仮面実装 デキア 後編 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 異変に気がついて扉を開けた先は、衝撃的な光景があった。 ミャアがミッミーを馬乗りで殴りつけ、クレアが蛆ちゃんの背中に乗って居た。 乗られた蛆ちゃんは既に舌を出し、体液や胃液を吐き出して、真っ青な顔で目玉を飛び出させて事切れていた。 それでも、クレアは、その蛆ちゃんの背中で「テリューテッリュー!!」と尻を打ち付けて跳ねている。 辺りには壁や戸に転々と体液や糞が付着し、ボコボコに変形し、 体のいたるところがヘンな方向に曲がっているポピーが背中を向けて倒れている。 その近くには、2匹の蛆ちゃんが居たが、 1匹は腹部がペチャンコになりつぶれ、腸と思われる内臓が裏返って排泄口から飛び出し、口からも胃が裏返って出ていた。 1匹は無残に頭から腹まで真っ二つに裂けて内臓をブチ撒けて落ちている。 俺は唖然とした。 そして、ミッミーに乗っているミャアを引き離すが、既にミッミーの頭部はざくろの様に割れており、 ドロリと肉が崩れていく。 ミッミーは生まれたときの登録検査で頭部に偽石のある仔だと教えられた。 殴られた衝撃で偽石が砕かれ、その死体をさらに殴り続けられていたのだ。 それもそうだ、生後1ヶ月で20cm超えるミャアと生後2週間で13cmに届いたばかりのミッミーでは、 ウレタンボディとはいえ打撃の重みがまるで違う。 続いて、クレアも蛆ちゃんから引き離す。 只でさえ体格の違う仔実装に乗られれば弱い蛆ちゃんなどひとたまりも無い。 俺は2匹に何故こんな事をしたのか問いただした。 しかし2匹は「ワタシは悪くないテチィ!そいつらが悪いテチィ!」と言うばかりだった。 俺はふと思い出して、リンガルのメモリー機能を呼び出してみる。 何を言ったか、遡れるのだ…。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ワタシがチーテチュ!テシアになれるテチュ!」 「ワタチがテシアテチュ!チーはワタチテチィ!!」 「ワタシがチーでテシアテッチイー!!オマエタチが悪者テチィン!」 「ワタチがテシアだから、オマエタチが悪者テチュ!」 「レッフー…オネイチャン オナカ プニプニ シテレッフ〜♪」 「アタマ ポカポカスルレッフ♪アッタカ オウンチモ モレルレフー♪」 「レフーレフー…ワタアメ フワフワ キョウモ コロコロスルレフゥ」 どうやら普通にゴッコの頭に起こる主役の争奪戦か…しかし、大人しいウチの仔に限ってなぜこんな… どうなればこんな惨劇に繋がるというのだ… 「ワタシがテシアテチィ!」 「痛いテチィ!ミャアお姉ちゃんがミッミーを叩いたテチー!!デシアチップお返しテチィ!」 「やったテチュ!デシアパンチテッチュー!」 この位の姉妹喧嘩はしょっちゅうある…本気で叩けば体格差で大変なことになるのはわかっている。 だから、賢くて優しいこの仔達が本気で喧嘩するはずが無いのだ… 軽く平手が頬に触れた程度だろう。 でなければミッミーもこんなに元気に反論できない。 「テププププ…オマエタチニセモノテチィー、ポピーは本物だからデシャァァァキッーク撃てるテチュー!テヒァ!(解析エラー)」 どうやら、ポピーはデシアキックを真似しようと渾身の跳躍をして受身の取れない姿勢で落ちたようだ。 それもそうだ、アレは特撮でワイヤーアクションやCGで見栄えを良くしてある。 実装石があれを真似しようものなら、絶対に受身が取れないどころか、 体の小さい仔実装なら、自身の跳躍力プラス弱い肉体構造、それで無防備な背中を打つ。 人間の子供なら流石に、そこまでの無茶をするものは滅多に居ないが、実装石だと平気でそれをする。 しかも、考え無しに全力で跳躍するのだから始末に終えない。 しかし、賢いウチの仔がそこまで無謀な事を… 「ヘベェ!(解析エラー)(解析エラー)」 「(解析エラー)レキェェェェ…(解析エラー)」 「デヒィ!デチァァァァ…」 ポピーの悲鳴が何行にも渡って続く。 機能的に大事な部位の骨が折れたのだろうか…柔らかいとはいえ骨は骨、実装石の中では一番硬い部品である。 それが内臓にでも刺さっているのかものすごい苦しみようだ。 しかし、そのままなら時間とともに骨は修正され、治って致命傷にはならないハズ… 何故、こんな全身の構造が腐ったミカンの様にグジュグジュになるまで… 「テプププププ…ニセモノが無理するからテチィ!本物は蛆クーターに乗っているワタシテチュ〜ン♪」 「レペッ!オ・オ・オ・オネイチ…オモ・オモ・イ・レピィ!!」 「テペァテペァテペァー…本当テチュー、無様なニセモノはやっつけるテリュ〜ン♪」 「そうテチュ〜ニセモノのクセにそんなにテシアキックしたければワタチ達が手伝ってやるテチュー」 「ヤ・ヤメ…ヒペェェェェェェェェェェェェェ」 「(解析エラー)」 「レキャキャキャキャキャー♪そっくりの形テチュ♪高さも飛距離も申し分ないテッチューン♪」 「レピピピピピ…テチャチャチャチャチャ…もう一回テチィ!!」 似た表示が何回か続く… な・なんてことだ…俺の仔が…あのマリリンの仔が、こんな… あの壁や戸に付いた体液は…何度も音がしたアレは… 「テチァ!!走るテチィ!どうしたテチィ!ジャンプしてヘンシンヘンシンテチィ!それ!」 「ヒィィィィィ…レペ…ピ…コポァ(解析エラー)」 「はやくかっこいいデスゥクーターになるテチィ!!…蛆ちゃん?…テェェェワタシがジャンプしたら潰れたテッチィー!!!」 「テペラテペラ…笑えるテチィー♪お腹イタイテチィー♪クレアもニセモノテチィーン♪」 「違うテチィー!こいつが根性なしテッチィ!今度の蛆クーターこそヘンシンするテチィ!判っているテチィ?」 「レフッ!?ナニシテルノ オネイチ!チ!レペピペァ!!」 