 乾かされたため、悪臭による被害はあんまり出さずに済んだようだ。 キイロ組は、使われなくなったモモ組の隔壁用段ボールの一部を使い、なんとか補った。 ムラサキ組のものだけが完全無傷だったのは幸いで、後に彼女達はスムーズに引越しを行う事が 出来た。 さて、二階の惨状だが。 ここは俺が出向くまでもなく、意外にも実装石達だけで片付けられてしまった。 ここで予想外の活躍を見せたのが、ムラサキ組だった。 二階がメインテリトリーとなる彼女達にとって、白濁の園と化した二階廊下は相当我慢ならなかった ようで、徹底的な清掃が行われた。 なんとムラサキ組は、独自で掃除を行えるほどの技能と賢さを持っていたのだ。 トイレットペーパーと段ボールの端切れ、ビニール袋を使って白濁液をすくい、時間をかけて汚れを拭き 落としていく。 それは実に丁寧なもので、限られた道具を使って巧く処理を行った。 これは、巧くやれば実装石専用の高効率清掃用具開発にも繋げられるかもしれない。 ムラサキ組は、後に102号室の清掃も担当。 おかげで、ネズミやゴキブリによる深刻な被害は出さずに済んだ。 もちろん清掃は完璧なものではなかったが、当初予想された事態が回避されただけ高評価に値する だろう。 アカ組が食料を隠し持っていた事が発覚し、これが全員に振舞われたのは、その後のことだった。 そう、ここに来てからすぐに行ったアレを、こいつらはその後もちまちまと続けていたのだ。 食料がなくなって丸二日間、全員が空腹であえいでいるにも関わらず、アカ親とアカ子、ミドリ仔だけが 元気だったので怪しまれたのだ。 だが、結果的にこれが功を奏した。 糞蟲組に発見されなかった隠し食料は思ったよりも量があり、これによりなんとか数日間はしのぐ事が できたのだ。 もちろん、アカ組はその後他家族にこってりと油を絞られることになったわけだが。 だが、その件が落ち着いた頃。 実装石達は完全に食料供給源を断たれた状態となり、いよいよ切羽詰ってきた。 飢餓感は、実装石の理性を蝕む最悪の因子だ。 まず、摂取量の多い仔実装と親指達が喚き始めた。 そこに真夏の蒸し暑さが加わり、全員が必要以上にカリカリしてくるため、子供達を抑えようとする親達 もつい力を込めすぎてしまう。 これにより、ミドリ仔とムラサキ仔がそれぞれの姉・親に殴られて大怪我をしてしまったりもした。 やむなく“堕落の間”が開かれる事になったが、ここに残っていた食料はもはやほとんどなくなっており、 たった一日分すら確保出来ないという有様になっていた。 まあ、あれだけ皆で食い荒らせば仕方ないかなという気もするが。 ついにはゴキブリ捕食案まで真剣に検討され、大規模な狩りが行われたが、こういう時に限って ゴキブリもネズミもばったり出現しなくなり、期待が外れた上無駄な体力を浪費したメンバーは、さらに過酷 な状況へと追い落とされた。 幸い、風呂場とトイレの水だけは相変わらず供給され続けているので、喉を潤したり適度に涼を取ったり、 汗を流したり用を足したりする事はできる。 だが、気温と湿気の関係から個々の室内で簡易トイレを使うのはもはや危険な状態となり、各家族は 何かあるとすぐにトイレに向かうハメに陥る。 ここで、移動速度の遅い子供達をサポートするため、再び背負いカゴが活躍する。 ビニールを張ったカゴに催した子供達を詰めて運ぶわけだ。 これなら、移動中にパンコンされても大した被害にならない。 もっとも、ムラサキ親は移動中にスッ転び、頭から我が子の糞を浴びてしまうという失態を演じてしまったが。 空いたペットボトルを利用して冷水を詰め、これを各部屋に持ち込んで飲料水としたり、涼しい抱き枕に したり、紙コップと組み合わせて親指用の小型水風呂を作り始めたのは、ムラサキ組だった。 このアイデアはすぐに他家族にも伝えられ、環境の変化に弱い親指達や蛆実装は、これでかなり 救われた。 頭から水を被るだけでもかなり違うので、親指がいない家族でも、この冷水保管は便利に利用された。 まさか“堕落の間”で用意された清涼剤の容器が、こんな形で利便性を発揮するとは思わなかった。 そして、いよいよ子供達が目に見えて成長しはじめた。 アカ仔は、すでに身長が目測50センチに届こうとしており、ミドリ仔ですらかつてより10センチくらい背が 伸びたようだ。 ミドリ姉もだいたい50センチを越すのではないかという所まで成長していたが、こうなるともうミドリ仔を 背負って運ぶ事は出来ない。 親指はいずれも相変わらずな上、キイロ組とムラサキ組の子供達だけはまったく成長しないため、この 辺についてはさほど大きな問題はない。 結局、アカ親とミドリ姉ばかりが苦労をプラスさせられるハメになったわけだ。 しかし、仔が育ったという事はそれだけ必要食事量が増えたという事にも繋がる。 相変わらず続く食糧難の解決のため、キイロ親2(一匹だけになったので、以降数字表記なし)は さらなるアパート内の探索、まだ隠されているかもしれない食料探しを提案。 ここでようやく、以前ミドリ親指が唱えていた事に目が向けられた。 長い間主張を無視されていたミドリ親指は大層ご機嫌ナナメだったようだが、代わりに探索指揮官的 ポジションを与えられ、突然やる気を出し始めた。 そして、以前から怪しいと思われていた所を皆に報告した。 一つ目は、階段下の物置。 これは以前からミドリ親指が発見していたもので、中に様々な物資が詰め込まれている事はすでに 確認されている。 問題は、固すぎる扉をどうやって開くかという問題だけだ。 