チャイムが鳴ったので出てみたが、玄関の外には誰もいない。 いたずらか何かだったのだろうと、部屋に引き返す。 すると、ベッドの上でボインボイン、一匹の実装石が跳ねていた。 ボインボイン、ボインボイン、マットレスのスプリングが軋み、実装石が跳ねる。 目の前で起きていることが信じられない。 ドアを開いた隙に目を盗んで忍び入る、そんな真似が実装石にできるとは思えない。 どこから入ってきたのだろう、ここは六階、窓はしっかりと錠が下ろしてある。 実装石は跳ねる、家主の驚きなどどこ吹く風でいる。 とにかく、出ていってもらわなくては。 実装石がスプリングの反動で勢いよく宙に飛んだ瞬間、その体を両手で挟んで捕まえる。 見た目よりずっと軽く柔らかで、中に綿でも詰まったヌイグルミみたいだ。 だけど、腕の中で手足をウネウネと動かし目をギョロリと剥いてデッスンデスーンと 鳴き喚く姿は紛れもなく生きのよい実装石だ。 そんな実装石が、宙吊りのままいきなり静止した。 このまま外に放り出してしまおうと、玄関に向かおうとした矢先のことだ。 実装石はじっとりとした目つきで、こちらを見上げる。 その目が、チカチカと目まぐるしい明滅をはじめる。 赤が緑に、緑が赤に、元はどちらが赤で緑だったかわからなくなる。 目を逸らすことができない、催眠術にでもかかったみたいだ。 ぼうっと頭がしびれ、四肢の力が抜けてしまう。 実装石の体は、力の抜けた腕から落ちて、再びベッドの上に弾んだ。 その両目の明滅は止まり、四肢の感覚を取り戻した。 ただ、両目の瞳の色が緑に揃っているのがいただけない。 訳がわからなかった、自ら強制妊娠したとでも言うのだろうか。 しかも、その目には瞬く間に赤に染まっていく。 落ち着く閑もない、ウチの中で子供を産まれてはたまらない。 力ずくで追い出そうと、再びその体を捕らえる。 だが、今度は貝のようにへばりついて離れない。 目の色は刻々と赤味が強くなっていく。 出産の兆候、もう時間がない、どうにか止めなければ。 ついに両目が真っ赤に染まると、実装石はスカートをまくりあげ 下着を脱ぎ捨て、露わになった総排泄孔は破水する。 まるで洪水、正面に居たので頭からひっかぶる。 何かこいつを止める手立てはないものかと見回すと、オイルライターが目に付いた。 すぐに手にとり、火をつけて股間にあてがう。 排泄孔は蝋のように溶けて潰れ、焦げて黒ずむ。 肉の焼ける臭いが立ち込めて、むせる。 それでも、実装石は火から逃げようともしない。 目は相変わらず赤い。 実装石はデボッといきなり嘔吐した。 またしても頭からひっかぶる。 腹を思い切り殴りつけた。 すると、喉元がぼこりと脈打つ。 また嘔吐かと後退って身構えたが、大口を開いた奥から、子実装の頭が見えた。 どうやら、下の口から上の口へと仔実装が逆流したらしい。 口を無理やり閉ざして、上唇と下唇の境目をライターで焼き潰した。 今度は、鼻の穴の片方が拡がりだして、仔実装の顔が覗いた。 現れた顔ごと焼き潰す。 次は眼球がポロリとこぼれ落ち、テッテレーと仔実装が顔を出した。 両目とも潰してやった。 頭巾をひっぺがして、あらかじめ両耳も潰しておいた。 これでもう、仔実装の出口はないだろう。 やっとのことで一安心、思わずそこにへたり込んだ。 腹がグルグルと鳴りはじめる。 緊張が緩んだせいか、便意を催す。 あわててトイレに駆け込む。 ズボンと下着を膝におろして、便座に腰かける。 すぐに尻の穴を掻き分けて固形物がひり出される。 テッテレー、ポチャン。 テッテレー、ピチャン。 テッテレー、バチャン。 便器の底の水溜りに落ちたものを確かめもせず、水洗コックを大へとひねる。 水音が止むと、ベッドのある寝室の方から鳴き声と物音がした。 デッデレー、ボイン。 テッテレー、ポイン。 ズボンを片足にひっかけ、もつれる足で寝室に駆け込む。 そこには、ベビーベッドでスヤスヤ眠る仔実装が三匹。 実装石は俺を見て微笑む。 暗転。 気がついたら教会の門の下、片手に家族や友達が並んでいる。 もう片手には実装石の群が飛んだり跳ねたりしている。 傍らには真っ白なウェディングドレスを着た実装石。 頭に被せた長いベールの裾を、三匹の仔実装が掴んでいる。 両親族の間には真っ白な石畳が敷かれた小道、その先には真っ赤なオープンカー。 俺は実装石を道の真ん中に蹴飛ばした。 実装石と仔実装と花束が宙を飛んで…… 無数の未婚女性の手がそれを掴もうと差し伸ばされて……
