タイトル:【観察】 敷金・礼金無料 1
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初投稿日時:2007/03/10-14:48:41修正日時:2007/03/10-14:48:41
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敷金・礼金無料 1



■ 第一話 「スタートアップ」 ■


「おい、そろそろ飯にしようぜ」

 床を拭きながら、穴やささくれ、もろくなっている部分のチェックを入念に行っていた俺に、にじあき
が声を掛けてくる。

 腕時計を見ると、もう午後二時だ。
 夢中になっていて気付かなかったが、意識してみると自分も結構空腹だと気付く。

「そうだな、飯食うか」
「とりあえずこっちの作業は一段落したからよ」
「悪いな」
「なぁに、気にするなって」

 午前中から…いや、それどころか、もう二週間も重労働につき合わせてしまっているというのに、
にじあきは嫌そうな顔もせず、むしろ嬉しそうに微笑んでくれた。
 ま、手伝ってくれる間の飯は、全部俺の奢りという話になっているからというのもあるだろうが。


 俺の名はやおあき。

 片田舎の町外れ−要するにド田舎−に住む、しがないネット通販業者だ。
 実装石の様々なグッズを仕入れ、通販でさばいて収入を得ている。
 まあ、趣味の延長で日々の糧を得稼いでいるわけだ。

 趣味…
 そう、俺は実装石虐待派。
 ただし、他の虐待派とは、ちょっと違うタイプだ。
 それについては、おいおい説明するとして…

「おーい、どこに食いに行く?」
「そーだな、駅前の新しいラーメン屋にするか?」
「なんか、匂いが移りそうだけど、大丈夫?」
「あ、そうか。そりゃまずいな。じゃあ、いつもの定食屋にするか」
「らーじゃ!」

 にじあきが、階段で一階に降りて来る。
 古い木造の床が、ミシミシと不安げな音を立てる。
 俺達は“そこ”を出て、厳重に鍵をかけると、とんかつ定食のおいしい、いつもの店へと出向いた。


 俺達が今出てきたところは、一軒のアパート。
 しかし、ここには現在住人がいない。
 というか、もう十年以上誰も住んでないのだ。

 俺の実家のすぐ脇に立っているこれは、昭和40年代初期頃に作られたという古い木造ボロアパート。
 トイレも風呂も共通の上に狭く、ところどころにガタが来ていて、今の時代とてもじゃないが住めた
ものじゃない。
 多分、セ○ンであのメト○ン星人が座っていたアパートよりも遙かにボロいだろう。
 俺の死んだじいさんが大家兼管理人をしていたのだが、数年前に死んで以来、ほとんど俺が管理
しているような状態だ。
 管理と言っても、実際は物置として利用する程度なんだが。
 俺の両親はいい加減に解体処分して、土地を貸すか新しいアパートかマンションを建てたいらしい
が、俺のワガママで現存させている。
 税金等の維持費を俺が払っているから、文句も言えずくすぶっている。

 ではなぜ、そこまでしてこのアパートを残しているのか?
 なぜ、二人がかりでわざわざ中を掃除していたのか?

 その答えは、俺が虐待派だという事に繋がっている。

 おっと、今ここまで読んだあんた。
 「なるほど、この中で虐待をするためなんだな?」と考えただろう?
 残念だが、それはハズレだ。
 俺は、さっきも述べた通り「変わり者の虐待派」なんだ。
 そんな安直な事はしないよ——


「つくづくお前って、変わった奴だよな」

 とんかつ定食極盛り(カツを盛った高さが15センチを超える)をペロリとたいらげたにじあきが、突然
そんな事を言う。

「まーな」
「俺も虐待派だし、今まで色々な奴と交流してきたけど、お前みたいのは一人もいなかったもん」
「当然だ、俺はもう、直接手を下す虐待には飽きたんだよね」
「ふーん、じゃあ俺はお前から見ればまだ下の下ってとこか」
「そういうわけじゃない。単に、俺は途中から脱線しただけさ」
「そんなものかね」

 続けて、メンチカツ定食極盛り(説明文同)を注文するにじあき。
 さすが体重100キロを超える巨漢、食べる量もハンパじゃない。
 でも、いくら俺のおごりだからって、手加減してくれよな。
 というか、メンチカツって結構匂い残らない?
 アパートに食い物の匂い残したくないんだけど。
 