現在もっとも注目すべきポイントだろう。 もう一つは、二階201号室“開かずの間”だ。 ここだけは中に何があるのかまったく予想もつかないため、様々な意見が交わされている。 しかし、ここはガッシリと鍵が掛けられているので、現在の彼女達ではどんなにがんばっても開ける事 はできない状態にある。 キイロ親やアカ親ならなんとか手が届くだろう位置に鍵穴があるのだが、肝心の鍵がないのだ。 本来、この鍵はすべての部屋に取り付けられていたのだが、201号室を残して他のはすべて俺達が 取り外したのだ。 ここを開ける条件は厳しい。 否、或いはもっとも単純かもしれない。 どちらにしろ、ここを開けるヒントには、今のところ誰一匹として目を向けていないのが現状だ。 実装石達も、ここはもっとヒントになる何かが見えてきてから手を出すべきではないかと考えたようで、 当面は保留という結果に至った。 もちろん一部から反対の声は上がったが、それより階段の物置解放を優先させようという意見に賛成 したため、結果オーライに落ち着いた。 もう一つ、怪しまれているところがある。 これは、キイロ親1が生前に言い残したもので、203号室内で発見されたポイントだ。 押入の中で一箇所だけ真新しい板の張られた所があり、そこが蓋状に開けられる仕組みになっている 事に気付いたのだ。 だが、蓋のすぐ下には硬い網目状のシールドが張られていて、通る事はおろか下を覗き込む事も できない。 シールドは床にガッチリ固定されているため、今の実装石では開ける事が困難だ。 キイロ親1はここが妙に気になっていたようだ。 こちらも、“開かずの間”同様現状は保留という事で落ち着いた。 仮に中に入れたとしても、行き先は天井裏である事が判り切っているため、強い興味を惹かれた者が 居なかったという側面もあるが。 ただ不思議な事に、この段階では「どうしてそんな所にこんな不自然なものがあるのか」を疑う者が、 一匹たりとも居なかった。 すでに確定していた階段下物置の開放に意識が向いていたのだろうか? 最後に怪しまれたのは、アパート各所の「死角」だった。 このアパート内は、上記で挙げたポイント以外にも、実装石達の目がどうしても届かないポイントが多く ある。 そんな場所に、何か意外なものがあるのではないかという意見だ。 これは、ムラサキ親の意見だった。 ムラサキ親は、元高級飼い実装だ。 家事全般を手伝えるように教育されているため、アパートの室内を、他の野良達とは違った視点で 見る事ができる。 彼女が一番最初に疑ったのは、各部屋に設置されている「流し」と「押入の上の段」だった。 これらは、実装石の身長ではどうしても届かない。 そして、踏み台になるようなものも一切ないので、中を窺う事も不可能なのだ。 言うまでもなく、これは俺達がわざとそういう風にしているからなのだが。 もう一つ疑ったのが、「風呂桶」。 ムラサキ親は、初めてここの風呂場に来た時から、大きな板で封じられている風呂桶の存在が不思議 でならなかったという。 ここが解放され、中に入るための段差が設けられれば、もっと有効に水を使って身体を洗えるのにと 思ったという。 これは、今まで誰も考え付かなかった発想だったらしい。 キイロ親達でさえ、これは大きな台か何かであり、実装石が使えるものではないという先入観を持って いたようだ。 キイロ親ともあろう奴等が、風呂桶の存在にまったく気付かなかったというのは意外だった。 しかしこれは、にじあきの「貧乏アパートの風呂桶の形と大きさが、実装石達には風呂桶と認知 できなかっただけなのでは」という見解を得て氷解した。 このアパートの風呂桶は、大人でも両脚を抱えないと入れないくらい狭いものだから、上に板を敷いたら 単なる大きな台にしか見えないかもしれない。 それなら、キイロ達が気付かなかったとしても理解はできる。 しかし、それにも関わらず気付いたムラサキ親は、思ったより洞察力が深いのかもしれない。 ここに来て、ムラサキ組の優秀さが徐々に発揮されてきた。 禿裸という事もあり、いまだにアカ組やミドリ仔・親指達からはさげすまされているが、それでも以前に 比べて扱いはかなりマシになってきた。 少しずつではあるが、アカ親達もムラサキ組のもたらす恩恵の可能性に気付き始めたのかもしれない。 つか、そーだといいなと思うだけなんだが。 いずれにせよ、ここからムラサキ組が本領発揮する可能性はとても高い。 やはり彼女達も、選ばれただけはある賢い個体なのだと、改めて実感する。 この時点では、ミドリ親指・ムラサキ親が主役となり、キイロ親とミドリ姉、続いてアカ仔とミドリ仔が 助力するという形式で探索チームが組織された。 今や、アパート内の意識は一つの調和を見せようとしている。 それは、俺が望んでいた「賢い実装石達による新たな形のコミュニティ」完成の兆しを感じさせる。 俺は、思わず感激の涙を流しそうになった。 もっとも、そううまくは行かないという事を、俺はその後に思い知らされるわけだが… ■■■ 糞蟲事件解決から、二週間目に入る。 この日、早朝からの厳格な会議の後、探索隊は「階段下の物置」を開ける事を決議した。 緑親指「ここの戸は、他の部屋よりも小さくて軽そうレチ。だから、一度開けば後は楽だと思うレチ」 紫親「でも、この隙間だと…ワタシ達大人の手を差し込んでこじ開けるのはとても無理デス」 緑姉「それにこれ、とてもじゃないけどワタシ達程度の力では開かないデスッ!」 