タイトル:【虐・蒼愛】 君の瞳に映るもの
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4790 レス数:0
初投稿日時:2006/10/22-18:33:17修正日時:2006/10/22-18:33:17
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『君の瞳に映るもの』



「ふぅ……なんでこんなに暑いんだ……」

今は8月に入ったばかり、季節は夏真っ盛りであり俺は早朝から倉庫の整理をしていた。
もともと俺の家の倉庫は広くいらない物まで大量にある、そのせいで何年も前からこの倉庫に住み着いている年代物だってある。
そういった物を分別し必要無いと思ったものは粗大ゴミに出す為だ。
早朝に整理をしていたのは涼しい時間帯ならはかどると思ったからである、今年の夏は去年よりも更に暑い、また最高気温を更新しそうだ。
時間的に太陽が真上を向く頃に倉庫整理は終ろうとしていた、だが最後の荷物を手に取った時、手が止まる。

「こいつは…………」

手にしたのは何の変哲もないただの「金魚鉢」、形は丸いが結構な大きさでかなりの数の金魚が飼育できる代物。
しかし俺が生まれてからこの金魚鉢で金魚を飼った記憶は無い、俺の記憶にあるのは…………

「そうか……あれからもう……そんなに経つのか……」

俺はこの金魚鉢について思い出す、そう……あれは今日みたいな暑い日の事……



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俺には両親がいた、厳しくも優しくかけがえの無い家族が……
俺の父さんは今ではそれなりに有名になった企業の社長をやっており、母さんはその秘書をしていた。
そんな両親の一人息子として生まれた俺。
仕事柄滅多に家に帰ってこれない両親だったが家に帰ってくるといつも一緒にいてくれる、そんな両親が俺は大好きだった。
親の苦労を小さいながら理解していた俺は殆ど我侭を言わなかった、だからたまに会える時に沢山甘えたのだ。

息子の俺が言うのもなんだが父さんは何でもできるヒーローのような人で会社でも沢山の部下から慕われ、尊敬される程である。
そんな父さんは俺に厳しく教育をした、『甘やかすだけが親の愛ではない』と口癖のように言っていたのを思い出す。
また、厳しく教育しながらも俺と遊ぶ時は目一杯遊んでくれた、そう……『やるからには徹底的に』、これは父さんのもう一つの口癖だ。
そして母さんも同じように俺が悪い事をしたら厳しく叱り、良い事をしたら目一杯褒めてくれた。

俺が少し大きくなってから父さんは趣味であった実装石の虐待を教えてくれるようになり、俺はすぐにのめり込んだ。
父さんが教えてくれる事はどれも子供心には新鮮に映り、その一つ一つを何とか覚えていく。

この金魚鉢はそんな虐待道具の中でも父さんが最も得意とする虐待法である。
最初はどのように使うか分からなかったが聞いていくと納得のいく道具だと言う事が分かった。



俺の瞳は父さんの背中をいつも見つめていた、早く父さんみたいな人になりたい、そんな気持ちで毎日を過ごしていた。






しかし…………その夢は永遠に叶う事は無かった…………

俺が高校受験に受かり春からは晴れて高校生になろうという時だ……
家で合格祝いのパーティをする為に無理に仕事を早く終らせた両親は急ぐように車で帰宅していた。
だけど俺が待ちきれずに両親に催促したのが間違いだったのかもしれない…………


俺は警察から連絡を受け病院へと向かった、そこで待っていたのは変わり果てた両親の姿。
状況がよく理解できていない所に警察と医者が俺の傍にやってくる。

どうやらトラックの運転手の飲酒により起きた事故。
両親は瀕死の重体で病院に運び込まれ、医師の健闘虚しく命を落とした……
そして事故を引き起こした運転手は重体であるものの一命は取り留めたという……

どうして?
何故?