「蛆クーターイイテチィー…」 「ワタチも欲しいテッチュー…」 「コロコロレッフゥ〜ン♪オネイチャンタチ オナカ プニプニシテー レフレフシタイレフー…」 「レレッ!?ソレ プニプニチガウレフ〜 ダッコレフ♪オネイチャン バカレフー♪デモ タカイタカイ デモ ユルスレッフー…」 「これはワタシの蛆クーターテチュー!!」 「違う!ワタチのテチィー!!」 「レフッ!オネイチャンタチ…ダッコノ モチカタ オカシイレフ…イタイレフ…ホントウニ ダッコモデキナイ オバカレフゥ!!」 「レビィッ!バカ!イタイレフ!イタイタイタ…ゴメンナサイ、ユルシテレフゥ…モウ バカト イッショウ イイマセンレッ!サケサケサケ・サケチャウレピィィィ(解析エラー)」 「蛆ちゃん!!蛆ちゃん裂けたテチュァ!オマエのせいテチィ!テシァァァァァァァ!!」 「チガウテチュー…お姉ちゃんも悪いテチュー…ワタチは悪くないテチィ…お姉ちゃんが悪いテチュン」 「オマエが離さないのがワルイテチュァァァァァ!!」 「(解析エラー)オカオイタイ!ゆカんらテチィ!ヒろイテチィ」 「デプププ…元の顔と大して変わらない醜さテチィ!まだまだ、このぐらいしないと歪まないテチィ!」 「デチァ!デギッ!デボラァ!ヤメ・ユル(解析エラー)タスホトヘヒィ…」 「ヘンシンするテチィー!!早くするテチィ!オマエも役立たずテチュッ!!お尻潰しの刑テチ!このこのこのこのこのこの…」 「(解析エラー)コパァ…」 「思い知ったかこのクズムシめ!」 「レリューレリュー…イタイレリュー…レヒレヒ…ユルシテレフ ユルシテレフ…(解析エラー)オハナバタケデ ウンチプリプリレフ…テチッ…テチァァァァァ」 そして、次が「ワタシは悪くないテチィ!そいつらが悪いテチィ!」になった。 俺はコトンとリンガルを床に落として崩れ落ちた。 悪い夢だ…ミッミーがポピーが蛆ちゃん達が…こんな… ありえない…ありえない… −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 何分、そうして、5つの死体を前に呆然としていただろうか…。 手の辺りを叩く感触で我に返った。 リリアンとミャアとクレアが、自分で付けたであろうリードを差し出していた。 「ご主人様、何しているデス散歩の時間デスゥ…デスゥ!これは何があったデス!!」 「デチァァァァ!!大変テチィ!ミッミーとポピーに蛆ちゃんがヒドイ事になっているテチュ!」 「デピィィィィ!お医者さんテチィ!ご主人様ァ!ワタシの命をあげるからカワイイ妹ちゃん達をタスケテテチィィィィ」 ああ、なんと優しいのだろう…コレだ、コレがこの仔達の姿なんだ。 きっとアレは本当の夢に違いない。 何かの間違いなんだ… 「事故なんだよ…ミッミー達は事故にあったんだ…きっと…ほら、あの洗面台から落ちたんだよ」 そうだ、事故なんだ。 もう、何をしても生き返らない、既に失われた命にこだわっても仕方が無い。 そう、リリアンも沢山の仔を生んだが、俺に気を使って何も言わなくても一人で、 ミャアとクレアの様な賢い仔だけを残して”悲しい事”をしたんだ。 実装石が…野良と違い教育されたペット種が”悲しい事”をするのは辛い事だと聞く。 リリアンはその苦しみをミッミーとポピーの時にもやったのだ。 その苦しみに比べたら俺の喪失感など軽いものだろう。 ミッミーとポピーと蛆ちゃん達はその時に処分されていたかもしれない。 それに比べれば、俺は事故で死んでしまったと逃げるだけでいいのだ。 死んだものにこだわって、残ったリリアン達を悲しませたり生活を乱してはいけない。 俺は、ミッミー達の遺体をゴミ袋に詰めると散歩の準備をする。 その間もリリアン達は散歩をせかしている。 きっとこれは、自分達の悲しみをごまかしているんだ… 自分の命を差し出しても助けてくれと言ったこの仔達の事だ…きっと深く悲しんで… そうだ!リリアン達も俺に心配をかけまいと騒ぎ立てないが、 きっとついさっきまで居た家族の死に落ち込んでいるだろう。 俺は、昨日持って帰った仮面実装グッズを引っ掻き回す。 コレだ! 実装変身パンツ! 謎の古代実装文字と実装石の顔を模したイラストがプリントされている。 そして、コレ…物語終盤を飾る(販売)強化アイテム、実装テクター! そのまま手にはめてハンドガードでパンチ強化!伸ばして足につければレッグガードになる。 IC内臓で、振れば迫力の効果音が出るし、手につけたときと足につけたときで効果音が変わる優れもの! さらに、手を回してからすぐに突き出せばさらに派手な特殊効果音がでる。 実装石向けなので、成体にもフィットするアジャスター付だ。 この大きさでもいい値段がする(予定だった)ので妥協はしない作りだ。 もちろんパンツも各種サイズ用意されている。 何せ、実装石だけにパンツは”日常”消耗品に近いから…あればあるほど助かる。 リリアン達も早速、新品の実装変身パンツに履き替えご機嫌だ。 「デッスゥーデスゥ!」「テッチィーテチァー!」の掛け声とともにスカートを何度も捲って変身ポーズを見せ合う。 実装テクターは試供品2つしかないので、ミャアは手にクレアは足につけてやる。 「テチュチュチュチュー!!」ズガガガガーン!! 「テッリャー!!」ズゴゴゴゴーン!! 「「テーチャテチャテチャテチャ…」」 楽しそうだ…すっかり立ち直ってくれたようだ。 何度もキメては笑いあう。 正直、結構、音がうるさいがこの仔達が喜ぶなら満足だ。 そして、2人にはさらにお土産がある。 そう、変身蛆クーターだ。 デシアの変身と共に、普通の蛆クーターから無意味なエアロバリバリのデスゥクーターに変化する。 とはいえ、そんな非現実的な事は無理であるし、 あくまで玩具、変身後のデスゥクーター形態を縮小して”模した”電動玩具である。 外観が似ても似つかないのは愛嬌だろう。 