ミドリ姉が試しに開けようとしてみるが、つかみ所がほとんどない上に固いものだから、びくともしない。 この扉の前は、実装石といえどもそんなに大勢入れない狭いスペースになっている。 ミドリ姉以上の体格の者なら二匹一緒には行けないし、それ以下の体格の者は行くだけ無駄だ。 また扉は廊下側に蝶番があるため、せっかく開けても工夫しないと中の物を巧く運搬できない構造 になっている。 これは偶然の産物的仕掛けなのだが、実に巧く機能している。 って実は、これ単に建て付けを間違えただけらしいんだけどね。 成体実装が、順番に扉の前に立ち開けようと踏ん張るが、全然ダメ。 結局、このままでは今までと変わらない。 知恵を絞る時が来た。 紫親「中に親指ちゃん達が入って、中から押しながら一斉に開けてみるというのはどうデス?」 ——残念ながら、これは完全な失敗に終わった。 親指程度の力では、何のプラスにもならなかった。 緑仔「一回扉を閉じて、それからもう一度開けてみたらどうデチ? 蝶番が緩むかもしれないデチ」 蝶番なんて単語をよく知ってるなと思ったが、これは即座に却下された。 この扉には、実装石用のドアノブが付いてない。 だから一旦閉めてしまうと、もう二度と彼女達には開けられない。 最低限人間サイズの身長が必要になる。 黄親「何かでこじ開ける事が出来ればいいんデスが」 緑姉「こじ開ける?」 黄親「この隙間に何かを差し込んで、引っ張るデス」 赤親「何かって、ナニデス?」 黄親「例えば、細くて丈夫な棒とかデス」 赤仔「そんなもの、ここには全然ないデ…アレ?」 緑仔「なんか、似た様なものがあった気がするデチ」 黄蛆「棒レフ! おうちにあった、あの長い棒レフ!」 キイロ蛆の言葉に、全員が声を上げる。 以前、糞蟲一家を101号室に閉じ込めた際、外鍵として利用したあの棒。 “堕落の間”にありながら、唯一その設置意図が不明だった硬い棒。 それに、やっと気付いた。 …結構、気付くのに時間かかったな。 黄親「それはいいアイデアデス。早速試してみるデス!」 緑姉「取りに行きましょうデス!」 二匹の親は105号室に移動し、保管されていた例の棒を運んでくる。 キイロ親がミドリ姉の補助を受けて、扉の隙間に棒を差し込む。 1メートル程の長さの棒を半分ほど中に差し込み、はみ出た部分を両手で掴む。 何度か軽く引っ張ってみるが、問題なく引っかかっている。 黄親「イケそうデス! 早速やってみるデス!」 赤親「よろしく頼むデス!」 黄仔「ママ、がんばってテチ!」 紫親「どうか、お気をつけてデス…」 黄親「行くデス…。——どっせい!!」 ぐっ、ぐぐっ…… 黄親「ふんぬっ! グ・グ・グ・グ……ギギギギ!!」 ギリ…ギリギリ…ギリ…… 緑姉「アッ! ひ、開き始めたデス!」 紫仔「ホントテチ!」 黄蛆「ママ、丹田に力を集中させてゆっくり息を吐き出すレフ。そして一気に決めるレフ!」 キイロ蛆が沖一○みたいな事を言い出すと、キイロ親はその通りにしたようで、僅かに動きが止まる。 そして…… 黄親「 開 け ダ ギ ャ ア っ ! 」 グイッ! ギリ…ギリギリギリギリ……ガキッ! バキッ! ギイイイイ……… 気合一閃! キイロ親は、ついに物置の扉を開けた! だが…… ドサドサドサドサ!!! 黄親「デ?! デギャアァァッッッ?!?!」 緑姉「アーッ! キイロさーん!!」 黄仔・蛆「「マ、ママーッ?!」」 ギチギチに詰められていた内容物が、一気に降り注いでキイロ親を押し潰した。 さっきまでキイロ親が立っていた所は、様々な物品で埋められてしまい、彼女の姿を完全に覆い 隠してしまった。 緑姉「キイロさん! 大丈夫デス?!」 黄親「……グゲ……お、重……い。タスケテデス……」 緑姉「た、大変デス! 皆さん、手伝ってくださいデスぅっ!!」 中途半端に開いた扉を全員で協力して全開にして、さらに降り注ぐ内容物をどんどん廊下に移して いく。 緑姉・アカ親・アカ仔・ミドリ仔・ムラサキ親の順で、リレー運搬を行う。 幸い、降り注いできたものは特に硬くも重くもないものばかりだったので、キイロ親が重傷を負う様子 はなかった。 というか、それくらい自力脱出しろよ、キイロ親! 十分もすると、目を回したキイロ親がようやく発掘された。 黄仔「ものすごい量テチ!」 緑仔「これは、予想外の収穫デチ!」 赤親「早速、分類するデス」 黄親「うう、苦労した甲斐があったデス。メソメソ」 解放された物置の中には、隙間がほとんどなくなるほどにみっちり物資を詰め込んでおいた。 ここが、アパート内最大の物資供給ポイントなのだ。 実装石達は、見覚えのある物とそうでない物を分け、さらに知っている限り用途別に分類し始めた。 まずは、実装フード。 これが出てきた事で、皆は声を上げて喜んだ。 高級フード、中級フード、安売り物と、202号室にあったのとほぼ同じ量が出てくる。 さらに、ペットボトル入りの保存用飲料水。 災害用のものなので、年単位で保存の利くものだ。 これが2リットルペットボトルで10本、500ミリペットボトルで20本。 さらに、トイレットペーパー。 12巻セットのものが三つ。これで当分トイレは安心。 そして、タオル類。 このアパート内で初めて発見された布類だ。 いわゆる「お中元タオル」というもので、これが束の状態で大量に積み重ねられている。 交換用も含め、相当数を分ける事が出来る。 我が家で長年行き場に困っていたものだが、一応未使用新品なので、実装石達にとってはお宝の筈 だ。 特に、裸のムラサキ組はこれに大喜びだ。 