その言葉しか頭に浮かばなかった、人の為に頑張りあれほど慕われていた両親が命を落としその命を奪った本人が何故生きている?
混乱している頭で何とか警察の話を聞き終えると俺はその場に座り込む。
その後はよく覚えていなかった、ただ無理矢理にでもこの状況を理解しないと俺自身が壊れてしまうと思っただけだ。
ただ、医師の話では父が少し意識を取り戻し、俺に伝えるようにと言った言葉があるという。

その言葉は『すまない、でも幸せになってくれ』という内容だった。
父はその直後に事切れたそうだ……


両親の葬式の後、父さんの会社で副社長をしていて父さんの親友関係にもあるおじさんが俺を引き取ると言った。
俺も小さい頃から面倒を見てもらっているのでその申し出は嬉しかったが丁重に断る。
おじさんにはこれから父さんの代わりとして社長を任されるようになる、俺がいると余計に迷惑をかけるだけだ。

俺には親戚がいないので本当の意味での「天涯孤独」、この先たった一人で生きていかなくてはならない。
後に遺されたのは一人で暮らすには大きすぎる家と莫大な遺産、孤独という名の二文字。
一度にいろいろな事があり気持ちの整理ができていないが、幸いにも幼少の頃から一人で過ごす事が多かった為、一人暮らしは慣れている。
そして長い時間考え、出した結論はこのまま高校に進学し大学も出て就職しようという事だった。
職についてはおじさんから副社長の席を空けておくと言われたので就職活動する心配はない。




その後春になり高校に進学。
さすがに慣れるまで時間がかかったがうまく学校にもなじみ始めた頃、思い出したように俺は実装石を虐待してみようと思った。
思えば最後に虐待したのは高校受験直後、皮肉にも両親が命を落とす直前で今まであまり気が進まなかったのだろう……

既に季節は春から夏に変わり蝉の鳴く声が聞こえる。
長い間実装石を虐待していなかったので腕や勘が鈍っているかもしれない、ブランクを埋める為にも準備に移る。

そこで取り出したのがあの金魚鉢、父さんに教わったこれを使って実装石を精神的にも肉体的にも追い詰めてみよう。
ここ連日は初夏でありながら異様な程高い気温で毎日最高気温を更新しており絶好の虐待日和である。



翌日の早朝、俺は近所の公園に足を運び適当なベンチに座る、ここの公園は結構な面積を持っていてあちこちに実装石が住み着いている。
ベンチに座ると朝早いにも関わらずすぐに実装石達が群がってきた、その数およそ30匹といったところ……
まったくついこの前盛大な駆除をしたみたいなのになんでこんなに早く増殖するかな……

『デプププ……おいニンゲン!いますぐかわいいワタシにステーキを献上するデスゥ!』
『特別にお前の狭い家に飼われてやるテチィ!感謝するテチィ!』
『コンペイトウを出せば仕方ないからお前をドレイにしてやるテチィ!』

それぞれが好き勝手な御託を並べている、まぁこれはいつも通りだから別に構わない。
俺が今回欲しいのは親子愛に満ち溢れた『糞蟲』、できれば仔の数は3〜4匹が望ましいがそんな簡単には……

『おい糞ニンゲン!高貴で聡明なワタシと可愛い子供達を最高の待遇で飼う事を許可するデスゥ!』
『ママこのニンゲンが新しいドレイテチ?』
『やったテチ〜♪これでまたステーキとお寿司食べ放題テチー!』

ビンゴ、こんなすぐに見つかった、しかも俺が望んだ通りの糞蟲親子じゃないか。

「別に飼ってやってもいいがそれには試験に見事合格しないと無理だぞ?」
『デスゥ?試験デスゥ?』
「あぁそうだ、だが別に難しい内容じゃない、どんなクズでもできるような試験だ」
『デプププゥ……お前はバカデスゥ……そんな簡単なのすぐにクリアしてやるデスゥ……』
「じゃあやるんだな?やるなら着いて来い」

そう言って俺は公園の出口に向かう、ただそのやり取りを聞いていた他の糞蟲達は当然黙っていない。
自分の方が可愛い、ワタシにしろ、早く飼え……リンガルには拾えきれない程の文句が並べられている。
正直この糞蟲親子以外には興味が無い、うるさいし邪魔なので全部駆除してから公園を出る。
どうやらそれほど腕は鈍っていないようだ、残りの糞蟲を駆除するのに時間はかからなかった。
帰り道俺はごく普通の速度で自宅へ向かうが実装石にとっては凄まじい速さなのだろう、あっと言う間に離されていく。

「おい、そんなにだらだら歩いていると日が暮れるぞ!来るならもっと早くしろ!」

そう言った俺に親蟲文句を言いたそうな顔をしていたが、酸素の供給と子蟲への配慮が全く足りていないのでそんな暇はないようだ。
仕方がないので歩く速度を少し緩める、これなら大丈夫なはずだがそれでもギリギリ付いてこれるといった感じだろう。
帰り際にリンガルを見てみると少し落ち着いた親蟲が今後の生活を妄想して笑っている、正直嫌悪感を感じるどころのレベルじゃない。