時速2〜4km程でトコトコ走る電池式の玩具だ。 何せ本物デスゥクーターだと値段こそ大して差は無いが時速10kmも出ると 仔実装が操作した場合、速くて事故になる危険もあるのでワザワザリミッターの効く電動玩具になっている。 それに、この程度の速度なら人間の徒歩による散歩に同行させても速すぎず遅すぎない。 本物の蛆クーターなら最高速度はこの玩具と同じなのだが、 何せ特別に巨大化するまで育てた蛆実装を使う蛆クーターは超高級品…デスーパーカーより高い。 玩具だと、蛆クーター形態は飾りが無いので商品化する魅力に欠ける。 まぁ、番組効果で本物の蛆クーターが売れればいいと思ったんだけどな… 2人は、この蛆クーターを見て目を丸くして手を合わせて踊ると、 一度ポーズを決めてテクターの音を鳴らしてから乗り込む。 ちなみにデスゥクーターは座るが、この変身蛆クーターはスポーツタイプで跨って操作する。 まぁ、跨るというか、見た感じはシャリの上に乗る寿司ネタっぽいが…。 どの道、操作は原付やデスゥクーターと同じでハンドルのアクセルとプレーキだけだし。 そうして準備を終え、いつもの様に散歩に出る。 リリアンを連れ、2台の変身蛆クーターが付いてくる。 ああ、もし俺の番組が放映されていれば… きっと街中には同じような光景がそこらじゅうで見られるのだろう… 今、テチコちゃん服のレプリカやテチカちゃん服のレプリカを着る飼い実装が沢山歩いているように…。 公園でも、そんな実装石達が楽しそうに散歩を楽しんでいる。 ピロピロとステッキを振っている姿もある。 その様子を見ながら、リリアン達のリードを外す。 そして、自分はいつものベンチで今朝の惨劇の事を考える。 そうだ…仮面実装は常に1人で戦っているから主役は1人… だから、姉妹同士ですら役決めで喧嘩になる。 主役以外は悪役だしな… よし!次はバーンと5人ほど主役にすれば良いんじゃないか!? それだ! 実装戦隊デスゥレンジャー!! 合体変形ロボなんて売れるぞぉ…名前はデスキングなんてどうだろうか? 中盤には強敵だった実装燈が味方になって…サポートロボにヤクルティアン… デスキングと合体したら空も飛べるとかすると、飛べない実装石は憧れるだろうなぁ。 さらに終盤は蛆ちゃん型ロボも出して、変形するとデスキング用の武器、無敵蛆チャンソードに… いける!今度こそキタ! いかん!!これでは忘れてしまう!鉄は熱いうちに打てが俺の信条! 早速、部屋に戻ってアイデアノートに書き留めないと… 俺はやっぱり一流なんだ!!! −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 実装チャンネルのプロデューサーにして、愛護派としても知られ、 数多くの仔実装向け番組を制作してきた”西相 陽悟”(にし あい よう ご) 実装チャンネル敏腕プロデューサーとして、その発想力で番組のみならず関連商品のアドバイザーも勤める。 彼の欠点といえば、実装石以外の番組がまったく作れない事と、 ”自称”実装石専門家を名乗ってしまうほど自己完結型人間である。 様は、自信過剰にして行動力があり、自己中心的で自惚れ型… 実装石と違うのは、ちゃんと人の言葉を話し共食いしない事だけだろうか? 知識は無いが、自分では”一聞けば十理解できる”と思っている。 確かに実装石向け番組製作には才能があり有能だが、自身の飼い実装の飼育は上辺だけで何も出来ない。 彼は、自分の作った番組がどんな影響力を持つのか、結局、最後まで理解できなかった…。 重役やスポンサーを集めた試写会…その会場で事件は起きた。 やはり、見終わった当初は重役達にも重役達のペットの実装石たちにも好評だった。 1クールで終わらせるのは勿体無い…次回作には資金を提供したいと…。 しかし、ペット達の興奮は人間のソレとは別物だった。 人間が商談を始める中、会場に残されたペット達は、 まさに、リリアン達と同じ行動を百匹規模で繰り広げたのである。 役員やスポンサーは数十名だが、連れている実装石は家族連れも多く、軽く百匹を超える…。 実装番組関係は、こうした披露会関連の諸経費がいつも悩みの種なのだが… 人間より遥かに単純思考で映像感化され易い彼らは、 宣伝用に配られたパンツを慌てて履いては、変身ポーズを繰り広げ、 やがて、だれかが自分の唾を手につけてそれで前髪をピンと立たせると一斉に真似をする。 次はアクションの真似、それが仮想敵を相手のゴッコ遊びに変わり、 仮想敵を生身の相手にしないと気がすまなくなる。 そうして一角では、誰が主人公になるかで揉めだし、壮絶な殴り合いとなる。 それに加わらないものも自分こそが主役と、デシアキックを真似しだす。 殴られたりデシアキックで自滅して負傷でもしようものなら悪役として、 悪役より多い正義の味方に徹底攻撃を受ける事になる。 実装石の本能に強いものは正義と言う言葉は無いが、弱いものはクズ(=悪役)という言葉は刻まれているからだ。 一旦、自分だけの花畑世界に入り込んだ実装石は、強烈な麻薬に汚染された人間の様に抑制が効かない。 それは、ペットも野良も方向性が違うだけで同じなのだ。 会場が阿鼻喚起に包まれる中、静かに飼い主の座っていた椅子から動いていない実装石も居た。 だが、これらも正常な実装石ではない。 会場の異変に気が付いて飼い主達が戻ってくる。 実装石の阿鼻喚起に人間の慌てふためく声が加わる。 我が子は無事か!?と慌てふためくが、一部はきちんと椅子に座っている。 自分のペットが無事で安堵する飼い主達はペットに駆け寄り抱き上げようとすると… 「デシァァァァァァァ!デスゥ!!」 「テシァァァァァァ!テチァー!」 「レチァァァァァァ!レチァ!」 成体から仔、親指実装に至るまで、威嚇音をあげて飼い主に攻撃を開始する。 