今まで裸のままで段ボールの上に寝そべっていたのだから、これは当然の反応だろう。 他の皆も、ビニールの即席クッションではなく綺麗な布の上で眠れる事や、身体を拭くことができると いうので、心から喜んでいる。 見ているこちらも、思わず頬が緩んでしまう光景だ。 ——ここまでは、良かった。 黄親「これは、何デス?」 緑姉「えと…じ、実装服?」 紫「「「デ、デッ?!?!」」」 次に引っ張り出されたのは、実装服だった。 一番安価なものだが、袋に入ったままの新品が10枚。 成体用が5枚に、仔実装用が5枚。 もちろん、前掛けや靴、頭巾やパンツも一通り揃ったものだ。 紫親「服デス! 服デス! ああ、やっと手に入ったデス!」 赤親「待つデス! 誰もお前達に恵むとは言ってないデスっ!」 紫親「デデッ?!」 赤親「ワタシ達も着替えになるものが欲しかった所デス♪ なんせ暑いからすぐ汗を掻いて困ってた デス。これでも足りないくらいデス」 紫親「そ、そんな、酷いデス…」 緑仔「それに、ワタシ達も新しい服が欲しかった所デス!」 紫親「そんな! あなた達は服がそのまま大きくなるんデスから」 赤仔「つべこべ言うなデチ!」 おやおや、早速新規アイテム導入?の効果が出てきたようだ。 この実装服、それ自体には特に細工はなく普通に使えるものだが、わざと供給数を少なく設定した。 夏場という事もあり、着替えが欲しいと皆が感じているところに、わざと少ない数の新服を与えるわけ だ。 当然、争奪戦が発生する。 当初見込んでいた時期よりもかなり遅れて開放されたため、全体数が減ってしまってはいるが、この 服を欲しいと思う者は多い筈だ。 さて、禿裸のムラサキ組は、首尾よくこれを手に居れられるかな? 次に出てきたのは…… 黄親「これは……ゲゲッ?!」 緑親「ど、どうしたデス?!」 緑仔「アッ! 金平糖デチ!」 赤仔「本当デチ!」 紫仔「ママー、あれ欲しいテチ。食べたいテチ!」 紫親指「ご主人様にアムアムさせてもらった事あるレチ。とっても甘くておいしかったレチ♪」 紫親「デ…デデ…」 キイロ親が手にしているのは、お徳用サイズのビニールパッケージに入れられた、大量の金平糖。 袋の一部が透けているデザインのため、中身が見えて子供達が騒ぐ。 しかし、キイロ親とムラサキ親だけは、その袋を見て顔色を変えている。 ミドリ姉とアカ親は、そんな二匹の様子に小首を傾げていた。 袋には「 実 装 コ ロ リ 」と書かれている。 それを読む事が出来た実装石だけが、このアイテムの恐ろしさを実感できるのだ。 赤仔「何してるデチ? 早く分けてデチ」 緑仔「そうデチ! どうしたデチ?」 赤親「金平糖〜♪ ワタシもまだ一度しか食べた事がないデス〜♪」 紫仔・親指「「テチーテチー! ママー、金平糖ウマウマしたいテチー♪」」 赤仔「どうしてお前達まで食べられると思うデチ?」 緑仔「そうデチ。禿裸の癖に図々しいデチ。これはワタシ達禿裸じゃない仔達で分けるデチ! お前達の分はないデチ!」 紫仔・親指「「テテ?! テ、テェェェェン、テェェェェェン!!! 金平糖ウマウマしたいテチ〜〜!!」」 黄仔「ママ、どうかしたテチ?」 黄蛆「お顔が真っ青レフ。何があったレフ?」 黄親「これは…毒薬デス! 食べてはいけないものデス!」 「「「「「デ、デデェェッッ?!?!」」」」」 衝撃の言葉に、皆が絶叫する。 空腹状態でやっと発見した甘味、しかも実装石達の大好物である金平糖。 それをいきなり毒だと言われて、納得できる者が居る筈がない。…本来ならば。 アカ組・ミドリ仔&親指、ムラサキ仔&親指は凄まじいブーイングを唱える。 だがミドリ姉とムラサキ親、そしてキイロ組の子供達は、ただならぬキイロ親の態度に深く納得して いた。 これは公園で実装石駆除用にバラ撒かれる金平糖型の毒で、舐めたら最後苦しんだ末に死んで しまうものだと、キイロ親は丁寧に説明した。 しかし、反発組はそれでも納得しない。 特に、ムラサキの仔達の反発は凄く、どんなに言い含めても理解を示そうとしない。 どうも、以前にじあきに上げられていた時に貰った金平糖に対して、並々ならぬ思い入れがあるらしい。 その横では、力なくうな垂れるムラサキ親の姿がある。 これは、予想以上の心理効果を発揮しそうだ。 赤親「つべこべ言わずに寄越すデス! そう言って自分達だけで独占しようなんて、そうは問屋が 卸さないデス!」 黄親「ち、違うデス! 本当に毒なんデス!」 赤親「えーい、まどろっこしいデスっ!!」 お、アカ親が強引に金平糖の袋を奪い取った! 間髪入れずに袋を破り、中身を廊下にばら撒いてしまう。 赤仔「金平糖デチ〜♪」 緑仔「やったデチ〜♪ どんどんお口に詰める…レフィ〜♪」 赤親「何が毒デス。こんなにおいしくて素敵デス〜♪ あ、何勝手に取ろうとしてるデス!」 紫仔「テェェェン! ワタチにも分けてくだチャイテチ〜!」 緑仔「禿裸の糞ドレイに食べさせる金平糖はないデチ! 踏み潰されたくなかったらそこで羨ましそうに 眺めてるデチ!」 緑姉「ち、ちょっと、皆さん! あーっ!」 紫親「キイロさんが言った事は本当デス! これには実装コロリって書いてますデス!」 どうやら金平糖に心奪われた連中は、実装コロリをまったく知らない奴等らしい。 或いは、実装コロリが効果を発揮する瞬間を見ていないのか。 いずれにせよ、アカ組達と緑仔達は、まるで全部一度に食べてしまうつもりであるかのように、次々 に口の中へ粒を放り込む。 