「そうだ、実装で映画をつくらないか?」 ふと思いついた俺の発言にクラスの全員が振り向いた ことの始まりは俺達の高校の学園祭の出し物に始まる 生徒会で組織された学園祭実行委員会は去年全クラスの出し物が全部安易 にできる喫茶店に流れたことを快しとせず、各クラスの代表者に引かせる クジ引きで出し物を決めさせることとなったのだ。 そして俺らのクラスに割り当てられた出し物は「映画」 映画撮影組には委員会から予算が多めに出る。 俺達はなるべく金をかけず、つまり金のかかるセットとかを作らず、映画を作り その金を「打ち上げ費用」に当てることばかりを考えていた。 金のかかる特撮とかは避けたい。 だが、昔ならいざしらず、ネットのある現代でクラス撮影のド素人映画に 積極的に出たいと思う奴なぞいない。 悪乗りした馬鹿とか、裏切り者、勘違いした梅岡教師の手でYouTubeにでも 登録されようものなら、恥ずかしい演技が全世界に放送されてしまい、 その恥は末代まで祟ることになる 悪い意味で良い演技でもしようものなら、第二のファットジェダイになりかねないし。 俺の向かいに座っている老け顔の友人(あだなは「オジヤ」)なぞ第二のマジレス 決定間違いなしだ。 俺の高校は進学校ということもあり、そこそこ判断力のある奴らばかりだったので 全員が(特に女子)出演拒否ということになり、俺達は途方に暮れていた。 ふと窓の外に目をやると、学校に忍び込んだ実装石がダンボール一杯に詰め込まれ 「デスデス、テチュテチュ」鳴いている。 用務員の爺さんがそれを焼却炉に次々と放り込んでいく。 手に取られた瞬間媚びポーズ、 「デププ」、ポイ、「デギャー」 「デププ」、ポイ、「デギャー」 「テププ」、ポイ、「テチュアー」 「実装で映画?どんな映画だよ」 「いや、先週『子猫物語』って映画をTVで見たんだ。ああいう感じでさ そうだな、親とはぐれた仔実装が色んな困難を乗り越えて親実装の元に 辿り着く愛と感動のストーリーなんてどうだ?」 我ながら名案だったが、クラスの奴らも全員賛成。 特にネタ元が「子猫物語」で「愛と感動のストーリー」というところは 女子にも受けが良かったようだ。 さっそく出演者の実装を確保するため用務員の爺さんにかけあうことにする 「おぉ?どうせ処分するもんだから好きに持ってきな、ただ最後はちゃんと 処分するんじゃぞ?適当に捨てたりするんじゃねぇぞ」 さっそく親実装と仔実装を1匹づつ袋に入れたのを貰ってきた 袋の中で親と仔は「デスデス、デププ」「テチューン、テプププ」 と何か喜んでいる。時々こっちを向いては「デププ」と笑うのが 気色悪い さて、こいつら野良なのでいかんせん凄まじく汚い、臭い 「こりゃまず洗わないと駄目だな」 ちなみに、俺は虐待派でも愛護派でもない、クラスの連中もそうだろう 言ってみれば実装なんぞに積極的に係わり合いになりたくないのだ、 良く話に聞く虐待師がやるように自分の家の風呂場で洗うなぞとんでもない そもそも自宅の玄関から先にあげることすらはばかられる。 そもそもどんな蟲がついてるか分からないから直で触りたくない。 「だがどこで洗うよ?人間が使う洗い場には入れられんぞ、こんなもん」 「そうだな・・・」 俺はゴム手袋をつけると、体育館で野ざらしになっていたサッカーボールを 入れておく網の中に実装どもを詰め込んだ。 「デッスー」「テチュールァ!」と何か抗議しているようだが、どうでもいい 俺らは「デスデス、テチテチ」とうるさいそいつらを男子トイレに持っていくと 洋式便器の中に二匹を押し込み、上から粉石鹸とサンポールとドメスト等、 掃除道具の中で目に付いたあらん限りの洗剤を放り込んで水をかけてやった 「デデデーーーデギャーデグボァ、ゴブッ、ゴブッ」 「テチュァァァァッァアァ、テケッ!テケケッ!」 実装親子の悲鳴と供に、すさまじい刺激臭が立ち込めた、目が痛い 一旦トイレから避難 「やっぱ塩素が発生したか」 「まずいな、役者死んじまったんじゃね?」 「もう一度もらってくるしかないかな?」 換気が終わった頃を見計らって入ってみると、閉じた便器の中からかすかに 「デス〜・・・ゥゥゥ」と声がする 「さすが実装、すげぇ生命力だな」 「オッケー、最後の仕上げだ!」 水洗のコックを押し下げると、勢い良く水が流れ洗濯機のように実装をすすぎはじめる 「デーーーーッデデゴボガボゲチョ」「テーーーッチュボァゴボチュ、ゲボチュ」 5回ほどすすいだ後、ネットを引き上げてやると、ぐったりした実装親子は「デー」 とか「テー」としか言わない。しこたまトイレの水を飲んでもはや騒ぐ気力も尽き果てたようだ。 そいつらをネットに入れたまま、学校の屋上の梯子にひっかけて俺らは帰宅することにした。 明日には多分乾いているだろ。 「デェーン」「テチェーン」 置き去りにされた実装親子の鳴き声がいつまでも学校の屋上に響いていた ---つづく---