すっかり自己世界に埋没した彼らは、自分がデシアの様に人間にすら簡単に勝てると思い込んだのだ。 むしろ、取っ組み合いをしている連中よりコチラの方が脳内深度の深層まで染まっている。 ”人間は自分より格下”だけでなく”人間は自分より弱い”である。 結局、実装石は人間と違い、あまりに自己中心的過ぎて、それでいて簡単にトランスしてしまう。 僅かな脳内麻薬の分泌が、偽石の深層まで意識を書き換えてしまう。 いずれも、環境による性格は様々でも、ペットとして優秀ゆえに、 物語の目に見える部分だけがある程度理解でき、脳の構造も僅かに発達しているからだ。 結局、会場に来た実装石は1/3が騒動により肉体的死を迎え、 残りの2/3も、脳内麻薬により精神的再教育不可能と言う事で、後を追う様に入院した実装病院で処分された。 ごく僅かが、混乱にまぎれて会場から逃げて野に降ったが、 ビーコン追跡で、その日のうちに全て野良に袋叩きにされて殺されているのが発見された。 無謀にも自分が強いと勘違いして、野良を小馬鹿にして怒らせたのだと推測される。 どんな糞蟲でも、表立って飼い主に歯を剥く事は少ない。 格下でも自分には肉体的に勝てないのが判っている。 簡単に歯を剥かないからペットとして飼われているのだ。 それが、顔をあわせるだけで侮蔑し嘲笑い、頻繁に攻撃してくるようになれば…。 飼い主達も、ただの襲撃や喧嘩などなら、割と良くあることだけに事故と諦めも付いただろうが、 突如、自分に歯を剥いて立ち向かってくる状態で泣く泣く処分を選択させられるとなると諦めきれない。 彼らも事業家だ、感情に任せてスポンサーが離れることも無い。 何故なら、我が局と実装産業は共存共栄、一心同体だからだ。 しかし、ペナルティーは確かにある。 結局、すぐに様々な意味で危険すぎるために放送禁止にしたのだ。 これ以上傷口を広げないためにも… それも、推測ではなく、実例があり理論的裏づけもあっての処置だ。 それは、緊急会議の場で西相に真っ先に伝えられたが、 彼の性格からして、最初の放送禁止にするという一言以降はまったく耳に入っていないだろう。 彼が力説する裏テーマなんて崇高なものは、人間の子供なら深層心理に根付くかもしれないが、 実装石は見た上辺だけがひたすら深く刻まれて、それが自分の世界に甘美であれば染まるだけである。 彼は、只の焼き直しだと差し替え番組を批判するが、 実装石にはそれで十分なのだ、どうせ数日も立てばほとんどキャラクターの外観とキメ台詞以外は忘れているのだ。 ただ、グッズを売るためにキャラを増やし色を変えればいい。 それさえ定期的にすれば、毎週同じ話でも実装石達は喜び、飼い主は我が仔の為にグッズを買うのだ。 それが人間と実装石の知能構造や感性の決定的違いなのだという事が彼には判っては居ない。 「西相は今日も来ていないのか?」 「はぁ、相当ショックだったようです… 何せ可愛がっていた実装石が結局”全滅”ですからね。 相当、探し回っていたと有名になってましたからね。ビラも配ってたとか。 でも、先程電話はありました、リリアン達の為の遺作が完成したから目を通して欲しいと…」 「はぁ…何も判っていないな本当に…ヤツの机から私物を出して整理しておけ。 で、ヤツが来たら俺の部屋に通す前にヤツの荷物を渡してやれ…アイツはクビだ」 彼は実装チャンネルでの番組作りは敏腕といわれている。 彼は、私が差し替えを命じた番組を、只の焼き直しだと差し替え番組を批判した。 その彼は、結局、人間のテレビ番組を焼き直していただけなのだ。 それが今回良くわかった。 私が彼をクビにする理由は、むしろ、そちらの方であった。 次は、どうせテ○朝の戦隊物の企画だろうが… 彼は、実装石以上に上辺だけの紙の様な存在に過ぎなかったということだ。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− リリアン達は飼い主の去った公園でいつもの様に遊び続けていた。 もちろん、飼い主が自分の世界に没頭するあまり、彼らを置いて家に帰ったことなど何も知らない。 でも、彼らには普通の事だった。 何故なら、普段も飼い主は公園に着くなり、リードを外してベンチに座っているだけなのだ。 散歩ではリードを付けて絶対に離さないのはマナーであるが、 飼い主は自分の仔は…という考えだけにお構い無しだ。 それだけにリリアン達も公園で散歩と言うのは自分達が満足するまで放置されているものだという考えだ。 満足して腹が減れば、あのベンチに戻り、ベンチに居なければ家まで帰る。 家に戻れば当たり前のような贅沢な生活があるだけに、キチンと家に戻る。 それを飼い主は「良く帰ってきた」と褒め、贖罪の為か食事が1品豪華になる。 ただ、滅多な事ではこんなことは無く、飼い主が居ればいたで、帰り道にねだれば、たいやきなどが食べられる。 リリアン達にとって飼い主とはその程度の存在であった。 普段は空気のようで、いざという時に居れば用心棒…。 実装石から見ても、飼い主の西相という男は紙切れ程度の存在である。 リリアン達はいつもの様に遊び続けた。 とはいえ、只単に公園内を歩き続けるだけなのだ。 ひたすら自分達の姿を野良達に見せつける。 単純ではあるが、実装石にとってはコレに勝る甘美な遊びは他に無い。 そして、リリアン達ほど勘違いが長く続くと、それが誇大になっていく。 他の飼い実装に対しても自分が一番と考えるようになる。 無論、そのような考えにいたる以前から常に自分達が一番ではあるが口にはしない。 だが、今日は特に乗り物に乗っているという優位感もあるのだろう… やたら騒がしく公園を歩き回る。 時には野良の仔を見つけては、親が近くに居ないと見るや、ミャアは変身蛆クーターで追い掛け回す。 デスクーターより遥かに遅く小さいが、仔実装よりは遥かに速い。 「ほれほれ、どうしたテチィ!?遅いテチィー!