最初は止めようとしていたキイロ親も、アカ親に激しく抵抗され、ついに諦めた。 ムラサキ親も、泣き叫ぶ子供達を慰めながら、四匹の狂宴を見守った。 黄親「そろそろ効果が出てくるデス…」 緑姉「デデ…そんな…皆さん…」 紫親「……デス…」 五分経過し、十分経過する。 しかし、四匹にまったく変化は訪れない。 ただ、どんどん粒が消費されていくだけだ。 二十分経ち、ついに袋の中身が完全に空になったが、それでも四匹はピンピンしていた。 死ぬどころか、嘔吐する様子も脱糞する様子も見られない。 黄親「デ…デデ?!」 赤親「何が毒デスか! 全然平気デッス!」 緑親指「キイロのオバチャン、ウソつきレチ!」 紫仔・親指「「テェェェェン、テェェェン! やっぱり食べたかったテチ〜!」」 紫親「どういう事デス? 確かにそこにはコロリって…」 黄親「書いてあるのに…変デス」 実は、これは細工物だったりする。 実装コロリの中身を出し、徹底洗浄した上で乾燥させ、中に本物の金平糖を詰めたものだ。 だから、アカ組達が死ぬ筈なんてない。 もし、文字が読める賢い個体が居たら、これを巡って仲間内に波紋が起きる。 読める物が居なかったら、そのまま食料の足しになる。 その程度で加えたイタズラアイテムなのだが、思いのほか効果があったようだ。 これを毒物と主張したキイロ親は、いきなり皆から冷たい目で見られるようになった。 紫親「キイロさん、ワタシは信じるデス」 黄親「ムラサキさん…ありがとうデス」 紫親「字が読めるのは、ワタシ達だけみたいデスね」 黄親「デス…」 まだまだ物資があるので、ひとまず仕分けの続きを始める事になり、この場は一旦収められた。 次に出てきたのは…… 紫仔「あっ! 積み木テチ!」 紫親指「ボールレチー♪ おもちゃいっぱいレチー♪」 赤仔「どきやがれデチ! どれどれデチ?」 緑仔「何があるか物色するデチ!」 紫仔「テ、テェェェン! また盗られたテチ〜!!」 紫親指「レピャァァァァン! ボール遊びしたいレチ〜!」 物置部屋の中からは、小型の段ボールに詰められた実装石用の玩具が沢山。 積み木にボール、クッションにミニカー、飛行機の模型に動物のぬいぐるみ、プラスチックのままごと セットなど。 小柄な親指でも楽しめるような、豊富な種類の玩具が揃えられている。 ——すべて一種類ずつだけ。 何一つとして、他の仔実装と一緒に共有して遊べるものはない。 独占欲の強い仔実装にとって、これは宝物であると同時に、他の仔実装への対立意識をかもす材料 となってしまう。 すでに、あらゆる楽しみを奪われた紫の仔達と、アカ仔・緑仔達との間に激しい火花が飛び散って いる。 紫仔「どうチてオネエチャン達はみんなワタチ達から取っちゃうテチ? 仲良くみんなで分けるテチ!」 赤仔「何言ってやがるデチ! 禿裸の分際でナマイキ言うんじゃないデチ」 緑仔「まったく、自分の立場もわきまえない奴はこれだから困るデチ」 赤親「仕方ないデス。禿裸にされて恥ずかしげもなく生き続けているような連中デス。いやしくて惨め なのは当然デス」 緑親指「レプププ♪ そんな奴等がワタチ達と同じ権利主張するなんて、図々しいにも程があるレチ!」 紫親指「マ、ママ〜! どうしてあの人達はワタチ達をいじめるレチ? 仲良くしてくれないレチ?」 紫親「デ…デデ…」 おもちゃはひとまず分類は保留として、残りの物資の探索が続けられる。 さっき零れ落ちてきたものは、以上でほぼすべてだった。 その他、ビニール袋や段ボール数種、古新聞紙や紙コップ、ワリバシなど定番の消耗品類が出て きたくらいだ。 しかし、物置の置くにはまだいくつか取り出されていないものがある。 キイロ親は、奥の方に潜り込んでさらに内部を物色した。 キイロ親の報告で、奥の方にはまだ実装フードやトイレットペーパー等がある事がわかり、皆は ひとまず安心した。 物資は一旦102号室に運ばれ、そこで食料以外の分担を行う。 各種消耗品やタオル類はほぼ均等に渡ったが、やはり問題になるのは「実装服」と「オモチャ」である。 アカ組とミドリ仔達は、ムラサキ組にどうしてもこれらを渡したくないらしく、ミドリ姉やキイロ親の 説得にも応じようとしない。 ムラサキ親は自分の立場をわかっているのかひたすら我慢しているが、子供達はピーピーと文句を 言って泣き叫ぶ。 どうやら、禿裸にされたという事がどれほど恐ろしいものなのか、まだ実感出来ていないようだ。 だから、自分達はまだ他の実装石達と同じ立場にあると勘違いしている。 ついに我慢の限界に達したムラサキ仔は、全然自分の味方をしてくれない母親に矛先を向けた。 紫仔「ママ! ワガママを言うあいつらをやっつけてテチ!」 紫親「デデ?! そ、それは…」 紫仔「どうチてママは何も言わないテチ? ワタチ達にも権利があるテチ! これは皆で分けるって キイロさんが言ってたテチ! なのに…」 ボカッ! 突然、ムラサキ仔が前のめりに倒れた。 ミドリ仔に突き飛ばされて転んだのだ。 緑仔「ピーピーうるさいデチ!」 紫仔「テ…テ、テェェェェン!! テェェェェン!! テェェ……プギャッ!」 バキャッ 今度は、アカ仔がムラサキ仔の顔を張り飛ばす。 赤仔「こいつは何べん言ってもわからないアホの仔デチ。お前とワタシ達は対等じゃないんデチ!」 紫仔「テ、テェェェ…」 紫親指「そんなのないレチ! ワタチ達もおんなじ…キャッ!」 紫親「あっ、何をするデス?!」 ムラサキ親指に、ミドリ親指が掴みかかる。 緑親指「こいつら、いい加減ムカついてたレチ。