「で、あのアパートの準備はもうそろそろ万全なんだろ?」
「そうだな、床と部屋のチェックは終わったし、カメラと盗聴器は仕込んだし、必要な準備もしたし。
 ——後は、不足物資の買出しだな」
「じゃあ、ここ出たら買いに行くか。あと何が必要だ?」
「えーと、トイレットペーパー、紙コップ、竹串、タコ糸…これは丈夫な奴な。安いタオルと、オモチャを
 適当な数…こんなところだ」
「飲料水と食料は万全なのか?」
「それは大丈夫だけど。ああ、タオルは予定より少し多めに用意しておくべきかな」
「だと思うよ。あ、そうだ忘れてた。硬い棒も用意しとかないとな」
「うわ、さんきゅ! それすっかり忘れてたよ」
「アレがないと、せっかくの買出しが無駄になるからなあ」

 慌てて携帯のメモに追加する。
 さて、これを全部買って来たら準備は整う。
 その後は、最後に必要なアレをごっそり確保してこなくてはならない。
 にじあきには、もう少し付き合ってもらわないとな。

「でさ、やおあき。これまでの準備で一体いくら使った?」
「——聞かないでくれ」


 その二時間後、俺達は買い出してきた荷物をポロアパート内に運び、計画メモに記された位置に
手際よく配置していく。
 手前の101号室に入れておいた、以前に準備した物資も組み込んでいく。
 時計が午後七時を示す頃には、完璧といえる状態になった。

 よし、これでやっと、「店子」を呼び込めるぞ♪

「長かったな、やおあき」
「ああ、ありがとうなにじあき! やっとここまで来れたよ」
「何言ってる。これからが長いんだからな」
「そうだな、今度こそバッチリ決めたいよな」

 額の汗を拭って、俺達は、入り口から一階の廊下を眺める。
 夏が近いとはいえ、さすがにそろそろ暗くなってくる。

 最後の作業に移行する時だ。


 俺の名はやおあき。
 ちょっと変わった虐待派。
 俺は、自らの手で実装石を傷つけたり、殺したりは絶対しないというポリシーを貫いている。
 だから、にじあきのようなガチの虐待派からは異端視されている。

 ——やることが無駄に大掛かりだってのもあるんだが。


 俺の計画。
 それは。
 このボロアパート内に、「実装石一家」という店子を招き入れることだ。



 □□□


 俺とにじあきは、出かける前に一度俺の自室に戻り、常時稼動中のパソコンのモニターを点ける。
 そこには、すでにある所に設置されている、小型の暗視機能付き隠しカメラからの映像が
映し出されている。

「結構遠いのに、よく映ってるなあ」
「うん、結構重宝してるんだコレ。忘れないで回収しないと」

 ニ分割された画面に映っているのは、実装石の親子。
 上下の画面は、それぞれ別々な一家の様子を見せてくれる。
 これは、これから向かう公園内で、一週間前から観察を続けている一家だ。
 それぞれが、それぞれのダンボールハウスの中でくつろいでいる。
 今の時間は夕食を終えた直後らしい。
 各々の家族は全員集まっているようで、一匹の欠けもない。
 問題ないようだな。

「にじあき、お前のエントリーはどうだ?」
「ああ、多分問題ないと思うよ」

 今は確認出来ないが、実はにじあきも、これとは別な実装石一家をチェックしている。
 なんと、二週間以上も監視し続けたそうだ。
 どういう構成の家族で、どんな特性があるのかはわからない。
 だがにじあきから言わせると、大変珍しい一家なんだそうな。


 ここからは、実装石達の数が増えまくるので、それぞれの一家に呼び名を付けよう。

 まず、俺がチェックしている一家の一つ目は、親実装が一匹、仔実装が二匹という、実にスタンダード
な内訳。
 今後はこれを、「アカ組」と呼称する。

 もう一つの一家。
 これは内訳が凄い。
 親一匹に対し、仔実装が四匹、さらに親指が二匹の、計七匹という大所帯だ。
 これを「アオ組」と呼称する。

 そして、にじあきが候補に上げている俺のまだ知らない一家は、「キイロ組」と呼称。

 これからこの三家族には、俺達が準備を整えたアパートに、強制的に引っ越していただく事になる。

「それにしても、アオ組はすごいな。よくこんだけの家族を育て続けてるよ」
「だから選んだんだよ。あの公園にいながら一匹も欠員を出さないで育ててるって事は、この親も
 家族も相当賢い筈だ。にじあき、キイロ組がいくら優秀でも、アオには勝てないだろ」
「ふふん、そうかな?」