デシャァァァァァアタックテッチィー!!」 「テ!テ!テ!テェェェェェ…テピィッ!!(グシャ)チベァァァァ…」 「テピャピャピャ!!悪は滅びて当然テッチィー♪」 クレアは変身蛆クーターを降りて、野良仔を追い掛け回す。 「やめるテチィ…ワタシ達は何もしていないテチィ!妹ちゃんをイジメルならワタシを叩くテチ!妹ちゃんは許すテッチー」 理不尽な暴力に対して健気に妹を守ろうと立ちはだかる仔実装に対しても容赦なく蹴りを浴びせる。 「テチィィィィィィテッチュァー!!」ズゴゴゴゴーン…ズゴゴゴゴーン… 「テチッ!テッチァ!リピァ…ケァ…カハッ…」ずごごごごーん…ずごごごごーん… レッグガードになっているため、いくら蹴ってもクレアの痛みは殆ど無いし、 自身に痛みが無いために手加減を知らない。 それをさらに効果音がクレアを陶酔に導く。 そのうえ、現実的攻撃力も硬い異物が付いている為に格段に高い。 姉がどんどん蹴り潰され、物言わぬ肉塊に変わっていく様に、 薄汚れた小さな仔実装はパンツを膨らませ、悲鳴を上げながら震える身体でハイハイで逃げ惑う。 「無様に逃げるのは悪人デチィー♪オマエはこうデチィ!」 膨らんだパンツの重みと恐怖で思うように逃げられない仔実装の髪を引き掴んで止める。 そして、足で背中を踏んづけながら、服を引っ張り破いていく。 「テチァァァァ!服!服!ワタチの服ゥゥゥゥ…」 服が終われば髪束を掴みながら、それ以外の後ろ髪を引き抜いていく。 「髪!イタイ!髪!ヤメテ!髪ィィィィ…」 哀れ、膨らませたパンツ以外は裸、髪も僅かに残った以外は後ろ髪の無い仔実装が出来上がる。 「テッ…ヒドイ…レチュー…レッチュゥゥゥゥゥン」 反抗する気力を失い、親指まで精神劣化した仔実装。 「テチャチャチャチャー!クサイテチィ!消えるテッチィー」 クレアは最後に渾身の蹴りを、仔実装の股間に下から掬い上げる様に放った。 グチャ! 鈍い音と共にキレイに飛んで顔面から地面に落ちる。 その股間は、グチャグチャに潰れ裂け、ガニ股どころではない位置に太股が向いていた。 「レリュゥゥゥゥゥゥゥゥレリュゥゥゥゥゥゥゥゥ…」 仔実装は顔面も裂けたざくろの様にしながら手だけでガサガサと草を掻き分け逃げていった。 そんな事をしているうちに、公園の一角で、楽しそうに弁当を拡げる一家に出会う。 みなピンクのテチカちゃん服に身を包んだ一家だ。 飼い主は近くに居ない。 西相の例に漏れず、公園内だからとリードを外す飼い主は少なくないのだ。 その脇をすれ違うリリアン一家… お互いに自分達が可愛いと思っている一家は、お互いに胸を貼り堂々として相手の事を気にしていないフリをする。 そして、お互いにフンと鼻息を鳴らす。 この程度では喧嘩にはならない。 自分の鼻息は他人を見下すもの、他人の鼻息は自分をうらやましく思う強がりと解釈されるからだ。 所が、この時は違った。 「テペペペペ…見るテチィクレア…今時、テチカちゃんテチ…ダサダサテッチィー」 調子に乗り切ったミャアの一言が、その一家の耳にも入ったことにより、堤防が決壊を初める。 そもそも、そのミャアたち自身、つい先日までは、そのテチカ服がお気に入りだったのだが…。 それにカチンと来た、相手の一家の仔が反撃をする。 「テププププ…なにテチィ!?あの格好…今時、テチカちゃん服も買って貰えない可愛そうな人たちテチィー」 「ヘンなデスゥクーターテチィー…ぜんぜんオンボロ、ノロノロテチィ♪きっとゴミ捨て場で拾ってきたテチュ」 「きっと脳に蛆虫でも沸いて頭がおかしいテチィ…テプププププ…」 仔実装はワザワザ聞こえるように大声で笑いあう。 「「何テチィ!仮面実装デシアを知らないほうが時代遅れのクズデチィ!!」」 2匹は言いながら、スカートを捲って腰を突き出し、ピョンピョンと跳ねる。 「「デシアテチィ?何テチィやっぱり頭に豆腐でもぶつけられて脳味噌潰れているテチィー」」 その様子を見て相手側は、腹を押さえたり、地面を叩いて大笑いする。 それも当然の事だ。 片や人気の番組、片や未放送の番組である。 知名度の差であれば、もはや勝負が付いている。 ミャア達は、スカートの前を捲ってパンツを見せるという、只単に飼いとしては低脳な行動をしているだけなのだ。 だが、その区別が出来ないミャアとクレアはその過ぎた挑発に堪忍袋の緒が切れる。 口より早く駆け寄る。 その一家の仔達も止せばいいのに「デチァァァァァァァ」と威嚇の姿勢をする。 親もそれを止めない。 リリアンにとっては2匹の我が仔を侮辱されたのは自分を侮辱する事と同じである。 それは、別に仔への愛情は無いが、プライドだけは飛び切り高い為である。 対する一家の親も止める事は無い。 向こうは親を入れても3匹、こちら仔だけでも6匹…中には相手の仔より大きな仔も居る。 見た目には決定的優位ゆえに、ここぞとばかりにタコ殴りの考えに進んで参加をする。 こうして、喧嘩が始まる。 まずは、親同士が取っ組み合いの喧嘩が開始される。 手よりも口数が多いのだが、それでも手数も相当に出るので立派な殴り合いである。 やや遅れて仔同士が激突するが、こちらは相手側親の計算を早々に覆す。 何せ、相手の親の頭数計算は、本当に数の差しか考慮されていない。 ミャア達が乗り物に乗っていることが…。 「「デチャァァァァァァァァァ…デッ…テチィィィィ!!」」 威嚇する仔達だが、迫り来る乗り物の姿に様子が一変する。 なにせ傍から見る分にはノロノロした不恰好な乗り物だが、いざ、正面に迫ればまがう事なき恐怖である。 少なくとも仔達の全力疾走と同等の速度は出る。 「デチァァァァァァァァ〜ペキャァァァァー」 よけきれずにタイヤに1匹が弾き飛ばされる。 さらに、一方的に2匹に5匹の仔が泣き喚いて追いかけられる。 そして当然小さく遅いものが1匹が弾かれ、1匹が踏み潰される。 残りも全力疾走でクタクタに疲れている。 