しかし、興味深い事にこの糞蟲親子は元飼い実装らしい、最近あの公園に捨てられたそうだ……
俺はうんざりした、また半端な「愛護派もどき」の連中が適当に飼い、自分の手に余るといって勝手に捨てたのか……

俺は真の「愛護派」とは虐待のような躾を施し、人間に絶対服従・迷惑を一切かけない実装石を育て、飼う奴の事だと思っている。
「かわいそう」「酷い」等と理由を付けろくな躾をせず実装石の好きなようにやらせる、そんなのは本当の愛護じゃない。
だから俺は実装石以上にそんな人間が許せない、そんな奴等がいるから元飼い実装の起こす事件が絶えないんだ…・・・
そういう意味では実装シリーズを厳しく躾け調教するブリーダーは本当の愛護派と言えるだろう。

そう思っているうちに家に着いた、後ろを振り向くと糞蟲親子はもう精魂尽き果てたといった感じで倒れこんでいる。

『デェー…デェー…おい糞ニンゲン…早くワタシ達に……食事を持ってくるデスゥ……』

着いて早々そんな事を言っている親蟲に俺は言い放つ

「はぁ?何言ってるんだお前、俺は『試験に合格したら』って言ったはずだぞ」
『デズゥ……なら早く……試験を……始めろデスゥ……』
「よし、ならこっちへ来い、試験の場所は庭だ」

俺は試験会場となる庭に親子を案内するとすぐさま試験内容の説明を始める。

「いいか、試験内容はいたって簡単だ、お前達親子は今から2時間『この中に』入ってもらう」

そう言って朝準備していた金魚鉢を親子に見せる。

『デスゥ……それで他に何をすればいいんデスゥ?』
「それだけだ、お前達はこの中にいるだけでいい、それが試験内容だ」

まぁ予想はしていたが内容を聞いた親蟲は「デププ」と笑い出した、あまりに簡単な内容なので楽勝と思ったのだろう。
そして追加で説明をする。

「ただしお前達がこの中に入ってる間は俺は『何もしない』」
『デスゥ?何もしないとはどういう意味デスゥ?』
「そのままの意味だ、お前達が何を要求しようが俺は何もしない、お前達は2時間この中で耐えなければならないんだぞ?」
『そんなの簡単デスゥ!さっさと始めやがれデスゥ!!』
「分かった、それじゃあ全員集まれ」

親子を一箇所に集め金魚鉢を逆さまから被せる。

「ここにタイマーを置いておく、これが『0』になったらちょうど2時間だ、それまでせいぜい頑張れよ」

俺はタイマーを2時間にセットし親子達のよく見える位置に置いて家に入る。

「やっぱり糞蟲だな、この試験の本当の仕掛けに気づいていないなんて……」

そんな言葉は連中には届いていない、親子そろって既に勝った気でいやがる。
自室に戻りパソコンの電源を入れる、実は庭には隠しカメラが設置されておりリアルタイムで映像を送り込んでくるようになっている。
当然糞蟲親子の金魚鉢もばっちり見える、更に音声も拾い自動的にリンガルで翻訳して流してくれるという優れものだ。

「さてと……どれくらい楽しませてくれるのか楽しみだ……」

予定よりも時間がかかってしまったがまだ大丈夫だ、俺が手を下さなくても『奴』が勝手に連中を苦しめてくれる。
俺は少し早いが軽い昼食をとるためキッチンへ向かった。



※現在時刻11:30
糞蟲親子の試験が始まって30分が経過した、パソコンに送られてくる映像を見てみると明らかに連中の動きが鈍くなっている。

「そろそろ効果が表れる頃か……」

始めは元気に金魚鉢の中を動き回っていた子蟲達も今はぐったりして、親蟲も元気が無く壁に寄りかかっている。
そう、この虐待の真の主は奴、『太陽』だ。
毎日最高気温を更新する程日中の気温は高い、外を歩くだけで汗がとめどなく流れてくるような天気が糞蟲親子をじわじわと弱らせていく。
金魚鉢に入れたのはその特殊な凸レンズ状のガラスが必要以上に太陽熱を集めてくれるからだ。
金魚鉢の天井(現在では底)には特有の歪みが空気穴の役割を果たすがそれは基本的に酸欠にならないレベルのものだ。
例えるならその中は天然のサウナ……いや、無尽蔵に内部温度が上昇するからこっちの方が性質が悪い。