 アオ組は、俺にとってかなり自信のあるセレクトだったが、にじあきは、大した事なさそうな態度だ。
 奴は虚勢を張るような性格じゃない。
 それに、俺よりも多くの実装石のパターンを知っている。
 それをして、「こんなの初めて見た」といわしめるほどなのだから、よほど特殊なのだろう。
 だから俺は、あえてキイロ組の内訳を聞いていない。
 だんだん、会うのが楽しみになってきた。

「じゃ、そろそろ行くか」
「ああ待って。催眠スプレー持って行かないと」

 俺達は、捕獲用の実装用催眠スプレーと大型ケージ、そして黒いビニール袋を数枚用意して、愛車
「ライドロン」に急いだ。

 …いいじゃないか、自分の車にどんな名前付けたってさ。
 



 
 □□□



 公園の近くに車を止め、そそくさと移動する。
 この公園は郊外の近くにあり、かなり広い上に裏側は林に通じており、暗くなるとほとんど人が
近付かない。
 そのせいか、野良実装にとっては理想的な生活環境になっているようだ。
 しかし反面、なぜか実装石同士の諍いが絶えず、新参者や弱者は容易には生き残れない。
 日中に行くと、近くに人間が居るにも拘らず、平気でケンカしていたりマラ実装が暴れていたりする。
 共食いされた死体の残骸を見たり、虐待されている禿裸もよく見かける。
 あまりにも治安が悪いので、愛護派の人間や実装石を毛嫌いしている人達は、絶対に近付かない。
 だが見方を変えれば、こんな環境である程度以上生き長らえている一家は、生活能力と危機回避
能力に秀でた、相当優秀な連中という事になる。

 そう、今回の「実験」には、優秀な奴等が欲しいのだ。
 バカではダメなのだ。
 優秀な能力を持っている奴等だけを、俺達は求めている。

 先ほど紹介したアカ、アオ、キイロ組は、すべてこのエリア内で生活している。


「じゃ、そろそろ…」
「な、待てよやおあき」

 公園に入ろうとする俺を、にじあきが止める。

「どうした?」
「ミドリ組、ってのを追加しないか?」
「えっ?」

 後で聞いたのだが、実はやおあきは、キイロとは違うもう一つの一家に注目していたらしい。
 だが、ある事情があって生き残る可能性を見出しておらず、監視カメラは設置していないらしい。
 という事は、生き残っていたらめっけもんという事か。…面白いな。

 俺達は、公園内に静かに潜入すると、それぞれの一家を捕獲するため分散行動を取る。
 さーて、アカとアオは…

 俺はまず、アカの居場所へゆっくりと近付き、見覚えのあるダンボールハウスを発見する。
 どうやら早々に寝付いているようで、気配はするものの物音は聞こえない。
 俺は、スプレーにノズルを差し込み、それをダンボールハウスの隙間に突っ込むと、プシューと
スプレーを噴射した。

 これでこいつらは、明日の朝くらいまで目覚める事はない。
 ダンボールハウスを開き、匹数の無事を確認しケージに突っ込むと、黒いビニールをざっと被せる。
 万が一、こいつらが目覚めても俺の姿や周囲の様子は見えない。
 おっと、カメラを回収っと。

 同じプロセスで、アオ組も回収する。
 一度車に戻るとそれぞれのケージを後部座席に置き、にじあきの帰還を待つ。


——おや?