ちょっと頭いいからっていつのまにかワタチ達と同じに なったつもりでいやがるレチ。立場をわからせてやるレチ!!」 黄親「みんな、やめるデス! どうしてそんな事をするデス?!」 緑姉「コラ! どうして弱いものいじめするデス! いい加減にしなさいデス!」 緑仔「何言ってるデチお姉ちゃん。これはママが言ってた事デチ!」 緑親指「そうレチ。髪がなくて服も着てない仔は殺してもいいんだって。本当は生きてちゃいけない仔 なんだって。お姉ちゃん忘れたレチ?」 緑姉「デ……そ、それは……」 緑仔「ママが拾ってきた孤児の赤ちゃんを禿裸にして、ワタシ達のおもちゃにしてくれた事があったデチ」 緑親指「そうレチ! あの時その仔を一番面白がって殺したのは、お姉ちゃんレチ!」 緑姉「そ、それは違うデス! なんて事をいうデス!!」 ミドリ組の間で、何やら興味深い会話が始まっている。 え…あの良識派のミドリ姉が、昔そんな事を? 緑姉「ワタシは、あの仔を…」 緑仔「この前のモモちゃんみたいに、抱き締めて殺しちゃったデチ!」 緑親指「殴って遊んでた禿裸を取り上げて、ギューッって潰しちゃったレチ!」 赤親・黄色親・紫親「「「デ……?!」」」 紫仔・親指「「テ……!」」 黄仔・蛆「「…」」 緑姉「それは違うデスっ! あれは、ワタシが助けようとして…それで……」 緑仔「お姉ちゃんもワタシ達のことを悪く言えないデチ」 緑親指「だから、何も言わないでそこで見ているレチ!」 再び、ミドリ姉妹達の暴行が始まろうとする。 だが、今度はキイロ仔と蛆が立ち塞がった。 緑仔「何をするデチ?」 緑親指「いくら年上でも、お前達みたいなちっちゃいのには負けないレチ!」 黄仔「まあまあ待つテチ。それよりもっと大事な事があるテチ」 黄蛆「そうレフー。皆さんがこっそりご飯を隠していた事、ワタチ達はまだ許してないレフー」 赤親・仔・緑仔・親指「「「「デ、デベッ!!」」」」 黄仔「あの時はそのおかげで助かったテチけど、これからもあんな事されたら、黙ってるわけには いかないテチね」 黄蛆「レフレフー。ここにあるものはみんなで仲良く分けないとダメだってお話、みんなも賛成したレフ。 なのにそれを破ったのに、皆さんはまだその分の罰を受けてないレフ」 赤親「な、何を言い出すかと思ったら、バカバカしいデス!」 緑仔「もう、ご飯はみんなで食べたデチ! 今更そんな昔の話したって無駄デチ」 緑親指「そうレチ! 変な事言うとお前達も蹴飛ばすレチ!」 冷や汗を流しながら、逆に脅迫しようとする悪玉達。 だがキイロ仔達はまったく臆する事もなく、さらに続けた。 黄仔「こんな事は言いたくなかったテチけど」 黄蛆「マラ実装のママの仔のお姉ちゃんが、どうして普通の実装石だと思ったレフー?」 赤親「デ?」 黄仔「ワタチがペットショップで処分される事になった理由、聞きたいテチ〜?」 黄蛆「言ってる意味がわかるレフー?」 赤親「デ……デデ……」 二匹が、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべる。 その瞬間、アカ親の顔が硬直した。 赤親「デ…わ、わかったデス! 好きな物を持っていくデス!」 赤仔「デ?!」 緑仔「あ、アカママ?!」 緑親指「突然どうしたレチ?!」 赤親「いいから、言う通りにするデス! この仔達と関わっちゃダメデスっ!」 赤仔・緑仔・親指「「「デ、デェェェェェ?!」」」 アカ親に引っ張られて、三匹の子供達は102号室から退出した。 その場に残された他家族は、しばし呆然としていた。 黄蛆「これで服とオモチャが分けられるレフー」 黄仔「服とオモチャはムラサキさん達で最初に取るテチ。ワタチ達はその後に少しだけ分けてもらうテチ」 紫親「キイロちゃん達、ありがとうデス!」 紫仔・親指「「テッチュ〜〜ン♪」」 早速、ムラサキ組は実装服を身につけた。 髪はまだないが、親と仔はそれなりに見られる姿になった。 だが親指用の服はないので、ムラサキ親指だけは相変わらず裸んぼのまんまだ。 それでも、ボールを分けてもらいご機嫌になったので、ひとまず落ち着いたようだ。 黄親「後は、皆さんの髪の毛さえなんとかなればいいんデスが…」 紫親「髪の毛は、なんとか取り戻したいデス。このまま、あの人達にバカにされ続けるのは辛いデス。 ワタシは我慢出来ても、この子達が…」 黄親「一つだけ、方法があるデス」 紫親「デ? ホントデスか?」 黄親「デスが…皆さんにはとても痛い思いをしてもらう事になるデス。それが我慢できるなら…」 紫親「が、我慢できます! 方法があるなら、是非教えて欲しいデス!」 紫仔・親指「「お願いしますテチュー!」」 なんだか、おかしな方向に話が進み始めた。 黄親「皆さんの頭の肉を、カッターで削ぎ落とすデス」 紫「「「……デ?」」」 黄親「パパから聞いたデス。実装石の髪の毛を復活させるには、それしかないデス。ただし、傷が 塞がるまでとても痛いし、完全に前と同じ状態になれるとは限らないデス。ひょっとしたら、 ものすごくみっともない生え方になってしまうかもしれないデス。それでもいいデスか?」 紫親「削ぎ落とすって…ど、どれくらいデス?」 ムラサキ親の質問に、キイロ親は手で想定範囲にあたる部分を撫でて答える。 みるみるうちに、顔が青ざめていく。 紫親「そ、そんなにデスか?!」 黄親「最悪の場合、親指ちゃん達は痛みでショック死する危険もあるデス」 紫仔・親指「「テ、テヒャッ?!」」 紫親「デヒッ?! そ、それは…す、少し考えさせてほしいデス…」 黄親「わかりましたデス。