そうこうしてるうちに中の状況が変わり始めた。

『もう嫌テチィーーーー!!こんなとこもう出るテチャァーーーー!!!』
『デッ!?我慢するデス!これに耐えれば飼い実装になれるデス!!』
『そんなのどうでもいいテチィーーーー!!暑くて死にそうテチィーーーー!!!』

最初に根を上げたのは一番小さい仔実装……妹仔実装か……まぁ当然といえば当然だな。
ここで俺は冷たく冷やしたコーラとうまそうに湯気を出す焼きそばを持ち庭に出る、これから奴等に追い討ちをかける為に。

『デデッ!?おいニンゲン!早くここから出すデスゥ!!このままでは暑くて死んでしまうデスゥ!!!』
『ドレイのくせに可愛いワタチをこんな所に閉じ込めるなんて許さないテチィーーーー!!』
「何言ってるんだ?最初に言っただろ?『どんな事があっても俺は何もしない』って、お前達が何を要求しても俺は『何もしない』」

その言葉にしばし呆然とする糞蟲親子、俺の言った意味がようやく理解できたのだろう。そしてこの試験の過酷さも……

『でもワタシ達が死んだら飼えなくなるデスゥ、お前だって困るデスゥ?』
「そんなのは知らん、お前がこの試験を楽勝だと言って受けたんだろ?なら最後までやり通せよ」

そして俺は持ってきたコーラの蓋を開けまずは一口飲む、そして熱々の焼きそばを一気に頬張る。

「かぁー!暑い時に飲むコーラってこんなにうまかったのかぁー!この焼きそばもいい味出してるなぁー!」
『ニンゲン!それをよこすデスゥ!!早く美しいワタシに飲ませるデスゥ!!グズグズするなデス!!』

そんな事を言ってくるが当然無視、俺は奴によく見えるようにコーラと飲む、過剰な演出かもしれないが実装石に大しては有効だ。

「はぁ……なんて幸せなんだ……まるで暑さが吹き飛ぶようだ……」

これは嘘だが頭に血が上ってきている糞蟲には効果は抜群だ、どんどん顔が赤くなってくる。

『デジャァァァァふざけるなデス糞ニンゲン!!さっさとここから出せデスゥゥゥゥゥ!!!』

当然無視、次々と持ってきた焼きそばを平らげ皿の上には何も残らなくなった。
その間糞蟲親子は金魚鉢を殴り、押し出したりしていたが無駄なあがきだ。

「その大きさは人間が持つのも一苦労な代物なんだぞ、お前等実装石如きが動かせるはずも無いだろ?」

さてと、もういいかげん部屋に戻るか、コーラを飲んだからといっても完全に涼しくなったわけじゃないからな。
帰り際俺は親蟲に「あと1時間ちょっとあるから頑張れよ」と激励の言葉を送ってやる。
その意味を理解したのだろう、親蟲の顔は今度は真っ青になっていた。


※現在時刻12:15
少し中に変化が起きた、さっき騒いでいた一番小さい子蟲が他の仔蟲や親蟲と距離を取っている。
理由はその一番小さい子蟲が我慢できなくなり糞をもらしたのだ、ここにはトイレなんて当然用意していない。
そしてこの気温で出された糞が異臭を放つ、そのとんでもない臭いに絶えかね親達が距離を取ったのだ。
この暑さと家族から孤立した事による精神的ショックからこの子蟲の偽石は乾いた音と共に割れた、最初の脱落者か。

この気温で奴等も相当まいっている、空腹もそうだが何より喉の渇きが辛い。
我慢しようにも中の気温はまだまだ上昇しているんだ、限界があるのは当然でいつ発狂してもおかしくないだろう。

俺は新しい飲み物を冷蔵庫から取り出しパソコンの前で飲んでいるとまた状況に変化が起きた。
それは姉妹同士の激しい喧嘩、どうやら暑さのせいで怒りがピークに達し肌の触れた姉妹同士で起きたものだ。

『デチャァァァァーーーうっとおしいデチィ!暑苦しいから傍に寄るなデチィーーー!!』
『ふざけるなテス!お前こそあっちへ行くテスゥゥーーー!!』
『お前達やめるデス!そんな事しても何もならないデス!』
『何言ってるテチ!もとはといえばママがあんな糞ニンゲンの言葉にホイホイ着いてきたからこうなったテチィ!!』
『そうテス!お前のせいで妹は死んだテス!!』