「テチー」
「デスゥ…」

 公園の外だというのに、なぜか実装石の鳴き声がする。
 車を回り込んで反対側を見てみると、少し離れた所にある窪みに、実装石の親子が入れられた
ダンボールがあった。

 「どなたか 育ててあげてください みんな元気なとってもよいこです」

 ダンボールに貼り付けられた白い紙には、マジックでそう書かれている。
 捨て実装?!
 よりによって、こんな所にかよ?
 顔も知らぬ元飼い主よ、あんた、これじゃ誰かに拾われる前にみんな殺されちまうぜ。

 俺は、咄嗟にそいつらに催眠スプレーをぶっかけて、問答無用で眠らせる。
 そして、ダンボール箱を回収し、ライトを当てて箱の中身を確認する。

 親一匹に対し、仔が二匹。…ん、蛆ちゃんまで居るぞ?
 確か蛆実装付きは、今のところエントリーにはなかったと思ったが。
 これは面白そうだ。

 身なりを確認すると、どうやら清潔な環境で育てられたらしく、どれも洗濯したての綺麗な…しかし、
オリジナルではない衣服と下着を身につけている。
 つか、全部揃ってどピンクの実装服って…
 ああ、これは、基礎知識のない飼い主に大事に育てられて、数が増えたんで持て余されたパターン
だな。
 それでこいつら自身、自分達が生来持っている服を取り上げられた意味が理解出来てないんだろうな。
 箱の中には、実装フードと実装石用の吸い飲み付きペットボトル水がある。
 しかし、それに手を付けた様子もなく、またどの個体も脱糞していない。
 という事は、こいつらは捨てられてからほとんど時間が経ってないのか!

 ——よし、お前達も店子にエントリーだ。
 予定より数が増えたが、お前達には「モモ組」という呼称を与えて、アパートに住む事を許可しよう。
 安心してくれ、敷金や礼金はタダだ。
 ただし、元飼い主が用意してくれた備品は全部廃棄な。


 これで、アカ、アオ、キイロ、ミドリ、モモと五組の実装石家族が揃った。
 …って、あっ、まだにじあきがミドリを回収できるとは限らないのか。


「お〜、遅れてごめん。ミドリ回収できたよ」
「おっと、懸念」
「ん?」
「いや、なんでもない。随分かかったな」
「それがな、こいつら自分の家持ってないんだ。だから居場所が定まらなくて」
「そんなんで、よく回収してこれたな」
「ああ、缶が空になるまでそこら中に吹きまくって、みんなまとめて眠らせてから片っ端に調べて
 見つけたんだ」

 なんでまた、そんなまめなことを。





 □□□



 自宅に戻ると、それぞれのケージを下ろし、アパートへと静かに運ぶ。
 そして、いよいよそれぞれの実装石のお披露目だ。
 ここに来るまでに、突発的にエントリーさせたモモ組の事をにじあきに説明した。
 彼も、「それは実に良いセレクトだ。GJ!」と褒めてくれた。


 さて、再度確認だ。

◆アカ組:親×1、仔×2

◆アオ組:親×1、仔×4、親指×2

◆モモ組:親×1、仔×2、蛆×1


 これが、俺のさらって来た三家族だ。


 対して、にじあきのさらって来た家族は…

◇キイロ組:成体×2、仔×1、蛆×1

◇ミドリ組:仔×2、親指×1

 だった。

「え、親が二匹? で、こっちは親ナシ?」
「そーさ。これが俺の自慢の店子だ」

 これには驚いた。
 蛆が含まれているというのはなんとなく想定していたが、一つの家族に成体が二匹というのは、
かなり珍しい。
 成体の片方は、年の離れた姉なのだろう。
 それにしても、その割に仔が少ない。
 なんだか、色々謎がありそうな家族だ。
 こういうミステリアスなのは、大歓迎だ。

 もう一方のミドリ組も、興味深い。
 一匹は結構良い体格をしているが、どう見てもまだ子供。
 親が居ないという事は、子供達だけで生き続けてきたという事だ。
 なるほど、特定の家を持たない事で襲撃されるリスクを減らしたり、常に移動して他の野良実装達の
マークを逸らしたりしていたのだろう。
 だからにじあきも、特定の場所にカメラを仕掛けられなかったのか。