そこで、ミャア達は変身蛆クーターを降りる。 「テキャキャキャキャ…」勝ち誇った笑いが響く。 しかし、向こうも強がり生物に相応しく、向こうが乗り物を降りたのを見て戦闘意欲を再燃させる。 何しろ、残ったものは体格で優位であり、数も3対2と優位なのだ。 「よくもワタシのカワイイセシリアちゃん達を轢いたテッ…」 ズガガガガーン 「ヘビイッ!!テピァァァァァ…リピペチポォォォォ」 「正義の拳を受けるテチィ!!」 殴りかかろうと形相を歪めていた1匹の表情がさらに激しく醜く歪み、 ゲロゲロと食べていた実装フードをペーストにして吐き出す。 僅かに早くがら空きの胴体にミャアのパンチがめり込んだのだ。 先程の例にあるとおり、自身の痛みが無いために振りぬくパンチは、威力もそうだが迷いが無く速い。 実装テクター自体は只の玩具である。 しかし、人間にとってもそうであるように、道具は時として凶器に変身する。 とくに、実装石同士の戦いでは、ウレタン皮膚の腕より、玩具でもプラスチックの硬さは、 人間が鉄のフライパンで思いっきり殴られるのと同じ強度の差がある。 多少の体格差など、規格外の差が無い限り道具によってはどうにでもなるのだ。 そして、相手が(相手も)絶対に優位でないと戦わない性格の飼い実装は、特に打たれ弱いために、 最初に決定的一撃を加えた方が一方的展開となる。 ミャアの次の一撃がまさにそれだ。 胃を撃たれ崩れ落ち、顔を歪め内容物を撒き散らす仔実装の脳天に、 振り下ろしのチョップが打ち下ろされる。 ズガガガガーン!「クァパァァァァァ…ビギビキビキビキレピペ…」 激しく脳天が凹み、両目が飛び出し、舌が千切れ飛ぶ…。 脳天を砕かれた仔実装は、脳を文字通り潰され訳の判らぬ言葉を発してゴロゴロと転がりまわった。 これは、視覚的に見て威力が判別できる。 それを見た残り2匹は、優位を生かしてクレアを挟み込んでいたが、 その場で1匹は腰を抜かし、1匹はガクガクと漫画の様に震えだし、共にブリブリ音を立てて漏らしだす。 ズゴゴゴゴーン!「デチィァァァァァーデッ!デッ!デッ!ユルシ…デッ!」 腰を抜かした1匹の顔面にクレアの直線的なケリが突き刺さる。 その後は、ガシガシと足や腹をストンピングされる。 グシャグシャ…ガシガシ… 「テチャチャチャチャチャ…」 2匹の笑い声と共に、2つの肉塊が製造されていく。 残った1匹は、ヘビに睨まれたカエルとなって、その光景を見せ付けられた。 そうなれば、親同士の戦いにも影響する。 実力はまったくの均衡。 お互いに自分が有意と負ってつかみ合っていたのが、我が子の悲鳴に相手の親が顔を動かす。 「デェ!?カトリーヌちゃん達がタイヘンなヒドイ事になっているデスゥゥゥ!」 我が仔達の惨状に気を取られてしまっては、実装石にとっては無防備になったに等しい。 バチン!バチン! 「デッ!デッ!デッ!」 面白いようにリリアンの平手が相手の顔を歪める。 そうして一方的になればやりたい放題だ。 ピンクのテチカ服の胸元を引っ張り上げぐいぐいと揺さぶったり拡げたりする。 「やめやめ、ご主人様からもらった大切な服が破れるデッ!デスッ!」 おたふく風邪の様に腫れた顔で、律儀な実装石を演じて許しを請おうとする。 しかし、それは、少なくとも、彼女が経験した限りで許された例から至った方法である。 相手が人間で、また、虐待派で無い人間…飼い主に怒られたときに許された懇願である。 彼女は、そんな行動を取れば、同じ実装石がどうなるかを自分でやりながらも判っていなかった。 下手に出れば、何処までも自分が優位と理解する思考を、自分が他人に毎回しているのにわからなかった。 ビリッ! リリアンの掴んでいた部分が破れる。 余程しっかりした布と縫製がされていたのか中々破れなかったが、一旦破れれば裂き易くなる。 むしろ、丈夫なために、少しづつ破れる恐怖と絶望を感じ続けていくことになる。 「やぶれ、やぶれ…破れたからもう許すデスッ!デビイッ!ズキンをとるなデ!な・なにをすーーーーデェェェェ!!」 いつの間にかミャア達もやってきて、ミャアがズキンを剥ぎ取り、 クレアが髪を轢き掴んで、頭に足を当てて引き抜きに掛かる。 リリアンはビリビリと調子よく、そして細かく服を千切り、 ミャアは、わざわざ、その実装石の顔の横に移動し奪ったズキンを頭を下に、その中にプリプリと糞を漏らす。 クレアは髪を束で掴んでは渾身の力で引き抜き、引き抜いては、ミャアと反対方向に髪束を持って行く。 哀れな実装石は、大の字に寝かされたまま、顔を左右にグイグイ振って、3匹を陶酔させる悲鳴を上げ続ける。 「ヒドイデスゥゥゥゥヒドイデスゥゥゥゥこんな姿…」 禿、そして、服の前だけが無くなった実装石はそこで許された。 腹にはのしかかっていたリリアンの糞がべっとりと付いている。 そして、糞がたっぷり詰まり、ピンクから緑に変色したズキンを渡される。 実装石はそれを手に、ヨロヨロと髪が山になっているところに歩み寄ろうとすると、 クレアが髪の山に向けて尻を出している。 「デ…デー…」 「ケンコウおウンチプリプリテチュ〜♪」 「テチャチャチャチャー、それをかぶるテチィ、かぶってテチカダンス踊らないとヒドイテチー」 ベチャ… 糞の詰まったズキンをゆっくりかぶり顔面を汚物で染めていく。 そして、ピョコピョコとまじかるテチカのエンディングのテチカダンスのステップを踏むと、 3匹は腹を抱えてその場で転がりだす。 哀れな飼い実装は、一通りダンスを終えると、1匹立ち続ける我が仔に駆け寄る。 愛情が無い親でも、こんな状態になれば我が仔に癒しを求める。 受けたストレスを何かで減らさなければいけない。 1匹立っている仔を抱きしめようとしたとき、初めて仔の異変に気が付く。 仔は既に死んでいたのだ。 