コレも金魚鉢の付加効果だ、この暑さで怒りの矛先がとうとう親へと向かいストレスの捌け口になっている。
怒った仔蟲達は親蟲を殴っている、しかし親蟲には大して効果は無い、それどころか余計に暑くなるだけだというのに……
そんな事も気づかない子蟲達は親蟲を殴り続ける、それをずっと黙っていた親蟲はとうとう……

『いい加減にするデスゥゥゥゥゥーーーーーー!!!!』
『テチャァァァァーーー!!』
『テスーーー!!!』

切れた、親蟲にも我慢の限界が来たのだろう、容赦無く子蟲達を殴りつけていく。
子蟲達と違い親蟲の攻撃は子蟲にとってはまさに一撃必殺、残りの仔蟲は母親の手によって葬られた。
もしかしたらこの子蟲達は幸せな方だったのかもしれないな、この先親が受ける苦痛に比べたら……

『デ!?デズゥゥゥーーーー!!!オロロローーーン!!!』

正気に戻った親蟲が号泣している、自分が子供を殺したのを理解したのだろう。
俺が愛情の深い実装石を選んだのはこの為、愛情が深ければ深いほどこの試験の罠に苦しむ事になるからだ。
仔を全て失った親蟲はしばらく泣き崩れていた。


※現在時刻12:45
あれから親蟲は金魚鉢の壁に寄りかかり虚ろな目をしてただ『デーデー』と呟くだけになった。
それまでは殺した仔蟲の分まで自分が幸せになろうと頑張っていたようだが無理だったようだ。
白く濁った目から精神が完全に死んでいる事が分かる、俺は金魚鉢から親蟲を出し公園に捨てた。
群がってきた実装石達は親蟲が無反応だと分かるとすぐにムシャムシャと食べ始めた、はっきり言って皆殺しにしてやりたい。
だが俺は金魚鉢や庭の掃除をする為に早々と帰路につく。

「やっぱり駄目だったか……父さんのようにはいかないな……」

帰り道の途中で父さんがあの金魚鉢を使い実装石を虐待している所を思い出していた。
やり方は俺と同じ…いや、俺が父さんのやり方を真似してみたのにどうにも上手くいかない。
父さんはもっと上手い、制限時間ギリギリまで淡い希望を持たせてタイムリミット直前に絶望させるやり方はもはや芸術だ。
やはりまだまだ俺は父さんには遠く及ばないようだ……もしかしたら一生追い越す事なんて無理かもしれない……
違うな、父親というのはずっと子供の前にいる存在だからこのままでもいいかもしれない。
でもそれでも俺は少しでも父さんに近づきたかった、虐待だけじゃない、人間として皆から慕われるようなそんな存在に。


それから俺は暇な時は実装石を虐待していった、もちろん日常生活や学校生活も一生懸命に取り組んだ。
そんな中俺は無事に高校を卒業、自宅に程近い大学に通っている。
時々おじさんに近況報告するのも忘れなかった、その度におじさんやその娘達に捕まるのは疲れるがそれでも元気にやっている。
おじさんの方も会社は順調だそうだ、流石父さんの親友で右腕だった人だと関心させられる程に。

今も一緒に暮らさないか?と言われるが俺はいつものように丁重に断るだけ、確かに今ならおじさんにもさほど迷惑はかからないだろう。
だがそれではきっと駄目だ、『あの時』俺が両親に我侭を言ったせいで事故にあった、だから今はまだ俺は幸せにはなれない。
おじさんはそれを否定したが俺にとっては同じ事だ、今をもっともっと頑張り父さんのようになれたらきっと幸せになれる。
その時はおじさんの誘いをありがたく受けよう、それまでは駄目なんだ。


考えてみると両親が亡くなってからは実装石に対して不思議な感情を持っていた、それは憎しみや恨みに近い感情だと思う。
別に実装石のせいで両親が亡くなったわけじゃない、その存在そのものが許せないのだろう……

『人間と非常に似た存在』でありながら『人間とははるかにかけ離れている存在』の実装石に。

自分達よりも体格や力が数倍ある人間にも常に見下す態度は変えない、人間だってライオンに喧嘩を売る程馬鹿じゃない。
何故こいつらが生きていて俺の両親が死んだのか、理不尽かもしれないがいつもそう思ってしまう。
だから俺は糞蟲に対しては容赦が全く無い、これからも糞蟲の虐待や虐殺を続けていくだろう。