その気になったら、いつでも相談してくださいデス」 虐待されていた時の事を思い出したのか、それとも親指が死ぬかもしれないという言葉にビビった のかはわからないが、ムラサキ親は頭をブンブン横に振って後ずさった。 まあ、こいつらにとっては、リスクがデカすぎるだろうからなあ…痛みを与えられるという事についても 過敏になっているだろうし。 ■■■ その後、しばらくしてアカ組達と合流したキイロ組他の面々。 実装服をまとったムラサキ組に不満げな表情を浮かべるアカ仔達だったが、分け前に成体用実装服 を3着とオモチャの配分を貰った事で、一応溜飲は下げられたようだ。 次の探索をするかどうかという話になり、ミドリ親指は次に「死角」の探索を主張した。 201号室にも興味はあるが、何かきっかけがないと開けられないだろうという事を理解したようだ。 これには、全員が賛同した。 遅い昼食を済ませた一同は、まず101号室の死角調査から始める事にした。 ポイントは、「押入の上の段」と「キッチン」の二箇所。 まず、押入の探索から始められた。 このアパートの押入の高さは、約65センチ。 ここに居る成体実装石の身長より若干高いため、上に何か乗っていてもすぐ下から見る事はほとんど 出来ず、奥の方に何か入っていても絶対に発見できない。 後ろに下がっても、襖の関係で巧く隠れてしまい、見えなくなってしまうのだ。 色々相談した結果、今回は親が仔実装を持ち上げ、中を確認してもらう事になった。 まず、キイロ親がキイロ仔を抱き上げ、上の段に上らせる。 窓から差し込む光を頼りに、キイロ仔は奥の方へと進んでいく。 しばらくして… 黄仔「何もないテチー」 という返事が返ってくる。 次に、流しだ。 ここは高さ80センチ、ガスコンロ置き場の高さが70センチと、押入より到達難度が高い。 実装石達は、ここに水道があることから水が出る場所だという理解はしていたようだが、水場が どういう構造になっているかまでは、わかっていないかもしれない。 ここは相談の結果、ムラサキ親と仔が協力して調べる事になった。 ムラサキ親の頭の上にムラサキ仔を乗せてもらい、ゆっくり立ち上がってキッチンに接近、頭の上で 仔が立ち上がり、これでようやくガス台に手が届くという状態になる。 家事が出来る実装石の成体でも、これくらいのサイズのキッチンを使う場合は、50センチ級以上の 土台を使うらしいからなあ。 本人達からすると、この昇降はかなりアクロバティックだと思う。 紫仔「テ、テェェェ!? た、高いテチ〜! 怖いテチ〜!! テェェェン、ママ〜!!」 ブリブリブリ 紫親「テギャッ! そ、そんな所でウンチしちゃダメデス!」 母親恋しさか、つい下を見てしまったムラサキ仔は、その場でへたり込んでしまってキッチンの水場 を覗き込む事もできないでいる。 その様子を見て、アカ組とミドリ仔・親指がゲラゲラとあざ笑っている。 紫親「お姉ちゃんなら勇気出すデス。ホラ、ちょっとだけそこから覗いてみるデス! そしたらすぐ 降ろしてあげるデス!」 紫仔「テ、テェェェェン! こ、怖いテチ〜! 怖くて無理テチ〜! 動けないテチィィ! テェェェン!!」 紫親「ど、どうしましょうデス?!」 ムラサキ仔は、ガス台の上で完全に凍り付いてしまっていた。 よほどの高所恐怖症なのか、それともにじあきに何かされたのか。 流しではしばらく膠着状態が続きそうな雰囲気だったので、その間に俺は、にじあきの携帯に電話 して聞いてみる事にした。 『ああ、あいつなら、思い当たる事あるよ』 「何したんだよ、お前?」 『いや、単に紐で身体縛って俺の頭の高さくらいから何べんも突き落としただけ。床にぶつかる直前で 引っ張って叩きつけられないようにしてさ。いわゆる強制連続バンジージャンプって奴さ』 「そ、それ…面白そうだな」 『やるなら、糞抜きしとけよ。さもないとえらいことになるから。あいつの場合、空腹状態で一日放置して、 翌日にこれを三十回やって最後まで気絶しなかったら食事を与えるって言ってたんだ。なかなか反応 が面白かったぞ』 「鬼だな〜。で、こいつはそれで飯食えた事あるのか?」 『いや、二十回目くらいで俺が飽きちゃって、床に叩きつけてばっかりだったから、一度も食ってないよ』 ……本当に外道一直線だな、にじあき。 しかし、これでムラサキ仔が高い所を異様に恐れる理由がわかった。 気が付くと、救援としてキイロ仔が昇っていた。 せっかく貰った新品の実装服とパンツが、大量の糞でべしゃべしゃに汚れている。 かろうじて気絶や仮死状態には至らなかったが、顔は引きつり身体は硬直し、えらいことになっていた。 つかムラサキ親、どうしてこんな子供を上らせたんだよ…。 キイロ仔の報告により、キッチン周りには何もない事が判明した。 紫親「ここを調べようといったのはワタシですから、せめてお役に立とうと思ったんですが、すみません デス…」 黄親「気にしないデス」 赤親「無様で面白かったデス〜♪」 緑仔「今度ムラサキの仔をまたここに上げてやるデチ〜」 赤仔「それはいい考えデチ〜☆」 緑姉「ど、どうしてそういう事を言うデス?! いい加減にしなさいデスッ!」 緑親指「モモちゃんを死なせたオネエチャンに、そんな事言う資格ないレチ!」 緑姉「デ……」 すでに、ミドリ姉の叱り付けは、ミドリ姉妹達にはまったく効果がないようだ。 ミドリ仔の体格が大きくなった事もあり、また親指はそっちの方になついている事もあり、すでにミドリ 姉は孤立状態に近い。 