目が神経らしき紐で繋がった状態でたれ落ち、顔中の穴から複雑な色の体液が垂れ、 下はパンツが狸の置物の○玉の様に地面まで膨らんでいた。 仔は、虐殺を終えたミャア達がにじり寄ってくるときも身動き一つとれず、 その恐怖とストレスで偽石が自壊して、内部が破裂して死んだのだ。 あまりに緊張の為の硬直が強すぎて、死んでからも全身が固まっていたのだ。 「デェェェ!デェェェ…デッデッ…デェェェェェェェェ…オロロ〜ン」 飼い実装は、我が仔の遺体に驚き、尻餅をつくと、その姿のままオロロ〜ンと泣き続けた。 3匹が去っても泣き続け、あまりの遅さに飼い主が探しに来ても泣き続けた。 飼い主は、服を纏った仔の死体は判別できたが、泣く親実装はあまりの醜さに、 自分のペットを襲った犯人と間違われ、泣いたまま脳天から踏まれて死んだ。 一方、満足の極みの3匹は、さらに公園を回ってから仲良く男が待っているであろうベンチに来た。 既に日が暮れかかっていた。 しかし、男は居ない。 3匹は口に手を当て、お互いを見てニンマリと笑う。 「あのクズはワタシ達をまた忘れていったデス、デプププ…これで今日は豪華な食事が加わるデスゥ」 「まったくクズは使えないテチィ♪今日はケーキ…金平糖…いや、カラアゲでないと許さないテチュ♪」 「カラアゲ食べたら、あのクズに立場の違いを教えるオシオキタイムテッチュ〜ン♪」 彼らや西相が救えないのは、本当に贖罪の一品がカラアゲだったりするところであろうか。 しかし、その背後で茂みがガサガサと揺れ、何匹もの実装石が現れる。 リリアン達は、それらに完全に包囲されるまでまったく気が付かなかった。 「デッ!何デスゥ!お前達は…クサイデス!とっととどこかに失せるデス!」 そのリリアンの前に1匹の成体実装が歩み出る。 その手には、小さな禿裸の仔実装が抱かれている。 仔実装はまさにカニの様に左右に足を開いたガニ股で、 「クールクール オハナガ マワルレフー♪コノ コンペイトウ オイシイ レッフー♪」と自分の片目をレロレロと舐めていた。 「お前達デス!ワタシのカワイイ仔をこんな目に遭わせたのは!!ワタシの部下が見ていたデス!!」 クレアが股間を砕いて半殺しにした仔は…姉仔実装が勇敢に守ろうとした仔は… この公園でも最大のコミュニティーのリーダーたる実装石の仔である。 マラのハーレムとは違い、コミュニティーを形成し統括する実装石は力と知能など、 複数の技能に秀でていなければとても勤まらない。 しかも、公園最大の支配力を持つということは、外敵に対する時には公園全体が彼女の味方である。 そのリーダーの顔に泥を塗るということは、公園の実装石を全て敵にすると言う事になる。 「そんな醜いヤツなんか知らないテチィー」 「言い逃れは署で聞くデスゥ!お前達、この場で殺っちまえデス!!ハラワタをブチ撒けやがれデスゥ!!!!」 リーダーの号令とともに「「デシャァァァァァ」」と威嚇音の大音響が響き渡る。 「ミャア!蛆クーターでひき殺してやるテチィー!!」 そう2匹がアクセルを吹かした瞬間、テテテ…カチン… 電池切れである。 元々、散歩に連れまわす1時間程度がせいぜい、それで約1週間前後電池交換なしと設計された玩具である。 変身蛆クーターは6時間も連続稼動すれば電池がなくなってしまうのだ。 「テヒィ!止まったテチィ!壊れたテチィ!?」 「役立たずテチィ!動くテチィ!動くテチィィィィィ」 「クソボケカスナス!そこまで来ているデスゥ!早くひき殺すデスゥ!」 彼らは、一応、先の経験によって、自分達が”持っているもの”によって強くなっている事は判っている。 ミャアとクレアは、仕方なく蛆クーターを降りると、8方から迫る敵に身構え、 デタラメに腕や足を振りぬく。 ズガガガガーン!ズゴゴゴゴーン! 効果音が響くと、襲い掛からんとしていた野良実装達はビクゥ!固まり、逃げ出そうと足をもつれさせ転ぶものも居る。 「何をしているデス!そんなの飾りデス!音だけデスゥゥゥゥ」 的確なリーダーの指示が飛ぶ。 伊達に最大コミュの頭である。経験から威嚇と現実の違いを冷静に見分けている。 しかし、その指示を受ける方は所詮は実装石である。 派手な音に立ちすくんだり逃げ出す。 ここで3匹が退路を作り公園から逃げる事を考えれば、それは可能だったかもしれない。 しかし、リリアン達にその選択は無かった。 愚かにも、怯え醜態をさらす野良の群れに、圧倒的優位を感じてしまったのだ。 音で威嚇して、逃げ惑う姿を楽しみだす。 一度抱いた幻想は膨らむばかりである。 そんな中、醜態をさらす野良の中で優秀ゆえの忠誠か、愚か者の盲信か、 果敢に立ち向かうものたちが現れ2匹に襲い掛かる。 「デシァァァァァァパンチ!!」ズガガッ(バキィ)ギャーピー… 「デシァァァァキーック!!」ズゴゴゴ(クシャ)ミュー…ザザザ… 調子よく蹴りとパンチを当てた2匹だが、様子が一片する。 所詮は玩具…しかも実装石用の作りである。 硬いものを殴るようには作られていない。 いくら、実装石の肉体が低反発ウレタンっぽい、柔らかお肉でも質量のあるものに叩きつけ続ければ壊れる。 音が出なくなる程度なら良いが、問題は今殴った相手の反応である。 殆ど効いていないのだ。 多少の体格差など、規格外の差が無い限り道具によってはどうにでもなるのだが、 この場合は、成体と20cmの仔実装…実に倍以上の大きさの差がある。 音が出ず、当たっても大したことが無いとわかれば、醜態をさらしていた野良実装達は、 醜態をさらすことになった分、余計に怒りに火をつけて襲い掛かる。 慌てて、壊れていない方の腕や足で反撃をしようとするが、既に手遅れで、音は何の意味も持たなくなっていた。 「「ジピァ!デキャリペイピドラヤテチィィィィ」」 複数の野良に手足を持たれて裂かれるのに5秒。 髪を持たれ持ちつき状態で地面に叩きつけられ死に至るのに、さらに5秒…そして、さらに5分間はそれが続けられた。 