俺はいつものように公園へ糞蟲の駆除や虐待に向かう、そこにはいつもと同じ光景が広がっているように思えた。

『ボクゥゥーーーーー!!!』

そこで俺は運命的な出会いをする………これからの俺の生き方を変える存在に、心から信じあえる存在に……




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



『…………ター……』

『………スター………』

『マスター!』

はっ、として俺は目が覚めた。

『マスター一体どうしたんですか?突然眠っちゃったみたいですけど……』

俺の傍には実蒼石のレンがいた、えっ……眠っていた?
どうやら倉庫整理の最後にあの金魚鉢を見つけた後リビングで考え込むように眠っていたみたいだ。
という事は今までのは全部夢?それにしてはビデオを再生していたかのように随分とリアルだったけど……

『体調が優れないなら無理しないで下さいね、最近お勉強を頑張っているみたいですから……』

そう言って心配そうな顔をするレン、この娘が家に来てから随分と変わった。
それは『ペット』としてではなく『家族』としてこの家にやってきたからだ。
それからのレンは家の仕事を進んで手伝うようになった、とても頑張り屋で明らかに自分の体長以上の仕事をやろうとする始末。
もちろん俺はレンが出来るレベルの仕事を手伝ってもらっている、無理はさせていない。
食事だってフードではなく俺と同じ物を食べさせている、寝るときだって同じベッドに寝ている。

家族が増えた事により俺の心は少しだけ軽くなった気がする、実装石に対して持っていた感情も少しは和らいだように感じる。

『マスター…………』

そんな俺を見つめるレン、よし。

「なぁレン、これから実装石を駆除しに行かないか?今週はまだ一度もやってないだろ?」
『え!?いいんですか!?』
「あぁ、たまには元気よく遊ばないとな、最近は家の仕事頑張ってくれてるし」
『マスター……ありがとうございます!』

元気に頭を下げるレン、本当に嬉しそうだ。

「じゃあ準備して行こうか、確か隣町の公園に最近住み着いた実装石がいるって町会長が言ってたから」
『はい!行きましょう!!』

玄関に走って向かうレン、その姿が微妙に懐かしい感じがする。
デジャヴ?いや…似てるけど違う、俺はレンの後姿を見てようやく謎が解けた。

「そっか……はは……そうだったんだ……」

やっと気づいた、今のレンは昔の俺そのものじゃないか……父さんに連れられ実装石を虐待していたあの時の……

レンは実蒼石なので当然実装石を狩るのが得意だ、しかしそれは生まれついて持っている本能に近いものがある。
人間のやるような駆除の仕方までは知らない、だから俺は常にレンに新しい事を教えている。
レンも覚える事がどれも新鮮で俺が教えた事をまるで水を吸うスポンジのように身につけてくれる。

『マスター!早く早く!行きましょうよ!』
「はいはい、すぐ行くよ」

急かされて家を出る俺とレン、レンは俺の横をぴったりと並んで歩いている、俺もレンの歩く速度に合わせ、手を繋いで歩く。





父さん……俺はもう父さんを超える事は無理かもしれない……でも今はそれでいいと思う。

小さい頃……俺の瞳には父さんの背中しか映っていなかった……でも今の俺にはレンがいる。

俺の瞳にはレンが映っている……『背中』ではなく正面からの姿が……

だから今の俺はまるで父親のような気持ちなんだろう……娘を持った親の気持ちで今もこれからも生きる。



レン……君の瞳には何が映っているのかな?もし、その瞳に映るのが俺の姿ならそれはとても嬉しい……

君の瞳に映るものが俺なら……その想いに精一杯答えたい。



俺がずっと傍にいる……だから君もずっと俺の傍にいてくれ……

ずっとずっと……いつまでも……『君の瞳に映るもの』が……












※後書き
最後まで読んで下さって本当にありがとうございます、「次は短めのを」言っていたのにまた長めのを書いてしまい反省しています。
前回は実装石の虐待描写が殆ど無かったので今回は虐待してみましたがどうでしょうか……。
誤字・脱字は許して下さい。

前回の主役だったレンは最後にしか出していません、実蒼石が嫌いの方はすみません。
次こそは短めのを書くか、それともまた長くなってしまうのか分かりませんがその時はご容赦下さい、それでは。

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