「そっかあ…成体二匹で成立している家族に、親が居なくても生き続けている姉妹か。こりゃ確かに
 優秀だわな」
「だろ? だから自信があったんだよ」

 にじあきは愉快そうに笑う。
 いや、さすが俺より経験の豊富な虐待師、目ざとさもなかなかだ。

「で、こいつらの偽石摘出とかは?」
「いや、一切手は加えない」
「このままか?」
「このままだ」
「ふーん…やっぱお前って変わってるよな」

 不思議がるにじあきをよそに、俺は当初の予定通り、それぞれの家族をアパートの一室内に置き去り
にした。
 目を覚ましたら、全員一度にご対面ってわけだ。


 さて、ここでこのボロアパートの構造を説明しておこう。

 このアパートは、入り口が一つで、廊下を挟んでそれぞれの部屋の入り口が並んでいるタイプだ。
 今時珍しい構造だと思う。

■1階

 部屋番号は、左上→右下の順で、101〜103、105〜107(104はない)。

 (入り口)
   _
  ||
 □||□
 □||□
 □||□
 ■||▲
  | → 二階へ
 ‾‾‾‾
 □は空き部屋、▲はトイレ、■は風呂場だ。
 廊下の奥、トイレの脇には、二階へ昇る階段がある。
 言うまでもなく、三階や地下室はない。

 俺達は今、左上の101号室で実装石達を解放している(寝てるけど)。


 おっと、区別がつくように、それぞれの実装石にナンバリングをしておかなきゃならなかったな。
 俺とにじあきは、あらかじめ用意しておいた四色のリボンの端に油性ペンで番号を書き込み、手分け
して実装石の首下に巻き付けていく。
 親は親、子は子で別カウントにする。
 これ以降は、「アカ親、アカ仔1、アカ仔2」という感じで呼ぶ事にしよう。


 ナンバリングが終わり、ケージや袋など、人間の居た痕跡を片付けると、俺達は静かにアパートを
出て、入り口にしっかりと鍵を掛ける。
 これで、中の実装石達は完全に閉じこめられた状態になる。

 時計を見たら、すでに日付が変わっていた。


「よし、すべて完了だ」
「乙〜。いよいよ明日から開始か」
「そーだな、あいつらは多分、朝になるまで起きないだろうからな。明日の朝からが勝負だ」
「楽しみにしてるぞ、報告よろしくな」
「ああ、まかせろよ」

 俺はにじあきを車で家に送ると、早々に床につく。
 明日は少しでも早く起きて、奴等の観察をしなくてはならいなからだ。


 俺はやおあき。
 実装石には直接手を出さない、少し変わった虐待派。

 今回の目的。
 それは、公園から賢く生存能力に長けた一家をアパート内に集めて、その中でどういうコミュニティを
形成するか、そしてどれだけの間生き延びる事ができるかを「観察」するというものだ。

 なぜ、糞蟲や賢くない実装石ではダメなのか?
 それは、このアパートの中には、無数の仕掛けが施してあるためだ。
 賢くなかったり、糞蟲分が高かったりする奴等には、意味を成さない仕掛けが。
 俺は、その仕掛けを活用し、未知の環境で精一杯生きる実装石達の姿が見たいのだ。
 仕掛けは、彼女達を傷付けるためのものではない。
 逆に、彼女達の生活を助けるものばかりだ。

 しかし、それはあくまで彼女達が「あるレベル以上の賢さ」を発揮出来た時に意味を成すものばかり。
 逆の言い方をすれば、「賢さが必要なレベルに達していないと無駄になるか、害を成す」事になる。
 そしてもちろん、用意された物全てが便利なものとは限らない。
 賢さだけでなく、判断力の大小も問われる。


 ——これは、いわば衣食住を保証されたサバイバル。


 店子達には、俺達が工夫を凝らした環境下で知恵を絞って生き延びていただこう。
 

 俺はやおあき。
 自らの愚かさで自滅していく実装石の姿を愛でる、サディスティックな虐待派。
 刃物や暴力ばかりが虐待の道具でない事を、良く知っているつもりの男。
 恵まれた環境の中にも、実装石達を追いつめる「牙」はいくつも眠っているのだ。


 目覚ましが鳴る。
 時計は、午前六時。

 長くて楽しくて、そして波乱に満ちた観察が、今、始まった。


 (続く)

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 ■ 現在の状況 □
 
●アカ組:親×1、仔×2

●アオ組:親×1、仔×4、親指×2

●キイロ組:成体×2、仔×1、蛆×1

●ミドリ組:仔×2、親指×1

●モモ組:親×1、仔×2、蛆×1



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