犯した罪に対し死に至るのが早過ぎるが、逆に言えば、 この場合、抑制できないまでに野良達の怒りを買っていると言う事である。 一方のリリアンは、何もされずに囲まれていた。 仔を殺すまで逃がさず襲わずがリーダーの指示だった。 愛情が無くても、我が仔が目の前で惨殺されるのは恐怖である。 愛情が無い分、苦痛を感じずに済むだけの違いしかない。 「デェェェェェ!ニンゲンたすけるデス!ワタシをタスケルデス!ご主人様ァタスケテデスゥゥゥゥゥ」 あらん限りの声で絶叫すると、リリアンの包囲網が僅かに広がる。 「うろたえるなデス!ニンゲンは来ないデス! こいつら、さっきニンゲンが自分達を忘れていったと言ったデス!ここには居ないという事デス!」 リーダーは流石にリーダーである。 そして、髪と頭部を残して全て弾けとんだ仔だったものが、裂かれた手足と共にリリアンの前に投げ捨てられると、 リリアンはリーダー直々に髪を引っ張って茂みの中に連行される。 そして、リリアンは複数の野良に組み敷かれ、先ずは服、次は髪と… 先程、自分達がしたそのままを再現されてしまう。 「ヒドイデスゥゥゥゥヒドイデスゥゥゥゥこんな姿…」自分が酷い目に遭わせた実装石と同じ台詞を吐く。 その後は、リーダーの命でひたすら大勢の野良実装に、鼓笛隊の小さなドラムの様に細かく弱く連打される。 そして、全身を紫、赤、青、黄、黒の内出血斑模様にされ、歯を石で叩き折られると、 リーダーの生尻を口に乗せられ、力を込めた盛大なジェット噴射排便を流し込まれる。 そして、四つん這いにさせられると、手足胴体を押さえられ身動きを取れなくされる。 そして、そのまま両足を広げられる。 その後ろには、リーダーが、手に壊れていない実装テクターを嵌めて立っていた。 大体の使い方を見て覚えたのだ。 あれをつけていれば、攻撃力が高くなると…。 そして、精神的効果しかないが、加速をつけようとブンブンとその手を振り回す。 ピロリンピロリン、キュイーーーーーーーーーン 実装テクターが音を発する。 それが、スーパーデシアパンチの合図と言うのは、このリーダーはまったく知らない。 クボァァァァァ… ピロピロピロピロ、ドドドドズガァァァァァァァン パンチがリリアンの排泄口に肉を掻き分けて潜り込むと同時に、 スーパーデシアパンチの破壊音が鳴り響く…。 「ゲビィィィィィゴポァ!!」 胃の内容物の糞、どころか自分の糞までもが逆流して一気に口から吐き出される。 ピィィィィードドドドド… リリアンの中から微かに音が零れている。 どうやらあまりの勢いに壊れて音が止まらなくなったのだ。 リーダーは満足そうに手を引き抜くと、中で実装テクターが外れて残ってしまった。 肝心のリリアンは内臓をメチャクチャに破壊され、体内に異物が残り、放心したままヒクヒク痙攣している。 「おーい、リリアーン!ミャァー!クレアー!」 人間の声を聞いた野良達は、リーダーの満足げな声の指示と共に、茂みのさらに奥へと消え去っていった。 リリアンを置いてきた事に気が付いた西相がようやく探しに来たのである。 しかし、彼は変身蛆クーターを見つけることはできたが、 地面のシミとなっている2匹の仔にはまったく気が付かない。 ドドドドドドドド… 「電子音がする…これは実装テクター!」音に気が付いた西相はその方向にいく、 そして、茂みの中の禿裸で四つん這いになってヒクヒクケツを痙攣させる実装石を見つけたとき、 実装テクターの電池が切れて音が止まった。 股間を破壊されたリリアンは「ゴ・ゴシュジンサマ…」と最後の気力で弱々しく鳴いた。 「まさかな…こんな醜く糞まみれの変色した禿裸の野良をリリアンと見間違えるわけが無い…気のせいだな」 よく、実装石は著しく姿が変わると我が仔すら認識できないというが、 人間から見ても実装石の区別は付かない。 自分の飼い実装は見分けが出来る人間も居るが、西相の抱いていた愛情もまた、 服がなければ判別できないほど薄っぺらい関係でしかなかった…。 リリアンは、数日、そのままの姿勢で動けずに内臓も再生できず、栄養も取れず絶望の果てに餓死した。 一方の西相はひたすらリリアン達を探し続け、町内にビラまで配り、 ようやく、「うちは便利屋じゃないですよ…迷子なら体内に埋めたビーコンを追跡すればいいんじゃなんですか?」 と問い合わせた保健所の人間に言われ、機械を借りて追跡した。 登録する事は知っていても、何の目的で保健所に登録し、 何のためにビーコンカプセルを体内に埋め込むのかという事すら理解していなかったのである。 そうして、蛆クーターがあった場所の近くで2つのビーコンカプセルを発見した。 遺体は残っていなかったが、カプセルが自然に体内から出ることが無いのは馬鹿な西相にも判った。 そして、最後のビーコン… そこには、あの時違うと思った禿裸の実装石がいた。 吐いた糞は醗酵し、身体は腐乱し、蛆がわいていたが、その実装石はあの時のまま、 ケツを上げて無様に股を広げていた。 そして、彼の目の前で腐った腹部から実装テクターが重みでコトンと落ちた。 それは、あたかも西相に”ワタシがリリアン”と訴えるようなタイミングだった。 「うわぁぁぁぁぁぁ…ゆるしてくれリリアン…」 そう泣き続けた。 「ううう…俺がデスゥレンジャーの企画に熱中してお前達を置いていった為にこんな… よし!お前達のために絶対にこの企画を流行らせてやるぞ!!」 そうして、西相はその足で実装ショップに立ち寄り、 新しい実装石を抱えてマンションに戻り、局に電話をかけるのであった…。 結局、彼と彼のペットは似た者同士…踊らされやすく何もわかっていなかったのである。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 仮面実装 デシア 完 前編と後編…虐待を後編に持っていったらこんなに長く…