こいつ、なんか色々と根が深そうだなあ。 こんな調子で、この日は一階のすべての部屋が調べられた。 しかし努力の甲斐もあり、いくつか新発見もあった。 まず、103号室。 ここのキッチンの水場には、ペンチが置かれていた。 長さ18センチほどのもので、(彼女達は試してないが)切れ味バツグンのド新品だ。 これがあれば、成体実装石でも針金くらいは切断できる。 次に、105号室の押入。 ここには「毛布」が用意されていた。 ただし、たった一枚だけ。 巧く使えば一家全員がくるまれるだけの大きさがあるが、今は真夏。 さすがに誰も、これを欲しがろうとはしない。 106号室にも、あらたな発見があった。 ここのキッチンのガス台奥には、一本の鉄串が置かれていた。 長さは20センチ強で、実装石にとってはちょっとした剣のようなサイズだ。 だが、皆はこれの使い方がピンとこないらしく、ひとまず回収だけした。 最後の発見は、107号室の押入上段奥にあった。 350ミリペットボトルに入れられた、薄茶色の液体。 ひとまず回収はされたが、誰もこれの意味を理解できなかった。 飲み水にしては色が不気味で、しかもキャップを開けると、思わず顔を背けたくなるようなきつい臭気 が漂う。 実装石達も、モニターの向こうで顔を背けている。 どうやら、これは役に立たないゴミだと判断されつつあるようで、アカ組達は廃棄を主張している。 だが、キイロ親だけは何か気付いたようで、とりあえずしばらく保管しておこうという話で落ち着いた。 107号室の探索が終わる頃、夕陽も落ち、かなり暗くなり始めた。 照明がまったくないアパート内では、暗くなる事イコール休憩の準備を始める時間となる。 各家族は102号室で食事を摂りながら、今日の収穫についての話題に華を咲かせ、明日は二階の 探索を行おうと話をまとめていく。 全員賛成の意見がまとまったところで、食事会はそのままお風呂大会・就寝前のトイレ大会へと移行 し、今日もなんとか一日が終了した。 ずっとモニターの前に座り、メモを走らせていた俺も、今日はさすがに疲れが溜まった。 とっとと風呂に入ってメシ食って、早めに眠ろうかと考える。 今日は一部メンバー間の衝突があったが、この程度ならまあ安泰な方だろう。 ちょっとアカ組とミドリ姉妹が調子に乗り始めている気がするが…この辺は後々のウォッチ対象として 注目しておこう。 「はいよっ…と。今日もお疲れさんでした」 各家族が部屋に戻り、数十分経過して動きが見られない事を確認すると、俺はモニターの電源を 落とし、風呂に向かった。 ■■■ クチュン!! ?「——テ?」 ?「こ、ここはどこテチ?」 ?「ママ? 親指チャン? どこにいるテチ?」 ?「あれ? お布団がないテチ! それに冷たいテチ!」 ?「お尻が冷たいテチ! ふえっ…お、お服もないテチ! また裸んぼテチ!」 ?「ママー、親指チャアン、どこに行ったテチぃ? ワタチを一人ぼっちにしないでテチィ!」 ?「…あれ、ここ…この手触り、覚えてるテチ。ここは、今日ママが上らせた高い所に似てるテチ。 この冷たい感じ、おんなじテチ!」 ?「ど、どうしてこんな所に居るテチ?! なんで? なんでテチ? …テ、テェェェェ!!」 ?「アレ? アレ? 壁があるテチ! ここから先に行けないテチ! どうなってるテチ? 落っこちちゃうテチ? ふぇ…ふぇぇぇぇ…テ、テチャァァァァッッッ!!!」 ガツン! …どてっ ?「テチャァァァッ!! 転んだテチィ! つまずいたテチィ! こんなところに変なのが落ちてるテチィ! 痛いテチィィィ! テェェェェェェン、テェェェェェェン!!!」 ?「ママー! ママー!! ワタチ、怖いテチィ! 何にも見えないテチィ! テェェェェン!!!」 ?「デププププ♪ 無様な奴にはあの寝床がお似合いデチ♪」 ?「ママンに気付いてもらえるまで、せいぜい泣き喚いているがいいデチ♪」 ?「チプププ♪ 禿裸を苛めるのは楽しいレチ☆ 見つかっても、毎晩ここに連れてきてやるレチ♪」 (続く) ----------------------------------------------------------------------------- ■ 現在の状況 □ ●アカ組:親×1、仔×1 ●キイロ組:親×1、仔×1、蛆×1 ●ミドリ組:仔×2、親指×1 ●ムラサキ組:親×1、仔×1、親指×1 残っている実装石:11匹 これまでの犠牲者:21匹 ・モモ仔1、2、蛆 …エレベーター実験の犠牲になり死亡 ・アカ仔2 …206号室で、ゴキブリに襲われて死亡 ・アオ親指2 …206号室でアオ仔4に首を落とされて死亡(事故) ・アオ仔2、4 …206号室でネズミに襲われて死亡 ・アオ親指1 …アオ親に壁に叩きつけられて死亡(事故) ・アオ仔1、3 …激昂したアオ親に踏み潰されて死亡(事故) ・アオ親 …子供全滅のショックで、偽石崩壊 ・モモ新仔1、2、3 …出生直後、キイロ親2に間引かれる ・モモ親 …子供をほとんど失い、ショックで自壊&偽石崩壊 ・糞蟲仔1、2 …トイレ拷問中、糞蟲親に偽石を破壊され死亡 ・糞蟲仔3 …糞蟲親に蹴飛ばされて死亡 ・糞蟲親 …キイロ親2の必殺技を受けて自壊・死亡 ・キイロ親1 …糞蟲親によるダメージと精神的ショックのダブルパンチで自壊・死亡 ・モモ親指 …ミドリ姉に抱き締められて圧死 ● 覚え書き ○ ・アパート内は猛暑状態 ・二階の死角探査、翌日実行 ・ペンチ、毛布、謎の液体発見
